説明

ディスプレイ用光学フィルター用粘着シート

【課題】ディスプレイ用光学フィルター用粘着シートで、使用中に剥がれず、粘着シートが残留せずに剥離可能で、取り扱時に打痕や押し跡がつきにくい粘着シートを提供すること。
【解決手段】貯蔵弾性率(G´)が式(1)(2)、損失弾性率(G")が式(3)(4)を満たし、画面と粘着シートの剥離強度が5〜17(N/25mm)以下の粘着シートを使用する。
0.11×logλ+3.89≦log(G′)≦0.11×logλ+5.22(式1)
0.29×logλ+3.86≦log(G′)≦0.29×logλ+5.14(式2)
0.13×logλ+3.13≦log(G")≦0.13×logλ+4.38(式3)
0.40×logλ+3.40≦log(G")≦0.40×logλ+4.60(式4)
(λ=周波数(Hz)、式1と3:1×10−8≦λ≦1、式2と4:1<λ≦1×10

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ画面に光学フィルターを直接貼り合わせるための粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
社会の高度情報化に伴って、光エレクトロニクス関連の部品、機器は著しく進歩、普及している。そのなかでも、ディスプレイはテレビジョン用、パーソナルコンピューター用等として著しく普及し、その薄型化、大型化が要望されている。大型の薄型ディスプレイとしてプラズマディスプレイが注目されている。プラズマディスプレイは、その構造や動作原理上、表示画面から強度の漏洩電磁界、近赤外線を発生する。
【0003】
近年、電子機器からの漏洩電磁界が人体や他の機器に与える影響について取り沙汰されるようになっており、例えば、漏洩電磁界を、日本のVCCI(Voluntary Control Council for Interference by data processing equipment electronic office machine)による基準値内に抑えることが必要である。また、ディスプレイ画面からの近赤外線は、コードレスフォン等の周辺電子機器に作用して誤動作を引き起こす可能性がある。リモコンや伝送系光通信では波長820nm,880nm,980nm等の近赤外線が使用されているため、波長800〜1100nmの近赤外線領域の光がディスプレイから放出されるのを実用上問題ないレベルまで抑圧する必要がある。この2つの課題を解決する手段として、ディスプレイに接着して用いることができる光学フィルターが、特開2002−251144号公報及び特開2004−181975号公報に開示されている。
【0004】
一方で、ディスプレイへの接着に使用できる粘着剤が、特開2003−82302号公報、特開2002―107507号公報、特開2002−372619号公報、特開2004−331697号公報、特開2003−29644号公報等に開示されている。
ディスプレイ画面へ光学フィルターを接着するのに使用する粘着剤は、その硬さと剥離強度に制約がある。一般的には、硬い粘着剤は接着性能が非常に低く、反対に接着性能が高い粘着剤は柔らかいことが知られている。ディスプレイ画面に光学フィルターを接着するために、粘着剤はシート状にした粘着シートが好ましく使用されている。この粘着シートは、外力による打痕や押し跡がつきにくいものである必要がある。製造時の取り扱いや、使用中に打痕や押し跡がついてしまうと、光学性能に影響を及ぼすおそれがある。さらに、接着した光学フィルターは長期にわたって使用してもディスプレイ画面から剥離せず、かつディスプレイ画面に光学フィルターを貼り合わせた後に必要に応じて光学フィルターが剥離可能である必要がある。さらに耐熱性が必要である場合もある。また粘着シートは、使用する際に粘着シートに付着した剥離紙を速やかに剥離できることが必要である。その為、粘着シートから剥離紙を剥離する時の剥離強度があまり変化しないことが望まれている。
【0005】
また、光学フィルターをディスプレイ画面に接着する工程において、ラミネートミス等が発生した場合、光学フィルターをディスプレイから剥離することがある。同じディスプレイに再度光学フィルターをラミネートする時に、ディスプレイ画面に粘着シートが残渣として付着していると好ましくない。粘着シート残渣を何らかの方法で取り除くか、ディスプレイを廃棄することになり、生産効率を大幅に低下させる要因となる。従って、ディスプレイ用光学フィルター用粘着シートとしては、ディスプレイ画面に光学フィルターを貼り合わせた後に剥離したときに、粘着シートが光学フィルターとともに剥離し、ディスプレイ画面には残らないものが望まれている。つまり、光学フィルターと粘着シートの接着強度が、ディスプレイ画面と粘着シートの接着強度よりも高く、かつ、粘着シートの残渣がディスプレイ画面にほとんど残らないものが望まれている。
さらに、光学フィルター用の粘着シートであるため、光学特性が変化しにくいものである必要がある。しかしながら、従来はこれらの条件を満たす粘着シートが得られていなかった。
【特許文献1】特開2002−251144号公報
【特許文献2】特開2004−181975号公報
【特許文献3】特開2003−82302号公報
【特許文献4】特開2002―107507号公報
【特許文献5】特開2002−372619号公報
【特許文献6】特開2004−331697号公報
【特許文献7】特開2003−29644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ディスプレイ画面へ光学フィルターを接着するための粘着シートで、ディスプレイ使用中に光学フィルターが剥がれることなく、かつ、必要に応じてディスプレイ画面から光学フィルターが剥離可能であり、剥離したときにディスプレイ画面に粘着シートがほとんど残留せず、取り扱いにおいて打痕や押し跡がつきにくい粘着シートを提供することが、本願の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは鋭意研究の結果、次の粘着シートであれば課題を解決し、ディスプレイ画面に光学フィルターを直接貼り合わせるために好適に使用できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は次に関するものである。
(1)ディスプレイ画面に光学フィルターを直接貼り合わせるための粘着シートであって、該粘着シートの貯蔵弾性率(G´)が式(1)および式(2)を満たし、該粘着シートの損失弾性率(G")が式(3)および式(4)を満たし、ディスプレイ画面から光学フィルターを剥離する時のディスプレイ画面と粘着シートとの間を剥離面とする剥離強度が5(N/25mm)以上17(N/25mm)以下であるディスプレイ用光学フィルター用粘着シート。
0.11×logλ+3.89≦log(G′)≦0.11×logλ+5.22(式1)
(但し、λは周波数(Hz)であり、1×10−8≦λ≦1)
0.29×logλ+3.86≦log(G′)≦0.29×logλ+5.14(式2)
(但し、λは周波数(Hz)であり、1<λ≦1×10
0.13×logλ+3.13≦log(G")≦0.13×logλ+4.38(式3)
(但し、λは周波数(Hz)であり、1×10−8≦λ≦1)
0.40×logλ+3.40≦log(G")≦0.40×logλ+4.60(式4)
(但し、λは周波数(Hz)であり、1<λ≦1×10
(2)アルキル基の炭素数が1以上12以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、これに、カルボキシル基を含有する不飽和モノマーを共重合してなる(メタ)アクリル酸エステルと、
アルキル基の炭素数が1以上20以下のメタアクリル酸アルキルエステル、アルキル基の炭素数が1以上20以下のメタアクリル酸シクロアルキルエステル、メタアクリル酸ベンジル、スチレンから選ばれる1種又は2種以上のモノマーを主成分とし、これにアミノ基を含有し、不飽和モノマーを共重合してなる(メタ)アクリル酸エステルの、
混合物を主ポリマーとする(1)に記載のディスプレイ用光学フィルター用粘着シートが好ましい。
また、
(3)(1)または(2)に記載の粘着シートを使用したことを特徴とするディスプレイ用 光学フィルターに関する。
さらに、
(4)ディスプレイ画面に光学フィルターを貼り付ける工程で、(1)に記載の粘着シートを使用することを特徴とするディスプレイの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
ディスプレイ画面に直接光学フィルターを貼り付けても、ディスプレイ使用中に光学フィルターが剥がれることなく、かつ、必要に応じてディスプレイ画面から光学フィルターが剥離可能であり、剥離したときにディスプレイ画面に粘着シートが残留せず、製造時や使用時の光学フィルターの取り扱いにおいて打痕や押し跡がつきにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[貯蔵弾性率(G´)、損失弾性率(G")]
貯蔵弾性率(G´)、損失弾性率(G")が、次の式(1)〜(4)を満たすことで、打痕や押し跡が発生しにくい、ディスプレイ画面に光学フィルターを直接貼り合わせるための粘着シートを得ることができる。
【0011】
式(1);0.11×logλ+3.89≦log(G′)≦0.11×logλ+5.22
(式中、λは周波数(Hz)であり、1×10−8≦λ≦1)
式(2);0.29×logλ+3.86≦log(G′)≦0.29×logλ+5.14
(式中、λは周波数(Hz)であり、1<λ≦1×10
式(3);0.13×logλ+3.13≦log(G")≦0.13×logλ+4.38
(式中、λは周波数(Hz)であり、1×10−8≦λ≦1 )
式(4);0.40×logλ+3.40≦log(G")≦0.40×logλ+4.60
(式中、λは周波数(Hz)であり、1<λ≦1×10
【0012】
本発明の粘着シートとは、フィルム状、板状の形態を持つ粘着剤を指す。通常、粘着シートは剥離紙で保護されている。
物質に一定の外力を加えた時に該物質が変形する量は、弾性を支配する因子である貯蔵弾性率(G´)に比例し、外力が取り除かれ後に、外力を加えていた時に生じた変形が元に戻ろうとする量は、粘性を支配する因子である損失弾性率(G")に比例する。
【0013】
本願発明では、ディスプレイ画面に光学フィルターを粘着シートで貼り合わせるため、粘着剤に打痕や押し跡が生じると、光学特性に影響するおそれがある。上記の式(1)〜(4)を満たす粘着剤であれば、打痕や押し跡が生じにくい。打痕や押し跡の発生のしやすさについては、後述する押し跡評価試験で評価できる。へこみ量は、貯蔵弾性率(G´)及び損失弾性率(G")により支配される因子であり、貯蔵弾性率及び損失弾性率が大きいほどへこみ量は小さくなる。粘着シートの打痕や押し跡を防ぐためには、へこみ量は小さければ小さい程好ましい。上記の式(1)〜(4)を満たす場合、押し跡評価試験によるへこみ量は10μm以下となり好ましい。
【0014】
また、光学フィルターに対する粘着剤の追従性やディスプレイに対する接着性に関しても貯蔵弾性率及び損失弾性率が影響する。例えば、ディスプレイ使用中に光学フィルターが剥がれやすいか、ディスプレイ画面から光学フィルターが剥離可能であるか、ディスプレイ画面から光学フィルターを剥離したときにディスプレイ画面に粘着シートが残留するか、高温度高湿度雰囲気下で光学フィルターの剥離強度は変化するか等に関しても、貯蔵弾性率及び損失弾性率が影響する。上記の式(1)〜(4)を満たす粘着シートであれば、光学フィルターに対する追従性やディスプレイ画面に対する接着性が良好になりやすく好ましい。光学フィルターに対する追従性とは、光学フィルターをディスプレイ画面から剥離した際に、粘着シートが光学フィルター共にディスプレイ画面から剥離するか、また光学フィルターが変形した場合に、粘着シートが同様に変形するかということである。
【0015】
光学フィルターに対する粘着シートの追従性やディスプレイ画面に対する接着性は、後述する長期信頼性試験及びリワーク性試験で評価することができる。
貯蔵弾性率が式(1)、(2)で規定した範囲より小さい場合は、外力による変形量が大きくなるため、打痕や押し跡が生じやすくなるおそれがあり好ましくない。損失弾性率が式(3)(4)で規定した範囲より小さい場合は、外力による変形からの復元割合が小さいため、打痕や押し跡が生じやすくなるおそれがあり好ましくない。
【0016】
一方で貯蔵弾性率が式(1)、(2)で規定した範囲より大きい場合および損失弾性率が式(3)(4)で規定した範囲より大きい場合は、打痕や押し跡は生じにくいが、ディスプレイ画面との接着性や光学フィルターとの追従性が低くなりやすい。粘着シートとディスプレイ画面との接着性が低いと、ディスプレイ画面から光学フィルターが剥がれたり、光学フィルターが画面に密着せずに浮きが生じるおそれがある。光学フィルターに対する粘着剤の追従性が低くなると、光学フィルターをディスプレイ画面から剥離する際に、粘着シートが破断しディスプレイ画面に粘着シートが残留するおそれがある。さらに、高温高湿試験等の耐環境性を評価する試験において、粘着シートが光学フィルターの変型に追従できず、光学フィルターがディスプレイ画面から剥がれたり、密着せずに浮きが生じるおそれがある。
【0017】
式(1)〜(4)で規定した貯蔵弾性率(G´)、損失弾性率(G")の範囲の中でも、より好ましい範囲は式(5)〜(8)に示す範囲である。
【0018】
式(5);0.11×logλ+4.11≦log(G′)≦0.11×logλ+5.00
(式中、λは周波数(Hz)であり、1×10−8≦λ≦1)
式(6);0.29×logλ+4.00≦log(G′)≦0.29×logλ+5.00
(式中、λは周波数(Hz)であり、1<λ≦1×10
式(7);0.13×logλ+3.25≦log(G")≦0.13×logλ+4.25
(式中、λは周波数(Hz)であり、1×10−8≦λ≦1)
式(8);0.40×logλ+3.60≦log(G")≦0.40×logλ+4.20
(式中、λは周波数(Hz)であり、1<λ≦1×10
【0019】
上記の式(5)〜(8)を満たす場合、押し跡評価試験によるへこみ量は5μm以下となり、打痕や押し跡が非常に生じにくく好ましい。また、接着性、追従性に関してもより好ましく、長期信頼性試験、リワーク性試験で良好な結果が得られやすく好ましい。
【0020】
[押し跡評価試験]
本発明において粘着剤層の打痕や押し跡のつきやすさを評価は、以下の手法で実施できる。SUS板[厚さ2mm]/粘着シート/ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム[厚さ188μm]の構成となるように試料を準備する。1cm×1cmの領域に0.5MPaの圧力を10分間かけた後、圧力を開放した直後に圧力をかけた部分のへこみ量を光学段差計で測定する。 本発明では、圧力をかけるために TEXELL製 TC−1320UDを用いた。また、光学段差計は Zygo(株)製 高精度レーザ干渉計式形状測定機Verifire MST(登録商標)を用いた。
へこみ量が10μm以下であれば粘着シートに打痕や押し跡がつきにくい。より好ましくは、へこみ量が5μm以下であると良く、さらに好ましくは、へこみ量が1μm以下であるとよい。
【0021】
[剥離強度]
ディスプレイ画面から光学フィルターを剥離する時の、ディスプレイ画面と粘着シートとの間を剥離面とする剥離強度が5(N/25mm)以上17(N/25mm)以下であることが好ましい。剥離強度が17(N/25mm)より大きいと、粘着シートの接着力が高く、光学フィルターをディスプレイ画面から剥離して貼り直す必要が生じた際に、剥離が困難となる場合があり好ましくない。5(N/25mm)未満だと、接着力が不充分であり、長期にわたってディスプレイを使用した際に、光学フィルターがディスプレイ画面から剥がれたり浮き上がったりするおそれがある。剥離強度が、8(N/25mm)以上15(N/25mm)であるとより好ましい。剥離強度は光学フィルターの剛性や厚さによって異なるので、光学フィルターの構成や厚さ、材質等にあわせて粘着シートの厚さを適宜選択する。
【0022】
本発明における剥離強度測定は、光学フィルターを粘着シートを介してフロートガラスに貼り合わせたサンプルで実施する。本来は、ディスプレイ画面から光学フィルターを剥離する際のディスプレイ画面と粘着シートとの間の剥離強度を測定する必要があるが、ディスプレイ画面の材質や面状態によって剥離強度が異なることが考えられるため、ディスプレイ画面の代用としてフロートガラスを使用する。光学フィルターをフロートガラスに貼り合わせた測定用サンプルを温度80℃、湿度0〜5%の環境に1時間置いた後、サンプルを温度25℃ 湿度30〜60%の環境に24時間置いてから剥離強度を測定する。剥離強度測定は、JIS−Z0237に記載の通りに行った。本発明では、ガラスは、日本板硝子(株)製 厚さ3mmのフロートガラスを使用した。剥離強度測定は、(株)島津製作所製 AUTOGRAPH(登録商標)AGS−500Dを使用した。
【0023】
[リワーク性]
ディスプレイ画面から光学フィルターを剥離するときに、粘着シートが光学フィルターとともに剥離し、ディスプレイ画面には残らないものが好ましい。本発明では、剥離した際にディスプレイ画面に粘着シートが残留しやすいか否かの性能をリワーク性と呼ぶ。また、ディスプレイ画面に貼り付けた光学フィルターを剥離することをリワークと呼ぶ。つまり、粘着シートとディスプレイ画面との間の剥離強度(以下、前者という。)と、粘着シートと光学フィルターとの間の剥離強度(以下、後者という。)では、前者の方が大きい必要がある。後者の方が大きいと、ディスプレイ画面から光学フィルターを剥がす必要が生じた場合に、粘着シートがディスプレイ画面に残留してしまう。前者の方が大きいと、光学フィルターをディスプレイ画面から剥離する際に、粘着シートは光学フィルターとともにディスプレイ画面から剥離されるため、ディスプレイ画面には粘着シートが残りにくい。本発明では、このことを「リワーク性が良い」と言う。
【0024】
具体的には、粘着シートと高分子フィルムの間の剥離強度が、粘着シートとガラスの間の剥離強度よりも1N/25mm以上大きいと好ましい。ここで高分子フィルムとガラスを比較した理由は、ディスプレイ画面に貼り合わせる光学フィルターは接着面が高分子フィルムであることが多く、またディスプレイ画面と粘着シートとの接着性は、ガラスと粘着シートとの接着性とほぼ同様に見なすことが可能なためである。
【0025】
高分子フィルムとガラスとで剥離強度の差が大きいほど、光学フィルターを剥離する際に粘着シートの残渣がディスプレイ表面に付着しにくくなるのでより好適である。より好ましくは、粘着シートと高分子フィルムの間の剥離強度が、粘着シートとガラスの間の剥離強度よりも2N/25mm以上大きいとよく、さらに好ましくは3N/25mm以上である。
【0026】
ディスプレイの製造工程においては、封止材料の熱硬化等の目的で、粘着シートで光学フィルターをディスプレイ画面にラミネートした後にディスプレイを加熱処理する場合がある。そのため、加熱処理後も、粘着シートの残渣がディスプレイの表面に生じないように光学フィルターを剥離できることができることがより望ましい。例えば、光学フィルターを貼り付けたディスプレイを、温度80℃で1時間保持した後に光学フィルターを剥離して粘着シートの残渣がディスプレイ画面に残らないことがより望ましい。ディスプレイの代替としてガラスを用いることで簡便に確認できる。
【0027】
[リワーク性試験]
試験に使用するサンプルの構成は、高分子フィルム/本発明粘着シート/光学フィルター/シアノアクリレート接着剤/ガラスである。 粘着シートと高分子フィルムとの間の接着強度の測定にあたっては、粘着シートと光学フィルターの間の接着力が、粘着シートと高分子フィルムとの間の接着力と比較して高くなるように測定用サンプルを準備する。
【0028】
シアノアクリレート接着剤は、光学フィルターに通常使用される高分子フィルムやガラスとの接着力が非常に高く、本発明の粘着シートと高分子フィルムとの接着力よりも強いため、測定用サンプルの高分子フィルムを剥離することで、高分子フィルムと本発明粘着シートの間の剥離強度が求められる。光学フィルターと粘着シートの間で剥離した場合は、高分子フィルムと粘着シートの間の剥離強度は測定された剥離強度よりも大きいことがわかり、相対的に判断できる。
【0029】
剥離強度測定において、高分子フィルムは、光学フィルターの構成に合わせて適当なものを選択すればよい。すなわち、光学フィルターを構成する部材の中で、粘着シートと接触することが想定される部材と同等のものを評価のために用いればよい。なお、高分子フィルムの選択にあたっては、その材質に加えて、被着面の状態も考慮する。
【0030】
本発明では、PETフィルム[東洋紡株式会社製 コスモシャイン(登録商標)銘柄:A4300、厚さ100μm]を高分子フィルム、フロートガラス[日本板硝子(株)製 フロートガラス、厚さ3mmt]をガラスに使用し、温度23〜25℃で、圧力2kg/cmの条件で貼り合わせ、温度80℃で1時間処理し、さらに温度23〜25℃で24時間保持した後に、剥離強度測定を行った。
【0031】
[剥離紙との接着強度]
本発明における粘着シートは、剥離紙との間の接着強度が温度や時間で変化しにくいことが望ましい。変化しにくいとは、接着強度の時間による変化が0.025N/25mm/月以下であることである。接着強度は、粘着シートと剥離紙との剥離強度で評価する。接着強度の時間による変化が0.025N/25mm/月より大きい場合、剥離紙を剥離することができないおそれがあり、製造工程上のトラブルを引き起こす可能性があり好ましくない。
【0032】
粘着シートと剥離紙の剥離強度は、0.05(N/25mm)以上、0.35(N/25mm)未満が好ましく、0.35N/25mm以上になると剥離紙が剥離しにくく製造工程上のトラブルが発生し易くなる。0.05(N/25mm)未満だと、接着強度が弱く剥離紙が自然に剥離してしまうことがあり好ましくない。本発明においては、粘着シートと剥離紙を貼り合わせた後少なくとも1年間は、粘着シートと剥離紙の剥離強度が上述の好ましい範囲であるとよい。一般的には、接着強度は経時的に大きくなるが、剥離強度の時間による変化が0.025N/25mm/月より大きい場合、剥離強度を下限値である0.05N/25mm程度に低く設定しても1年以内に剥離強度が0.35N/25mm以上となってしまい製造工程上のトラブルにつながるおそれがある。
【0033】
剥離強度の時間による変化が0.01N/25mm/月以下であることがさらに好ましく、より好ましくは、0.005N/25mm/月以下である。接着強度の変化が小さいほど、剥離強度が閾値である0.3N/25mmを超えるまでの期間が長くなり、剥離紙の密着力を高めに設定することを可能となる。
【0034】
[剥離紙]
本発明において剥離紙は、粘着シートからの剥離性をもたせるためのシリコーン薄膜層を有する高分子フィルムが好適に使用される。高分子フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、2軸延伸ポリプロピレン(OPP)、キャストポリプロピレン(CPP)、ポリエチレン(PE)などを使用することができる。中でもポリエチレンテレフタレート(PET)は、光学的な歪み欠陥の少ない品質のものが得られるため、好適に使用される。
シリコーン薄膜層の形成方法は、熱効果型(付加反応型、縮合反応型)や照射硬化型(UV硬化型、EB硬化型)など代表的であるが、いずれの手法で形成したものも使用できる。
【0035】
[粘着シート]
貯蔵弾性率(G´)、損失弾性率(G")は、粘着シート材料の分子構造、組成比、分子量、架橋度によって変化する。
粘着シートとディスプレイ画面の接着強度は、粘着シートの貯蔵弾性率(G´)、粘着シート中の、ガラスとの接着強度を左右する官能基を有する成分の含有量にによって変化する。粘着シートと高分子フィルムの接着強度は、貯蔵弾性率(G´)、粘着シート中の、高分子フィルムとの接着強度を左右する官能基を有する成分の含有量によって変化する。接着強度を左右する官能基とは例えばカルボキシル基等の極性が大きい官能基が挙げられる。極性の大きい官能基はガラスに対する接着強度を高める効果を有する。粘着シートと剥離紙の接着強度の経時変化量は、粘着シート中の添加剤の量によって変化しやすい。
【0036】
貯蔵弾性率(G´)、損失弾性率(G")を本発明の範囲にするには、粘着シートのガラス転移温度(Tg)を指標とすることができる。なお、複数のモノマー樹脂が共重合及び/又は混合してなる樹脂のTgとモノマーのTgとの関係は、その配合割合から、以下の式9に従って算出するのが一般的である。
【0037】
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn (式9)
ここで、
Tg:共重合体及び/又は混合物のTg
Tg1、Tg2、Tgn:各モノマーのTg
W1、W2、Wn:各モノマーの重量%
一般的には、Tgが高くなると貯蔵弾性率(G´)及び損失弾性率(G" )は大きくなる。
【0038】
[粘着シートの材料]
粘着シートを構成する材料は、貯蔵弾性率(G´)、損失弾性率(G")、ディスプレイとの接着強度、高分子フィルムとの接着強度、剥離紙との接着強度および接着強度の経時変化が、本発明の範囲を実現するものであればよい。
【0039】
具体的には例えば(メタ)アクリル樹脂が好適に用いられる。(メタ)アクリル樹脂が好ましい理由は次の通りである。(1)高い光透過性を有する、(2)耐候性、耐光性、耐加水分解性に優れる、(3)モノマーの種類が豊富なため要求物性に応じた樹脂設計が容易。すなわち、硬さ、分子量、極性のコントロールや、接着強度を調整するための官能基の導入が容易、(4)単量体が比較的安価。
本発明における(メタ)アクリル樹脂は(メタ)アクリル酸エステルの共重合体の混合体を主ポリマーとするものであるとよい。ここで主ポリマーとは、粘着シート全体に占める重量比が90%以上であるポリマーのことである。
【0040】
本発明の粘着シートとしては、例えば次のものが挙げられる。
アルキル基の炭素数が1以上12以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、これに、カルボキシル基を含有する不飽和モノマーを共重合してなる(メタ)アクリル酸エステルと、
アルキル基の炭素数が1以上20以下のメタアクリル酸アルキルエステル、アルキル基の炭素数が1以上20以下のメタアクリル酸シクロアルキルエステル、メタアクリル酸ベンジル、スチレンから選ばれる1種又は2種以上のモノマーを主成分とし、これにアミノ基を含有し、不飽和モノマーを共重合してなる(メタ)アクリル酸エステルの、
混合物を主ポリマーとする粘着シート。
(メタ)アクリル酸エステルのいずれか又は両方にアクリル系マクロマーを共重合したものが好ましい。
さらに、アルキル基の炭素数が1以上12以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、これに、カルボキシル基を含有する不飽和モノマーを共重合してなる(メタ)アクリル酸エステルの、不飽和モノマーの含有量が1重量部以上、5重量部以上であり、
アルキル基の炭素数が1以上20以下のメタアクリル酸アルキルエステル、アルキル基の炭素数が1以上20以下のメタアクリル酸シクロアルキルエステル、メタアクリル酸ベンジル、スチレンから選ばれる1種又は2種以上のモノマーを主成分とし、これにアミノ基を含有する不飽和モノマーを共重合してなる(メタ)アクリル酸エステルの、不飽和モノマーの含有量が0.1重量部以上、2重量部以上であり、
上記の(メタ)アクリル酸エステルのいずれか又は両方に、アルキル基の炭素数が1〜5の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、これに含有量が0.1重量部以上2重量部以下となるように不飽和モノマーを共重合したアクリル系マクロマーを共重合させた粘着シートが好ましい。
【0041】
使用可能なアクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルを具体的に例示すると、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、及びその誘導体である。これらは2種以上を組み合わせることも可能である。中でも、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、プロピルアクリレート、エチルアクリレートは、メチルアクリレート、メタブチルアクリレート、メタエチルアクリレート、メタメチルアクリレート及びその誘導体は、ガラスや高分子フィルムとの適度な接着力、適度な硬さを有するため、本発明における粘着シートの材料として好適に用いることができる。
【0042】
本発明において粘着シート材料に好適に用いられる共重合体は次の共重合体A、Bである。
(共重合体A)
アルキル基の炭素数1以上12以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、これにカルボキシル基を含有する不飽和モノマーを共重合させた(メタ)アクリル酸エステル。
カルボキシル基はガラスに対する接着性を発現するものであり、ガラスとの接着強度が本発明の範囲となるように適切な量を含有させる。本発明で主成分とは、主ポリマーに対する重量比が50%以上を占める成分を言う。
カルボキシル基を含有する不飽和モノマーの含有量は、粘着シートに対して1重量部以上、5重量部以下が好適である。5重量部を超えるとガラスに対する接着性が高すぎるために、本発明において設定しているガラスに対する接着力の上限を上回る場合がある。また、1重量部未満だと逆に下限を下回る場合がある。より好ましいカルボキシル基を含有する不飽和モノマーの含有量は、2重量部以上4重量部以下である。
カルボキシル基の含有量は、貯蔵弾性率(G´)、損失弾性率(G")に影響を与える。これらの値は、カルボキシル基量が多いほど、高くなり、少ないほど低くなる。
【0043】
(共重合体B)
アルキル基の炭素数が1以上20以下のメタアクリル酸アルキルエステル、アルキル基の炭素数が1以上20以下のメタアクリル酸シクロアルキルエステル、メタアクリル酸ベンジル、スチレンから選ばれる1種又は2種以上のモノマーを主成分とし、これにアミノ基を含有する不飽和モノマーを共重合してなる(メタ)アクリル酸エステル。アルキル基の炭素数が1以上5以下のものがより好ましい。
この不飽和モノマーは高分子フィルムに対する接着性を発現するものであり、高分子フィルムとの接着強度が本発明の好ましい範囲となるように適切な量を含有させる。好適な含有量は、0.1重量部以上、2重量部以下である。2重量部より多い場合は、該モノマーが主成分のモノマーと十分に相溶せず、粘着シートに曇りなどの光学的な障害が発生するおそれがある。また、0.1重量部より少ない場合は、高分子フィルムとの接着力が十分に得られない場合がある。より好適な範囲は、0.5重量部以上、1.5重量部以下である。
本発明において、共重合体Aと共重合体Bの混合物を主ポリマーとする粘着シートが好ましい。
【0044】
本願において必要とする貯蔵弾性率(G′)及び損失弾性率(G″)は、一般的な(メタ)アクリル酸エステル系の粘着シートに比較して高めである。一方で必要とするガラスに対する剥離強度は、ガラスに使用するための粘着シートとしては、低めである。
前述した通り、カルボキシル基含有量を調整することにより、ガラスに対する適切な剥離強度が得られるが、カルボキシル基含有量は比較的少量であるため、粘着シートの貯蔵弾性率(G′)及び損失弾性率(G″)が、本発明で規定する範囲に入りにくい。
そこで、ガラスに対する剥離強度に影響を与えずに、貯蔵弾性率(G′)及び損失弾性率(G″)を高めにシフトさせるための処方を施すことが、本発明で規定した範囲内にする上で効果的である。
【0045】
例えば、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な、分子量が500以上、10000以下のアクリル系のマクロマーを、共重合体A又は共重合体Bに共重合する。好適なマクロマーの含有量は、粘着シートに対して占める量が0.1重量部以上5重量部以下である。0.1重量部未満の場合は、貯蔵弾性率(G′)及び損失弾性率(G″)を高める効果が不十分であるため、効果が十分でないおそれがある。5重量部より大きい場合は、貯蔵弾性率(G′)及び損失弾性率(G″)が高くなり過ぎ、本願で規定する範囲の上限を超えるおそれがある。
本発明において、分子量500未満をモノマー、分子量が500以上、10000以下をマクロマー、分子量が10000を超えるものをポリマーと呼ぶ。
【0046】
[分子量]
本発明における粘着シートの主成分の好適な重量平均分子量は、20万以上250万以下である。重量平均分子量が20万未満であると耐熱性が不足し、製造工程での熱処理によって粘着シートが変性してしまうおそれがある。例えば、粘着シートをディスプレイ表面に貼り合わせ、80〜100℃で熱処理すると、粘着シートが破断しやすい状態に変性し、粘着シートを剥離しようとすると粘着シートが破断し、粘着シートが糸を引く状態となり、完全に剥離することが極めて困難な状態になる場合がある。また、重量平均分子量が250万より大きいと、接着力が低くなり、本発明における剥離強度の好ましい範囲の下限を下回る場合がある。より好適な重量平均分子量は、40万以上200万以下、さらに好ましい重量平均分子量は、60万以上150万以下である。
前述した通り、貯蔵弾性率(G´)、損失弾性率(G")、接着強度は、材料の成分、分子量、ゲル分率などのバランスによって決定するので、本発明において好適な分子量は使用する材料に応じて最適な分子量を上記の範囲から選択すればよい。
【0047】
[添加剤]
本発明の粘着シートは、ディスプレイ、高分子フィルム、剥離紙との接着強度が適切な範囲内である必要があるため、これらを不安定化させる要因となりえる添加剤を使用することは好ましくない。しかしながら、弾性率や剥離強度が適切な値となる範囲内で、接着強度や耐久性、光学特性を制御するなどの目的で添加剤を含有してもよい。例えば、粘着付与剤、シランカップリング剤、可塑剤、などの一般的な粘着特性改質剤が挙げられる。粘着付与剤としては、ロジン系であるロジン、ロジン誘導体、テルペン系であるα−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、水添テルペン樹脂、芳香族共重合樹脂、テルペン・フェノール樹脂、石油樹脂系であるC5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5/C9系石油樹脂、水添石油樹脂、DCPD系石油樹脂、その他アルキル・フェノール樹脂、キシレン樹脂、スチレン樹脂、αメチル−スチレン樹脂、クマロン樹脂などが挙げられる。
【0048】
シランカップリング剤を以下に例示するがこれに限定されない。メチルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、フルオロエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン。
【0049】
[硬化剤]
本発明においては、粘着シートの主剤に硬化剤を添加し、架橋することにより弾性率を制御することができる。
例えば、(メタ)アクリルエステルに適した硬化剤としては、一般的にはエポキシ系、イソシアネート系の材料が用いられる。本発明においては、エポキシ系の硬化剤は、色素などの添加剤に対する反応性が低い為、粘着シートの光学特性等が経時変化しにくく、特に好適である。
本発明に適したエポキシ系の硬化剤を具体的に例示すると、グリシジルエーテル系樹脂、グリシジルエステル系樹脂、グリシジルアミン系樹脂、環状脂肪族型樹脂等である。例えば、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシレンジアミンが挙げられる。
また、一般的に(メタ)アクリルエステル向けに使用されるイソシアネート系硬化剤としては非黄変型のHDIベース剤などが挙げられる。
【0050】
[ゲル分率]
本発明の粘着シートのゲル分率は、50%以上90%以下であることが好ましい。ゲル分率が50%未満であると樹脂内部における架橋が十分でなく、貯蔵弾性率(G´)が前述の目標範囲の下限を下回る場合がある。一方でゲル分率が90%以上であると樹脂内部において過架橋状態になり、貯蔵弾性率(G´)が前述の目標範囲の上限を上回る場合がある。なお、より好適なゲル分率の範囲は、70%以上、90%以下である。
【0051】
[好適な組成、分子量、ゲル分率(硬化剤量) ]
本発明における好適な粘着シートの組成、分子量、ゲル分率の例を以下に示す。
(例1)
粘着シートが、次の成分1〜3を有する共重合体(以下、共重合体1と呼ぶ)と、成分5および成分6を含む共重合体(以下、共重合体2と呼ぶ)の混合物を含むものであり、各成分1〜3、5、6の含有割合、共重合体1および2の重量平均分子量、粘着シートのゲル分率が以下の範囲である粘着シート。
成分1:炭素数4または5のアクリレート
成分2:炭素数1以上3以下のアクリレート
成分3:炭素数1以上3以下のアクリル酸
成分5:アミノ基又はアクリルアミド基を有する炭素数1以上3以下のアクリレート又はメタアクリレート
成分6:炭素数1以上3以下のメタクリレート
【0052】
共重合体1及び共重合体2の各構成成分の割合は次の範囲が好ましい。尚、記載の割合は、共重合体となる前の各成分の割合である。
成分1:60重量部以上80重量部以下
成分2:15重量部以上35重量部以下
成分3:1重量部以上5重量部以下
成分5:0.1重量部以上2重量部以下
成分6:0.1重量部以上2重量部以下
共重合体1の重量平均分子量:60万以上120万以下
共重合体2の重量平均分子量:5万以上25万以下
ゲル分率:70%以上90%以下
【0053】
ここで、成分1は、比較的ガラス転移温度が低い成分であり、主にディスプレイ画面やガラス製の被着体、及び高分子フィルムとの接着性を発現する役割を果たす。さらに成分1は、貯蔵弾性率や損失弾性率の低下を促す成分であるため、含有量が80重量部より多いと、本発明の貯蔵弾性率および損失弾性率の好ましい範囲の下限を下回るおそれがある。また、60重量部より少ないと、ディスプレイ画面やガラス製の被着体、高分子フィルムに対する接着力が不足するおそれがある。
【0054】
成分2は、比較的ガラス転移温度が高い成分であり、主に高分子フィルムとの接着性を発現する役割を果たす。成分2は、貯蔵弾性率や損失弾性率の上昇を促す成分であるため、含有量が35重量部より多いと本発明における貯蔵弾性率および損失弾性率の好ましい範囲の上限を超えるおそれがある。また、15重量部より少ないと高分子フィルムに対する接着性が低く、ディスプレイ用光学フィルターに使用した際に、粘着シート剥離後のディスプレイ画面に糊残りを生じるおそれがある。
【0055】
成分3は、ディスプレイ画面やガラスとの接着性を発現する効果がある。成分3の含有量が5重量部より多いとディスプレイ画面やガラスとの間の接着力が高くなり過ぎ、本発明で好ましいディスプレイ画面やガラスに対する接着強度範囲の上限を超えるおそれがある。一方で、成分3の含有量が1重量部より少ないと、ディスプレイ画面やガラスとの間の接着力が低くなり過ぎ、本発明で好ましい接着用度範囲の下限を下回るおそれがある。
【0056】
成分5は、粘着シートと高分子フィルムとの間の接着性を高める効果がある。含有量が0.1重量部より少ない場合は、粘着シートと高分子フィルムとの間の接着力が不足し、粘着シートとガラスとの間の接着力より低いため、光学フィルターをディスプレイ画面から剥離する際に、光学フィルターと粘着シートとの間で剥離し、ディスプレイ画面上に粘着シートの全てまたは一部が残るおそれがある。また、2重量部より多い場合は、共重合体1と共重合体2が完全に相溶しないため、粘着シートのヘイズが高くなってしまうおそれがある。
【0057】
成分6は、粘着シートの硬さを高める効果がある。共重合体1は比較的Tgが低いアクリレートにより構成されるが、共重合体2を構成する成分6が比較的Tgが高いメタクリレートを含むことによって粘着シートを硬くしている。成分6の含有量が0.1重量部より少ない場合は、粘着シートの硬さが不足し、その貯蔵弾性率(G´)、損失弾性率(G")を本発明において必要とする範囲に調整することができないおそれがある。2重量部より多い場合は、共重合体1と共重合体2が完全に相溶せず、粘着シートのヘイズが高くなってしまうおそれがある。
【0058】
(例2)
粘着シートが、ブチルアクリレート、メチルアクリレート、アクリル酸からなる共重合体(以下、BMA共重合体と呼ぶ)とであり、アミノ基を有するメタアクリレートおよびメチルメタクリレートからなる共重合体(以下、AM共重合体と呼ぶ)の混合物を含むものであり、
BMA共重合体及びAM共重合体の各構成成分の割合、粘着シートのゲル分率が以下の範囲である粘着シート。
ブチルアクリレート:60重量部以上80重量部以下
メチルアクリレート:15重量部以上35重量部以下
アクリル酸:1重量部以上5重量部以下
アミノ基を有するメタアクリレート:0.1重量部以上2重量部以下
メチルアクリレート:0.1重量部以上2重量部以下
共重合体1の重量平均分子量:60万以上120万以下
共重合体2の重量平均分子量:5万以上25万以下
ゲル分率が、70%以上90%以下
【0059】
(例3)
粘着シートが、次の成分1〜4を有する共重合体(以下、共重合体3と呼ぶ)と、成分5および成分6を含む共重合体(以下、共重合体4と呼ぶ)の混合物を含み、各成分1〜6の含有割合、共重合体3および共重合体4の重量平均分子量、粘着シートのゲル分率が以下の範囲である粘着シート。
成分1:炭素数4または5のアクリレート
成分2:炭素数1以上3以下のアクリレート
成分3:炭素数1以上3以下のアクリル酸
成分4:分子量500〜10000のアクリル系マクロマー
成分5:アミノ基又はアクリルアミド基を有する炭素数1以上3以下のアクリレート又はメタアクリレート
成分6:炭素数1以上3以下のメタクリレート
共重合体3及び共重合体4の各構成成分の割合
成分1:60重量部以上80重量部以下
成分2:15重量部以上35重量部以下
成分3:1重量部以上5重量部以下
成分4:0.1重量部以上2重量部以下
成分5:0.1重量以上2重量部以下
成分6:0.1重量部以上2重量部以下
共重合体3の重量平均分子量:60万以上120万以下
共重合体2の重量平均分子量:5万以上25万以下
ゲル分率:70%以上90%以下
【0060】
ここで、成分1は、比較的ガラス転移温度が低い成分であり、主にディスプレイ画面やガラス製の被着体及び高分子フィルムとの接着性を発現する役割を果たす。成分1は、貯蔵弾性率および損失弾性率の低下を促す成分であるため、含有量が80重量部より多いと、貯蔵弾性率および損失弾性率の好ましい範囲の下限を下回るおそれがある。また、60重量部より少ないと、ディスプレイやガラス製の被着体や、高分子フィルムに対する接着力が不足するおそれがある。
【0061】
成分2は、比較的ガラス転移温度が高い成分であり、主に高分子フィルムに対する接着性を発現する役割を果たす。成分2は貯蔵弾性率および損失弾性率の上昇を促す成分であるため、含有量が35重量部より多いと、貯蔵弾性率および損失弾性率の好ましい範囲の上限を超えるおそれがある。また、15重量部より少ないと高分子フィルムに対する接着力が低く、ディスプレイ用光学フィルターに使用した際に、粘着シート剥離後のディスプレイ画面に糊残りを生じるおそれがある。
【0062】
成分3は、ディスプレイ画面やガラスとの接着力を発現する効果がある。成分3の含有量が5重量部より多いとディスプレイ画面やガラスとの間の接着力が高くなり過ぎ、本発明に適したディスプレイ画面との接着強度の範囲の上限を超えるおそれがある。一方で、成分3の含有量が1重量部より少ないと、ディスプレイ画面やガラスとの間の接着力が低くなり過ぎ、本発明に適したディスプレイ画面との接着強度の範囲の下限を下回る場合がある。
【0063】
成分4は、本発明における粘着シートの貯蔵弾性率(G´)、損失弾性率(G")を高める効果がある。成分4の含有量が2重量部より多い場合は、粘着シートが、硬くなり過ぎ、ディスプレイ画面やガラスの被着体、高分子フィルムとの接着力が不足するおそれがある。0.1重量部より少ないと粘着シートの貯蔵弾性率および損失弾性が本発明における好ましい範囲の下限を下回る恐れがある。
【0064】
成分4及び成分6は粘着シートの貯蔵弾性率および損失弾性率を高める効果がある。メタアクリレート樹脂は、アクリレート樹脂に比較してガラス転移温度が高いため、成分2と比較して、貯蔵弾性率および損失弾性率の変動に及ぼす効果は大きい。成分4や成分6の含有量が2重量部よりも大きいと、貯蔵弾性率および損失弾性率が本発明における好ましい範囲の上限を超えるおそれがある。一方で0.1重量部より小さいと好ましい範囲の下限を下回るおそれがある。
【0065】
成分5は、高分子フィルムとの相互作用によって接着性を促進する官能基を有するアクリレート又はメタアクリレートである。官能基としては、アミノ基、アクリルアミド基、などが好適に使用される。
【0066】
高分子フィルムとの接着性を促進する目的で、アミノ基、アクリルアミド基を有するアクリレート及び/又はメタアクリレートを配合すると、同時にディスプレイ画面やガラス製の被着体に対する接着性が上昇し、本発明における好ましい範囲の上限を超えるおそれがあるため、ディスプレイ画面やガラスに対する接着性を低下させる目的で、シリカ成分を有する有機材料、フッ素成分を有する有機材料、脂肪酸エステルなどをその成分に含むオリゴマーやポリマーを配合すると良い。
【0067】
(例4)
粘着シートが、ブチルアクリレート、メチルアクリレート、アクリル酸、メタクリロイル基を有するメチルメタクリレートからなる共重合体(以下、BMAM共重合体と呼ぶ)と、アミノ基を有するアクリレートおよびメチルメタクリレートからなる共重合体(以下、AM共重合体と呼ぶ)の混合物を含み、
BMAM共重合体及びAM共重合体の各構成成分の割合、各共重合体の重量平均分子量、ゲル分率が以下である粘着シート。
ブチルアクリレート:60重量以上80重量部以下
メチルアクリレート:15重量部以上35重量部以下
アクリル酸:1重量部以上5重量部以下
メタクリロイル基を有するメチルメタアクリレート:0.1重量部以上2重量部以下
アミノ基を有するアクリレート:0.1重量部以上2重量部以下
メチルアクリレート:0.1重量部以上2重量部以下
BMAM共重合体の重量平均分子量:60万以上120万以下
AM共重合体の重量平均分子量:5万以上25万以下
ゲル分率:70%以上90%以下
【0068】
[色素]
本発明における粘着シートには、その光線透過率、色調、ヘイズなどの光学特性を調整する目的で、色素、顔料等の着色剤、シリカや二酸化チタンやアルミナや金属紛や金属酸化物紛等の無機フィラー、樹脂微粒子等が含有されていてもよく、それぞれ目的に応じて適切な量を添加するとよい。
色素または顔料としては、粘着シートに均一に分散又は溶解するものであり、所望の吸収波長、幅に応じて選択する。使用可能な色素、顔料を以下に具体的に例示する。
【0069】
例えば、アントラキノン系、フタロシアニン系、メチン系、アゾメチン系、オキサジン系、アゾ系、スチリル系、クマリン系、ポルフィリン系、ジベンゾフラノン系、ジケトピロロピロール系、ローダミン系、キサンテン系、ピロメテン系等の有機色素、カーボンブラック系の顔料などがある。中でも、アントラキノン系、アザポルフィリン系、キノフタロン系の色素、カーボンブラック系の顔料は、粘着シート中における安定性が高く、特に好適に用いることができる。
添加する色素等の種類や濃度は、用途に応じて必要な光学特性、色素及び又は顔料の吸収波長や吸収係数、分散させる粘着シートの種類、粘着シートの厚さに応じて決定すればよく、特に限定されるものではない。
【0070】
[光学特性]
本発明における粘着シートの透過光のヘイズは10%以下であることが好ましい。透過光のヘイズが10%より大きいとディスプレイに使用した際に表示画像がぼけているように見受けられるため好ましくない。より好ましい粘着シートの透過光ヘイズは5%以下、さらに好ましくは2%以下である。
【0071】
本発明における粘着シートの光線透過率は、30%以上99%以下であり、用途に応じて適切な透過率になるように調整するとよい。
本発明において粘着シートの透過光のヘイズは、無色透明なフィルムに粘着シート層を形成した状態でその透過光のヘイズを測定し、使用している無色透明なフィルムの透過光のヘイズ測定値を引くことにより求める。なお、透過光のヘイズ測定においては、一般的なヘイズメーター(例えば、東京電飾社製 型番TC−H3DPK)を使用して、無色透明なフィルム側から入射した透過光のヘイズを測定する。
【0072】
本発明において光線透過率は、無色透明なフィルムに粘着シート層を形成した状態でその光線透過率を測定し、使用している無色透明なフィルムの吸収率を引くことにより求める。なお、光線透過率の測定においては、一般的な分光光度計(例えば、(株)日立ハイテクノロジーズ製 分光光度計 型番UE9900)を使用して、無色透明なフィルム側から入射した光の透過率を測定する。
【0073】
[光学特性の安定性]
本発明における粘着シートは、耐湿熱性に優れていることが好ましく、特に光学特性が温度や湿度で変化しにくいものが好ましい。具体的には温度60℃、湿度90%RHの雰囲気下に500時間おく耐湿熱試験を行い、試験前後で透過色の色度(x、y)の変化量Δx、Δyが0.01以下であるものが好ましい。より好ましくはΔx、Δyが0.005以下、更により好ましくは0.003以下である。粘着シートの材料および光学特性調整用に用いた色素等に高い耐湿熱性が求められる。
この観点から粘着シートの材料として、色素との反応性ができるだけ低いものを選択するとよい。一般的に、(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ系の硬化剤は反応性が高い官能基を有していないために、光学特性の安定性を確保する点から有利である。
【0074】
一方でイソシアネート系の硬化剤を使用する場合は、反応性が高いNCO基が粘着シートに残る場合があるため、色素含有粘着シートの製造段階において添加するイソシアネート材料の量を調整することで接着性能や光学特性等の機能を発現させ、さらに使用する段階ではNCO基を有さないようにすることが肝要である。
【0075】
[塗工、乾燥]
本発明において、粘着シート用材料をフィルム状やシート状にして粘着シートを作製するにあたっては、従来からある一般的な方法が使用でき限定されるものではない。例えば、溶剤キャスト法を使用することができる。粘着シート材料を適当な溶剤に溶解し、所望の厚みになるように製膜用の基材上に塗工した後に乾燥し、溶剤を取り除くことでシート状の粘着シートが得られる。
【0076】
また、塗工後の形態には、以下のようなパターンがある。
パターンA:剥離紙(1)/本発明における粘着シート/剥離紙(2)
パターンB:機能フィルム/本発明における粘着シート/剥離紙(2)
パターンAにおいて、剥離紙(2)は、本発明における粘着シートに対する剥離強度が、剥離紙(1)と比較して0.3N/25mm以上高いものを使用する。通常は、剥離紙(2)に粘着剤を塗工し、乾燥させることにより、剥離紙(2)上に粘着シートを形成し、さらに剥離紙(1)をラミネートする。
【0077】
なお、得られた粘着シートの、剥離紙(1)をはがし、機能フィルムと貼り合わせると、機能フィルム/本発明における粘着シート/剥離紙(2)の形態になる。
パターンBにおいては、通常は剥離紙(2)上に粘着剤を塗工し、乾燥させることにより、剥離紙(2)上に粘着シートを形成し、さらに機能フィルムをラミネートする。
【0078】
[機能フィルム]
ディスプレイ用光学フィルターは様々な機能を有する機能フィルムを有する。様々な機能とは例えば、反射防止機能、防眩機能、電子波減衰機能、近赤外線減衰機能、調色機能、飛散防止機能、偏光機能、集光機能等が挙げられる。一つの機能フィルムが多数の機能を有していてもよい。機能フィルムは一般的に高分子フィルムを基材とし、各機能を有する層がその外部に設けられていたり、各機能を有する材料が基材内部に含有されていたり、様々な形態を持つ。
機能フィルムの基材として使用される高分子フィルムは、透明であると好ましい。ここで透明であるとは、厚さ100μmの場合に、JIS−R3106に定められた可視光透過率が50%以上であることである。
【0079】
高分子フィルムに好ましく使用できる材料としては、透明であれば特に限定されるものではないが、具体的に材料を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリスチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン6等のポリアミド、ポリイミド、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル等のビニル化合物、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ビニル化合物の付加重合体、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニリデン等のビニリデン化合物、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重体等のビニル化合物又はフッ素系化合物の共重合体、ポリエチレンオキシド等のポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等が挙げられる。
【0080】
高分子フィルムの厚みは通常、厚み10〜500μmである。薄すぎるとディスプレイ用光学機械的強度の観点から折れ曲がり易く取り扱いが困難である。また、また、厚すぎると可撓性が不足するために加工方法が制限されるために好ましくない。
また、250μm以上では可撓性が不足し、フィルムをロールで巻きとって利用するのに適さないことがある。従って、高分子フィルムの厚さは、50〜250μm、好ましくは75〜200μmが好適である。
厚さが50〜250μmの高分子フィルムは可撓性を有しており、ロール・ ツー・ロール法で連続的に取り扱えるため、効率よく、また長尺大面積のディスプレイ用光学フィルターを生産することができる。また厚さが250〜500μmの高分子フィルムは、枚葉方式を用いて各種機能層を形成することもできる。
【0081】
本発明においては、高分子フィルムの表面にスパッタリング処理、コロナ処理、火炎処理、紫外線照射、電子線照射などのエッチング処理や、下塗り処理等の処理を施すことにより、その上に形成される様々な機能を有する層の高分子フィルムに対する密着性を向上させてもよい。また例えば、電磁波遮蔽機能を持たせるために高分子フィルム上に透明導電層を設ける場合、高分子フィルムと透明導電層の間に任意の金属などの無機物層を形成してもよく、透明導電膜を成膜する前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などの防塵処理を施してもよい。
また、ディスプレイ用光学フィルターの耐擦傷性を向上させるために、高分子フィルムにハードコート層が形成されていても良い。
【0082】
[反射防止機能]
反射防止機能を有する機能フィルムは、反射防止層が基材上に形成され、フィルム表面の光線反射率を低減するものである。
反射防止層としては、具体的には、可視光域において屈折率が1.5以下、好適には、1.4以下と低い、フッ素系透明高分子樹脂やフッ化マグネシウム、シリコン系樹脂や酸化珪素の薄膜等を、例えば1/4波長の光学膜厚で単層形成したもの、屈折率の異なる金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物窒化物、硫化物等の無機化合物又はシリコン系樹脂やアクリル樹脂、フッ素系樹脂等の有機化合物の薄膜を2層以上多層積層したものがある。単層形成したものは、製造が容易であるが、反射防止性が多層積層に比べ劣る。多層積層したものは、広い波長領域にわたって反射防止能を有し、光学設計の制限が少ない。これら無機化合物薄膜の形成には、スパッタリング、イオンプレーティング、イオンピームアシスト、真空蒸着、室式塗工法等、従来公知の方法を用いればよい。
【0083】
[防眩機能]
防眩機能を有する機能フィルムは、防眩層が、基材上に形成され、基材中を通過する透過光や基材表面の反射光を拡散させて防眩するものである。
防眩層は0.1〜10μm程度の微少な凹凸を表面に有する。具体的には、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型または光硬化型樹脂に、シリカ、メラミン、アクリル等の無機化合物または有機化合物の粒子を分散させインキ化したものを、バーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ロールコート法等によって基材上に塗布し硬化させる。粒子の平均粒径は、1〜40μmである。または、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型又は光硬化型樹脂を基材に塗布し、所望のヘイズ又は表面状態を有する型を押しつけ硬化する事によっても防眩層を得ることができる。さらには、ガラス板をフッ酸等でエッチングするように、基材を薬剤処理することによっても防眩層を得ることができる。この場合は、処理時間、薬剤のエッチング性により、ヘイズを制御することができる。上記、防眩層においては、適当な凹凸が表面に形成されていれば良く、作製方法は、上記に挙げた方法に限定されるものではない。好適な防眩層のヘイズは、0.5%以上20%以下であり、好ましくは、1%以上10%以下である。
ヘイズが小さすぎると防眩能が不十分であり、ヘイズが大きすぎると平行光線透過率が低くなり、ディスプレイ視認性が悪くなる。
【0084】
[電磁波遮断機能]
電磁波遮断機能を有する機能フィルムは、透明導電層が基材上に形成され、基材に入射する電子波を反射及び又は吸収するものである。透明導電層とは、単層または多層薄膜からなる透明導電膜である。なお本発明では、高分子フィルムに透明導電層を形成したものを透明導電性フィルムという。
単層の透明導電層としては、導電性メッシュや、導電性格子状パターン膜、金属薄膜や酸化物半導体薄膜がある。
導電性メッシュとしては、透明性を有し電磁波遮断性能をもつものを広く使用することができる。例えば、特許3570420号、 特開2003―318596に記載されているものを好適に使用できる。
また、多層膜も透明性を有し電磁波遮断性能を有するものを広く使用することができる。例えば、特開2002−251144に記載されているものを好適に使用できる。
【0085】
[近赤外線減衰機能]
近赤外線減衰機能を有する機能フィルムは、近赤外線を反射又は吸収する材料を基材の内部又は外部に有する。近赤外線を反射する材料を具体的に例示すると、銀を主成分とする薄膜が挙げられる。銀を主成分とする薄膜は、耐久性や透明性を向上させるために、透明金属酸化物薄膜と積層した多層膜として用いられる場合が多い。例えば、特開2002−251144に記載されている。
近赤外線を吸収する材料を具体的に例示すると近赤外線領域に吸収を有する色素が挙げられる。例えば、特開平11−095026号に記載されている。
【0086】
[ディスプレイ用光学フィルターの構成および構成例]
ディスプレイ用光学フィルターは1枚のフィルムであってもよいし、複数のフィルムの積層体であっても構わない。構成するフィルムの枚数は、多いほど製造工程が多くなるので、少ない方が好ましい。枚数が3枚以下のフィルムからなる場合が好ましく、好ましくは2枚以下、より好ましくは1枚のフィルムからなる。なおここで対象とするフィルムの枚数は上記に記載した機能フィルムの枚数であり、フィルム同士を貼り合わせるための部材はその枚数に含まない。以下にディスプレイ用光学フィルターの具体的な構成を例示するが、これに限定されるものではない。
【0087】
反射防止又は防眩層/高分子フィルム/近赤外線吸収層/粘着剤層又は接着剤層/高分子フィルム/粘着剤層又は接着剤層/透明導電層/高分子フィルム、反射防止又は防眩層/高分子フィルム/近赤外線吸収層/粘着剤層又は接着剤層/透明導電層/高分子フィルム、反射防止又は防眩層/高分子フィルム/粘着剤層又は接着剤層/透明導電層/高分子フィルム、反射防止又は防眩層/高分子フィルム/透明導電層など。
【0088】
[評価および測定方法]
本発明における評価は、添加物等を含んだ状態の粘着シートで実施する。評価および測定方法は以下の通りである。
【0089】
(1)貯蔵弾性率(G´)、損失弾性率(G")
レオメトリックス社製の粘弾性測定装置ダイナミックアナライザーARESを用いて以下の条件で測定した。温度:20〜150℃、角振動数:ω=0.005〜500rad/sec、パラレルプレート:25mmφ、歪み量:3%。前述のARESで20℃を基準温度として温度−時間換算のマスターカーブを作成し、周波数f値はf(Hz)=ω/2πにより算出し、所望の周波数における貯蔵弾性率(G´)、損失弾性率(G")を読みとった。測定に用いるサンプルの厚さは100〜200(μm)である。
光学フィルターに貼り合わされた粘着シートに関して、その貯蔵弾性率(G´)及び損失弾性率(G")を測定するためのサンプルを作製する際は、光学フィルターの粘着シート部分をサンプルステージに貼り、サンプルステージと粘着シートを十分に密着させた後に、光学フィルターの粘着シート以外の部分を取り除く。
【0090】
(2)剥離強度
(2−1)粘着シートとディスプレイの剥離強度
剥離強度測定はJIS−Z0237に準拠して、(株)島津製作所社製のAUTOGRAPH(登録商標) AGS−500Dを用いて次の条件で測定した。温度23℃、剥離角度180°、剥離速度300mm/min、サンプル幅25mm。ディスプレイの代替としてガラスを使用して剥離強度を測定した。剥離強度用のサンプルは以下の手順で準備した。
ディスプレイ用光学フィルターに粘着シート層を形成した後、ガラス(日本板硝子製 フロートガラス 厚さ3mmt)とJIS−K6253に準拠した2kgのローラーで貼り合わせ、所望の温度湿度で所望の時間保持した。
本発明においては、粘着シート層を形成したディスプレイ用光学フィルターとガラスを貼り合わせた後に、温度80±5℃ 湿度10±10%RHで1時間加熱処理し、その後に温度23±5℃、湿度30±5%RHで24時間保持した後に、光学フィルターをガラスから剥離することにより、粘着シートとガラス板との間の剥離強度を測定した。
【0091】
(2−2)粘着シートと高分子フィルムの剥離強度
測定は(2−1)と同様に行った。
剥離強度を測定するためのサンプルの構成は以下の通りである。
ガラス/シアノアクリレート接着剤/本発明における粘着シート/高分子フィルム。
剥離強度を測定するためのサンプルは以下の手順で準備した。
ガラス又はアクリル樹脂板にシアノアクリレート接着剤を塗工し、シアノアクリレート接着剤上に本発明における粘着シートが貼り合わされた高分子フィルムをを本発明における粘着シートがシアノアクリレート接着剤層に接着するようにJIS−K6253に準拠した2kgのローラーで貼り合わせ、23℃で24時間静置した。その後に光学フィルターのガラス又はアクリル板からの剥離強度を測定すると、高分子フィルムと粘着シートとの間で剥離が生じ、該界面の密着性を知ることができる。
【0092】
なお、すでに光学フィルターがディスプレイ画面にラミネートされている場合は、まずディスプレイとの間の貼り合わせに使用されている粘着シートを含めて、光学フィルターをディスプレイ画面から剥離し、上述した構成の測定用サンプルを作製して評価する。
【0093】
(2−3)粘着シートと剥離紙の剥離強度
剥離強度測定は(2−1)と同様に行った。
剥離強度を測定するためのサンプルは以下の手順で準備した。
光学フィルター/粘着シート/剥離紙 の構成のサンプルを作製した。光学フィルター側をガラス板や金属板からなるサンプル台に両面テープでラミネートし固定した。剥離紙を剥離し、粘着シートと剥離紙の間の剥離強度を測定した。
なお、粘着シートと剥離紙の貼り合わせは、温度23〜27℃、湿度20〜50%で、圧力1MPaで実施した。
【0094】
(3)粘着シート組成
成分の構造は、熱分解ガスクロマトグラフィー、質量分光法(MASS)、熱分解赤外分光法、核磁気共鳴法(NMR)など一般的な手法により調べることができる。
なお、複数のモノマー成分が共重合又は混合されているポリマーにおいて、各ポリマーが主ポリマーに対して、共重合により結合しているか、または混合されているかの判断は、混合ポリマーのガラス転移温度(Tg)を調べることにより可能である。共重合されている場合は、Tgはひとつの値になり、混合している場合は、各ポリマーのTgが複数検出される。 Tgは市販の測定装置を用いて、公知の手法で測定すればよい。例えば、測定装置として、(株)島津製作所製 型番:DTG−60Aを用いることができる。
【0095】
分子量分布に関しては、分子量が15,000〜1,000,000であるポリマーについては浸透圧法、分子量が2,000,000までのポリマーについてはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で調べることができる。
ゲル分率は、以下の式にしたがって求める。
ゲル分率=(粘着シートを酢酸エチルに溶解した後に乾燥した後に析出する成分の質量)/(元の粘着シートの質量)×100。
【0096】
(4)長期信頼性試験
粘着シートの長期信頼性は、以下の方法で評価した。
寸法970mm×570mmの光学フィルターを作製し、その寸法以上のガラス板(本発明においては、日本板硝子(株)製 フロートガラス 寸法1000mm×600mm、厚さ3mmtを使用)、あるいはディスプレイ画面に光学フィルターを本発明の粘着シートでラミネートした。温度20〜25℃で20〜30時間エージングした後に温度65℃湿度96%RHで500時間処理した。処理した後にガラス板やディスプレイ画面から、光学フィルターが浮いたり、剥がれが生じていないか目視で評価し、浮きも剥がれがない場合に合格とした。
【0097】
(5)ディスプレイ用光学フィルターの分析
ディスプレイ用光学フィルターの構成及び各層の状態は断面の光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて調べることができる。
各層の組成はオージェ電子分光法(AES)、蛍光X線法(XRF)、X線マイクロアナライシス法(XMA)、ラザフォード散乱分析法(RBS)、X線光電子分光法(XPS)、真空紫外光電子分光法(UPS)、赤外吸収分光法(IR)、ラマン分光法、2次イオン質量分析法(SIMS)、低エネルギーイオン散乱分光法(ISS)等により測定できる。また、膜中の原子組成及び膜厚は、オージェ電子分光法(AES)や2次イオン質量分析(SIMS)を深さ方向に実施することによって調べることができる。
【実施例】
【0098】
(実施例1)
[粘着シートの作製]
温度計、攪拌機、還流冷却管、窒素導入管を備えたフラスコ中に、n−ブチルアクリレート72重量部、n−メチルアクリレート25重量部、アクリル酸3重量部、アクリル系マクロマー1重量部、酢酸エチル150重量部、トルエン50重量部、アゾビスイソブチロニトリル0.4重量部を投入し、窒素導入管より窒素を導入してフラスコ内を窒素雰囲気とした。その後、混合物を70℃に加温して8時間重合反応を行い、反応終了後、酢酸エチルにて希釈し、固形分25%に調整し、重量平均分子量80万のアクリレートポリマー溶液(溶液1)を得た。
【0099】
温度計、攪拌機、還流冷却管、窒素導入管を備えたフラスコ中に、トルエン60重量部をとり、窒素雰囲気中で90℃に昇温し、続いてメタクリル酸メチル95重量部、アクリル酸ジメチルアミノエチル5重量部、アゾビスイソブチロニトリル0.5重量部を投入し、混合物を70℃に加温して8時間重合反応を行い、重量平均分子量15万のメタアクリレートポリマー溶液(溶液2)を得た。
【0100】
次に上記のアクリレートポリマー溶液(溶液1)とメタアクリレートポリマー溶液(溶液2)を混合し、アクリルポリマー溶液(溶液3)を得た。
前記アクリルポリマー溶液(溶液3)に、アントラキノン系赤色色素(三井化学(株)社製)0.03重量部、アントラキノン系紫色素(三井化学(株)社製)0.03重量部、アザポルフィリン系オレンジ吸収色素(三井化学社(株)製)0.03重量部を添加、混合し、色素混合溶液(溶液4)を作製した。この色素混合溶液(溶液4)に架橋剤としてN,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシレンジアミンを0.14重量部を加え十分に攪拌し、塗工液(溶液5)を得た。
【0101】
つぎに溶液5を、シリコーン樹脂により剥離処理が施された厚さ38μmのPETフィルムである剥離紙上の剥離処理面側に乾燥後の膜厚が25μmになるように塗工して粘着剤層を形成し、温度90℃で5分間乾燥させ、幅600mm、長さ1000mmの、剥離紙付き粘着シート(粘着シート(A))を作製した。
【0102】
[透明導電性フィルムの作製]
幅600mm、長さ1000mmの透明導電性フィルムを以下の手順で準備した。
厚さ75μmのPETフィルム上に透明導電層をマグネトロンDCスパッタリング法により形成した。透明導電層の構成、形成条件は、以下の通りである。
透明導電層の構成は、PETフィルムから順に、酸化錫ドープ酸化インジウム(以下ITOと呼ぶ)層(膜厚:40nm)、銀層(膜厚:11nm)、ITO層(膜厚:95nm)、銀層(膜厚:14nm)、ITO層(膜厚:90nm)、銀層(膜厚:12nm)、ITO層(膜厚:40nm)の計7層を形成した。
ITO層は、ターゲットに酸化インジウムと酸化スズの焼結体(組成比In23:SnO2=90:10wt%)、スパッタガスにアルゴン・酸素混合ガス(全圧266mPa:酸素分圧5mPa)を用いて形成した。銀層は、ターゲットに銀、スパッタガスにアルゴンガス(全圧266mPa)を用いて形成した。
透明導電層の表面抵抗を、四探針測定法(プローブ間隔1mm)により測定したところ、2Ω/□であった。
【0103】
続いて、PETフィルムの透明導電層を形成していない側の面に粘着シート(A)を貼り合わせ、透明導電性フィルム/粘着シート(A)の構成、つまり、透明導電層/PETフィルム/粘着剤層/剥離紙の構成を得た。
【0104】
[反射防止フィルムの作製]
幅600mm、長さ1000mmの反射防止フィルムを以下の手順で作製した。
多官能メタクリレート樹脂に光重合開始剤を加え、さらにITO微粒子(平均粒径:10nm)を分散させたコート液を、PETフィルム(厚さ:100μm)上にグラビアコーターにて塗工し、紫外線で硬化することによって、PETフィルム上に導電性ハードコート膜(膜厚:3μm)を形成した。さらにその上に含フッ素有機化合物溶液をマイクログラビアコーターにて塗工・90℃乾燥・熱硬化させ、屈折率1.4の反射防止層(膜厚:100nm)を形成し、ハードコート性(JIS−K5400準拠の鉛筆硬度:2H)、ガスバリア性(ASTM−E96準拠、1.8g/m2・day)、反射防止性(表面の可視光線反射率:1.0%)、帯電防止性(表面抵抗:7×109Ω/□)、防汚性を有する反射防止フィルムを得た。
【0105】
[光学フィルターの作製]
反射防止フィルムのPETフィルム面に、以下の手法で粘着剤層を形成した。まず、アクリル系粘着剤の希釈液として、酢酸エチル/トルエン(50:50wt%)溶剤を準備した。この希釈液に所望の色素を溶解し、色素入り希釈液を得た。アクリル系粘着剤と色素入り希釈液(粘着剤と希釈液の重量比=80:20wt%)を混合し、コンマコーターにより反射防止フィルムに乾燥膜厚25μmとなるように塗工後、乾燥した。粘着剤層面に離型フィルムをラミネートして、反射防止フィルム/粘着剤層/離型フィルムの構成を得た。
【0106】
透明導電性フィルム/粘着シート(A)を970mm×570mmの大きさに裁断し、吸着プレートに上に真空吸着し、固定した。さらに、透明導電層の周縁部20mmが剥き出しになるようにして、残りの透明導電層面に反射防止フィルムから離型フィルムを剥離して、透明導電層上に反射防止フィルムをラミネートした。
透明導電層が剥き出しになった部分を覆うように周縁部の幅22mmの範囲に、銀ペースト(三井化学(株)製MSP−600F)をスクリーン印刷し、乾燥させ厚さ15μmの電極を形成した。支持板であるガラス板からはずして、粘着シート面に離型紙を有する光学フィルターを作製した。
【0107】
作製した光学フィルターの断面図を図1に、反射防止フィルム面側から見た平面図を図2に示す。図1の光学フィルターは、PETフィルム60に反射防止層70を形成した反射防止フィルム100と、PETフィルム30に透明導電層40を形成した透明導電性フィルム性フィルム90を粘着剤層50で貼り合わせ、透明導電層40上に電極80を形成し、PETフィルム30上に粘着シート20、剥離紙10を積層したものである。図2は、図1の光学フィルターを反射防止層70側から見た平面図であり、反射防止層70の周囲に電極80が形成されている。
【0108】
得られた光学フィルターについて、粘着シートの貯蔵弾性率測定および損失弾性率測定、粘着シートのゲル分率測定、ディスプレイ画面の代替としてガラスを用いて剥離強度測定、高分子フィルムとの剥離強度測定、剥離紙との剥離強度測定、剥離紙との剥離強度の経時変化評価、光学フィルターの光学特性としてのヘイズ測定、押し跡試験、長期信頼性評価を行った。
【0109】
(実施例2)〜(実施例7)
(比較例1)〜(比較例4)
粘着シートの組成を表1に記載の通り変更したほかは実施例1と同様に行った。
実施例1〜実施例7および比較例1〜比較例4の粘着シートの組成を表1に示す。
実施例1〜実施例7および比較例1〜比較例4の評価結果を表2、3に示す。
尚、貯蔵弾性率(G´)および損失弾性率(G")は、周波数λ(Hz)に対して、a×logλ+bで表せるため、aおよびbの値を示す。
【0110】
【表1】

【0111】
【表2】

【0112】
【表3】

【0113】
表1及び表2から、貯蔵弾性率、損失弾性率、粘着シートとガラスとの剥離強度が本発明の範囲内にあるとき、押し跡評価試験で良好な結果が得られ、リワーク性も有することがわかる。
【0114】
比較例1の結果から、貯蔵弾性率(G´)および損失弾性率(G")が、本発明の範囲より高い領域に位置する場合、すなわち、貯蔵弾性率(G´)が下記式(10)および式(11)を満たし、同時に損失弾性率(G")が下記式(12)および式(13)を満たすとき、接着性が低すぎるため、ガラスとの剥離強度が本発明における範囲の下限より低くなり、長期信頼性試験において不合格となる場合があることがわかった。また、リワーク性が不足し、ディスプレイ用光学フィルターをディスプレイから剥離した後にディスプレイ表面に糊残りが生じる場合があることがわかった。
0.11×logλ+3.89<log(G′) (式10)
(但し、λは周波数(Hz)であり、1×10−8≦λ≦1)
0.29×logλ+3.86<log(G′) (式11)
(但し、λは周波数(Hz)であり、1<λ≦1×10
0.13×logλ+3.13<log(G") (式12)
(但し、λは周波数(Hz)であり、1×10−8≦λ≦1)
0.40×logλ+3.40<log(G") (式13)
(但し、λは周波数(Hz)であり、1<λ≦1×10
【0115】
比較例2の結果より、貯蔵弾性率および損失弾性率が、本発明の範囲より低い領域に位置する場合、すなわち、貯蔵弾性率(G´)が下記式(14)および式(15)を満たし、同時に損失弾性率(G")が下記式(16)および式(17)を満たすとき、
押し跡評価試験においてへこみ量が大きく、打痕が発生する場合があることがわかった。さらには、接着力が高すぎるため、ガラスからの剥離強度が本発明の範囲を超え、ディスプレイ用光学フィルターをディスプレイから剥離することが困難となる場合があることがわかった。
log(G′)>0.11×logλ+5.22 (式14)
(但し、λは周波数(Hz)であり、1×10−8≦λ≦1)
log(G′)>0.29×logλ+5.14 (式15)
(但し、λは周波数(Hz)であり、1<λ≦1×10
log(G")>0.13×logλ+4.38 (式16)
(但し、λは周波数(Hz)であり、1×10−8≦λ≦1)
log(G")>0.40×logλ+4.60 (式17)
(但し、λは周波数(Hz)であり、1<λ≦1×10
【0116】
比較例3の結果より、貯蔵弾性率及び損失弾性率が本発明の範囲内であっても、粘着シートとガラスとの剥離強度が本発明の範囲の下回ると、長期信頼性試験で光学フィルターの浮きや剥がれが発生することがあることがわかった。
比較例4の結果より、貯蔵弾性率及び損失弾性率が本発明の範囲内であっても、粘着シートとガラスとの剥離強度が本発明の範囲を超えると、光学フィルターを剥離した際に糊残りを生じ、リワーク性が得られないことがわかった。
【0117】
(実施例8)〜(実施例10)、(比較例5)
粘着シートの組成を表4に記載の通り変更したほかは実施例1と同様に行った。
【0118】
(実施例11)、(比較例6)、(比較例7)
溶液4に、スチリルジアミノシランを表4に記載の量を加えてから、架橋剤としてN,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシレンジアミンを加えて十分に攪拌し、塗工液(溶液5)を得たことと、粘着シートの組成を表4に記載の通りに変更した点を除いて実施例1と同様に行った。
【0119】
実施例8〜実施例11および比較例5〜比較例7の粘着シートの組成を表4に示す。
実施例8〜実施例11および比較例5〜比較例7の評価結果を表5、表6に示す。
【0120】
【表4】

【0121】
【表5】

【0122】
【表6】

【0123】
いずれの実施例においても、粘着シートと高分子フィルムの剥離強度が、粘着シートとガラスの剥離強度よりも1(N/25mm)以上大きい場合に、リワーク性試験結果が良好であり、糊のこりが生じないものであることがわかる。
一方、比較例5から、1(N/25mm)未満の場合はリワーク性が悪いことがわかる。比較例7から、貯蔵弾性率G′及び損失弾性率G"が本発明で規定する範囲の下限を下回ると、押し跡評価試験でのへこみ量が大きくなり、光学フィルター用粘着シートとして使用に適していないことがわかる。
【0124】
(実施例12)〜(実施例31)、(比較例8)〜(比較例13)
粘着シートの組成を表7に記載の通り変更したほかは実施例1と同様に行った。マクロマーは、分子量1000のアクリル系マクロマーを使用した。
実施例12〜実施例31および比較例8〜比較例13の粘着シートの組成を表7に示す。実施例12〜実施例31および比較例8〜比較例13の評価結果を表8、表9に示す。
【0125】
【表7】

【0126】
【表8】

【0127】
【表9】

【0128】
(比較例14)
東洋インキ製造株式会社製 光学用リワーク性粘着剤 EXK04−498に、アントラキノン系赤色色素(三井化学(株)社製)0.03重量部、アントラキノン系紫色素(三井化学(株)社製)0.03重量部、アザポルフィリン系オレンジ吸収色素(三井化学社(株)製)0.03重量部を添加、混合し、色素混合溶液を作製した。さらに架橋剤として東洋インキ製造株式会社製 BX5627を0.1重量部を加え、十分に攪拌し塗工液を得た。
つぎに塗工液を、シリコーン樹脂により剥離処理が施された厚さ38μmのPETフィルムである剥離紙上の剥離処理面側に乾燥後の膜厚が25μmになるように塗工して粘着剤層を形成し、温度90℃で5分間乾燥させ、幅600mm、長さ1000mmの剥離紙付き粘着シート(粘着シート(A))を作製した。
上記の粘着シートを使用したほかは実施例1と同様に行った。
【0129】
(比較例15)
綜研化学株式会社製 光学用リワーク性粘着剤 SKダイン 銘柄:2094に、アントラキノン系赤色色素(三井化学(株)社製)0.03重量部、アントラキノン系紫色素(三井化学(株)社製)0.03重量部、アザポルフィリン系オレンジ吸収色素(三井化学社(株)製)0.03重量部を添加、混合し、色素混合溶液を作製した。さらに架橋剤として綜研化学株式会社製 E−AXを0.05重量部を加え、十分に攪拌し塗工液を得た。
つぎに塗工液を、シリコーン樹脂により剥離処理が施された厚さ38μmのPETフィルムである剥離紙上の剥離処理面側に乾燥後の膜厚が25μmになるように塗工して粘着剤層を形成し、温度90℃で5分間乾燥させ、幅600mm、長さ1000mmの剥離紙付き粘着シート(粘着シート(A))を作製した。
上記の粘着シートを使用したほかは実施例1と同様に行った。
【0130】
比較例14、15の評価結果を表10、表11に示す。
光学用リワーク性粘着剤として販売されているものでも本発明における範囲を満たさず、光学フィルター用粘着シートとして使用に適していないことがわかる。
【0131】
【表10】

【0132】
【表11】

【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】光学フィルターの一例を示す断面図。
【図2】光学フィルターの一例を示す平面図。
【符号の説明】
【0134】
10:剥離紙
20:粘着シート
30:ポリエチレンテレフタレートフィルム
40:透明導電層
50:粘着剤
60:ポリエチレンテレフタレートフィルム
70:反射防止層
80:電極
90:透明導電性フィルム
100:反射防止フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ画面に光学フィルターを直接貼り合わせるための粘着シートであって、該粘着シートの貯蔵弾性率(G´)が式(1)および式(2)を満たし、該粘着シートの損失弾性率(G")が式(3)および式(4)を満たし、ディスプレイ画面から光学フィルターを剥離する時のディスプレイ画面と粘着シートとの間を剥離面とする剥離強度が5(N/25mm)以上17(N/25mm)以下であるディスプレイ用光学フィルター用粘着シート。
0.11×logλ+3.89≦log(G′)≦0.11×logλ+5.22(式1)
(但し、λは周波数(Hz)であり、1×10−8≦λ≦1)
0.29×logλ+3.86≦log(G′)≦0.29×logλ+5.14(式2)
(但し、λは周波数(Hz)であり、1<λ≦1×10
0.13×logλ+3.13≦log(G")≦0.13×logλ+4.38(式3)
(但し、λは周波数(Hz)であり、1×10−8≦λ≦1)
0.40×logλ+3.40≦log(G")≦0.40×logλ+4.60(式4)
(但し、λは周波数(Hz)であり、1<λ≦1×10
【請求項2】
アルキル基の炭素数が1以上12以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、これに、カルボキシル基を含有する不飽和モノマーを共重合してなる(メタ)アクリル酸エステルと、
アルキル基の炭素数が1以上20以下のメタアクリル酸アルキルエステル、アルキル基の炭素数が1以上20以下のメタアクリル酸シクロアルキルエステル、メタアクリル酸ベンジル、スチレンから選ばれる1種又は2種以上のモノマーを主成分とし、これにアミノ基を含有し、不飽和モノマーを共重合してなる(メタ)アクリル酸エステルの、
混合物を主ポリマーとする請求項1に記載のディスプレイ用光学フィルター用粘着シート。

【請求項3】
請求項1または2に記載の粘着シートを使用したことを特徴とするディスプレイ用光学フィルター。
【請求項4】
ディスプレイ画面に光学フィルターを貼り付ける工程で、請求項1に記載の粘着シートを使用することを特徴とするディスプレイの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−297376(P2008−297376A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142704(P2007−142704)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】