説明

デジタルケーブルテレビジョン機器の検査方法及び自己検査ケーブルテレビジョン機器

本発明の一実施の形態であるケーブルテレビジョン機器を検査する検査方法は、検査をトリガするイベントを検出するステップと、許可された設置場所におけるケーブルテレビジョンネットワーク特性の関数であるフィンガプリント値を生成するステップと、フィンガプリント値を保存された基準値と照合するステップと、フィンガプリント値が保存された基準値の指定された範囲内にある場合、ケーブルテレビジョン機器が標準動作を実行することを許可するステップと、フィンガプリント値が保存された基準値の指定された範囲外にある場合、ケーブルテレビジョン機器が標準動作を実行することを禁止するステップとを有する。他の実施形態では、本発明から逸脱することなく、これらの特徴を変更でき、本要約は、本発明を限定するものではない。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
この出願は、引用により本願に援用される、ペドロウ、ジュニア(Pedlow, Jr.)他を発明者として2004年6月15日に出願された米国仮特許出願番号60/580,153号の優先権の利益を主張する。
【著作権の表示】
【0002】
この明細書の開示内容の一部は、著作権保護の対象となる資料を含んでいる。著作権者は、この明細書が特許商標庁への特許出願又は記録であると認められる複製又は特許開示に対しては異議を唱えないが、それ以外のあらゆる全ての著作権を保有する。
【背景技術】
【0003】
デジタルケーブルテレビジョン機器は、現代の家庭における主流の電化製品になっている。これらの機器は、ケーブル運営事業者から貸し出された、又は小売業者を介して消費者が購入したスタンドアロン型の「セットトップボックス」である場合もある。また、これらの機器は、例えば、米連邦通信委員会(Federal Communications Commission:FCC)が提唱するデジタルテレビジョンのための「プラグアンドプレイ」イニシアチブの一部として新たなテレビジョン受像機に直接統合されている場合もある。
【0004】
民生用機器において、デジタル復号機能を実現するコストが急速に低下し、ケーブルテレビジョンシステムを介したデジタル番組放送が普及したために、ケーブル運営事業者は、既存のアナログテレビジョンサービスを廃止し、その放送帯域をデジタル放送に充て、運用コストを軽減し、信号剽窃の可能性を低減させる計画を実行している。このため、将来的には、ケーブル運営事業者は、旧型のアナログテレビジョン受像機、ビデオカセットレコーダ等を使用するユーザに対して、完全なデジタルネットワークにおいても、これらの機器を使用できるようにするために、デジタル信号を、これらの旧型の機器に対応するアナログ信号に変換するデジタルコンバータを提供することが必要となることが予見される。
【0005】
本願出願時における市場調査では、平均的な住居において、既存のデジタルケーブルコンバータ、CableCARD(商標)対応製品に加えて4個以上の旧型のアナログ機器がケーブルシステムに接続されている。加入者の住居内にある全てのアナログ装置をサポートするためにケーブル運営事業者が配布する必要があるデジタルコンバータの数は膨大であり、また、これらの機器では、電子番組ガイド、ビデオオンデマンド又はペイパーヴュー方式のサービスを利用できないため、ケーブル運営事業者は、現在、使用することができる高性能な双方向デジタルケーブルボックスを配布するための資本を拠出することができない。このため、ケーブル運営事業者は、現在利用可能な双方向機器によってアナログ装置を置換するより、ケーブル運営事業者にとってかなり低いコストで、現在のアナログサービスの加入者にデジタルサービスと同等のサービスを提供する非常に安価な単方向デジタルコンバータに注目している。多くのケーブル運営事業者は、規定及びこの他の理由から、これらの単方向コンバータを加入者に無料で提供する予定であり、これらの機器を提供するコストは、貴重な帯域幅を有効に活用し、運用コスト、すなわち、接続/解約のための「トラックロール」(サービスコール)を削減し、信号剽窃を排除することによる利益によって埋め合わせることができると考えている。
【0006】
通常、これらの簡単なデジタルコンバータは、現在アナログ方式でも提供されている最も基本的なサービス層のみに対応するように設計されており、したがって、最新のデジタル暗号化を採用した現在のプレミアムサービスと異なり、権限のない受信に対して保護されていない。控えめな推計でも、現在のケーブルシステムで放送されているチャンネルの3分の1は、アナログ方式の基本的サービスであり、米国国内の調査では、米国内の約1150万戸の住居が毎年これらのケーブルサービスを剽窃しており、この損失は、1年あたり65億ドルになるとされている(「Cox Communications Press Release Cox Communications Joins Nationwide Signal Theft Awareness Week June 1-5,BUSINESS WIRE, May 21, 2004」参照)。
【0007】
ケーブル運営事業者は、新たなデジタルコンバータを個別にアドレッシングできるので、基本的なサービス層をアナログサービスから暗号化が適用された排他的なデジタルサービスに移行させることによって、現在行われている大部分の信号剽窃を排除することができる。切断を行うためにユーザの住居への現場作業員の派遣は高コストであり、行われてこなかったため、現在のアナログサービスのユーザは、権限のない接続又は改竄によってケーブル信号に物理的にアクセスできたが、今日とは異なり、このような単なるアクセスだけでは、ケーブル運営事業者が対価を受けていないサービスを受信することができなくなった。また、これは、所有者がケーブル運営事業者からCableCARDを取得せず、サービスの認証を電子的に受ける場合、新たなデジタルテレビジョン受像機にも言える。
【0008】
ケーブル運営事業者が行うフルデジタルへの移行のための典型的なシナリオは、現在搬送されているアナログ信号に加えて、デジタル方式で基本的なサービス層のコンテンツを搬送するように地域又は都市のヘッドエンドをアップグレードさせることである。次に、プレミアムデジタルサービスを復号するために用いられている現在の全ての双方向機器をデジタルコンテンツだけを受け取るように再プログラミングする。この再プログラミングには、現在の混合フォーマットに代えて、アナログ層を新たなデジタル層に置換することも含まれる。これと平行して、ケーブル運営事業者は、加入者が報告した、旧型アナログ装置(ビデオカセットレコーダ、テレビジョン受像機等)に接続されている住居内のケーブル放送出力端子の数に基づいて、既存の加入者に新たな単方向コンバータの配布を開始する。ケーブル運営事業者は、加入者に対する調査又は物理的な検査を実行しなければ、外部からアナログ装置の数を把握することができない。ケーブル運営事業者は、アナログサービスを廃止することによって、ケーブルヘッドエンドに接続された各ノードが混合アナログ/デジタル方式からフルデジタル方式に移行する際、これらの新たなコンバータをまとめて加入者に配布すると予想される。各ノードは、通常、500〜2000のユーザにサービスを提供し、サービスの中断を避けるためには、フルデジタルサービスへの移行の前に、加入者にコンバータを届ける必要がある。
【0009】
フルデジタルサービス及び低コストのデジタルコンバータの導入によって、不正視聴及び信号剽窃の問題が解決されると考えられているが、低コストコンバータは、単方向機器であるため、ケーブル運営事業者がサービスに対する正当な対価を受け取れない新たな可能性も生じる。加入者に対して、住居内のアナログ機器をサポートするために必要なコンバータの数量を申告させた場合、加入者は、故意にアナログ機器の数量を「多めに報告する」可能性もある。この場合、アナログ機器の数量を多めに報告した加入者が、後に、入手したコンバータを家族や友人に渡し、1世帯分の料金で複数の住居が基本的なケーブルサービスを享受するような不正行為が行われる虞がある。ケーブル運営事業者による許可もケーブル運営事業者への通知もなしで、単方向コンバータが第三者に引き渡される可能性もある。これらの機器は、ケーブル運営事業者によって、正規の加入者に割り当てられたものであるので、第三者に渡っても無効にすることができず、ケーブル運営事業者は、これらの機器が契約した加入者の記録された住居以外の場所にあるため、契約料を徴収することができない。
【0010】
ケーブルネットワークに接続された他の単方向機器にも同じ問題が生じる。権限のない譲渡に対して脆弱であるという問題を有するこの他の機器としては、例えば、デジタルテレビジョン受像機のための新たなCableCARD機器がある。双方向機器、例えば、プレミアムサービス用の既存のデジタルケーブルデコーダは、ヘッドエンドによる呼び掛け及び応答遅延によって、機器までのケーブル距離を判定することができ、これによって電子的に機器の位置を検出することができるため、これらの機器には、上述したような問題は生じない。このようなアプリケーションでは、同じアドレスに割り当てられた2つの機器の応答時間値の類似性を比較でき、物理的に近くにあることを推定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、数多くの異なる構成の実施例があるが、図面を参照して詳細に説明する特定の実施例は、開示内容が本発明の趣旨の一例とみなされるものであり、本発明をその特定の実施例に限定するものではない。後述する実施例において、類似の参照番号は、複数の図面における同じ、類似する、又は対応する部分には、同じ参照番号を付している。
【0012】
ここで単数として示す名詞は、1又は複数を意味するものとする。また、ここで用いる「複数」という用語は、2以上の数を意味するものとする。ここで用いる「他の」という用語は、少なくとも第2又はそれ以上を指すものとする。ここで用いる「包含する」、「含む」及び/又は「有する」といった用語は、「備える(すなわち、オープンランゲージ)」を意味する。ここで用いる「接続」という用語は、必ずしも直接の接続に限定されず、また、必ずしも機械的な接続を意味しない。ここで用いる「プログラム」という用語は、コンピュータシステムにおいて実行されるように設計された命令のシーケンスを意味する。「プログラム」又は「コンピュータプログラム」は、サブルーチン、関数、手続き、オブジェクトメソッド、オブジェクトインプリメンテーション、実行可能なアプリケーション、アプレット、サーブレット、ソースコード、オブジェクトコード、共有ライブラリ/ダイナミックロードライブラリ、及び/又はコンピュータシステムにおいて実行されるように設計されたこの他の命令のシーケンス等を含むものとする。
【0013】
本明細書において、「一実施の形態」、「ある実施の形態」、「実施の形態」又はこれに類似する表現は、実施の形態に関連して開示された特定の要素、構造又は特徴が本発明の少なくとも1つの実施の形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の各所で用いるこれらの表現は、必ずしも同じ実施の形態について言及しているわけではない。更に、本発明の全ての特定の実施の形態の特定の特徴、構造又は特性は、何の制限もなく、1つ以上の他の実施の形態に組み合わせてもよい。
【0014】
以下、デジタルコンバータセットトップボックス等の単方向(受信専用)のデジタルケーブルテレビジョン機器の権限のない移転(relocation)を自己検出するための強固な方法及び装置の例示的な実施の形態について説明する。なお、本明細書に開示する技術は、双方向機器にも有効に適用できるため、本発明は、単方向機器に限定されるものではない。したがって、以下では、単方向機器の例に沿って本発明を説明するが、本発明はこれに限定されない。ここに説明する例示的な実施の形態は、高い分解能を有するが、これを実現する製品に新たなハードウェアを組み込む必要はない。すなわち、本発明の概念は、全てのデジタルケーブル機器に既にあるリソースを用いる。更に、この手法をどのように動作に適用するかも詳細に開示する。また、通常の状況下で、オペレータが介入する必要なく、加入者が接続された機器を自己アクティブ化する自動化された管理のためのシステムを提供する。
【0015】
特定の機器の最終用途にかかわらず、デジタルケーブルネットワークに接続された全ての機器は、フロンエンドトポロジにおいて、多くの類似性を共有する。個々に僅かな違いはあるが、図1にフロントエンド100としてブロック図の形式で表現したトポロジは、このような機器の典型的なフロントエンドトポロジを代表するものである。ネットワークインタフェースを構成する要素は、多くの異なる製造業者から入手でき、これらは、製品間の差別化のために、異なる構成で提供されている場合もあり、柔軟性を特徴としてもよく、他の要素が組み込まれていてもよく、複数のインタフェースをサポートしていてもよい。
【0016】
図1のデジタルケーブルネットワークインタフェース100は、RFチューナ104及び直交振幅変調(Quadrature Amplitude Modulation:QAM)復調器106の2つの主要な下位要素を備える。これらの主要な下位要素のモジュール及び機能的要素については、幾つかのバリエーションがある。無線周波(Radio Frequency:RF)チューナ104は、ケーブル入力端子を介して、デジタルケーブルシステム上の全ての信号を受信し、所望のデジタルサービスを含む1つの所望のRFチャンネルのみを出力端子110から出力する。入力フィルタ112は、ケーブルシステムからの入力信号をフィルタリングし、雑音及び妨害信号を除去する。低雑音可変利得増幅器(Variable Gain Amplifier:VGA)114は、入力フィルタ112からの信号をブートし、混合器116に信号を供給する。混合器116は、増幅器114の出力と、局部発振器118からのチューニング可能な発振器信号とを混合する。この処理によって、固定の一定の値を中心にして、入力信号の全体のブロックが周波数がより低い中間周波数(IF)にダウンコンバートされ、混合器116からの出力信号は、IFフィルタ120によってフィルタリングされ、QAM復調器106に供給される。QAM復調器106は、チューナ104の出力端子110からの出力信号を処理し、圧縮されたオーディオデータ及びビデオサービスを搬送する、例えば、ムービングピクチャエキスパートグループ(Moving Pictures Expert Group:MPEG)トランスポートデータ等のエラーのないデジタルストリームに変換する。
【0017】
RFチューナ内では、ホストプロセッサ(図示せず)によって制御される局部発振器118が周波数を変化させ、混合器116内における局部発振器118からの局部発振器信号と、ケーブルネットワークから供給されるスペクトルとの非線形の組合せによって、混合器116から、固定されたより低い中間周波数(IF)を中心とする所望の信号が出力される。IFとしては、所定の値、例えば44MHz等が選択される。
【0018】
入力フィルタ112は、有効なケーブルオーディオ/ビデオサービスの周波数範囲(54MHz〜863MHz)から外れる外部信号をフィルタリングし、可変利得増幅器(VGA)114は、RFチューナ104及び復調器106を通過するRF信号が常に最適なレベルになるように、AGC/トラッキングループコントローラ132によって自動的に利得を調整される。RFチューナの最終段は、IF値を中心にする狭い範囲の帯域の信号だけを通過させ、他の無線周波エネルギを大きく減衰させる電気機械素子である、例えば、弾性表面波(SAW)フィルタ120等の出力フィルタである。SAWフィルタ120は、標準の6MHz幅のチャンネルのみを通過させ、他の帯域を効果的にフィルタリングする。このように、チューナ104から出力される信号は、対象となるサービスを搬送するチャンネルを表し、QAM復調器106による処理のために、固定された標準の(IF)周波数にダウンコンバートされた信号である。
【0019】
QAM復調器106は、例えば、44MHzである中間周波数の6MHz幅の信号を受け取り、第2の可変利得増幅器130によって、この信号を一定の最適なレベルに再び増幅する。VGA114及びVGA130の利得は、QAM復調器106内の1つ以上の自動利得制御(AGC)制御ループ(AGC/トラッキングループコントローラ132)によって自動的に調整される。そして、この信号は、時間的に電圧が変化するストリームを、離散的時間間隔で信号の電圧を表すバイナリビットのシリアルストリームに変換するアナログ−デジタルコンバータ(A/D又はADC)134によって処理される。A/Dコンバータ134は、通常、10ビット以上の分解能を有する。
【0020】
そして、A/Dコンバータ134からのデジタルストリームは、同相成分(I)及び異相成分(Q)の2つの成分に分離される。Q項は、信号がI信号に対して直角位相にあり、すなわち、位相が90°シフトしているために使用されている。位相分離は、最低周波数が0Hz(DC)であり、最高周波数が6MHzであるベースバンド信号へのダウンコンバートと同時に行われる。これは、IF値を対称中心として±3MHzでコンテンツを表現する、供給される44MHzのIF信号とは異なる。ダウンコンバートは、平衡ミキサ(混合器136、138)を用いて実行され、2つの平衡ミキサの一方に、局部発振器140で生成され、他方の平衡ミキサに適用される信号に対して、位相が90°シフトされた信号が供給されるためにI/Q分離が実現する。平衡ミキサの出力I及びQは、適切なシェーピング及び6MHz通過帯域を超える不要な処理アーチファクトの減衰を行う同一のチャンネルフィルタ142、144によってフィルタリングされる。
【0021】
次に、チャンネルフィルタ142、144の出力信号は、適応型等化器150に供給される。適応型等化器150は、フィルタ特性(シェープ)を連続的に変化させる自己調整デジタルフィルタ網である。この等化の目的は、エコー、反射、分散、チルト、符号間干渉及び理想的な元の形式から信号を変形させるこの他の歪みを自動的に補償することである。ここで、例えば、図2Aに示すようなスペクトル154を有する信号が送信されたとする。この信号は、ケーブル運営事業者のハイブリッド、ファイバ同軸配信ネットワークによって受信機器に搬送されるので、様々な異常が導入され、受信機のフロントエンド100の入力端子におけるスペクトルは、例えば、図2Bに示すスペクトル156のようになる。マッチドフィルタの理想形に近付けることによって、歪んだ波形を再生することができ、位相再生要素(デロテータ)に供給される送信されたデータのエラーレートを大幅に減少させることができる。すなわち、適応型等化器150の役割は、例えば、図2Cのスペクトル158等のように、スペクトルが図2Aのスペクトルに近似するように入力信号を処理することである。これによって、実世界のアプリケーションでは多くの場合そうであるように、非理想的な条件下でも、システムは正常に動作する。
【0022】
適応型等化器150の具体的構成は、QAM復調器の製造業者間で異なる。これらの包括的なアーキテクチャは共通であり、古典的なフィードフォワード/フィードバックデジタルフィルタの形式を取る。このような目的のための典型的なデジタルフィルタからなる適応型等化器150を図3に示す。
【0023】
デジタルフィルタ150は、復調器に入力され、A/Dコンバータによってバイナリのデジタルフォーマットに変換された電圧の離散的時間サンプルが信号シーケンスf(k)として入力されると、これらのサンプルを連続的に保存するカスケード接続された遅延段(Z−1)160のチェインを備える。各遅延段タップの出力は、次のカスケードに供給されると共に、入力側にフィードバックされ、又は出力側にフィードフォワードされる。タップフィードバックは、フィードフォワードに関連付けてもよく、タップ毎に別個にどちらかのパスを選択してもよい。各フィードバックパス又はフィードフォワードパスは、フィードバックタップ値については個別の係数項a〜a162を有し、フィードフォワードタップ値については、個別の係数項b〜b164を有する。これらのタップ値は、乗数として機能する係数の値によって、タップ出力を増幅又は減衰する。フィードバック係数によって修正された遅延値は、加算器166によって信号チェインに加算され、一方、フィードフォワード係数によって修正された遅延値は、加算器168によって、信号チェインに加算され、これにより出力信号y(k)が生成される。
【0024】
適応型等化器150は、適応型であるので、係数は、マイクロプロセッサ、コントローラ又は状態マシンの制御の下で動的に変化する。この値は、次の処理段である位相再生段において、適応型等化器150の出力の特徴に基づいて変化する。QAM復調器106の適応型等化器150の構成は、製造業者によって異なる。例えば、ある設計では、合計で22個のタップを設け、他の設計では、16個フィードフォワードタップと、24個のフィードバックタップとからなる合計で40個のタップを設ける。この設計は、本発明の実施の形態から逸脱することなく、様々に変更することができる。そして、適応型等化器150の出力は、検出器又はデロテータとして知られる位相再生ブロック174によって処理される。この検出器の目的は、I符号及びQ符号の組合せを単一のデータストリームに復号することである。検出器は、logの係数(変調次数)によって受信データストリームを展開できる。デジタルケーブルで搬送される2つ典型的な形式を例とすれば、この展開の係数は、64QAMの場合6であり、256QAMの場合8である。この展開により、一見、ナイキスト基準に違反するような比較的低いスペクトル帯域幅でデータレートが高いトランスポートデータを効率的に搬送することができる。適応型等化器150の係数値162、164及びQAM変調器局部発振器の周波数の設定は、何れも、検出器が有効なデータを「ロック」、すなわち再生したことに基づいて、マイクロプロセッサ又は状態マシンによって制御される。
【0025】
最終処理段である前方誤り訂正器(forward error corrector:FEC)180は、再生された生のデジタルケーブルデータストリームに1つ以上の様々なアルゴリズムを適用し、データのエラーを訂正し、ビデオ及びオーディオサービスをMPEGトランスポートストリームとして再生するために適切なフォーマットにフォーマティングする。この処理段では、例えば、ビタビ(トレリス)復号、逆ランダム化、リード−ソロモンエラー訂正、MPEGフォーマティング(又は他のデジタルフォーマティング)等を行ってもよい。これらの処理段の動作に固有の幾つかのオーバヘッドデータは、ストリームから取り除かれ、これにより、ケーブル運営事業者が伝送のためのヘッドエンドにおいて、対応するQAM変調器に挿入したものと同じ形式、コンテンツ及びデータレートを有する最終的なMPEGトランスポートストリームが復調器106から出力される。
【0026】
更に、このストリームを平文化し、逆多重化し、伸長し、テレビジョン受像機での表示に適当な形式にコンテンツを変換する。これらの処理は、システムが正常に機能するために必要な処理であるが、本発明の主旨に含まれず、後続する処理モジュールによって、周知の手法で実行されるため、これ以上は説明しない。
【0027】
本発明の一実施の形態では、適応型等化器の一部に基づいてデジタルケーブル受信機器の位置の変化を検出する。適応型等化器は、上述のように、通信チャンネルへのマッチドフィルタとして機能する。このため、適応型等化器の係数内に含まれた値を、通過する信号に影響を及ぼす通信チャンネルの伝達関数に近似させるように数学的に操作できる。換言すれば、一組の係数の値(例えば、40個前後の係数値又はその下位集合又は上位集合)は、特定の時点における全てのミスマッチ、反射、位相変動、利得変動、エコー及び伝送媒体による送信された信号対するこの他の外乱に関する知識の総和を表す。QAM復調器が所定の環境の下で信号ロックを実現及び維持した事実によって、その時点での適応型等化器の状態がシステムに対する設備一式の効果に関する知識を反映しており、このためにこれらの効果を相殺し、ロックを成功させることができることを検証できる。デジタルケーブルで用いられるQAM−64又はQAM−256のフォーマットのためのベクトル誤差半径が小さければ、準最適等化器構成の公差は小さい。ベクトル誤差半径は、受信信号における振幅及び位相誤差の両方の効果の合成関数である。
【0028】
フィルタ係数セットは、伝送環境を直接代表しているので、その環境の如何なる変化にも動的に応答する。概略的に言えば、下位のフィードバックタップは、多くの場合、例えば、接続又は機器の後部のコネクタにおけるインピーダンス変動、住居スプリッタからのケーブル内の反射等、高周波成分に強く影響を受ける。中間のタップは、タップ及び分配増幅器へのケーブル接続の特徴の変化によってより強い影響を受け、上位のタップは、通常、チャンネルチルト(channel tilt)、分散等に対して最も敏感である。このデータを、一定の信号レベル入力のために必要である総利得を示すAGC情報及び他の類似するパラメータと組み合わせることによって、特定のケーブル機器が設置されている環境に特有のフィンガプリントの基礎が提供される。
【0029】
適応型等化器は、このような変化にとても敏感であり、実験により、単一の共通のソースによって提供され、RFスプリッタの異なるポートから、デジタルケーブル機器のバンクに接続されたケーブルを識別できることが判明した。この実験では、機器をお互いに1メートル以内に配置し、同じ長さのケーブルを用いても、各機器について観測された値は、固有であり、経時的にも相対的に不変であった。
【0030】
等化器係数をa±jbとして表したとすると、ある時点でのシステムの状態を表す全ての等化器係数の行列Hは、以下のように表現される。
【0031】
【数1】

【0032】
ここで、nは、フィードバック係数の数であり、mは、フィードフォワード係数の数である。
【0033】
同様に、複数のAGCループの1つの利得値をkとして表したとすると、ある時点でのシステムの状態を表す全てのAGC係数の行列Hは、以下のように表現される。
【0034】
【数2】

【0035】
ここで、lは、AGC係数の数である。
【0036】
ここで、デジタルケーブル機器から等化器タップ係数及びAGCデータを捕捉し、統計的に予想される分散に基づいて閾値関数を適用し、次に後述するような所定のアルゴリズムを適用することによって、係数の加重和を、機器の環境の固有の「フィンガプリント」を表す単一のスカラ値である単項値として表現することができる。閾値及び重み付け関数は、事業者毎に固有に生成してもよく、改竄の可能性を低減するために秘密にしてもよい。
【0037】
このような処理のためのアルゴリズムの例を以下に示す。
【0038】
【数3】

【0039】
ある単純な具体例では、フィンガプリント値は、以下のように表すこともできる。
【0040】
【数4】

【0041】
t(時間)の変数は、時間に対して相対的に不変であるが、実際には、様々な係数が時間的に変化することを暗示している。この単純な具体例では、全てのフィードバック係数は、定数(x)の第1の組によって乗算され、全てのフィードフォワード係数は、定数(y)の第2の組によって乗算され、全てのAGC係数は、定数(z)の第3の組によって乗算される。
【0042】
このフィンガプリント値は、ケーブル運営事業者からのEMM等のコマンドメッセージの受信に応じて、収集され、評価され、デジタルケーブル機器のメモリに保存される。保存された値は、特定の設置場所における一組のケーブルテレビジョンネットワーク特性を表し、好ましくは、暗号化によって機密保護され、改竄を検出するために、署名される。
【0043】
他の実施の形態として、フィンガプリント値Yは、(単一の値ではなく)等化器係数及び全ての利得値の全て又は一部を含む値の行列又は集合であってもよいが、本発明はこれに限定されず、他のアルゴリズムを定義することもできる。例えば、幾つかの係数が0になるように係数を調整することによって、等化器係数の下位集合及び利得値の全てを用いてもよく、利得値を全く用いなくてもよい。また、更なる特徴的なデータを用いることもできる。同様に、必要であれば、上述したように、これらの関数を数学的に結合し、よりコンパクトなフィンガプリントを生成してもよい。
【0044】
本発明の一実施の形態を利用したネットワーク機器のための例示的なケーブル環境を図4に示す。このシステムでは、テレビジョン信号は、ケーブルプラントヘッドエンド200から供給される。テレビジョン信号は、高周波ケーブル伝送環境202(例えば、ハイブリッドファイバ同軸(hybrid fiber-coax:HFC)システム)を通過し、ここで、様々な反射204、分散206、歪み208及び他の因子が送信された信号に導入された後、送信された信号は、上述のように、ネットワーク機器220のデジタルケーブルネットワークインタフェース100に供給される。ネットワーク機器220には、マイクロプロセッサ等のホストプロセッサ225が組み込まれており、ホストプロセッサ225は、プログラミングされたステップの保存された組に基づいて動作し、このようなホストプロセッサにおける周知の機能と共に、後述する機能を実現する。
【0045】
本発明の一実施の形態に基づくフィンガプリンティング処理を実行するために、等化器係数230は、場合によってはAGC利得値232及び他のデータ234と共に、重み付け及び閾値関数236に適用され、これによって、1つ又は複数のフィンガプリント値238が生成される。この値(又はこれらの値)は、メモリ240に保存され、想到できる様々な実施の形態に基づいて、フィンガプリント比較器244において、未来又は過去のフィンガプリント値との比較のために用いられる。
【0046】
自己検査ケーブルテレビジョン機器は、検査をトリガするイベントを検出するメカニズムを有する。そして、許可された設置場所におけるケーブルテレビジョンネットワーク特性の関数であるフィンガプリント値が生成される。メモリは、基準値を保存する。プロセッサは、保存された基準値とフィンガプリント値とを比較し、フィンガプリント値が保存された基準値に対して指定された範囲内にある場合、ケーブルテレビジョン機器は、標準動作を行い、フィンガプリント値が保存された基準値の指定された範囲外にある場合、ケーブルテレビジョン機器は、標準動作の実行を禁止される。
【0047】
非限定的な一具体例として、RFフィンガプリンティングを採用した実際的なシステム及び方法の具体例を図5及び図6に示し、以下に説明する。
【0048】
図5に示す処理は、ステップ300から開始され、加入者は、ステップ304において、フィンガプリントシステムを含む機器をケーブル運営事業者から受け取る。この製品には、「本機器を有効に動作させるために、ケーブルネットワーク及びテレビジョンの両方に機器を接続した後に、自宅の電話機からXXX−XXX−XXXXにお電話下さい」といったラベルが付されている。このようなラベルに代えて、ある実施の形態では、最初に機器を起動したときにオンスクリーンディスプレイの形式で同様の内容を表示してもよい。これは、家庭用の衛星テレビジョン受像機の起動時又は大手金融機関が郵便によって発行したクレジットカード又は自動窓口機(Automated Teller Machine:ATM)カードを有効にする際に行われる作業と同様である。
【0049】
加入者は、指示に従い、ステップ306において機器を接続し、ステップ308において、設置の後に機器のラベルに記されている番号に電話する。ケーブル運営事業者の自動確認及び検証(automated validation and verification:AV&V)システムは、電話を受け、ステップ310において、加入者に対し、電話機の上でキーパッドを用いてケーブル機器のシリアル番号を入力するよう促し、完了時に「#」キーを押すよう指示する。
【0050】
「#」キーの入力又はデータ入力が完了したことを示す他の指示によって、AV&Vシステムは、入力された機器シリアル番号の妥当性を確認する。そして、AV&Vシステムは、加入者データベースを調べ、入力されたシリアル番号を有する機器に対応する加入者の記録を検出する。そして、AV&Vシステムは、データベースレコードから加入者の自宅の電話番号を読み出す。フリーダイヤル電話番号(及び911番(緊急電話))へのコールのために用いられる番号非通知にできない発呼者識別の形式である、発信電話番号通知(Automatic Number Identification:ANI)を用いて、AV&Vシステムは、ステップ312において、掛かってきた電話番号と、記録されている電話番号とが一致することを確認する。これらが一致しない場合、AV&Vシステムは、ステップ316において、問題を解決するために、お客様相談窓口(customer service representative:CSR)に電話を転送する。このステップは、許可された加入者が、ケーブル運営事業者によって配布された機器を有効にしようと試みていることを検証するために行われる。
【0051】
ステップ312において、ANI及び記録された電話番号が一致した場合、AV&Vシステムは、ケーブルネットワークを介して、加入者が電話機から入力したシリアル番号を有する機器に権利管理メッセージ(Entitlement Management Message:EMM)コマンドを送信する。このEMMコマンドは、ステップ318において、加入者のテレビジョンの画面にAV&Vシステムによってランダムに生成され、EMMメッセージ内に含まれたチャレンジ番号シーケンス(challenge number sequence)を表示するよう指示する。次に、AV&Vシステムは、ステップ320において、加入者に対し、画面に表示されたチャレンジ番号シーケンスをキーパッドを用いて電話機に入力し、入力が完了すると、「#」キーを押すように指示する。
【0052】
「#」キーが入力されると、AV&Vシステムは、ステップ322において、入力されたチャレンジ番号の妥当性を確認し、この確認に失敗すると、ステップ316において、お客様相談窓口担当者に電話を転送する。このステップは、許可された加入者が、記録された自宅で、ケーブル運営事業者が配布した機器を有効にしようとしていることを検証するために行われる。
【0053】
ステップ322において、チャレンジ番号シーケンスが確認された場合、AV&Vシステムは、これによって検証された機器に対して他のEMMを送信し、以下の2つのステップを実行させる。
・ステップ326において、その加入者に許可されているサービスを開始する。
・ステップ326において、機器の現在の位置におけるRFフィンガプリントを算出し、持続的なメモリにRFフィンガプリントを保存する。
【0054】
そして、機器は、ステップ330において、標準動作を開始する。
【0055】
図6に示す処理では、ステップ334において、定期的な検査間隔を判定し、又はステップ336においてEMM外部コマンドが発せられた場合、又はソフトウェア内のタイマを用いる自己開始において、又は自己開始によって、又はステップ338における何らかのシステム再ブートに応じて、機器は、データを収集し、電子的なフィンガプリント値を算出し、このフィンガプリント値をメモリに保存された基準値に比較する。算出された値が所定の範囲内にある場合、次の検査期間まで、更なる処理は行われない。一方、フィンガプリントの新たな値が保存された基準値から十分に異なる場合、メモリの基準値を新たな基準値によって更新する。
【0056】
以下では、再ブート又は電源投入時の状況について説明する。機器が再ブートされ、又はリセットされた場合は、常に、ケーブル運営事業者の許可なしで機器が移転され不正にネットワーク接続された可能性があるとみなし、機器は、ステップ342において、データを収集し、電子的なフィンガプリント値を算出する。そして、機器は、ステップ344において、基準フィンガプリント値をメモリから読み出し、ステップ346において、基準フィンガプリント値と、算出されたフィンガプリント値とを比較する。ここで、算出されたフィンガプリント値が所定の範囲内にある場合、ステップ348において、新たなフィンガプリント値を、更新後の基準フィンガプリントとしてメモリに格納する。ケーブルネットワーク機器は、ステップ350において、(必要であれば)ブート処理を続け、ステップ330において、標準動作としてサービスを再開する。ステップ346における照合に失敗した場合、ステップ354において、機器自体が全てのテレビジョンサービスに関する認証を自動的に取り消す(サービスをディスエーブルにし、オフにし、又は停止する)。すなわち機器は、何らかの手法によって、テレビジョン信号を出力しなくなる。これは、ハードウェア及びソフトウェアによるディスエーブル技術(機能的なアルゴリズムをバイパスする、電源をオフにする、信号フローを中断させる、信号の値、利得、周波数フラグ、係数値又はパラメータを差し替える等)を含む様々なメカニズムで実現できる。そして、ステップ360において、機器は、機器再起動のためのメッセージ内に含まれているAV&V電話番号によって、ケーブル運営事業者に連絡する必要があることを示すオンスクリーンメッセージを生成し、加入者のテレビジョンの画面に表示する。このメッセージは、権限のない移転が行われたと機器が判定したために生成される。加入者が表示された電話番号に電話を掛けると、AV&V処理が再び開始され、機器の位置が再評価される。
【0057】
図6に示すように、標準動作が開始されると、ステップ338において、機器の新たなブートにより、又はステップ334において、自己計測された検査間隔の経過によって、新たな検査を開始できる(一定の検査間隔で新たな検査を行うことによって、ケーブルネットワーク及び接続された機器の変数の緩やかな変化(例えば、経年変化、及びネットワークインフラストラクチャの変更)を反映するようにフィンガプリントの値を更新することができる)。更に、ある実施の形態では、外部的に生成された検査コマンドの受信によって新たな検査をトリガしてもよい。それぞれのトリガ動作によって、制御はステップ342に渡され、上述したような検査が実行される。
【0058】
このように、本発明の一実施の形態においては、ケーブルテレビジョン機器を検査する検査方法は、検査をトリガするイベントを検出するステップと、許可された設置場所におけるケーブルテレビジョンネットワーク特性の関数であるフィンガプリント値を生成するステップと、フィンガプリント値を保存された基準値と照合するステップと、フィンガプリント値が保存された基準値の指定された範囲内にある場合、ケーブルテレビジョン機器が標準動作を実行することを許可するステップと、フィンガプリント値が保存された基準値の指定された範囲外にある場合、ケーブルテレビジョン機器が標準動作を実行することを禁止するステップとを有する。
【0059】
本発明の一実施の形態に基づくケーブルテレビジョン機器の他の検査方法は、検査をトリガするイベント(ケーブルプラントヘッドエンド200からの検査を実行するためのコマンドの受信を含む)を検出するステップと、許可された設置場所におけるケーブルテレビジョンネットワーク特性の関数である、ケーブルテレビジョン機器の適応型等化器の少なくとも1つの等化器係数及びケーブルテレビジョン機器のAGCループの少なくとも1つの利得係数値のうちの少なくとも1つの関数を含む、フィンガプリント値を生成するステップと、フィンガプリント値を保存された基準値と比較するステップと、フィンガプリント値が保存された基準値の指定された範囲内にある場合、ケーブルテレビジョン機器が標準動作を実行することを許可し、フィンガプリント値を、後の検査における保存された基準値として用いるために保存するステップと、フィンガプリント値が保存された基準値の指定された範囲外にある場合、ケーブルテレビジョン機器が標準動作を実行することを禁止するステップとを有する。
【0060】
このように、本発明の一実施の形態によって、ケーブル運営事業者によって加入者に許可された(単方向機器及び双方向機器の両方を含む)設備の権限のない移転を検出できる。この手法は、機器内にある既存のリソースを利用するため、製品のハードウェアコストは追加されない。
【0061】
様々な実施の形態が本発明の範囲内に含まれる。本出願に添付したアペンディクスは、本明細書の一部を構成し、本発明に基づく実施の形態を更に説明するものである。アペンディクスは、本願発明者の1人であるレオ(リー)ペドロー(Leo (Lee) Pedlow)による(本願出願時において)未発表の論文、「RFフィンガプリント:ケーブルテレビジョン信号及び設備剽窃を低減するための機能的に有効な方法」である。このアペンディクスは、本明細書の一部であり、引用によりその全体が本願に援用されるものとする。なお、このアペンディクス内の記述は、周知の技術とは解釈されない。更に、本発明は、このアペンディクスに開示されている実施の形態に限定されるものではない。
【0062】
以上の開示から、例示的な実施の形態は、プログラミングされたプロセッサの使用に基づいていることは、当業者にとって明らかである。なお、本発明は、このような例示的な実施の形態に限定されず、例えば、専用ハードウェア及び/又は専用プロセッサ等の等価なハードウェアコンポーネントを用いて他の実施の形態を実現することもできる。また、汎用コンピュータマイクロプロセッサを用いたコンピュータ、マイクロコントローラ、光コンピュータ、アナログコンピュータ、専用プロセッサ、特定用途回路及び/又は専用ハードワイヤードロジックを用いて、代替となる等価な構成を構築することもできる。
【0063】
また、本発明の範囲から逸脱することなく、上述した実施の形態を実現するためのプログラム動作及び処理、並びに関連するデータは、ディスクストレージ媒体、及び例えば読取専用メモリ(ROM)デバイス、ランダムアクセスメモリ(RAM)デバイス、ネットワークメモリデバイス、光ストレージ媒体、磁気ストレージ媒体、光磁気ストレージ媒体、フラッシュメモリ、コアメモリ及び/又は他の同等な揮発性及び不揮発性記憶装置等の他の形式のストレージ媒体を用いて実現してもよいことは当業者にとって明らかである。これらの代替的なストレージ媒体は、等価物であるとみなされる。
【0064】
本明細の幾つかの実施の形態は、適切な電気的な記録媒体に記録することができ、適切な電子通信媒体を介して伝送することができる、フローチャート形式で包括的に説明したプログラミング命令を実行するプログラミングされたプロセッサを用いて実現してもよい。なお、以上の説明から、上述した処理は、本発明の範囲を逸脱することなく様々に変形でき、様々な適切なプログラミング言語を用いて記述できることは当業者にとって明らかである。例えば、本発明の範囲から逸脱することなく、実行される動作の順序を変更でき、他の動作を加えることも幾つかの動作を省略することもできる。また、本発明の範囲を逸脱することなく、エラー修正処理を追加及び/又は拡張してもよく、ユーザインタフェース及び表示される情報を様々に変更してもよい。これらの変形も等価であるとみなされる。
【0065】
ソフトウェア及び/又はファームウェアの実施の形態は、一具体例においては、上述のフローチャートで概略的に説明したプログラミング命令を実行するプログラミングされたプロセッサを用いて実現してもよく、このプログラミング命令は、如何なる適切な電子媒体又はコンピュータにより読取可能な媒体(読出専用メモリ(Read Only Memory:ROM)素子、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)素子、ネットワークメモリ装置、光ストレージ装置、磁気ストレージ装置、光磁気ストレージ装置、フラッシュメモリ、コアメモリ、及び/又は他の揮発性又は不揮発性技術)に保存してもよく、及び/又は如何なる適切な電子通信媒体を介して送信してもよい。なお、上述した処理は、本発明の範囲を逸脱することなく様々に変形でき、様々な適切なプログラミング言語を用いて記述できることは当業者にとって明らかである。例えば、本発明の範囲から逸脱することなく、実行される動作の順序を変更でき、他の動作を加えることも幾つかの動作を省略することもできる。また、本発明の範囲を逸脱することなく、エラー修正処理を追加及び/又は拡張してもよく、ユーザインタフェース及び表示される情報を様々に変更してもよい。これらの変形も等価であるとみなされる。
【0066】
本発明を特定の具体例を用いて説明してきたが、当業者は、上述の説明から多くの代替例、修正例、変更例、変形例を想到することができる。
【0067】
アペンディクス
RFフィンガプリント:ケーブルテレビジョン信号及び設備剽窃を低減するための機能的に有効な方法
リー・ペドロー(Lee Pedlow)
ソニー・エレクトロニクス社(Sony Electronics, Inc.)
【0068】
概要
デジタルケーブルテレビジョン機器、特に、単方向機器又はCableCARDを用いた機器の権限のない移転を自己検出し、信号(サービス)及びMSOが提供した設備の剽窃を抑止する強固な方法を提供する。ここに提案する方法は、高い分解能を有するが、これを実現する製品に新たなハードウェアを組み込む必要はない。この概念の実現には、全てのデジタルケーブル互換機器内に既にあるリソースを新たな手法で利用し、及び環境の直接的な観察を介して加入者機器から得られる特性データの実時間解析を行う。
【0069】
また、標準的な状況では、ケーブル運営事業者による現場作業を必要とせず、加入者が、接続された機器を自己起動できる自動化された機器管理のためのシステムも提案する。
【0070】
導入
デジタルケーブル機器
デジタルケーブルテレビジョン機器は、現代の家庭における主流の電化製品になっている。これらの機器は、ケーブル運営事業者から貸し出された、又は小売業者を介して消費者が購入したスタンドアロン型の「セットトップボックス」である場合もある。また、これらの機器は、例えば、米連邦通信委員会(Federal Communications Commission:FCC)が提唱するデジタルテレビジョンのための「プラグアンドプレイ」イニシアチブの一部として新たなテレビジョン受像機に直接統合されている場合もある。
【0071】
民生用機器において、デジタル復号機能を実現するコストが急速に低下し、ケーブルテレビジョンシステムを介したデジタル番組放送が普及したために、ケーブル運営事業者は、既存のアナログテレビジョンサービスを廃止し、その放送帯域をデジタル放送に充て、運用コストを軽減し、信号剽窃の可能性を低減させようとしている。
【0072】
将来的には、ケーブル運営事業者は、旧型のアナログテレビジョン受像機、ビデオカセットレコーダ等を使用するユーザに対して、完全なデジタルネットワークにおいてもこれらのアナログ装置を継続的に使用できるようにするために、及び連邦規定によるケーブル運営事業者のコンプライアンスの一環として、大量のデジタル機器コンバータを供給することが必要となる。
【0073】
市場調査によれば、平均的な住居において、既存のデジタルケーブルコンバータ、CableCARD(商標)対応製品に加えて4個以上の旧型のアナログ機器がケーブルシステムに接続されている。加入者の住居内にある全てのアナログ装置をサポートするためにケーブル運営事業者が配布する必要があるデジタルコンバータの数は膨大であり、また、これらの機器では、電子番組ガイド、ビデオオンデマンド又はペイパーヴュー方式のサービス等の高度なサービスに対する料金を支払わないため、ケーブル運営事業者は、現在、使用することができる高性能な双方向デジタルケーブルボックスを配布するための資本を拠出することができない。
【0074】
このため、ケーブル運営事業者は、現在利用可能な双方向機器によってアナログ装置を置換するより、ケーブル運営事業者にとってかなり低いコストで、現在のアナログサービスの加入者にデジタルサービスと同等のサービスを提供する非常に安価な単方向デジタルコンバータに注目している。ケーブル運営事業者は、規定及びこの他の理由から、これらの単方向コンバータを加入者に無料で提供する予定であり、これらの機器を提供するコストは、貴重な帯域幅を有効に活用し、運用コスト、すなわち、接続/解約のための「トラックロール」(サービスコール)を削減することによる利益によって埋め合わせることができると考えている。
【0075】
これらの簡単なデジタルコンバータは、現在アナログ方式でも提供されている最も基本的なサービス層のみに対応するように設計されており、したがって、最新のデジタル暗号化を採用した現在のプレミアムサービスと異なり、権限のない受信に対して保護されていない。控えめな推計でも、現在のケーブルシステムで放送されているチャンネルの3分の1以上は、アナログ方式の基本的サービスである。
【0076】
2004年5月、大手のケーブル運営事業者であるコックスコミュニケーションズ社(Cox Communications)が発行した定期刊行物によれば、米国内の約1150万戸の住居が毎年これらのケーブルサービスを剽窃しており、この損失は、1年あたり65億ドルになると推定される。
【0077】
ケーブル運営事業者は、新たなデジタルコンバータを個別にアドレッシングできるので、基本的なサービス層をアナログサービスから暗号化が適用された排他的なデジタルサービスに移行させることによって、現在行われている大部分の信号剽窃を排除することができる。切断を行うためにユーザの住居への現場作業員の派遣は高コストであり、行われてこなかったため、現在のアナログサービスのユーザは、権限のない接続又は改竄によってケーブル信号に物理的にアクセスできたが、今日とは異なり、このような単なるアクセスだけでは、ケーブル運営事業者が対価を受けていないサービスを受信することができなくなった。また、これは、所有者がケーブル運営事業者からCableCARDを取得せず、サービスの認証を電子的に受ける場合、新たなデジタルテレビジョン受像機にも適用される。
【0078】
ケーブル運営事業者が行うフルデジタルへの移行のための典型的なシナリオは、現在搬送されているアナログ信号に加えて、デジタル方式で基本的なサービス層のコンテンツを搬送するように地域又は都市のヘッドエンドをアップグレードさせることである。次に、プレミアムデジタルサービスを復号するために用いられている現在の全ての双方向機器に新たなチャンネルマップを提供し、デジタルコンテンツだけを受け取るようにする。これには、現在の混合フォーマットに代えて、アナログ層を新たなデジタル層に置換することも含まれる。これと平行して、ケーブル運営事業者は、加入者が報告した、旧型アナログ装置(ビデオカセットレコーダ、テレビジョン受像機等)に接続されている住居内のケーブル放送出力端子の数に基づいて、既存の加入者に低価格の新たな単方向コンバータの配布を開始する。ケーブル運営事業者は、加入者に対する調査又は物理的な検査を実行しなければ、アナログ装置の数を把握することができない。ケーブル運営事業者は、アナログサービスを廃止することによって、ケーブルヘッドエンドに接続された各ノードが混合アナログ/デジタル方式からフルデジタル方式に移行する際、これらの新たなコンバータをまとめて配布すると予想される。各ネットワークノードは、通常、500〜2000のユーザにサービスを提供し、サービスの中断を避けるためには、フルデジタルサービスへの移行の前に、加入者にコンバータを届ける必要がある。
【0079】
フルデジタルサービス及び低コストのデジタルコンバータの導入によって、不正視聴及び信号剽窃の問題が解決されると考えられているが、低コストコンバータは、単方向機器であるため、ケーブル運営事業者がサービスに対する正当な対価を受け取れない新たな可能性も生じる。加入者に対して、住居内のアナログ機器をサポートするために必要なコンバータの数量を申告させた場合、加入者は、故意にアナログ機器の数量を「多めに報告する」可能性もある。この場合、アナログ機器の数量を多めに報告した加入者が、後に、入手したコンバータを家族や友人に渡し、1世帯分の料金で複数の住居が基本的なケーブルサービスを享受するような不正行為が行われる虞がある。これは、ケーブル運営事業者に料金を支払わないために、ケーブル運営事業者による許可もケーブル運営事業者への通知もなしで、単方向コンバータを第三者に引き渡す一例に過ぎない。これらの機器は、ケーブル運営事業者によって、正規の加入者に割り当てられたものであるので、第三者に渡っても無効にすることができず、ケーブル運営事業者は、これらの機器が契約した加入者の記録された住居以外の場所にあるため、追加的な、許可していない視聴者から契約料を徴収することができない。
【0080】
ケーブルネットワークに接続された他の単方向機器も同様の脆弱性を有する。権限のない譲渡に対して脆弱であるという問題を有するこの他の機器としては、例えば、デジタルテレビジョン受像機のための新たなCableCARD機器がある。双方向機器、例えば、プレミアムサービス用の既存のデジタルケーブルデコーダは、ヘッドエンドによる呼び掛け及び応答遅延によって、機器までのケーブル距離を判定することができ、これによって電子的に機器の位置を検出することができるため、これらの機器には、上述したような問題は生じない。このようなアプリケーションでは、同じアドレスに割り当てられた2つの機器の応答時間値の類似性を比較でき、物理的に近くにあることを推定できる。このような手法により、権限のない移転を検出することができるが、この手法は分解能が低く、この他の問題も有している。
【0081】
ソニーグループは、ケーブル運営事業者によって加入者に引き渡された単方向機器の権限のない移転を検出する技術を開発した。この検出を実現する手法は、全てのデジタルケーブル機器に既にあるリソースを利用し、製品に新たなハードウェアコストを強いないという利点もある。
【0082】
デジタルケーブルのためのネットワークインタフェース
特定の機器の最終用途にかかわらず、デジタルケーブルネットワークに接続された全ての機器は、共通のフロンエンドトポロジを共有する。ネットワークインタフェースを構成する要素は、多くの異なる製造業者から入手でき、これらは、製品間の差別化のために、異なる構成で提供されている場合もあり、柔軟性を特徴としてもよく、他の要素が組み込まれていてもよく、複数のインタフェースをサポートしていてもよい。
【0083】
【表1】

【0084】
典型的なネットワークインタフェースをFig.1に示す。ケーブルネットワークインタフェースは、RFチューナ及び直交振幅変調(Quadrature Amplitude Modulation:QAM)復調器の2つの主要な下位要素を備える。RFチューナは、ケーブル入力端子を介して、デジタルケーブルシステム上の全ての信号を受信し、所望のデジタルサービスを含む1つの所望のRFチャンネルのみを出力する。所望のチャンネルを選択するために用いられる技術は、ヘテロダイン法と呼ばれ、この技術では、入力信号の全体のブロックを固定された一定の値を中心とするより低い中間周波数(IF)に変換した後、狭帯域フィルタによってフィルタリングすることによって、不要な搬送波を除外する。QAM復調器は、チューナの出力信号を処理し、圧縮されたオーディオデータ及びビデオサービスを搬送する、例えば、ムービングピクチャエキスパートグループ(Moving Pictures Expert Group:MPEG)トランスポートデータ等のエラーのないデジタルストリームに変換する。
【0085】
RFチューナ内では、ホストプロセッサによって制御される局部発振器が周波数を変化させ、混合器内における局部発振器からの局部発振器信号と、ケーブルネットワークから供給されるスペクトルとの非線形の組合せによって、混合器から、固定されたより低い中間周波数(IF)を中心とする所望の信号が出力される。IFとしては、所定の値、例えば44MHz等が選択される。入力フィルタは、有効なケーブルオーディオ/ビデオサービスの周波数範囲(54MHz〜863MHz)から外れる外部信号をフィルタリングし、可変利得増幅器(VGA)は、RFチューナ及び復調器を通過するRF信号が常に最適なレベルになるように、AGC/トラッキングループコントローラによって自動的に利得を調整される。RFチューナの最終段は、IF値を中心にする狭い範囲の帯域の信号だけを通過させ、他の無線周波エネルギを大きく減衰させる電気機械素子である、例えば、弾性表面波(SAW)フィルタである。SAWフィルタは、標準の6MHz幅のチャンネルのみを通過させ、他の帯域を効果的にフィルタリングする。このように、チューナから出力される信号は、対象となるサービスを搬送するチャンネルを表し、QAM復調器による処理のために、固定された標準の(IF)周波数にダウンコンバートされた信号である。
【0086】
QAM復調器は、典型的には44MHzである中間周波数の6MHz幅の信号を受け取り、第2の可変利得増幅器によって、この信号を一定の最適なレベルに再び増幅する。VGAの利得は、QAM復調器内の1つ以上の閉じた制御ループによって自動的に調整される。そして、この信号は、時間的に電圧が変化するストリームを、離散的時間間隔で信号の電圧を表すバイナリビットのシリアルストリームに変換するアナログ−デジタルコンバータ(ADC)によって処理される。ADCは、通常、10ビット以上の分解能を有する。
【0087】
そして、デジタルストリームは、同相成分(I)及び異相成分(Q)の2つの成分に分離される。Q項は、信号がI信号に対して直角位相にあり、すなわち、位相が90°シフトしているために使用されている。位相分離は、最低周波数が0Hz(DC)であり、最高周波数が6MHzであるベースバンド信号へのダウンコンバートと同時に行われる。これは、IF値を対称中心として±3MHzでコンテンツを表現する、供給される44MHzのIF信号とは異なる。ダウンコンバートは、平衡ミキサを用いて実行され、2つの平衡ミキサの一方に、局部発振器で生成され、他方の平衡ミキサに適用される信号に対して、位相が90°シフトされた信号が供給されるためにI/Q分離が実現する。平衡ミキサの出力I及びQは、適切なシェーピング及び6MHz通過帯域を超える不要な処理アーチファクトの減衰を行う同一のチャンネルフィルタによってフィルタリングされる。
【0088】
【表2】

【0089】
次に、チャンネルフィルタの出力信号は、適応型等化器に供給される。適応型等化器は、フィルタ特性(シェープ)を連続的に変化させる自己調整デジタルフィルタ網である。この等化の目的は、非常に長い距離亘って、ケーブル運営事業者のハイブリッド、ファイバ同軸配信ネットワークによって受信機器に搬送する際に生じるエコー、反射、分散、チルト、符号間干渉及び理想的な元の形式(Fig.2a)から信号を変形させるこの他の歪み(Fig.2b)を自動的に補償することである。マッチドフィルタの理想形に近付けることによって、加入者までの通信パスを伝送されることによって歪んだ波形を再生することができ、位相再生要素(デロテータ)に供給される送信されたデータのエラーレートを大幅に減少させることができる。これによって、実世界のアプリケーションでは多くの場合そうであるように、非理想的な条件下でも、システムは正常に動作する。
【0090】
適応型等化器の具体的構成は、QAM復調器の製造業者間で異なる。これらの包括的なアーキテクチャは共通であり、古典的なフィードフォワード/フィードバックデジタルフィルタの形式を取る。このような目的のための典型的なデジタルフィルタからなる適応型等化器をFig.3に示す。
【0091】
【表3】

【0092】
フィルタの構造は、遅延段(Z−1)のカスケード接続チェインを中心として、復調器に入力されたA/Dコンバータによってバイナリのデジタルフォーマットに変換された電圧の離散的時間サンプルを連続的に保存する。各遅延段タップの出力は、次のカスケードに供給されると共に、入力側にフィードバックされ、又は出力側にフィードフォワードされる。タップフィードバックは、フィードフォワードに関連付けてもよく、タップ毎に別個にどちらかのパスを選択してもよい。各フィードバック又はフィードフォワードパスは、それぞれ個別の係数項に関連付けられている。この項(Fig.2のa及びb)は、乗数として機能する係数の値によって、タップ出力を増幅又は減衰する。等化器は、適応型であるので、係数は、マイクロプロセッサ、コントローラ又は状態マシンの制御の下で動的に変化する。この値は、次の処理段である位相再生段において、適応型等化器の出力の特徴に基づいて変化する。通常、最小二乗平均(LMS)アルゴリズムを用いて、タップ値を変更し、最適解に収束させる。QAM復調器の適応型等化器の構成は、製造業者によって異なる。例えば、ある設計では、合計で22個のタップを設け、他の設計では、16個フィードフォワードタップと、24個のフィードバックタップとからなる合計で40個のタップを設ける。
【0093】
そして、適応型等化器の出力は、検出器又はデロテータとして知られる位相再生ブロックによって処理される。この検出器の目的は、I符号及びQ符号の組合せを単一のデータストリームに復号することである。検出器は、logの係数(変調次数)によって受信データストリームを展開できる。デジタルケーブルで搬送される2つ典型的な形式を例とすれば、この展開の係数は、64QAMの場合6であり、256QAMの場合8である。この展開により、一見、ナイキスト基準に違反するような比較的低いスペクトル帯域幅でデータレートが高いトランスポートデータを効率的に搬送することができる。適応型等化器の係数値及びQAM変調器局部発振器の周波数の設定は、何れも、検出器が有効なデータを「ロック」、すなわち再生したことに基づいて、マイクロプロセッサ又は状態マシンによって制御される。
【0094】
最終処理段である前方誤り訂正器(forward error corrector:FEC)は、再生された生のデジタルケーブルデータストリームに1つ以上の様々なアルゴリズムを適用し、データのエラーを訂正し、ビデオ及びオーディオサービスをMPEGトランスポートストリームとして再生するために適切なフォーマットにフォーマティングする。この処理段では、例えば、ビタビ(トレリス)復号、逆ランダム化、リード−ソロモンエラー訂正、MPEGフォーマティング(又は他のデジタルフォーマティング)等を行ってもよい。これらの処理段の動作に固有の幾つかのオーバヘッドデータは、ストリームから取り除かれ、これにより、ケーブル運営事業者が伝送のためのヘッドエンドにおいて、対応するQAM変調器に挿入したものと同じ形式、コンテンツ及びデータレートを有する最終的なMPEGトランスポートストリームが復調器から出力される。
【0095】
更に、このストリームを平文化し、逆多重化し、伸長し、テレビジョン受像機での表示に適当な形式にコンテンツを変換する。これらの処理は、システムが正常に機能するために必要な処理であるが、本論の主旨に含まれず、後続する処理モジュールによって、周知の手法で実行されるため、これ以上は説明しない。
【0096】
ソニーの「RFフィンガプリント」
【0097】
【表4】

【0098】
技術
単方向デジタルケーブル受信機の位置の変化を検出する能力は、主に適応型等化器に基づいている。適応型等化器は、上述のように、通信チャンネルへのマッチドフィルタとして機能する。このため、適応型等化器の係数内に含まれた値を、通過する信号に影響を及ぼす通信チャンネルの伝達関数に近似させるように数学的に操作できる。換言すれば、一組の係数の値は、特定の時点における全てのミスマッチ、反射、位相変動、利得変動、エコー及び伝送媒体による送信された信号対するこの他の外乱に関する知識の総和を表す。QAM復調器が所定の環境の下で信号ロックを実現及び維持した事実によって、その時点での適応型等化器の状態がシステムに対する設備一式の効果に関する知識を反映しており、このためにこれらの効果を相殺し、ロックを成功させることができることを検証できる。デジタルケーブルで用いられるQAM−64又はQAM−256のフォーマットのためのベクトル誤差半径が小さければ、準最適等化器構成の公差は小さい。ベクトル誤差半径は、受信信号における振幅及び位相誤差の両方の効果の合成関数である。
【0099】
フィルタ係数セットは、伝送環境を直接代表しているので、その環境の如何なる変化にも動的に応答する。下位のフィードバックタップは、多くの場合、例えば、接続又は機器の後部のコネクタにおけるインピーダンス変動、住居スプリッタからのケーブル内の反射等、高周波成分に強く影響を受ける。中間のタップは、タップ及び分配増幅器へのケーブル接続の特徴の変化によってより強い影響を受け、上位のタップは、通常、チャンネルチルト(channel tilt)、分散等に対して最も敏感である。このデータを、一定の信号レベル入力のために必要である総利得を示すAGC情報及び他の類似するパラメータと組み合わせることによって、特定のケーブル機器が設置されている環境に特有のフィンガプリントの基礎が提供される。
【0100】
ソニーによる研究によれば、適応型等化器は、このような変化にとても敏感であり、実験により、単一の共通のソースによって提供され、RFスプリッタの異なるポートから、デジタルケーブル機器のバンクに接続されたケーブルを識別できる。この実験では、機器をお互いに1メートル以内に配置し、同じ長さのケーブルを用いても、各機器について観測された値は、固有であり、経時的にも相対的に不変であった。
【0101】
等化器係数をa±jbとして表したとすると、ある時点でのシステムの状態を表す全ての等化器係数の行列Hは、以下のように表現される。
【0102】
【表5】

【0103】
同様に、複数のAGCループの1つの利得値をkとして表したとすると、ある時点でのシステムの状態を表す全てのAGC係数の行列Hは、以下のように表現される。
【0104】
【表6】

【0105】
ここで、デジタルケーブル機器から等化器タップ係数及びAGCデータを捕捉し、統計的に予想される分散に基づいて、所定のアルゴリズムを適用することによって、係数の加重和を、機器の環境の固有の「フィンガプリント」を表す単一のスカラ値である単項値として表現することができる。閾値及び重み付け関数は、事業者毎に固有に生成してもよく、改竄の可能性を低減するために秘密にしてもよい。
【0106】
このような処理のためのアルゴリズムの例を以下に示す。
【0107】
【表7】

【0108】
このフィンガプリント値は、ケーブル運営事業者からのEMM等のコマンドメッセージの受信に応じて評価され、デジタルケーブル機器のメモリに保存される。保存された値は、暗号化によって機密保護され、改竄を検出するために、デジタル署名される。
【0109】
フィンガプリントアルゴリズム
RFフィンガプリント概念に関する我々の研究の大部分は、元の位置の実際のケーブル機器の経験的な観測に基づいて、RFフィンガプリント、特に重み行列の係数値を算出するために用いられるアルゴリズムを洗練させることに焦点を絞っている。1つの製造業者のQAM復調器の具体例に基づいてフィンガプリント値を算出するアルゴリズムの一般化された形式を以下に示す。
【0110】
【表8】

【0111】
ここで、Wは、特定の等化器タップに関連する重み付け係数行列内の値を表し、SFは、全ての等化器タップ係数を正規化するために用いられる等化器換算係数を表す。
【0112】
重み付け係数の適切な値を決定するために、サンディエゴ法人の構内全体に亘り、市場のケーブルテレビジョンネットワークを精巧にエミュレートしたシステムであるソニーケーブル試験ネットワークに接続されたデジタルケーブル機器から等化器係数と他のデータを遠隔から収集するためのツールを作成した。機器は、3分毎にサンプリングされ、多重周波数のサービスを遠隔からチューニングした。次に、収集されたデータを、一層の解析のための大容量データベースにコンパイルした。
【0113】
確認された項目の1つは、所定の加入者ドロップ及びケーブル機器についての等化器構成の再現性であった。再現性は、4日間に亘る標準偏差の測定に基づいて判断された。Fig.6は、統計的に有意義な期間に亘って、2つの異なるデジタルケーブル機器を検査ネットワークに接続したデータ収集実験の1つの結果を示している。この期間の経過後、2つの機器の位置を交換し、同じ期間について、再びデータ収集を行った。グラフに示すように、データは、所定の機器についてのみ強い再現性を示すのではなく、分散は、機器ではなく位置に追従することがわかる。
【0114】
【表9】

【0115】
【表10】

【0116】
【表11】

【0117】
同様の実験によって収集されたデータに基づくFig.7は、4つのケース(2つの別の位置における2つのデジタルケーブル機器)のそれぞれが固有のシグネチャを有し、それぞれを他の機器/位置から区別できることを示している。重み行列の目的は、「一意的」な項を表す等化器タップ及びAGC係数を選択的に増幅し、識別機器のコンテキストには殆ど貢献しない又は再現性が低い項を減衰させることである。
【0118】
最悪の状況を評価するために、3つのケーブル機器を、同じ1メートルのケーブルで、検査ネットワークによって信号が供給される共通のスプリッタに接続した。4つの離散的な周波数を用いて、3分間隔で12時間に亘って3個の検査ユニットを監視した。この検査の結果をFig.5に示す。これにより、外見上同じRF環境にあり、物理的に近接し、他の環境因子を一致させても、等化器係数値及びAGC係数値のみに基づいて、3個の異なる機器を区別できることが確認された。
【0119】
1メートルのみのサービスドロップ長でインストールが行われることは実際には殆どなく、住居内のある部屋から他の部屋に製品を移動させただけで、誤検出が生じてしまうことを回避するために、フィンガプリント値を比較するアルゴリズムでは無視することができる。但し、これにより、本概念は、強固であり、例えば、DOCSISにおいて用いられている双方向的な手法でも対応できなかったアパートや寮等の高密度な集合住宅にも適用できることが立証された。DOCSIS法は、例えば、半径63メートル以内の位置を判定できるのみであり、この長さは、隣接するアパート間のケーブル長さより遙かに長い。これは、DOCSIS及び他の提案されているスキームが判定基準として時間遅延の測定値を用いるためである。また、これらの他のスキームは、何らかの形式の双方向通信を必要とする。BPフィンガプリントスキームは、単にケーブルの長さのみ依存する手法の欠点を補い、双方向環境だけではなく、純粋な単方向環境でも機能する。
【0120】
【表12】

【0121】
動作シナリオ
フィンガプリント値を算出するアルゴリズムの実現に関連する具体的詳細事項にかかわらず、RFフィンガプリント技術を採用したシステムを配布するための実際的な手法が必要である。このようなシステムは、運用費を抑制し、柔軟性を最大化するために、可能な限り自動化する必要がある。RFフィンガプリンティングを採用したシステムの実用的な具体例を以下に説明する。
1.加入者がフィンガプリントシステムを含む機器をケーブル運営事業者から受け取る。この製品には、「本機器を有効に動作させるために、ケーブルネットワーク及びテレビジョンの両方に機器を接続した後に、自宅の電話機からXXX−XXX−XXXXにお電話下さい」といったラベルが付されている。これは、家庭用の衛星テレビジョン受像機の起動時又は大手金融機関が郵便によって発行したクレジットカード又は自動窓口機(Automated Teller Machine:ATM)カードを有効にする際に行われる作業と同様である。
2.加入者は、指示に従い、機器を接続し、設置の後に機器のラベルに記されている番号に電話する。ケーブル運営事業者の自動確認及び検証(automated validation and verification:AV&V)システムは、電話を受け、加入者に対し、電話機の上でキーパッドを用いてケーブル機器のシリアル番号を入力するよう促し、完了時に「#」キーを押すよう指示する。
3.「#」キーの入力に応じて、AV&Vシステムは、入力された機器シリアル番号の妥当性を確認する。そして、AV&Vシステムは、加入者データベースを調べ、入力されたシリアル番号を有する機器に対応する加入者の記録を検出する。そして、AV&Vシステムは、データベースレコードから加入者の自宅の電話番号を読み出す。フリーダイヤル電話番号(及び911番(緊急電話))へのコールのために用いられる番号非通知にできない発呼者識別の形式である、発信電話番号通知(Automatic Number Identification:ANI)を用いて、AV&Vシステムは、掛かってきた電話番号と、記録されている電話番号とが一致することを確認する。このステップは、許可された加入者が、ケーブル運営事業者によって配布された機器を有効にしようと試みていることを検証するために行われる。
4.ANI及び記録された電話番号が一致した場合、AV&Vシステムは、ケーブルネットワークを介して、加入者が電話機から入力したシリアル番号を有する機器に権利管理メッセージ(Entitlement Management Message:EMM)コマンドを送信する。このEMMコマンドは、加入者のテレビジョンの画面にAV&Vシステムによってランダムに生成され、EMMメッセージ内に含まれたチャレンジ番号シーケンス(challenge number sequence)を表示するよう指示する。次に、AV&Vシステムは、加入者に対し、画面に表示されたチャレンジ番号シーケンスをキーパッドを用いて電話機に入力し、入力が完了すると、「#」キーを押すように指示する。
5.「#」キーが入力されると、AV&Vシステムは、入力されたチャレンジ番号の妥当性を確認し、この確認に失敗すると、お客様相談窓口担当者に電話を転送する。このステップは、許可された加入者が、記録された自宅で、ケーブル運営事業者が配布した機器を有効にしようとしていることを検証するために行われる。
6.チャレンジ番号シーケンスが確認された場合、AV&Vシステムは、これによって検証された機器に対して他のEMMを送信し、以下の2つのステップを実行させる。
【0122】
A.その加入者に許可されているサービスを開始する。
【0123】
B.機器の現在の位置におけるRFフィンガプリントを算出し、持続的なメモリにRFフィンガプリントを保存する。
【0124】
【表13】

【0125】
定期的な検査間隔で、又はEMM又はソフトウェア内のタイマを用いる自己開始を介して、機器は、データを収集し、電子フィンガプリント値を算出し、このフィンガプリント値をメモリに保存された基準値に比較する。算出された値が所定の範囲内にある場合、次の検査期間まで、更なる処理は行われない。一方、フィンガプリントの新たな値が保存された基準値から十分に異なる場合、メモリの基準値を新たな基準値によって更新する。
【0126】
機器が再ブートされ、又はリセットされた場合は、常に、ケーブル運営事業者の許可なしで機器が移転され不正にネットワーク接続された可能性があるとみなし、機器は、データを収集し、電子的なフィンガプリント値を算出し、メモリに保存されている基準フィンガプリント値と、算出されたフィンガプリント値とを比較する。ここで、算出されたフィンガプリント値が所定の範囲内にある場合、新たなフィンガプリント値を、更新後の基準フィンガプリントとしてメモリに格納する。照合に失敗した場合、機器は、テレビジョンサービスに関する認証を自動的に取り消し、機器再起動のためのメッセージ内に含まれているAV&V電話番号によって、ケーブル運営事業者に連絡する必要があることを示すオンスクリーンメッセージを生成し、加入者のテレビジョンの画面に表示する。このメッセージは、権限のない移転が行われたと機器が判定したために生成される。加入者が表示された電話番号に電話を掛けると、AV&V処理が再び開始され、機器の位置が再評価される。
【0127】
結論
RFフィンガプリンティング技術は、ケーブルテレビジョンシステムにおけるサービス及び設備剽窃の問題を解決するツールキット内の1つの要素である。この技術をデジタルデコーダ内に実装し、簡単なコンテンツ暗号化方式と組み合わせることによって、フルデジタル通信ネットワークのサービス品質、及びシステムセキュリティ、並びに以前は、プレミアムデジタルサービスによってのみ提供されていたサービスに対する補償が実現される完全なソリューションが提供される。これらの全ては、低コストな単方向のユーザ端末において実現可能である。RFフィンガプリンティングは、ケーブル機器のハードウェアコストを増加させることなく、ケーブルテレビジョンネットワークに接続された如何なるデジタル機器でも実現できる。
【0128】
この技術の開発は、更に、重み付けメトリックの最適化に焦点をあてて継続される。既に米国の大手ケーブル運営事業者の1つが現在のシステムを完全なデジタル配信にアップグレードするために、この技術を採用することを決定しており、管理及び制御に関する仕様草案も完成している。RFフィンガプリンティング技術は、18ヶ月以内に、商業的に入手可能となり、公に活用される可能性が高い。
【0129】
参考文献
[1] ITU-T Rec. J.83:1997, Digital multi- programme systems for television, sound and data services for cable distribution. Geneva: International Telecommunication Union, Apr. 1997.
[2] ISO/EC 13818-1 :2000, Information Technology - Coding of moving pictures and associated audio - Part 1: Systems. Geneva: International Organization for Standardization/International Electrotechnical Commission, Dec. 2000.
[3] B. P. Lathi, Signals, System and Controls. New York: Harper & Row, 1974, pp. 207-214 & pp. 428-456.
[4] A. Bruce Carlson, Communication Systems, 3rd ed. New York: Mc Graw-Hill, 1986, pp. 514-517 & pp. 550-554.
[5] Edward A. Lee and David G. Messerschmitt, Digital Communication, 2nd ed. Boston: Kluwer Academic, 1994, pp. 442- 550.
[6] Richard E. Blahut, Digital Transmission of Information. New York: Addison-Wesley, 1990, pp. 159-170.
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の一実施の形態に基づく例示的なケーブルネットワークインタフェースのブロック図である。
【図2A】本発明の一実施の形態に基づく等化処理を説明する周波数領域のグラフである。
【図2B】本発明の一実施の形態に基づく等化処理を説明する周波数領域のグラフである。
【図2C】本発明の一実施の形態に基づく等化処理を説明する周波数領域のグラフである。
【図3】本発明の一実施の形態に基づく例示的な等化器のブロック図である。
【図4】本発明の一実施の形態に基づくケーブルネットワークのブロック図である。
【図5】本発明の一実施の形態に基づく例示的な起動処理のフローチャートである。
【図6】本発明の一実施の形態に基づく例示的なフィンガプリント照合処理のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルテレビジョン機器を検査する検査方法において、
検査をトリガするイベントを検出するステップと、
許可された設置場所におけるケーブルテレビジョンネットワーク特性の関数であるフィンガプリント値を生成するステップと、
上記フィンガプリント値を保存された基準値と比較するステップと、
上記フィンガプリント値が上記保存された基準値の指定された範囲内にある場合、上記ケーブルテレビジョン機器が標準動作を実行することを許可するステップと、
上記フィンガプリント値が上記保存された基準値の指定された範囲外にある場合、上記ケーブルテレビジョン機器が標準動作を実行することを禁止するステップとを有する検査方法。
【請求項2】
上記フィンガプリント値を、後の検査における保存された基準値として用いるために保存するステップを更に有する請求項1記載の検査方法。
【請求項3】
上記フィンガプリント値が上記保存された基準値の指定された範囲外にある場合、ケーブルテレビジョン運営事業者に連絡するよう指示するオンスクリーンメッセージを生成する出力信号を送信することを特徴とする請求項1記載の検査方法。
【請求項4】
上記フィンガプリント値は、上記ケーブルテレビジョン機器の適応型等化器の等化器係数の関数であることを特徴とする請求項1記載の検査方法。
【請求項5】
上記フィンガプリント値は、上記ケーブルテレビジョン機器の可変利得増幅器の利得値の関数であることを特徴とする請求項1記載の検査方法。
【請求項6】
上記保存された基準値は、上記ケーブルテレビジョン機器の起動処理の間に取得されたフィンガプリント値として保存されることを特徴とする請求項1記載の検査方法。
【請求項7】
上記フィンガプリント値は、上記ケーブルテレビジョン機器の適応型等化器の等化器係数及び可変利得増幅器の利得値の関数であり、該等化器係数は、a±jbによって表され、フィードバック係数の数をnとし、フィードフォワード係数の数をmとして、ある時点でのシステムの状態を表す全ての等化器係数の行列Hは、以下のように表現され、
【数1】

複数の可変利得増幅器の1つの利得値をkとし、可変利得増幅器の利得値の数をlとして、ある時点でのシステムの状態を表す全ての可変利得増幅器の利得値の行列Hは、以下のように表現され、
【数2】

上記フィンガプリント値は、Fingerprint(t)=Y(H,H)によって算出されることを特徴とする請求項1記載の検査方法。
【請求項8】
上記イベントは、上記ケーブルテレビジョン機器の内部タイマの満了、上記ケーブルテレビジョン機器の電源投入、上記ケーブルテレビジョン機器の再ブート、上記ケーブルテレビジョン機器への外部のソースからのコマンドの受信のうちの何れか1つであることを特徴とする請求項1記載の検査方法。
【請求項9】
上記フィンガプリント値は、上記ケーブルテレビジョン機器の適応型等化器の等化器係数を含むことを特徴とする請求項1記載の検査方法。
【請求項10】
上記フィンガプリント値は、上記ケーブルテレビジョン機器の可変利得増幅器の利得係数値を含むことを特徴とする請求項1記載の検査方法。
【請求項11】
上記フィンガプリントは、上記ケーブルテレビジョン機器のAGCループの少なくとも1つの利得係数値の関数を含むことを特徴とする請求項1記載の検査方法。
【請求項12】
上記フィンガプリント値は、上記ケーブルテレビジョン機器の適応型等化器の少なくとも1つの等化器係数及び上記ケーブルテレビジョン機器のAGCループの少なくとも1つの利得係数値のうちの少なくとも1つの重み付け関数を含むことを特徴とする請求項1記載の検査方法。
【請求項13】
プログラミングされたプロセッサによって実行されると、請求項1記載の検査方法を実現するコンピュータにより読取可能な媒体。
【請求項14】
ケーブルテレビジョン機器を検査する検査方法において、
検査をトリガするイベントを検出するステップと、
許可された設置場所におけるケーブルテレビジョンネットワーク特性の関数である、上記ケーブルテレビジョン機器の適応型等化器の少なくとも1つの等化器係数及び上記ケーブルテレビジョン機器のAGCループの少なくとも1つの利得係数値のうちの少なくとも1つの関数を含む、フィンガプリント値を生成するステップと、
上記フィンガプリント値を保存された基準値と比較するステップと、
上記フィンガプリント値が上記保存された基準値の指定された範囲内にある場合、上記ケーブルテレビジョン機器が標準動作を実行することを許可し、該フィンガプリント値を、後の検査における保存された基準値として用いるために保存するステップと、
上記フィンガプリント値が上記保存された基準値の指定された範囲外にある場合、上記ケーブルテレビジョン機器が標準動作を実行することを禁止するステップとを有する検査方法。
【請求項15】
上記フィンガプリント値が上記保存された基準値の指定された範囲外にある場合、ケーブルテレビジョン運営事業者に連絡するよう指示するオンスクリーンメッセージを生成する出力信号を送信することを特徴とする請求項14記載の検査方法。
【請求項16】
上記保存された基準値は、上記ケーブルテレビジョン機器の起動処理の間に取得されたフィンガプリント値として保存されることを特徴とする請求項14記載の検査方法。
【請求項17】
上記フィンガプリント値は、上記ケーブルテレビジョン機器の適応型等化器の等化器係数及び可変利得増幅器の利得値の関数であり、該等化器係数は、a±jbによって表され、フィードバック係数の数をnとし、フィードフォワード係数の数をmとして、ある時点でのシステムの状態を表す全ての等化器係数の行列Hは、以下のように表現され、
【数3】

複数の可変利得増幅器の1つの利得値をkとし、可変利得増幅器の利得値の数をlとして、ある時点でのシステムの状態を表す全ての可変利得増幅器の利得値の行列Hは、以下のように表現され、
【数4】

上記フィンガプリント値は、Fingerprint(t)=Y(H,H)によって算出されることを特徴とする請求項14記載の検査方法。
【請求項18】
上記イベントは、上記ケーブルテレビジョン機器の内部タイマの満了、上記ケーブルテレビジョン機器の電源投入、上記ケーブルテレビジョン機器の再ブート、上記ケーブルテレビジョン機器への外部のソースからのコマンドの受信のうちの何れか1つであることを特徴とする請求項14記載の検査方法。
【請求項19】
プログラミングされたプロセッサによって実行されると、請求項14記載の検査方法を実現するコンピュータにより読取可能な媒体。
【請求項20】
検査をトリガするイベントを検出する検出手段と、
許可された設置場所におけるケーブルテレビジョンネットワーク特性の関数であるフィンガプリント値を生成する生成手段と、
基準値を保存するメモリと、
上記フィンガプリント値を上記基準値と比較するプロセッサとを備え、
上記フィンガプリント値が上記保存された基準値の指定された範囲内にある場合、標準動作を実行し、
上記フィンガプリント値が上記保存された基準値の指定された範囲外にある場合、上標準動作を実行しない自己検査ケーブルテレビジョン機器。
【請求項21】
上記フィンガプリント値を、後の検査における保存された基準値として用いるために上記メモリに保存する保存手段を更に備える請求項20記載の自己検査ケーブルテレビジョン機器。
【請求項22】
上記フィンガプリント値が上記保存された基準値の指定された範囲外にある場合、ケーブルテレビジョン運営事業者に連絡するよう指示するオンスクリーンメッセージを生成する出力信号を送信する送信手段を更に備える請求項20記載の自己検査ケーブルテレビジョン機器。
【請求項23】
上記保存された基準値は、上記ケーブルテレビジョン機器の起動処理の間に取得されたフィンガプリント値として保存されることを特徴とする請求項20記載の自己検査ケーブルテレビジョン機器。
【請求項24】
上記フィンガプリント値は、上記ケーブルテレビジョン機器の適応型等化器の等化器係数及び可変利得増幅器の利得値の関数であり、該等化器係数は、a±jbによって表され、フィードバック係数の数をnとし、フィードフォワード係数の数をmとして、ある時点でのシステムの状態を表す全ての等化器係数の行列Hは、以下のように表現され、
【数5】

複数の可変利得増幅器の1つの利得値をkとし、可変利得増幅器の利得値の数をlとして、ある時点でのシステムの状態を表す全ての可変利得増幅器の利得値の行列Hは、以下のように表現され、
【数6】

上記フィンガプリント値は、Fingerprint(t)=Y(H,H)によって算出されることを特徴とする請求項20記載の自己検査ケーブルテレビジョン機器。
【請求項25】
更に、タイマを備え、上記イベントは、該タイマによって計測された期間の満了を含むことを特徴とする請求項20記載の自己検査ケーブルテレビジョン機器。
【請求項26】
上記イベントは、上記ケーブルテレビジョン機器の電源投入、上記ケーブルテレビジョン機器の再ブート、上記ケーブルテレビジョン機器への外部のソースからのコマンドの受信のうちの何れか1つであることを特徴とする請求項20記載の自己検査ケーブルテレビジョン機器。
【請求項27】
上記フィンガプリント値は、上記ケーブルテレビジョン機器の適応型等化器の等化器係数を含むことを特徴とする請求項20記載の自己検査ケーブルテレビジョン機器。
【請求項28】
上記フィンガプリント値は、上記ケーブルテレビジョン機器の可変利得増幅器の利得係数値を含むことを特徴とする請求項20記載の自己検査ケーブルテレビジョン機器。
【請求項29】
上記フィンガプリントは、上記ケーブルテレビジョン機器のAGCループの少なくとも1つの利得係数値の関数を含むことを特徴とする請求項20記載の自己検査ケーブルテレビジョン機器。
【請求項30】
上記フィンガプリント値は、上記ケーブルテレビジョン機器の適応型等化器の少なくとも1つの等化器係数及び上記ケーブルテレビジョン機器のAGCループの少なくとも1つの利得係数値のうちの少なくとも1つの重み付け関数を含むことを特徴とする請求項20記載の自己検査ケーブルテレビジョン機器。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−503158(P2008−503158A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516501(P2007−516501)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/017037
【国際公開番号】WO2006/022927
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(593181638)ソニー エレクトロニクス インク (371)
【Fターム(参考)】