説明

デジタルテストプラグ及びこれを用いた電力・位相の測定方法

【課題】CTT用とPTT用とで共用でき、また感電等の不測の事故を未然に防止でき、さらに電力等の測定も行い得るデジタルテストプラグを提供する。
【解決手段】電源側導体及び負荷側導体にそれぞれ接触する活線側導体部25と非活線側導体部26とが一体的に連続するよう各相毎に設けられた共通導体24と、基端部が収納された各共通導体24をテストターミナルの電源側導体と負荷側導体との間に挿入し得るよう突出させて基端部を支持する絶縁支持部22と、各共通導体24に流れる電流を検出するための電流検出用コイル27と、各共通導体24の電圧を検出するための電圧検出用電極28と、電流検出用コイル27及び電圧検出用電極28から出力される電流信号及び電圧信号をデジタル情報に変換するA/D変換器を有し、測定した電流及び電圧を表示する表示部32が外部に臨むよう絶縁支持部22に収納されたデジタルテスタ部30とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデジタルテストプラグ及びこれを用いた電力・位相の測定方法に関し、特に電力系統の電流、電圧や、さらに電力、位相等を計測する場合に用いて有用なものである。
【背景技術】
【0002】
電力系統の保護システムにおける各種のテスト乃至測定(以下、テスト等という)を行うための機器としてテストプラグが知られている。このテストプラグは、配電盤に多数配設されたテストターミナルに挿入した状態で所定のテスト等を行うものである。ここで、テストターミナルは、電源側の機器である変流器(CT)及び計器用変圧器(PT)と負荷側の機器である各種の継電器等との間を接続しており、通常時には前記変流器(CT)乃至計器用変圧器(PT)と前記継電器等との間を接続している。
【0003】
図5は従来技術に係るテストターミナルを示す縦断面図である。同図に示すように、当該テストターミナル1は、開口部であるプラグ挿入口2を形成した箱体3を有しており、この箱体3内には、接点装置4がR,W,B相およびN相の各相に対応して並設されている。各接点装置4は、各相に対応する上下一対の可動接触板である電源側導体5及び負荷側導体6で構成されている。
【0004】
一方、図6に示すように、テスト等を行う際において前記テストターミナル1に挿入されるテストプラグ11は、絶縁支持部12から突出した絶縁板13に、各相に対応するとともに、上下に相互に絶縁された各一対(R,W,B,Nの各相に対応する4組)の活線側導体14及び非活線側導体15が並設されており、それらの基端部は、同軸状に配設された4組の端子16,17にそれぞれ接続されている。これらの各端子16,17を介してテスト等の際における所定の試験装置乃至測定器を接続する。ここで、隣接する相の絶縁板13間は相間絶縁部材18で絶縁されている。
【0005】
テストターミナル1は、電源側導体5に変流器(CT)が接続されるCTTターミナルとして構成される場合と、計器用変圧器(PT)が接続されるPTTターミナルとして構成される場合とがある。
【0006】
ここで、電源側導体5に変流器(CT)が接続されるテストターミナル(CTTターミナル)1に挿入するCTTプラグとして構成されたテストプラグ11は変流器の2次側が開放されるのを避けるため、複数の短絡片(図示せず)により4個の端子16間を連結接続してR,W,B,Nの各相の活線側導体14間を短絡した状態で使用する必要がある。
【0007】
一方、電源側導体5に計器用変圧器(PT)が接続されるテストターミナル(PTTターミナル)1に挿入するPTTプラグとして構成されたテストプラグ11では、前述の如く短絡片で4個の端子16間を連結接続した状態で使用した場合には計器用変圧器の短絡事故を生起してしまう。
【0008】
そこで、図5及び図6に基づく上述の説明では区別していないが、テストプラグ11はCTT用とPTT用との2種類が用意されており、CTT用のテストプラグ11はCT用のテストターミナル1のみに、PTT用のテストプラグ11はPT用のテストターミナル1のみに挿入し得るような構成となっている。具体的には、例えばテストターミナル1及びテストプラグ11の所定位置に凸部を設けておき、CTT用とPTT用とを取り違えて挿入しようとすれば凸部が干渉して挿入が阻害されるような構造が採用されている。
【0009】
さらに、CT回路の電流の測定時には端子16,17間に電流計を接続し、またPT回路の電圧の測定時には対象となる相の端子16間に電圧計を接続している。
【0010】
このように従来技術におけるCT乃至PT回路の電流乃至電圧測定時は、CTT用乃至PTT用のテストプラグ11を所定のテストターミナル1に挿入し、その端子16,17に電流計乃至電圧計を接続し測定しているので、CTの二次側の開放、PTの相間の短絡、充電部の露出に伴う感電等の危険がある。また、配線も煩雑となり,誤結線による感電、ミストリップなどの危険性もある。
【0011】
なお、この種のテストプラグ、特に感電対策を講じたテストプラグには特許文献1乃至特許文献3に開示されているものが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−131699号公報
【特許文献2】特開2006−054975号公報
【特許文献3】特開2008−190949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、従来技術にかかるテストプラグはCTT用とPTT用の2種類のテストプラグを用意しておく必要があるばかりでなく、次のような問題も有している。
【0014】
1)CT回路乃至PT回路の電流乃至電圧を測定したい場合、テストプラグを挿入した後、所定の端子に電流測定用と電圧測定用で異なる個別の計器を接続して測定する必要がある。このため、配線等に手間取り測定作業が煩雑になる結果、所定の測定に長時間を要する。
2)電力測定時には、CTT用及びPTT用のテストプラグのそれぞれから配線して電力計に接続する必要があるので、配線が複雑となるばかりでなく、誤結線等による感電、短絡、開放等の危険がある。
3)CTT用及びPTT用のテストプラグの挿入時には、CT回路の開放、電源と負荷間の開放がないよう、またPT回路の短絡がないように結線する必要がある。
4)電流乃至電圧を長時間に亘り監視する場合、接続した計器の動きを常に監視しておく必要がある。
【0015】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、CTT用とPTT用とで共用でき、また充電部の露出部分を排除して感電等の不測の事故を未然に防止し得るばかりでなく、所定の測定作業を迅速且つ合理的に行い得、さらに電力等の測定も簡易且つ簡便に行い得るデジタルテストプラグ及びこれを用いた電力・位相の測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様は、計器用変流器又は計器用変成器に接続されたテストターミナルの各相に対応して設けられた一方の端子である電源側導体と、各電源側導体に対応させて設けられた前記テストターミナルの他方の端子である負荷側導体との間に挿入して前記テストターミナルに接続された変流器回路又は変成器回路の電流又は電圧を測定するデジタルテストプラグであって、前記電源側導体及び負荷側導体にそれぞれ接触する活線側導体部と非活線側導体部とが一体的に連続するようコ字状に折曲されて前記各相毎に設けられた共通導体と、基端部が収納された前記各共通導体を前記電源側導体と前記負荷側導体との間に挿入し得るよう突出させて前記基端部を支持する絶縁支持部と、前記各共通導体の前記先端部で前記各共通導体を取り囲んで環状に形成されるとともに前記絶縁支持部に収納された、前記各共通導体に流れる電流を検出するための電流検出用コイルと、前記各共通導体の前記先端部に配設されるとともに前記絶縁支持部に収納された、前記各共通導体の電圧を検出するための電圧検出用電極と、前記電流検出用コイル及び電圧検出用電極から出力される電流信号及び電圧信号をデジタル情報に変換するA/D変換器を有し、前記A/D変換器を介して得るデジタル情報を処理して前記各共通導体の電圧及び電流を測定するとともに測定した前記電流及び電圧を表示する表示部が外部に臨むよう前記絶縁支持部に収納されたデジタルテスタ部とを有することを特徴とするデジタルテストプラグにある。
【0017】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載するデジタルテストプラグにおいて、前記デジタルテスタ部は、前記各共通導体の電圧、前記各共通導体間の電圧、前記各共通導体の電流及び残留電流を選択的に切替えて測定するための選択操作部を有することを特徴とするデジタルテストプラグにある。
【0018】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載するデジタルテストプラグにおいて、前記デジタルテスタ部は、前記変流器回路の電圧信号とともに、前記変成器回路から他のデジタルテストプラグを介して得る電流信号を入力して前記電力及び位相の少なくとも一つを測定し得るように構成したことを特徴とするデジタルテストプラグにある。
【0019】
本発明の第4の態様は、第1乃至第3の態様の何れか一つに記載するデジタルテストプラグにおいて、前記デジタルテスタ部は、前記変流器回路及び変成器回路の一次側の電流及び電圧を前記表示部に表示し得るよう変流比及び変圧比に基づくレシオ変更を行うための他の選択操作部を有することを特徴とするデジタルテストプラグにある。
【0020】
本発明の第5の態様は、第1乃至第4の態様の何れか一つに記載するデジタルテストプラグにおいて、前記デジタルテスタ部は、前記電流情報及び電圧情報を外部に送出するための出力端子を有することを特徴するデジタルテストプラグにある。
【0021】
本発明の第6の態様は、第1乃至第5の態様の何れか一つに記載するデジタルテストプラグにおいて、前記デジタルテスタ部は、前記電流及び電圧の上限値が予め定めた監視レベルを超えた場合には警報を発する警報手段を有することを特徴とするデジタルテストプラグにある。
【0022】
本発明の第7の態様は、第1の態様に記載する第1のデジタルテストプラグを前記変成器回路に接続された第1のテストターミナルに挿入することにより接続して前記変成器回路の電圧を検出するとともに、第1の態様に記載する第2のデジタルテストプラグを前記変流器回路に接続された第2のテストターミナルに挿入することにより接続して前記変流器回路の電流を検出し、さらに前記第2のデジタルテストプラグを前記第1のデジタルテストプラグに接続することにより前記電流を表す電流信号を第1のデジタルテストプラグに送出し、第1のデジタルテストプラグのデジタル部では自身が検出した電圧情報と前記電流信号に基づく電流情報により電力及び位相の少なくとも一つを測定することを特徴とするデジタルテストプラグを用いた電力・位相の測定方法にある。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、CTT用及びPTT用の共用化を図り、充電部を除去してテストプラグにデジタル形測定器の機能を付加したので、安全かつ容易にさまざまな計測が可能となる。具体的には次のような効果を得る。
【0024】
1)充電部が露出していないため、感電事故を除去でき安全な作業を実現することができる。
2)配線の必要がないため、作業を簡単且つ迅速に行うことができる。
3)PT回路及びCT回路の配線の必要が無いため、短絡、開放、ミストリップ等が発生する虞がない。
4)他の計器を接続する必要がなくテストプラグ単体で簡易に所定の電圧、電流等を計測することができる。
5)監視レベル設定をすることにより、電圧、電流等の異常監視を行うことができる。
6)電力系統の地絡監視が可能となる。
7)CTT用及びPTT用を共用できるので、各相の電圧、電流を配線を変更することなく測定することができる。
8)CT回路からの信号をPT回路に入力することにより、電力、位相も計測することが可能となる。
9)測定値をデジタル量で扱えるため、デジタル情報である電流情報乃至電圧情報等としてパソコン等に供給することで、電力系統のトレンド管理も可能となる。
10)レシオ設定変更により、電力系統の一次側の電気量を直読することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態に係るデジタルテストプラグの全体を示す図で、(a)は平面図、(b)はその側面図、(c)はその正面図である。
【図2】図1のA部分を抽出・拡大して示す拡大図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るデジタルテストプラグを、これを用いた電力乃至位相の測定時の態様を示すブロック線図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るデジタルテストプラグを、これを用いた電力乃至位相の測定時の態様を概念的に示す説明図である。
【図5】従来技術に係るテストターミナルを示す縦断面図である。
【図6】従来技術に係るテストプラグを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0027】
図1は本発明の実施の形態に係るデジタルテストプラグの全体を示す図で、(a)は平面図、(b)はその側面図、(c)はその正面図である。これらの図に示すように、本形態に係るデジタルテストプラグIはテストターミナル1(図5参照)に挿入してCT回路の電流乃至PT回路の電圧等を測定するためのもので、テストターミナル1の各相(R相,W相,B相,N相;以下同じ)に対応させて設けられた電源側導体5(図5参照)と、各電源側導体5に対応させて設けられた負荷側導体6(図5参照)との間に挿入される。具体的には、絶縁支持部22が共通導体24を電源側導体5と負荷側導体6との間に挿入し得るよう共通導体24の基端部を支持して突出させている。ここで、共通導体24は電源側導体5及び負荷側導体6にそれぞれ接触する活線側導体部25と非活線側導体部26とが一体的に連続するようコ字状に折曲されて各相毎に設けられている。共通導体24の基端部の支持は、共通導体24の基端部を絶縁支持部22内に埋設することにより実現しており、共通導体24の絶縁支持部22に埋設された部分には電流検出用コイル27と電圧検出用電極28が配設してある(この部分の具体的な構成に関しては図2に基づき後に説明する)。
【0028】
デジタルテスタ部30は電流検出用コイル27及び電圧検出用電極28から出力される電流信号及び電圧信号をデジタル情報に変換するA/D変換器(図1には図示せず)を有し、このA/D変換器を介して得るデジタル情報を処理して各共通導体24の電圧及び電流を測定するものである。本形態におけるデジタルテスタ部30は、演算・制御部31、表示部32、操作ボタン33A,33B,33C及び入出力端子34R,34B,34W,34Nを有しており、必要な部分のみを外部に臨ませてその全てが絶縁支持部22に埋設されている。かくして、テストターミナルに装着した状態では、共通導体24をはじめ全ての充電部が隠蔽される。ここで、演算・制御部31は電流信号及び電圧信号に基づき電流情報及び電圧情報等を演算するとともに測定乃至演算に必要な情報処理のための制御を行う。表示部32は演算・制御部31の出力信号に基づき測定した電流及び電圧を表示する。
【0029】
操作ボタン33A,33B,33Cは操作することにより任意の測定モード等を選択するためのものである。本形態においては、操作ボタン33Aを操作する毎に、電圧測定及び表示モード、電流測定表示モード、電力測定表示モード又は位相測定表示モードの何れかが選択される。また、操作ボタン33Bを操作することで、変流比及び変圧比に基づくレシオ変更を行うことができる。さらに、操作ボタン33Cを操作することで、共通導体24を流れる電流及び共通導体24の電圧の上限値である監視レベルを設定することができる。入出力端子34R,34B,34W,34Nは外部からの所定の情報を入力するとともに、外部に所定の情報を出力するためのものである。
【0030】
図2は図1のA部分を抽出・拡大して示す拡大図である。すなわち、共通導体24の一相(他の相も同様である)分を抽出してその基端部(絶縁支持部22に埋設されている部分)が示してある。同図に示すように、電流検出用コイル27は共通導体24の先端部で共通導体24を取り囲んで環状に形成されており、共通導体24を流れる電流に応じた電流信号をA/D変換器35に送出するようになっている。電圧検出用電極28は共通導体24の先端部に配設されており、共通導体24の電圧を検出するためのパッド状の電極として構成されており、共通導体24の電位を表す信号を電圧信号としてA/D変換器35に送出するようになっている。A/D変換器35は電流信号及び電圧信号に基づき共通導体24を流れる電流及び共通導体24の電位を表すデジタル情報を出力する。すなわち、本形態においては電流電圧がデジタル情報として得られる。
【0031】
図3は本発明の実施の形態に係るデジタルテストプラグを示すブロック線図で、特に本形態に係る二個のデジタルテストプラグIを用いて電力乃至位相も測定し得るようにした時の態様を示すものである。同図に示すように、演算・制御部31はA/D変換器35を介して入力された電流情報乃至電圧情報を処理して所定の情報として表示部32等に送出する。ここで、演算・制御部31における処理のモードは操作ボタン33A乃至33Cで選択することができる。すなわち、操作ボタン33Aで電圧測定表示モードが選択された場合には、PT回路の電圧を測定し、その結果を表示部32に表示させる。同様に、電流測定表示モードではCT回路の電流を測定し、その結果を表示部32に表示させる。ここで、電圧としては各共通導体24の相電圧乃至各共通導体24間の相間電圧の何れかを選択して測定・表示させることもできる。また、電流としては各共通導体24の線電流乃至残留電流の何れかを選択して測定・表示させることもできる。
【0032】
一方、電力測定表示モード乃至位相測定表示モードが選択された場合には、一つのデジタルテストプラグIで検出するPT回路の電圧情報に加え、他のデジタルテストプラグIで検出するCT回路の電流情報を加味して演算・制御部31で電力乃至位相を所定の演算処理により求め、結果を表示部32に表示させる。ここで、CT回路に接続したデジタルテストプラグIからはその入出力端子34R乃至34N(図1参照)を介して電流情報を送出するとともに、PT回路に接続したデジタルテストプラグIではその入出力端子34R乃至34Nを介して電流情報を受信して取り込み演算・制御部31で所定の演算処理を行わせる。
【0033】
操作ボタン33Bの操作では、PT回路乃至CT回路の一次側の電圧乃至電流を表示部32に表示し得るよう変圧比乃至変成比に基づくレシオ変更を行うことができる。ここで、演算・制御部31にはPT回路乃至CT回路の変圧比乃至変成比に関する情報が記憶されており、この情報に基づき実測した電圧乃至電流を一次側の値に変換している。
【0034】
操作ボタン33Cの操作では、実測された電圧乃至電流の上限値を設定することができる。かかる設定値は演算・制御部31に記憶されており、したがって実測値と照合することにより電圧乃至電流の上限値を管理することができる。上限値を超えた場合には、演算・制御部31がこのことを検知してブザー36を鳴動させて警告を発する。
【0035】
本形態における演算・制御部31は電圧乃至電流等をデジタルデータとして出力することができるので、処理したデータを、入出力端子34R乃至34N(図1参照)を介して例えばパソコン38等の外部機器に送出することもできる。パソコン38では必要に応じデータを任意に加工することができるので、例えば測定量のグラフ表示、それらに基づくトレンド管理等も容易に行い得る。
【0036】
図4は本発明の実施の形態に係るデジタルテストプラグを用いた電力乃至位相の測定時の態様を概念的に示す説明図である。同図に示すように、この場合には、先ず配電盤41に配設されたPTT用のテストターミナル42に本形態に係るデジタルテストプラグIPを挿入するとともに、CTT用のテストターミナル43に本形態に係る別のデジタルテストプラグICを挿入する。かかる状態で両者を配線44で接続する。このことにより、テストプラグICで測定した電流情報をデジタルテストプラグIPで電圧情報とともに処理することができる。かくしてデジタルテストプラグIPの演算・制御部31では電力及び/又は位相を測定することができる。
【0037】
なお、図3及び図4で示す場合には、電流情報を得る場合も本形態に係るデジタルテストプラグI、ICを用いたが、これに限るものではない。従来のテストプラグでCT回路の電流を検出し、アナログ信号としての電流信号をデジタルテストプラグI,IPに送出した場合でも電流信号を受信したデジタルテストプラグI,IPでD/A変換をすれば同様に電力及び/又は位相を検出することができる。
【0038】
また、上記実施形態においては、PT回路用とCT回路用とに別々のデジタルテストプラグIを用いたが、勿論単独で用いることもできる。この場合、本形態に係るデジタルテストプラグIは電流も電圧も二次側の解放、短絡といった不都合を生起することなく、測定することができる、すなわち演算・制御部31における処理のモードを選択するだけであるので、両測定に兼用することができるテストプラグとして構成することができる。
【0039】
さらに、共通導体24の基端部等の充電部を絶縁支持部22内に埋設するようにしたが、これに限るものではない。充電部が露出しないように絶縁支持部22内に収納される構成となっていれば良い。ただ、埋設の場合には絶縁支持部22を絶縁材による樹脂モールで作製することが可能であるため、容易に作製でき、しかも確実な絶縁性能を長期間に亘り安定して発揮させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は電力系統の運用に供する電気機器の製造販売及び電力設備の運用・管理を行う産業分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
22 絶縁支持部
24 共通導体
25 活線側導体部
26 非活線側導体部
27 電流検出用コイル
28 電圧検出用電極
30 デジタルテスタ部
31 演算・制御部
32 表示部
33A〜33C 操作ボタン
34R〜34N 入出力端子
35 A/D変換器
36 ブザー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
計器用変流器又は計器用変成器に接続されたテストターミナルの各相に対応して設けられた一方の端子である電源側導体と、各電源側導体に対応させて設けられた前記テストターミナルの他方の端子である負荷側導体との間に挿入して前記テストターミナルに接続された変流器回路又は変成器回路の電流又は電圧を測定するデジタルテストプラグであって、
前記電源側導体及び負荷側導体にそれぞれ接触する活線側導体部と非活線側導体部とが一体的に連続するようコ字状に折曲されて前記各相毎に設けられた共通導体と、
基端部が収納された前記各共通導体を前記電源側導体と前記負荷側導体との間に挿入し得るよう突出させて前記基端部を支持する絶縁支持部と、
前記各共通導体の前記先端部で前記各共通導体を取り囲んで環状に形成されるとともに前記絶縁支持部に収納された、前記各共通導体に流れる電流を検出するための電流検出用コイルと、
前記各共通導体の前記先端部に配設されるとともに前記絶縁支持部に収納された、前記各共通導体の電圧を検出するための電圧検出用電極と、
前記電流検出用コイル及び電圧検出用電極から出力される電流信号及び電圧信号をデジタル情報に変換するA/D変換器を有し、前記A/D変換器を介して得るデジタル情報を処理して前記各共通導体の電圧及び電流を測定するとともに測定した前記電流及び電圧を表示する表示部が外部に臨むよう前記絶縁支持部に収納されたデジタルテスタ部とを有することを特徴とするデジタルテストプラグ。
【請求項2】
請求項1に記載するデジタルテストプラグにおいて、
前記デジタルテスタ部は、前記各共通導体の電圧、前記各共通導体間の電圧、前記各共通導体の電流及び残留電流を選択的に切替えて測定するための選択操作部を有することを特徴とするデジタルテストプラグ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載するデジタルテストプラグにおいて、
前記デジタルテスタ部は、前記変流器回路の電圧信号とともに、前記変成器回路から他のデジタルテストプラグを介して得る電流信号を入力して前記電力及び位相の少なくとも一つを測定し得るように構成したことを特徴とするデジタルテストプラグ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載するデジタルテストプラグにおいて、
前記デジタルテスタ部は、前記変流器回路及び変成器回路の一次側の電流及び電圧を前記表示部に表示し得るよう変流比及び変圧比に基づくレシオ変更を行うための他の選択操作部を有することを特徴とするデジタルテストプラグ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載するデジタルテストプラグにおいて、
前記デジタルテスタ部は、電流情報及び電圧情報を外部に送出するための出力端子を有することを特徴するデジタルテストプラグ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載するデジタルテストプラグにおいて、
前記デジタルテスタ部は、前記電流及び電圧の上限値が予め定めた監視レベルを超えた場合には警報を発する警報手段を有することを特徴とするデジタルテストプラグ。
【請求項7】
請求項1に記載する第1のデジタルテストプラグを前記変成器回路に接続された第1のテストターミナルに挿入することにより接続して前記変成器回路の電圧を検出するとともに、請求項1に記載する第2のデジタルテストプラグを前記変流器回路に接続された第2のテストターミナルに挿入することにより接続して前記変流器回路の電流を検出し、
さらに前記第2のデジタルテストプラグを前記第1のデジタルテストプラグに接続することにより前記電流を表す電流信号を第1のデジタルテストプラグに送出し、
第1のデジタルテストプラグのデジタル部では自身が検出した電圧情報と前記電流信号に基づく電流情報により電力及び位相の少なくとも一つを測定することを特徴とするデジタルテストプラグを用いた電力・位相の測定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−179988(P2011−179988A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44793(P2010−44793)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】