説明

ディスプレイ用フィルター及びその製造方法

【課題】低価格化を図るために、導電層を被覆するように防汚機能を有するハードコート性表面層が配置されたディスプレイ用フィルターにおいて、透明性を改良することにある。
【解決手段】基材上に、導電性メッシュを有する導電層と、前記導電層を被覆するハードコート性表面層とを少なくとも有するディスプレイ用フィルターであって、前記ハードコート性表面層はシリコーンアクリレート化合物を含有し、かつ前記ハードコート性表面層で被覆されていない導電層を有する基材のヘイズ値に対して前記ハードコート性表面層で被覆されている状態のヘイズ値が0.1%以上小さいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性メッシュを有する導電層をハードコート性表面層によって被覆されたディスプレイ用フィルター及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(以下、LCD)、プラズマディスプレイ(以下、PDP)などのディスプレイは、明瞭なフルカラー表示が可能な表示装置である。ディスプレイには、通常、外光の反射の防止、ディスプレイから発生する電磁波の遮蔽、ディスプレイの保護などを目的とした前面フィルター(以降、単にフィルターと称す)がディスプレイの視認側に配置される。特にPDPはその構造や動作原理上、強度な電磁波が発生するため、人体や他の機器に与える影響が懸念され、日本ではVCCI(情報処理装置等電波障害自主規制協議会)、米国ではFCC(米国連邦通信委員会)等の基準値内に抑えることが規格化されている。
【0003】
一方、プラズマディスプレイの低価格化に伴って、フィルターも年々低価格化しており、コストダウンの要求も厳しくなっている。一般的なフィルターは、プラスチックフィルム等の基材上に、ハードコート層、反射防止層、防眩層等の機能層を有する光学機能性フィルムと、プラスチックフィルム等の基材上に導電層(電磁波遮蔽層)が形成された電磁波遮蔽フィルムとを接着層を介して積層して形成されるが、この2枚の基材からなるフィルターに対して、1枚のみの基材で構成することによって低価格化が可能となる。
【0004】
1枚のみの基材からなるフィルターの1つの構成として、基材上に形成された導電性メッシュからなる導電層を被覆するようにハードコート層や反射防止層等の機能層を配置する態様が挙げられる。導電性メッシュは、スパッタや真空蒸着で形成された金属薄膜に比べて、低抵抗の導電層を比較的低コストで得られるということから好ましく用いられている。また、上記構成の1枚基材フィルターの製造において、生産効率の観点から導電性メッシュ上に機能層を塗工形成することが好ましく、更に、原材料コスト及び生産効率の観点から機能層を単一層とすることが好ましい。かかる単一機能層としては、防汚機能(拭き取り性)、反射防止機能、あるいは防眩機能を付与したハードコート層が挙げられる。
【0005】
導電性メッシュからなる導電層を硬化性皮膜で被覆したフィルターが知られている。例えば、導電性メッシュ上にハードコート、防眩性層あるいは反射防止層等の硬化層が直接に配置された透明導電性ハードコートフィルムが特許文献1に記載されており、また、導電性メッシュを硬化塗膜で被覆した電磁波遮蔽部材が特許文献2に記載されている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献には、防汚性(拭き取り性)を付与するためにシリコーンアクリレート化合物を含有するハードコート性表面層で導電性メッシュを被覆することは開示されていない。
【0007】
一方、シリコーンアクリレートを含むハードコートフィルムとして、透明基材の少なくとも片面に紫外線硬化型アクリレート樹脂及び紫外線硬化型シリコーン樹脂からなるハードコートフィルムなどが提案されている(特許文献3〜5)。しかしながら、これらの特許文献には導電性メッシュを被覆するようにハードコート層を配置することは記載されてなく、また、これらの技術を単に適用しても、本発明が目的とする防汚性を有し、かつ透明性の高いディスプレイ用フィルターを得ることはできない。
【特許文献1】特開2007−140282号公報
【特許文献2】特開2006−210572号公報
【特許文献3】特開2003−034761号公報
【特許文献4】特開2004−182765号公報
【特許文献5】特開2005−254470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、上記従来技術の問題点を鑑み、低価格化を図るために、導電層を被覆するように防汚機能を有するハードコート性表面層が配置されたディスプレイ用フィルターにおいて、透明性を改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、以下(1)、(2)の発明によって基本的に達成された。
(1)基材上に、導電性メッシュを有する導電層と、前記導電層を被覆するハードコート性表面層とを少なくとも有するディスプレイ用フィルターであって、
前記ハードコート性表面層はシリコーンアクリレート化合物を含有し、かつ前記ハードコート性表面層で被覆されていない導電層を有する基材のヘイズ値に対して、前記ハードコート性表面層で被覆されている状態のヘイズ値が0.1%以上小さいことを特徴とする、ディスプレイ用フィルター。
(2)基材上に設けられた導電性メッシュを有する導電層上に、シリコーンアクリレート化合物を含有するハードコート性表面層を塗工して、導電層を被覆する、ディスプレイ用フィルターの製造方法であって、
ハードコート性表面層の塗工液100質量%中における不揮発分濃度が45質量%以上であることを特徴とする、ディスプレイ用フィルターの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、防汚性と透明性に優れ、かつ低価格を実現したディスプレイ用フィルターを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のディスプレイ用フィルターは、基材上に導電性メッシュを有する導電層と導電層を被覆するハードコート性表面層とを少なくとも有する。本発明にかかるハードコート性表面層(以降、単にハードコート層という)は、ディスプレイ用フィルターをディスプレイに装着したときに視認側(鑑賞者側)の最表面の層となるように配置される。
【0012】
本発明のハードコート層は、単一層でハードコート機能と防汚機能(例えば、付着した油脂物等を容易に拭き取ることができる機能)を有する。ハードコート機能は、例えば、JIS K5600−5−4(1999年)で定義される鉛筆硬度で規定することができ、本発明のハードコート層は上記鉛筆硬度が、1H以上が好ましく、2H以上がより好ましい。上限は9H程度である。
【0013】
本発明のハードコート層は、上記した防汚機能を付与するためにシリコーンアクリレート化合物を含有する。かかるシリコーンアクリレート化合物としては、公知のものが使用できるが、好ましくは有機変性シリコーンアクリレートである。有機変性シリコーンアクリレートとしては、ジメチルポリシロキサンの両末端や側鎖のメチル基を有機官能基に置換した有機変性ポリシロキサンとアクリル酸との反応生成物が挙げられる。有機変性ポリシロキサンとしては、例えば、アミノ変性、アルキル変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、アルコール変性、フッ素変性、アルキルアラルキルポリエーテル変性、エポキシ・ポリエーテル変性またはポリエーテル変性したシリコーンが挙げられる。
【0014】
有機変性ポリシロキサンを用いることで樹脂との相溶性をコントロールすることができる。
【0015】
有機変性ポリシロキサンとアクリル酸の反応生成物であるシリコーンアクリレート化合物とは、1分子中の側鎖、主鎖末端、あるいはその両方に2個以上のアクリレート系の重合性不飽和基を有するものである。該アクリレート系の重合性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、又は(メタ)アクリロイルオキシ基のいずれか1種以上のものである。但し、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基、メタアクリロイル基の意味で用いる。なお、シリコーンアクリレート化合物の平均分子量としては、通常1000〜100000である。シリコーンアクリレート化合物の(メタ)アクリロイル基を反応して架橋構造とすることにより、熱及び酸化に対する安定性に優れ、汚染されにくく、硬くて耐擦傷性に優れた塗膜を得ることができる
シリコーンアクリレート化合物の例としては、例えば以下の例の化合物があげられる。
(1)特開昭55−104320号公報に開示されるような、分子中にSi−Cl基を有するポリオルガノシロキサンとペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとを反応させてなるもの、又はポリオルガノクロルシロキサンとジアルキルアミンを反応させ、反応物をペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと反応させてなるものがある。
(2)特開昭62−292867号公報に開示されるような、末端変性ポリオルガノシロキサン(下記化1または化2)と、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート・モノメタアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートを反応させ、ポリオルガノシロキサンの末端Si−OR基とペンタエリスリトールの多官能(メタ)アクリレートの分子中のC−OH基との間で脱アルコール反応を行わせて生成したものがある。
【0016】
【化1】

【0017】
【化2】

【0018】
(化1、化2中、Rは互いに同一又は相異なる置換若しくは非置換のアルキル基又はアリール基、Rは互いに同一又は相異なるアルキル基、Qはアルキレン基又は酸素原子、nは4〜100の数を表す。)
(3)特開2005−263848号公報に開示されるような、有機変性ポリシロキサンの側鎖にアクリル酸を導入した有機変性シリコーンアクリレートであり、その具体的化合物を化3に示す。
【0019】
【化3】

【0020】
(化3中、Xはポリエーテル基またはアルキル基を表し、mは1〜200、nは1〜20の数である。)
本発明に用いることができるシリコーンアクリレート化合物の具体例としては、市販のテゴケミーサービスGmbH社製TEGORad2100、TEGORad2500の他、信越化学社製X−22−4015の様な−OH基を有する有機変性シリコーンとアクリル酸を酸触媒下でエステル化させたもの、信越化学社製KBM402, KBM403の様なエポキシシラン等の有機変性シラン化合物とアクリル酸を反応させたものなどが挙げられる。他に、信越シリコーン社製のX−22−164、X−22−2445、X−22−1602等、チッソ社製FM−7711、FM−7721等、東レダウコーニング社製AY42−150、AY42−151等が挙げられる。
【0021】
本発明のハードコート層における上記シリコーンアクリレート化合物の含有量は、後述するフッ化アクリレート化合物、ウレタンアクリレート化合物、多官能アクリレートモノマー等の重合性化合物総量(シリコーンアクリレート化合物も含む)100質量%に対して、0.01〜20質量%の範囲が好ましく、0.1〜10質量%の範囲が好ましい。
【0022】
本発明のハードコート層は、更にフッ化アクリレート化合物を含有するのが好ましい。フッ化アクリレート化合物としては、特に限定されないが、例えば、フッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、具体的にはトリフルオロエチルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート等のメタクリル酸ペルフルオロアルキル、トリフルオロエチルアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート等のアクリル酸ペルフルオロアルキル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上で用いられるが、これらのうち、トリフルオロエチルメタクリレート、トリフルオロエチルアクリレートが好ましく用いられる。フッ化アクリレート化合物をシリコーンアクリレート化合物と併用する事で、更に防汚性を向上させることができる。この更なる防汚性の向上は、シリコーンアクリレート化合物が持つフレキシブルなポリシロキサン鎖の間にフッ化アクリレート化合物が入り込み、塗膜表面に共に浮き出る事で防汚性が向上するものと考えられる。
【0023】
本発明のハードコート層における上記フッ化アクリレート化合物の含有量は、重合性化合物総量100質量%に対して1〜50質量%の範囲が好ましく、5〜40質量%の範囲がより好ましい。
【0024】
ハードコート層は、各種の樹脂を含有することができる。かかる樹脂としてはアクリル系化合物、ウレタン系化合物、メラミン系化合物、エポキシ系化合物、有機シリケート化合物などで構成することができる。これらの中でも活性エネルギー線硬化型のアクリル系化合物、または熱硬化型のアクリル系化合物からなるものが好ましい。本発明においては、活性エネルギー線硬化型のウレタンアクリレート化合物が好ましく、ウレタンアクリレート化合物の中でも特にウレタンアクリレートオリゴマーを用いるのが好ましい。
【0025】
ウレタンアクリレートオリゴマーは、例えばポリオール化合物とポリイソシアネート化合物の反応によって得られたウレタンオリゴマーにアクリレート化合物を反応させることによって得られる。
【0026】
ポリオール化合物の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリシクロデカンジメチロール、シクロヘキサンジメチロール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1、 3-プロパンジオール、1、 4-ブタンジオール、1、 3-ブタンジオール、2、 3-ブタンジオール、1、 5-ペンタンジオール、2、 4-ペンタンジオール、1、 2-ヘキサンジオール、1、 6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1、 9-ノナンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAポリエトキシグリコール、ポリカーボネートポリオール、ペンタエリスルトール、ソルビトール、スクロース、クオドロールなポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、水添ダイマージオールペンタエリトリトール等;トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスルトール、ソルビトール、スクロース、クオドロール等の3価以上の水酸基を含有する化合物を、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、ブチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの環状エーテル化合物で変性することにより得られるポリエーテルポリオール;カプロラクトンで変性することにより得られるポリカプロラクトンポリオール;2塩基酸とジオールからなるポリエステルで変性することにより得られるポリエステルポリオール;及びこれらの二種以上の混合物を挙げることができる。
【0027】
より具体的には、EO変性トリメチロールプロパン、PO変性トリメチロールプロパン、テトラヒドロフラン変性トリメチロールプロパン、カプロラクトン変性トリメチロールプロパン、EO変性グリセリン、PO変性グリセリン、テトラヒドロフラン変性グリセリン、カプロラクトン変性グリセリン、EO変性ペンタエリスリトール、PO変性ペンタエリスリトール、テトラヒドロフラン変性ペンタエリスリトール、カプロラクトン変性ペンタエリスリトール、EO変性ソルビトール、PO変性ソルビトール、カプロラクトン変性ソルビトール、EO変性スクロース、PO変性スクロース、EO変性スクロース、EO変性クオドール等及びこれらの二種以上の混合物を挙げることができる。
【0028】
ポリイソシアネート化合物の具体例としては、2、 4-トリレンジイソシアネート、2、 6-トリレンジイソシアネート、4、 4-ジフェニルメタンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ビフェニレンジイソシアネート、1、 5-ナフチレンジイソシアネート、o-トリジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4、 4’-メチレンビスシクロヘキシルイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1、 3-(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、およびこれらのビュレット化物、ヌレート化物等の重縮合物、及びこれらの二種以上の混合物を挙げることができる。特に好ましくは、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート化物、イソホロンジイソシアネートのヌレート化物等が挙げられ、より好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが挙げられる。
【0029】
ウレタンオリゴマーのイソシアネート基をアクリレート変性するために用いるアクリレート化合物としては、アクリレート基もしくはメタクリレート基と、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、もしくはアミド基等のイソシアネート基と反応しうる官能基とを有する化合物が挙げられる。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性物、グリシドールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、特にヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート化合物が好ましく用いられる。
【0030】
ウレタンアクリレート化合物は市販品を使用することがでる。例えば、共栄社化学社製のAT−600、UA−101l、UF−8001、UF−8003等、日本合成化学社製のUV7550B、UV−7600B等、新中村化学社製のU−2PPA、UA−NDP等、ダイセルユーシービー社製のEbecryl−270、Ebecryl−284、Ebecryl−264、Ebecryl−9260等、共栄社化学社製のUA−306H、UA−306T、UA−306l等、日本合成化学社製のUV−1700B、UV−6300B、UV−7600B、UV−7605B、UV−7640B、UV−7650B等、新中村化学社製のU−4HA、U−6HA、UA−100H、U−6LPA、U−15HA、UA−32P、U−324A等、ダイセルユーシービー社製のEbecryl−1290、Ebecryl−1290K、Ebecryl−5129等、根上工業社製のUN−3220HA、UN−3220HB、UN−3220HC、UN−3220HS等を挙げることができる。
【0031】
上述したウレタンアクリレートオリゴマーは、ハードコート層の重合収縮を緩和し、カールやクラックの発生を抑制するのに有効である。本発明のハードコート層は、導電性メッシュを被覆するように設けられるので、その厚みは、平滑な基材に塗工形成される一般的なハードコート層の厚みに比べて大きくする必要がある。ハードコート層の厚みを大きくすることによって重合収縮やクラックの発生が起こりやすくなるが、上記したウレタンアクリレートオリゴマーを用いることによって重合収縮やクラックの発生を抑制することができる。
【0032】
本発明のハードコート層における上記ウレタンアクリレート化合物の含有量は、重合性化合物総量100質量%に対して5〜80質量%の範囲が好ましく、10〜70質量%の範囲が好ましい。
【0033】
本発明のハードコート層は、更に多官能アクリレートモノマーを含有することができる。ハードコート層中に多官能アクリレートモノマーを含有させることによって、ハードコート性が向上する。
【0034】
上記の多官能アクリレートモノマーとしては、1分子中に3個以上、より好ましくは4個以上、さらに好ましくは5個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するモノマーを挙げることができる。該モノマーの1分子中の(メタ)アクリロイルオキシ基は好ましくは10個以下である。
【0035】
かかるモノマーの具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどが挙げられる。
【0036】
本発明のハードコート層における上記多官能アクリレートモノマーの含有量は、重合性化合物総量100質量%に対して0.5〜20質量%の範囲が好ましく、1〜10質量%の範囲が好ましい。
【0037】
本発明においてハードコート層は、導電性メッシュを有する導電層上に塗工されたハードコート層形成組成物を、硬化させることによって、導電層を被覆するように形成される。導電性メッシュを有する導電層上に塗工されたハードコート層形成組成物を硬化させる方法としては、例えば、活性エネルギー線を照射する方法や高温加熱法等を用いることができる。これらの方法を用いる場合には、ハードコート層形成組成物に、光重合開始剤または熱重合開始剤等を加えることが望ましい。
【0038】
光重合開始剤の具体的な例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォルメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物などを用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合せて用いてもよい。
【0039】
また、熱重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイドまたはジ−t−ブチルパーオキサイドなどのパーオキサイド化合物などを用いることができる。
【0040】
本発明のハードコート層における光重合開始剤または熱重合開始剤の使用量は、本発明のハードコート層における重合性化合物総量(シリコーンアクリレート化合物、フッ化アクリレート化合物、ウレタンアクリレート化合物、多官能アクリレートモノマー等の総量)100質量%に対して、0.01〜10質量%が適当である。電子線またはガンマ線を硬化手段とする場合には、必ずしも重合開始剤を添加する必要はない。また220℃以上の高温で熱硬化させる場合には、熱重合開始剤の添加は必ずしも必要ではない。
【0041】
本発明において、ハードコート層中には、本発明の効果が損なわれない範囲で、さらに各種の添加剤を必要に応じて配合することができる。例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの安定剤、界面活性剤、レベリング剤および帯電防止剤などを用いることができる。
【0042】
本発明で用いられる活性エネルギー線としては、紫外線、電子線および放射線(α線、β線、γ線など)などアクリル系のビニル基を重合させる電磁波が挙げられ、実用的には、紫外線が簡便であり好ましい。紫外線源としては、紫外線蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯などを用いることができる。また、活性線を照射するときに、低酸素濃度下で照射を行なうと、効率よく硬化させることができる。またさらに、電子線方式は、装置が高価で不活性気体下での操作が必要ではあるが、塗布層中に光重合開始剤や光増感剤などを含有させなくてもよい点で有利である。
本発明で用いられる熱硬化に必要な熱としては、スチームヒーター、電気ヒーター、赤外線ヒーターあるいは遠赤外線ヒーターなどを用いて温度を少なくとも140℃以上に加温された空気、不活性ガスを、スリットノズルを用いて基材、塗膜に吹きあてることにより与えられる熱が挙げられ、中でも200℃以上に加温された空気による熱が好ましく、さらに好ましくは200℃以上に加温された窒素による熱であることが、硬化速度が早いので好ましい。
【0043】
ハードコート層形成組成物には、更に、大気圧下沸点100〜180℃の溶媒と大気圧下沸点100℃未満の溶媒を混合して用いることが好ましい。大気圧下沸点100〜180℃の溶媒を含むことにより、シリコーンアクリレートの溶解性が良くなり、他の樹脂との相溶性が増し、塗液の塗布性が良くなり、表面が平坦な被膜を得ることができる。また、大気圧下沸点100℃未満の溶媒を含むことによって、被膜形成時に、溶媒が有効に揮発し、硬度の高い被膜を得ることができる。すなわち、表面が平坦で、かつ、硬度の高い被膜を得ることができる。
【0044】
大気圧下沸点100〜180℃の溶媒としては、具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のアセテート類、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類、ブタノール、イソブチルアルコール、ペンタノ−ル、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。これらは単独あるいは混合して用いてもかまわない。これらのうち、特に好ましい溶媒の例は、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジアセトンアルコール等である。
【0045】
大気圧下沸点100℃未満の溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール、メチルエチルケトン等があげられる。これらは単独あるいは混合して用いてもかまわない。
【0046】
ハードコート層の厚みは、後述する導電性メッシュを有する導電層の厚みより大きいのが好ましく、導電層の厚み100%に対してハードコート層の厚みは110%以上が好ましく、130%以上がより好ましく、特に150%以上が好ましい。ハードコート層の厚みの上限は、導電層の厚み100%に対して500%程度である。導電層の厚みに対してハードコート層の厚みを大きくすることによって、導電性メッシュの凹凸面を十分に埋めて均一化することができる。
【0047】
ハードコート層の厚みとしては、1〜20μmの範囲が好ましく、3〜15μmの範囲がより好ましく、特に5〜10μmの範囲が好ましい。ハードコート層の厚みが20μmを超えて大きくなると、ハードコート層形成組成物を含有する塗工液の塗工速度、乾燥あるいは硬化速度が低下することによる生産効率ダウン、及び原材料費の増大によって、本発明の所期の目的である低価格化を実現するのが難しくなる。また、ハードコート層の厚みが厚くなると、折り曲げなどの応力により硬化膜にクラックが入りやすくなるという不都合が生じる場合がある。ハードコート層の厚みが1μmより小さくなると、均一な塗工面を得るのが難しくなり、導電性メッシュを有する導電層を被覆する事ができず、透明性に欠けることとなる。またハードコート層としての本来の機能を発揮できなくなる場合がある。
【0048】
本発明のハードコート層は、導電層を被覆するため、前述したように塗工形成するのが好ましく、塗布方式(塗工方式)としては、ディップコーティング法、スピンコート法、スリットダイコート法、グラビアコート法、リーバースコート法、ロッドコート法、バーコート法、スプレー法、ロールコーティング法等の公知のウェットコーティング法を用いることができる。
【0049】
本発明は、ハードコート性表面層で被覆されていない導電層を有する基材のヘイズ値(A)に対し、ハードコート性表面層で被覆されている状態のヘイズ値(B)が、0.1%以上小さいことが特徴である。つまり本発明は、導電層上にハードコート層を塗工などすることによって導電層を被覆する前の、導電層を有する基材のヘイズ値(A)に対して、ハードコート層を塗工などすることによって導電層を被覆した後のヘイズ値(B)が、0.1%以上小さいことが特徴である。本発明においては、ヘイズ値の差A−B≧0.1%であり、好ましくは上記ヘイズ値の差A−B≧0.2%であり、より好ましくはヘイズ値の差A−B≧0.3%である。なお、ヘイズ値の差A−Bの上限は4%程度である。上記ヘイズ値の差(A−B)が0.1%以上小さくなることによってディスプレイ用フィルターの透明化が図られる。ここで、ヘイズ値は、JIS K 7136(2000年)に従って測定することができる。
【0050】
後述するように、本発明の導電層には各種の導電性メッシュを用いることができるが、導電性メッシュの種類(製造方法)や導電性メッシュの線幅、ピッチ、厚み等の仕様によって、ヘイズ値(A)は変わってくる。本発明において、基材上に導電性メッシュを有する導電層のみが形成された状態でのヘイズ値(A)としては、15%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、特に5%以下が好ましい。下限のヘイズ値(A)は1%程度である。ここで、基材上に導電性メッシュを有する導電層のみが形成された状態とは、ディスプレイ用フィルターに必要に応じて設けられる他の機能層、例えば、ハードコート層、反射防止層、防眩層、近赤外線遮蔽層、色調調整層、透過率調整層、接着層が設けられていない状態を意味する。但し、基材及び導電層が上記機能層を兼ねる場合は、上記の基材上に導電性メッシュを有する導電層のみが形成された状態に包含される。
【0051】
本発明において、ハードコート層によって導電層を被覆する前の、導電層を有する基材のヘイズ値(A)は、基材上に導電性メッシュを有する導電層のみが形成された状態のヘイズ値であってもよいし、あるいは更に上記した他の機能層が設けられた状態のヘイズ値であってもよい。本発明においては、導電層上にハードコート層を被覆することによってヘイズ値が低下することが重要である。
【0052】
上記ヘイズ値(A)が5%以下の場合は、ヘイズ値の差(A−B)は0.2%以上が好ましく、3%以上が好ましい。また、上記ヘイズ値(A)が5%を越える場合は、ヘイズ値の差(A−B)は2%以上が好ましく、2.5%以上が好ましい。
【0053】
一般に、基材上に導電性メッシュを有する導電層が形成された状態でのヘイズに対して、導電性メッシュを硬化性樹脂等で被覆して平滑化することによってヘイズ値が低下することは知られている。しかしながら、シリコーンアクリレート化合物を含有するハードコート層を導電性メッシュ上に塗工等で被覆するとヘイズ値は高くなり、透明性が低下することが新たに分かった。
【0054】
ディスプレイ用フィルター等の光学フィルターの分野では、プラスチックフィルム等の平滑な基材にハードコート層は塗工形成されるが、この場合、シリコーンアクリレート化合物を含有するハードコート層であっても透明な塗膜が得られる。しかし、これらの従来技術を単に適用しても、本発明が目的とする透明なディスプレイ用フィルターは得られなかった。
【0055】
そこで、透明化に向けて鋭意検討した結果、透明化の1つの手段として、シリコーンアクリレート化合物を含有するハードコート層の塗工液中の不揮発分濃度を従来に比べて高くすることによって、透明化が図られることを見いだした。
【0056】
即ち、ハードコート層塗工液100質量%中の不揮発分濃度を45質量%以上とすることによって透明化が実現した。上記不揮発分濃度は、好ましくは50質量%以上である。また、ハードコート層塗工液100質量%中の不揮発分濃度の上限は100質量%であり、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下である。ここで、不揮発分濃度とは、上述した溶媒を除く実質成分の塗工液中の濃度である。つまり、溶媒も含めたハードコート層塗工液の全成分中の重合性化合物、重合開始剤、各種添加剤等の総量である。
【0057】
なお、上記した不揮発分濃度が100質量%のハードコート層塗工液は、常温で液状のシリコーンアクリレート化合物、多官能アクリレート化合物等を用いることによって調製することができる。
【0058】
本発明のディスプレイ用フィルターは、ハードコート層が最表面となるが、このハードコート層表面の中心線平均粗さRa値が、100nm以下であることが好ましい。ハードコート層表面のRa値を100nm以下にすることによって透明性がより高くなる。ハードコート層表面のRa値の下限は10nm程度である。ここで、中心線平均粗さRa値は、JIS B0601(1982年)の規定に従って測定することができる。
【0059】
本発明における導電層は、ディスプレイから発生する電磁波を遮蔽するための層であり、導電性メッシュを有する。導電層の面抵抗値は、低い方が好ましく、10Ω/□以下が好ましく、5Ω/□以下がより好ましく、特に3Ω/□以下が好ましい。面抵抗の下限値は特に限定されないが0.01Ω/□程度である。導電層の面抵抗値は、4端子法により測定することができる。
【0060】
導電性メッシュは、スパッタ法や真空蒸着法等によって形成された金属薄膜あるいは導電性フィラーと樹脂バインダーからなる導電層に比べて、低い面抵抗値が得られるという利点がある。特に、導電性フィラーと樹脂バインダーからなる導電層では本発明が所望する面抵抗値が得られず、またスパッタ法や真空蒸着法等によって金属薄膜を形成するためには大がかりな装置が必要であり、高い生産性が得られないという問題がある。
【0061】
また導電層は、導電層を被覆するハードコート層との密着性(接着力)の観点からも、導電性メッシュが好ましい。本発明においては、導電層上にハードコート層を塗工形成するのが生産性の観点から好ましいが、スパッタ法や真空蒸着法等によって形成された金属薄膜の上に組成の異なるハードコート層を塗工形成した場合、密着性が不十分となりハードコート層が剥離することがある。
【0062】
これに対して導電性メッシュは、上記した10Ω/□以下の面抵抗値が容易に得られ、また導電性メッシュの開口部を通してハードコート層と基材であるプラスチックフィルムとが接するので、ハードコート層と基材のプラスチックフィルムとの密着性も十分に確保することができる。導電性メッシュの場合は、ディスプレイ用フィルターの透過率を低下させないために70%以上の開口率になるように設計するのが好ましく(ここで、導電性メッシュの開口率とは、導電性メッシュの投影面積における開口部分が占める面積割合を意味する)、従って導電性メッシュからなる導電層の上に塗工されるハードコート層と導電層との接触面積はわずかであり、上記のような密着性の問題は生じない。
【0063】
一方、ハードコート層の塗工性の観点から、導電性メッシュの厚みは小さい方が好ましく、本発明においては、導電性メッシュの厚みは8μm以下が好ましく、6μm以下がより好ましい。導電性メッシュの厚みが8μmを超えて大きくなると、導電層表面の凹凸が大きくなり平滑性が低下するので、ハードコート層の塗布性が悪化する傾向となる。また導電性メッシュの厚みの下限は電磁波遮蔽性能の観点から0.2μm以上が好ましく、0.3μm以上がより好ましい。
【0064】
メッシュの線幅及び線間隔(ピッチ)は、開口率が70%以上となるように設計されるが、線幅としては5〜40μmが好ましく、線間隔は100〜500μmの範囲が好ましい。
【0065】
また、導電性メッシュからなる導電層は、基材であるプラスチックフィルム上に接着層を介さずに形成するのが好ましい。ここで接着層は、粘着材あるいは接着材で構成される層を意味する。導電層と基材であるプラスチックフィルムとの間に接着層が存在すると導電層面の平滑性が更に低下し、ハードコート層の塗布性を悪化させる。また更に、基材であるプラスチックフィルム上に接着層を介さずに直接に導電性メッシュを形成することによって、塗工形成された機能層の大部分はプラスチックと接触するので、機能層として上述したような樹脂を含むハードコート層を用いることによって、基材であるプラスチックフィルムとハードコート層との密着性が向上する。基材であるプラスチックフィルムとハードコート層との密着性を向上させるために、下引き層(プライマー層)を有するプラスチックフィルムを基材として用いるのが好ましい。
【0066】
上記観点から本発明の導電層に好適な導電性メッシュの形成方法として、1)金属薄膜をエッチング加工する方法、2)印刷パターン上にメッキする方法、3)感光性銀塩を用いる方法、4)印刷パターン上に金属膜積層後に現像する方法、及び5)金属薄膜をレーザーアブレーションする方法が挙げられる。以下にそれぞれの方法を詳細に説明する。
【0067】
1)金属薄膜をエッチング加工する方法は、基材であるプラスチックフィルム上に粘着材あるいは接着材からなる接着層を介さずに金属薄膜を形成し、この金属薄膜をフォトリソグラフ法あるいはスクリーン印刷法等を利用してエッチングレジストパターンを作製した後、金属薄膜をエッチングする方法である。金属薄膜の形成は、金属(例えば銀、金、パラジウム、銅、インジウム、スズ、あるいは銀とそれ以外の金属の合金など)をスパッタリング、イオンプレーティング、真空蒸着、あるいはメッキ等の公知の方法を用いて行うことができる。
【0068】
上記フォトリソグラフ法は、金属薄膜に紫外線等の照射により感光する感光層を設け、この感光層にフォトマスク等を用いて像様露光し、現像してレジスト像を形成し、次に、金属薄膜をエッチングして導電性メッシュを形成し、最後にレジストを剥離する方法である。
【0069】
上記スクリーン印刷法は、金属薄膜表面にエッチングレジストインクをパターン印刷し、硬化させた後エッチング処理により導電性メッシュを形成し、この後レジストを剥離する方法である。
【0070】
エッチングする方法としては、ケミカルエッチング法等がある。ケミカルエッチングとは、エッチングレジストで保護された導体部分以外の不要導体をエッチング液で溶解し、除去する方法である。エッチング液としては、塩化第二鉄水溶液、塩化第二銅水溶液、アルカリエッチング液等がある。
【0071】
2)印刷パターン上にメッキする方法は、基材であるプラスチックフィルムに触媒インク等でメッシュパターンを印刷し、これに金属メッキを施す方法である。この1つの方法として、パラジウムコロイド含有ペーストからなる触媒インクを用いてメッシュパターンに印刷し、これを無電解銅メッキ液中に浸漬して無電解銅メッキを施し、続いて電解銅メッキを施し、さらにNi−Sn合金の電解メッキを施して導電性メッシュパターンを形成する方法がある。
【0072】
3)感光性銀塩を用いる方法は、ハロゲン化銀などの銀塩乳剤層を基材であるプラスチックフィルムにコーティングし、フォトマスク露光あるいはレーザー露光の後、現像処理して銀のメッシュを形成する方法である。形成された銀メッシュは更に銅、ニッケル等の金属でメッキするのが好ましい。この方法は、WO2004/7810、特開2004−221564号、特開2006−12935号公報等に記載されており、参照することができる。
【0073】
4)印刷パターン上に金属膜形成後に現像する方法は、基材であるプラスチックフィルム上に剥離可能な樹脂でメッシュパターンとは逆パターンの印刷を施し、その印刷パターン上に金属薄膜を上記1)と同様の方法で形成した後、現像して樹脂とその上の金属膜を剥離して金属のメッシュパターンを形成する方法である。剥離可能な樹脂として、水、有機溶剤あるいはアルカリに可溶な樹脂やレジストを用いることができる。この方法は、特開2001−185834号、特開2001−332889号、特開2003−243881号、特開2006−140346号、特開2006−156642号公報等に記載されており、参照することができる。
【0074】
5)金属薄膜をレーザーアブレーションする方法は、上記1)と同様の方法で基材であるプラスチックフィルム上に形成された金属薄膜をレーザーアブレーション方式で金属メッシュを作製する方法である。
【0075】
レーザーアブレーションとは、レーザー光を吸収する固体表面へエネルギー密度の高いレーザー光を照射した場合、照射された部分の分子間の結合が切断され、蒸発することにより、照射された部分の固体表面が削られる現象である。この現象を利用することで固体表面を加工することが出来る。レーザー光は直進性、集光性が高い為、アブレーションに用いるレーザー光の波長の約3倍程度の微細な面積を選択的に加工することが可能であり、レーザーアブレーション法により高い加工精度を得ることが出来る。
【0076】
かかるアブレーションに用いるレーザーは金属が吸収する波長のあらゆるレーザーを用いることが出来る。例えばガスレーザー、半導体レーザー、エキシマレーザー、または半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーを用いることが出来る。また、これら固体レーザーと非線形光学結晶を組み合わせることにより得られる第二高調波光源(SHG)、第三高調波光源(THG)、第四高調波光源(FHG)を用いることが出来る。
【0077】
かかる固体レーザーの中でも、基材であるプラスチックフィルムを加工しないという観点から、波長が254nmから533nmの紫外線レーザーを用いることが好ましい。中でも好ましくはNd:YAG(ネオジウム:イットリウム・アルミニウム・ガーネット) などの固体レーザーのSHG(波長533nm)、さらに好ましくはNd:YAG などの固体レーザーのTHG(波長355nm)の紫外線レーザーを用いることが好ましい。
【0078】
かかるレーザーの発振方式としてはあらゆる方式のレーザーを用いることが出来るが,加工精度の点からパルスレーザーを用い,さらに望ましくはパルス幅がns以下のQスイッチ方式のパルスレーザーを用いることが好ましい。
【0079】
金属薄膜の上(視認側)に更に0.01〜0.1μmの金属酸化物層を形成した後に、金属薄膜と金属酸化物層とをレーザーアブレーションするのが好ましい。金属酸化物としては銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、銀、ステンレス、クロム、チタン、すずなどの金属酸化物を用いることができるが、価格や膜の安定性などの点から銅酸化物が好ましい。金属酸化物の形成方法は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレート法、化学蒸着法、無電解および電解めっき法等を用いることができる。
【0080】
上述した方法によって形成された導電性メッシュを有する導電層は、その厚みを6μm以下にすることが可能であり、ハードコート層を導電層上に直接に塗工形成することが可能となる。
【0081】
上記の導電性メッシュの形成方法の中でも、1)金属薄膜をエッチング加工する方法、2)印刷パターン上にメッキする方法、及び3)感光性銀塩を用いる方法が好ましく、特に1)及び2)の方法が好ましい。上記の1)、2)及び3)の方法で得られた導電性メッシュはヘイズ値が比較的低く、特に上記1)及び2)の方法で得られた導電性メッシュはヘイズ値が低いので好ましい。
【0082】
本発明に用いることができる導電性メッシュのメッシュパターンとしては、格子状パターン、5角形以上の多角形からなるパターン、円形パターン、あるいはこれらの複合パターンが挙げられ、更にランダムパターンも好ましく用いられる。
【0083】
本発明において、導電性メッシュは黒化処理するのが好ましい。黒化処理は、酸化処理や黒色印刷により行うことができる。例えば、特開平10−41682号、特開2000−9484号、2005−317703号公報等に記載の方法を用いることができる。黒化処理は、導電性メッシュの視認側の表面と両側面を行うのが好ましく、更に導電性メッシュの両面及び両側面を黒化処理するのが好ましい。
【0084】
また、ディスプレイ用フィルターを連続生産ラインで効率よく製造するためには、導電性メッシュは連続メッシュであることが好ましい。連続メッシュとは、例えば、長尺ロール状の基材に導電性メッシュを形成するときに、基材の長尺方向に導電性メッシュが連続的に途切れることなく形成された状態を言う。このような連続メッシュは、ハードコート層を塗工するのに好適である。
【0085】
本発明のディスプレイ用フィルターに用いられる基材としては、プラスチックフィルムが好ましい。かかるプラスチックフィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アートン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂及びセルロース樹脂が好ましく、特にポリエステル樹脂が好ましく用いられる。プラスチックフィルムの厚みとしては、50〜300μmの範囲が適当であるが、コストの観点及び前面フィルターの剛性を確保するという観点から90〜250μmの範囲が特に好ましい。本発明にかかるディスプレイ用フィルターは、基材として1枚のみのプラスチックフィルムを用いるのが好ましい。
【0086】
本発明に用いられるプラスチックフィルムは、導電層あるいは後述する近赤外線遮蔽層等との密着性(接着強度)を強化するための下引き層(プライマー層)を設けておくのが好ましい。
【0087】
本発明のディスプレイ用フィルターには、上述したように更に近赤外線遮蔽機能、色調調整機能、あるいは可視光透過率調整機能などの機能を有する他の機能層を設けることも好ましい。
【0088】
近赤外線遮蔽機能を有する近赤外線遮蔽層は、波長800〜1100nmの範囲における光線透過率の最大値が15%以下となるように調整するのが好ましい。近赤外線遮蔽機能は、基材(プラスチックフィルム)やハードコート層、あるいは後述する接着層に近赤外線吸収剤を混錬、分散することによって付与してもよいし、近赤外線遮蔽層を新たに設けてもよい。近赤外線遮蔽機能は、近赤外線吸収剤を用いることによって付与することができる。本発明においては、近赤外線吸収剤を樹脂バインダー中に分散もしくは溶解した塗料を塗布乾燥して形成した近赤外線遮蔽層を用いること、あるいはハードコート層や接着層に上記近赤外線吸収剤を含有させる態様が好ましく用いられる。近赤外線吸収剤としては、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物、ジチオール系化合物、ジイモニウム系化合物等の有機系近赤外線吸収剤、あるいは酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、硫化亜鉛、セシウム含有酸化タングステン等の無機系近赤外線吸収剤を用いることができる。
【0089】
上記した近赤外線遮蔽層を新たに設ける場合は、基材と導電性メッシュとの間、もしくは基材に対して導電性メッシュとは反対面に、基材に塗工形成して設けることができる。
【0090】
近赤外線遮蔽機能を基材より視認側に付与する場合は、耐光性に優れる無機系近赤外線吸収剤を用いるのが好ましい。
【0091】
色調調整機能を有する色調調整層は、ディスプレイから発光される特定波長の光を吸収して色純度や白色度を向上させるための機能である。特に赤色発光の色純度を低下させるオレンジ光を遮蔽するのが好ましく、波長580〜620nmの範囲に吸収極大を有する色素を含有させるのが好ましい。更に、白色度を向上させるために波長480〜500nmに吸収極大を有する色素を含有させるのが好ましい。色調調整機能は、上記した波長の光を吸収する色素を含有する層を新たに設けてもよいし、上述の近赤外線遮蔽層、ハードコート層あるいは接着層に色素を含有させてもよい。
【0092】
可視光透過率調整機能は、可視光の透過率を調整するための機能であり、染料や顔料を含有させて調整することができる。可視光透過率調整機能は、基材(プラスチックフィルム)、近赤外線遮蔽層、ハードコート層、あるいは接着層に付与してもよいし、新たに透過率調整層を設けてもよい。
【0093】
上述した色調調整機能を有する層及び可視光透過率調整機能を有する層をそれぞれ新たに設ける場合、これらの層は基材と導電性メッシュを有する導電層との間、もしくは基材に対して導電性メッシュを有する導電層とは反対面に設けることができる。
【0094】
本発明のディスプレイ用フィルターは、ディスプレイに直接、あるいはガラス板、アクリル板、ポリカーボネート板等の公知の高剛性基板を介して装着することができる。ディスプレイ用フィルターには、ディスプレイあるいは高剛性基板に貼り付けるための接着層を設けるのが好ましい。
【0095】
接着層には、前述したように近赤外線遮蔽機能、色調調整機能、あるいは可視光透過率調整機能を付与することができる。また、接着層に、ディスプレイを衝撃から保護するための衝撃緩和機能を付与することは好ましい態様である。接着層に衝撃緩和機能を付与するには、接着層の厚みを100μm以上にすることが好ましく、300μm以上がより好ましい。上限の厚みは、接着層のコーティング適性を考慮して3000μm以下が好ましい。
【0096】
接着層には、公知の接着材あるいは粘着材を用いることができる。粘着材としては、アクリル、シリコン、ウレタン、ポリビニルブチラール、エチレン−酢酸ビニルなどが挙げられる。接着材としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ポリオレフィン型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリ−1、2−ブタジエン、ポリイソブテン、ポリブテン、ポリ−2−ヘプチル−1、3−ブタジエン、ポリ−1、3−ブタジエンなどの(ジ)エン類、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルヘキシルエーテルなどのポリエーテル類、ポリビニルアセテート 、ポリビニルプロピオネートなどのポリエステル類、ポリウレタン、エチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリスルフォン、フェノキシ樹脂などが挙げられる。
【0097】
本発明にかかるディスプレイ用フィルターは、1枚のみの基材からなる1枚基材フィルターであることが好ましい。かかる1枚基材フィルターの好ましい構成例のいくつかを例示するが、本発明はこれらに限定されない。
【0098】
1)接着層/近赤外線遮蔽層/基材/導電性メッシュ/ハードコート層
2)接着層/基材/近赤外線遮蔽層/導電性メッシュ/ハードコート層
3)接着層(近赤外線遮蔽機能を有する)/基材/導電性メッシュ/ハードコート層
4)接着層/基材/導電性メッシュ/ハードコート層(近赤外線遮蔽機能を有する)
上記1)、2)の近赤外線遮蔽層は色調調整機能及び/または可視光透過率調整機能を有してもよく、また、同様に3)の接着層、及び4)のハードコート層は色調調整機能及び/または可視光透過率調整機能を有してもよい。
【実施例】
【0099】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
(評価方法)
(1)ヘイズ値
JIS K 7136(2000年)に基づき、スガ試験機製の直読みヘイズコンピューター(NDH 2000)を用いて測定を行った。ここで測定は、ディスプレイ用フィルターのハードコート層面側から光を入射させて行った。
【0100】
なお、表1中のヘイズ値(A)とは、ハードコート層による導電層の被覆前のヘイズ値を示し、ヘイズ値(B)とは、ハードコート層による導電層の被覆後のヘイズ値を示すものとする。
(2)中心線平均粗さRa
ディスプレイ用フィルターのハードコート性表面層側の中心線平均粗さRaを、JIS B0601−1982の方法に基づき、表面粗さ測定器SE−3400((株)小坂研究所製)を用いて測定した。
・測定条件:
送り速さ;0.5mm/S
カットオフ値λc;
Raが20nm以下の場合、λc=0.08mm
Raが20nmより大きく100nm以下の場合、λc=0.25mm
Raが100nmより大きく2000nm以下の場合、λc=0.8mm
評価長さ;8mm
・Ra:表面粗さ測定器SE−3400((株)小坂研究所製)でRaと定義されたパラメータ。
(3)視認性
ディスプレイ用フィルターのハードコート層とは反対面側の下に写真を置き、ハードコート層側からディスプレイ用フィルターを通して写真を見たときに写真画像がはっきり見えるかどうかを以下の基準で評価した。
A;画像が鮮明に見える。
B;画像が少しぼやける
C;画像がぼやけ、見えにくい
D;画像が見えない
(4)防汚性
ディスプレイ用フィルターのハードコート層とは反対面側を、ガラス面上に粘着剤で固定し、ハードコート層上に黒マジックインキ(ゼブラ(株)製の「マッキー極細」)にて直径5mmの円形を3周書き込み、10秒後に東レ(株)製の「トレシー;登録商標」で拭き取った。ハードコート層上に書き込んだマジックインキが何回の拭き取り作業でふき取れるかを以下の基準で評価した。
A;3回以内でふき取れる。
B;4〜10回でふき取れる。
C;11回以上でもふき取れない。
(5)耐擦性
ディスプレイ用フィルターのハードコート層上を、#0000のスチールウールに250gの荷重をかけながら10往復摩擦した後、表面を目視で観察し、傷の付き方を以下の基準で評価した。
A;傷の発生が全く認められない。
B;数本の細い傷が認められる。
C;無数の傷が認められる。
(実施例1)
以下のようにして基材上に導電層を形成した。
【0101】
<導電層の形成>
厚み100μmのPETフィルム(東レ(株)製 ルミラー(登録商標)U34)に、パラジウムコロイド含有ペーストを線幅30μm、線ピッチ250μmの格子状メッシュパターンを有するスクリーンを用いて印刷し、これを無電解銅メッキ液中に浸漬して、無電解銅メッキを施し、続いて電解銅メッキを施し、さらにNi−Sn合金の電解メッキを施して、開口率77%、厚みが5μmのメッシュ状の導電層を形成した。このようにして作製した導電層を有する基材のヘイズ値は2.5%であり、導電層側の中心線平均粗さRaは1150nmであった。
【0102】
<ハードコート層の被覆>
次に導電層上に、下記のハードコート層塗工液を、硬化後の膜厚みが10μmになるようにマイクログラビアコーターで塗工し、100℃で乾燥後、高圧水銀UVランプ(120W/cm)の紫外線を積算光量450mW/cmにて照射して硬化させ、ハードコート層によって導電層を被覆させた。
【0103】
<ハードコート層塗工液>
シリコーンアクリレート剤 20質量部
(東レダウコーニング(株)製の「AY−42 150」;不揮発分濃度36質量%)
ウレタンアクリレート 20質量部
(新中村化学(株)製の「NKオリゴ U−4HA」)
フッ化アクリレート 10質量部
(2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート;大阪有機化学工業(株)製の「ビスコート4F」)
光重合開始剤 4質量部
(チバ・スペシャリティ・ケミカル社製「イルガキュア184」)
上記塗工液の不揮発分濃度は76質量%である。
(実施例2)
実施例1のハードコート層塗工液に更にメチルエチルケトンとイソプロピルアルコールをそれぞれ4.5質量部加えて、不揮発分濃度65質量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ハードコート層塗工液を調製した。この塗工液を実施例1と同様に導電層上に塗工、硬化して導電層を被覆することでディスプレイ用フィルターを得た。
【0104】
(実施例3)
以下のハードコート層塗工液を用いる以外は、実施例1と同様にして、ディスプレイ用フィルターを得た。
【0105】
<ハードコート層塗工液>
シリコーンアクリレート剤 80質量部
(東レダウコーニング(株)製「AY−42 150」;不揮発分濃度36%)
ウレタンアクリレート 55質量部
(新中村化学(株)製の「NKオリゴ U−4HA」)
ウレタンアクリレート 55質量部
(根上工業(株)の「アートンレジン UN−3320HA」)
フッ化アクリレート 10質量部
(2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート;大阪有機化学工業(株)製の「ビスコート4F」)
光重合開始剤 4質量部
(チバ・スペシャリティ・ケミカル社製「イルガキュア184」)
上記塗工液の不揮発分濃度は75質量%である。
【0106】
(実施例4)
実施例3のハードコート層塗工液に、更にメチルエチルケトンとイソプロピルアルコールをそれぞれ25質量部加えて、不揮発分濃度60質量%に変更したこと以外は実施例3と同様にして、ハードコート層塗工液を調製した。この塗工液を実施例1と同様に導電層上に塗工、硬化して導電層を被覆することでディスプレイ用フィルターを得た。
【0107】
(実施例5)
実施例3のハードコート層塗工液に、更にメチルエチルケトンとイソプロピルアルコールをそれぞれ50質量部加えて、不揮発分濃度50質量%に変更したこと以外は実施例3と同様にして、ハードコート層塗工液を調製した。この塗工液を実施例1と同様に導電層上に塗工、硬化して導電層を被覆することでディスプレイ用フィルターを得た。
【0108】
(比較例1)
実施例3のハードコート層塗工液に更にメチルエチルケトンとイソプロピルアルコールをそれぞれ90質量部加えて、不揮発分濃度40質量%に変更したこと以外は実施例3と同様にして、ハードコート層塗工液を調製した。この塗工液を実施例1と同様に導電層上に塗工、硬化して導電層を被覆することでディスプレイ用フィルターを得た。
【0109】
(比較例2)
実施例3のハードコート層塗工液に、更にメチルエチルケトンとイソプロピルアルコールをそれぞれ150質量部加えて、不揮発分濃度40質量%に変更したこと以外は実施例3と同様にして、ハードコート層塗工液を調製した。この塗工液を実施例1と同様に導電層上に塗工、硬化して導電層を被覆することでディスプレイ用フィルターを得た。
【0110】
(比較例3)
以下のハードコート層塗工液を用いる以外は、実施例1と同様にしてディスプレイ用フィルターを得た。
【0111】
<ハードコート層塗工液>
ウレタンアクリレート 55質量部
(新中村化学(株)製の「NKオリゴ U−4HA」)
ウレタンアクリレート 55質量部
(根上工業(株)の「アートンレジン UN−3320HA」)
フッ化アクリレート 10質量部
(2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート;大阪有機化学工業(株)製の「ビスコート4F」)
光重合開始剤 4質量部
(チバ・スペシャリティ・ケミカル社製「イルガキュア184」)
メチルエチルケトン 41質量部
イソプロピルアルコール 41質量部
上記塗工液の不揮発分濃度は60質量%である。
【0112】
(実施例6)
以下のハードコート層塗工液を用いる以外は、実施例1と同様にしてディスプレイ用フィルターを得た。
【0113】
<ハードコート層塗工液>
シリコーンアクリレート化合物 0.05質量部
(デグサ社製の「TEGO登録商標」品番Rad2500)
シリコーンアクリレート化合物 0.5質量部
(信越化学工業(株)製の品名「X−22−1602」)
ウレタンアクリレート 125質量部
(新中村化学(株)製の「NKオリゴ U−4HA」)
ウレタンアクリレート 125質量部
(根上工業(株)製の「アートンレジン UN−3320HA」)
アクルメタクリレート 150質量部
光重合開始剤 10質量部
(チバ・スペシャリティ・ケミカル社製の「イルガキュア184」)
上記塗工液の不揮発分濃度は100質量%である。
【0114】
上記のようにして作製した実施例及び比較例のディスプレイ用フィルターについて、ヘイズ値、中心線平均粗さRa値、視認性、防汚性及び耐擦性を、上述した方法で評価した。
【0115】
その結果をまとめて表1に示す。
【0116】
【表1】

【0117】
表1の結果から明らかなように、ハードコート層中にシリコーンアクリレート化合物を含有するハードコート層塗工液の不揮発分濃度を高くした本発明の実施例は、導電層を有する基材のヘイズ値(A)からハードコート層で被覆された後のヘイズ値(B)の差(A−B)が0.1%以上で透明化が図られており、その結果視認性が向上していることが分かる。また、本発明の実施例は優れた物理的特性(防汚性、耐擦性)を示した。この際の中心線平均粗さは、100nm以下であり導電性メッシュ層を有する導電層を被覆し、透明化がなされていることを確認した。
【0118】
これに対して、不揮発分濃度が低いハードコート層塗工液を用いた比較例1、2は、導電層を有する基材のヘイズ値(A)よりハードコート層で被覆された後のヘイズ値(B)の方が大きくなっており、透明化されていないことが分かる。また、比較例3のハードコート層は、シリコーンアクリレート化合物を含有していないので、防汚性が得られないことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、導電性メッシュを有する導電層と、前記導電層を被覆するハードコート性表面層とを少なくとも有するディスプレイ用フィルターであって、
前記ハードコート性表面層はシリコーンアクリレート化合物を含有し、かつ前記ハードコート性表面層で被覆されていない導電層を有する基材のヘイズ値に対して、前記ハードコート性表面層で被覆されている状態のヘイズ値が0.1%以上小さいことを特徴とする、ディスプレイ用フィルター。
【請求項2】
前記ハードコート性表面層が、更にフッ化アクリレート化合物を含有することを特徴とする、請求項1に記載のディスプレイ用フィルター。
【請求項3】
前記ハードコート性表面層が、更にウレタンアクリレート化合物を含有することを特徴とする、請求項1または2記載のディスプレイ用フィルター。
【請求項4】
前記導電性メッシュの厚みが0.2〜8μmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のディスプレイ用フィルター。
【請求項5】
前記ハードコート性表面層の厚みが1〜20μmであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のディスプレイ用フィルター。
【請求項6】
前記ハードコート性表面層の中心線平均粗さRaが100nm以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のディスプレイ用フィルター。
【請求項7】
基材上に設けられた導電性メッシュを有する導電層上に、シリコーンアクリレート化合物を含有するハードコート性表面層を塗工して、導電層を被覆する、ディスプレイ用フィルターの製造方法であって、
ハードコート性表面層の塗工液100質量%中における不揮発分濃度が45質量%以上であることを特徴とする、ディスプレイ用フィルターの製造方法。
【請求項8】
前記ハードコート性表面層を塗工して導電層を被覆する前の、導電層を有する基材のヘイズ値に対して、前記ハードコート性表面層を塗工して導電層を被覆した後のヘイズ値が0.1%以上小さいことを特徴とする、請求項7に記載のディスプレイ用フィルターの製造方法。

【公開番号】特開2009−80253(P2009−80253A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248763(P2007−248763)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】