説明

ディップコーティング装置

【課題】従来のディッコーティング法では出来なかった、塗布対象物の全体の膜厚の変更を実現するディッコーティング装置を提供する。
【解決手段】把持部11に試料を12を把持し、把持部11が有する回転ステージで角度を調整し、吐工液面に対して垂直ではなく角度を持たせて、斜め上方に引き上げ、垂直に引き上げる場合と違い、試料12の全体に膜厚の差が発生する。また、低速で引き上げる場合には、試料12の表面に粒子配列や結晶が形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ディップコーティング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回路基板の製造工程において、ディップコーティング装置が一般的に使用されている。たとえば、特開2003-112097号公報(特許文献1)に記載されているものがある。
【0003】
この場合、特に重要視されるのは両面の膜厚が均等になることである。
【0004】
一方、最近の特殊用途部品の開発では、ガラス、セラミック、シリコン、電子デバイスチップ等の表面への薄膜形成が要望されている。しかし最近の高密度、高多層化により、微細な部品や試料については、従来のディップコーティングで要求されている両面膜厚均等ではなく、部品や試料の全体の膜厚を変えたり、部分的に膜厚を変更することが要望されている。
【0005】
本発明は、従来のディッコーティング法では出来なかった、塗布対象物の全体の膜厚の変更や部分膜厚の変更を実現するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-112097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のディップコーティングでは、板状の塗布対象物や立体塗布対象物の全体の膜厚は、
均等であることが望ましい。
【0008】
しかし、昨今の特殊用途部品の開発では、塗布対象物の全体また部分的に、膜厚の変化を求められることが多い。
【0009】
本発明は、このような要求を解決することを目的とするディップコーティング装置である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、回転ステージに取り付けた把持部のクリップに試料や部品を把持し、回転ステージで試料や部品に角度を付け、斜め上方に試料を移動させ、塗布対象物に違う膜厚の薄膜を形成できるコーティングを行うことを特徴とするディップコーティング装置が提供される。
【0011】
回転ステージに取り付けた把持部のクリップに試料や部品を把持し、回転ステージで把持部のクリップに把持された試料や部品に角度を付け、垂直上方に移動させる機構を有することを特徴とするディップコーティング装置である。
【0012】
回転ステージに取り付けた把持部のクリップに試料や部品を把持し、回転ステージで把持部のクリップに把持された試料や部品に角度を付けずに、試料や部品を塗工面に対して垂直に保持し、斜め上方に移動させる機構を有することを特徴とするディップコーティング装置である。
【0013】
回転ステージに取り付けた把持部のクリップに試料や部品を把持し、回転ステージで把持部のクリップに把持された試料や部品に角度を付けずに、試料や部品を塗工面に対して垂直に保持し、斜め上方に移動させ、さらに逆方向の斜め上方に移動させる機構を有することを特徴とするディップコーティング装置である。
【0014】
横行移動機構により、試料や部品を複数の性質の異なる塗布液に連続塗布し、複数の薄膜をひとつの試料や部品に生成する機構を有することを特徴とするディップコーティング装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、従来のディップコーティング法では不可能であった、塗布対象物の部分的な膜厚の変更を容易にし、多くの特殊電子デバイスや光学部品等の製造に寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】は本装置の正面図である。
【図2】は本装置の側面図である。
【図3】は試料や部品を把持するクリップに角度をつけて、斜め上方に移動させる機構を有することを表している。
【図4】は試料や部品を把持するクリップに角度をつけて、垂直上方に移動させる機構を有することを表している。
【図5】は試料や部品を把持するクリップに角度をつけずに垂直に保持し、斜め上方に移動させる機構を有することを表している。
【図6】は試料や部品を把持するクリップに角度をつけずに、斜め上方に移動させ、さらに逆方向の斜め上方に移動させる機構を有することを表している。
【図7】は横行移動機構を取り付けたことで、性質の異なる複数の塗布液を連続塗布し、複数の薄膜をひとつの試料や部品に形成する機構を有することを表している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0018】
図3はこの発明に係るディップコーティング装置の引上げ動作を示す。把持部11に試料12を把持し、把持部11が有する回転ステージで角度を調整し、塗工液面に対して垂直ではなく角度を持たせて、斜め上方に引上げる。垂直に引上げる場合と違い、試料12の全体に膜厚の差が発生する。また、低速で引上げる場合には、試料12の表面に粒子配列や結晶が形成できる。
【0019】
図4は、この発明に係るディップコーティング装置の引上げ動作を示す。把持部11に試料12を把持し、把持部11が有する回転ステージで角度を調整し、試料11の角度を保ったまま、塗工液面に対して垂直に引上げる。この場合、試料の全体で違った膜厚形成が行える。
【0020】
図5は、この発明に係るディップコーティング装置の引上げ動作を示す。把持部11に試料12を把持し、把持部11が有する回転ステージで塗工液面に対して試料12を垂直に保ちながら、斜め上方に引上げ試料の全体に違った膜厚形成が行える。
【0021】
図6は、この発明に係るディップコーティング装置の引上げ動作を示す。把持部11に試料12を把持し、把持部11が有する回転ステージで塗工液面に対して試料12を垂直に保ちながら、斜め上方に引上げ、途中で反対方向の斜め上方に試料を引上げることにより、試料12の全体で部分的に違った膜厚形成が行える。
【0022】
図7は、この発明に係るディップコーティング装置の引上げ動作を示す。把持部11に試料12を把持し、把持部11が有する回転ステージで塗工液面に対して試料12を垂直に保ちながら、垂直上方に引上げ、試料12が塗工液面13から抜け出すと、把持部11と把持部11が把持する試料12が、横行動作でスライドし、異なる塗工液面14に浸漬する。同様に、塗工液面14から引上げ完了した把持部11と把持部11が把持する試料12が、横行動作でスライドし、異なる塗工液面15に浸漬する。この動作を異なる塗工液の数量だけ繰り返す。本発明はこの動作を繰り返すことにより、試料12の全体に複数の層を形成することが実現する。
【符号の説明】
【0023】
1.昇降用ステッピングモーターとボールネジの組み合わせ部
2.横行用ステッピングモーターとボールネジの組み合わせ部
3.試料回転用回転ステージ部
4.試料把持用クリップ
5.マイクロメーター
6.マイクロメーター粗動レバー
7.塗工液セットテーブル
8.上下粗動テーブル
9.電源・信号接続ケーブルコネクタ
10.本体カバー
11.把持部
12.試料
13.塗工液面A
14.塗工液面B
15.塗工液面n

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ステージに取り付けた把持部のクリップに試料または部品を把持し、回転ステージで試料または部品に角度を付け、斜め上方に試料または部品を移動させ、塗布対象物の全面に違う膜厚の薄膜を形成できるディップコーティングを行うことを特徴とするディップコーティング装置。
【請求項2】
回転ステージに取り付けた把持部のクリップに試料または部品を把持し、回転ステージで把持部のクリップに把持された試料または部品に角度を付け、垂直上方に移動させる機構を有することを特徴とする請求項1に記載のディップコーティング装置。
【請求項3】
回転ステージに取り付けた把持部のクリップに試料または部品を把持し、回転ステージで把持部のクリップに把持された試料または部品に角度を付けずに、試料または部品を塗工面に対して垂直に保持し、斜め上方に移動させる機構を有することを特徴とする請求項1に記載のディップコーティング装置。
【請求項4】
回転ステージに取り付けた把持部のクリップに試料または部品を把持し、回転ステージで把持部のクリップに把持された試料または部品に角度を付けずに、試料または部品を塗工面に対して垂直に保持し、斜め上方に移動させ、さらに逆方向の斜め上方に移動させる機構を有することを特徴とする請求項1に記載のディップコーティング装置。
【請求項5】
横行移動機構により、試料または部品を複数の性質の異なる塗布液を連続塗布し、複数の薄膜をひとつの試料または部品の全面に形成する機構を有することを特徴とする請求項1に記載のディップコーティング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−31213(P2011−31213A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182230(P2009−182230)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(501387703)株式会社SDI (5)
【Fターム(参考)】