説明

ディスプレイ用基板及びそれを用いたディスプレイ素子

【課題】軽量で、割れにくく、曲げることが可能であり、且つ、水蒸気及び酸素等に対し、十分なバリア性を有するディスプレイ用基板を提供し、該基板を用いたディスプレイ素子を提供する。
【解決手段】(1)ガラス基材3を、第1の樹脂基材1と第2の樹脂基材2で被覆し封止してなる基板であって、該基板の外表面が、実質的に同一の樹脂で形成されていることを特徴とするディスプレイ用基板。(2)ディスプレイ素子を構成する対向基板の少なくとも一方に、上記(1)記載のディスプレイ用基板を用いること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルフラットパネルディスプレイ等に好適に用いることのできるディスプレイ用基板、及びそれを用いたディスプレイ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯性が求められる情報端末用ディスプレイでは、液晶ディスプレイ(以下、LCDと略す)が広く使用されているが、更なる軽量化が求められており、その方策として、LCDのバックライトに有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略す)パネルを適用することが有望視されている。更に、有機ELをフルカラー化することで、次世代ディスプレイであるフレキシブルフラットパネルディスプレイ(以下、フレキシブルFPDと略す)の実用化に向けた開発も進められている。
【0003】
有機ELディスプレイを実用化する上で、保存中に発光面に現れるダークスポットの発生防止が最大の課題とされている。有機EL素子は、素子を構成する電極層、発光層ともに、大気中の酸素や水蒸気により変質し、ダークスポットと呼ばれる非発光部分が生じやすい。従って、有機EL素子の安定性と信頼性を向上させるためには、大気中の水蒸気、酸素等から保護し、素子の劣化を防止するバリア膜が必要であるが、これまでの有機ELのバリア膜として使用してきたガラス基板は、重い、割れ易い、曲げることができないといったことから、フレキシブルFPDには不向きであった。
【0004】
フレキシブルFPDに使用できるバリア膜は、軽量、かつ屈曲性の高いことが求められ、樹脂基材を用いることが種々検討されている。しかしながら、樹脂基材は水蒸気あるいは酸素に対するバリア性に乏しい。このバリア性改良として、特許文献1には、有機無機ハイブリッド材料、特に樹脂フィルムとガラスフィルムを熱ラミネート法あるいは接着材によって封止されたディスプレイ用基板が開示されているが、依然、バリア性は不十分であった。
【0005】
【特許文献1】特開2002−299041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、軽量で、割れにくく、曲げることが可能であり、且つ、水蒸気及び酸素等に対し、十分なバリア性を有するディスプレイ用基板を提供し、該基板を用いたディスプレイ素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討の結果、従来のバリア膜(有機無機ハイブリッド材料)において、ガラスフィルムを樹脂フィルムで封止する際に使用される接着材が、バリア膜の外被の外表面まで影響し、バリア性を低下させていることを見出し、この外表面の樹脂組成を改良することで、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の発明からなるものである。
[1] ガラス基材を、樹脂基材で被覆し封止してなる基板であって、該基板の外表面が、実質的に同一の樹脂で形成されていることを特徴とするディスプレイ用基板。
[2] ガラス基材の厚さが30μm〜200μmであることを特徴とする前記[1]記載のディスプレイ用基板。
[3] 前記基板の厚さの最大値が50μm〜500μmであることを特徴とする前記[1]または前記[2]記載のディスプレイ用基板。
[4] 樹脂基材を構成している樹脂が、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルサルホン及びポリアクリレートからなる群より選ばれた少なくとも1種である前記[1]〜[3]のいずれかに記載のディスプレイ用基板。
[5] 樹脂基材を構成している樹脂が、ポリシクロオレフィンである前記[1]〜[3]のいずれかに記載のディスプレイ用基板。
[6] 樹脂基材の封止部が、溶剤接着により封止されていることを特徴とする前記[1]〜[5]のいずれかに記載のディスプレイ用基板。
[7] 溶剤接着において、前記樹脂基材と実質的に同一の樹脂を溶剤に溶解させた樹脂溶液を使用する前記[6]記載のディスプレイ用基板。
[8] ディスプレイ素子を構成する対向基板の少なくとも一方に、前記[1]〜[7]のいずれかに記載のディスプレイ用基板を用いることを特徴とするディスプレイ素子。
[9] ディスプレイ素子を構成する対向基板の両方に、前記[1]〜[7]のいずれかに記載のディスプレイ用基板を用いることを特徴とするディスプレイ素子。
[10] ディスプレイ素子が液晶素子であることを特徴とする前記[8]〜[9]記載のディスプレイ素子。
[11] ディスプレイ素子が有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする前記[8]〜[9]記載のディスプレイ素子。
【0008】
なお、本発明における実質的に同一の樹脂とは、互いに、同一またはほぼ同一の化学組成を有し、化学的、物理的特性が同一またはほぼ同一であることを意味する。ここで、同一あるいはほぼ同一の化学組成とは、互いの繰返し単位構造を比較したとき、80〜100重量%の繰り返し単位が同等であり、共重合成分0〜20重量%を含む樹脂同士、
あるいは、樹脂自体が同等であって、該樹脂に対して、0〜10重量%の範囲で添加剤を加えてなる樹脂組成物同士を示す。
また、本発明の、基板の外表面とは、基板の表裏面全体及び端面(封止された端面の部分も含む)の全てを表す。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フレキシブルFPDのディスプレイ用基板として十分な屈曲性と、十分な水蒸気バリア性及び酸素バリア性を有する基板を提供することができ、該基板を用いることで、安定性、信頼性の優れたLCD、有機ELディスプレイを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施形態を、必要に応じて図を参酌しながら説明する。
本発明におけるガラス基材としては、例えば、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、低アルカリガラス、ソーダライムガラス、ゾルゲルガラス、あるいはこれらのガラスに表面処理を施したもの等が挙げられる。これらの中でも、安価なソーダライムガラスにアルカリ封止コートしたもの、無アルカリガラス等が好ましい。
【0011】
該ガラス基材の厚さは、好ましくは30μm〜200μmであり、より好ましくは、50μm〜150μmである。厚さが30μm以上であると製造が容易となるため好ましい。他方、ガラスの厚みが200μm以下であると、曲げ等の応力が加わった際に割れにくくなるため好ましい。ガラス基材の製造方法としては、特に制限はなく、リドロー法、フュージョン法、マイクロシート法、ゾルゲル法等の公知の方法を用いることができる。
【0012】
本発明におけるガラス基材は、更に樹脂基材と接触する部分の密着性を向上させるため、表面処理を行うことが好ましい。表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、プラズマ処理、シランカップリング剤コート処理、プライマーコート処理等が挙げられる。また、ガラス基材と樹脂基材を接着剤処理、粘着処理あるいは熱融着処理で接着させてもよい。中でも、製造上、簡便であることから、シランカップリング剤コート処理、プライマーコート処理が好ましい。シランカップリング剤、プライマー、接着剤等の薬剤で処理する場合は、樹脂基材を封止した後に、これらの薬剤が、前記ディスプレイ基板の外被を形成する樹脂基材の外表面にまで洩出しないように処理量、処理方法を調節する。
【0013】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、クロロプロピル基、メルカプト基、スルフィド基、イソシアネート基を有するもの等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0014】
シランカップリング剤としては、工業的に入手しやすい具体例として、
ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、
2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、
3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、
3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、
N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリブトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジイソプロポキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジブトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルエチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルエチルジエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルエチルジイソプロポキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルエチルジブトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリブトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジブトキシシラン、γ−アミノプロピルエチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルエチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルエチルジイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルエチルジブトキシシラン、γ−アミノプロピルトリアセトキシシラン、
3−ウレイドプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルメチルジエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン
3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、
ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、
3−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、
などが挙げられる。これらは、そのままでも使用できるし、大気中の水蒸気あるいは溶剤で溶解して使用する際に、該溶剤中に含まれる水分で、加水分解縮合を生じたものでも使用できる。
【0015】
これらの中でも密着性の観点から、エポキシ基、メタクリロキシ基、アミノ基、メルカプト基、スルフィド基を有するシランカップリング剤が好ましく、エポキシ基、アミノ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。
【0016】
前記表面処理の中でも、プライマーコート処理は、密着性を向上させるのに加え、ガラス基材表面に存在する微小なキズ、欠陥を改善し、割れにくくさせるのに効果があるため好ましい。プライマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル等の市販のプライマーを用いてもよいし、本発明で用いられる樹脂基材と実質的に同一の樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液をプライマーとして用いてもよい。特に、密着性の観点からは、公知のプライマーが好ましく用いることができる。
【0017】
シランカップリング剤コート処理あるいはプライマーコート処理の方法としては、特に制限はなく、ディッピング法、スプレーコート法、溶液スピン法、溶液ブレード法、メニスカスコーティング法、印刷法などの公知の方法を用いることができる。
【0018】
本発明のディスプレイ用基板は、厚さの最大値が、50μm〜500μmであることが好ましく、50μm〜300μmであることが更に好ましい。厚さの最大値が50μm以上ではハンドリング性が向上するため好ましく、他方、500μm以下ではフレキシブル性が向上するため好ましい。
【0019】
本発明に用いられる樹脂基材としては特に制限はないが、透明樹脂からなる基材が好ましく、該透明樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルサルホン及びポリアクリレートからなる郡から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。これらの中でも、吸湿寸法変形が小さいことから、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリシクロオレフィン、ポリアクリレートからなる郡から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロオレフィンがより好ましい。
【0020】
前記樹脂の例示の中でも、樹脂基材自体が低吸水率となるポリシクロオレフィンが最も好ましい。ポリシクロオレフィンから構成されるフィルムは、全光透過率92%程度の高透明性を有する他に、水蒸気透過率がポリエチレンテレフタレートの約1/10、ポリカーボネートの約1/40であり、水蒸気の遮断性能が極めて高いという特性を有しているため本発明において、好ましく用いることができる。
ポリシクロオレフィンは、環内にエチレン性二重結合を有するシクロオレフィン類の重合体を水素化して得られる重合体であって、シクロペンタジエンあるいはジシクロペンタジエンと相応するオレフィン類とをディールス・アルダー反応等により縮合させたノルボルネン系モノマー等のシクロオレフィン類を開環(共)重合し、水素化して得られる重合体が挙げられる。前記相応するオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリロニトリル等が挙げられ、エチレン、プロピレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルが好ましい。ポリシクロオレフィンは、例えば、三井化学(株)製の「アペル」(商標名)、日本ゼオン(株)製の「ゼオノア」(商標名)、ジェイエスアール(株)の「アートン」(商標名)、チコナ社の「トパス」(商標名)が市販品として、容易に入手可能であり、特に好ましい。
【0021】
樹脂基材の製造方法には特に制限はなく、溶融押出法、溶液キャスト法、インフレーション法等の公知の方法を用いることができ、未延伸でもよいし、一軸あるいは二軸方向に延伸してもよい。
【0022】
本発明のディスプレイ用基板は、ガラス基材を樹脂基材で被覆し、該樹脂基材と実質的に同一の樹脂より封止することにより製造できる。
封止方法としては、例えば、熱板溶着、振動溶着、超音波溶着、レーザー溶着、インパルス溶着、高周波誘導加熱溶着、電磁誘導加熟溶着、熱プレス溶着等の溶着接合、溶剤接着が挙げられる。
これらの中でも、レーザー溶着、インパルス溶着、高周波誘導加熱溶着、電磁誘導加熟溶着、熱プレス溶着、溶剤接着が、ガラス層が破損する可能性が低いため好ましく、溶剤接着が、より好ましい。
【0023】
本発明における溶剤接着とは、樹脂基材同士の接着させる表面を、有機溶剤により溶解ないし膨潤させ、両樹脂基材の表面の樹脂分子が、有機溶剤を媒体として互いに混じり合った後、有機溶剤を揮発させることで、接着されることを意味する。また、本発明の溶剤接着では、媒体として使用する有機溶剤に代わって、樹脂基材と実質的に同一の樹脂を、有機溶剤に溶解させた樹脂溶液を用いることもできる。樹脂基材同士が互いに、実質的に同一の樹脂で構成されているとき、接着部分を形成する樹脂も、結果として、実質的に同一の樹脂で形成される。
【0024】
以下、具体的に本発明の溶剤接着を用いたディスプレイ用基板の製造方法について説明する。
製造方法の第1の手段としては、互いに、ガラス基材を被覆できる程度の面積を有し、かつ、互いに実質的に同一の樹脂からなる第1および第2の樹脂基材によって該ガラス基材を被覆する。その際、ガラス基材の外周全てに、第1および第2の樹脂基材ともに、接着代を設けるようにガラス基材が配置され、両樹脂基材の接着代同士を重ね合わせて、溶剤接着により封止する。具体的に例示すると、
ア)第1の樹脂基材の表面上に、ガラス基材を配置した後、第2の樹脂基材を、第1の樹脂基材との間にガラス基材を挟み込むように被覆せしめ、接着代の部分に形成された両樹脂基材同士の間隙の全てに、前記有機溶剤又は前記樹脂溶液を浸透させることで接着代同士を溶剤接着し、封止する方法(図3参照)、
イ)第1の樹脂基材表面にガラス基材を配置する。次いで、予め、ガラス基材と接触する表面全面に前記有機溶剤又は前記樹脂溶液をコーティングした第2の樹脂基材で、ガラス基材を被覆し、両樹脂基材の接着代同士を溶剤接着し、封止する方法(図4参照)、
ウ)第1の樹脂基材の表面全面に、予め、前記有機溶剤又は前記樹脂溶液をコーティングした後、コーティングした表面にガラス基材を配置し、次いで、第2の樹脂基材で被覆し、両樹脂基材の接着代同士を溶剤接着し、封止する方法(図5参照)、
エ)第1及び第2の樹脂基材の表面全面に、予め、前記有機溶剤又は前記樹脂溶液をコーティングした後、両樹脂基材のコーティング処理した表面でガラス基材を挟み込むように配置し、次いで、両樹脂基材の接着代同士を溶剤接着させ、封止する方法(図6参照)
が挙げられる。
【0025】
また、製造方法の第2の手段として、第2の樹脂基材による被覆を、有機溶剤に溶解させた樹脂溶液を塗装することで、行うことができる。具体的には、
オ)第1の樹脂基材の上に、ガラス基材を配置した後、ガラス基材の上方向から、前記樹脂溶液をコーティングし、ガラス基材、第1の樹脂基材の接着代を塗装し、塗装された樹脂溶液を乾燥、膜化することによって第2の樹脂基材を形成すると同時に、第1の樹脂基材の接着代部が溶剤接着させ、封止する方法(図7参照)
を挙げることができる。
【0026】
前記のように、溶剤接着には有機溶剤または樹脂溶液のいずれも用いることができるが、ガラス基材縁部の欠陥を改善し、割れにくくさせるため樹脂溶液を用いるのが好ましい。樹脂溶液の濃度は特に制限はないが、0.01〜30重量%が好ましく、0.1〜10重量%がより好ましい。0.01重量%以上であるとガラス基材縁部の欠陥を改善し、割れにくくさせるのに効果があり、他方30重量%以下であると、樹脂溶液の粘度が低くなり好ましい。
【0027】
有機溶剤又は樹脂溶液に使用する溶剤は、樹脂基材における接着面が溶解ないし膨潤すれば特に制限はないが、予め製造した樹脂基材に対する溶解速度が低い溶剤を使用することが好ましい。溶解速度が速いと、接着・封止する過程で、樹脂基材の表面に、表面荒れ等が生じる場合があり、操作が煩雑になるため、好ましくない。溶解速度は、溶解度の高い溶媒と溶解度の低い溶媒を混合し、溶解速度を適度に調整した混合溶媒を用いることもでき、これは使用する樹脂基材に対して、予備実験を行うことによって適宜決定することができる。
【0028】
有機溶剤又は樹脂溶液を熱処理し、有機溶剤自体または樹脂溶液に含まれる溶剤を揮発させる方法として、自然乾燥のみでなく、伝導熱、輻射熱、高周波誘導、熱プレス、真空プレスなどを用いてもよい。これらの中でも、熱プレス、真空プレスがディスプレイ用基板の平滑性が良好となるため好ましい。
【0029】
また、各種用途に応じて、他の層を付加してもよく、例えば、円偏光フィルタ、光拡散層、各種レンズフィルム、色純度の改善や色調変換のための各種カラーフィルター、電極、保護膜等が挙げられる。
【0030】
本発明のディスプレイ基板は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、電子ペーパー等のフラットパネルディスプレイ用基板等に好適に使用される。また、液晶ディスプレイ、信号、ネオンサイン等のバックライト用基板としても利用できる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
[水蒸気透過度の測定]
JIS Z0208(カップ法)に準拠して温度40℃、相対湿度90%の条件で測定した。尚、本評価の測定限界は0.03g/m2/dayである。
[耐屈曲性試験]
60mmφの棒に1回巻きつけた後、ガラス基材の亀裂の有無を目視にて確認した。
【0032】
製造例1(ガラス基材の表面処理)
厚さ50μmの無アルカリガラス(松浪硝子工業社製 AF−45 10cm角サイズ)にプライマー(十条ケミカル社製 プライマーL)をスピンコータ−で塗布した後、常温乾燥し、ガラス基材の表面処理を行った。次いで、該表面処理を施した裏面にも、同様の表面処理を行った。
【0033】
製造例2(樹脂基材の作製)
トルエンにて30重量%となるように調整したポリシクロオレフィン(JSR社製 ARTON)溶液を、厚み100μmのポリシクロオレフィンフィルム(JSR社製 ARTON 12cm角サイズ)にスピンコータ−で塗布し、100℃で60分減圧乾燥を行い、樹脂基材を作成した。
【0034】
実施例1(フィルム基板の作製)
製造例1で得られたガラス基材を、製造例2で得られた樹脂基材で塗布処理を行った面がガラス基材と接触し、かつガラス基材全ての端部を越えて、樹脂基材の過剰部分があるように配置した。その後、150℃で2分真空プレスを行い、本発明のフィルム基板を作製した。次いで、上述の方法により、水蒸気透過度、耐屈曲性試験の評価を行った。結果を表1に示す。
【0035】
比較例1
ガラス基材を用いない以外は実施例1と同様にして、フィルム基板を作製した。結果を表1に示す。
【0036】
比較例2
両面セパレーターで挟持された市販のアクリル系接着フィルム(12cm角サイズ)の一方のセパレーターを剥離し、露出した接着面を厚み100μmのポリシクロオレフィンフィルム(JSR社製 ARTON 12cm角サイズ)にロールラミネータを用いて貼着し、アクリル系接着フィルム/ポリシクロオレフィンフィルムの複合体フィルムを得た。次いで、前記複合フィルムの他方のセパレーターを剥離し、露出した接着面を製造例1で得られたガラス層にロールラミネータを用いて貼着した。その後、前記ガラス層の他方に前記と同様に作製したポリシクロオレフィンフィルム/アクリル系接着フィルムを貼着し、フィルム基板を作製した。結果を表1に示す。
【0037】
比較例3
製造例1で得られたガラス基材をそのまま用いた。
【0038】
【表1】

表1の結果より、ガラス基材を樹脂基材で被覆し、該ガラス基材が完全に外環境から遮断されるように、封止部の全てが樹脂基材と同一種の材料で封止された実施例1では、水蒸気バリア性が高く、優れた耐屈曲性を示した。一方、フィルム基材にガラス基材が存在しない比較例1や、樹脂基材にガラス基材を積層していても、樹脂基材と実質的に同一の材料より接合されていない比較例2では、水蒸気のバリア性は低いものであった。また、ガラス基材のみの比較例3では、水蒸気のバリア性は高いものの、耐屈曲試験において破損した。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の封止方法における第1の形態を示す斜視図(一例として、略矩形状基板)
【図2】本発明による封止後のディスプレイ基板の上面図(上層である第2の樹脂基板に被覆されたガラス層を破線で示す) ガラス基板の周辺に設けられた樹脂基材の接着代を上面から示す。
【図3】本発明の製造方法ア)を示す断面図(封止状態を示す図2のA−A’線要部での断面で示す)
【図4】本発明の製造方法イ)を示す断面図(封止状態を示す図2のA−A’線要部での断面で示す)
【図5】本発明の製造方法ウ)を示す断面図(封止状態を示す図2のA−A’線要部での断面で示す)
【図6】本発明の製造方法エ)を示す断面図(封止状態を示す図2のA−A’線要部での断面で示す)
【図7】本発明の封止方法における第2の形態である、製造方法オ)を示す断面図(封止状態を示す図2のA−A’線要部での断面で示す)
【符号の説明】
【0040】
1 第1の樹脂基材
1’ 樹脂溶液で表面をコーティングした第1の樹脂基材
2 第2の樹脂基材
2’ 樹脂溶液で表面をコーティングした第2の樹脂基材
2E 第2の樹脂基材の接着代部分
2P 第2の樹脂基材の前駆体である樹脂溶液
3 ガラス基材
3’ 封止されたガラス基材(透視図)
4 第1、第2の樹脂基基材の間隙に浸透させた有機溶剤 または 樹脂溶液
10 (封止された)端面
12 第1と第2の樹脂基材を封止した樹脂基材(ディスプレイ基板の外被)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基材を、樹脂基材で被覆し封止してなる基板であって、該基板の外表面が、実質的に同一の樹脂で形成されていることを特徴とするディスプレイ用基板。
【請求項2】
ガラス基材の厚さが30μm〜200μmであることを特徴とする請求項1記載のディスプレイ用基板。
【請求項3】
前記基板の厚さの最大値が50μm〜500μmであることを特徴とする請求項1または2記載のディスプレイ用基板。
【請求項4】
樹脂基材を構成している樹脂が、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルサルホン及びポリアクリレートからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載のディスプレイ用基板。
【請求項5】
樹脂基材を構成している樹脂がポリシクロオレフィンである請求項1〜3のいずれかに記載のディスプレイ用基板。
【請求項6】
樹脂基材の封止部が、溶剤接着により封止されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のディスプレイ用基板。
【請求項7】
溶剤接着において、前記樹脂基材と実質的に同一の樹脂を溶剤に溶解させた樹脂溶液を使用する請求項6記載のディスプレイ用基板。
【請求項8】
ディスプレイ素子を構成する対向基板の少なくとも一方に、請求項1〜7のいずれかに記載のディスプレイ用基板を用いることを特徴とするディスプレイ素子。
【請求項9】
ディスプレイ素子を構成する対向基板の両方に、請求項1〜7のいずれかに記載のディスプレイ用基板を用いることを特徴とするディスプレイ素子。
【請求項10】
ディスプレイ素子が液晶素子であることを特徴とする請求項8または9記載のディスプレイ素子。
【請求項11】
ディスプレイ素子が有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項8または9記載のディスプレイ素子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−10834(P2007−10834A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−189453(P2005−189453)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】