説明

ディスプレイ装置用フィルター

【課題】近赤外線吸収のための色素を使用しなくても近赤外線及び電磁波遮蔽効率が高く、可視光領域の透過率も高いディスプレイ装置用フィルターを提供する
【解決手段】透明基板、前記透明基板の一面に形成されて金属薄膜と金属酸化物薄膜が1回以上積層された近赤外線遮蔽層、該近赤外線遮蔽層上に形成されて金属メッシュパターンを含む電磁波遮蔽層、該電磁波遮蔽層上に形成されて光吸収物質及び導電性物質が充填されている複数の楔型外光遮蔽部を具備した外光遮蔽パターンを含む外光遮蔽層及び前記外光遮蔽層上に形成されて選択的に光を吸収する少なくとも2種以上の色素及び高分子樹脂を含む色補正層を含むディスプレイ装置用フィルターであって、850nm波長の光透過率が5%以下であることを特徴とするディスプレイ装置用フィルターを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ装置用フィルターに関するもので、詳細には、近赤外線及び電磁波遮蔽効率が優秀で可視光線透過率が高いディスプレイ装置用フィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
表示装置は、テレビ、PC(ノートブックコンピュータ)のモニター、ポータブル表示装置などを総称した言葉であり、画面が大面積化及び薄型化される傾向にある。
【0003】
表示装置を代表していた陰極線管(Cathode Ray Tube:CRT)装置が、次第に液晶表示装置(Liquid Crystal Display:LCD)、プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel:PDP)装置、電界放出表示装置(Field Emission Display:FED)及び有機電界発光表示装置(Organic Light Emitting Display:OLED)などの平板表示装置(Flat Panel Display:FPD)に置き換わってきている。
【0004】
以下では、前記表示装置の中で説明の便宜上、PDPフィルター及びPDP装置を例にあげて説明するが、本発明はこれに限定されず、本発明のディスプレイ装置用フィルターが適用されるディスプレイ装置は、PDP装置、OLED装置、LCD装置または、FED装置などの大型ディスプレイ装置と、PDA(Personal Digital Assistants)、小型ゲーム機の表示窓、携帯電話の表示窓などの小型モバイルディスプレイ装置と、フレキシブルディスプレイ装置などに多様に適用され得る。
【0005】
PDP装置は、輝度、コントラスト、残像、視野角などの表示能力が優れていて脚光を浴びている。
【0006】
PDP装置は、電極に印加される直流または交流電圧によって電極間のガスで放電が発生して、それに伴う紫外線の放射によって蛍光体を励起させて発光することによって画像を表示する。
【0007】
しかし、前記PDP装置は、特性上、電磁波及び近赤外線の放出量が多いという問題点を有している。電磁波及び近赤外線は、人体に有害な影響を及ぼして、無線電話機やリモートコントローラーなどの精密器機の誤動作を誘発し得る。また、蛍光体の表面反射が大きくて、ヘリウム(He)またはキセノン(Xe)ガスから出るオレンジ色の光によってCRT装置に比べて色純度が良くないという問題点がある。
【0008】
したがって、PDP装置は、電磁波及び近赤外線を抑制して、反射を減少させて色純度を高めるためにPDPフィルターを採用している。PDPフィルターは、ディスプレイパネルの前方に設置される。PDPフィルターは、一般的に粘着剤または接着剤を使用して、電磁波遮蔽層、近赤外線遮蔽層、ネオンピーク吸収層(neon peak absorbing layer)のような複数の機能性層を粘着または接着することによって製造される。
【0009】
しかし、従来の近赤外線遮蔽フィルムは、高分子樹脂からなる基材内に近赤外線波長の光を吸収する色素が含有された形態や、近赤外線遮蔽効率を高めるために添加される色素量が多くなることによって製造費用が上昇し、フィルターの光透過率が全体的に低下するという問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記のような問題点を勘案したもので、近赤外線吸収のための色素を使用しなくても近赤外線及び電磁波遮蔽効率が高く、かつ可視光領域の透過率も高いディスプレイ装置用フィルターを提供することを目的とする。
【0011】
本発明は、また色補正層内の色素配合の割合を最適化することにより、別途の追加工程なしに色再現面積を向上させることができるディスプレイ装置用フィルターを提供することを目的とする。
【0012】
本発明は、また透過率が優秀で色補正効果が優秀でありながらも、近赤外線及び電磁波遮蔽機能を効率的に遂行することができるディスプレイ装置用フィルターを提供することを目的とする。
【0013】
本発明が成そうとする技術的課題は、以上で言及した技術的課題に制限されず、言及しなかったまた他の技術的課題は、下記の記載から当業者に明確に理解されるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一特徴によるディスプレイ装置用フィルターは、透明基板、金属薄膜と金属酸化物薄膜が1回以上積層された近赤外線遮蔽層、金属メッシュパターンを含む電磁波遮蔽層、光吸収物質及び導電性物質が充填されている複数の楔型外光遮蔽部を具備した外光遮蔽パターンを含む外光遮蔽層、及び前記外光遮蔽層上に形成され選択的に光を吸収する少なくとも2種以上の色素及び高分子樹脂を含む色補正層を含むディスプレイ装置用フィルターであり、850nm波長の光透過率が5%以下である。ここで、各機能性層の積層順序は、多様に選択することができる。
【0015】
前記透明基板には、ガラスまたは透明高分子樹脂を使用することができる。前記高分子樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル、ポリカーボネート(PC)、ウレタンアクリレート、ポリエステル、エポキシアクリレート、臭素化アクリレート(Brominate Acrylate)、ポリ塩化ビニール(PVC)などがある。
【0016】
前記電磁波遮蔽層は、金属メッシュパターンを含むメッシュフィルムからなる形態を使用する。
【0017】
前記外光遮蔽層は、電磁波遮蔽効率を高めるために外光遮蔽部に光吸収物質及び導電性物質を含む。前記光吸収物質としては、カーボンブラックを含む黒色物質を使用することができ、前記導電性物質としては、銀、銅などの金属物質を使用することができる。特にナノサイズの銀粉末を含むシルバーペーストまたは黒化処理されたシルバーペーストを導電性物質として使用することもできる。
【0018】
本発明の他の一特徴によるディスプレイ装置用フィルターは、前記近赤外線遮蔽層の総厚が500nm以下であることを特徴とする。
【0019】
本発明のまた他の一特徴によるディスプレイ装置用フィルターは、前記近赤外線遮蔽層が金属薄膜と金属酸化物薄膜が1ないし2回積層された構造であり、前記金属薄膜の厚さは10ないし50nm、前記金属酸化物薄膜の厚さは3ないし60nmであることを特徴とする。
【0020】
本発明のまた他の一特徴によるディスプレイ装置用フィルターは、前記色補正層に430nmないし500nm波長の光を吸収する第1色素が、前記高分子樹脂対比0.01ないし1重量%含まれ、560nmないし620nm波長の光を吸収する第2色素が、前記高分子樹脂対比0.01ないし1重量%含まれる。前記第1色素または前記第2色素は、シアニン系、アントラキノン系、ナフトキノン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、ジイモニウム系、ニケルジチオール系、アゾ系、ストリル系、メチン系、ポルフィリン系及びアザポルフィリン系からなる群から選択された少なくとも一つの染料である。各色素は、選択的に430nmないし500nmまたは560nmないし620nm波長の光を吸収して、それぞれ固有した波長で最大吸収を示す。
【0021】
本発明のまた他の一特徴によるディスプレイ装置用フィルターは、前記近赤外線遮蔽層の可視光線透過率が85%以上で、前記ディスプレイ装置用フィルターの可視光線透過率は45%以上であり、前記ディスプレイ装置用フィルターの面抵抗は、0.05Ω/□(オーム・パー・スクエア)以下である。
【0022】
本発明で使用されるディスプレイ装置用フィルターは、格子パターンの画素(pixel)でRGBを具現する。PDP(Plasma Display Panel)装置、OLED(Organic Light Emitting Diode)装置、LCD(Liquid Crystal Display)装置、またはFED(Field Emission Display)装置などに多様に適用することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によるディスプレイ装置用フィルターは、近赤外線及び電磁波遮蔽効率が高くて可視光領域の透過率も高く、色再現面積も優秀でディスプレイ装置用フィルターに要求される複合的な機能を遂行することができる。
【0024】
また、本発明のディスプレイ装置用フィルターは、別途の追加的な工程なしに既存の工程を使用することができるので、工程が効率的で大量生産が可能である。特に、近赤外線遮蔽のための色素を使用しないことにより、色素による製造費用の上昇を抑制することができ、光学フィルターとして要求される高い光透過率を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【0026】
図示しなかったが、本発明の一実施例によるPDP装置は、ケース、ケースを覆うカバー、ケース内に収容される駆動回路基板、ガス放電現象が起きる発光セルと蛍光体層を含むパネルアセンブリー、及びPDPフィルターで構成される。発光セルには、放電ガスが封入されている。放電ガスには、例えば、Ne−Xe系ガス、He−Xe系ガスなどを使用することができる。パネルアセンブリーは、基本的に蛍光灯のような発光原理を有し、発光セル内部での放電によって放電ガスから放出された紫外線が、パネルアセンブリー内の蛍光体層を励起発光させて可視光に変換する。
【0027】
PDPフィルターは、パネルアセンブリーの前面基板前方に配置される。PDPフィルターは、パネルアセンブリーの前面基板と離隔して配置することもでき、接触して配置することもできる。また、パネルアセンブリーとPDPフィルターとの間に異物が流入するなどの副作用を防止したり、PDPフィルター自体の強度を補強するために前面基板と接着剤または粘着剤で結合することができる。
【0028】
PDPフィルターは、透明基板上に導電性が優秀な材料を使用して形成された電磁波遮蔽層を具備して、この電磁波遮蔽層は、カバーを通じてケースに接地される。すなわち、パネルアセンブリーから発生した電磁波が視聴者に到逹する前に、PDPフィルターの電磁波遮蔽層を通じてカバーとケースに接地するのである。
【0029】
図1は、本発明の一実施例によるPDPフィルターを図示した断面図である。
【0030】
図1を参照すると、PDPフィルター100は、透明基板110に多様な遮蔽機能を有する機能性光学部材を含み、このような機能性光学部材には、近赤外線遮蔽層120、電磁波遮蔽層130、外光遮蔽層140、色補正層150及び反射防止層160などがある。
【0031】
前記透明基板110を基準にする時、パネルアセンブリーに向いた方向に近赤外線遮蔽層120、電磁波遮蔽層130、外光遮蔽層140及び色補正層150が配置されていて、前記透明基板110の他面、すなわち外部環境光190が入射する方向に反射防止層160が配置されている。
【0032】
一方、本発明は一つの光学部材が、二つの以上の機能を複合的に遂行する場合を含む。
【0033】
前記透明基板110の材料では、ガラス、石英などの無機化合物成形物と透明な有機高分子成形物を挙げることができる。有機高分子成形物からなる透明基板110としては、アクリルやポリカーボネートが一般的に使用されるが、本発明はこのような実施例に限定されるものではない。透明基板110は、高透明性と耐熱性を有することが好ましく、高分子成形物及び高分子成形物の積層体を透明基板110に使用することができる。透明基板110の透明性については、可視光線透過率が80%以上であることが有利であり、耐熱性については、ガラス転移温度が50℃以上であることが好ましい。高分子成形物は、可視光線波長領域において透明ならば良く、価格、耐熱性、透明性の面でポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましいが、これに限定されるものではない。また、場合によってこのような透明基板110は、フィルターの構成から除外することもできる。
【0034】
反射防止層160は、視聴者方向から入射する外部環境光190が、再び外部に反射するのを防止してディスプレイの明暗対比比を向上させる。本実施例で反射防止層160は、透明基板110の他面に形成して、PDPフィルター100がPDP装置に装着された時に視聴者の方になる面、すなわちパネルアセンブリーの方とは反対側面に形成することが効率的である。
【0035】
一方、電磁波遮蔽層130は、パネルアセンブリーから発生した電磁波を遮断する役割を果たすが、電磁波を遮蔽するためにはディスプレイ表面を導電性が大きい物体で覆う必要がある。本発明の一実施例による電磁波を遮蔽するための電磁波遮蔽層130には、導電性メッシュフィルムを使用することができる。ここで、導電性メッシュフィルムには、一般的には、接地された金属メッシュ、または合成樹脂や金属纎維のメッシュに金属被覆したものを使用することができる。導電性メッシュフィルムを構成する金属の材質には、例えば、銅、クロム、ニッケル、銀、モリブデン、タングステン、アルミニウムなど電気伝導性が優秀で加工性がある金属ならすべて使用可能である。
【0036】
また、図示しなかったが、PDPフィルター100は、拡散層を含むことができる。拡散層は、外光遮蔽層140や電磁波遮蔽層130の周期的なパターンがパネルアセンブリーの前面基板で反射する場合、入射光と反射光の干渉現象によって起き得るモアレ現象やニュ−トンリング現象を防止する役割をする。前記拡散層は、PDPフィルター100内の任意の位置に配置することができるが、パネルアセンブリーに接したPDPフィルター100の一面に形成することが好ましい。前記拡散層は、別途の層としてPDPフィルター100内に含むこともできるが、他の光学部材の機能と組み合わせて含むこともできる。
【0037】
外光遮蔽層140は、透明基材142及び該基材142の一面に形成された外光遮蔽パターン144を含む。外光遮蔽パターンは、複数の楔型外光遮蔽部を含む。前記外光遮蔽パターン144は、楔型ストライプ、すなわち複数個の陰刻楔ホームに充填された3次元形状の三角柱構造物からなるが、本発明はこれに限定されない。
【0038】
前記外光遮蔽層140は、透明基板110を基準に前記反射防止層160の反対の方に、そして電磁波遮蔽層130上に配置されている。これは、外部環境光190の吸収とパネル入射光180の透過がよくなされるように配置したものである。
【0039】
本実施例で前記外光遮蔽パターン144は、基材の一面と同一平面をなし平らな外光遮蔽部の楔型底面がパネルアセンブリーに向いているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、基材142の一面と平らな外光遮蔽パターン144の楔型底面が視聴者の方を向くことも可能で、前記外光遮蔽パターンを基材の両面に形成することもできる。
【0040】
前記基材142は、可視光を透過させる透明材質からなる板状の支持体で、ガラス基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル、ポリカーボネート(PC)、ウレタンアクリレート、ポリエステル、エポキシアクリレート、臭素化アクリレート(Brominate Acrylate)、ポリ塩化ビニール(PVC)などからなることができる。
【0041】
前記外光遮蔽層140は、外光を吸収してパネルアセンブリーに外部環境光190が流入することを防止し、パネルアセンブリーから放出されるパネル入射光180を視聴者の方に全反射する役割をする。したがって、可視光線に対する高い透過率と高い明暗対比比(コントラスト比)を得ることができる。そればかりでなく、本発明の好ましい実施例による外光遮蔽層140は、外光遮蔽パターン内に光吸収物質と導電性物質を同時に充填して、電磁波遮蔽機能も遂行することができる。
【0042】
外光遮蔽部の断面形状は、楔型だけではなく、台形型、半円形、U字形など多様であり得る。前記光吸収物質では、カーボンブラックのような黒色物質を使用して、前記導電性物質には、シルバーペーストなどを使用することができる。
【0043】
前記外光遮蔽部内には、光吸収物質及び導電性物質とともにバインダーなどを混合した高分子樹脂を充填することができ、ここで、外光遮蔽部内に充填する樹脂成分の屈折率は、基材142の屈折率より低いことが好ましい。これは、前記基材142と外光遮蔽部の境界でフィルター100内に入射した光180の全反射が起きるようにして、明暗対比比を高めることができるようにするためである。
【0044】
以下では、近赤外線遮蔽層120及び色補正層150に対して説明することにする。
【0045】
近赤外線遮蔽層120は、前記透明基板110の一面に配置され、金属薄膜と金属酸化物薄膜が前記基板110上にコーティングしながら複数回積層して形成された多重膜コーティング形態である。前記近赤外線遮蔽層120は、パネルアセンブリーから発生して無線電話機やリモートコントローラーなどの電子機器の誤動作を起こす強力な近赤外線を遮蔽する役割をする。
【0046】
前記近赤外線遮蔽層120は、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide、ITO)に代表される高屈折率を有する透明金属酸化物薄膜を近赤外線遮蔽のために使用することができる。また、金属薄膜には、金、銀、銅、白金、パラジウムなどの金属を、金属酸化物薄膜では、前記酸化インジウムスズ以外に酸化チタン、酸化インジウム、酸化第2スズ、酸化アンチモン(Sb)、酸化亜鉛、またはアルミニウムがドーピングされた酸化亜鉛(AZO)などの金属酸化物を使用することができる。
【0047】
前記金属薄膜の厚さは、10ないし50nm、前記金属酸化物薄膜の厚さは、3ないし60nmである。または、前記金属薄膜及び前記金属酸化物薄膜が1回積層された近赤外線遮蔽層120の総厚は、50ないし200nmで、2回積層された近赤外線遮蔽層120の総厚は、100ないし400nmである。そして、積層回数にかかわらず本発明の近赤外線遮蔽層120の総厚は500nm以下でなければならない。優秀な近赤外線遮蔽機能を示すために、前記金属薄膜と前記金属酸化物薄膜の積層回数は、1ないし4回が可能であるが、光透過率を高めるためには、1ないし2回が好ましい。
【0048】
前記近赤外線遮蔽層120は、可視光線透過率が85%以上で、前記近赤外線遮蔽層120を含むPDPフィルター100の可視光線透過率は、45%以上を維持することができるようにする。また、前記近赤外線遮蔽層120は、850nm波長の光透過率が5%以下で、近赤外線遮蔽効果が優れている。本発明の近赤外線遮蔽層の光透過率については、図2及び図3を参照して説明することにする。
【0049】
図2は、本発明による近赤外線遮蔽層(a)及び従来技術による近赤外線遮蔽フィルム(b)に対して、光の波長による透過率を示した透過スペクトルである。一方、図3は本発明の一実施例によるディスプレイ装置用フィルター(a)及び従来技術によるフィルター(b)に対して、光の波長による透過率を示した透過スペクトルである。
【0050】
図2を参照すると、本発明の近赤外線遮蔽層(a)は、色素を使用する従来の近赤外線遮蔽フィルムの場合(b)より、380nmないし680nm波長範囲の可視光線領域での光透過率が優れていることが分かる。
【0051】
また、図3を参照すると、本発明のフィルター(a)は、従来の近赤外線遮蔽フィルムを含むフィルター(b)より、850nm波長領域での光透過率がさらに低く示されているので、近赤外線遮蔽効果がより優れていることが分かる。
【0052】
このように本発明では、既存のように色素を使用する近赤外線遮蔽フィルムを使用しないで、金属薄膜と金属酸化物薄膜を透明基板110の一面に相互に積層して形成した多層膜コーティングを使用して近赤外線を遮蔽することで、PDPフィルター100の可視光線透過率を、既存の近赤外線遮蔽フィルムを使用する時より高く示すことができる。
【0053】
また、前記近赤外線遮蔽層120は、電磁波遮蔽機能も遂行することができるので、フィルター全体の面抵抗を0.05Ω/□以下にできる。しかし、従来の色素を使用する近赤外線遮蔽フィルムを含むフィルターの場合、フィルター全体の面抵抗が0.1Ω/□以下を満たすように製造することがとても難しい。さらに、本実施例によるフィルター100の外光遮蔽層140の外光遮蔽部内に導電性物質が添加されていて、フィルター100の電磁波遮蔽効率をさらに向上することができるのである。
【0054】
前記PDPフィルター100は、選択的に光を吸収する少なくとも2種以上の色素及び高分子樹脂を含む色補正層150を含む。色補正層150は、外光遮蔽層140の一面にパネルアセンブリーの方向に配置する。前記色補正層150は、赤色(R)、緑(G)、青色(B)の量を減少させたり調節したりして、色の均衡を変化させたり校正したりしてディスプレイの色再現範囲を増加させて鮮明度を向上させる。
【0055】
色補正層150は、多様な色素を含み、このような色素には、染料あるいは顔料を使用することができる。色素の種類は、アントラキノン系、シアニン系、アゾ系、ストリル系、フタロシアニン系、メチン系などのネオンライト遮蔽機能を有する有機色素を挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0056】
前記色補正層150には、430nmないし500nm波長の光を吸収する第1色素が、前記高分子樹脂対比0.01ないし1重量%含まれ、560nmないし620nm波長の光を吸収する第2色素が、前記高分子樹脂対比0.01ないし1重量%含まれる。前記第1色素は、ブルー及びグリーン領域の光を吸収するシアン(cyan)カットの役割をし、前記第2色素は、ネオンカットの役割をする。前記第1色素は、ブルー及びグリーンの色純度を増進させるので色再現率を増加させることができるようになる。また、前記色補正層150に第1色素と第2色素を組み合わせることで、ディスプレイ装置用フィルター100を通過して出るレッド、グリーン、ブルー領域の光の透過量を同等にさせて色再現率を増加させることができる。
【0057】
下記の表1は、PDPフィルターを装着しないPDPモジュール(a)、第1色素を含まないで第2色素のみ高分子樹脂に対して0.1重量%含む色補正層を含むPDPフィルターを装着したPDPモジュール(b)、及び第1色素及び第2色素を高分子樹脂に対してそれぞれ0.7重量%及び0.1重量%含む色補正層を含むPDPフィルターを装着したPDPモジュール(c)に対して、色再現面積を測定した結果を示している。前記PDPモジュールには、すべて三星SDI(会社名)のHD級PDPモジュールを使用した。(b)と(c)の結果を比べて見ると、(b)の場合色再現面積は89.1%であるのに反して、本発明によるフィルターを装着した(c)の場合の色再現面積は91.5%と示されて色再現率が向上したことが分かる。
【0058】
【表1】

【0059】
下表2は、色素を使用した近赤外線遮蔽フィルムを含むPDPフィルター(d)及び本発明による多層膜コーティング形態の近赤外線遮蔽層を含むPDPフィルター(e)に対する光透過率及び色座標を示している。前記光透過率は、D65光源下で測定した可視光線透過率をいう。下記の表2の結果から、本発明の近赤外線遮蔽層を含む場合、フィルター全体の光透過率が45%以上と示されることが分かる。
【0060】
【表2】

【0061】
このように本発明のディスプレイ装置用フィルターは、ネオンカット、シアンカット、近赤外線遮蔽、電磁波遮蔽を同時に遂行して可視光線透過率も高くすることができる。
【0062】
以上のように本発明は、限定された実施例と図面によって説明したが、本発明は前記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野で通常の知識を有する者ならこのような記載から多様な修正及び変形が可能である。ゆえに、本発明の範囲は、説明した実施例に限定して決定されてはならず、特許請求の範囲のみならず、この特許請求の範囲と均等なものによって決定されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施例によるディスプレイ装置用フィルターを示す断面図である。
【図2】本発明による近赤外線遮蔽層(a)及び従来技術による近赤外線フィルム(b)に対して、光の波長による透過率を示した透過スペクトルである。
【図3】本発明の一実施例によるディスプレイ装置用フィルター(a)及び従来技術によるフィルター(b)に対して、光の波長による透過率を示した透過スペクトルである。
【符号の説明】
【0064】
100:ディスプレイ装置用フィルター
110:透明基板
120:近赤外線遮蔽層
130:電磁波遮蔽層
140:外光遮蔽層
142:基材
144:外光遮蔽パターン
150:色補正層
160:反射防止層
180:パネル入射光
190:外部環境光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、
金属薄膜と金属酸化物薄膜が1回以上積層された近赤外線遮蔽層と、
金属メッシュパターンを含む電磁波遮蔽層と
を含むことを特徴とする、ディスプレイ装置用フィルター。
【請求項2】
光吸収物質及び導電性物質が充填されている複数の楔型外光遮蔽部を具備した外光遮蔽パターンを含む外光遮蔽層をさらに含む、請求項1に記載のディスプレイ装置用フィルター。
【請求項3】
選択的に光を吸収する少なくとも2種以上の色素及び高分子樹脂を含む色補正層をさらにに含む、請求項1に記載のディスプレイ装置用フィルター。
【請求項4】
前記色補正層には430nmないし500nm波長の光を吸収する第1色素と、560nmないし620nm波長の光を吸収する第2色素を含むことを特徴とする、請求項3に記載のディスプレイ装置用フィルター。
【請求項5】
前記色補正層には、前記第1色素が前記高分子樹脂対比0.01ないし1重量%含まれ、前記第2色素が前記高分子樹脂対比0.01ないし1重量%含まれることを特徴とする、請求項4に記載のディスプレイ装置用フィルター。
【請求項6】
850nm波長の光透過率が5%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のディスプレイ装置用フィルター。
【請求項7】
前記近赤外線遮蔽層の総厚が、500nm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のディスプレイ装置用フィルター。
【請求項8】
前記金属薄膜の厚さは10ないし50nmで、前記金属酸化物薄膜の厚さは3ないし60nmであることを特徴とする、請求項1に記載のディスプレイ装置用フィルター。
【請求項9】
前記近赤外線遮蔽層は、前記金属薄膜と金属酸化物薄膜が1ないし2回積層されたことを特徴とする、請求項8に記載のディスプレイ装置用フィルター。
【請求項10】
前記近赤外線遮蔽層の可視光線透過率は85%以上で、前記ディスプレイ装置用フィルターの可視光線透過率は45%以上であることを特徴とする、請求項1に記載のディスプレイ装置用フィルター。
【請求項11】
前記ディスプレイ装置用フィルターの面抵抗が、0.05Ω/□以下であることを特徴とする、請求項1に記載のディスプレイ装置用フィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−128912(P2009−128912A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294603(P2008−294603)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(502411241)サムスンコーニング精密ガラス株式会社 (80)
【Fターム(参考)】