説明

ディスプレイ用複合フィルタの製造方法

【課題】ディスプレイ用複合フィルタの製造方法であって、気泡の混入が少なく、短い工程で歩留りが良く、安価な複合フィルタの製造方法を提供する。
【解決手段】(A)透明基材11の一方の面にディスプレイの画像表示領域を全て覆うことが可能なメッシュ状領域を有する導電体層12が少なくとも積層されてなる電磁波遮蔽シートであって、前記メッシュ状領域のライン部の高さが3μm以下、メッシュ状領域の開口部の間口幅が150μm以上であり、且つメッシュ状領域の開口部に平坦化層の被覆の無い電磁波遮蔽シートを準備する工程と、(B)一方の面に接着剤層22が積層され、該接着剤層22が接着及び積層時に流動性を有し、且つ剥離抵抗値が5〜30N/25mmである、接着性光学フィルタの接着層側を、上記電磁波遮蔽シートの導電体層側に向け、積層させる工程とを有する、電磁波遮蔽シートと光学フィルタとの積層体から成るフィルタの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CRT、PDPなどのディスプレイから発生する電磁波を遮蔽(シールド)する電磁波遮蔽用シートと光学フィルタとを含んでなる複合フィルタの製造方法に関し、さらに詳しくは、メッシュ状の電磁波遮蔽シートと光学フィルタを積層する工程を含むディスプレイ用複合フィルタの製造方法であって、気泡の混入が少なく、短い工程で透明性に優れた複合フィルタを得ることができる、複合フィルタの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気電子機器の機能高度化と増加利用に伴い、電磁気的なノイズ妨害(Electro Magnetic Interference;EMI)が増え、陰極線管(CRTという)、プラズマディスプレイパネル(PDPという)などのディスプレイでも電磁波が発生する。プラズマディスプレイパネルは、データ電極と蛍光層を有するガラスと透明電極を有するガラスとの組合体であり、作動すると電磁波、近赤外線、及び熱が大量に発生する。
【0003】
通常、電磁波を遮蔽するためにプラズマディスプレイパネルの前面に、電磁波遮蔽用シートが前面板として設けられる。ディスプレイ前面から発生する電磁波の遮蔽性は、30MHz〜1GHzにおいて30dB以上の機能が必要である。さらに、ディスプレイの表示画像を視認しやすくするため、電磁波遮蔽用の金属メッシュ(ライン部)部分が見えにくく、また、メッシュパターン精度がよくメッシュの乱れがなく、適度な透明性(可視光透過性)を有することが必要である。
また、ディスプレイ前面より発生する波長800〜1,100nmの近赤外線も、他のVTRなどの機器を誤作動させるので、遮蔽する必要がある。更に、画像表示装置から発生する特定波長の不要な光を遮蔽したり、画像表示装置に必要とされる各種機能を付与したりする機能が求められる場合がある。
【0004】
上記機能をできるだけ少ない層構成で実現するために、上記電磁波遮蔽用シートと、近赤外線吸収層等を含んで成る光学フィルタ層とを積層して、画像表示装置から発生する不要な電磁波及び特定波長の光を遮蔽し、且つ画像表示装置に必要とされる各種機能を付与することができる複合フィルタをディスプレイパネルの前面板として用いることが検討されている。
【0005】
従来、メッシュ状の金属層を有する電磁波遮蔽用シートの製造方法としては、透明プラスチック基材に接着層を介して金属箔を貼り合わせた後に、金属箔をケミカルエッチングプロセス(フォトリソグラフィー工程)によって幾何学図形を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1)。しかしながら、この方法によれば、メッシュのパターン精度はよいものの、異種材料が積層されているために、反りが発生しやすい。また、メッシュ開口部の接着剤の表面には、金属箔の粗さが転写され凹凸状に残っているために、該粗さで光が乱反射して、メッシュ開口部の透明性が悪いという欠点がある。また、上記電磁波遮蔽用シートと光学フィルタを積層する工程では、上記電磁波遮蔽用シートの開口部がへこんでいるため、接着剤を用いて直接光学フィルタを積層すると、メッシュ開口部内に気泡が混入し、該気泡の光散乱により複合フィルタの透明性が悪化する恐れがある。金属箔を接着する方式を選択する以上、金属箔が接着工程において破断しないだけの強度を維持する為には金属箔の膜厚を10μm以上は確保する必要がある。それは即ちメッシュ開口部の深さ(段差)が10μm以上になることを意味する。そのため、従来、メッシュ開口部の接着剤表面の粗さを埋めるため、及び/又は気泡の混入を防止して透明化するため、透明化工程としてメッシュ開口部を予め平坦化樹脂と称される透明樹脂で充填して平坦化層を設ける工程の追加が必要であった。このような透明化工程は余分な材料が必要な上、工程も増加するので省略が望まれていた。
【0006】
【特許文献1】特許3388682号公報
【特許文献2】特開2004−241761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような問題を解決するため、例えば、特許文献2には、透明基材の一方の面へ、導電処理層を施し、その上に電解めっきにより金属メッキ層として金属層を形成した透明基材を準備する工程と、該金属メッキした透明基材の金属メッキ層及び導電処理層を、フォトリソグラフィー法でメッシュ状とする工程と、を含む電磁波遮蔽用シート及びその製造方法が提案されている。この方法によれば、透明基材に対して接着剤を使用せず、導電処理層を介して電解メッキ層を形成しているため、反りの問題が解消される上、接着剤層の表面に金属箔の粗さが転写されて開口部表面が粗面となる問題はないので、透明化工程を追加しなくともメッシュ開口部の透明性が良好であり、透明性低下の問題をある程度解消することができた。そして係る製造方法は金属箔を接着する方法に比べて金属層の膜厚は薄くできる。しかしながら、電磁波遮蔽性を発現せしめる為には薄膜化には限度が有り、最低1μm以上、好ましくは3μm程度の厚みは必要である。そのため、特許文献2の製造方法では、特許文献1の製造方法に比べ幾分改善傾向にはあるといえども、なお上記電磁波遮蔽用シートと光学フィルタを積層する工程における気泡混入の問題は充分に解消されなかった。
【0008】
例えば、オートクレーブ等を用いて真空雰囲気下で加熱ラミネート加工することにより、得られる複合フィルタの気泡の問題を解消することができるが、その場合は工程数が増え、また、設備負担が増加するという問題がある。
【0009】
本発明は上記問題点を解消するためになされたものであり、短い工程で、設備や余分な材料の負担を少なくして、メッシュ面への気泡の混入を防ぎ、透明性の高い複合フィルタを歩留まり良く、安価に得ることができる電磁波遮蔽シートと光学フィルタとの積層体から成るディスプレイ用複合フィルタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、特定の寸法の導電体層を有する電磁波遮蔽シートと、特定の接着剤層を有する光学フィルタを積層させることにより、ディスプレイ用複合フィルタを得る製造方法が、上記目的を達成することができるという知見を見出し、本発明を完成させるに到った。
すなわち、本発明は、(A)透明基材の一方の面に、適用されるディスプレイの画像表示領域を全て覆うことが可能なメッシュ状領域を有する導電体層が少なくとも積層されてなる電磁波遮蔽シートであって、前記メッシュ状領域のライン部の高さが3μm以下、メッシュ状領域の開口部の間口幅が150μm以上であり、且つメッシュ状領域の開口部に平坦化層の被覆の無い電磁波遮蔽シートを準備する工程と、(B)一方の面に接着剤層が積層されてなり、該接着剤層が接着及び積層時に流動性を有し、且つ剥離抵抗値が5〜30N/25mmである、接着性光学フィルタの接着層側を、上記電磁波遮蔽シートの導電体層側に向け、積層させる工程と、を有する、電磁波遮蔽シートと光学フィルタとの積層体から成るディスプレイ用複合フィルタの製造方法である。
【0011】
本発明の製造方法によれば、特定の形状寸法のメッシュ状領域と特定の接着剤層を組み合わせて用いることにより、メッシュ面への透明化工程、及びオートクレーブ処理の様な真空吸引工程を省略しながら、電磁波遮蔽シートと光学フィルタの積層及び接着時にメッシュ状領域の開口部内に気泡が混入することを防止できるため、該気泡の光散乱による複合フィルタの曇価(ヘイズ)が上昇するという不都合を回避でき、透明性の高い複合フィルタを生産効率良く得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のディスプレイ用複合フィルタの製造方法によれば、従来のメッシュ面への透明化工程を省略しながら、短い工程で設備や余分な材料の負担を少なくしても気泡の混入を防ぐことができるため、透明性が高い複合フィルタを歩留まり良く、安価に得ることができる。また、本発明のディスプレイ用複合フィルタの製造方法によれば、得られる複合フィルタに対する、オートクレーブ処理も不要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、(A)透明基材の一方の面に、適用されるディスプレイの画像表示領域を全て覆うことが可能なメッシュ状領域を有する導電体層が少なくとも積層されてなる電磁波遮蔽シートであって、前記メッシュ状領域のライン部の高さが3μm以下、メッシュ状領域の開口部の間口幅が150μm以上であり、且つメッシュ状領域の開口部に平坦化層の被覆の無い電磁波遮蔽シートを準備する工程と、(B)一方の面に接着剤層が積層されてなり、該接着剤層が接着及び積層時に流動性を有し、且つ剥離抵抗値が5〜30N/25mmである、接着性光学フィルタの接着層側を、上記電磁波遮蔽シートの導電体層側に向け、積層させる工程とを有する、電磁波遮蔽シートと光学フィルタとの積層体から成るディスプレイ用複合フィルタの製造方法である。
【0014】
本発明のディスプレイ用複合フィルタの製造方法においては、厚みが比較的薄く、比較的広い開口部の間口幅を有するメッシュ状導電体層を備えた電磁波遮蔽シートと、流動性を有し且つ特定の剥離抵抗値を有する接着剤層を有する接着性光学フィルタとを組み合わせることによって、メッシュ状導電体層の開口部内の隅々にまで接着剤層が行き渡り、且つ、接着剤層が気泡を取り込み難いため、大気圧雰囲気下で加圧部分を高温に加熱することなく積層しても、気泡混入を抑制し、透明性を向上することができる。
【0015】
以下、各工程について詳述する。
<(A)電磁波遮蔽シートを準備する工程>
本発明における(A)の工程では、透明基材の一方の面に、適用されるディスプレイの画像表示領域を全て覆うことが可能なメッシュ状領域を有する導電体層が少なくとも積層されている電磁波遮蔽シートであって、前記メッシュ状領域のライン部の高さが3μm以下、メッシュ状領域の開口部の間口幅が150μm以上であり、且つメッシュ状領域の開口部に平坦化層の被覆の無い電磁波遮蔽シートを準備する。
【0016】
本発明に用いられる電磁波遮蔽シートの一例を図1及び図2に示す。図1は、本発明に用いられる電磁波遮蔽シートの一例の断面図である。本発明の電磁波遮蔽シート1は、図1に示すように、透明基材11の一方の面に、メッシュ状領域101を少なくとも含む導電体層12が積層されて形成されている。例えば、導電体層12には、メッシュ状領域101の周囲の画像表示に影響しない部分に接地用領域が設けられていても良い。当該接地用領域は、通常、メッシュ状領域101と同じ層構成を有しながら開口部を形成しないものであり、ディスプレイへ設置した場合にアース(接地)をとり易いために設けられる。図2は本発明に用いられる電磁波遮蔽シートの一例の斜視図である。メッシュ状領域101を形成している導電体層12は、開口部103が密に配列したメッシュ状であり、該メッシュ状領域は開口部103と枠をなしているライン部104から構成されている。
【0017】
本発明の電磁波遮蔽用シートは、導電体層の表裏面上に、導電性を有しない層が更に積層されて形成されていても良い。当該導電性を有しない層としては、例えば、導電性を有しない防錆層や黒化層等が挙げられる。防錆層や黒化層等であっても、導電性を有する限り、本発明において導電体層に含まれる。導電体層の表裏面上に更に積層された導電性を有しない層は、導電体層と一体となって、メッシュ状領域や接地用領域を形成する。
上記電磁波遮蔽シートの形状は、接着性光学フィルタと貼り合わせる方法に応じて、連続帯状としても枚葉形状としてもよい。
【0018】
以下、本発明に用いられる電磁波遮蔽シートについて、透明基材11から順に説明する。
[透明基材]
透明基材11は、機械的強度が弱いメッシュ層を補強するための層である。従って、機械的強度と共に光透過性を有すれば、その他、耐熱性、絶縁性等も適宜勘案した上で、用途に応じたものを選択使用すれば良い。透明基材の具体例としては、例えば、樹脂等の有機材料からなる板及びシート(乃至フィルム。以下同様。)等、並びに、ガラス等の無機材料からなる板等である。
【0019】
上記有機材料からなる板及びシート等として用いる透明樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、テレフタル酸−イソフタル酸−エチレングリコール共重合体、テレフタル酸−シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコール共重合体などのポリエステル系樹脂、ナイロン6などのポリアミド系樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体などのスチレン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、イミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0020】
なお、これら樹脂は、樹脂材料的には、単独、又は複数種類の混合樹脂(ポリマーアロイを含む)として用いられ、また層的には、単層、又は2層以上の積層体として用いられる。また、樹脂シートの場合、1軸延伸や2軸延伸した延伸シートが機械的強度の点でより好ましい。
また、これら樹脂中には、必要に応じて適宜、紫外線吸収剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤などの添加剤を加えても良い。
【0021】
また、上記ガラス板のガラスとしては、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラスなどがあり、より好ましくは熱膨脹率が小さく寸法安定性および高温加熱処理における作業性に優れ、また、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラス等が挙げられ、ディスプレイの前面基板等とする電極基板と兼用することもできる。
なお、透明基材の厚さは、用途に応じたものとすれば良く特に制限は無く、透明樹脂から成る場合は、通常12〜1000μm程度であるが、好ましくは50〜500μmである。一方、透明基材がガラス板である場合には、通常1〜5mm程度が好適である。いずれの材料においても、上記未満の厚さとなると機械的強度が不足して反りや弛み、破断などが起こり、上記を超える厚さとなると過剰性能でコスト高となる上、薄型化が難しくなる。
【0022】
また、透明基材は、前面基板及び背面基板等からなるディスプレイ本体の一構成要素である前面基板と兼用しても良いが、前面基板の前に配置する前面フィルタとして電磁波シールドフィルタを用いる形態では、薄さ、軽さの点で、板よりもシートが優れており、また割れない等の点でも、ガラス板よりも樹脂シートが優れている。
また、電磁波シールドフィルタを連続的に製造し生産性を向上できる点では、透明基材は、メッシュ層形成等の少なくとも製造初期の段階においては、連続帯状のシートの形態で取り扱うのが好ましい。
【0023】
この様な点で、透明基材としては樹脂シートが好ましい材料であるが、樹脂シートのなかでも、特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂シートが、透明性、耐熱性、コスト等の点で好ましく、より好ましくは2軸延伸ポリエチレンテレフタレートシートが最適である。なお、透明基材の透明性は高いほどよいが、好ましくは可視光線透過率で80%以上となる光透過性が良い。
なお、樹脂シート等の透明基材は、適宜その表面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー処理、予熱処理、除塵埃処理、蒸着処理、アルカリ処理、などの公知の易接着処理を行ってもよい。
【0024】
[導電体層]
導電体層は、導電性を有する層であって、電磁波遮蔽機能を担う層であり、またそれ自体は不透明性であっても、メッシュ状の形状で開口部が存在することにより、電磁波遮蔽性能と光透過性を両立させている。
本発明において、メッシュ状領域を形成している導電体層の材料及び形成方法は特に限定されるものでは無く、従来公知の光透過性の電磁波遮蔽シートにおける各種導電体層を適宜採用できるものである。導電体層は、通常金属層を主とし、これに加えて、後述するような導電処理層や、場合により、導電性を有する黒化層や防錆層を含むものである。
【0025】
メッシュの形状は、任意で特に限定されないが、開口部の形状としては正方形が代表的である。開口部の形状は、例えば、正三角形等の三角形、正方形、長方形、菱形、台形等の四角形、六角形、等の多角形、或いは、円形、楕円形などが挙げられる。メッシュはこれら形状からなる複数の開口部を有し、開口部間は通常幅均一のライン状のライン部となり、通常は、開口部及び開口部間は全面で同一形状同一サイズである。具体的サイズを例示すれば、開口率及びメッシュの非視認性の点で、開口部間のライン部104の幅は、図2に示すようにライン幅Wと称し、25μm以下、好ましくは20μm以下であることが好ましい。但し、電磁波遮蔽効果の発現、破断防止のためには、少なくとも5μm以上確保することが好ましい。また、開口部の間口幅は(ラインピッチP)−(ライン幅W)で表され、本発明においては150μm以上、好ましくは200μm以上とするのが、光透過性、及び後述する光学フィルタとの積層時に開口部内に気泡が残留し難い点から好ましい。但し、MHz〜GHz帯の電磁波遮蔽性発現のためには、最大3000μm以下とする。また、本発明においては、最終的に得られるメッシュ状領域の厚み、すなわち、開口部間のライン部104の高さHを3μm以下とすることが好ましい。このような場合には、光学フィルタとの積層前に予めメッシュ面への平坦化工程を省略した場合であっても、電磁波遮蔽シートと光学フィルタの積層及び接着時に金属メッシュの開口部内に接着剤層が均一に入り易く、開口部内に気泡が残留し難いからである。この場合には、該気泡の光散乱による複合フィルタの曇価(ヘイズ)が上昇するという不都合を回避でき、透明性の高い複合フィルタを生産効率良く得ることができる。金属の電気抵抗値が増え電磁波遮蔽効果が損なわれやすくならないように、電磁波遮蔽機能の点を考慮すると、メッシュ状領域の寸法形状が前記の範囲であるとき、導電体層の厚みは1μm以上必要である。よって、メッシュ状領域のライン部の高さは、1〜3μmとなるようにすることが更に好ましい。なお、メッシュ状領域のライン部の高さは、導電体層12と、更に積層された導電性を有しない層のうち、開口部を形成されてライン部104を形成する層の厚みを全て含む総厚みをいう。また、メッシュ状領域のバイアス角度(メッシュのライン部と電磁波遮蔽シートの外周辺とのなす角度)は、ディスプレイの画素ピッチや発光特性を考慮して、モアレが出難い角度に適宜設定すれば良い。
【0026】
このような、メッシュ状領域を有する電磁波遮蔽用シートを準備する方法としては、特に制限されないが、中でも、本発明においては特に、本発明における所望の薄いメッシュの厚みにすることが可能であって、短い工程で歩留まりが良く安価に製造できる点から、透明基材の一方の面へ、金属薄膜をスパッタ等により形成して導電処理層を形成し、その上に電解メッキにより金属メッキ層として金属層を形成した透明基材を準備し、該金属メッキした透明基材の金属メッキ層及び導電処理層を、フォトリソグラフィー法でメッシュ状とする方法(例えば、特許第3502979号公報、特開2004−241761号公報)を用いることが特に好ましい。この方法によれば、透明性及びメッシュ精度に優れる電磁波遮蔽シートが得られる。そこで、上記方法によりメッシュ状領域を有する電磁波遮蔽用シートを準備する方法を、詳細に説明する。
【0027】
上記の方法により形成された、透明基材の一方の面に、メッシュ状領域を形成している導電体層が少なくとも積層されてなる電磁波遮蔽シートについて、その一例を図3に示す。図3は、図2のAA断面図、及びBB断面図である。図3(A)は開口部を横断する断面を示し、開口部103とライン104が交互に構成され、図3(B)はライン104を縦断する断面を示し、導電体層12からなるライン部104が連続して形成されている。図3において、メッシュ状領域101は導電処理層13と金属メッキ層14(以下両者を総称して単に金属層とも称する)とを含むものである。
【0028】
(導電処理層の形成)
上記のような透明基材11に、後述する金属電解メッキに先立ち導電処理を行い、導電処理層を形成する。該導電処理の方法としては、公知の導電性を持つ材料の薄膜を形成すればよい。該導電性を持つ材料としては、例えば金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロムなどの金属、或いはこれらの金属の合金から成る。また、酸化スズ、ITO、ATOなどの透明な金属酸化物でもよい。該導電処理は単層あるいは多層であってもよく、これらの材料を公知の真空蒸着法、スパッタリング法、無電解メッキ法などの方法で形成し導電処理層13とする。該導電処理層13の厚さは、メッキ時に必要な導電性が得られればよいので、0.001〜1μm程度の極薄い層であることが好ましい。
【0029】
(金属メッキ層)
該導電処理層13の面へ電解メッキ法により金属メッキ層14を形成して、金属層とする。該金属メッキ層14の材料としては、例えば金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロムなど充分に電磁波を遮蔽できる程度の導電性を持つ金属、或いはこれら金属を含む合金が適用できる。金属メッキ層14は単体でなくても、多層であってもよく、電解メッキのしやすさと導電性から銅又は銅合金が好ましい。また、黒化層及び/又はクロメート(処理)層を設ける場合には、金属メッキ層と黒化層又はクロメート層との接着力などからも銅又は銅合金が好ましい。本発明においては、上述のようにメッシュ状領域のライン部の高さを1〜3μmとするため、該金属メッキ層14の厚さは1〜2μm程度であることが好ましい。上記メッシュ状領域のライン部の高さがこれ以下の厚さでは、金属の電気抵抗値が増え電磁波遮蔽効果が損なわれやすく、これ以上の厚さでは、メッシュに加工した際にライン部と開口部の段差が大きくなり、接着剤層を積層する際に気泡が残留し易くなる。
【0030】
(黒化層)
電磁波遮蔽用シート1への外光を吸収させて、ディスプレイの画像の視認性を向上するために、メッシュ状領域101の観察側に黒化処理を行って、コントラスト感を出すことが好ましい。このために、図4に示されるように、金属メッキ層14の少なくとも片面に、必要に応じて、黒化層15A及び/又は15Bを設ける。該黒化層は金属メッキ層14面を粗化するか、全可視光スペクトルに亘って光吸収性を付与する(黒化する)か、或いは両者を併用するか、何れかにより行なう。また、透明基材11面に黒化層15Aを設ける場合には、該透明基材へ導電処理を行い、黒色メッキ層を設けた後に、金属メッキ層14を設ければよい。
【0031】
黒化層15A、15Bとしては、金属酸化物、金属硫化物の形成や種々の手法が適用できる。鉄の場合には、通常スチーム中、450〜470℃程度の温度で、10〜20分間さらして、1〜2μm程度の酸化膜(黒化膜)を形成するが、濃硝酸などの薬品処理による酸化膜(黒化膜)でもよい。また、銅の場合には、銅を硫酸、硫酸銅及び硫酸コバルトなどからなる電解液中で、陰極電解処理を行って、カチオン性粒子を付着させるカソーディック電着が好ましい。該カチオン性粒子を設けることでより粗化し、同時に黒色が得られる。記カチオン性粒子としては、銅粒子、銅と他の金属との合金粒子が適用できるが、好ましくは銅‐コバルト合金の粒子である。該カチオン性粒子の粒径は、黒濃度の点から、平均粒径0.1〜1μm程度が好ましい。
【0032】
該黒化層の好ましい黒濃度は0.6以上である。なお、黒濃度の測定方法は、COLOR CONTROL SYSTEMのGRETAG SPM100−11(キモト社製、商品名)を用いて、観察視野角10度、観察光源D50、照明タイプとして濃度標準ANSITに設定し、白色キャリブレイション後に、試験片を測定する。また、該黒化層の光線反射率としては5%以下が好ましい。光線反射率は、JIS−K7105に準拠して、ヘイズメーターHM150(村上色彩社製、商品名)を用いて測定する。また、反射率の測定に換えて、色差計により反射のY値で表わしてもよく、この際にはY値として10以下が好ましい。
【0033】
(防錆層)
さらに、金属メッキ層14の少なくとも片面を覆うように、また、黒化層を設けた場合には、黒化層15A及び/又は15Bの少なくとも片面を覆うように、防錆層16A及び/又は16Bを設けることが好ましい。
該防錆層16A、16Bは、防錆機能と黒化層の脱落や変形を防止するために、少なくとも、黒化層上に設けることが好ましい。該防錆層16Bとしては、ニッケル、亜鉛、及び/又は銅の酸化物、又はクロメート処理層が適用できる。ニッケル、亜鉛、及び/又は銅の酸化物の形成は、公知のメッキ法でよく、厚さとしては、0.001〜1μm程度、好ましくは0.001〜0.1μmである。
【0034】
防錆層16Aを、透明基材11面の黒化層15A面に設ける場合には、透明基材へ導電処理を行い、上記の16Bと同様の材料及び方法で防錆層16Aを設ければよい。この場合には、該防錆層16A面へ、黒色メッキ層(黒化層15Aに相当する)、金属メッキ層14、さらに必要に応じて、黒化層15B、防錆層16Bを順次設ける。
黒化層15A、15B、及び防錆層16A、16Bは、少なくとも観察側に設ければよく、コントラストが向上してディスプレイの画像の視認性が良くなる。また、他方の面、即ちディスプレイ面側に設けてもよく、ディスプレイから発生する迷光を抑えられるので、さらに、画像の視認性が向上する。
【0035】
次に、上述のように設けられた透明基材上の導電体層を、フォトリソグラフィー法でメッシュ状とする工程について説明する。
まず、上記のように準備した透明基材上の導電体層、例えば透明基材上の金属層(金属メッキ層)14面へ、レジスト層を設け、メッシュパターン化し、レジスト層で覆われていない部分の金属層14をエッチングにより除去した後に、レジスト層を除去する所謂フォトリソグラフィー法で、メッシュ状の金属層とする。さらに、既存の設備を使用でき、これらの製造工程の多くを連続的に行うことで、品質がよく、かつ、生産効率が高く歩留りがよく、安価に生産できる。
【0036】
(フォトリソグラフィー法)
該積層体の導電体層面へ、レジスト層をメッシュパターン状に設け、レジスト層で覆われていない部分の導電体層(導電処理層13及び金属メッキ層14)をエッチングにより除去した後に、レジスト層を除去するフォトリソグラフィー法で、メッシュ状とする。なお、その際、導電体層以外に、その他の導電性を有しない層も積層されている場合は、開口部に対応する領域においては、その他の層も導電体層と共にエッチング除去する。
【0037】
(マスキング)
まず、透明基材11と導電体層12の積層体の導電体層側の面をフォトリソグラフィー法でメッシュ状とし、メッシュ状領域101を形成する。この工程も、帯状で連続して巻き取られたロール状の積層体を加工して行く(巻取り加工、ロールツーロール加工という)ことが好ましい。該積層体を連続的又は間歇的に搬送しながら、緩みなく伸張した状態で、マスキング、エッチング、レジスト剥離する。透明基材11としてガラスを用いる場合には、1枚毎に加工する(枚葉加工、枚葉工程という)。
【0038】
まず、マスキングは、例えば、メッシュ状領域を形成する導電体層12上へ感光性レジストを塗布し、乾燥した後に、所定のパターン版(フォトマスク)にて密着露光し、水現像し、硬膜処理などを施し、ベーキングする。尚、感光性レジストのネガ型、ポジ型の何れも使用可である。感光性レジストがネガ型の場合は、パターン版のメッシュパターンはライン部が透明なポジ(陽画)とする。又感光性レジストがポジ型の場合は、パターン版のメッシュパターンは開口部が透明なネガ(陰画)とする。又、露光パターンとしては、電磁波遮蔽用シートとして所望のパターンであり、最低限メッシュ状領域のパターンから構成される。更に必要に応じて、図示は省くが、メッシュ状領域の外周に接地用領域のパターンを追加する。
【0039】
レジストの塗布は、巻取り加工では、帯状の積層体(透明基材11と、導電体層12との積層体)を連続又は間歇で搬送させながら、メッシュ状領域を形成する導電体層12面へ、カゼイン、PVA、ゼラチンなどのレジストをディッピング(浸漬)、カーテンコート、掛け流しなどの方法で行う。また、レジストは塗布ではなく、ドライフィルムレジストを用いてもよく、作業性が向上できる。ベーキングはカゼインレジストの場合、200〜300℃で行うが、積層体の反りを防止するために、できるだけ低温度が好ましい。
【0040】
(エッチング)
マスキング後にエッチングを行う。該エッチングに用いるエッチング液としては、エッチングを連続して行う本発明には循環使用が容易にできる塩化第二鉄、又は塩化第二銅の水溶液が好ましい。また、該エッチングは、帯状で連続する鋼材、特に厚さ20〜80μmの薄板をエッチングするカラーTVのブラウン管用のシャドウマスクを製造する設備、工程と基本的に同様である。透明基材11としてガラスを用いる場合の枚葉加工もより古くから行われている。エッチング後は、水洗、アルカリ液によるレジスト剥離、洗浄を行ってから乾燥すればよい。このようにして形成された、メッシュ開口部の表面は透明基材が露出しているので、メッシュ開口部の透明性がよい。
【0041】
<(B)接着性光学フィルタの接着剤層と電磁波遮蔽シートの導電体層を積層する工程>
本発明に係る(B)の工程では、一方の面に接着剤層が積層されてなり、該接着剤層が接着及び積層時に流動性を有し、且つ剥離抵抗値が5〜30N/25mmである、接着性光学フィルタの接着層側を、上記電磁波遮蔽シートの導電体層側に向け、積層させる。
本発明に用いられる接着性光学フィルタの一例の断面図を図5に示す。図5に示されるように、本発明に用いられる接着性光学フィルタ20は、光学フィルタ21の一方の面に接着剤層22が積層されてなるものであり、当該光学フィルタ21は、透明基材23と機能発現層24とが積層されてなるものである。機能発現層としては、特に限定されないが例えば、近赤外線吸収層、ネオン光吸収層、紫外線吸収層、反射防止層、更にハードコート層、防汚層、防眩層等が挙げられる。これら機能発現層、透明基材、接着剤層の各々は単層の場合もあるし多層の場合もあるし、機能発現層と透明基材とが相互に積層された構成もあり得る。また、機能発現層が透明基材の機能を兼ねて、機能発現層と接着剤層から構成されるものであっても良い。或いは、各機能発現層間又は機能発現層と透明基材の間に、それぞれ接着剤層が設けられていても良い。本発明に用いられる光学フィルタは少なくとも一方の表面に接着剤層を有し、接着性を有するものとする。従って、機能発現層側に接着剤層が設けられた構成もあり得る。
上記接着性光学フィルタの形状は、電磁波遮蔽シートと貼り合わせる方法に応じて、連続帯状としても枚葉形状としてもよい。
【0042】
[接着性光学フィルタの層構成]
(透明基材)
光学フィルタに用いられる透明基材としては、電磁波遮蔽シートに記載したのと同様な透明基材を用いることができる。
【0043】
(機能発現層)
機能発現層のうち、近赤外線吸収層としては、近赤外線吸収剤を有する市販フィルム(例えば、東洋紡績社製、商品名No2832)を接着剤で積層したり、近赤外線吸収色素をバインダへ含有させて塗布してもよい。近赤外線吸収色素としては、光学フィルタが代表的な用途であるプラズマディスプレイパネルの前面に適用される場合、プラズマディスプレイパネルはキセノンガス放電を利用して発光する際に生じる近赤外線領域、即ち、800nm〜1100nmの波長域を吸収するもの、該帯域の近赤外線の透過率が20%以下、更に10%以下であることが好ましい。同時に近赤外線吸収層は、可視光領域、即ち、380nm〜780nmの波長域で、十分な光線透過率を有することが望ましい。近赤外線吸収色素としては、具体的には、ポリメチン系化合物、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ジチオール系化合物、イモニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、アミニウム系化合物、ピリリウム系化合物、セリリウム系化合物、スクワリリウム系化合物、銅錯体類、ニッケル錯体類、ジチオール系金属錯体類の有機系近赤外線吸収色素、酸化スズ、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アンモン、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化ランタン等の無機系近赤外線吸収色素、を1種、又は2種以上を併用することができる。また、バインダ樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が用いられる。又バインダ樹脂の乾燥、硬化方式としては、溶液(又はエマルジョン)からの溶媒(又は分散媒)の乾燥による乾燥固化方式、熱、紫外線、電子線などのエネルギーによる重合、架橋反応を利用した硬化方式、或いは樹脂中の水酸基、エポキシ基等の官能基と硬化剤中のイソシアネート基などとの架橋、重合等の反応を利用した硬化方式などが適用できる。
【0044】
機能発現層のうち、ネオン光吸収層は、光学フィルタがプラズマディスプレイ用として用いられる際に、プラズマディスプレイパネルから放射されるネオン光即ちネオン原子の発光スペクトルを吸収するべく設置される。ネオン光の発光スペクトル帯域は波長550〜640nmの為、ネオン光吸収層の分光透過率は波長550nmにおいて50%以下になるように設計することが好ましい。ネオン光吸収層は、少なくとも550〜640nmの波長領域内に吸収極大を有する色素として従来から利用されてきた色素を近赤外線吸収層のところに挙げたようなバインダ樹脂に分散させて形成することができる。該色素の具体例としては、シアニン系、オキソノール系、メチン系、サブフタロシアニン系もしくはポルフィリン系等を挙げることができる。
【0045】
また、機能発現層のうち、紫外線吸収層としては、例えば、紫外線吸収剤をバインダ樹脂に分散させて形成することができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン等の有機系化合物、微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム等からなる無機系化合物からなるものが挙げられる。当該バインダ樹脂としては、上記近赤外線吸収層のところに挙げたような樹脂を用いることができる。
【0046】
また、機能発現層のうち、反射防止層(AR層)としては、例えば、低屈性率層と高屈折率層とを交互に積層した多層構成が一般的であり、蒸着やスパッタ等の乾式法で、或いは塗工等の湿式法も利用して形成することができる。なお、低屈折率層はケイ素酸化物、フッ化マグネシウム、フッ素含有樹脂等が用いられ、高屈折率層には、酸化チタン、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ等が用いられる。
【0047】
また、機能発現層のうち、ハードコート層(HC層)としては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートプレポリマー、或いは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーを単独で或いはこれらの中から2種以上選択して組み合わせて配合した電離放射線硬化性樹脂を用いた塗膜として形成するとことができる。なおここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する複合的表記である。
【0048】
また、機能発現層のうち、防眩層(AG層)としては、樹脂バインダ中にシリカなどの無機フィラーを添加した塗膜形成や、或いは賦形シートや賦形版等を用いた賦形加工により、層表面に外光を乱反射する微細凹凸を設けた層として形成することができる。樹脂バインダの樹脂としては、表面層として表面強度が望まれる関係上、硬化性アクリル樹脂や、上記ハードコート層同様に電離放射線硬化性樹脂等が好適には使用される。
また、機能発現層のうち、防汚層は、一般的に、撥水性、撥油性のコートで、シロキサン系、フッ素化アルキルシリル化合物などが適用できる。撥水性塗料として用いられるフッ素系或いはシリコーン系樹脂を好適に用いることができる。例えば、反射防止層の低屈折率層をSiO2により形成した場合には、フルオロシリケート系撥水性塗料が好ましく用いられる。
【0049】
(接着剤層)
次に、本発明に用いられる光学フィルタにおいて、必須の層である、一方の面に積層される接着剤層について説明する。
当該接着剤層は、当該光学フィルタと前記電磁波遮蔽シートとを接着することが可能な層であり、接着及び積層時に流動性を有し、且つ剥離抵抗値が5〜30N/25mmであれば、その種類等は特に限定されるものではなく、各種の天然又は合成樹脂が用いられる。
【0050】
本発明に係る接着剤層は、前記電磁波遮蔽シートとの接着及び積層時に流動性を有する接着剤層である。このような接着剤層の場合は、電磁波遮蔽シートのメッシュ面が平坦化されていないものであっても、電磁波遮蔽シートと光学フィルタの接着及び積層時にメッシュの開口部内の隅々にまで接着剤層が行き渡るため、開口部内に気泡が残留することを防止できる。従って、メッシュ面への平坦化工程を省略しながら、気泡の光散乱による複合フィルタの曇価(ヘイズ)が上昇するという不都合を回避でき、透明性の高い光学フィルタを生産効率良く得ることができる。従って本発明における接着剤層が有する流動性は、接着剤層が変形してメッシュ状領域開口部内の空気と置換し、該開口部を充填し得る程度の流動性とする。本発明における接着剤層が有する流動性とは、外力に対して復元力を持たないか、或いは持っても僅かで、事実上無制限に変形、変位する性質をいう。例えば水の様なNewton粘性、ダイラタンシー又はティキソトロピックの様な非Newton粘性、或いはクリープ変形性を包括していう。目安として、該接着剤がメッシュ面に圧着される時に、100000cps以下、好ましくは50000cps以下程度の粘度を有することが好適なものとして挙げられる(C型粘度計での測定値。接着時の温度における値)。但し、電磁波遮蔽シートのメッシュ開口部を接着性光学フィルタと接着及び積層した以降は、必要に応じて、該接着剤の流動性を低下させても良い。即ち、電磁波遮蔽シートとの接着時においては、メッシュ開口部を確実に充填する都合上、接着剤の流動性は高い程好ましい。しかしながら、接着及び積層後は粘着剤の流動性は不要であり、寧ろ接着剤の流動性は、電磁波遮蔽シートと枚葉化接着性光学フィルタとの積層界面から接着剤が流出したり、接着剤層中に色素(着色剤)を添加した場合に、該色素の変褪色を促進する場合が有り、好ましくないからである。
【0051】
本発明に係る流動性を有する接着剤層は、粘着剤からなることが好ましい。ここで粘着剤とは、接着剤の1種をいい、接着剤のうち、接着の際には単に適度な、通常、軽く手で押圧する程度の加圧のみにより、表面の粘着性のみで接着可能なものをいう。粘着剤の接着力発現には、通常特に、加熱、加湿、放射線(紫外線や電子線等)照射といった物理的なエネルギー乃至作用が不要で、且つ重合反応等の化学反応も不要である。又、粘着剤は、接着後も再剥離可能な程度の接着力を経時的に維持し得るものである。このような粘着剤としては、特に制限は無く、公知の粘着剤として慣用されているものの中から、適度な粘着性(接着力)、透明性、塗工適性を有し、本発明において使用する光学フィルタの透過スペクトルを実質的に変化させることの無いものを適宜選択する。
【0052】
本発明に係る流動性を有する接着剤層は、接着及び積層時に流動性を有すれば良く、上記粘着剤からなる接着剤層の他に、溶剤を含有する樹脂からなる接着剤層であっても良いし、溶剤を含有することなくそれ自体室温で流動性を有する天然ゴムや合成樹脂、或いは反応モノマー中にその重合体が溶解しているようなシロップ型の粘着剤からなる接着剤層ものであってもよい。また、適宜温度をかけることにより溶融して流動性を有するホットメルト型の接着剤層であっても良い。更に、室温で液状の重合反応性モノマーを含有する接着剤層であって、積層後に光及び/又は熱により硬化させる形態をとる接着剤層であっても良い。尚、接着及び積層後に必要に応じて、接着剤層の流動性を低下させる方法としては、例えば、予め接着剤層中に架橋剤を添加し、電磁波遮蔽シートと接着して以後、加熱、紫外線照射等により、粘着剤を架橋乃至は重合せしめる方法等が好適な方法として挙げられる。
【0053】
好適に用いられる粘着剤としては、アクリル系粘着剤が挙げられる。アクリル系粘着剤は、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを含んで重合させたものである。炭素原子数1〜18程度のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体であるのが一般的である。なお、本発明において(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸をいう。
【0054】
ここで使用される(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸sec-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル及び(メタ)アクリル酸ラウリル等を挙げることができる。
また、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、通常はアクリル系粘着剤中に30〜99.5重量部の量で共重合されている。
【0055】
また、アクリル系粘着剤を形成するカルボキシル基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、マレイン酸モノブチル及びβ-カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基を含有するモノマーを挙げることができる。
更に、本発明で用いられるアクリル系粘着剤には、上記の他に、アクリル系粘着剤の特性を損なわない範囲内で他の官能基を有するモノマーが共重合されていても良い。他の官能基を有するモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル及びアリルアルコール等の水酸基を含有するモノマー;(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド及びN-エチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基を含有するモノマー;N-メチロール(メタ)アクリルアミド及びジメチロール(メタ)アクリルアミド等のアミド基とメチロール基とを含有するモノマー;アミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びビニルピリジン等のアミノ基を含有するモノマーのような官能基を有するモノマー;アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテルなどのエポキシ基含有モノマーなどが挙げられる。この他にもフッ素置換(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリロニトリルなどのほか、スチレン及びメチルスチレンなどのビニル基含有芳香族化合物、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニル化合物などを挙げることができる。
【0056】
さらに、本発明で用いられるアクリル系粘着剤には、上記のような他の官能基を有するモノマーの他に、他のエチレン性二重結合を有するモノマーを使用することができる。ここでエチレン性二重結合を有するモノマーの例としては、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル及びフマル酸ジブチル等のα,β-不飽和二塩基酸のジエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;ビニルエーテル;スチレン、α-メチルスチレン及びビニルトルエン等のビニル芳香族化合物;(メタ)アクリロニトリル等を挙げることができる。
また、上記のようなエチレン性二重結合を有するモノマーの他に、エチレン性二重結合を2個以上有する化合物を併用することもできる。このような化合物の例としては、ジビニルベンゼン、ジアリルマレート、ジアリルフタレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレ-ト、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
【0057】
さらに、上記のようなモノマーの他に、アルコキシアルキル鎖を有するモノマー等を使用することができる。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-エトキシブチルなどを挙げることができる。
【0058】
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの単独重合体であっても良い。
例えば、(メタ)アクリル酸エステル単独重合体としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸オクチル等が挙げられる。
【0059】
アクリル酸エステル単位2種以上を含む共重合体としては、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸2ヒドロキシエチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸2ヒドロキシ3フェニルオキシプロピル共重合体等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルと他の官能性単量体との共重合体としては、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−エチレン共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸2ヒドロキシエチル−スチレン共重合体が挙げられる。
例えば、(メタ)アクリル酸エステル単独重合体としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸オクチル等が挙げられる。
【0060】
アクリル酸エステル単位2種以上を含む共重合体としては、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸2ヒドロキシエチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸2ヒドロキシ3フェニルオキシプロピル共重合体等が挙げられる。
【0061】
(メタ)アクリル酸エステルと他の官能性単量体との共重合体としては、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−エチレン共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸2ヒドロキシエチル−スチレン共重合体が挙げられる。
アクリル系粘着剤の市販品としては、例えば、商品名:TU−41A(巴川製紙所製)、商品名:No.591、No.5915、No.5919M、CS9621、LA−50、LA−100、HJ−9210、No.595B(日東電工(株)製)等が好適に用いられる。
【0062】
又、ゴム系粘着剤としては、主成分として、例えば天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリイソブチレン、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体などの中から選ばれた少なくとも1種を含有するものが用いられる。
【0063】
また、接着剤層には、酸化防止剤を配合することが好ましい。得られる複合フィルタの接着剤層と導電体層との界面で、接着剤に含まれる酸成分によって導電体層が酸化され、色変化が起きるのを防ぐことができる。
更に、接着剤層には、所望に応じて、イソシアネート化合物等の架橋剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、充填剤等を配合することができる。
【0064】
なお、当該接着剤層中に、上述のような近赤外線吸収色素、及び/又は、ネオン光吸収色素を1種以上含有させてもよい。その場合、800nm〜1100nmの波長域における光線透過率が20%以下、中でも10%以下、560〜630nmの波長域における光線透過率が30%以下、中でも25%以下となるようにすることが好ましい。
【0065】
また、本発明において接着剤層は、表面平滑な硝子板に対する剥離抵抗値が5〜30N/25mmであり、更に5〜25N/25mm、特に10〜20N/25mmであることが好ましい。表面平滑な硝子板としては、例えば具体的には通常のフロートガラスをはじめ、液晶、PDP用パネルで使用するガラスなどが挙げられる。
【0066】
ここで上記表面平滑な硝子板に対する剥離抵抗値は、以下のようにして測定することができる。厚さ100μmの2軸延伸PETフィルムの片面に接着剤層を25g/m2(乾燥時)で塗工した物を、長さ150mm、幅25mmに切り抜いて、これをその接着剤層側が硝子板側を向くようにして、表面を脱脂した厚さ10mmの硝子板に貼り、これを引張り試験機を用いて、該硝子板と該PETフィルムとを両者の角度が180°となる方向に引張速度300mm/分で、20〜25℃の雰囲気中で引張って、剥離時抗張力として測定することができる。
【0067】
上記剥離抵抗値が上記範囲内の場合、後述する電磁波遮蔽シートと光学フィルタとを積層及び接着する工程の際に、メッシュの開口部内に気泡が混入することなく積層することができる。
また、得られる複合フィルタとディスプレイとを貼り合わせる際に、何らかの不具合が生じた場合に、接着性光学フィルタのみを再剥離し、再び光学フィルタを貼り合わせる必要が生じるが、上記剥離抵抗値が上記範囲内の場合、該接着性光学フィルタを再剥離する際に、凝集破壊及び界面破壊を起こすことなく、容易に剥離することが可能である。
【0068】
上記剥離抵抗値が5N/25mm未満であると、得られる複合フィルタの電磁波遮蔽シート−接着性光学フィルタ界面で経時で自然剥離したり、気泡が生じたりする恐れがある。また、上記剥離抵抗値は30N/25mmを超えると、後述する電磁波遮蔽シートと光学フィルタとを積層及び接着する工程の際に、メッシュの開口部内に気泡が混入しやすくなる。
【0069】
上記接着剤層は、上記光学フィルタの少なくとも一方の表面に、公知の層形成法、例えばロールコート、コンマコート、グラビアコート等の塗工法、或いは、任意形状での部分形成が容易なスクリーン印刷、グラビア印刷等の印刷法を適宜採用して形成することが出来る。接着剤層に粘着剤を用いる場合、粘着加工後の光学フィルタは、必要に応じて、その粘着面を公知のセパレータ等で保護しておくと良い。セパレータとしては、シリコーン等で表面を離型処理した2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム等の樹脂シート等を使用すれば良い。
【0070】
本発明において、このような接着剤層の膜厚は、5〜40μmの範囲内であることが好ましい。この範囲にすることにより、特に、電磁波遮蔽シートと光学フィルタとを積層及び接着する際に電磁波遮蔽シートにおけるメッシュの凹凸を良好に平坦化することが可能となるからである。
【0071】
なお、当該接着剤層中に、上述のような近赤外線吸収色素、紫外線吸収剤、及び/又は、ネオン光吸収色素を1種以上含有させてもよい。このようにすることにより、複数の機能層の機能を1層で兼務し、且つこれを接着剤層とも統合することができるため、複合フィルタとしての総厚み、工程数、原価を低減することが可能となり、好ましい。その場合、800nm〜1100nmの波長域における光線透過率が20%以下、中でも10%以下、560〜630nmの波長域における光線透過率が30%以下、中でも25%以下となるようにすることが好ましい。
【0072】
[電磁波遮蔽シートと接着性光学フィルタの積層]
本発明に用いられる電磁波遮蔽シートと接着性光学フィルタを接着及び積層することにより、ディスプレイ用複合フィルタを得る模式図である。
上記電磁波遮蔽シート1と接着性光学フィルタ20を、図6(A)に示すように、前者の導電体層側及び後者の接着剤層とが向かい合うように配置し、接着及び積層することにより、図6(B)に示すような複合フィルタを得ることができる。
【0073】
上記導電体層側に上記接着剤層を接着及び積層し、複合フィルタを製造する方法としては、特に限定されないが、加圧ロール等の加圧部分を備えるラミネーターを用いて、図6(A)の透明基材11及び後者の光学フィルタ21側から同時に加圧することにより、接着及び積層させる方法が挙げられる。本発明においては、上述のような特定の寸法を有するメッシュ状領域と、上述のような特定の接着剤層を積層させるため、大気圧雰囲気下で、加圧部分を加熱することなく積層しても気泡の混入を防ぐことが可能である。但し、通常は、接着剤層の流動性をより向上させる為に、50〜80℃程度に加熱することが多い。いずれにしても、本発明によれば、ロール等による加圧と、必要に応じて適宜加熱する程度で、十分であり、特に接着剤層側からの真空吸引は不要である。この場合には、例えばオートクレーブ処理の様な特殊な設備を用いる必要が無く、短い工程で設備負担を少なくすることができ、また、混入した気泡を消失させる処理も不要である。
【0074】
その積層する例を更に示せば、連続帯状の光学フィルタ用の樹脂シートの粘着剤層側と、メッシュ状領域を形成してある連続帯状の電磁波遮蔽シートの導電体層側を、ロールツーロール方式でロール式ラミネーターを用いて積層する方法が挙げられる。
ロールツーロール方式を用いる積層方法は生産効率が良く、低コストであるため好ましいが、電磁波遮蔽シート及び接着性光学フィルタのいずれか一方、又は両方を枚葉形状として、各種ラミネーターを用いて積層しても良い。
【0075】
ラミネーターは、ロール式、平板式等、光学フィルタ及び電磁波遮蔽シートに対して加圧することができるものであればかまわないが、ロールツーロール方式に対応すること及び気泡の混入を防ぐことが容易である点や、連続生産が可能な点からロール式ラミネーターを用いることが好ましい。
積層時の加圧は特に限定されないが、例えばロール式ラミネーターを用いる場合、1〜20kgf/cmが好ましい。積層時の加圧部分の温度も特に限定されないが、設備負担の点からは低温であるほうが好ましく、20℃〜80℃であるほうが好ましい。但し、必要に応じて80℃以上に加熱しても良い。
【0076】
図7は、ラミネーターを用いた電磁波遮蔽シートと接着性光学フィルタの積層工程の一例である。ラミネーターの第1給紙部31に電磁波遮蔽シートを巻き取ったものを配置し、且つ第2給紙部32に離型フィルム/接着性光学フィルタからなる積層シートを巻き取ったものを配置する。次いで第1給紙部31から、電磁波遮蔽シートを繰り出しながら、一方、第2給紙部32から離型フィルム/接着性光学フィルタからなる積層シートを繰り出すと同時に離型フィルム巻取りロール34に巻取り、電磁波遮蔽シートと接着性光学フィルタを第1ラミネートユニット35で、約10kgf/cmのラミネート圧でラミネートし、次いで、第2ラミネートユニット36で約10kgf/cmのラミネート圧でラミネートして、巻取りロール37に巻き取って、電磁波遮蔽シート/接着剤層/光学フィルタからなる積層シートを得る。
【0077】
以上のような工程を含む製造方法により製造された本発明のディスプレイ用複合フィルタは、電磁波遮蔽シートとして、前記メッシュ状領域のライン部の高さが3μm以下、メッシュ状領域の開口部の間口幅が150μm以上であり、且つメッシュ状領域の開口部に平坦化層の被覆の無い電磁波遮蔽シートを用いると共に、前記接着性光学フィルタとして、接着及び積層時に流動性の接着剤層を有し、且つ剥離抵抗値が5〜30N/25mmである、接着性光学フィルタを用いるので、上述したようなメッシュ状領域の透明化工程が不要であり、余分な材料及び工程を削減することが可能な上、優れた透明性を有する複合フィルタを生産効率良く得ることができる。
【0078】
本発明に係る製造方法によって得られるディスプレイ用複合フィルタは、透明性が高いものが得られ、具体的にはヘイズが3以下であることが好ましい。ここでヘイズは、JIS K7105−1981に準拠した方法により測定された値を意味する。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0079】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。尚、実施例中、部は特に特定しない限り重量部を表す。
【0080】
<実施例1>
(1)電磁波遮蔽シートの製造
図1(A)、及び図2に示す電磁波遮蔽フィルタ1を次の様にして作製した。
透明基材11として厚さ100μmで片面にポリエステル樹脂系プライマー層を形成した、連続帯状の無着色透明な2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用意した。
この透明基材のプライマー層上に、スパッタ法で、順次、厚さが0.1μmのニッケル−クロム合金層及び厚さが0.2μmの銅層(導電体層の一部)を設けて導電処理層13とした。
【0081】
該導電処理層面に、硫酸銅浴を用いた電解メッキ法で厚さが2.0μmの銅の金属メッキ層14(導電体層の残りの部分)を設け、これら導電処理層13及び金属メッキ層14の両層を導電体層12として形成して、透明基材上に導電体層が接着剤層を間に介さずに、直接形成された銅貼り積層シートを作製した。
次いで、該導電体層上に黒化層15Bを形成した。具体的には、アノードにニッケル板を使用し、硫酸ニッケルアンモニウム水溶液と硫酸亜鉛水溶液とチオシアン酸ナトリウム水溶液との混合水溶液からなる黒化処理メッキ浴に、上記メッシュ状の導電体層が透明基材上に形成された積層シートを、浸漬して電解メッキを行って黒化処理して、ニッケル−亜鉛合金からなる黒化層15Bを、露出している導電体層全面に被覆形成して、導電体層12(導電処理層13、金属メッキ層14、及び黒化層15A)が積層されたシートを得た。
【0082】
次いで、上記積層シートに対して、その導電体層をフォトリソグラフィー法を利用したエッチングにより、開口部103及びライン部104とから成るメッシュ状領域、及びメッシュ状領域の4周を囲繞する外縁部に額縁状の接地用領域を形成した。
エッチングは、具体的には、カラーTVシャドウマスク用の製造ラインを利用して、連続帯状の上記積層シートに対してマスキングからエッチングまでを一貫して行った。すなわち、上記積層シートの導電体層面全面に感光性のエッチングレジストを塗布後、所望のメッシュパターンを密着露光し、現像、硬膜処理、ベーキングして、メッシュのライン部に相当する領域上にはレジスト層が残留し、開口部に相当する領域上にはレジスト層が無い様なパターンにレジスト層を加工した後、塩化第二鉄水溶液で、導電体層及び黒化層を、エッチング除去してメッシュ状の開口部を形成し、次いで、水洗、レジスト剥離、洗浄、乾燥を順次行った。
【0083】
メッシュ状領域のメッシュの形状は、その開口部が正方形で非開口部となる線状部分のライン幅は10μm、そのライン間隔(ピッチ)は300μm、ライン部の高さは2.3μm、長方形の枚葉シートに切断した場合に、該長方形の長辺に対する劣角として定義されるバイアス角度は49度であった。また、メッシュ状領域101は、完成された複合フィルタを画像表示装置(ディスプレイ)前面に装着した際に、該ディスプレイの画像表示領域に対峙する部分が存在し、又該メッシュ状領域の周縁部には、複合フィルタを四角形の枚葉シートに切断した時に、その四辺外周に接地用領域として開口部が無い幅15mmの額縁部を残す様なパターンに設計した。このようにして、平坦化層の無い、実施例1の電磁波遮蔽用シート1を得た。
【0084】
(2)枚葉化接着性光学フィルタの製造
次いで、上記電磁波遮蔽用シート1上に積層すべき枚葉化接着性光学フィルタ20を用意した。光学フィルタの層構成としては、反射防止層/紫外線吸収層/接着剤層22(接着剤層22は近赤外線吸収層、ネオン光吸収層を兼用)の構成のものを準備した。尚、「/」はその左右の層が積層一体化されている事を示す。
該紫外線吸収層としては、紫外線吸収剤を練込んで成る透明な、厚さ50μmの2軸延伸PETフィルムであるテトロンフィルム(帝人(株)製、商品名「HBタイプ」)を用いた。又該紫外線吸収層は、反射防止層を塗工形成する為の基材としても利用する。
【0085】
該反射防止層は、該紫外線吸収層の上に、高屈折率層と低屈折率層を順次形成した物から構成した。
ここで、高屈折率層は、ジルコニア超微粒子を紫外線硬化性樹脂中に分散させた組成物(JSR(株)製、商品名「KZ7973」)の厚さ3μm、屈折率1.69の硬化物層から成る。
又、低屈折率樹脂層は、フッ素樹脂系の紫外線硬化性樹脂(JSR(株)製、商品名「TM086」)の厚さ100nm、屈折率1.41の硬化物から成る。
又該紫外線吸収剤層の反射防止層とは反対側に接着剤層22を形成し、且つ該接着剤層22中に、近赤外線吸収剤、及びネオン光吸収剤を添加することにより、該接着剤層を近赤外線吸収層、及びネオン光吸収層と兼用した。
【0086】
ネオン光吸収剤としてシアニン系色素(旭電化工業株式会社製、商品名「TY−167」)を、又近赤外線吸収剤として、ジイモニウム系色素(日本カーリット社製、商品名「CIR1085」)、フタロシアニン系色素(日本触媒社製、商品名「IR12」)、及びフタロシアニン系色素(日本触媒社製、商品名「IR14」)を添加した。
接着剤としては、アクリル樹脂系の粘着剤(製造元;巴川製紙所製、商品名;「TU−41A」、剥離抵抗値;10N/25mm)を用いた。
上記のような構成の光学フィルタ20を、電磁波遮蔽シートのメッシュ上領域の画像表示領域と対峙する部分(長方形)と同形状で、且つ寸法は縦横共に4mmずつ大きく裁断し、1枚の枚葉化接着性光学フィルタとした。
【0087】
(3)複合フィルタの製造
そして、得られた該電磁波遮蔽用シート1と該枚葉化接着性光学フィルタ20とを、該接着剤層22が導電体層12の該メッシュ状領域と対向する向きで、且つ該枚葉化接着性光学フィルタが、該メッシュ状領域の画像表示領域と対峙する部分を全部被覆し、しかも該接地用領域の内周側2mmは該枚葉化接着性光学フィルタで被覆され、一方、該接地用領域の外周側13mmは何も被覆されずに導電体層が露出する様に位置合わせした上で、互いに接着積層した。この際の積層条件としては、室温(20℃)にて、ゴムローラで最大10kg/cmの線圧で加圧して積層した。斯くして、実施例1の複合フィルタを製造した。
【0088】
<実施例2>
実施例1の複合フィルタにおいて、接着剤を、アクリル樹脂系の粘着剤(製造元;日東電工(株)、商品名;「No.591」、剥離抵抗値;7N/25mm)に換えた。その他は実施例1と同様にして、実施例2の複合フィルタを製造した。
【0089】
<実施例3>
実施例1の複合フィルタにおいて、接着剤を、アクリル樹脂系の粘着剤(製造元;日東電工(株)、商品名;「CS−9621」、剥離抵抗値;25N/25mm)に換えた。その他は実施例1と同様にして、実施例3の複合フィルタを製造した。
【0090】
<比較例1>
実施例1の複合フィルタにおいて、接着剤を、アクリル樹脂系の粘着剤(製造元;日東電工(株)製、商品名;「HJ−9150W」、剥離抵抗値;35N/25mm)に換えた。その他は実施例1と同様にして、比較例1の複合フィルタを製造した。
【0091】
<比較例2>
実施例1の複合フィルタにおいて、接着剤を、アクリル樹脂系の粘着剤(製造元;日本合成化工業社製、商品名;「コーポニールN−2031/硬化剤L−55 100:3」、剥離抵抗値;3N/25mm)に換えた。その他は実施例1と同様にして、比較例2の複合フィルタを製造した。
【0092】
<比較例3>
実施例1の複合フィルタにおいて以下のように、導電体層の厚みを10μmに換えた。又、接着剤を比較例2と同様のものに変えた。その他は実施例1と同様にして、比較例4の複合フィルタを製造した。
【0093】
(1)電磁波遮蔽シートの製造
図1に示す電磁波シールドフィルタ1を次のようにして作製した。先ず、導電体層12とする金属箔として、一方の面に銅−コバルト合金粒子から成る黒化層15Aが形成された厚さ10μmの連続帯状の電解銅箔を用意した。
また、透明基材11として厚さ100μmで片面にポリエステル樹脂系プライマー層を形成した、連続帯状の無着色透明な2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用意した。
そして、前記銅箔の両面に対して、亜鉛めっき後、ディッピング法にて公知のクロメート処理を行い、表裏両面に防錆層16A、16Bを形成した。
【0094】
次いで、この銅箔をその黒化層面側で上記透明基材プライマー層上に、主剤が平均分子量3万のポリエステルポリウレタンポリオール12質量部から、又硬化剤がキシレンジイソシアネート系プレポリマー1質量部とから成る透明な2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤でドライラミネートした後、50℃、3日間養生して、銅箔(防錆層)と透明基材間に厚さ7μmの透明接着剤層を有する連続帯状の銅貼積層シートを得た。
【0095】
次いで、上記銅貼積層シートに対して、その導電体層及び黒化層をフォトリソグラフィー法を利用したエッチングにより、開口部103及びライン部104とから成るメッシュ状領域、及びメッシュ状領域の4周を囲繞する外縁部に額縁状の接地用領域を形成した。
エッチング工程は実施例1と同様である。メッシュ状領域のライン部の高さは10μmであるが、その他のメッシュ状領域の形状、寸法は、実施例1と同様である。
このようにして、平坦化層の無い、比較例3の電磁波遮蔽用シート1を得た。
【0096】
(枚葉化接着性光学フィルタの製造)
比較例2と同様にして、枚葉化接着性光学フィルタを得た。
(複合フィルタの製造)
そして、得られた該電磁波遮蔽用シート1の該メッシュ上領域上に、実施例1と同様にして、枚葉化接着性光学フィルタを、接着、積層した。
このようにして、比較例3の複合フィルタを得た。
【0097】
<比較例4>
比較例1の複合フィルタにおいて、電磁波遮蔽シートとして、下記のように、メッシュ上領域上に平坦化層を形成したものを用いた。その他は比較例1と同様にして比較例4の複合フィルタを得た。
【0098】
(1)電磁波遮蔽シートの製造
比較例1と同様にして、平坦化層の無い電磁波遮蔽シートを得た。
次いで、一旦ロールに巻き取られた上記電磁波遮蔽シートを、巻出してそのメッシュ面上に対して、平坦化層を形成した。平坦化層の形成方法は以下の通りである。
【0099】
先ず、透明な電離放射線硬化性樹脂組成物からなる塗液を、間歇ダイコート法による間歇塗工によって、幅方向に両側部に走る額縁部及び流れ方向前後の額縁部の全内周に向かって2.5mm進入した位置まで塗工されその外側は塗工されない様に、電磁波遮蔽シートのメッシュ状領域上に乾燥時塗工量で25g/m2塗布し、メッシュの開口部を完全に充填し、塗工面表面を平坦化した。
尚、上記塗液は、ウレタンアクリレートオリゴマーとフェノキシエチルアクリレート単量体を1:1質量比で混合したものに対して光重合開始剤〔イルガキュア(登録商標)184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製〕を3質量%添加し、これを更に有機溶媒(メチルエチルケトン:トルエン=1:1質量比の混合溶剤)で希釈した電離放射線硬化性樹脂組成物からなる塗液である。
【0100】
そして、上記塗布後、乾燥し溶剤を飛ばした後の塗膜に対して、平坦面を賦形する賦形シートとして、厚さ50μmの連続帯状の市販2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムをその易接着処理未処理面(表面粗さがJIS B0601(1994年度版)規定の中心線平均粗さが0.01μm)で塗膜にラミネートした。この後、該賦形シート側から紫外線照射(フュージョンUVシステムズ社製Dバルブ使用)して、塗膜を硬化した後、賦形シートのみを剥離して、表面が平坦面の平坦化層を形成した。
以上により、平坦化層有りの電磁波遮蔽用シート1を得た。
【0101】
(2)枚葉化接着性光学フィルタの製造
比較例1と同様にして、枚葉化接着性光学フィルタを得た。
(3)複合フィルタの製造
そして、得られた該電磁波遮蔽用シート1の平坦化層上に、比較例1と同様にして、枚葉化接着性光学フィルタを、接着、積層した。
このようにして、比較例4の複合フィルタを得た。
【0102】
<比較例5>
比較例3の複合フィルタにおいて、電磁波遮蔽シートとして、下記のように、メッシュ上領域上に平坦化層を形成したものを用いた。その他は比較例3と同様にして比較例5の複合フィルタを得た。
【0103】
(1)電磁波遮蔽シートの製造
比較例3と同様にして、平坦化層の無い電磁波遮蔽シートを得た。
次いで、一旦ロールに巻き取られた上記電磁波遮蔽シートを、巻出してそのメッシュ面上に対して、平坦化層を形成した。
【0104】
先ず、透明な電離放射線硬化性樹脂組成物からなる塗液を、間歇ダイコート法による間歇塗工によって、幅方向に両側部に走る額縁部及び流れ方向前後の額縁部の全内周に向かって2.5mm進入した位置まで塗工されその外側は塗工されない様に、電磁波遮蔽シートのメッシュ状領域上に乾燥時塗工量で25g/m2塗布し、メッシュの開口部を完全に充填し、塗工面表面を平坦化した。
尚、上記塗液は、ウレタンアクリレートオリゴマーとフェノキシエチルアクリレート単量体を1:1質量比で混合したものに対して光重合開始剤〔イルガキュア(登録商標)184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製〕を3質量%添加し、これを更に有機溶媒(メチルエチルケトン:トルエン=1:1質量比の混合溶剤)で希釈した電離放射線硬化性樹脂組成物からなる塗液である。
【0105】
そして、上記塗布後、乾燥し溶剤を飛ばした後の塗膜に対して、平坦面を賦形する賦形シートとして、厚さ50μmの連続帯状の市販2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムをその易接着処理未処理面(表面粗さがJIS B0601(1994年度版)規定の中心線平均粗さが0.01μm)で塗膜にラミネートした。この後、該賦形シート側から紫外線照射(フュージョンUVシステムズ社製Dバルブ使用)して、塗膜を硬化した後、賦形シートのみを剥離して、表面が平坦面の平坦化層を形成した。
以上により、平坦化層を有する電磁波遮蔽用シート1を得た。
【0106】
(2)枚葉化接着性光学フィルタの製造
比較例3と同様にして、枚葉化接着性光学フィルタを得た。
(3)複合フィルタの製造
そして、得られた該電磁波遮蔽用シート1の平坦化層上に、比較例3と同様にして、枚葉化接着性光学フィルタを、接着、積層した。
このようにして、比較例5の複合フィルタを得た。
【0107】
<比較例6>
比較例1の(3)複合フィルタの製造における、積層条件として、真空ポンプを使って吸引し、且つ枚葉化接着性光学フィルタ側から60℃に加熱したシリコンゴム膜で押圧することにより、加熱加圧状態で積層(所謂オートクレーブ加工)した。その他は比較例1と同様にして、比較例6の複合フィルタを得た。
【0108】
<比較例7>
比較例3の(3)複合フィルタの製造における、積層条件として、真空ポンプを使って吸引し、且つ枚葉化接着性光学フィルタ側から60℃に加熱したシリコンゴム膜で押圧することにより、加熱加圧状態で積層(所謂オートクレーブ加工)した。その他は比較例3と同様にして、比較例7の複合フィルタを得た。
【0109】
〔性能評価方法〕
上記、各実施例、及び比較例に対して、以下の点を評価した。評価結果を表1に示す。
(1)メッシュ上領域の透明性
複合フィルタを目視にて透視して比較した。
白濁(曇り)、或いは気泡の存在が認められないもの;○
白濁(曇り)、或いは気泡の存在が認められるもの;△
白濁(曇り)、或いは気泡の存在が認められるものであって、特に目立つもの;×
【0110】
【表1】

【0111】
<結果のまとめ>
以上の実施例及び比較例から以下のことがわかる。
電磁波遮蔽シートのメッシュ状領域上に、光学フィルタをその裏面の接着剤層を介して接着するに際して、接着剤層を粘着剤とし、且つ剥離抵抗値が30N/25mm以下とすれば、有効な電磁波遮蔽効果を得る為に必要な高さ1〜3μmを有するメッシュ状領域に対して、透明化層を形成したり、積層時にオートクレーブ処理をしなくても、開口部への気泡残留が無く、複合フィルタの透明性は良好である。
【0112】
一方、剥離抵抗値が30N/25mm超過の場合、透明化層なし又はオートクレーブ処理なしの複合フィルタは、気泡残留による透明性低下が起きる。
但し、剥離抵抗値が5N/25mm未満であると、今度は、加熱加湿後に光学フィルタの剥離を生じ不可である。
よって、接着剤層の剥離抵抗値は5〜30N/25mmの範囲が気泡残留防止と加熱加湿後の光学フィルタ剥離防止との両立の点から好適範囲であるとわかる。
【0113】
また、メッシュ状領域の高さが1〜3μmであれば、接着剤として、剥離抵抗値が30N/25mm以下の粘着剤を選ぶことにより、透明化層を形成したり、積層時にオートクレーブ処理をしなくても、開口部への気泡残留が無く、複合フィルタの透明性は良好である。
以上より、メッシュ状領域の高さが1〜3μmの範囲が、気泡残留防止と加熱加湿後の光学フィルタ剥離防止との両立の点から好適範囲であるとわかる。
【0114】
尚、メッシュ状領域の高さが3μm超過の場合、或いは粘着剤層の剥離抵抗値が、30N/25mm超過の場合でも、透明化層を形成したり、積層時にオートクレーブ処理をすることによって、メッシュへの気泡残留を防止し得る。但し、これらの場合は、余分な材料、層厚、及び/又は工程を必要とする為、好適なものではないと認識される。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明に用いられる電磁波遮蔽シートの一例の断面図である。
【図2】本発明に用いられる電磁波遮蔽シートの一例の斜視図である。
【図3】本発明に用いられる電磁波遮蔽シートの一例を示す図である。
【図4】本発明に用いられる電磁波遮蔽シートの他の一例を示す図である。
【図5】本発明に用いられる光学フィルタの一例を示す図である。
【図6】本発明に用いられる電磁波遮蔽シートと接着性光学フィルタを接着及び積層することにより、ディスプレイ用複合フィルタを得る模式図である。
【図7】本発明のディスプレイ用複合フィルタの製造方法のうち、電磁波遮蔽シートと接着性光学フィルタの積層工程の一例を示す工程図である。
【符号の説明】
【0116】
1 電磁波遮蔽シート
11 透明基材
12 導電体層
13 導電処理層
14 金属メッキ層
15 黒化層
16 防錆層
20 接着性光学フィルタ
21 光学フィルタ
22 接着剤層
23 透明基材
24 機能発現層
31 第1給紙部
32 第2給紙部
34 離型フィルム巻取りロール
35 第1ラミネートユニット
36 第2ラミネートユニット
37 巻取りロール
101 メッシュ状領域
103 開口部
104 ライン部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)透明基材の一方の面に、適用されるディスプレイの画像表示領域を全て覆うことが可能なメッシュ状領域を有する導電体層が少なくとも積層されてなる電磁波遮蔽シートであって、前記メッシュ状領域のライン部の高さが3μm以下、メッシュ状領域の開口部の間口幅が150μm以上であり、且つメッシュ状領域の開口部に平坦化層の被覆の無い電磁波遮蔽シートを準備する工程と、
(B)一方の面に接着剤層が積層されてなり、該接着剤層が接着及び積層時に流動性を有し、且つ剥離抵抗値が5〜30N/25mmである、接着性光学フィルタの接着層側を、上記電磁波遮蔽シートの導電体層側に向け、積層させる工程と、
を有する、電磁波遮蔽シートと光学フィルタとの積層体から成るディスプレイ用複合フィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−48789(P2007−48789A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−228880(P2005−228880)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】