説明

ディスク装置

【課題】ディスク高速回転時の振動を長期にわたって確実に抑制する。
【解決手段】ターンテーブル8付きスピンドルモータ9及びディスクDの半径方向に移動可能な光ピックアップ10を搭載したシャーシ本体5Aと合成樹脂製レバーアーム5Bとからなるトラバースシャーシ5がローダーシャーシ2内に上下動可能に配置され、レバーアーム5Bが、レバー本体5aと、レバー本体5aの両端から延びてローダーシャーシ2に回動可能に枢支された左右一対のアーム部5bとを有し、ローダーシャーシ2の前部にスライド可能に配置したカムスライダ12とレバーアーム5Bとがカム機構13により連動連結され、レバー本体5aの一端部を切欠いて形成した凹部29の内面に一体突設した弾性変位可能な抑え片30を有し、抑え片30がU字形に形成されてその先端部がローダーシャーシ2に弾性的に押し付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばBlu−ray Disc式のレコーダ(またはプレーヤ)などのデ
ィスク装置に関し、特に、ディスク高速回転時の振動を長期にわたって確実に抑制するこ
とができるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスク装置の一例として図6〜図8に示すものがあり、これは、Blu−ra
y Disc式のレコーダ(またはプレーヤ)であって、ディスクD載置用合成樹脂製ト
レイ1が合成樹脂製ローダーシャーシ2内に配置され、該ローダーシャーシ2の両側板2
aに一体形成した棚枠3上のガイドレール4にトレイ1が前後進a,b可能に係合され、
金属製シャーシ本体5Aと合成樹脂製レバーアーム5Bとからなるトラバースシャーシ5
がローダーシャーシ2内に配置され、前記シャーシ本体5Aの後部がゴムからなる後側弾
性体6を介してローダーシャーシ2に上下動c,d可能に連結されると共に、該シャーシ
本体5Aの前部がゴムからなる前側弾性体7を介してレバーアーム5Bに連結され、前記
シャーシ本体5A上にターンテーブル8付きスピンドルモータ9とディスクDの半径方向
に移動可能な対物レンズOL付き光ピックアップ10とが搭載されている。
【0003】
図6及び図7に示すように、前記レバーアーム5Bは、前後進a,b方向とは直交する
左右方向e,fに沿って延びるレバー本体5aと、該レバー本体5aの両端から後進b方
向に延びる左右一対のアーム部5bとを有し、該各アーム部5bの遊端に一体突設した支
軸5cをローダーシャーシ2の各棚枠3に形成した凹状軸受部11に嵌入させることによ
り、その支軸5cを中心にしてレバーアーム5Bが回動可能に枢支されている。
【0004】
図6〜図8に示すように、前記ローダーシャーシ2の前部にカムスライダ12が左右方
向e,fに沿ってスライド可能に配置され、該カムスライダ12に形成したカム溝13a
と、レバーアーム5Bのレバー本体5aに突設されてカム溝13aに嵌入するカムピン1
3bとからなるカム機構13によりカムスライダ12とレバーアーム5Bとが連動連結さ
れ、前記カムピン13bの先端がローダーシャーシ2の前部に形成した縦溝14に昇降可
能に嵌入されている。図6中、15はねじ軸機構15aを介して光ピックアップ10を往
復移動させるためのフィードモータである。
【0005】
図6及び図8に示すように、ローダーシャーシ2の前部にピニオン16が正逆回転g,
h可能に配置され、該ピニオン16に噛合可能なカムラック17が前記カムスライダ12
に設けられ、そのピニオン16に噛合可能なトレイラック18がトレイ1の裏面に前後進
a,bに沿って一体突設され、前記カムスライダ12に左右一対のガイドピン19が一体
突設されている。
【0006】
図7中、21はローダーシャーシ2の両側板2a間に架設した横桁22の中央部に一定
範囲内昇降可能に配置したクランパであって、ターンテーブル8とでディスクDをクラン
プする。図8中、23はローダーシャーシ2の両側板2aに一体突設したトレイ押さえ片
である。
【0007】
プレイモードでは、図6及び図7に実線で示すように、トラバースシャーシ5を上動c
させて水平姿勢にすることにより、トレイ1上のディスクDをターンテーブル8で持ち上
げ、該ディスクDをターンテーブル8とクランパ21とでクランプし、スピンドルモータ
9によりターンテーブル8を介してディスクDを高速回転させると共に、フィードモータ
15によりねじ軸機構15aを介して光ピックアップ10を往復移動させ、対物レンズO
LからディスクDにレーザ光を投射し、その反射光に基づいてディスクDに記録されてい
る情報を読み取る。
【0008】
トレイオープン時には、フィードモータ15によりねじ軸機構15aを介して光ピック
アップ10をディスクDの内周側に移動させ、ピニオン16を正転gさせることにより、
該ピニオン16に噛合するカムラック17を介してカムスライダ12を矢印f方向にスラ
イドさせ、これにより、カム機構13を介してトラバースシャーシ5を下動dさせ(図7
仮想線参照)、ターンテーブル8上のディスクDをトレイ1上に移し替える。
【0009】
その後、各ガイドピン19をトレイ1の傾斜面(図示せず)に係合させることにより、
該トレイ1を前進aさせてトレイラック18をピニオン16に噛合させ、該ピニオン16
の正転gにより、トレイラック18を介してトレイ1を前進aさせる(図6、図7仮想線
状態参照)。
【0010】
図6及び図7の実線で示すプレイモードで、スピンドルモータ9によりターンテーブル
8を介してディスクDを高速回転させたときに発生する振動がトラバースシャーシ5を介
して光ピックアップ10に伝達されることにより、その光ピックアップ10で読取誤差が
生じないようにするため、その振動を抑制する第1手段として弾性体6,7が用いられ、
その第2手段として制振機構25が用いられている。
【0011】
前記制振機構25は、図6及び図8に示すように、トラバースシャーシ5の一方のアー
ム部5bの外側面中央に一体突設されて該アーム部5bの長手方向とは直交する方向に沿
って延びる突起片26と、その突起片26に対向して棚枠3に形成したスリット間に切り
残された弾性変位可能なU字片27とからなっている。
【0012】
上記構成において、U字片27の先端部を突起片26に弾性的に押し付け、その押付力
でカムピン13bを縦溝14の内側面14aに押し付けることにより、そのU字片27と
縦溝14の内側面14aとでトラバースシャーシ5のレバーアーム5Bを挟み付ける。な
お、関連する技術として特許文献1に記載したものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−71552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記従来の構成では、U字片27の先端部をレバーアーム5Bのアーム部5bの外側面
中央に一体突設した突起片26に弾性的に押し付けることにより、トラバースシャーシ5
の振動を抑制するようになっており、そのU字片27がトラバースシャーシ5の最も振動
しやすいレバー本体5aから離れているから、振動抑制機能を効果的に発揮させることが
できなかった。
【0015】
また、U字片27の先端部に突起片26が常時接触されているから、該U字片27に疲
労が蓄積されて弾性が低下するおそれがある。
【0016】
本発明は、上記従来の欠点に基づいて、ディスク高速回転時の振動を長期にわたって確
実に抑制することができるようにしたディスク装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、ターンテーブル付きスピンドルモ
ータ及びディスクの半径方向に移動可能な光ピックアップを搭載したシャーシ本体と合成
樹脂製レバーアームとからなるトラバースシャーシがローダーシャーシ内に上下動可能に
配置され、前記レバーアームが、レバー本体と、該レバー本体の両端から延びてローダー
シャーシに回動可能に枢支された左右一対のアーム部とを有し、前記ローダーシャーシの
前部にスライド可能に配置したカムスライダと前記レバーアームとがカム機構により連動
連結され、レバーアームの振動を抑制する制振機構が設けられており、プレイモードで、
スピンドルモータによりターンテーブルを介してディスクを高速回転させ、該ディスクに
記録されている情報を光ピックアップにより読み取り、レバーアームの振動を制振機構に
より抑制するようにしたディスク装置において、前記制振機構が、前記レバー本体の一端
部を切欠いて形成した凹部の内面に一体突設した弾性変位可能な抑え片を有しており、該
抑え片がU字形に形成されてその先端部がローダーシャーシに弾性的に押し付けられてい
ることを特徴としている。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記抑え片の中央弯曲部か
ら先端部かけての中間部が先すぼまり状に形成されていることを特徴としている。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記トラバースシ
ャーシの下動状態で抑え片の先端部に対向してローダーシャーシに凹段部が形成されてい
ることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、トラバースシャーシを構成するレバー本体の一端部に
設けた弾性変位可能な抑え片の先端部をローダーシャーシに弾性的に押し付けており、そ
の抑え片がトラバースシャーシの最も振動しやすいレバー本体に設けられているから、デ
ィスク高速回転時の振動を確実に抑制することができる。
【0021】
抑え片がU字形でコンパクトに形成されているから、その抑え片をローダーシャーシ内
の限られたスペース内に効率よく収納することができる。
【0022】
抑え片がU字形に形成されて、そのばね長が大きく設定されているから、該抑え片にか
かる応力が分散され、例えば倉庫に保管している状態で室温が高温(例えば60°C)に
なっても、その抑え片が変形されないようにすることができる。
【0023】
請求項2に記載の発明によれば、抑え片の中間部が先すぼまり状に形成されているから
、該中間部を適度に撓ませて該抑え片の先端部をローダーシャーシに弾性的に押し付ける
ことができる。
【0024】
また、抑え片の中央弯曲部の横断面が大きく設定されているので、その中央弯曲部に応
力が集中的にかかって劣化するのを阻止することができる。
【0025】
請求項3に記載の発明によれば、トラバースシャーシを下動させることにより、抑え片
の先端部が凹段部に対向して、その先端部にかかっていた負荷が解消または軽減されるか
ら、抑え片の弾性を長期にわたって適正に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の一形態であるディスク装置の平面図である。
【図2】図1のA−A矢視図である。
【図3】同レバーアームの斜視図である。
【図4】(a)は同要部の拡大斜視図、(b)はB−B矢視図、(c)はC−C矢視図である。
【図5】(a)は同要部の拡大水平断面図、(b)は同要部の一部切欠き正面図である。
【図6】従来例を示す平面図である。
【図7】同縦断面図である。
【図8】図6のD−D矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1〜図5は本発明の実施の一形態であるディスク装置を示すものであり、これはBl
u−ray Disc式のレコーダ(またはプレーヤ)であって、トラバースシャーシ5
を構成するレバーアーム5Bのレバー本体5aに制振機構25が設けられており、該制振
機構25は、レバー本体5aの一端部を切欠いて形成した凹部29内に配置した抑え片3
0を有している。上記以外の構成は図6〜図8に示す構成とほぼ同じであるから、同一部
分に同一符号を付してその説明を省略する
【0028】
図4及び図5に示すように、前記抑え片30は、凹部29の左右方向e,fに沿う内面
29aから前進a方向に延ばされた基端部30aと、該基端部30aからU字状に折り曲
げられた中央弯曲部30bと、該中央弯曲部30bから後進b方向に延ばされた中間部3
0cと、該中間部30cにつながって上下方向に延びる先端部30dとにより、平面視U
字状に形成されている。
【0029】
図4(b)に示すように、抑え片30の基端部30a及び中央弯曲部30bは、横断面
矩形状の肉厚に形成され,特に、応力が集中する中央弯曲部30bの幅を基端部30aよ
りも大きくして充分な強度を持たせている。
【0030】
図4(c)に示すように、抑え片30の中間部30cは、横断面矩形状で、中央弯曲部
30bよりも横断面が小さくなるように設定して、先すぼまり状にされることにより、弾
性変位可能に形成されている。また、図5(a)に示すように、中間部30cの中央から
先端側を所定の傾斜角度α(例えば2°〜5°)で外向きに傾斜させることにより、先端
部30dが中央弯曲部30bよりも外側に位置決めされている。
【0031】
図4(a)に示すように、抑え片30の先端部30dは、角柱状であって、中間部30
cよりも上方に突出する突出部の外側角部を面取りして傾斜状ガイド面31が形成されて
いる。
【0032】
図2及び図5(b)に示すように、トラバースシャーシ5の下動d状態(図7仮想線参
照)で、抑え片30の先端部30dに対向してローダーシャーシ2の棚枠3の内側面3a
に凹段部32が形成されている。
【0033】
プレイモードでは、図1及び図2(a)に示すように、トラバースシャーシ5を上動c
させて水平姿勢にすることにより、図5(b)に実線で示すように、抑え片30の中間部
30cを撓ませて該抑え片30の先端部30dを棚枠3の内側面3aに弾性的に押し付け
ており、その押付力でカムピン13bを縦溝14の内側面14aに押し付け、その抑え片
30と縦溝14の内側面14aとでトラバースシャーシ5のレバーアーム5Bを挟み付け
ている。
【0034】
この状態で、スピンドルモータ9によりターンテーブル8を介してディスクDを高速回
転させると、その高速回転により発生する振動が、第1手段である弾性体6,7で抑制さ
れると共に、第2手段である抑え片30の弾性変位により抑制される。
【0035】
上記構成によれば、抑え片30がトラバースシャーシ5の最も振動しやすいレバー本体
5aに設けられているから、ディスクDの高速回転時の振動を確実に抑制することができ
る。
【0036】
抑え片30がU字形でコンパクトに形成されているから、その抑え片30をローダーシ
ャーシ2内の限られたスペース内に効率よく収納することができる。
【0037】
図5(a)に示すように、抑え片30がU字形に形成されて、そのばね長Lが大きく設
定されているから、該抑え片30にかかる応力が分散され、例えば倉庫に保管している状
態で室温が高温(例えば60°C)になっても、その抑え片30が変形されないようにす
ることができる。
【0038】
抑え片30の中間部30cが先すぼまり状に形成されているから、該中間部30cを適
度に撓ませて該抑え片30の先端部30dを棚枠3の内側面3aに弾性的に押し付けるこ
とができる。
【0039】
図4(b)に示すように、抑え片30の中央弯曲部30bの横断面が大きく設定されて
いるので、その中央弯曲部30bに応力が集中的にかかって劣化するのを阻止することが
できる。
【0040】
トレイオープン時に、トラバースシャーシ5を下動dさせることにより、図5(b)に
仮想線で示すように、抑え片30の先端部30dが凹段部32に対向して、該凹段部32
の内側面32aから先端部30dが離間されたり押し付けが小さくなって、その先端部3
0dにかかっていた負荷が解消または軽減されるから、抑え片30の弾性を長期にわたっ
て適正に維持することができる。
【符号の説明】
【0041】
2 ローダーシャーシ
5 トラバースシャーシ
5A トラバースシャーシのシャーシ本体
5B トラバースシャーシのレバーアーム
5a レバーアームのレバー本体
5b レバーアームのアーム部
8 ターンテーブル
9 スピンドルモータ
10 光ピックアップ
25 制振機構
29 凹部
29a 凹部の内面
30 抑え片
30b 抑え片の中央弯曲部
30c 抑え片の中間部
30d 抑え片の先端部
32 凹段部
32a 凹段部の内側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターンテーブル付きスピンドルモータ及びディスクの半径方向に移動可能な光ピックア
ップを搭載したシャーシ本体と合成樹脂製レバーアームとからなるトラバースシャーシが
ローダーシャーシ内に上下動可能に配置され、前記レバーアームが、レバー本体と、該レ
バー本体の両端から延びてローダーシャーシに回動可能に枢支された左右一対のアーム部
とを有し、前記ローダーシャーシの前部にスライド可能に配置したカムスライダと前記レ
バーアームとがカム機構により連動連結され、レバーアームの振動を抑制する制振機構が
設けられており、プレイモードで、スピンドルモータによりターンテーブルを介してディ
スクを高速回転させ、該ディスクに記録されている情報を光ピックアップにより読み取り
、レバーアームの振動を制振機構により抑制するようにしたディスク装置において、前記
制振機構が、前記レバー本体の一端部を切欠いて形成した凹部の内面に一体突設した弾性
変位可能な抑え片を有しており、該抑え片がU字形に形成されてその先端部がローダーシ
ャーシに弾性的に押し付けられていることを特徴とするディスク装置。
【請求項2】
前記抑え片の中央弯曲部から先端部かけての中間部が先すぼまり状に形成されているこ
とを特徴とする請求項1に記載のディスク装置。
【請求項3】
前記トラバースシャーシの下動状態で抑え片の先端部に対向してローダーシャーシに凹
段部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−99187(P2012−99187A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246722(P2010−246722)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】