説明

デジタルカメラ用レンズ鏡胴

【課題】一番被写体側に配置されたレンズ枠を移動可能にしても、鏡胴内に塵埃が進入しにくい構成のデジタルカメラ用レンズ鏡胴を提供すること。
【解決手段】カバー板20は、直進筒16の内側に一体的に配置されていて、開口部20bを挟むようにして二つのフック部20f,20gを有している。遮蔽筒25は、外周部に二つの突起部25a,25bを上記のフック部20f,20gに係合させ、光軸方向への移動を制限されているが、光軸と直交する方向へは移動可能に配置されており、第1レンズ枠35が、第1レンズ群36を取り付けた円筒部35aを嵌合させることによって、光軸と直交する方向への移動を規制されている。そのため、第1レンズ枠35を光軸に沿って移動させても、外部の塵埃が、遮蔽筒25によって鏡胴内に進入しないようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一番被写体側に配置されたレンズを取り付けている部材を、筒体内で、光軸方向へ移動させるようにしたタイプのデジタルカメラ用レンズ鏡胴に関する。
【背景技術】
【0002】
ズーミングや焦点調節を行うとき、被写体側に撮影光路用の開口部を有した筒体内において、一番被写体側に配置されているレンズを取り付けたレンズ枠を、光軸方向へ移動させ得るようにした構成のカメラ用レンズ鏡胴が知られているが、このような構成のレンズ鏡胴の場合は、基本的には、外界と鏡胴内との間に隙間が生じざるを得ない構成ということができる。そして、そのことは、その筒体が、カメラ本体(カメラボディー)に取り付けられていて(交換レンズのように着脱可能なものを含む)光軸方向へは移動しないように構成されている場合はもちろんのこと、下記の特許文献1に記載されているように、ズーミングに際して、カメラ本体に対して光軸方向に移動させられる構成であっても、焦点調節のために、一番被写体側に配置されているレンズをその筒体に対して光軸方向へ移動可動にした場合にも言えることである。
【0003】
このように、筒体とレンズ枠との間に隙間が生じてしまうような構成の場合、その隙間が大きいと、両者の間に何らかの手段を講じなければ、いろいろと不都合なことがある。例えば、銀塩フィルムカメラの場合には、撮影をしていないときでも、その隙間から外界の光が進入してしまい、フィルムを感光させてしまうことがある。また、その隙間から水滴が浸入すると、良質の画像が得られなくなったり、カメラ内部の腐食の原因になったりすることがある。そのため、そのような不都合が生じないようにするための構成例が、前者については下記の特許文献2に、後者については下記の特許文献3に記載されている。
【特許文献1】特開2003−57705号公報
【特許文献2】特開平07−225332号公報
【特許文献3】特開平05−173240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、デジタルカメラの場合にも、筒体とレンズ枠との間に大きな隙間があると、不都合なことが生じてしまう。即ち、その隙間から外界の塵埃が進入すると、それが鏡胴内でレンズの表面に付着してしまうことがある。また、固体撮像素子の前面に配置されているフィルタ板や透明なカバー板などの表面に付着してしまうことがある。そして、そのように付着した塵埃は、個々には極めて微細であっても、それらが蓄積されてゆくことによって、やがては、良質の画像を得られなくしてしまう。従って、特許文献2に記載されている遮光手段や特許文献3に記載されている防水手段ほどの気密性は要求されないが、余程のことがない限りは、分解してクリーニングしなくても済むようにするために、何らかの防塵手段を講じることが必要である。
【0005】
そこで、先ず考えられることは、設計上、筒体とレンズ枠との形状寸法について、許容公差を小さく設定することである。しかしながら、そのようにすると、筒体とレンズ枠とは、それらの嵌合摺接部が光軸方向に所定の長さを有するものであるし、その他の部位間でも相互関係に所定の精度を必要とするものであるから、比較的大きな部材である筒体とレンズ枠との各々の全体形状を高精度に加工しなければならなくなり、コスト上からは極めて不利なものになってしまう。そのため、嵌合公差を大きめにせざるを得なくなっている筒体とレンズ枠との嵌合摺接部間に、特許文献2に記載されている植毛や、特許文献3に記載されている弾性体からなるシール部材のように、第三の部材を介在させることも考えられる。しかしながら、そのようにすると、植毛やシール部材の取り付けが比較的面倒であるほか、最近では、筒体に対してレンズ枠をモータで移動させるようにしていることから、モータに対する負荷が大きくなったり、モータに対する負荷が安定して得にくくなるという問題点がある。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、筒体内に、一番被写体側に配置されたレンズを取り付けているレンズ枠を光軸方向へ移動可能に配置したレンズ鏡胴において、筒体側の嵌合摺接部を筒体から分離した構成を採用することによって、鏡胴内に塵埃が進入しにくくなるようにした、コスト上で有利なデジタルカメラ用レンズ鏡胴を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明のデジタルカメラ用レンズ鏡胴は、筒状をしていてその軸方向の被写体側の略端部に設けられた壁には光軸を略中心にした撮影光路用の開口部が形成されており該壁の内側の面には該開口部の周辺近傍位置に少なくとも一つの規制部が設けられている筒体と、軸方向の長さが前記筒体よりも短い筒状をしており前記筒体内で前記規制部によって光軸方向への移動は制限されるが光軸と直交する方向へは移動し得るようにして配置されている遮蔽筒と、前記筒体内において光軸方向へ移動可能に配置されておりレンズを取り付けた筒状の保持部を前記遮蔽筒内で摺動するように嵌装させたことによって光軸と直交する方向への前記遮蔽筒の移動を制限しているレンズ枠と、を備えているようにする。
【0008】
その場合、前記筒体内には、撮影光路用の開口部を形成した板部材が、前記壁と平行に取り付けられていて、前記規制部が、該板部材の撮像装置側の面に設けられているようにすると、部材点数は多くなるものの、筒体の加工や構成部材の組立が好適に行えるようになる。また、前記規制部が、前記板部材に鉤状に形成されたフック部であり、前記遮蔽筒が、光軸から放射状に形成された少なくとも一つの突起部を有していて、前記遮蔽筒は、前記筒体内で、該突起部を該フック部に係合させた状態で配置されているようにしてもよい。更に、前記板部材が、前記壁との間にバリア室を構成し、該バリア室に、レンズ保護用のバリア板を少なくとも1枚配置しているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のデジタルカメラ用レンズ鏡胴は、筒体が、被写体側の壁の内面に、少なくとも一つの規制部を有していて、その筒体内には、その規制部によって光軸方向への移動が制限されてはいるが光軸と直交する方向へは移動し得るようにして遮蔽筒が配置されており、レンズ枠は、レンズを取り付けている保持部をそのようにして配置されている遮蔽筒に対して嵌装させているため、筒体とレンズ枠の全体形状を高精度に加工しなくても、遮蔽筒の内径とレンズ枠の保持部の外径とが所定の寸法となるように加工されてさえいれば、両者間から塵埃が進入しないように、しかも、レンズ枠の光軸方向の移動もスムースに行えるように組み立てることが可能となり、コスト上で極めて有効なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態を、図示した実施例によって説明する。尚、実施例は本発明をズームレンズを備えた沈胴式のデジタルカメラに適用したものであって、図1はカメラの不使用状態(撮影レンズの沈胴状態)を示した断面図であり、図2は撮影レンズを図1の位置からカメラの使用可能な初期位置へ繰り出した状態を示した断面図であり、図3は図1及び図2に示されている枠体10を被写体側から見た平面図である。また、図4は図1の状態において直進筒内を撮像素子側から見た平面図であり、図5は図2の状態において直進筒内のバリア機構を撮像装置側から見た平面図であり、図6は図5からバリア室のカバー板を取り除いて示した平面図である。更に、図7は図4におけるA−A線断面図であり、図8は図4におけるB−B線断面図であり、図9は図4におけるC−C線断面図である。そして、図10は直進筒に対する第1レンズ群の移動状態を示した断面図であって、図10(a)は第1レンズ群が直進筒に対して右限位置にある状態を示したものであり、図10(b)は左限位置にある状態を示したものである。
【実施例】
【0011】
先ず、本実施例の構成のうち、レンズ繰り出し機構の構成を、主に図1〜図3を用いて説明する。図1及び図2に示されているベース部材1は、適宜な手段によって図示していないカメラボディーに取り付けられており、少なくとも一つのねじ2によって撮像装置3を取り付けている。周知のように、この撮像装置3は、CCDなどの固体撮像素子を備えていて、通常は、その被写体側に、ローパスフィルタなどのフィルタ板や、透明なカバー板を配置している。また、ベース部材1には、被写体側の面に、柱状をしたカム部材4が取り付けられているが、このカム部材4は、断面が略四角形をしていて、その先端にはカム面が図2に示されているような直線状の斜面として形成されている。
【0012】
このベース部材1の被写体側の面には、図示していない手段によって固定筒5が一体的に取り付けられている。この固定筒5の内周面には、その形状と配置が明示されていないが、周知(特許文献1にも記載されている)のように、等間隔の角度位置に、後述の回転筒8が回転しながら光軸方向へも移動することを可能にする三つのカム溝5aが形成されている。図1は、それらのうちの二つのカム溝5aが分かるように断面して示したものである。また、固定筒5の内周面には、そのような回転筒8の移動に伴って後述のキー筒9が光軸方向へ直線的に移動することを可能にするために、光軸と平行な二つのキー溝5bが、カム溝5aとは干渉しないようにして形成されている。
【0013】
図2に示されている固定筒5は、その上方の部位を、図1とは異なる角度位置で断面して示したものであるが、この固定筒5には、二つの張出部5c,5dが形成されている。そして、それらの張出部5c,5dに設けられた孔には、モータ取付板6に立設された軸6aが嵌装されていて、歯車7が、その軸6aに回転可能に嵌装され、その一部を固定筒5の内部に臨ませている。尚、モータ取付板6は、図示していないステップモータや減速歯車を取り付けていて、ベース部材1とは別に、カメラボディーに取り付けられている。
【0014】
固定筒5の内側には回転筒8が配置されている。この回転筒8は、図2に示されているように、撮像装置3側の端部に、所定の角度範囲で形成された部分歯車8aを有していて、それを上記の歯車7に噛合させている。また、この回転筒8の外周面には、等間隔の角度位置に三つのピン8bが設けられていて、それらは固定筒5に設けられた上記のカム溝5aに夫々嵌合している。そのため、この回転筒8は、光軸を中心にして回転すると、カム溝5aによって光軸方向にも移動させられるようにもなっている。更に、回転筒8の内周面には、カム形状の異なる2種類のカム溝8c,8d(8dについては図2参照)が三つずつ形成されているが、それらは、等間隔の角度位置に交互に配置されている。そして、それのうち、一方の形状をしたカム溝8cは、後述の枠体10を光軸方向へ移動させるためのものであり、他方の形状をしたカム溝8dは、後述の直進筒16を光軸方向へ移動させるためのものである。
【0015】
回転筒8の内側には、キー筒9が配置されていて、回転筒8が回転すると、光軸方向に直線的に移動するように構成されている。即ち、このキー筒9の被写体側の端部には、所定の角度位置に可撓性を有する複数のフック部9aが形成されていて、それらを、回転筒8の内周に環状に形成されている溝8eに嵌合させている。また、このキー筒9には、撮像装置3側に二つのキー9bが形成されていて、図1に示すように、それらを上記の二つのキー溝5bに嵌合させている。従って、このキー筒9は、回転筒8が歯車7によって回転されながらカム溝5aによって光軸方向へ移動するとき、固定筒5のキー溝5bに案内されて、光軸方向へだけ直線的に移動させられることになる。更に、このキー筒9には、光軸と平行になるようにして、2種類のキー溝9c,9dが、等間隔の角度位置に三つずつ交互に形成されている。そのうち、キー溝9cは、後述する枠体10の腕部10aの先端部を挿入させ、その先端部に設けられたピン10bを、回転筒8の上記のカム溝8cに嵌合させ得るようにしている。また、キー溝9dは、後述の直進筒16のピン16aを貫通させ、回転筒8の上記のカム溝8dに嵌合させ得るようにしている。
【0016】
そこで、そのような枠体10と直進筒16のうち、先ず、枠体10の形状と、それに取り付けられている部材について説明する。図3に示されているように、枠体10は、放射状に三つの腕部10aを有していて、その先端の折曲部を上記のようにキー筒9のキー溝9cに挿入し、それらの先端部に設けたピン10bを回転筒8のカム溝8cに嵌合させている。そのため、この枠体10は、回転筒8が回転すると、ピン10bがカム溝8cに案内されて移動するが、キー筒9のキー溝9cにも案内されるため、回転筒8のようには回転せず、光軸方向へだけ直線的に移動する。また、その移動量は、カム溝8cの形状によって、回転筒8が光軸方向へ移動する量とは異なるし、設計によっては、方向も異なる場合がある。
【0017】
この枠体10には、シャッタ装置と第2レンズ群が取り付けられている。先ず、シャッタ装置を簡単に説明する。図3においては図示を省略してあるが、図1及び図2にブロックで示したように、枠体10の被写体側の面に、モータ等の駆動手段11が取り付けられている。また、枠体10の撮像装置3側には、所定の間隔を空けてシャッタ用カバー板12が取り付けられており、それらの間に図示していないシャッタ羽根を配置している。そのため、この枠体10は、シャッタ装置という観点からはシャッタ地板であるともいえる。但し、このようには構成せず、シャッタ装置をユニットとして構成し、そのユニットを枠体10に取り付けるように構成しても構わない。また、絞り装置も必要とする場合には、絞り装置用の駆動手段も枠体10の被写体側に取り付け、枠体10とシャッタ用カバー板12との間には、シャッタ羽根のほかに絞り羽根も配置すればよいことになる。
【0018】
次に、第2レンズ群の取付構成を説明する。第2レンズ群13を取り付けた第2レンズ枠14は、図3に示されているように、放射状に三つの張出部14aを有していて、それらの一つに形成された孔14bを、枠体10に設けられた案内ピン10cに嵌合させている。そして、それらの張出部14aの先端部近傍位置には、後述の直進筒16に設けられた三つのピン16cが接触し得るようになっている。また、この第2レンズ枠14は、第2レンズ群13を保持した円筒部14cが枠体10の孔10dに嵌合していて、枠体10に対して光軸方向へ移動可能になっているが、図1及び図2に示されているように、撮像装置3側に所定の角度間隔で設けられた複数のフック部14dが、被写体側への抜け止めの役目をしている。また、円筒部14cの外径よりも大きい巻き径をしたスプリング15が、円筒部14cに嵌装されており、図3に示すように、その一端を、右下方の張出部14aに形成されたバネ掛け部14eに掛け、他端を、枠体10の孔10dの縁に形成された溝10eに掛けていて、枠体10に対して第2レンズ枠14を被写体側に付勢していると共に、時計方向へも回転するように付勢している。
【0019】
尚、ここで、枠体10に対する第2レンズ枠14の組み付け方を説明しておく。図3では図示を省略してあるが、枠体10の孔10dの縁には、上記の溝10eのほかに、第2レンズ枠14のフック部14dをくぐらせることの可能な複数の溝が形成されている。そのため、それらの溝に被写体側から第2レンズ枠14の複数のフック部14dをくぐらせ光軸を中心にして回転させると、バネ掛け部14eを形成している張出部14aが、案内ピン10cに当接する。そこで、その張出部14aを被写体側に撓ませてなおも回転させ、孔14bが案内ピン10cの対向位置になったとき、その張出部14aを自己の弾性で原形に復帰させると、孔14bと案内ピン10cが嵌合し、両者の組み付け状態が得られるようになっている。但し、このほかにも、いろいろと組み付け方法があることは言うまでもない。また、本実施例の場合には、第2レンズ群13を、枠体10とは別部材である第2レンズ枠14に取り付けたが、直接、枠体10に取り付ける場合もあることは言うまでもない。従って、そのような構成にした場合は、枠体10が第2レンズ枠であるとも言えることになる。
【0020】
次に、本実施例における直進筒16と、それに組み付けられている部材を説明する。先ず、直進筒16の外周には、等間隔の角度位置に三つのピン16a(図2において一つだけ図示してある)が設けられており、上記したように、それらは、キー筒9のキー溝9dに挿入され、先端を回転筒8のカム溝8dに嵌合させている。そのため、この直進筒16は、回転筒8が回転すると、ピン16aがカム溝8dに案内されて移動するが、キー筒9のキー溝9dにも案内されることになるため、回転筒8のようには回転せず、光軸方向へだけ直線的に移動する。また、その移動量は、カム溝8dの形状によって、回転筒8の光軸方向の移動量とは異なるし、設計によっては方向も異なる場合がある。そして、この直進筒16は、外面に周知のような化粧部材17が取り付けられていて、被写体側に形成されている壁16bには、撮影光路用の開口部16zが形成されている。
【0021】
直進筒16の内部には、バリア機構と、第1レンズ群も含めた焦点調節機構とが配置されている。そこで、先ず、それらのうちバリア機構の構成部材と、それらの取り付け構成を、主に図4〜図6を用いて説明する。図6から分かるように、直進筒16の壁16bの内面には、三つのピン16cが設けられているほかに、三つの軸16d,16e,16fと、二つの受け部16g,16hと、二つのストッパ16i,16jと、三つの取付部16k,16m,16nと、三つの軸受け孔16p,16q,16rと、壁16bを肉薄にした二つの窪み部16s,16tと、ピン16uとが設けられていて、取付部16k,16m,16nの先端面には、ねじ穴が形成されている。また、直進筒16の筒部の内面には、図6に示されているように、壁16bとの間に空間を形成するようにして、引っ掛け部16vが設けられており、光軸と平行な一つのキー溝16wも形成されているほか、図6では図示を省略してあるが、図6の上方位置には、図8に示されているような係止部16xが設けられている。
【0022】
図6から分かるように、上記の軸16d,16eには、バリア板18,19が回転可能に取り付けられている。そして、これらのバリア板18,19は、上記の開口部16zを覆う遮蔽部のほかに、係接部18a,19aを有しているが、図4及び図5においては、図面を見やすくするために、それらの係接部18a,19aの符号を省略してある。また、これらのバリア板18,19は、一見、同じような形状をしているが、実際には異なる形状をしている。即ち、バリア板18は、係接部18aから遮蔽部までが平坦な板状になっているが、バリア板19の方は、係接部19aと遮蔽部との間に屈曲部19b(図4では符号を省略)が形成されている。そのため、2枚のバリア板18,19は、それらの遮蔽部が同一平面で作動することになり、後述の第1レンズ群36との配置上、鏡胴の光軸方向の寸法を小さくするのに役立っている。
【0023】
このような2枚のバリア板18,19は、直進筒16の壁16bとカバー板20との間に構成されたバリア室に配置されている。そこで、次に、カバー板20の構成と、そのカバー板20とバリア板18,19とに関係する構成を説明する。図5に示すように、カバー板20は、上記の受け部16g,16hとストッパ16iに、撮像装置3側(図5の手前側)から接触して、壁16b側への移動を阻止され、壁16bとの間にバリア室を構成している。従って、上記のストッパ16iは、受け部の役目もしていることになる。また、カバー板20には、二つのバネ軸部材21,22が、かしめ加工によって固定されており、被写体側に形成されている穴を上記の軸16d,16eの先端に嵌合させ、それらの軸16d,16eの先端によっても、壁16b側への移動を阻止されるようになっている(図7,図9参照)。そして、それらのバネ軸部材21,22には、図示していないばねが巻回されていて、それらの一端を各々バリア板18,19に掛け、それらの他端を両方とも後述するバリア連結部材23のピン23aの下側に掛けている。
【0024】
また、このカバー板20は、薄い部材であって、それ自体可撓性を有していることから、図5の上方位置に形成した折曲部20aを、図8に示すように、係止部16xに掛け、撮像装置3側への移動が阻止されるようになっている。尚、このような組み付け方だけでは、図5においてカバー板20の下方部が撮像装置3側に浮き上がってしまうことになるが、本実施例の場合には、後述する手段によって、そのようなことが生じないように、その下方部を支え、カバー板20が壁16bと略平行になるようにしている。このように、本実施例のバリア機構は、直進筒16にバリア板18,19とカバー板20を取り付けるに際し、専用の固定部材を一つも用いていないのが特徴である。
【0025】
このようにして組み付けられているカバー板20は、図5から分かるように、略中央部に撮影光路用の開口部20bを有していて、上方位置に形成されている長孔20cの下方部に上記した三つのピン16cの一つを貫通させている。また、開口部20bを挟む位置に形成された二つの孔20d,20eの縁からは、撮像装置3側に起立して先端を鉤状に曲げた形状のフック部20f,20g(フック部20gの側面形状は図8参照)が形成されており、その一方の孔20eには、上記したピン16cの一つを貫通させている。更に、カバー板20には、残りのもう一つのピン16cを貫通させた孔20hと、軸16fを貫通させた孔(符号なし)と、取付部16nを貫通させた孔(符号なし)とが形成されているほか、折曲部20iとバネ掛け部20jが形成されている。
【0026】
上記の軸16fには、カバー板20の撮像装置3側において、バリア連結部材23が回転可能に取り付けられ、止め部材24によって抜け止めされている(図8の断面図も参照)。このバリア連結部材23は、壁16b側にピン23aを有し、撮像装置3側にピン23bを有していて、図示していないばねによって、図5において時計方向へ回転するように付勢されている。そして、ピン23aは、長孔20cを貫通して、バリア室内でバリア板18,19の係接部18a,19aに接触可能となっており、その先端を上記の窪み部16tに挿入している。また、ピン23bの方は、上記のベース部材1に取り付けられているカム部材4に接触し得るようになっている。
【0027】
本実施例においては、このようなカバー板20と接するようにして、遮蔽筒25を配置している。この遮蔽筒25は、カバー板20の開口部20bよりも直径が大きく、軸方向の長さが直進筒16よりも短い筒状をしていて、図5に示すように、外周面から放射状に形成された二つの突起部25a,25bを、上記のフック部20f,20gに挿入し係合させている(フック部20gと突起部25bとの係合関係は図8にも示されている)。そのため、フック部20f,20gは、遮蔽筒25が光軸に沿った方向へ移動しないようにするための規制部であるということもいえる。それに対して、カバー板20との関係だけでいうと、図5に示された状態では、遮蔽筒25は、光軸と直交する方向への移動は可能になっている。
【0028】
次に、主に図4と図7〜図9を用い、焦点調節機構に関係する構成部材と、それらの組み付け構成を説明する。センサ26を取り付けたセンサ取付板27は、図9に示してあるピン27aを、直進筒16の孔16y(図5,図6では図示を省略)に嵌合させ、その一端を、図6で説明した引っ掛け部16vに掛け、他端を、上記の取付部16kに対し、ねじ28によって取り付けている。また、図6で説明した二つの取付部16m,16nには、ねじ29,30によって、モータ取付板31を取り付けているが、その取り付け状態においては、そこに形成された各々の孔に、上記のピン16u,16cを嵌合させている。そして、このモータ取付板31が、上記の折曲部20iと接触し(図8参照)、上記したようなカバー板20の浮き上がりを阻止している。また、図9から分かるように、センサ取付板27も、カバー板20の浮き上がりを阻止し得るようになっている。
【0029】
モータ取付板31には、ステップモータ32が取り付けられており、その出力歯車33は、直進筒16の壁16bとモータ取付板31との間に配置されている。また、図4にだけ示されている歯車34も壁16bとモータ取付板31との間に配置されていて、回転軸を上記の軸受け孔16pとモータ取付板31に軸受けされ、上記の出力歯車33に噛合している。また、直進筒16内には第1レンズ枠35が配置されている。この第1レンズ枠35は、円筒部35aに第1レンズ群36を保持させており、その円筒部35aを上記の遮蔽筒25内に嵌合させている。そして、第1レンズ群36は、その一部が円筒部35aから被写体側に突き出ていて、その前面には略長方形をした開口を有するマスク37が取り付けられている。
【0030】
図4に示されているように、第1レンズ枠35には、放射状に腕部35b,遮光部35c,張出部35dが設けられている。そのうち、腕部35bは、その先端が上記のキー溝16wに嵌合しており、上記のステップモータ32が回転したとき、後述のように伝達機構を介して、直進筒16に対し、光軸方向に移動し得るようになっている。また、遮光部35cは、上記のセンサ26に設けられたスリットに出入り可能となっていて、直進筒16を固定筒5内に沈胴させるに際し、センサ26が、直進筒16と第1レンズ枠35との相対位置を検出し得るようにしているが、その理由は後述する。
【0031】
また、第1レンズ枠35の張出部35dは、複雑な形状をしている。先ず、図8に示されているように、直進筒16の壁16bに形成された上記の孔16qには、比較的長い部材である案内ピン38の一端が圧入されている。他方、張出部35dには、光軸に沿った方向に所定の間隔を有して二つの折曲部35e,35fが設けられていて、それらに形成された孔を、案内ピン38に嵌合させている。また、折曲部35eの近傍位置には、バネ掛け部35gが設けられていて、上記のカバー板20との間にスプリング39を掛けているが、このプリング39は、常に第1レンズ枠35を被写体側へ付勢することによって、後述のリードスクリュー機構によって移動された第1レンズ枠35の位置を安定化させるためのものであり、俗にガタ寄せばねなどといわれているものである。
【0032】
更に、張出部35dには、図7から分かるように、軸方向の一端に壁を有した円筒部35hが設けられていて、その壁には円形の孔35iが形成されている。また、その円筒部35hの近傍部には、ナット部材40の一部を挿入させるための被挿入部35jが形成されている。そして、そのナット部材40は、金属製であって、平面形状が円形部と方形部とからなる鍵穴状をしており、その円形部の中央に設けた円形孔の内周には雌ねじを形成していて、方形部だけを被挿入部35jに対して着脱可能に挿入するようになっている。他方、被挿入部35jの方は、図7の下方が上記の方形部の挿入口になっていて、明示されていないが、ナット部材40の挿入された状態では、ナット部材40が、図7の紙面に垂直な方向へは実質的に動けない形状になっている。また、第1レンズ枠35が合成樹脂製であることから、図4及び図7に示されているような壁35kを形成するために孔35mが形成されているが、後述のリードスクリュー41と螺合させた図7の状態では、ナット部材40が図7の左右方向へ殆ど動けないようになっている。
【0033】
本実施例のリードスクリュー41は、金属製であって、図7に示されているように、一端に軸部41aを有し、他端にはスリワリ41bを有していて、略中央部には雄ねじ41cを形成しているが、その雄ねじ41cの形成部からスリワリ41bを形成した端部までは、円柱部41dとなっている。また、このリードスクリュー41は、雄ねじ41cの形成部から軸部41aの間に、圧入によって、歯車42を取り付けているが、この歯車42は、直進筒16の壁16bとモータ取付板31との間に配置されていて、図4から分かるように、上記の歯車34に噛合している。そして、このリードスクリュー41は、図7の状態においては、軸部41aを壁16bに設けられた孔16rに回転可能に嵌合させ、円柱部41dを第1レンズ枠35の円筒部35hに設けられた孔35iに、第1レンズ枠が光軸方向へ摺動可能に嵌合させている。
【0034】
ここで、第1レンズ枠35とリードスクリュー41の組み付け方を説明する。これまでの説明からも理解されるように、第1レンズ枠35とリードスクリュー41を組み付ける前の組立状態は、図5に示された状態において、直進筒16の軸受け孔16qに案内ピン38の一端を圧入した状態である。その状態で、先ず、リードスクリュー41を一時的に組み付ける。その順序は、予め歯車42を取り付けておいたリードスクリュー41の軸部41aを直進筒16の孔16rに嵌合させておいてから、モータ取付板31の孔31aをリードスクリュー41のスリワリ41b側から嵌合させ、そのモータ取付板31をねじ29,30によって直進筒16に取り付ける。そのため、その場合におけるリードスクリュー41は、歯車42が歯車34に噛合していて、且つモータ取付板31によって抜け止めされているとはいえ、極めて不安定な状態になっていて、壁16bに対して垂直な姿勢を確実に保ちにくい状態になっている。
【0035】
このような状態にしておいてから、第1レンズ枠35を組み付けることになるが、その場合には、ナット部材40の方形部を被挿入部35jに挿入しておき、そのナット部材40が脱落しないように注意をしながら、腕部35bの先端と直進筒16のキー溝16wとの位置合わせと、張出部35dの孔と案内ピン38との位置合わせと、ナット部材40の孔とリードスクリュー41のスリワリ41b側の端部との位置合わせを行って、第1レンズ枠35を直進筒16の壁16b側へ移動させていく。そのため、ナット部材40の雌ねじ形成孔はリードスクリュー41の円柱部41dに嵌まるが、その直後には、第1レンズ枠35の円筒部35hがリードスクリュー41の円柱部41dに挿入されることになるので、それ以後は、ナット部材40の脱落に気を使う必要はなくなる。
【0036】
その状態で、第1レンズ枠35をなおも移動させてゆき、孔35iをリードスクリュー41の円柱部41dに嵌合させると、スリワリ41bの形成面が孔35iの反対側に突き出た直後に、ナット部材40の雌ねじがリードスクリュー41の雄ねじに当接するため、第1レンズ枠35は、そのままではそれ以上直進させることができなくなる。他方、その段階では、第1レンズ群36の取付部である第1レンズ枠35の円筒部35aは、未だ遮蔽筒25に嵌合しておらず、その直前位置に達している。そして、その後は、マイナスドライバーの先端をスリワリ41bに挿入して回転させると、上記の雌ねじと雄ねじが螺合し、第1レンズ枠35の直進が可能になる。
【0037】
ところで、既に説明したように、本実施例は、遮蔽筒25を、第1レンズ枠35の円筒部35aに嵌合させるが、その遮蔽筒25は、カバー板20と一体的にはなっていない。即ち、カバー板20は、専用の固定部材を用いていないとはいえ、直進筒16に対しては相対的に変位しないように取り付けられているため、直進筒16に対して一体的に取り付けられているということができる。しかしながら、遮蔽筒25は、カバー板20に一体的に取り付けられておらず、図5に示した状態においては、光軸に沿った方向への移動は制限されているが、光軸と直交する方向へは、どちらの方向へも若干移動することが可能であり、特に左下方向へは組み付けの都合があって、他の方向よりも大きく移動させることが可能になっている。そのため、上記のように、リードスクリュー41を回転させて第1レンズ枠35を組み付ける段階では、遮蔽筒25を、その中心位置が円筒部35aの中心位置となるように位置調整しながら行うことになる。そして、遮蔽筒25は、円筒部35aを嵌合させたことによって、光軸と直交する方向への移動も制限されることになる。
【0038】
このことからも分かるように、本実施例の場合には、遮蔽筒25を、直接的にも間接的にも、直進筒16とは一体的に構成していない。しかしながら、もし一体化した場合には、その一体化された構成部材は、遮蔽筒部の配置位置や形状を、他の各部の形状寸法との関係を考慮しながら製作しなければならなくなるため、その構成部材の全体を高精度に製作することが要求され、極めてコスト高になってしまう。ところが、本実施例の場合には、部品点数は一つ増えることになるが、遮蔽筒25と円筒部35aとの嵌合公差が高精度に得られてさえいれば、双方を好適に組み付けることが可能となるので、全体としてのコストは抑えられる。更に、このような構成は、第1レンズ枠35自体の外形形状のばらつきによる影響や、腕部35bの先端と直進筒16のキー溝16wとの連結関係,張出部35dの孔と案内ピン38との連結関係などの影響によって、直進筒16内における円筒部35aの配置位置が、設計基準どおりに得られないときにも、円筒部35aのそれぞれの位置に対応させて、遮蔽筒25と円筒部35aを好適に嵌合させることを可能にしている。
【0039】
また、このようにして、第1レンズ枠35の組み付けられた状態においては、リードスクリュー41の姿勢も安定したものになっている。即ち、上記したように、第1レンズ枠35を組み付ける前の段階では、リードスクリュー41は、その軸部41aと孔16rとの嵌合部を支点にして、若干ぐらつく可能性のある状態になっていた。ところが、第1レンズ枠35を組み付けた状態では、円柱部41dが円筒部35hの孔35iに軸受けされた状態になるため、極めて安定した配置状態を維持できるようになっている。また、通常のリードスクリューの場合は、少なくとも2箇所を固定部材によって支持する構成になっているが、本実施例の場合には、そのような固定部材に相当する直進筒16に対し、一箇所を支持されているだけであり、もう一箇所は直進筒16に対して可動な第1レンズ枠35に軸受けされているため、リードスクリュー41と第1レンズ枠35との相対的な組み付け作業が極めて容易であり、しかも、両者間の安定した機能が確保できるという特徴がある。従って、コスト上でも極めて有利となっている。
【0040】
次に、本実施例の作動を説明する。図1及び図4は、カメラの不使用状態を示したものであって、第1レンズ群36と第2レンズ群13とは、カメラボディーに固定された固定筒5内に収容されており、所謂沈胴状態となっている。そして、この状態においては、直進筒16に設けられた三つのピン16cが、第2レンズ群13を取り付けた第2レンズ枠14の張出部14aを、スプリング15の付勢力に抗して押すことにより、枠体10と第2レンズ枠14との間隔を最小限にし、固定筒5内での好適な収まりを可能にしている。また、このとき、バリア連結部材23は、そのピン23bがカム部材4によって光軸に一番近い状態にさせられている。そのため、図4に示されているように、バリア板18,19の係接部18a,19a(符号は図6参照)は、バリア連結部材23のピン23aに接触しておらず、一方のバリア板18は、図示していないばねの一端をピン23aが押すことによって時計方向へ付勢され、他方のバリア板19は図示していないばねの一端をピン23aが押すことによって反時計方向へ付勢されて、共に、その先端をストッパ16iに接触させ、開口部16zを覆っている。
【0041】
カメラを使用するに際して電源をオンにすると、図示していないステップモータが回転して、固定筒5に取り付けられている歯車7(図2参照)を回転させる。そのため、回転筒8は、回転しながら被写体側にも直進させられるが、キー筒9,枠体10,直進筒16は、回転せずに被写体側に直進させられ、第1レンズ群36と第2レンズ群13を繰り出していく。また、このとき、回転筒8とキー筒9とは同じ速度で被写体側へ移動するが、枠体10は全体としてはそれらよりも速く、さらに直進筒16は全体として枠体10よりも速く移動するため、上記のピン16cが枠体10から離れていくことになり、それによって、枠体10と第2レンズ枠14との間隔もスプリング15の付勢力によって大きくなっていく。そして、図2に示すように、最終的には、第2レンズ枠14のフック部14dが枠体10に接触し、直進筒16のピン16cが第2レンズ枠14から離れ、第1レンズ群36と第2レンズ群13の間隔も大きくなる。
【0042】
他方、直進筒16が被写体側へ移動していくため、バリア連結部材23のピン23bがカム部材4から離れていく。そのとき、バリア連結部材23は、図示していないばねによって図4において時計方向へ回転するように付勢されているため、その回転によってピン23bは、その先端がカム部材4のカム面(斜面)を辿り、光軸から離れていく。そのため、バリア連結部材23に設けられたもう一つのピン23aは、バリア板18,19に掛けられた夫々のばねの緊張を緩めてゆき、やがて、係接部18a,19aに接触すると、その後はそれらの緊張を緩めることなく、係接部18a,19aを押し上げてゆき、一方のバリア板18を反時計方向へ回転させ、他方のバリア板19を時計方向へ回転させていく。そして、それらの回転は、開口部16zを全開にした後、バリア板18がストッパ16jに当接することによって停止する。図5及び図6は、そのようにして停止させられている状態を示したものである。そして、その直後には、図示していないステップモータが停止して、全ての部材の作動が停止する。
【0043】
このようにして、繰り出し作動の終了した状態が、図2に示された初期状態(撮影待機状態)であり、本実施例の場合には、この初期状態のとき、撮影レンズ(第1レンズ群36,第2レンズ群13)は無限遠での撮影可能状態となっている。そして、撮影を行うに際して、ズーミングを行う場合には、撮影レンズと連動して作動させられるズームファインダを覗きながら、上記の図示していないステップモータを正・逆転させ、固定筒5と回転筒8に形成されているカム溝5a,8c,8dの形状により、直進筒16と枠体10とを光軸方向に同時に移動させると共に第1レンズ群36と第2レンズ群13との相対位置関係をも変えるようにするが、そのことは本発明とは直接関係がないので、具体的な説明を省略する。
【0044】
また、本実施例は、焦点調節を行うとき、ステップモータ32を回転させて、直進筒16に対する第1レンズ群36の相対位置を変えるようにしており、その結果として第1レンズ群36と第2レンズ群13との相対位置が変わるようになっている。即ち、ステップモータ32が回転すると、その回転は、出力歯車33から歯車34を介して歯車42に伝達され、リードスクリュー41を回転させるため、そのリードスクリュー41と螺合したナット部材40をかかえている第1レンズ枠35が、リードスクリュー41の回転方向に対応して、光軸に沿ったいずれかの方向へ移動させられるようになっている。そして、上記のズーミングとこのような焦点調節が行われた後、撮影が行われることになる。
【0045】
ところで、図10は、焦点調節を行った場合における直進筒16と第1レンズ枠35との相対位置関係を示したものであって、図10(a)は第1レンズ枠35が一番撮像装置3側にあるときを示し、図10(b)は第1レンズ枠35が一番被写体側にあるときを示したものであるが、特に、図10(a)に示した状態のときには、もしも、本実施例のように遮蔽筒25を備えていないと、カバー板20と第1レンズ枠35の円筒部35aとの間に大きな隙間ができてしまうことになる。そのため、直進筒16の開口部16zから入ってきた外界の塵埃が、カバー板20の開口部20bに入ったあと、その隙間を通過して撮像装置3側に入り込み、第1レンズ群36の撮像装置3側の面に付着したり、第2レンズ群13の両面に付着したり、撮像装置3の前面に付着したりしてしまうことになる。
【0046】
そして、特に、撮像装置3の前面にまで達した塵埃は、その付着面が撮像面と接近していることから、撮影の都度累積されていくことによって、やがて、画質のよい映像が得られないようにしてしまう。しかも、そのようにして付着した塵埃は、第1レンズ群36の被写体側の面に付着した場合のように、ユーザーが簡単にクリーニングすることができず、専門店に依頼してカメラを分解して行わざるを得なくなる。そこで、本実施例の場合は、遮蔽筒25を設けることによって、そのような事態の発生を極力抑制するようにしていると共に、遮蔽筒25を、カバー板20とは一体化しないことによって、上記したように、高コストにはならず、しかも、直進筒16に対する第1レンズ枠35の組み付けを好適に行える構成にしてある。
【0047】
このようにして、撮影が行われ、その後は、もはや撮影をしないことになった場合は、カメラの電源スイッチをオフにするが、そのようにオフにした場合でも遅延回路が働いていて、所定の時間だけはオン状態が継続するようになっており、上記のオフ信号によって、上記のステップモータ32と、もう一つの図示していないステップモータは、回転させられるようになっている。先ず、電源スイッチをオフにしたとき、第1レンズ群36は、図10(b)に示された状態になっていることがある。そのため、もしも、この状態のままで、バリア板18,19(図10(b)では図示を省略されている)に開口部16zの閉じ作動を行わせると、それらのバリア板18,19は、第1レンズ群36のマスク37に衝突してしまうことになる。そこで、本実施例の場合には、ステップモータ32を回転させ、第1レンズ枠35を、図2に示した初期状態に復帰させるようにしている。そして、その復帰状態を検出し、ステップモータ32の回転を停止させるようにするのが、上記のセンサ26である。
【0048】
他方、もう一方の図示していないステップモータが回転させられると、固定筒5が、歯車7を介して、図1の状態から図2の状態になるときとは、逆に回転させられる。そのため、回転筒8は、回転しながら撮像装置3側へも直進させられ、キー筒9は、回転せずに撮像装置3側へ直進させられる。また、枠体10と直進筒16も、回転せずに全体として撮像装置3側に直進させられ、第1レンズ群36と第2レンズ群13を沈胴させていく。そして、直進筒16の方が枠体10よりも全体として速く作動するため、直進筒16のピン16cが第2レンズ枠14の張出部14aに接して押すようになり、スプリング15の付勢力に抗して、第2レンズ枠14と枠体10との間隔を小さくしていく。
【0049】
また、それと並行して、バリア連結部材23のピン23bが、カム部材4に接して先端のカム面に案内されるようになるため、バリア連結部材23は、図示していないばねの付勢力に抗して、図5において反時計方向へ回転させられる。そのため、バリア連結部材23のピン23aが、そこに掛けられている図示していない二つのばねの一端を押すが、それらのばねの他端は各々バリア板18とバリア板19に掛けられているため、それらのばねを緊張させることなく、バリア板18は時計方向へ、バリア板19は反時計方向へ回転させられる。そして、それらの回転は、開口部16zを覆った瞬間に、バリア板18,19の先端がストッパ16iに当接して停止するが、バリア連結部材23は、その後も僅かに回転させられ、ピン23aが係接部18a,19aから離れて、バリア板18,19との間に掛けられた図示していないばねを緊張させていく。そして、ピン23bがカム部材4の下方位置に押さえ込まれた状態になると、図示していないステップモータが停止させられ、図1及び図4に示された沈胴状態になる。
【0050】
尚、本実施例は、本発明を、バリア板とズームレンズを備えた沈胴式のデジタルカメラに適用した場合の一例であるが、本発明は、そのような構成に限定されるものではない。即ち、バリア板を備えていないレンズ鏡胴の場合には、実施例におけるカバー板20に相当する部材を、直進筒16との間にバリア室を構成することなく、直進筒に一体的に取り付けるようにしてもよいし、カバー板20を備えることなく、本発明の規制部に相当するフック部20f,20gを、直進筒16に直接設けるようにしても差し支えない。そして、その規制部は複数である必要はなく、一つであっても構わない。
【0051】
また、本実施例は、沈胴式のレンズ鏡胴であるため、一番被写体側にある第1レンズ群36を収容している直進筒16が、カメラボディーに対して光軸方向へ移動可能になっている。また、ズーミングのために回転筒8内に収容されている第2レンズ群13との相対位置を変えるために、直進筒16が回転筒8に対しても光軸方向へ移動可能となっている。しかしながら、本発明は、本発明の筒体に相当する直進筒16が、カメラボディーに対して一体的に取り付けてあっても差し支えない。そして、本発明の筒体が、そのように、カメラボディーに対して固定であったり可動であったりすることと、ズーミング機能を有するか有しないかということとは、関係のないことであることは言うまでもない。
【0052】
更に、本実施例において、第1レンズ枠35と遮蔽筒25との相対位置が変わるのは、焦点調節を行う場合であるが、ズーミングを行うに際して、このような一番被写体側にあるレンズ群36を直進筒16に対して光軸方向へ移動させる場合もある。そのため、本発明は、本発明のレンズ枠に相当する第1レンズ枠35が、焦点調節を行うときにだけ、筒体(直進筒16)との相対位置を変えるものに限定されない。また、本実施例の場合は、二つのレンズ群を備えているが、本発明は、そのようなレンズ群の数には関係なく、一つであっても構わないし、また、レンズ群とはいっても、1枚のレンズであっても構わないことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】カメラの不使用状態(撮影レンズの沈胴状態)における実施例の断面図である。
【図2】撮影レンズを図1の位置からカメラの使用可能な初期位置に繰り出した状態を示す断面図である。
【図3】図1及び図2に示されている枠体10を被写体側から見た平面図である。
【図4】図1の状態において直進筒内を撮像装置側から見た平面図である。
【図5】図2の状態において直進筒内のバリア機構を撮像装置側から見た平面図である。
【図6】図5においてバリア室のカバー板を取り除いて示した平面図である。
【図7】図4におけるA−A線断面図である。
【図8】図4におけるB−B線断面図である。
【図9】図4におけるC−C線断面図である。
【図10】直進筒に対する第1レンズ群の移動状態を示した断面図であり、図10(a)は第1レンズ群が直進筒に対して右限位置にある状態を示したものであり、図10(b)は左限位置にある状態を示したものである。
【符号の説明】
【0054】
1 ベース部材
2,28,29,30 ねじ
3 撮像装置
4 カム部材
5 固定筒
5a,8c,8d カム溝
5b,9c,9d,16w キー溝
5c,5d,14a,35d 張出部
6,31 モータ取付板
6a,16d,16e,16f 軸
7,34,42 歯車
8 回転筒
8a 部分歯車
8b,10b,16a,16c,16u,23a,23b,27a ピン
8e,10e 溝
9 キー筒
9a,14d,20f,20g フック部
9b キー
10 枠体
10a,35b 腕部
10c,38 案内ピン
10d,14b,16y,20d,20e,20h,31a,35i,35m 孔
11 駆動手段
12 シャッタ用カバー板
13 第2レンズ群
14 第2レンズ枠
14c,35a,35h 円筒部
14e,20j,35g バネ掛け部
15,39 スプリング
16 直進筒
16b,35k 壁
16g,16h 受け部
16i,16j ストッパ
16k,16m,16n 取付部
16p,16q,16r 軸受け孔
16s,16t 窪み部
16v 引っ掛け部
16x 係止部
16z,20b 開口部
17 化粧部材
18,19 バリア板
18a,19a 係接部
19b 屈曲部
20 カバー板
20a,20i,35e,35f 折曲部
20c 長孔
21,22 バネ軸部材
23 バリア連結部材
24 止め部材
25 遮蔽筒
25a,25b 突起部
26 センサ
27 センサ取付板
32 ステップモータ
33 出力歯車
35 第1レンズ枠
35c 遮光部
35j 被挿入部
36 第1レンズ群
37 マスク
40 ナット部材
41 リードスクリュー
41a 軸部
41b スリワリ
41c 雄ねじ
41d 円柱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状をしていてその軸方向の被写体側の略端部に設けられた壁には光軸を略中心にした撮影光路用の開口部が形成されており該壁の内側の面には該開口部の周辺近傍位置に少なくとも一つの規制部が設けられている筒体と、軸方向の長さが前記筒体よりも短い筒状をしており前記筒体内で前記規制部によって光軸方向への移動は制限されるが光軸と直交する方向へは移動し得るようにして配置されている遮蔽筒と、前記筒体内において光軸方向へ移動可能に配置されておりレンズを取り付けた筒状の保持部を前記遮蔽筒内で摺動するように嵌装させたことによって光軸と直交する方向への前記遮蔽筒の移動を制限しているレンズ枠と、を備えていることを特徴とするデジタルカメラ用レンズ鏡胴。
【請求項2】
前記筒体内には、撮影光路用の開口部を形成した板部材が、前記壁と平行に取り付けられていて、前記規制部は、該板部材の撮像装置側の面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のデジタルカメラ用レンズ鏡胴。
【請求項3】
前記規制部が、前記板部材に鉤状に形成されたフック部であり、前記遮蔽筒が、光軸から放射状に形成された少なくとも一つの突起部を有していて、前記遮蔽筒は、前記筒体内で、該突起部を該フック部に係合させた状態で配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のデジタルカメラ用レンズ鏡胴。
【請求項4】
前記板部材が、前記壁との間にバリア室を構成し、該バリア室に、レンズ保護用のバリア板を少なくとも1枚配置していることを特徴とする請求項2又は3に記載のデジタルカメラ用レンズ鏡胴。






【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−17926(P2006−17926A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194451(P2004−194451)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】