説明

デッキ材固定金具およびデッキ材固定方法

【課題】デッキにおけるデッキ材の交換後の固定が可能なデッキ材固定金具を提供する。
【解決手段】並列に置かれた2本のデッキ材50,50を大引き60上に固定する固定金具Aであって、2本のデッキ材50,50の間の隙間に嵌る本体部1と、本体部1の両端から左右に延びて、2本のデッキ材50,50の突状縁部を押える押圧片3と、本体部1の下面に形成され大引き60の上面に当接する脚部4とからなり、本体部1には止ビス8を挿入するビス孔が形成されている。本体部1の下に脚部4があって本体部1が大引き60の上面より高い位置にあるため、本体部1のビス孔にビスを差し込め倒れないようにすることができる。このため、2本のデッキ材50,50の隙間を固定金具Aにビスを取付けた状態でスライドさせて大引き60上まで移動させることができ、新築後のデッキ材交換後においても使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デッキ材固定金具およびデッキ材固定方法に関する。さらに詳しくは、建物に付設されるデッキにおいて、デッキを構成するデッキ材を固定する固定金具と、それを用いたデッキ材固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の庭側などに日光浴や団らんのためのデッキがよく付設されている。ここ最近では、耐候性に優れたデッキ材として、木粉を配合した樹脂の押出成形品が利用されている。このようなデッキ100は、図7に示すように、地面に設置した短柱である束柱101で太い横材である大引き102を支持し、並列に並べられた大引き102の上に長尺の床材であるデッキ材103を交差させて並べて置き、専用の固定金具でデッキ材103を大引き102に固定する構造となっている。
【0003】
従来のデッキ材の固定金具としては、特許文献1,2のものがある。
特許文献1の固定金具は、図8の(A)図に示すように、側面視でU字形の本体部142と、その両端縁を更に外側に折り曲げた押圧片145を有する形状の金具である。U字形の本体部142は2本のデッキ材103の間に挿入されるスペーサであり、押圧片145は両側のデッキの突起部を押える部材である。この固定金具140は本体部142の中央にネジ孔を形成しており、このネジ孔にビス150を通して大引き102にねじ込み固定する。この固定によって押圧片145はデッキ材103,103の突起部を押えて、大引き102にデッキ材103を固定することができる。
【0004】
デッキの新築時には、このように固定することでよいのであるが、一部のデッキ材103を損傷や腐食によって交換するときは、前記固定金具140は使用できない。なぜなら、同(B)図に示すように、新たなデッキ材103を設置したあと、固定金具140を2本のデッキ材間の隙間に端から挿入することになるが、このとき、固定金具140の本体部142は大引き102の上面に付いているので、ネジ孔にビス150を差し込むことはできない。無理にネジ孔にビス150を通そうとしても先だけが嵌るので、2本のデッキ材103の隙間をドライバー等で押して大引き102上まで案内する間に倒れてしまう。もちろん、2本のデッキ材103間の上方の隙間はビスの頭より小さく形成されているので、固定金具140を挿入したあと、ビスを上方から差し込むこともできない。
つまり、特許文献1の固定金具は新築時に使用することを前提とした金具であり、デッキ材の交換時に使用することを考慮していないのである。
【0005】
特許文献2の固定金具200は、図9の(A)図に示すように、U字状の本体部204と外曲げした押圧片240を有する点は特許文献1と同じであるが、さらに本体部204の底板を長くし、延長片204cを設けて長孔をあけ、ボルト206を通した状態でスライドさせるようにしている。
一方、デッキ材203は、同図(B)に示すように、その突状縁部に切り欠き203bが形成しておかれる。デッキ材203を取り替えるときは、固定金具200を大引き205に仮固定したあと、新たに交換すべきデッキ材203を大引き205上に置き、このとき固定金具200の押圧片240を切欠き203bに通す。そして、同図(A)図に示すように、固定金具200をドライバーを当ててハンマーで叩いてスライドさせると、押圧片240がデッキ材203の突状縁部に接触する位置まで進んで、デッキ材203を大引き205上に固定できることになる。
このように、特許文献2の技術では、交換したデッキ材205の固定を行えるのであるが、デッキ材203に切り欠き加工が必要であり、固定金具200も延長片204cが必要な複雑な形状となって、製造コストの高いものとなる。また、固定金具200のスライド動作は仮固定した後で行うため、スライド抵抗が大きく、作業性が容易でない、という難点がある。
【0006】
【特許文献1】特開2004−27724号
【特許文献2】特開2004−169528号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、デッキにおけるデッキ材の交換後の固定が可能なデッキ材固定金具を提供することを目的とする。また、本発明はデッキ材の固定を容易に行えるデッキ材固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明のデッキ材固定金具は、並列に置かれたデッキ材を大引き上に固定する固定金具であって、隣設するデッキ材の間の隙間に嵌る本体部と、該本体部の両端から左右に延びて、前記隣設するデッキ材の縁部を押える押圧片と、前記本体部の下面に形成され前記大引きの上面に当接する脚部とからなり、前記本体部には止めビスを挿入するビス孔が形成されていることを特徴とする。
第2発明のデッキ材固定金具は、第1発明において、前記ビス孔の内径は、前記止めビスの外径よりも小さいことを特徴とする。
第3発明のデッキ材固定方法は、並列に置かれて固定されているデッキ材の固定方法であって、任意のデッキ材を取り外したあと新しいデッキ材を元の位置に置き、請求項1の固定金具のビス孔にビスを挿入して、ビスを挿入した状態の固定金具を隣り合う2本のデッキ材の隙間に横から挿入し、かつ前記隙間の中をスライドさせて固定位置まで移動させ、ついで前記ビスを大引き上にねじ込むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、本体部の下に脚部があって本体部が大引きの上面より高い位置にあるため、本体部のビス孔にビスを差し込め倒れないようにすることができる。このため、2本のデッキ材の隙間を固定金具にビスを取付けた状態でスライドさせて大引き上まで移動させることができ、新築後のデッキ材交換後においても使用することができる。
第2発明によれば、ビス孔がビスよりも小さいため、ビスをビス孔に押し込むとビスはしっかりとビス孔で保持される。このため、2本のデッキ材の間の隙間をドライバー等で押してスライドさせるとき、決して倒れないので、固定金具の固定位置までの移動が確実に行える。
第3発明によれば、固定金具に差し込んだビスが倒れないまま、固定位置まで移動させることができるので、デッキ材の交換後の固定を容易かつ迅速に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の固定金具を説明する前に、その固定金具で固定されるべきデッキ材とデッキを図4に基づき説明する。
同図に示すように、束柱61で大引き60を支持し、大引き60の上面に複数本のデッキ材50を並列に設置して、固定金具A,Bで固定する構造は、従来例と特に変ることはない。
なお、固定金具Aは本発明による取替用の金具であり、固定金具Bは新築用の金具であるが、全ての金具を本発明の取替用の金具を用いてもよい。
【0011】
デッキ材50の構成を、新築時用の固定金具Bと併せて説明すると、以下のとおりである。
図6に示すデッキ材50は木粉を配合した合成樹脂製の押出形材であって、一般的に幅Wが140〜180mm、高さHが30〜50mm、長さが1000〜3000mm位の長尺部材である。
断面形状は天板51と底板52と側板53からなる略長四角形であり、内部には適数本のリブが入っている。両端部の側板53は、固定金具A,Bを取付けるため、次のような形に形成されている。
【0012】
高さ方向の中間部分から下方は、幅方向の内側に凹んでおり、底板52は、外側に突出している。その突出量は側板53の外端より短い。そして、底板52の外端縁の上面には
三角形状の突起が一体的に形成されている。この突起が形成されている底板部分は固定金具A,Bの押圧を受ける部分で、突起は固定金具A,Bの外れ止めを兼ねている。この押圧を受ける縁部を突状縁部54という。
前記突状縁部54の最大高さh4は、例えば、8.5mm、その内側の低い段部の高さh5は、例えば7.0 mm位に成形される。なお、この寸法は例示であって、これに制限されるものではない。
隣り合うデッキ材50,50同士の上端部間の隙間dは、ビス止め作業に使うドライバーの軸が入る程度であって、ビスの頭が抜けない寸法となっている。例えば6mm程度である。
【0013】
なお、新築時に使用する固定金具Bの構造を図5に基づき説明すると、つぎのとおりである。
本体部10は底板11と2枚の側板12とからなるU字形の部材である。その中央にはビス孔15が形成されている。このビス孔15の内径は、用いるビスの外径より少し大きくされている。例えば、ビス外径が4mmとすると、ビス孔内径は4.2mmとされる。
前記本体部10の2枚の側板12の上端からは左右に押圧片13,13が延びている。そして、各押圧片13,13の先端部分は側面視でV字型に折り曲げられている。このように折り曲げられた押圧片13の下端と底板11との間の高さh3は、デッキ材50の突状縁部54の段差部h5の高さよりも短くされている。
【0014】
図6は、この固定金具Bで、デッキ材50を固定した状態を示している。同図に示すように、隣り合うデッキ材50の間の隙間に固定金具Bを入れた状態で、ビス18で固定金具Bを大引き60上にネジ止めすると、押圧片13はデッキ材50の突状縁部54を強く押え付けることができる。
大引き60へのデッキ材50の取付けは、図6(B)において右側のデッキ材50から順次固定する。先ず、右側に位置するデッキ材50の突状縁部54を、固定金具Bによって大引き60上に固定する。次いで、左側に位置するデッキ材の突状縁部54を、先程の大引き60上に固定した固定金具Bの左側から差し込んで固定する。この時、固定金具Bは鋼材によって形成されているので、押圧片13が弾性変形し、デッキ材50の突状縁部54の三角形状の突起を乗り越えて係合する。以下この作業を繰り返し、デッキ材50が並列される。
【0015】
つぎに、本発明の固定金具Aを図1に基づき説明する。
本発明の固定金具Aは、新築時用にも使えるが、デッキ取替後の取付用に特に好適なものである。その基本構成は、本体部1と押圧片3と脚部4からなり、アルミニウム製押出形材によって一体成形されている。
【0016】
前記本体部1は、大引き上に設置された2本のデッキ材50間の隙間を埋めるスペーサとしても機能する板状部材である。
そして、本体部1の中央には、止ビスを通すビス孔5が形成されている。このビス孔5はネジ溝が形成されていない孔であるが、その内径は用いるビスの外径より、やや小さいものとなっている。例えば、ビスの外径が4mmとすると3.8 mm程度が好適である。また、用いる止ビスは固定金具Aより硬い金属が用いられる。このような寸法差と硬度差があれば、ビス孔5に後述するビスを少し強く差し込んだとき、しっかりとビスがビス孔5で保持されて、倒れないようにできるので、後述するデッキ材取替時に作業を容易にすることができる。
【0017】
前記押圧片3,3は前記本体部1の両端から、少し立ち上がって左右に延びている。なお、立上りは無くてもよい。また、この押圧片3,3の先端は下向きに曲がった先端爪3aを有しているが、曲げない形状であってもよい。
前記脚部4は前記本体部1の下面に形成されている。その形状には、とくに制約はなく、本体部1を下方に延長させたような一体的な形態でも構わない。要するに、本体部1のビス孔5へのビスの差し込みを許容し、かつ本体部1を高く支持できるものであればよい。図示の脚部4は、左右一対のL形部材で構成されている。
【0018】
前記固定金具Aにおける押圧片3の脚部4の下端からの高さ寸法は、つぎのとおりである。
押圧片3の先端爪3aより内側にある平坦部の下面の高さh1は、例えば8.2mmであり、デッキ材50の突状縁部54の突起部の高さh4(8.5mm)より、わずかに低い高さ寸法である。押圧片3の先端爪3aの下面の高さh2は、例えば7.0mmであり、デッキ材50の突状縁部54の平坦部と同じ高さh5である。
【0019】
図2は前記固定金具Aでデッキ材50を固定した状態を示している。
同図に示すように、本体部1のビス孔に止ビス8を通し、止ビス8を大引き60に予め形成されている雌ネジ孔にねじ込むと、固定金具Aによりデッキ材50を大引き60上に固定することができる。この場合、脚部4は隣り合う2本のデッキ材50,50の位置決めを行うスペーサとして機能する。押圧片3,3は両側のデッキ材50,50の突状縁部54,54を押し付ける。とくに、突状縁部54の突起高さh4(図6参照)は、押圧片3の高さh1(図1参照)よりわずかに高いので、押圧片3は若干たわみを生じさせて、たわみにより生じた弾力がデッキ材50を不動状態にしっかりと固定することができる。
【0020】
つぎに、本発明におけるデッキ材の固定方法を説明する。
図4に示すデッキにおいて、符号50は交換を要せず、そのまま使用するデッキ材である。いま、中央付近の1本のデッキ材50aが損傷や腐食により使用不能になったとすると、そのデッキ材50aの両側の新築時に取付けていた固定金具Bを取り外す。この作業は図6に示す上方の隙間dからドライバーを差し込むことで容易に行える。
止めネジを外したデッキ材50aはそのまま上方へ引き抜くことができ、この古いデッキ材を符号50aで示す。
ついで、新しいデッキ材50bを元の取付位置へ挿入する。この新しいデッキ材を符号50bで示す。
【0021】
つぎに、本発明の固定金具Aで取付作業をするが、この要領を図3に基づき説明する。
I:固定金具Aに止ビス8をねじ込む。
このとき止ビス8はビス孔5が少し広がることによって、しっかり保持される。
そして、2本のデッキ材50,50bの間の隙間に横から矢印aで示すように挿入する。
II:隙間に入った固定金具Aは、上方から隙間に差し込んだドライバーDで、矢印bで示す奥方向へ押していく。このとき、ドライバーDは止ビス8を押してもよく、固定金具Aの本体部1を押してもよい。
【0022】
III:大引き60の上方まで押して、予め形成されている雌ネジ孔60hに合う位置まで来ると、移動を止めドライバーDを引き上げる。
IV:つぎに、同じドライバーDを止ビス8の頭に当てて、ねじ込み方向(矢印c)に回すと、止ビス8は大引き60の雌ネジ孔60hにねじ込まれていき、ねじ込みが完了すると、固定金具Aによってデッキ材50b,50が大引き60上に固定される。
【0023】
以上のように、本実施形態の固定金具Aと固定方法によれば、脚部4が本体部1に差し込んだ止ビス8を倒れないようにすることができるので、固定金具Aを2本のデッキ材50,50bの間でスライドさせて大引き60上まで移動させることができ、交換後の新しいデッキ材50bを容易に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る固定金具を示し、(A)図は平面図、(B)図は正面図、(C)図は側面図である。
【図2】本発明の固定金具Aの使用状態説明図である。
【図3】本発明のデッキ材固定方法の説明図である。
【図4】デッキの説明図であって、(A)図は正面図、(B)図は一部平面図である。
【図5】新築時用固定金具Bの一例を示し、(A)図は平面図、(B)図は正面図である。
【図6】新築時のデッキ材取付状態を示し、(A)図は一部平面図、(B)図は一部正面図である。
【図7】デッキの一般的構造を示す斜視図である。
【図8】従来例1の固定金具の説明図である。
【図9】従来例2の固定金具の説明図である。
【符号の説明】
【0025】
A 固定金具
1 本体部
3 押圧片
4 脚部
8 止ビス
50 デッキ材
60 大引き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に置かれたデッキ材を大引き上に固定する固定金具であって、
隣設するデッキ材の間の隙間に嵌る本体部と、該本体部の両端から左右に延びて、前記隣設するデッキ材の縁部を押える押圧片と、前記本体部の下面に形成され前記大引きの上面に当接する脚部とからなり、
前記本体部には止めビスを挿入するビス孔が形成されている
ことを特徴とするデッキ材固定金具。
【請求項2】
前記ビス孔の内径は、前記止めビスの外径よりも小さい
ことを特徴とする請求項1記載のデッキ材固定金具。
【請求項3】
並列に置かれて固定されているデッキ材の固定方法であって、
任意のデッキ材を取り外したあと新しいデッキ材を元の位置に置き、
請求項1の固定金具のビス孔にビスを挿入して、
ビスを挿入した状態の固定金具を隣り合う2本のデッキ材の隙間に横から挿入し、かつ前記隙間の中をスライドさせて固定位置まで移動させ、
ついで前記ビスを大引き上にねじ込む
ことを特徴とするデッキ材固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−174153(P2009−174153A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12206(P2008−12206)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(000180302)四国化成工業株式会社 (167)
【Fターム(参考)】