説明

ディテクタパネルおよびX線撮影装置

【課題】低電力重視の動作と低ノイズ重視の動作の切り替えが可能なディテクタパネル、および、そのようなディテクタパネルを備えたX線撮影装置を実現する。
【解決手段】X線検出器とインターフェース用の信号処理回路と電源用の電池を内蔵するディテクタパネルは、X線検出信号を処理する第1の信号処理回路(600-604)と、第1の信号処理回路の出力信号を処理する第2の信号処理回路(606,608)と、電池(60)の出力電圧をスイッチングレギュレーションにより調整して第2の信号処理回路に供給する第1の電源供給回路(620)と、第1の電源供給回路の出力電圧をリニアレギュレーションにより調整してX線検出器および第1の信号処理回路に供給する第2の電源供給回路(630)と、第2の電源供給回路の構成を1つのリニアレギュレータの単独接続状態と2つのリニアレギュレータの直列接続状態のいずれかに切り替える切替回路(700)を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディテクタパネル(detector panel)およびX線撮影装置に関し、特に、X線検出器とインターフェース(interface)用の信号処理回路と電源用の電池を内蔵するディテクタパネル、および、そのようなディテクタパネルを備えたX線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線撮影装置の一種に、モバイル(mobile)型のものがある。この種のX線撮影装置は、移動型のシステムコンソールと可搬型のディテクタパネルで構成される。システムコンソールはX線照射手段と制御手段を備え、ディテクタパネルはX線検出器とインターフェース用の信号処理回路と電源用の電池を内蔵する。
【0003】
X線撮影は、X線撮影装置を患者の病室まで移動させて行われる。病室での撮影は、ディテクタパネルを患者の撮影部位にあてがい、反対側からX線を照射することによって行われる。ディテクタパネルが検出したX線信号は、有線または無線でシステムコンソールに伝送される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ディテクタパネル内では、電池の電力が電源供給回路を通じて各電力需要部に供給される。電源供給回路としては、消費電力が少なくかつ電源電圧変動除去比(power supply rejection ratio : PSRR)が高いものが用いられる。低消費電力化により電池の使用時間を延ばし、高PSRR化によりX線画像への電源ノイズ(noise)の影響を低減する。
【0005】
低消費電力かつ高PSRRの電源供給回路は、スイッチングレギュレータ(switching regulator)とリニアレギュレータ(linear regulator)の直列接続によって構成される。スイッチングレギュレータは、消費電力の低減に寄与する。リニアレギュレータは、PSRRの向上に寄与する(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−336227号公報(段落番号0017-0020、図1)
【特許文献2】特開平05−079398号公報(段落番号0009-0010、図1,2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リニアレギュレータ単体のPSRRには限度があるので、所望の高PSRRを達成するためにリニアレギュレータが複数個直列に接続されるが、リニアレギュレータの個数に応じて消費電力が増加するので、その分だけ電池の使用時間が短くなる。
【0007】
そこで、本発明の課題は、低電力重視の動作と低ノイズ重視の動作の切り替えが可能なディテクタパネル、および、そのようなディテクタパネルを備えたX線撮影装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するための発明は、第1の観点では、X線検出器とインターフェース用の信号処理回路と電源用の電池を内蔵するディテクタパネルであって、前記X線検出器の検出信号を処理する第1の信号処理回路と、前記第1の信号処理回路の出力信号を処理する第2の信号処理回路と、前記電池の出力電圧をスイッチングレギュレーションにより調整して前記第2の信号処理回路に供給する第1の電源供給回路と、前記第1の電源供給回路の出力電圧をリニアレギュレーションにより調整して前記X線検出器および前記第1の信号処理回路に供給する第2の電源供給回路と、前記第2の電源供給回路の構成を1つのリニアレギュレータの単独接続状態と2つのリニアレギュレータの直列接続状態のいずれかに切り替える切替回路を具備することを特徴とするディテクタパネルである。
【0009】
課題を解決するための発明は、第2の観点では、前記切替回路は、前記第1の電源供給回路の出力電圧の相対的な低電圧および高電圧に応じて、それぞれ、前記1つのリニアレギュレータの単独接続への切り替えおよび前記2つのリニアレギュレータの直列接続への切り替えを行うことを特徴とする第1の観点に記載のディテクタパネルである。
【0010】
課題を解決するための発明は、第3の観点では、前記第1の電源供給回路の出力電圧は、前記スイッチングレギュレータのフィードバックゲインの切り替えによって変更されることを特徴とする第2の観点に記載のディテクタパネルである。
【0011】
課題を解決するための発明は、第4の観点では、前記フィードバックゲインの切り替えは、レジスタの内容に応じて行われることを特徴とする第3の観点に記載のディテクタパネルである。
【0012】
課題を解決するための発明は、第5の観点では、前記レジスタの内容は、前記第2の電源供給回路の2種類の動作モードの一方および他方に応じて、それぞれ、2値的論理値の一方および他方となることを特徴とする第4の観点に記載のディテクタパネルである。
【0013】
課題を解決するための発明は、第6の観点では、前記2種類の動作モードは、低電力モードおよび低ノイズモードであることを特徴とする第5の観点に記載のディテクタパネルである。
【0014】
課題を解決するための発明は、第7の観点では、前記動作モードは、通信によって設定されることを特徴とする第6の観点に記載のディテクタパネルである。
課題を解決するための発明は、第8の観点では、前記動作モードは、手動的に設定されることを特徴とする第6の観点に記載のディテクタパネルである。
【0015】
課題を解決するための発明は、第9の観点では、前記動作モードを手動設定するための操作部を有することを特徴とする第8の観点に記載のディテクタパネルである。
課題を解決するための発明は、第10の観点では、前記動作モードを表示するための表示部を有することを特徴とする第6の観点に記載のディテクタパネルである。
【0016】
課題を解決するための発明は、第11の観点では、X線照射手段と制御手段を備えたシステムコンソール、および、X線検出器とインターフェース用の信号処理回路と電源用の電池を内蔵するディテクタパネルを有するX線撮影装置であって、前記ディテクタパネルは、前記X線検出器の検出信号を処理する第1の信号処理回路と、前記第1の信号処理回路の出力信号を処理する第2の信号処理回路と、前記電池の出力電圧をスイッチングレギュレーションにより調整して前記第2の信号処理回路に供給する第1の電源供給回路と、前記第1の電源供給回路の出力電圧をリニアレギュレーションにより調整して前記X線検出器および前記第1の信号処理回路に供給する第2の電源供給回路と、前記第2の電源供給回路の構成を1つのリニアレギュレータの単独接続状態と2つのリニアレギュレータの直列接続状態のいずれかに切り替える切替回路を具備することを特徴とするX線撮影装置である。
【0017】
課題を解決するための発明は、第12の観点では、前記切替回路は、前記第1の電源供給回路の出力電圧の相対的な低電圧および高電圧に応じて、それぞれ、前記1つのリニアレギュレータの単独接続への切り替えおよび前記2つのリニアレギュレータの直列接続への切り替えを行うことを特徴とする第11の観点に記載のX線撮影装置である。
【0018】
課題を解決するための発明は、第13の観点では、前記第1の電源供給回路の出力電圧は、前記スイッチングレギュレータのフィードバックゲインの切り替えによって変更されることを特徴とする第12の観点に記載のX線撮影装置である。
【0019】
課題を解決するための発明は、第14の観点では、前記フィードバックゲインの切り替えは、レジスタの内容に応じて行われることを特徴とする第13の観点に記載のX線撮影装置である。
【0020】
課題を解決するための発明は、第15の観点では、前記レジスタの内容は、前記第2の電源供給回路の2種類の動作モードの一方および他方に応じて、それぞれ、2値的論理値の一方および他方となることを特徴とする第14の観点に記載のX線撮影装置である。
【0021】
課題を解決するための発明は、第16の観点では、前記2種類の動作モードは、低電力モードおよび低ノイズモードであることを特徴とする第15の観点に記載のX線撮影装置である。
【0022】
課題を解決するための発明は、第17の観点では、前記動作モードは、通信によって設定されることを特徴とする第16の観点に記載のX線撮影装置である。
課題を解決するための発明は、第18の観点では、前記動作モードは、手動的に設定されることを特徴とする第16の観点に記載のX線撮影装置である。
【0023】
課題を解決するための発明は、第19の観点では、前記ディテクタパネルは、前記動作モードを手動設定するための操作部を有することを特徴とする第18の観点に記載のX線撮影装置である。
【0024】
課題を解決するための発明は、第20の観点では、前記ディテクタパネルは、前記動作モードを表示するための表示部を有することを特徴とする第16の観点に記載のX線撮影装置である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、第1の観点では、X線検出器とインターフェース用の信号処理回路と電源用の電池を内蔵するディテクタパネルは、前記X線検出器の検出信号を処理する第1の信号処理回路と、前記第1の信号処理回路の出力信号を処理する第2の信号処理回路と、前記電池の出力電圧をスイッチングレギュレーションにより調整して前記第2の信号処理回路に供給する第1の電源供給回路と、前記第1の電源供給回路の出力電圧をリニアレギュレーションにより調整して前記X線検出器および前記第1の信号処理回路に供給する第2の電源供給回路と、前記第2の電源供給回路の構成を1つのリニアレギュレータの単独接続状態と2つのリニアレギュレータの直列接続状態のいずれかに切り替える切替回路を具備するので、低電力重視の動作と低ノイズ重視の動作の切り替えが可能なディテクタパネルを実現することができる。
【0026】
本発明によれば、第11の観点では、X線照射手段と制御手段を備えたシステムコンソール、および、X線検出器とインターフェース用の信号処理回路と電源用の電池を内蔵するディテクタパネルを有するX線撮影装置において、前記ディテクタパネルは、前記X線検出器の検出信号を処理する第1の信号処理回路と、前記第1の信号処理回路の出力信号を処理する第2の信号処理回路と、前記電池の出力電圧をスイッチングレギュレーションにより調整して前記第2の信号処理回路に供給する第1の電源供給回路と、前記第1の電源供給回路の出力電圧をリニアレギュレーションにより調整して前記X線検出器および前記第1の信号処理回路に供給する第2の電源供給回路と、前記第2の電源供給回路の構成を1つのリニアレギュレータの単独接続状態と2つのリニアレギュレータの直列接続状態のいずれかに切り替える切替回路を具備するので、低電力重視の動作と低ノイズ重視の動作の切り替えが可能なディテクタパネルを備えたX線撮影装置を実現することができる。
【0027】
本発明によれば、第2または第12の観点では、前記切替回路は、前記第1の電源供給回路の出力電圧の相対的な低電圧および高電圧に応じて、それぞれ、前記1つのリニアレギュレータの単独接続への切り替えおよび前記2つのリニアレギュレータの直列接続への切り替えを行うので、切り替えを適応的に行うことができる。
【0028】
本発明によれば、第3または第13の観点では、前記第1の電源供給回路の出力電圧は、前記スイッチングレギュレータのフィードバックゲインの切り替えによって変更されるので、出力電圧の変更を的確に行うことができる。
【0029】
本発明によれば、第4または第14の観点では、前記フィードバックゲインの切り替えは、レジスタの内容に応じて行われるので、切り替えをディジタル的に制御することができる。
【0030】
本発明によれば、第5または第15の観点では、前記レジスタの内容は、前記第2の電源供給回路の2種類の動作モードの一方および他方に応じて、それぞれ、2値的論理値の一方および他方となるので、レジスタの内容を1ビットとすることができる。
【0031】
本発明によれば、第6または第16の観点では、前記2種類の動作モードは、低電力モードおよび低ノイズモードであるので、1ビットのレジスタで低電力モードと低ノイズモードを表すことができる。
【0032】
本発明によれば、第7または第17の観点では、前記動作モードは、通信によって設定されるので、動作モードの設定を遠隔的に行うことができる。
本発明によれば、第8または第18の観点では、前記動作モードは、手動的に設定されるので、動作モードの設定を直接的に行うことができる。
【0033】
本発明によれば、第9または第19の観点では、前記ディテクタパネルは、前記動作モードを手動設定するための操作部を有するので、動作モードの手動設定を容易に行うことができる。
【0034】
本発明によれば、第10または第20の観点では、前記動作モードを表示するための表示部を有するので、動作モードを容易に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面を参照して発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、本発明は、発明を実施するための最良の形態に限定されるものではない。
図1に、X線撮影装置の外観を示す。本装置は発明を実施するため最良の形態の一例である。本装置の構成によって、X線撮影装置に関する発明を実施するため最良の形態の一例が示される。
【0036】
図1に示すように、本装置は、システムコンソール100を有する。システムコンソール100は、本発明におけるシステムコンソールの一例である。システムコンソール100は、概ね直方体状の箱型の構造物であり、内部に撮影制御用の電子回路が収容されている。撮影制御用の電子回路は、本発明における制御手段の一例である。
【0037】
システムコンソール100は、下部に移動用のキャスター(caster)102を有し、上部に手押し用のハンドル(handle)104を有する。これによって、本装置は、図2に示すように、自由に移動させることが可能な移動型のX線撮影装置となる。
【0038】
システムコンソール100の上面は操作パネル(panel)106となっており、例えば、グラフィックディスプレー(graphic display)やキーボード(keyboard)等のマン・マシンコミュニケーション(man-machine communication)機器を備えている。
【0039】
システムコンソール100の背後には垂直なコラム(column)110が設けられ、コラム110から水平に伸びるアーム(arm)120の先端にX線照射器130が取り付けられている。X線照射器130は、ケーブル132を通じてシステムコンソール100から供給される高電圧によってX線を発生する。X線照射器130は、本発明におけるX線照射手段の一例である。
【0040】
X線照射器130は、アーム120の先端において向きが変更可能となっている。アーム120はコラム110に沿って上下移動可能であり、コラム110は長手方向の軸を中心としてスピン(spin)可能となっている。
【0041】
本装置は、ディテクタパネル200を有する。ディテクタパネル200は、概ね矩形の板状の構造物であり、システムコンソール100とは別体に構成され、持ち運び可能となっている。ディテクタパネル200は、非撮影時にはシステムコンソール100の正面の収納部108に収納され、撮影時に収納部108から取出して使用される。
【0042】
図3に、本装置の使用中の情景を示す。図3に示すように、本装置は病室で使用される。X線撮影は、ディテクタパネル200を例えば患者の後側にあてがい、X線照射器130で前側からX線を照射することによって行う。ディテクタパネル200が検出したX線信号は、有線または無線でシステムコンソール100に伝送される。
【0043】
ディテクタパネル200は、発明を実施するため最良の形態の一例である。ディテクタパネル200の構成によって、ディテクタパネルに関する発明を実施するため最良の形態の一例が示される。
【0044】
図4に、ディテクタパネル200の基本構成を示す。図4に示すように、ディテクタパネル200は、筐状のケース(case)55に、矩形の板状のX線検出器アセンブリ(assembly)51を収容したものとなっている。ケース55は、X線検出器アセンブリ51のX線検出面に対向する上面がX線透過性の材料で構成され、一端部に取手552を有する。
【0045】
ケース55内には、電源用の電池60がX線検出器アセンブリ51の裏側に設けられている。電池60としては、例えば二次電池が用いられ、再充電により繰り返し使用できるようになっている。なお、電池60としては、二次電池に限らず一時電池を用いるようにしても良い。電池60は、本発明における電池の一例である。
【0046】
図5に、ディテクタパネル200の内部構成の一例を模式的に示す。図5は、ディテクタパネル200の垂直断面図である。図5に示すように、X線検出器アセンブリ51は、X線検出器52と支持基板53と電気回路基板54で構成される。X線検出器52は支持基板53の表面に設けられ、電気回路基板54は支持基板53の裏面に設けられ、両者はフレキシブル(flexible)回路基板56で電気的に接続される。
【0047】
X線検出器52は、シンチレータ層52aと光電変換層52bとガラスサブストレート(glass substrate)52cの積層体となっており、シンチレータ層52aでX線を光に変換し、光電変換層52bで光を電気信号に変換する。
【0048】
光電変換層52bは、光電変換素子の2次元アレイ(array)で構成される。光電変換素子の2次元アレイは、周知のアクティブマトリクス(active matrix)となっている。アクティブマトリクスは、光電変換用のフォトダイオード(photo diode)と、その出力電流を蓄積するキャパシタ(capacitor)と、その電荷を出力する薄膜トランジスタ(thin film transistor : TFT)を1単位とする。アクティブマトリクスの1単位は、X線画像の1ピクセル(pixel)に相当する。
【0049】
光電変換層52bで変換された電気信号は、フレキシブル回路基板56を通じて電気回路基板54に入力される。電気回路基板54には電気回路が搭載されている。電気回路は、システムコンソール100に対するインターフェース(interface)であって、入力信号をディジタルデータ(digital data)に変換して、有線または無線でシステムコンソール100に伝送する。
【0050】
支持基板53の裏面には、角部に4本のスペーサ(spacer)が形成されている。スペーサ57bは、支持基板53と一体構造となっている。支持基板53はスペーサ57bによって、ケース55の内底壁の上に自立している。スペーサ57bの下端は、ケース55の内底壁に、接着あるいはねじ止め等により固定される。
【0051】
図6に、ディテクタパネル200の電気的構成をブロック(block)図によって示す。図6に示すように、検出アレイ600によってX線が検出され、検出信号がフロントエンドアナログ(front-end analog)変換回路602によって電圧信号に変換され、電圧信号が読出回路604によって読み出される。
【0052】
検出アレイ600は、シンチレータ層とフォトダイオードのアレイに相当し、フロントエンドアナログ変換回路602は、キャパシタのアレイに相当し、読出回路604は、TFTのアレイに相当する。これらは、いずれも微小なアナログ信号を取り扱う回路であり、ノイズの影響を受けやすいものとなる。
【0053】
検出アレイ600は、本発明におけるX線検出器の一例である。フロントエンドアナログ変換回路602および読出回路604は、本発明における第1の信号処理回路の一例であり、また、インターフェース用の信号処理回路の一例である。
【0054】
読出回路604の出力信号は、バックエンドディジタル(back-end digital)論理回路606でディジタル信号化され、ディジタル信号は、画像データ処理回路608で画像データ化されてシステムコンソール100に伝送される。
【0055】
バックエンドディジタル論理回路606および画像データ処理回路608は、いずれもディジタル的に信号を処理する回路であり、ノイズの影響を受けにくいものとなる。バックエンドディジタル論理回路606および画像データ処理回路608は、本発明における第2の信号処理回路の一例であり、また、インターフェース用の信号処理回路の一例である。
【0056】
システムコンソール100または電池60から供給される電源電圧が、セレクタ610を通じてスイッチング電源回路620に入力される。システムコンソール100からの電源供給は、ディテクタパネル200が有線でシステムコンソール100に接続されているときだけ行われ、それ以外は電池60からの電源供給が行われる。
【0057】
スイッチング電源回路620は、入力電圧をスイッチングレギュレーション(switching regulation)により調整して、バックエンドディジタル論理回路606と画像データ処理回路608に電源電圧として供給する。スイッチング電源回路620は、スイッチングレギュレータで構成される。スイッチング電源回路620は、本発明における第1の電源供給回路の一例である。
【0058】
スイッチング電源回路620の出力電圧は、リニア電源回路630に入力される。リニア電源回路630は、スイッチング電源回路620の出力電圧をリニアレギュレーション(linear regulation)により調整して、検出アレイ600、フロントエンドアナログ変換回路602および読出回路604に電源電圧として供給する。リニア電源回路630は、本発明における第2の電源供給回路の一例である。
【0059】
リニア電源回路630は、リニアレギュレータで構成される。リニアレギュレータとしては、ロードロップアウト・リニアレギュレータ(low-dropout linear regulator : LDO)が用いられる。
【0060】
リニア電源回路630は、2つのLDOを有する。それらは、1つのLDOの単独接続状態と2つのLDOの直列接続状態のいずれかに切り替え可能になっている。接続状態の切り替えは、切替回路700によって行われる。切替回路700は、本発明における切替手段の一例である。
【0061】
図7に、スイッチング電源回路620、リニア電源回路630および切替回路700の電気的構成をブロック図によって示す。図7に示すように、スイッチング電源回路620は、スイッチングレギュレータ622を有する。スイッチングレギュレータ622には、その出力電圧が抵抗R3,R4の直列回路で分圧されてフィードバック(feed back)される。
【0062】
グラウンド(ground)側の抵抗R4には、切替スイッチ624によって、抵抗R1または抵抗R2が並列に接続される。抵抗R1は抵抗R2より抵抗値が小さい。このため、抵抗R1が接続されたときは、抵抗R2が接続されたときよりもフィードバックゲイン(feed back gain)が低下し、スイッチングレギュレータ622の出力電圧が増加する。
【0063】
スイッチングレギュレータ622の出力電圧は、切替スイッチ624の切り替えに応じて2段階に変化し、抵抗R2側((1)側)に切り替えられたときは相対的に低電圧となり、抵抗R1側((0)側)に切り替えられたときは相対的に高電圧となる。このような出力電圧が、リニア電源回路630に入力される。
【0064】
リニア電源回路630は、LDO1632、LDO2634、切替スイッチ636およびコンパレータ(comparator)638を有する。LDO2634は入力段のLDOであり、LDO1632は出力段のLDOである。LDO2634の出力電圧はLDO1632に入力され、LDO1632の出力電圧は負荷に供給される。
【0065】
切替スイッチ636は、スイッチングレギュレータ622の出力電圧の入力先を、LDO1632側((B)側)またはLDO2634側((A)側)に切り替える。(B)側に切り替えたときはLDO1632の単独接続状態が形成され、(B)側に切り替えたときはLDO1632とLDO2634の直列接続状態が形成される。
【0066】
切替スイッチ636の切り替えは、コンパレータ638によって行われる。コンパレータ638は、スイッチングレギュレータ622の出力電圧をリファレンス(reference)電圧VREFと比較し、スイッチングレギュレータ622の出力電圧がリファレンス電圧VREFより小さいときは、切替スイッチ636を(B)側に切り替え、リファレンス電圧VREFより大きいときは、切替スイッチ636を(A)側に切り替える。
【0067】
リファレンス電圧VREFは、2段階に変化するスイッチングレギュレータ622の出力電圧の中間値となるように設定されている。このため、スイッチングレギュレータ622の出力電圧が相対的に低電圧のときは、LDO1632の単独接続状態が形成され、スイッチングレギュレータ622の出力電圧が相対的に高電圧のときは、LDO1632とLDO2634の直列接続状態が形成される。
【0068】
スイッチングレギュレータ622の出力電圧は、切替えスイッチ624が(1)側に切替えられたとき相対的に低電圧となり、(0)側に切替えられたとき相対的に高電圧となるので、結局、切替えスイッチ624が(1)側に切替えられたときLDO1632の単独接続状態が形成され、切替えスイッチ624が(0)側に切替えられたときLDO1632とLDO2634の直列接続状態が形成される。
【0069】
切替スイッチ624の切り替えは、レジスタ(register)720の内容に応じて行われる。レジスタ720内容は、1ビット(bit)のデータである。切替えスイッチ624は、1ビットデータの論理値が「0」のとき(0)側に切り替えられ、1ビットデータの論理値が「1」のとき(1)側に切り替えられる。
【0070】
レジスタ720の1ビットデータの論理値は、表示器722で表示される。表示器722は2つの表示態様の一方と他方によって、それぞれ、論理値「0」と「1」を表示する。そのような表示器としては、例えば、視覚的表示器等が用いられる。視覚的表示器としては、例えば、LED(light emitting diode)等が用いられる。表示器722は、本発明における表示部の一例である。
【0071】
レジスタ720のデータは、操作器724を通じて、ユーザー(user)が手動的に設定できるようになっている。操作器724は、2つのキー(key)NFP(0)およびLPP(1)を有する。操作器724は、本発明における操作部の一例である。
【0072】
NFP(0)は、ノイズ除去指定(noise free preference : NFP)を表し、LPP(1)は低電力指定(low power preference : LPP)を表す。ユーザーは、ディテクタパネル200の動作モードを低ノイズモードにするときは、NFP(0)キーを操作して論理値「0」を設定し、ディテクタパネル200の動作モードを低電力モードにするときは、LPP(1)キーを操作して論理値「1」を設定する。
【0073】
レジスタ720のデータは、システムコマンド(command)による設定も可能になっている。システムコマンドは、システムコンソール100から通信によって与えられる。これによって、低ノイズモードまたは低電力モードを遠隔操作で設定することができる。
【0074】
レジスタ720のデータは、クリア(clear)回路726によってクリアされて「0」となる。クリア回路726によるデータクリアは、ディテクタパネル200がシステムコンソール100に有線接続されたときに行われる。
【0075】
有線接続されたときは、システムコンソール100からディテクタパネル200に電源が供給され、電池60の電力は消費されないので、ディテクタパネル200を低電力モードにする必要がない。そこで、レジスタの内容をクリアして強制的に低ノイズモードにする。
【0076】
操作器724またはシステムコマンドにより、レジスタ720に「0」が設定されたとき、あるいは、クリア回路726によりレジスタ720がクリアされたときは、リニア電源回路630は、LDO1632とLDO2634の直列接続状態となる。
【0077】
この状態では、リニア電源回路630のPSRRは、LDO1632のPSRRとLDO2634のPSRRの積となるので、その出力電圧は電源ノイズすなわち電圧のリップル(ripple)が極めて小さいものとなり、これによって、低ノイズモードでのディテクタパネルの動作が可能になる。
【0078】
このような電圧が、検出アレイ600、フロンドエンドアナログ変換回路602および読出回路604に電源電圧として供給されるので、フロントエンドのアナログ信号に混入する電源のイズは無視できる程度に小さくなる。したがって、X線画像として高品質の画像を得ることができる。
【0079】
これに対して、操作器724またはシステムコマンドにより、レジスタ720に「1」が設定されたときは、リニア電源回路630は、LDO1632の単独接続状態となる。この状態では、リニア電源回路630において電力を消費するものはLDO1632だけとなるので、消費電力が減少する。これによって、低電力モードでのディテクタパネルの動作が可能になり、電池60の使用可能時間を延ばすことができる。
【0080】
ただし、このとき、リニア電源回路630の出力電圧のリップルは、低ノイズモードのときよりも大きくなるので、X線画像の品質は低ノイズモード時の品質には及ばないが、電池60の使用可能期間延長とのトレードオフ(trade-off)として許容可能な範囲にある。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】X線撮影装置の外観を示す図である。
【図2】X線撮影装置の移動中の様子を示す図である。
【図3】X線撮影装置で患者を撮影する様子を示す図である。
【図4】ディテクタパネルの基本構成を示す図である。
【図5】ディテクタパネルの内部構成を示す図である。
【図6】ディテクタパネルの電気的構成を示すブロック図である。
【図7】スイッチング電源回路、リニア電源回路および切替回路の電気的構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0082】
51 : X線検出器アセンブリ
52 : X線検出器
53 : 支持基板
54 : 電気回路基板
55 : ケース
56 : フレキシブル回路基板
60 : 電池
100 : システムコンソール
100 : ディテクタ
108 : 収納部
110 : コラム
120 : アーム
130 : X線照射器
132 : ケーブル
200 : ディテクタパネル
552 : 取手
600 : 検出アレイ
602 : フロントエンドアナログ変換回路
604 : 読出回路
606 : バックエンドディジタル論理回路
608 : 画像データ処理回路
610 : セレクタ
620 : スイッチング電源回路
622 : スイッチングレギュレータ
624 : 切替スイッチ
630 : リニア電源回路
632 : LDO1
634 : LDO2
636 : 切替スイッチ
638 : コンパレータ
700 : 切替回路
720 : レジスタ
722 : 表示器
724 : 操作器
726 : クリア回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線検出器とインターフェース用の信号処理回路と電源用の電池を内蔵するディテクタパネルであって、
前記X線検出器の検出信号を処理する第1の信号処理回路と、
前記第1の信号処理回路の出力信号を処理する第2の信号処理回路と、
前記電池の出力電圧をスイッチングレギュレーションにより調整して前記第2の信号処理回路に供給する第1の電源供給回路と、
前記第1の電源供給回路の出力電圧をリニアレギュレーションにより調整して前記X線検出器および前記第1の信号処理回路に供給する第2の電源供給回路と、
前記第2の電源供給回路の構成を1つのリニアレギュレータの単独接続状態と2つのリニアレギュレータの直列接続状態のいずれかに切り替える切替回路
を具備することを特徴とするディテクタパネル。
【請求項2】
前記切替回路は、前記第1の電源供給回路の出力電圧の相対的な低電圧および高電圧に応じて、それぞれ、前記1つのリニアレギュレータの単独接続への切り替えおよび前記2つのリニアレギュレータの直列接続への切り替えを行う
ことを特徴とする請求項1に記載のディテクタパネル。
【請求項3】
前記第1の電源供給回路の出力電圧は、前記スイッチングレギュレータのフィードバックゲインの切り替えによって変更される
ことを特徴とする請求項2に記載のディテクタパネル。
【請求項4】
前記フィードバックゲインの切り替えは、レジスタの内容に応じて行われる
ことを特徴とする請求項3に記載のディテクタパネル。
【請求項5】
前記レジスタの内容は、前記第2の電源供給回路の2種類の動作モードの一方および他方に応じて、それぞれ、2値的論理値の一方および他方となる
ことを特徴とする請求項4に記載のディテクタパネル。
【請求項6】
前記2種類の動作モードは、低電力モードおよび低ノイズモードである
ことを特徴とする請求項5に記載のディテクタパネル。
【請求項7】
前記動作モードは、通信によって設定される
ことを特徴とする請求項6に記載のディテクタパネル。
【請求項8】
前記動作モードは、手動的に設定される
ことを特徴とする請求項6に記載のディテクタパネル。
【請求項9】
前記動作モードを手動設定するための操作部を有する
ことを特徴とする請求項8に記載のディテクタパネル。
【請求項10】
前記動作モードを表示するための表示部を有する
ことを特徴とする請求項6に記載のディテクタパネル。
【請求項11】
X線照射手段と制御手段を備えたシステムコンソール、および、X線検出器とインターフェース用の信号処理回路と電源用の電池を内蔵するディテクタパネルを有するX線撮影装置であって、
前記ディテクタパネルは、
前記X線検出器の検出信号を処理する第1の信号処理回路と、
前記第1の信号処理回路の出力信号を処理する第2の信号処理回路と、
前記電池の出力電圧をスイッチングレギュレーションにより調整して前記第2の信号処理回路に供給する第1の電源供給回路と、
前記第1の電源供給回路の出力電圧をリニアレギュレーションにより調整して前記X線検出器および前記第1の信号処理回路に供給する第2の電源供給回路と、
前記第2の電源供給回路の構成を1つのリニアレギュレータの単独接続状態と2つのリニアレギュレータの直列接続状態のいずれかに切り替える切替回路
を具備することを特徴とするX線撮影装置。
【請求項12】
前記切替回路は、前記第1の電源供給回路の出力電圧の相対的な低電圧および高電圧に応じて、それぞれ、前記1つのリニアレギュレータの単独接続への切り替えおよび前記2つのリニアレギュレータの直列接続への切り替えを行う
ことを特徴とする請求項11に記載のX線撮影装置。
【請求項13】
前記第1の電源供給回路の出力電圧は、前記スイッチングレギュレータのフィードバックゲインの切り替えによって変更される
ことを特徴とする請求項12に記載のX線撮影装置。
【請求項14】
前記フィードバックゲインの切り替えは、レジスタの内容に応じて行われる
ことを特徴とする請求項13に記載のX線撮影装置。
【請求項15】
前記レジスタの内容は、前記第2の電源供給回路の2種類の動作モードの一方および他方に応じて、それぞれ、2値的論理値の一方および他方となる
ことを特徴とする請求項14に記載のX線撮影装置。
【請求項16】
前記2種類の動作モードは、低電力モードおよび低ノイズモードである
ことを特徴とする請求項15に記載のX線撮影装置。
【請求項17】
前記動作モードは、通信によって設定される
ことを特徴とする請求項16に記載のX線撮影装置。
【請求項18】
前記動作モードは、手動的に設定される
ことを特徴とする請求項16に記載のX線撮影装置。
【請求項19】
前記ディテクタパネルは、
前記動作モードを手動設定するための操作部を有する
ことを特徴とする請求項18に記載のX線撮影装置。
【請求項20】
前記ディテクタパネルは、
前記動作モードを表示するための表示部を有する
ことを特徴とする請求項16に記載のX線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−189792(P2009−189792A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226612(P2008−226612)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】