説明

デスフェリチオシン類縁体アクチニド除染剤

非毒性の有効量のアクチニド除染剤およびそのための薬学的に受容可能な担体を含む医薬組成物であって、前記アクチニド除染剤が、アクチニドをインビボでキレートすることができる6配位構造のデスフェリチオシン類縁体を含む、前記医薬組成物、ならびにヒトまたは非ヒト哺乳動物の組織からアクチニドを除去するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
対象となる発明の主題は、2006年12月12日に出願された仮出願第60/874,256号および2007年3月15日に出願された同第60/966,539号に関連し、これらの主題は、その全体が本明細書において参考として援用される。これらから優先権が主張される。
【0002】
政府の支援条項
本発明は、全体においてまたは部分的に、国立衛生研究所(NIH)のNational Diabetes and Digestive and Kidney Diseases Advisory Council(NIDDK)からの助成金第DK49108号により支援された。政府は、本発明において一定の権利を有する。本明細書において開示される各特許および参考文献は、参考として援用される。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
いわゆる「ダーティーボム(dirty bomb)」またはRDD(放射性物質拡散装置)から、原子炉の破壊、熱核装置の想定外の爆発まで、テロリストの攻撃において放射性物質が確実な脅威となる状況はいくらでもある。これらのおよび他の状況の管理は、国土安全保障省および軍部により慎重に研究されてきた。熱核爆発以外の殆どの場合において、論点は核汚染の問題に帰着する。外的な汚染は容易に管理し得るが、摂取、吸入または放射性核種による創傷の汚染は問題である。現行の解決法は、殆ど完全に、可能性がある放射性金属を隔離して排出させるキレート剤による患者の処置、および/または甲状腺による放射性ヨウ化物の取り込みを防ぐためのヨウ化カリウムの投与に依存している。候補となる金属のリストは相当の分量であり、Am、Cf、Ce、Cs、Cu、Pu、Po、SrおよびUを非限定的に含むが、治療用キレート剤の信頼できるリストはこれに匹敵しない。おそらく最も広く受け入れられているキレート剤であるジエチレントリアミン5酢酸(DTPA)は、皮下投与による非常に迅速な処置を必要とし、多数の副作用を呈する。
【0004】
皮下投与されるキレート剤は存在するが、集団被爆の場合においては、経口で活性な配位子(ligand)が真に関心を集める。DTPAの長期の皮下または静脈内投与を必要とする多数の患者を管理することは困難であり得る。Raymondらによる「Rational Design of Sequestering Agents for Plutonium and Other Actinides」についての信頼のおける概説(Chem Rev 2003; 103:4207-4282)において、筆者らは、Fe(III)、Pu(IV)、Am(IIl)およびEu(III)の間の類似性、例えば電荷対半径(charge-to-radius)の比、生物学的輸送および分布について、早くに強調している。実際に、鉄とアクチニドとの間には配位の相違が存在するが、類似性がアクチニドの配位子の設計のための推進力として役立つ(Fukuda S. Chelating agents used for plutonium and uranium removal in radiation emergency medicine, Curr Med Chem 2005; 12:2765-2770; Paquet et al, Efficacy of 3,4,3- 1 i(l ,2-HOPO) for decorporation of Pu, Am and U from rats injected intramuscularly with high-fired particles of MOX. Radiat Prot Dosimetry 2003;105:521- 525; Guilmette et al, Competitive binding of Pu and Am with bone mineral and novel chelating agents, Radiat Prot Dosimetry 2003; 105:527-534; Stradling et al, Recent developments in the decorporation of plutonium, americium and thorium, Radiat Prot Dosimetry 1998;79:445-448; Santos et al, A cyclohexane-1 ,2-diyldinitrilotetraacetate tetrahydroxamate derivative for actinide complexation: Synthesis and complexation studies. J Chem Soc Dalton Trans 2000:4398-4402; Miller et al, Efficacy of orally administered amphipathic polyaminocarboxylic acid chelators for the removal of plutonium and americium: Comparison with injected Zn-DTPA in the rat, Radiat Prot Dosimetry 2005.印刷前に電子公開されている)。
【0005】
上記Raymondらはアクチニドのキレート剤の設計に対する優れた体系的なアプローチを概説しており、Fe(III)は6配位8面体の錯体を形成することを好むが、アクチニドは8配位12面体の錯体を好むことについては、疑う余地がない。しかし、彼のヒドロキシピリジノン(HOPO)6配位キレート剤が、かなり良好にアクチニドを隔離して動物から除去することもまた明らかである。実際に、配位子のファミリーによっては、6配位と8配位との間での効率の差異は僅かとなり得る。同じ概説において、Raymondらは、多数の6配位、8配位および4配位のカテコールおよびHOPO配位子がU(VI)に結合することを指摘している(Durbin et al, Chelating agents for uranium(VI): 2. Efficacy and toxicity of tetradentate catecholate and hydroxypyridinonate ligands in mice, Health Phys 2000;78:51 1-521)
【0006】
本発明の目的は、新規のアクチニド除染剤を提供することである。
【発明の概要】
【0007】
発明の要旨
上記のおよび他の目的は、本発明により実現され、その一態様は、放射性核種の除染のためのデスフェリチオシン(desferrithiocin)に基づくキレート剤の提供に関する。
【0008】
特に、本発明の一態様は、アクチニド除染剤として活性な特定の6配位デスフェリチオシン類縁体、ヒトおよび非ヒト哺乳動物からアクチニドを除去するための組成物および方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明のアクチニド除染剤の多様な化学的および物理的特徴を示す。
【図2】図2は、本発明のアクチニド除染剤の多様な化学的および物理的特徴を示す。
【図3】図3は、本発明のアクチニド除染剤の多様な化学的および物理的特徴を示す。
【図4】図4は、本発明のアクチニド除染剤の多様な化学的および物理的特徴を示す。
【0010】
発明の詳細な説明
本発明の実施において利用されるアクチニド除染剤は、化合物4〜12、17〜21(以下に記載する)のいずれか、または式:
【化1】

【化2】

【化3】

【0011】
式中、
は、−Hまたはアシル基であり、
は、−[(CH−O]−[(CH−O]−R’であり、
、R、およびRは、互いに独立して、−H、アルキル基、または−OR11であり、
、R、およびRは、互いに独立して、−Hまたはアルキル基であり、
は、−OR12または−N(OH)R13であり、
10は、−Hまたはアルキル基であり、
11は、−H、アルキル基またはアシル基であり、
12は、−Hまたはアルキル基であり、
13は、アルキル基
【化4】

であり、
【0012】
14は、アルキル基であり、
R’は、アルキル基であり、
mは、1〜8の整数であり、
各nは、独立して1〜8の整数であり、
xは、1〜8の整数であり、
yは、0〜8の整数であり、
【0013】
Zは、−C(O)R14
【化5】

または
【化6】

である化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは水和物を含む。
【0014】
過去の体系的な構造−活性研究は、デスフェリチオシン(DFT)の優れた鉄キレート活性を保持しつつその有害作用を除去する類縁体の設計および合成を可能にした。本発明の基礎となる仮説は、同様のアプローチを、アクチニドを効果的に除染する配位子の設計のためにDFTプラットフォームを利用するために採用することができるというものである。過去の経験、齧歯類および霊長類における鉄キレート化の広範な研究の結果、ならびに入手可能な科学文献の広範囲な再調査に基づいて、ウランを除染することが既に示されている多数のキレート剤を含む配位子基礎セットを、U(VI)、Th(IV)(Pu(IV)の代わり)およびEu(III)(Am(III)の代わり)の除染のための、現在最も有効な候補を表すものとして選択した。
【0015】
齧歯類における体系的な研究(用量−応答研究、薬理学的研究、毒物学的研究、および組織病理学的研究を含む)により、DFTキレート剤が、配位子基礎セットにおいて、U(VI)、Th(IV)およびEu(III)の除染のための最も効果的でありかつ最も毒性がないものであることが同定される。選択したキレート剤の齧歯類におけるEu(III)の分布及び除去に対する作用を特徴付けるための、MRIを用いた革新的な新規アプローチもまた利用される。最終的には、最も可能性が高い候補キレート剤を、ヒトにおける効力のための最も有効な証拠を提供するために霊長類モデルにおいて評価する。
【0016】
このように、本発明は、動物におけるU(VI)、Th(IV)(Pu(IV)の代わり)、およびEu(III)(Am(III)の代わり)の除染のための、デスフェリチオシン類縁体の設計、評価および開発に焦点を当てる(Nash et al, Features of the thermodynamics of two-phase distribution reactions of americium(III) and europium(III) nitrates into solutions of 2,6-bis[(bis(2ethylhexyl)phosphino)-methyl]pyridine N,P,P' - trioxide. Inorg Chem 2002;41 :5849-5858)。U、PuおよびAmは、無論、テロリストの使用する候補として高く順位付けされる。
【0017】
6つの知見が本発明を導いた:(1)多様な6配位構造の配位子がFe(III)(Bergeron, et al., Iron Chelators and Therapeutic Uses, Burger's Medicinal Chemistry 2003;III:479-561)、PU(IV)(Jarvis, et al., Some correlations involving the stability of complexes of transuranium metal ions and ligands with negatively charged oxygen donors, Inorg Chim Acta 1991 ; 182:229-232; Neu, et al., Structural Characterization of a Plutonium(IV) Siderophore Complex: Single- Crystal Structure of Pu-Desferrioxamine E, Angewandte Chemie International Edition 2000;39: 1442-1444; Durbin, et al., In Vivo Chelation of Am(III), Pu(IV), Np(V), and U(VI) in Mice by TREN-(Me-3,2-HOPO), Radiat Prot Dosimetry 1994;53:305-309)、Th(IV)(Whisenhunt, et al., Specific Sequestering Agents for the Actinides. 29. Stability of the Thorium(IV) Complexes of Desferoxamine B (DFO) and Three Octadentate Catecholate or Hydroxypyridinonate DFO Derivatives: DFOMTA5 DFOCAMC, and DFO-1,2-HOPO. Comparative Stability of the Plutonium(IV) DFOMTA Complex(l ), Inorg Chem 1996;35:4128-4136; Langer, Solid complexes with tetravalent metal ions and ethylenediamime tetra-acetic acid (EDTA), J Inorg Nucl Chem 1964;26:59-72)、Am(III)(Durbin, et al., In Vivo Chelation of Am(III), Pu(IV), Np(V), and U(VI) in Mice by TREN-(Me-3,2-HOPO), Radiat Prot Dosimetry 1994;53:305-309)、Eu(III)およびU(VI)(Durbin, et al., In Vivo Chelation of Am(III), Pu(IV), Np(V), and U(VI) in Mice by TREN-(Me-3,2-HOPO), Radiat Prot Dosimetry 1994;53:305-309)に結合することが示されている。
【0018】
(2)デスフェリチオシンの類縁体((S)−4,5−ジヒドロ−2−(3−ヒドロキシ−2−ピリジニル)−4メチル−4−チアゾールカルボン酸(DFT、1、図1))は、Fe(III)およびTh(IV)と2:1の6配位錯体を形成することが示されている(RaO, et al., Complexation of Thorium(IV) with Desmethyldesferrithiocin, Radiochim Acta 2000;88:851-856)。(3)これらの同じ配位子は、齧歯類、イヌおよび霊長類に皮下(SC)または経口(PO)で投与された場合、非常に効率的に鉄を除去することが示されている。(4)これらの配位子はまた、齧歯類からウランを除染することが示されており、これらは腹腔内(IP)およびSCまたはPOで投与された場合に効果的である。これらはウランを腎臓から除去することについて強力な効果を有し得る。
【0019】
(5)これらの配位子の1つである(S)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,5−ジヒドロ−4−メチル−4−チアゾールカルボン酸((S)−4’−(HO)−DADFT、10、図1)は、ヒトの臨床試験において、鉄の過負荷を有する患者の処置のために経口で有効な鉄キレート剤である。この同じ配位子はまた、齧歯類からウランを除染する。(6)第2の類縁体である(S)−2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,5ジヒドロ−4−チアゾールカルボン酸((S)−4’−(CH3O)−DADMDFT,11,図2)は、ウランの除染において10よりも効率的であり、NIH-RAIDプログラムを通過している。これらの集合的な知見に基づいて、本発明者らは、Fe(III)およびTh(IV)と2:1の6配位錯体を形成するデスフェリチオシン類縁体の群がTh(IV)、Eu(III)およびU(VI)を動物から除染する能力を、原理を証明するものとして評価した。
【0020】
これらの予備試験の結果は、(1)非常に一般的に、鉄過負荷疾患、すなわちサラセミアを罹患する小児の処置のための経口で有効な鉄キレート剤、例えば(S)−4’−(HO)−DADFT(10、図1)に脚光を当てるために採用された体系的な構造−活性アプローチの1種(Bergeron, et al., Effects of C-4 Stereochemistry and C-4' Hydroxylation on the Iron Clearing Efficiency and Toxicity of Desferrithiocin Analogues, J Med Chem 1999;42:2432-2440; Bergeron, et al., The Desferrithiocin Pharmacophore, J Med Chem 1994;37: 141 1-1417; Bergeron, et al., Desazadesmethyldesferrithiocin Analogues as Orally Effective Iron Chelators, J Med Chem 1999;42:95-108; Bergeron, et al., Synthesis and Biological Evaluation of Naphthyldesferrithiocin Iron Chelators, J Med Chem 1996;39: 1575- 1581)を説明し、(2)デスフェリチオシン(DFT)プラットフォームが、ウラン、プルトニウム、アメリシウムおよびトリウムの除染のための新規の治療剤の開発のための良好な候補であることを示す。
【0021】
以下の文において、「除鉄効率」(ICE)(Bergeron, et al., Effects of C-4 Stereochemistry and C-4' Hydroxylation on the Iron Clearing Efficiency and Toxicity of Desferrithiocin Analogues, J Med Chem 1999;42:2432-2440)が、キレート剤により誘導された鉄排出の量の指標として用いられる。ICEは、パーセントとして表され、(配位子により誘導された鉄排出/理論上の鉄排出)×100として計算される。説明するために、1ミリモルのデフェロキサミン(desferoxamine)(DFO、14、表1)(Fe(III)と1:1の錯体を形成する6座配位キレート剤)の投与の後での理論上の鉄排出を、1ミリグラム鉄原子とする。2ミリモルのデスフェリチオシン(DFT、1、図1)(Fe(III)と2:1の錯体を形成する3座配位キレート剤)が、1ミリグラム鉄原子の理論上の排出のために必要である。
【0022】
臨床における実施において、鉄過負荷を有する人たちを処置するために用いられる実際のDFO(14)のICEは、ほんの5〜7%である(Pippard, et al., Iron Chelation Using Subcutaneous Infusions of Diethylene Triamine Penta-acetic Acid (DTPA), Scand J Haematol 1986;36:466-472; Pippard, Desferrioxamine-Induced Iron Excretion in Humans, Bailliere's Clin Haematol 1989;2:323-343)。鉄負荷を与えられたCebus apella霊長類への14の皮下投与の後でのICEは、患者において観察されたものとほとんど同一であり、5.0±2.6%である(Bergeron, et al., A Comparative Study of the Iron- Clearing Properties of Desferrithiocin Analogues with Desferrioxamine B in a Cebus Monkey Model, Blood 1993;81:2166-2173)。
【0023】
現在臨床試験中である主要なDFT類縁体(S)−4’−(HO)−DADFT(10、図1)は、経口で霊長類に鉄結合について等価の用量で投与された場合、非経口で投与されたDFOのICEのほぼ3倍(13.4±5.8%)のICEを有する(Bergeron, et al., Structure-Activity Relationships Among Desazadesferrithiocin Analogues, Adv Exp Med Biol 2002;509: 167-184)。3座配位DFT(1、図1)の間の構造−活性相関(Structure-Activity Relationships:SARs)について、DFTはFe(III)と安定な2:1の錯体を形成する3座配位のシデロフォア(siderophore)(Naegeli, et al., Metabolites of Microorganisms. Part 193. Ferrithiocin, HeIv Chim Acta 1980;63: 1400- 1406)であり、累積生成定数は4×1029M-1である(Hahn, et al., Coordination Chemistry of Microbial Iron Transport. 42. Structural and Spectroscopic Characterization of Diastereomeric Cr(III) and Co(III) Complexes of Desferriferrithiocin., J Am Chem Soc 1990;l 12:1854- 1860; Anderegg, et al., Metal Complex Formation of a New Siderophore Desferrithiocin and of Three Related Ligands, J Chem Soc, Chem Commun 1990; 1 194-1 196)。
【0024】
ドナー群として、フェノール性酸素、チアゾリン窒素、およびカルボキシルが挙げられる。DFT(1)は、経口で活性であることが示された最初の鉄キレート剤の1つであった(Wolfe, et al., A Non-Human Primate Model for the Study of Oral Iron Chelators, Br J Haematol 1989;72:456-461)。これは、胆管カニューレ挿入齧歯類モデル(ICE、5.5%)(Bergeron, et al., Evaluation of Desferrithiocin and Its Synthetic Analogues as Orally Effective Iron Chelators, J Med Chem 1991;34:2072-2078)および鉄過負荷C. apella霊長類(ICE、16%)(Bergeron, et al., A Comparative Study of the Iron-Clearing Properties of Desferrithiocin Analogues with Desferoxamine B in a Cebus Monkey Model, Blood 1993;81 :2166-2173; Bergeron, et al., A Comparative Evaluation of Iron Clearance Models, Ann N Y Acad Sci 1990;612:378-393)の両方において良好に機能した。
【0025】
残念なことに、DFT(1)は著しく腎毒性である(Bergeron, et al., A Comparative Study of the Iron-Clearing Properties of Desferrithiocin Analogues with Desferrioxamine B in a Cebus Monkey Model, Blood 1993;81 :2166-2173)。それにもかかわらず、その傑出した経口活性が、経口で活性であり安全なDFT類縁体を同定するための構造−活性研究に拍車をかけた。第1の目標は、PO投与での除鉄に適合する最少構造プラットフォーム、すなわちファーマコフォアを定義することであった(図1)。
【0026】
本発明者らの初期のアプローチは、プラットフォームを単純化することを必要とした。DFR(1)のチアゾリンメチルを削除して、(S)−4,5−ジヒドロ−2−(3−ヒドロキシ−2−ピリジニル)−4−チアゾールカルボン酸(デスメチルデスフェリチオシン(desmethyldesferrithiocin)、(S)−DMDFT、2、図1)を生成したところ、霊長類モデルにおいてICEが16%から4.8%へと3分の2低下した(Bergeron, et al., A Comparative Study of the Iron-Clearing Properties of Desferrithiocin Analogues with Desferrioxamine B in a Cebus Monkey Model, Blood 1993;81 :2166-2173)。DFTの芳香族窒素の除去により、(S)−4,5−ジヒドロ−2−(2−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−4−チアゾールカルボン酸(デスアザデスフェリチオシン(desazadesferrithiocin)、(S)−DADFT、3)が残り、化合物のICEはC. paellaにおいて13%までやや低下した(Bergeron, et al., Effects of C-4 Stereochemistry and C-4' Hydroxylation on the Iron Clearing Efficiency and Toxicity of Desferrithiocin Analogues, J Med Chem 1999;42:2432-2440)。
【0027】
(S)−DADFTからのチアゾリンメチルの抽出により(S)−4,5−ジヒドロ−2−(2−ヒドロキシフェニル)−4−チアゾールカルボン酸(デスアザデスメチルデスフェリチオシン、(S)−DADMDFT、4)が残り、効力に対する影響は殆どなく、ICEは13%に対して12%であった(Bergeron, et al., Effects of C-4 Stereochemistry and C-4' Hydroxylation on the Iron Clearing Efficiency and Toxicity of Desferrithiocin Analogues, J Med Chem 1999;42:2432-2440; Bergeron, et al., A Comparative Study of the Iron-Clearing Properties of Desferrithiocin Analogues with Desferrioxamine B in a Cebus Monkey Model, Blood 1993 ;81:2166-2173)。これらの観察から、見かけ上より親油性が高いキレート剤、例えば、2に対して、1、3、または4がより活性であることが示唆された。
【0028】
本発明者らは、ここで、この着想を確認した(Bergeron, et al., Impact of the Lipophilicity of Desferrithiocin Analogues on Iron Clearance, Medicinal Inorganic Chemistry 2005;366-383; Bergeron, et al., Partition- Variant Desferrithiocin Analogues: Organ Targeting and Increased Iron Clearance, J Med Chem 2005;48:821-831)。(S)−DADMDFT(4、図1)のフレームワークに対して、C. apellaモデルにおいて活性を失うことなくさらに構造を変化させることは殆どできなかった。ドナー中心との間の距離の改変(例えば5)は、活性の消失をもたらした(Bergeron, et al., Desazadesmethyldesferrithiocin Analogues as Orally Effective Iron Chelators, J Med Chem 1999;42:95-108)。
【0029】
チアゾリン環の修飾、すなわち、拡大(expansion)(ジヒドロチアジン)、酸化(チアゾール)、または還元(チアゾリジン)は、除鉄活性を消失させた(Bergeron, et al., The Desferrithiocin Pharmacophore, J Med Chem 1994;37: 141 1-1417; Bergeron, et al., Desazadesメチルdesferrithiocin Analogues as Orally Effective Iron Chelators, J Med Chem 1999;42:95-108)。同様に、硫黄の、酸素による置換(オキサゾリン類、例えば6)、窒素による置換(ジヒドロイミダゾール)、またはメチレンによる置換(ジヒドロピロール)は、効力の著しい消失をもたらした(Bergeron, et al., The Desferrithiocin Pharmacophore, J Med Chem 1994;37: 141 1-1417; Bergeron, et al., Desazadesメチルdesferrithiocin Analogues as Orally Effective Iron Chelators, J Med Chem 1999;42:95-108)。
【0030】
C−4での立体配置の変化もまた、ICEに対する著しい効果を有しており(Bergeron, et al., Effects of C-4 Stereochemistry and C-4' Hydroxylation on the Iron Clearing Efficiency and Toxicity of Desferrithiocin Analogues, J Med Chem 1999;42:2432-2440; Bergeron, et al., Synthesis and Biological Evaluation of Naphthyldesferrithiocin Iron Chelators, J Med Chem 1996;39: 1575- 1581; Bergeron, et al., Iron Chelation Promoted by Desazadesferrithiocin Analogues: An Enantioselective Barrier, Chirality 2003; 15:593-599)、除鉄において潜在的な立体選択的障害を示し、(S)−エナンチオマーは、霊長類において、常に(R)−エナンチオマー(例えば7)より活性である(Bergeron, et al., Iron Chelation Promoted by Desazadesferrithiocin Analogues: An Enantioselective Barrier, Chirality 2003;15:593-599; Bergeron, et al., The Origin of the Differences in (R)- and (S)-Desメチルdesferrithiocin: Iron-Clearing Properties, Ann N Y Acad Sci 1998;850:202-216.)。
【0031】
配位子の組織滞在時間および可能であればICEを改善するために設計されたベンズ融合は、効果がなかった。ナフチル類縁体類(例えば8)およびキノリン系のいずれも、機能は不十分であった(Bergeron, et al., Desazadesmethyldesferrithiocin Analogues as Orally Effective Iron Chelators, J Med Chem 1999;42:95-108; Bergeron, et al., Synthesis and Biological Evaluation of Naphthyldesferrithiocin Iron Chelators, J Med Chem 1996;39: 1575- 1581.)。最も単純なフレームワーク(4)を同定することにより、課題は毒性を低下させること1つとなった。
【0032】
DADFT類縁体3および4の両方が、依然としてかなり毒性である。DFTを用いた場合のような腎毒性よりも、むしろ重篤な胃腸管(GI)毒性が突出している(Bergeron, et al., Effects of C-4 Stereochemistry and C-4' Hydroxylation on the Iron Clearing Efficiency and Toxicity of Desferrithiocin Analogues, J Med Chem 1999;42:2432-2440; Bergeron, et al., Desazadesメチルdesferrithiocin Analogues as Orally Effective Iron Chelators, J Med Chem 1999;42:95-108; Bergeron, et al., A Comparative Study of the Iron-Clearing Properties of Desferrithiocin Analogues with Desferoxamine B in a Cebus Monkey Model, Blood 1993;81 :2166-2173.)。(S)−DADMDFT(4、図1)フレームワークを、次いで、その毒性を改善することを目的とした構造−活性研究の対象とした。この構造−活性アプローチは、親油性(すなわち分配特性、log Papp)および/または酸化還元電位を改変することにより、薬物の器官分布特性、代謝による排出(disposition)、毒性プロフィールを変えることができるという着想に基づいていた。
【0033】
これは、芳香族環置換基の付加および/またはチアゾリンメチルの存在または不在により達成された(Bergeron, et al., Desazadesmethyldesferrithiocin Analogues as Orally Effective Iron Chelators, J Med Chem 1999;42:95-108.)。最終的に、本発明者らは、(S)−2(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,5−ジヒドロ−4−チアゾールカルボン酸((S)−4’−(HO)−DADMDFT、9、図1)および(S)−4’(HO)−DADFT(10)の系におけるような電子供与性基の付加が、霊長類モデルにおける除鉄と適合することを見出した(Bergeron, et al., Effects of C-4 Stereochemistry and C-4' Hydroxylation on the Iron Clearing Efficiency and Toxicity of Desferrithiocin Analogues, J Med Chem 1999;42:2432-2440; Bergeron, et al., Desazadesmethyldesferrithiocin Analogues as Orally Effective Iron Chelators, J Med Chem 1999;42:95-108; Bergeron, et al., Methoxylation of Desazadesferrithiocin Analogues: Enhanced Iron Clearing Efficiency, J Med Chem 2003;46: 1470-1477.)。
【0034】
この水酸化は、結果として生じる誘導体の毒性を著しく低下させる。例えば、3または4により処置されたラットは、計画した10日の投与レジメンの第5日までに死亡した(Bergeron, et al., A Comparative Study of the Iron-Clearing Properties of Desferrithiocin Analogues with Desferrioxamine B in a Cebus Monkey Model, Blood 1993;81 :2166-2173)が、(S)−4’−(HO)−DADMDFT(9)および(S)−4’−(HO)−DADFT(10)を同じ用量で投与されたラットは、はっきりした毒性を示さなかった(Bergeron, et al., Effects of C-4 Stereochemistry and C-4' Hydroxylation on the Iron Clearing Efficiency and Toxicity of Desfe[pi][iota]thiocin Analogues, J Med Chem 1999;42:2432-2440.)。実際に、(S)−4’−(HO)−DADFT(10)は現在、臨床試験における主要な化合物である。環の水酸化は、親(parent)薬物のICEを低下させ得、例えば、9についてのICEは(POで150μmol/kgの用量で投与された場合の、4についての12.4%に対して)5.3%であるが、(S)DADFT(3)および(S)−4’−(HO)−DADFT(10)の場合、ICEはほぼ同一であった。
【0035】
要約すると、本発明者らは、Fe(III)と2:1の6配位錯体を形成する天然生成物鉄キレート剤であるDFTを首尾よく取得し(これは、鉄を取り除くことにおいて効果的でありつつも、一方で著しく腎毒性であった)、構造−活性研究を通して、同等に活性であり、非毒性であり、鉄過負荷疾患、すなわちサラセミアの処置のために経口で有効な類縁体を組み立てた(現在臨床試験中である)。多数の6配位構造の配位子が動物からTh(IV)、Pu(IV)、Am(III)およびU(VI)を除染することが示されていることを喚起されたい(Durbin, et al., In Vivo Chelation of Am(IlI), Pu(IV), Np(V), and U(VI) in Mice by TREN-(Me-3,2-HOPO), Radiat Prot Dosimetry 1994;53:305-309; Gorden, et al., Rational design of sequestering agents for plutonium and other actinides, Chem Rev 2003;103:4207-4282; Durbin, et al., Chelating agents for uranium(VI): 2. Efficacy and toxicity of tetradentate catecholate and hydroxypyridinonate ligands in mice, Health Phys 2000;78:51 1 -521 ; Guilmette, et al., Competitive binding of Pu and Am with bone mineral and novel chelating agents, Radiat Prot Dosimetry 2003; 105:527-534.)。
【0036】
DFT類縁体の組織分布。鉄過負荷疾患の処置のためのキレート剤の設計戦略において重要な主要器官は、肝臓、膵臓および心臓であるが、一方、ウラン、プルトニウム、アメリシウムおよびトリウムの除染についての治療標的は、腎臓、肝臓、肺および骨である(Gorden, et al., Rational design of sequestering agents for plutonium and other actinides, Chem Rev 2003; 103:4207-4282; Luciani, et al., Americium in the beagle dog: biokinetic and dosimetric model, Health Phys 2006;90:459-470.)。DFT類縁体を用いた構造−活性研究において、それらが著しく異なる器官分布および組織滞在時間を有し得、これはしばしばそれらの親油性、log Pappに関係していることが明らかとなった。
【0037】
図2は、2つの異なるファミリーの配位子の腎臓および肝臓組織における排出を示す(Bergeron, et al., (S)-4,5-dihydro-2-(2-hydroxy-4-hydroxyphenyl)-4-methyl-4-thiazolecarboxylic acid Polyethers: A Solution to Nephrotoxicity, J Med Chem 2006;49:2772-2783.])。(S)−4’(CH3O)−DADMDFT(11)および対応する(S)−4,5−ジヒドロ2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)4−メチル−4−チアゾールカルボン酸((S)−4’−(CH3O)−DADFT、12)は、いずれも代謝的にO−脱メチル化されて、それぞれ(S)−4’−(HO)−DADMDFT(9)および(S)−4’−(HO)−DADFT(10)となることに注目されたい。両方の代謝物もまた、活性な鉄キレート剤である。(S)−4,5−ジヒドロ−2(3,4−ジメトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−4−チアゾールカルボン酸((S)−3’,4’−(CH3O)−DADMDFT、19、表2)および対応する(S)−4,5−ジヒドロ−2−(3,4−ジメトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−4−チアゾールカルボン酸((S)−3’,4’−(CH3O)−DADFT、21、表2)の腎臓および肝臓での分布もまた示されている。排出(disposition)における同様の差異は、膵臓および心臓において観察された。これらの配位子は、組織分布について評価された多数の類縁体の非常に限定された例を表す。
【0038】
肺組織へのキレート剤のアクセス。吸入は、潜在的なアクチニド汚染の主要経路の1つであるので、この提案を目的とした予備研究において、2種の異なるDFT類縁体、(S)−4’−(HO)−DADMDFT(9、図1)および(S)−3’,4’−(CH3O)−DADMDFT(19、表2)の肺組織における蓄積を調査した。齧歯類に薬物をSCで300μmol/kgで与えた。後者のキレート剤は、前者よりはるかにより親油性である。より親油性のキレート剤(19)は、投薬の0.5h後で290±66nmol/g湿重量の濃度を達成した。より親油性でない配位子(9)のレベルははるかにより低く、投薬の0.5h後で80±9nmol/gであった。これは、器官のターゲティングが達成し得るという着想と一致し(Bergeron, et al., Impact of the Lipophilicity of Desferrithiocin Analogues on Iron Clearance, Medicinal Inorganic Chemistry 2005;366- 383)、先の研究を裏付け、さらに本発明の成功の兆しに寄与する。
【0039】
デスフェリチオシン類縁体により誘導されるウランの排出。先のキレート剤により誘導される鉄排出のデータと結果を比較するために、ウラン排出研究を、胆管カニューレラットモデルにおいて行った。動物に、酢酸ウラニル二水和物をSCで5mg/kgの用量(ウランの実際の用量は2.8mg/kgである)で与えた。キレート剤をIP、SCまたはPOで、表1に示すウラン暴露に相対的な時点で与えた。胆汁および尿サンプルを、投与後24時間にわたり採取した。選択された動物から腎臓を除去し、組織のウラン濃度を測定した。各実験群において少なくとも3個体の動物を用いた。2つの別々の対照研究(酢酸ウラニル/キレート剤なし)を、ここで、全部で14個体の対照動物について組み合わせた。全てのウラン濃度をICPMSを用いて測定した。データを、排出されたウランの全量(尿+胆汁)として報告する。排出の様式(尿/胆汁)もまた示す。さらに、投与された用量のうち排出されたウランのパーセンテージ、および対照に対してキレート剤により誘導されたウラン排出もまた示す。
【0040】
4種の陽性対照を評価した:ウランに結合することが示されている、3ナトリウムカルシウム塩として与えられたDTPA(13、表1)、DFO(14)、N,N’−ビス(2ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン−N,N’−二酢酸、1ナトリウム塩(NaHBED、15)、およびヒドロキシピリドンCP94(16)(Pashalidis, et al., Effective complex formation in the interaction of 1,2-dimethy1-3- hydroxypyrid-4-one (Deferiprone or Ll) with uranium(VI), Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 1999;242: 181-184.)。
【0041】
対照ラットにおける24時間後の排出された全金属は、投与された用量の10%であった。DTPA、13を、IPまたはPOで300μmol/kgでウランの直後に与えた場合、排出は、それぞれ投与された用量の17%および8%であった(p>0.05)。しかし、薬物をIPで600μmol/kgの用量で金属の直後に与えた場合、ウラン排出は著しく、20%であった(p<0.005)。このことは、同様の動物モデルを用いた先に公開されたデータと一致する(Domingo, et al., Comparative effects of the chelators sodium 4,5-dihydroxybenzene-l ,3-disulfonate (Tiron) and diethylenetriaminepentaacetic acid (DTPA) on acute uranium nephrotoxicity in rats, Toxicology 1997; 1 18:49-59)。IPで酢酸ウラニルの直後に与えられたDFO(14)およびCP94(16)は、効果がなかった。NaHBED(15)は、クリアランスを僅かに改善した(表1)。
【0042】
DFT類縁体を用いた場合の状況は非常に異なる。(S)−4’−(CH3O)−DADFT(12)をIPで300μmol/kgでウランの直後に与えた場合、金属排出は、20%(p<0.003)まで増大したが、金属の0.5時間後に与えた場合、対照の誤差内まで低下した。(S)−4,5−ジヒドロ−5,5−ジメチル−2−(2−ヒドロキシフェニル)−4−チアゾールカルボン酸((S)−5,5−(CH3O)−DADMDFT、17)をIPでウランの直後に与えた場合、排出は26%(p<0.002)であったが、金属の0.5時間後に投与した場合、やはり有意ではなかった。(S)−4’−(HO)−DADFT(10)は、IPで金属の直後に与えた場合、ウラン排出を19%(p<0.05)まで増大したが、一方、対応するポリエーテルである(S)−4,5−ジヒドロ−2−[2−ヒドロキシ−4−(3,6,9−トリオキサデシルオキシ)フェニル]−4メチル−4−チアゾールカルボン酸((S)−4’−(HO)−DADFT−PE(18))は、IPで金属の直後に与えた場合、ウラン排出を22%(p<0.001、表1)まで増大する。
【0043】
(S)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,5−ジヒドロ−4−チアゾリンカルボキシルのシリーズにおいて最も有望な類縁体は、メトキシ類縁体である(S)−4’−(CH3O)−DADMDFT(11)である。IPで300μmol/kgで酢酸ウラニルの0.5時間前または酢酸ウラニルの直後に与えた場合、ほぼ30%の金属が除去された(表1)。これはまた、薬物をIPで金属の0.5または2時間後に与えた場合においても真実であった。薬物は、ウランの4時間後に与えた場合でも、いくらかの効力を保持し、16%の金属が排出された(p<0.006)。キレート剤をSCでウランの直後に与えた場合、投与された金属の40%が除去された。増大した排出は、おそらく、配位子の吸収がより遅いことに関連する。
【0044】
薬物を経口で与えられた齧歯類からのデータは、さらにより有望である(表1)。キレート剤をPOで300μmol/kgで金属の直後に投与した場合、除去率は23%(p<0.001)であり、非常に良好な経口でのバイオアベイラビリティを示した。金属の2時間後で、除去率はなお著しく、18%(p<0.005)であった。キレート剤の用量を600μmol/kgまで増大させ、POでウランの0.5または1時間後に与えた場合、除去率は、それぞれ25%(p<0.001)および26%(p<0.006)であった(表1)。最も顕著なデータは、腎臓からのウランの除染に関するものである(図3)。DTPAをIPまたはPOで300μmol/kgの用量で金属の直後に与えた場合、対照と比較して腎臓のウランは減少しなかった。しかし、(S)−4’−(CH3O)−DADMDFT(11)は、経口で300μmol/kgの用量で金属の直後に与えた場合、腎臓のウランを37%(p<0.005)減少させる。
【0045】
薬物をPOで300μmol/kgの用量でウランの2時間後に与えると、少し(16%)の減少がある。しかし、11をPOで600μmol/kgの用量で金属の0.5時間後に与えると、腎臓のウラン含有量は76%減少する(p<0.001)。同じ用量でウラン暴露の1時間後に与えても、減少はなお有意であり、42%(p<0.006)である。配位子の全てのセットにおいて、最も親油性が高いキレート剤は、常に最も毒性である。最近、親油性/毒性の問題のバランスをとりつつ除鉄効率が維持された配位子を設計することが可能であることが示された。(S)−4’−(CH3O)−DADFT(12、表1)を用いた初期の研究(Bergeron, et al., Partition- Van ant Desferrithiocin Analogues: Organ Targeting and Increased Iron Clearance, J Med Chem 2005;48:821-831)は、このメチルエーテルが齧歯類および霊長類の両方において優れた除鉄効率を有する配位子であることを示した。しかし、これは臨床的検討には毒性が高すぎた。この知見に基づき、12より親油性が低く水溶性が高い配位子、ポリエーテル類縁体である(S)−4’−(HO)−DADFT−PE(18、表1)を組み立てた。該ポリエーテルが齧歯類および霊長類の両方において非常に効率的な鉄キレート剤であることを示した。
【0046】
(S)−4’−(HO)−DADFT(10、表1)の用量を限定する毒性は、腎毒性である可能性がある。齧歯類における18と10との比較により、ポリエーテルがより耐容性が高く、肝臓においてより高い濃度に、腎臓において有意により低い濃度に達することが明らかとなった。より低い腎臓の薬物レベルは、18で処置された齧歯類に対して10を与えられた齧歯類の腎臓において見られる構造的変化の顕著な相違と合致する(Bergeron, et al., (S)-4,5-Ddihydro-2-(2-hydroxy-4-hydroxyphenyl)-4-methyl-4-thiazolecarboxilic Acid Polyethers: A Solution to Nephrotoxicity, J Med Chem 2006;49:2772-2783.)。この同じポリエーテルはまた、ウランの除去において活性である(表1)。
【0047】
鉄対アクチニドの除染。デスフェリチオシン類の全てが動物から鉄を除去すると期待し得る。これは、2つの疑問を導き出す。(1)鉄対アクチニドについての配位子の競合は問題となるか。(2)かかるキレート剤へのヒトの長期暴露は、有害作用を引き起こすのに十分なほど鉄を激減させるか。
【0048】
鉄過負荷の霊長類にSCまたはPOで配位子を与えた全ての先の研究において、ICEは25%未満または25%と同等であった。したがって、キレート剤の75%が、アクチニド除染のために利用可能である。さらに、ウランの研究は、金属競合の点は問題ではないことを、明確に示す。キレート剤への長期暴露は、必要な場合は、除鉄の問題を引き起こし得るが、鉄は臨床的に容易に補充される。
【0049】
予備試験データの概説
1.広範なDFT類縁体の集合のための合成化学は整っており、工業的スケールアップに良好に役立つ(Bergeron, et al., Effects of C-4 Stereochemistry and C-4' Hydroxylation on the Iron Clearing Efficiency and Toxicity of Desferrithiocin Analogues, J Med Chem 1999;42:2432-2440; Bergeron, et al., Desazadesmethyldesferrithiocin Analogues as Orally Effective Iron Chelators, J Med Chem 1999;42:95-108; Bergeron, et al., Synthesis and Biological Evaluation of Naphthyldesferrithiocin Iron Chelators, J Med Chem 1996;39: 1575- 1581 ; Bergeron, et al., Partition-Variant Desferrithiocin Analogues: Organ Targeting and Increased Iron Clearance, J Med Chem 2005;48:821-831; Bergeron, et al., Methoxylation of Desazadesferrithiocin Analogues: Enhanced Iron Clearing Efficiency, J Med Chem 2003;46: 1470-1477; Bergeron, et al., (S)-4,5-Ddihydro-2-(2-hydroxy-4-hydroxyphenyl)-4-methyl-4-thiazolecarboxilic Acid Polyethers: A Solution to Nephrotoxicity, J Med Chem 2006;49:2772-2783; Bergeron, et al., Desferrithiocin Analogue- Based Hexacoordinate Iron(III) Chelators, J Med Chem 2003;46: 16-24.)。
【0050】
2.構造−活性研究により、毒性および組織分布を制御するDFT類縁体の生理化学的特性が定義されている(Bergeron, et al., Partition- Variant Desferrithiocin Analogues: Organ Targeting and Increased Iron Clearance, J Med Chem 2005;48:821-831; Bergeron, et al., (S)-4,5-Ddihydro-2-(2-hydroxy-4-hydroxyphenyl)-4-methyl-4-thiazolecarboxilic Acid Polyethers: A Solution to Nephrotoxicity, J Med Chem 2006;49:2772-2783.)。
【0051】
3.類縁体の組織分布および薬物動態を追跡するために、分析的方法が整っている(Bergeron, et al., (S)-4,5-Ddihydro-2-(2-hydroxy-4-hydroxyphenyl)-4-methyl-4-thiazolecarboxilic Acid Polyethers: A Solution to Nephrotoxicity, J Med Chem 2006;49:2772-2783; Bergeron, et al., Pharmacokinetics of Orally Administered Desferrithiocin Analogs in Cebus apella Primates, Drug Metab Dispos 1999;27: 1496-1498.)。
【0052】
4.ICPMSシステムが整っており、適切なアッセイ条件が算定されている。
5.研究された多数のDFT類縁体はまた、齧歯類モデルにおいてウランを除去する。これらの類縁体の1つである(S)−4’−(HO)−DADFT(10、図1および表1)(Bergeron, et al., Effects of C-4 Stereochemistry and C-4' Hydroxylation on the Iron Clearing Efficiency and Toxicity of Desferrithiocin Analogues, J Med Chem 1999;42:2432-2440)は、現在ヒトで鉄過負荷疾患の処置のために試験されている、経口で活性な鉄キレート剤である(Donovan, et al., Preclinical and clinical development of deferitrin, a novel, orally available iron chelator, Ann N Y Acad Sci 2005; 1054:492- 494.)。
【0053】
6.第2のキレート剤、(S)−4’−(CH3O)−DADMDFT(11、図2および表1)は、IP、SC、またはPOで投与される除染剤として良好に作用し、単回の経口での暴露の後で、著しい量の金属を腎臓から除去する。
7.この同じ配位子(11)は、現在、NIHロードマップ・プログラム(Roadmap Program)に供されており、完全なGLP毒性および薬物動態プロフィールが入手可能である。有害効果が観察されないレベル(no-observed-adverse-effect-level)は、十分に、予測されるヒト投与の要件の範囲内である。
【0054】
8.キレート剤の設計、合成および試験の長い歴史。齧歯類および霊長類モデルは全て整っている(Bergeron, et al., Iron Chelators and Therapeutic Uses, Burger's Medicinal Chemistry 2003;III:479-561; Bergeron, et al., Desazadesmethyldesferrithiocin Analogues as Orally Effective Iron Chelators, J Med Chem 1999;42:95-108; Bergeron, et al., A Comparative Study of the Iron-Clearing Properties of Desferrithiocin Analogues with Desferrioxamine B in a Cebus Monkey Model, Blood 1993;81 :2166-2173; Bergeron, et al., Metabolism and Pharmacokinetics of N',N<I4>-Diethylhomospermine, Drug Metab Dispos 1996;24:334-343; Bergeron, et al., A Comparison of Iron Chelator Efficacy In Iron-Overloaded Beagle Dogs and Monkeys (Cebus apella), Comp Med 2004;54:664-672.)。
【0055】
本発明は、U(VI)、Th(IV)およびEu(III)ならびに他のアクチニド類の除染のためのデスフェリチオシン類縁体の設計、評価および開発に焦点を当てる。配位子基礎セット(表2)を、初期のラットおよび霊長類における除鉄の研究に基づいて選択した。キレート剤の2つのファミリー、システイン由来化合物9、11、19、20およびアルファ−メチルシステイン由来配位子10、12、18、21が存在する。意図しているのは、動物モデルにおいて、アクチニド除去配位子の設計を可能にする構造−活性の関係を確立することである。これらの2つのファミリーは、異なる生理化学的特性および薬理学的プロファイルを有する。アルファ−メチル化配位子は、より親油性が高い。例えば、(S)−4’−(HO)−DADMDFT(9)は、log Papp=−1.33であるのに対して、(S)−4’−(HO)−DADFT(10)は、log Papp=−1.05である。より親油性が高いメチルシステイン系は、通常、より親油性が低いシステイン系より高い除鉄効率および異なる組織分布パターンを有する。
【0056】
表2の配位子の殆どは、齧歯類および霊長類におけるそれらの除鉄効率(9〜12、18、19)、log Papp(親油性)(9〜12、18、19、21)について、いくつかのケースにおいては、IP投与後(10〜12、18)またはSCおよびPO投与後(11)のウラン除染剤として評価されている。
【0057】
器官/組織分布。配位子の全てが肺および骨(大腿骨)への分布について評価される(第II段階、図4)。オスのSprague-Dawleyラットに、単一の300μmol/kgの用量の目的のキレート剤をPOおよびSCで与える。動物(n=3/経路/時点)を、投薬の0.5、1、2、4および8時間後にCOガスに対する暴露により安楽死させる。血液を収集し、配位子の薬物動態の決定を可能にする。肺および骨を、それらのキレート剤含有量9〜12、18、21について評価する(Bergeron, et al., (S)-4,5-Ddihydro-2-(2-hydroxy-4-hydroxyphenyl)-4-methyl-4-thiazolecarboxilic Acid Polyethers: A Solution to Nephrotoxicity, J Med Chem 2006;49:2772-2783; Bergeron, et al., Pharmacokinetics of Orally Administered Desferrithiocin Analogs in Cebus apella Primates, Drug Metab Dispos 1999;27: 1496-1498.)。
【0058】
齧歯類におけるU(VI)、Th(IV)およびEu(III)の除染。4種の配位子、10〜12、18を、IP注射後にウランをキレートする能力について、齧歯類モデルにおいて評価した。IP投与は戦場または他の集団惨事状況においては現実的ではないので、キレート剤は、齧歯類において、POまたはSC投与の9〜12、18〜21を用いて評価する。経口で活性のアクチニドキレート剤が選択される治療剤となるであろうが、かかる配位子のSCでの金属除去効率もまた、評価されるべきである。現在までの鉄キレート剤およびウラン除染剤、例えば11(表1)についての経験から、経口での活性が良好である場合であっても、SC投与が実質的により良好な結果をもたらし得ることが示された。集団被爆状況において、第1応答者(first responder)は、既にICE(9〜12、18、19)およびlog Pappデータ(9〜12、18、19、21)が存在する化合物によるU(VI)除染研究を用いて、PO投与を開始し、後でSC投与を継続してもよい。Th(IV)およびEu(III)の除染は、胆管カニューレ齧歯類モデルにおいて、同じ開始セット(9〜12、18〜21)を用いて開始する。実験的ロードマップは、以下に説明し、図4においてまとめたとおりである。
【0059】
表2のDFT類縁体の全8種を、胆管カニューレラットモデルにおいてU(VI)(酢酸ウラニル2水和物)、Th(IV)(4塩化トリウム)およびEu(III)(3塩化ユーロピウム)を除去する能力について評価した(第III段階)。ラットに、金属のうち1種の単回のSC注射(左肩)を行う。Th(IV)およびEu(III)の用量は先に用いられたウラン金属2.8mg/kgと等価であり、例えば2.7mg/kgのTh(IV)、および1.8mg/kgのEu(III)である。キレート剤を、動物にPOまたはSC(右臀部)で300μmol/kgで、金属の直後に与える。胆汁および尿サンプルを24時間にわたり収集する。胆汁、尿、腎臓、肝臓、肺および骨(大腿骨)のアクチニド含有量を決定する。有効であるとみなされるためには、キレート剤は、金属のみで処置されたラットにより排出された金属の少なくとも2倍を除去しなくてはならない。DTPAは、陽性対照として役立つ。各金属毎に4種の最も活性が高い除染剤を、さらなる評価に供する(第IV段階)。
【0060】
第IV段階の目的は、第III段階で有効であるとみなされた薬物が、金属投与とキレート剤投与との間の時間を増大した場合に除染特性を保持するか否かを決定することである。各金属毎の4種の最も有効な配位子を、POまたはSCで、胆管カニューレラットに、300μmol/kgで、金属の1、2または4時間後に与える。胆汁および尿サンプルを、24時間にわたり収集する。胆汁、尿、腎臓、肝臓、肺および骨(大腿骨)のアクチニド含有量を決定する。各ケースにおいて、金属のみで処置されたラットにより排出される金属の少なくとも2倍の除染次第で、より長い時間間隔へ進行する。再度、DTPAが陽性対照として役立つ。金属暴露後、最も長時間なお活性を有する配位子を、最も有効なキレート剤とみなす。各金属毎に2種の最も有効なキレート剤を、4日間の投与レジメン下で評価する(第V段階)。
【0061】
第V段階の目的は、継続したキレート剤の投与が金属排出の増大をもたらすか否かを評価することである。実験を、胆管にカニューレ挿入を受けたことがないラットにおいて行う。動物を代謝ケージ内で飼育する。尿および糞便を24時間間隔で収集する。アクチニドをSCで与える。第IV段階からの各金属毎の2種の最も有効な配位子を、ラットに、POまたはSCで1日1回4日間与える。配位子の最初の投与は、金属の直後に行うか、またはその4時間後もしくは12時間後まで行わない。キレート剤の追加投与を、1日1回、さらに3日間行う。最終投与の1日後に動物を安楽死させ、尿、糞便、腎臓、肝臓、肺および骨の金属含有量を決定する。各ケースにおいて、金属のみで処置されたラットにより排出される金属の少なくとも2倍の除染に依存して、より長い時間間隔、例えば4時間または12時間への進行を行う。DTPAが陽性対照として役立つ。これらの動物からの腎臓および肝臓のサンプルについて病理組織学的検査を行い、アクチニド由来の腎毒性または肝毒性が防止されているか決定する。
【0062】
各金属毎の最も有効なキレート剤を、75μmol/kgおよび150μmol/kgの配位子のPOおよびSCでの、胆管カニューレ齧歯類における用量応答研究に供する(第VI段階)。300μmol/kgでのデータは、既に入手可能である。
【0063】
配位子の選択は、配位子が全体的な金属負荷を減少させる効率、および配位子がどのようにして金属を腎臓、肝臓、肺および骨から除去するかに基づいて行う。動物に、金属暴露の直後にキレート剤を与える。齧歯類における毒性試験(第VI段階)を通じて、各金属毎の最良のキレート剤を選ぶ。除鉄薬物の開発のように、30日間の毒性試験を行う(第VI段階)。薬物を、1日1回POまたはSCで、金属のみで処置された齧歯類により排出される金属の少なくとも2倍を除去するために必要とされる容量の1倍、3倍および5倍の用量で与える。動物を最終投与の24時間後に安楽死させる。慣用的な病理組織学的検査を行う。
【0064】
3種の最良のキレート剤の薬物動態を、先に記載されるように(Bergeron, et al., The Origin of the Differences in (R)- and (S)-Desmethyldesferrithiocin: Iron-Clearing Properties, Ann N Y Acad Sci 1998;850:202-216; Bergeron, et al., Pharmacokinetics of Orally Administered Desferrithiocin Analogs in Cebus apella Primates, Drug Metab Dispos 1999;27:1496-1498)、オスのCebus apellaサルにおいて決定する(第VI段階)。
【0065】
気管内または静脈内投与の後でのユーロピウム分布のMRI研究。これらの研究は、候補DFT除染剤のインビボでの有効性を評価するための新規の方法を開発し、応用する。ユーロピウムをアメリシウムのためのモデルとして用い、MRI研究により、気管内または静脈内投与の後のユーロピウムの全身分布を決定し、身体分布および除去に対する候補DFTキレート剤の経口投与の効果を連続的に追跡する(第VII段階)。アメリシウムを用いて作業する場合の有害性、分析の制限およびコストのために、代理の金属を用いる。ユーロピウムは、除染剤の開発において、アメリシウムのための優れたモデルであることが既に示されている(Gorden, et al., Rational design of sequestering agents for plutonium and other actinides, Chem Rev 2003; 103:4207-4282.)。
【0066】
Eu(III)は、MR造影(contrast)において用いるために、T2*研究における常磁性の剤として(Fossheim, et al., Lanthanide-based susceptibility contrast agents: assessment of the magnetic properties, Magn Reson Med 1996;35:201- 206)および磁化移動技術を用いる場合の化学交換飽和移動(chemical exchange saturation transfer:CEST)剤として(Trokowski, et al., Cyclen-based phenylboronate ligands and their Eu3+ complexes for sensing glucose by MRI, Bioconjug Chem 2004; 15: 1431-1440; Woessner, et al., Numerical solution of the Bloch equations provides insights into the optimum design of PARACEST agents for MRI, Magn Reson Med 2005;53:790-799; Zhang, et al., A paramagnetic CEST agent for imaging glucose by MRI, J Am Chem Soc 2003; 125: 15288-15289; Zhang, et al., A novel europium(III)-based MRI contrast agent, J Am Chem Soc 2001 ;123: 1517-1518.)、試験されている。
【0067】
ランタニドに基づく造影剤は、通常、ランタニドの毒性を回避するためにキレートとして投与されるので、溶液中で塩化物(EuCl)として投与されたEu(III)の検出のための至適MR技術は、まだ確立されていない(Supkowski, et al., Displacement of Inner-Sphere Water Molecules from Eu(3+) Analogues of Gd(3+) MRI Contrast Agents by Carbonate and Phosphate Anions: Dissociation Constants from Luminescence Data in the Rapid-Exchange Limit, Inorg Chem 1999;38:5616-5619.)。
【0068】
Eu(III)の検出のためのMRプロトコルを至適化するために一連の予備研究を行い、結果を、上記のとおりICPMSを用いてEu組織濃度の測定により実証する。MR研究は、コロンビア大学のハッチ磁気共鳴研究センター(Hatch Magnetic Resonance Research Center)で行う。9.4 Tの垂直ボア(vertical-bore)磁石を備えたBruker AVANCE 400全身(whole body)磁気共鳴システム、MiniAHS/RFOミニイメージング・インビボプローブ、0.75G/cm/A活性シールド勾配(actively shielded gradients)、セキュリティボックス、BioTrigシステムを備えた交換可能な共鳴装置/表面コイルのための動物ハンドリングシステムを用いて、ラットの高解像度三次元画像を得る。器官の容積および重量の推定を、先に記載したように行い(Tang, et al., High-resolution magnetic resonance imaging tracks changes in organ and tissue mass in obese and aging rats, Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol 2002;282:R890- 899)、Eu濃度の推定を、パーボクセルベース(per voxel basis)で行う。
【0069】
ラットを、イメージングの前に一晩絶食させる。無菌の0.9% NaClに溶解したEuC13(0.4mL)を、単一の気管内吸入または尾静脈を介した静脈内投与で与える。研究の最後に、齧歯類を安楽死させ、ICPMSにより器官での濃度の推定値を評価した。この研究のために選択されたデスフェリチオシン類縁体は、提案されたプロトコル(図4)のステージVIを完了する。この時点において、ユーロピウム除去効率、用量応答、器官分布、薬物動態および30日間の毒性プロフィールが完了した。さらに、配位子が腎臓、肝臓、肺、および骨から金属を除去する効率が、既に決定された。MRI評価のための30日間の投与スケジュールを、このデータに基づいて予測する。研究により、配位子がどのようにして多様な器官系から金属を動かして除去するかについての動態図、および他の薬力学パラメーターとの比較情報が提供される。
【0070】
霊長類におけるU(VI)、Th(IV)およびEu(III)の除染。霊長類の研究を、Eu(III)から始める(第VII段階)。プロトコルは、霊長類における除鉄研究に準じ(Bergeron, et al., A Comparison of Iron Chelator Efficacy In Iron-Overloaded Beagle Dogs and Monkeys (Cebus apella), Comp Med 2004;54:664-672)、少々の改変を伴う。5個体の霊長類に、Eu(III)をSCで0.5mg/kgの用量で与える。3個体の動物に、Eu(III)を用いた齧歯類の研究の結果に基づいて、キレート剤を与える。2個体の追加のサルを、Eu(III)の対照として用いる。第1の実験において、除染剤をPOで300μmol/kgの用量で、Eu(III)の1時間後に投与する。尿および糞便を3日間にわたり収集し、それらの金属含有量について評価する。動物を、14日間休息させ、実験を繰り返す。今回は、キレート剤を、金属暴露の2時間後まで与えなかった。この周期を、次に、Eu(III)暴露の4時間後に繰り返す。
【0071】
14日後、最終実験において、同じ5個体の動物に、U(VI)およびTh(IV)を、SCで、各々0.5mg/kgの用量で与える。金属暴露の1時間後、サルのうち3個体に、キレート剤をPOで300μmol/kgの用量で与える。2個体の動物は、U(VI)およびTh(IV)の対照として用いる。再び、配位子の選択は、齧歯類での研究に基づく。U(VI)およびTh(IV)の両方を最も効果的に除染する配位子を選択する。投薬の後2日間にわたり尿および糞便を収集する。この場合、霊長類の代謝ケージは毎日清掃しなければならないので、より長期の収集時間は実行可能でない。これは、放射能の安全性の問題により、この実験においてあまりに面倒となるであろう。この実験の後で、全ての5個体の動物を麻酔し、腎臓、肝臓、肺および骨において、U(Vl)、Th(IV)およびEu(III)のレベルをICPMSを用いて測定する。本発明者らはまた、これらの同じ組織におけるキレート剤のレベルを測定する。
【0072】
本発明は、放射性核種の除染のためのDFTベースのキレート剤を提供する。本発明者らの過去の系統的な構造−活性研究により、DFTの優れた鉄キレート活性を保持しつつ有害効果を取り除いた類縁体および誘導体の設計および合成が可能となった。本発明の元となる仮説は、同様のアプローチを、アクチニドを効果的に除染する配位子の設計にDFTプラットフォームを利用するために適用することができる。過去の経験、齧歯類および霊長類における鉄キレートの広範な研究の結果、ならびに入手可能な科学文献の広範な再検討に基づいて、表2に示した配位子基礎セットは、U(VI)、Th(IV)(Pu(IV)の代わり)およびEu(III)(Am(III)の代わり)の除染のための現在の優良で利用可能な候補を提供する。
【0073】
図4に模式的に示すとおり、齧歯類における体系的調査(用量−応答、薬理学、毒物学および組織薬理学的研究を含む)により、配位子基礎セットの中から、U(VI)、Th(IV)およびEu(III)の除染のための最も効果的でかつ最も毒性の低いDFTキレート剤が同定される。本発明者らはまた、候補キレート剤の齧歯類におけるEu(III)の分布および除去の作用を特徴付けるMRIを用いた革新的な新たなアプローチを試験する。最終的に、最も有望な候補キレート剤を、ヒトにおける効力の最良の入手可能な証拠を提供するために、霊長類モデルにおいて評価する。
【0074】
この集中的アプローチは、現在利用可能な処置(U(VI)についてはNaHC03;Th(IV)またはAm(III)についてはCa−またはZn−DPTA)に対して、高い割合でのアクチニド除去、集団惨事における使用の容易性を高める経口活性、より広い効力枠(efficacy window)(すなわち、放射活性汚染に対する製品投与のタイミングおよび処置の期間)に関して実質的な利点を有するDFT類縁体を同定する、非常に高い可能性を有する。(S)−4’−(HO)−DADFT、10、は、第II段階臨床試験において、鉄過負荷の処置のための経口活性キレート剤として、齧歯類においてU(VI)排出を有意に増強した(表1)。
【0075】
さらにより有望であるのは、(S)−4’−(CH3O)−DADMDFT、11、であり、これは、NIH−RAIDプログラムにおける薬理学および毒物学研究を成功裏に完了しており、経口でU(VI)暴露の1時間後に与えた場合であってすら、腎臓U(VI)の有意かつ実質的な減少をもたらす。したがって、本発明は、好適な主要DFTキレート剤を同定し、さらなる製品開発に入り、動物における効力およびヒトにおける安全性を将来的に評価するための研究の設計のための重要なデータを提供する。
【0076】
ラット:オスのSprague Dawleyラット(200〜250g)を、キレート剤の器官/組織分布決定のために用いる。平均4〜5月齢(400g)のさらなるオスのSprague Dawleyラットを、胆管カニューレ法、ならびに複数用量レジメンの間の尿および糞便サンプルの収集のために用いる。
同じ系統の少し小さい(250〜300g)のオスのラットを、慢性(30日間)毒性研究において用いる。
【0077】
器官/組織分布。オスのSprague Dawleyラット(200〜225g)に、単一の300μmol/kgの用量の目的のキレート剤を経口または非経口(SC)で与える。動物(n=3/経路/時点)を、薬物のt=0.5、1、2、4および8時間後に、CO2ガスへの暴露により安楽死させる。動物の腎臓、肝臓、肺および骨(大腿骨)を除去し、そのキレート剤(元(parent)および代謝物)含有量について評価する。
【0078】
胆管カニューレ:一晩の絶食の後、動物(1群あたりn=5)を、ケタミン/キシラジン(夫々40〜80mg/kgおよび8〜10mg/kgの用量でIPで投与される)を用いて麻酔する。22ゲージのポリエチレン管を用いて胆管にカニューレを挿入する。2−0のガット(gut)(筋)および外科用ステープル(皮膚)を用いて切開を閉じる。プロトコルのこの部分において用いられることとなる全てのラットに、鎮痛剤:ブプレノルフィンを0.01〜0.05mg/kgで、SCで8〜12時間毎に供与する。鎮痛剤の最初の用量を、動物がまだ全身麻酔から回復している間に投与する。手術が完了したら、ラットに単一用量のU(VI)、Th(IV)またはEu(III)を投与する。金属をSCで2.8mg/kgのU(VI)と等価の用量で投与する。その直後に、または金属の1、2または4時間後に、除染剤をPOまたはSC(300μmol/kg)で投与する。胆汁サンプルを3時間間隔で24時間にわたり収集する。尿を24時間において採取する。実験の最後に動物を安楽死させる。
【0079】
ラット:尿および糞便の金属クリアランス(非外科的):新規化合物の最初のスクリーニングは、ラットの胆管にカニューレを挿入し、試験キレート剤の単一用量を投与して、尿および胆汁の金属クリアランスを24時間にわたりモニタリングすることを含む。有効なアクチニドキレート剤であることが見出された化合物をさらに調査するために、本発明者らは、有望なキレート化合物を金属処置されたラットに4日間毎日投与したい。このことにより、投与された化合物による累積的な尿および糞便の金属クリアランスの決定が、胆管カニューレされた動物を用いた場合に可能であるより長い間隔にわたって可能となる。目的は、U(VI)、Th(IV)またはEu(III)のいずれかの単回のSC注射を与えて、SCまたは強制経口で、1日1回、4日間にわたり投与された選択された除染剤の尿および糞便の金属クリアランスを決定することである。キレート剤の最初の用量を、金属の直後に、または金属暴露の4時間または12時間後になってから投与する。
【0080】
ラットを、個別の代謝ケージ中で飼育し、一晩絶食させる。ラット(n=5/金属/経路)に、単一用量のU(VI)、Eu(III)、またはTh(IV)を、SCで投与する。金属を、2.8mg/kgのU(VI)と等価の用量で投与する。動物の体重を毎日測定し、キレート剤(1〜2μkg)をSCまたは強制経口で、朝一番に投与し、投薬の2時間後に動物に食餌を与える。ラットは、その日の残りの間、食餌にアクセスを有し、再度一晩絶食させられる。この絶食は必要であって、なぜならば、経口で投与された金属キレート剤が胃腸管中の食餌中のあらゆる金属に結合して、化合物の金属除去効率を遮蔽するかまたは著しく低下させるからである。尿および糞便サンプルを、代謝ケージから収集し、金属含有量について分析する。動物には、いかなる外科的手順も過剰な拘束も行わず、実験の最後に安楽死させる。次いで組織を採取して、その金属含有量について分析する。
【0081】
毒性研究:オスのSprague Dawleyラット(250〜300g)を、慢性(30日)の毒性試験に用いる。ラット(n=6ラット/用量レベル)は、キレート剤を、金属のみで処置された対照により排出される金属の2倍の排出を引き起こす用量の1倍、3倍、および5倍で投与される。化合物を強制経口またはSCで1日1回30日間にわたり投与する。対照ラットに、等価の容積のビヒクルを投与する。毒性研究に起因する痛み、苦痛、または不快の徴候を示すあらゆる動物を安楽死させる。動物を安楽死させた場合はいつでも、または実験の終了時に、剖検を行う。選択された組織については慣用的な病理組織学的検査を行う。
【0082】
問題の金属キレート剤の潜在的なインビボでの効力および毒性を確立するために、ラットを用いることが必要である。キレート剤が鉄にインビトロで結合する能力は、既に確立されている。しかし、キレート剤が金属を動物から除去する能力は、インビトロで試験できない。齧歯類は、金属クリアランスの評価のために伝統的に用いられており、新規キレート剤の、霊長類におけるそれらの試験に先立ち、迅速かつ安価な一次スクリーニングを提供する。動物のグルーピングは、上記のとおりである。必要とされるラットの数は、単位時間あたりに評価される化合物の数にしたがって変化する。サンプルサイズの計算は、文献中のものと一致し、本発明者らが鉄キレート剤の開発において長年用いてきたものと同じである。
【0083】
動物は、IACUCにより査察された施設において飼育され、常に獣医学的管理へのアクセスを有する。薬物分布/代謝実験において用いる動物には、単一用量の除染剤を経口またはSCで与え、痛みおよび苦痛は最少限である。胆管カニューレ研究において用いる齧歯類には、鎮痛剤:ブプレノルフィンを、0.03〜0.05mg/kgでSCで8〜12時間毎に供与する。鎮痛剤の最初の用量を、動物がまだ全身麻酔から回復している間に投与する。
【0084】
複数用量レジメンにおいて用いるラットには、いかなる外科的手順も過剰の拘束も行わない。痛みおよび苦痛は存在しない/最小限である。最後に、毒性試験において用いる動物は、毎日体重を測定し、薬物に対するそれらの応答(被毛の毛羽立ち、眼および鼻孔周囲の汚れ(staining)、活動レベルなど)を注意深くモニタリングする。痛み、苦痛、または最初の体重の〜15%の体重減少の徴候を示す動物を、COガスへの暴露により安楽死させる。
【0085】
実験の最後に、ラットをCOガスへの暴露より安楽死させ、その後、頸椎脱臼および両側性開胸により死を確実にする。これは、安全かつ効果的な安楽死の方法であり、AVMAの安楽死研究会(Panel on Euthanasia)の推奨と一致する。
【0086】
MRI研究:研究において、当初約45日齢であり体重161〜180gのオスのSprague Dawleyラットを、Charles Riverから購入する(SAS SO、Strain 400)。用いることとなる動物の数を、18ヶ月間のプロジェクトの各々において平均約16個体の動物、または全288個体の動物を研究することを前提として概算する。全体的なラットにおける研究の目的は、候補DFT放射性核種除染剤のインビボでの有効性を評価するための新規の磁気共鳴画像(MRI)法の開発である。目的の放射性核種は、アメリシウムであるが、アメリシウムを用いて作業する場合の有害性、分析的な制限、およびコストのために、代わりの金属を用いる。
【0087】
ユーロピウムは、除染剤の開発においてアメリシウムのための優れたモデルであることが示されている(Gorden, et al., Rational design of sequestering agents for plutonium and other actinides, Chem Rev 2003; 103:4207-4282.)。ユーロピウムをアメリシウムのためのモデルとして用いて、MRI研究は、ユーロピウムの気管内または静脈内投与の後での全身分布を決定し、体内分布および除去に対する候補DFTキレート剤の経口投与の効果を連続的に追跡するであろう。
【0088】
Eu(III)は、MR造影(contrast)における使用について、T2*研究における常磁性の剤として(Fossheim, et al., Lanthanide-based susceptibility contrast agents: assessment of the magnetic properties, Magn Reson Med 1996;35:201- 206)および磁化移動技術を用いる場合の化学交換飽和移動(chemical exchange saturation transfer:CEST)剤として(Trokowski, et al., Cyclen-based phenylboronate ligands and their Eu3+ complexes for sensing glucose by MRI, Bioconjug Chem 2004; 15:1431-1440; Woessner, et al., Numerical solution of the Bloch equations provides insights into the optimum design of PARACEST agents for MRI, Magn Reson Med 2005;53:790-799; Zhang, et al., A paramagnetic CEST agent for imaging glucose by MRI, J Am Chem Soc 2003; 125: 15288-15289; Zhang, et al., A novel europium(III)-based MRI contrast agent, J Am Chem Soc 2001 ; 123: 1517-1518.)、試験されている。
【0089】
ランタニドに基づく造影剤は、通常、ランタニドの毒性を回避するためにキレートとして投与されるので、溶液中で塩化物(EuCl)として投与されたEu(III)の検出のための至適MR技術は、まだ確立されていない(Supkowski, et al., Displacement of Inner- Sphere Water Molecules from Eu(3+) Analogues of Gd(3+) MRI Contrast Agents by Carbonate and Phosphate Anions: Dissociation Constants from Luminescence Data in the Rapid-Exchange Limit, Inorg Chem 1999;38:5616-5619)。
【0090】
最初に、Eu(III)の検出のためのMRプロトコルを至適化するために一連の予備研究を行い、結果を、ICPMSを用いてEu組織濃度の測定により実証する。MR研究は、コロンビア大学のハッチ磁気共鳴研究センター(Hatch Magnetic Resonance Research Center)で行う。MRプロトコルの至適化および評価の後で、DFTキレート剤の効果の研究を行う。この研究のために選択されるデスフェリチオシン類縁体は、上記図4においてまとめた提案される研究計画のステージVIを完了することとなる。この時点において、ユーロピウム除去効率、用量応答、器官分布、薬物動態および30日間の毒性プロフィールが完了されることとなる。さらに、配位子が肝臓、肺および骨から金属を除去する効率が、既に決定されていることになる。MRI試験のための30日間の投与スケジュールは、このデータに基づく。研究により、配位子がどのようにして多様な器官系から金属を動かして除去するかについての動態図、ならびに他の薬力学的パラメーターとの比較情報が提供される。
【0091】
簡潔に述べると、9.4 Tの垂直ボア(vertical-bore)磁石を備えたBruker AVANCE 400全身磁気共鳴システム、MiniAHS/RFO.75ミニイメージング・インビボプローブ、0.75G/cm/A活性シールド勾配(actively shielded gradients)、セキュリティボックス、BioTrigシステムを備えた交換可能な共鳴装置/表面コイルのための動物ハンドリングシステムを用いて、ラットの高解像度3次元画像を得る。器官の容積および重量の推定を、先に記載したように行い(Tang, et al., High-resolution magnetic resonance imaging tracks changes in organ and tissue mass in obese and aging rats, Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol 2002;282:R890-899)、Eu濃度の推定を、パーボクセルベース(per voxel basis)で行う。
【0092】
実験では、ラットを、イメージングの前に一晩絶食させる。EuCbを50μmol/kgで無菌0.9%NaCl(pH7.0)に溶解したものを、0.4mLの容積において、単回の気管内注入または尾静脈を介した静脈内投与により投与する。経口で活性な配位子のためのDFT類縁体の投与は強制(gavage)により、非経口で活性な剤の投与はsc注射により行う。経験を積んだ技術者の場合、ラットは、苦痛も麻酔もなしに強制を受け入れる。
【0093】
これらの研究について、全動物の代替は存在しない。細胞培養技術は、ユーロピウムの、またはDFTキレート剤もしくはDFTEu(III)キレート剤の全身での効果についての必要とされる重要な情報を提供しない。MRI研究において試験されるべきDFT類縁体の選択に先行する広範な研究が、MRIにより試験される動物の数を最少化するために役立つ。
【0094】
この研究において記載される動物は、コロンビア大学の比較医学研究所(Institute of Comparative Medicine)の施設において飼育される。コロンビア大学医学センター(Columbia University Medical Center)における実験動物の管理および使用のためのプログラムは、米国実験動物管理公認協会(AAALAC)により完全に公認されている。実験動物資源(The Laboratory Animal Resources)が、学部により用いられる広範な動物種のための空間及び収容施設を提供する。獣医学および外科セクション(The Veterinary Medicine & Surgery Section)が、全ての動物が適切な獣医学的管理を確実に受けるようにする。
【0095】
これを提供するために、以下の構成要素を含む包括的プログラムが実行されている:検疫;新たに到着した動物の安定化;感染性疾患の監視;処置および管理。スタッフは、獣医師およびスーパーバイザーに加えて、十分な訓練を受け認定された獣医学技師(veterinary technician)からなる。動物資源実験所(Laboratory for Animal Resources)における各室の動物は、毎日、飼育(husbandry)の提供に責任を有する動物技師により疾患の徴候を観察される。医学記録および実験での使用の文書化を、各動物のケージカードに保持する。全ての動物に対して獣医学技師による日常的な獣医学的管理が指導獣医師の指示の下で提供される。
【0096】
唯一の予期される麻酔の使用は、気管内および静脈内注入のため、およびMRI研究のためのものである。動物を、短期間、ノーズコーンを介して送達されるイソフルランガス(1L/分の気流において約1.5容積%)により麻酔する。気管内および静脈内注入またはMRIが完了した後で、動物を快復させる。ラットが、提案される研究から最小限より大きな痛みまたは苦痛を受けることは予測されない。しかし、動物を上記のとおり注意深くモニタリングし、痛み、苦痛または不快の徴候を示すあらゆる動物をCO2ガスに対する暴露を介して安楽死させる。
【0097】
実験の最後に、齧歯類をCOガスへの暴露より安楽死させ、その後、頸椎脱臼および両側性開胸により死を確実にする。これは、安全かつ効果的な安楽死の方法であり、AVMAの安楽死研究会(Panel on Euthanasia)の推奨と一致する。
【0098】
霊長類:5個体のオスのCebus apellaサル(2〜4kg)を、薬物動態および金属クリアランス試験の完了のために利用する。動物は、ジャングルで捕獲されたものであり、正確な年齢は分からない。動物の数は、本発明者らが鉄キレート剤の開発において用いたものと一致する。
【0099】
薬物動態:5個体の動物を、各々の動態実験のために用いる。動態研究において用いるサルは一晩絶食させる。翌朝、動物を、ケタミン7〜10mg/kg(1M)、またはテラゾール(Telazol)0.03〜0.05mg/kg(1M)により鎮静させ、単一用量のアトロピン0.1mg/kg(1M)を挿管で投与し、イソフルランガス1.5%において保持する。t=0の血液サンプルを採取し(2〜3mL)、5フレンチの乳児栄養チューブを用いて膀胱をカテーテル処理する。
【0100】
試験される薬物を強制経口または非経口(SCもしくはIV)のいずれかで、300μmol/kgの用量で投与する。血液サンプル(2〜3mL)を、投薬の後で(時間は凡そである)t=0、0.5、1、2、3、4、6および8時間で引き出す。尿サンプルを、カテーテルを介して、投薬の後でt=0、1、2、3および4時間で採取する。動態実験の期間中に取られた14〜21mLの血液は、推奨される最大値である10mL/kgよりはるかに少ない。サルをそれらの通常のケージに戻し、サルが座位(sitting position)を維持することができるようになり、自分のケージ内を動き回れるようになるまで、継続的に観察する。
【0101】
動物を、次いで、6時間および8時間の時点でテラゾールで再度鎮静させる。動物を実験期間を通して絶食させ、8時間の時点で食餌を与える。サルは、2週間毎に1回より多く薬物動態研究において使用しない。
【0102】
金属クリアランス研究:同じ5個体のオスのCebus apella霊長類を、新規配位子の金属除去効率を評価するために用いる。Eu(III)クリアランス研究の初めに、動物をケタミン7〜10mg/kg(1M)、またはテラゾール0.03〜0.05mg/kg(1M)により鎮静させ、基底の全血球数(CBC)および血液化学のために採血する。それらを、次いで、金属フリーの代謝ケージに移し、低金属流動食から始める。動物を、第「0」日に鎮静させ、単一の低い(0.5mg/kg)SC用量のEu(III)を投与する。除染剤を、経口で300μmol/kgで、金属の1、2、または4時間後に投与する。尿および糞便の収集を、第−1日から第+3日まで続ける。
【0103】
各実験の最後に、動物を再度鎮静させて、薬物投与後(post-drug)血液分析のために採血し、それらの通常のケージに戻す。動物に、研究の間に少なくとも2週間の休息期間を与える。U(VI)およびTh(IV)を用いる最終実験において、サルをテラゾールで鎮静させる。霊長類に、次いで、低い(0.5mg/kg)SC用量のTh(IV)およびU(VI)の両方を投与する。試験キレート剤を、POで1時間後に300μmol/kgの用量で投与する。尿および糞便サンプルを、さらに2日間にわたり収集する。この最終試験の完了時に、動物を下記の通り安楽死させ、組織を組織学的検査およびキレート剤/金属レベルの決定のために採取する。
【0104】
ラット、マウス、および他の実験動物は、鉄および他の金属を、ヒトとは著しく異なる様式において吸収し排出する。有効でないキレート剤によるヒト臨床試験をコストをかけて行うことを避けるために、鉄代謝がヒトに緊密に類似するサルにおいて効力を決定することが必要である。計画された動物の数は、統計学的に意味のあるデータを提供するために必要であり、本発明者らが鉄キレート剤の開発において用いたものと一致する。
【0105】
動物は、IACUCにより査察された施設において飼育し、常に獣医学的管理へのアクセスを有する。サルに、獣医師による周期的検査を与え、日常的に便および血液中の寄生虫についてモニタリングし、結核について試験する。さらに、各研究の前後にCBCおよび血液化学を行い、獣医スタッフが、正常からのあらゆる変化を評価する。
【0106】
あらゆる手順の前に、霊長類を、ケタミン7〜10mg/kg(1M)、またはテラゾール(Telazol)0.03〜0.05mg/kg(1M)により鎮静させる。金属除去実験の期間中、動物は、大きな代謝ケージ内を自由に動き、ストレス、不快または行動異常の徴候を示さない。記載する全ての計画が完了した後、サルをケタミン7〜10mg/kg(1M)、またはテラゾール(Telazol)0.03〜0.05mg/kg(1M)により鎮静させ、次いで、ペントバルビタールナトリウム100mg/kg(IV)の投与により安楽死させる。広範な組織を採取し、病理組織学的に、ならびにキレート剤/金属含有量について評価する。これは、安全で効果的な安楽死の方法であり、AVMAの安楽死研究会の推奨と一致する。
【0107】
デスフェリチオシン類縁体により誘導されるウランの排出。結果を、キレート剤により誘導される鉄排出の先のデータと比較するために、ウランクリアランス研究を、胆管カニューレラットモデルにおいて行った。動物に、酢酸ウラニル無水物をSCで5mg/kgの用量で投与した(ウランの実際の用量は2.8mg/kgである)。キレート剤を、IP、SCまたはPOで、表1に示すウラン暴露に相対的な時点で投与した。胆汁および尿サンプルを、投与後24時間にわたり収集した。選択した動物から腎臓を除去し、組織ウラン濃度を測定した。少なくとも3個体の動物を各実験群において利用した。2つの別々の対照研究(酢酸ウラニル/キレート剤なし)からのデータを、全14個体の対照動物について組み合わせた。全てのウラン濃度をICPMSを用いて測定した。データを、ウラン排出の全質量(尿+胆汁)として報告する。排出の様式(尿/胆汁)もまた示す。さらに、投与されたウランの用量のうち排除されたもののパーセンテージ、およびコントロールに対するキレート剤により誘導されたウラン排出もまた示す。
【0108】
4つの陽性対照を評価した:DTPA(1、表1)(その3ナトリウムカルシウム塩として投与される)、DFO(2)、N,N−ビス(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン−N,N−アセト酢酸1ナトリウム塩(NaHBED、3)、およびウランに結合することが示されたヒドロキシピリドンCP94(4)。対照ラットにおいて24時間後に除去された全金属は、投与された用量の10%であった。DTPA(1)をIPまたはPOで300μmol/kgでウランの直後に投与した場合、排出は、夫々投与した用量の17%および8%であった(p>0.05)。しかし、薬物をIPで600μmol/kgで金属の直後に投与した場合、ウラン排出は著しく、20%であった(p<0.005)。これは、先に公開された同様の動物モデルを用いたデータと一致する。IPで酢酸ウラニルの直後に投与したDFO(2)およびCP94(4)は、効果がなかった。NaHBED(3)は、クリアランスを僅かに改善した(表1)。
【0109】
DFT類縁体の場合、状況は非常に異なる。(S)−4’−(CH3 O)−DADFT(5)をIPで300μmol/kgでウランの直後に投与した場合、金属排出は20%増大したが(p<0.003)、金属の0.5時間後に投与した場合、対照の誤差の範囲内まで低下した。(S)−4,5ジヒドロ−5,5−ジメチル−2−(2−ヒドロキシフェニル)−4−チアゾールカルボン酸((S)−5,5−(CHS)2−DADMDFT、6)をIPでウランの直後に投与した場合、排出は26%(p<0.002)であったが、やはり、金属の0.5時間後に投与した場合、有意でなかった。病院における鉄過負荷のための薬物である(S)−4’−(HO)−DADFT(7)は、IPで金属の直後に投与した場合、ウラン排出を19%まで増大し(p<0.05)、一方、対応するポリエーテルである(S)−4,5−ジヒドロ−2−[2−ヒドロキシ−4−(3,6,9−トリオキサデシルオキシ)フェニル]−4−メチル−4−チアゾールカルボン酸((S)−4’−(HO)−DADFT−PE(8))は、IPで金属の直後に投与した場合、ウラン排出を22%まで増大する(p<0.001、表1)。
【0110】
(S)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,5−ジヒドロ−4チアゾリンカルボン酸シリーズにおいて最も有望な類縁体は、メトキシ類縁体である(S)−4’−(CH3O)−DADMDFT(9)である。酢酸ウラニルの0.5時間前または直後にIPで300μmol/kgで投与した場合、ほぼ30%の金属が除去された(表1)。これはまた、薬物をIPで金属の0.5または2時間後に投与した場合も真実である。薬物は、ウランの4時間後に投与した場合でもいくらかの効力を保持し、16%の金属が排出される(p<0.006)。キレート剤をSCでウランの直後に投与した場合、投与した金属の40%が排出された。排出の増大は、おそらく、配位子がより遅く吸収されることと関連する。
【0111】
薬物を経口で投与した齧歯類からのデータは、さらにより有望である(表1)。キレート剤をPOで300μmol/kgの用量で金属の直後に投与した場合、クリアランスは23%(p<0.001)であり、非常に良好な経口でのバイオアベイラビリティを示した。金属の2時間後において、クリアランスはなお顕著であり、18%(p<0.005)であった。キレート剤の用量を600μmol/kgまで増大させ、POでウランの0.5または1時間後に投与した場合、クリアランスは夫々25%(p<0.001)および26%(p<0.006)であった(表1)。
【0112】
【表1】

【0113】
【表2】

【0114】
【表3】

【0115】
2007年3月15日に出願された国際公開第WO/2006107626 Alおよび米国第60/966,539号(表題「Desferrithiocin Polyether Analogues」、発明者Raymond J. Bergeron, Jr.)(本発明者らの参照番号T2315-1 1335PV01)を参照し、その全内容および開示を本明細書において参考として援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非毒性の有効量のアクチニド除染剤およびそのための薬学的に受容可能な担体を含む医薬組成物であって、前記アクチニド除染剤が、アクチニドをインビボでキレートすることができる6配位構造のデスフェリチオシン類縁体を含む、前記医薬組成物。
【請求項2】
ヒトまたは非ヒト哺乳動物の組織からアクチニドを除去するための方法であって、前記哺乳動物に、前記アクチニドをキレートするかまたは前記アクチニドと錯体を形成して前記キレートまたは錯体を排出により除去する請求項1の非毒性の有効量のアクチニド除染剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項3】
請求項1のアクチニド除染剤を収容する容器および前記剤がヒトおよび非ヒト哺乳動物からのアクチニドの除去のために有用であることを示す添付文書または前記容器上の表示を含む製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−512398(P2010−512398A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541353(P2009−541353)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/025377
【国際公開番号】WO2008/130395
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(501198475)ユニバーシティ オブ フロリダ (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF FLORIDA
【住所又は居所原語表記】223 Grinter Hall, P.O.Box 11550, Gainesville, FL 23611−5500, U.S.A.
【Fターム(参考)】