説明

デバイス向けデータの分散処理プログラム、分散処理装置、及び、分散処理方法

【課題】既存アプリケーションから各デバイス向けに出力されるデータを処理するプログラムであって、既存アプリケーションのプログラムを変更することなしに、容易に各デバイスへのデータ分散処理を行うことのできる分散処理プログラム等を提供する。
【解決手段】アプリケーションによって所定の処理を実行する2以上の通信ポートを有するコンピューターに、アプリケーションから出力されるデバイス向けデータの分散処理を実行させるプログラムが、所定の1の通信ポートへ出力されるデバイス向けデータを、当該通信ポートが受け取る前に、OSカーネル層で取得する工程と、アプリケーション層で、取得されたデバイス向けデータを解析し、当該データを出力するデバイスを決定し、当該決定したデバイスが接続される通信ポートにデバイス向けデータを出力する工程とを上記コンピューターに実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存アプリケーションから各デバイス向けに出力されるデータを処理するプログラム等に関し、特に、既存アプリケーションのプログラムを変更することなしに、容易に各デバイスへのデータ分散処理を行うことのできる分散処理プログラム等に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケットなどの小売販売業においては販売管理システムであるPOSシステムが普及しており、当該システムでは、サーバーとネットワークで接続される複数の端末装置(レジ)が当該装置に備えられるアプリケーションに従って動作し各種の処理を実行する。また、通常、当該端末装置には、それぞれ、プリンターやディスプレイが設けられ、上記アプリケーションの指示によりレシート、クーポン等の出力、ユーザーへの情報表示を実行する。また、このような出力を伴うPOSシステムと類似した構成のシステムとしては、病院で用いられるシステム、運送会社で用いられるシステムなどがある。
【0003】
このようなシステムにおいても、導入後の技術向上や業務改善要望に伴って、機能拡張、装置のリプレースの必要が出てくるが、かかるシステムは一般に業務の中枢として常時利用されているものであり、また、他のシステムとも複雑に連携している場合も多いため、そのアプリケーション等を改変することは通常容易ではない。
【0004】
かかる課題については、出力処理系の機能に関し、従来、以下のような提案がなされている。
【0005】
下記特許文献1では、すでに存在するアプリケーションプログラムを修正する必要なしに、従来のモデムに必要とされていたマイクロプロセッサおよびメモリを除去することが可能なパーソナルコンピュータ中でモデム機能を実行する装置について記載されている。
【0006】
また、下記特許文献2には、アプリケーションを変更することなく、1つの通信ポートにアクセスすることにより、他の通信ポートに接続されているプリンターへも同時に印刷を実行させることができ、複製印刷を可能にする装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−69427号公報
【特許文献2】特開2006−338443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載の内容では、モデム機能、複製印刷機能など出力系の限られた機能を実現するに留まり、他の多彩な要望を実現することはできない。また、上記特許文献2では、OSカーネル層での処理であるため、一般に機能構築(プログラム開発等)が容易ではなく機能も限られてしまうという課題がある。
【0009】
そして、プリンター機能の向上により、プリンターの増設や交換を伴う出力系の機能拡張、例えば、用途に応じたプリンターの使い分け等、が望まれている。
【0010】
また、既存の装置では、一つの通信ポートにプリンターとディスプレイが接続され、両
デバイスを切り替えて用いるものもあるが、このような装置をリプレースして各デバイスを異なる通信ポートに接続する場合にも、既存アプリケーションプログラムを変更することなく容易にシステムの移行を行いたいというニーズもある。
【0011】
そこで、本発明の目的は、既存アプリケーションから各デバイス向けに出力されるデータを処理するプログラムであって、既存アプリケーションのプログラムを変更することなしに、容易に各デバイスへのデータ分散処理を行うことのできる分散処理プログラム、等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明の一つの側面は、OSカーネル層のオペレーティングシステムによって動作しアプリケーション層に備えられるアプリケーションによって所定の処理を実行する、2以上の通信ポートを有するコンピューターに、前記アプリケーションから出力されるデバイス向けデータの分散処理を実行させる分散処理プログラムが、所定の1の前記通信ポートへ出力される前記デバイス向けデータを、当該通信ポートが受け取る前に、前記OSカーネル層で取得するデータ取得工程と、前記アプリケーション層で、前記データ取得工程で取得されたデバイス向けデータを解析し、当該解析の結果に基づいて、当該デバイス向けデータを出力するデバイスを決定し、当該決定したデバイスが接続される通信ポートにデバイス向けデータを出力するデータ処理工程と、を前記コンピューターに実行させる、ことである。
【0013】
更に、上記の発明において、一つの態様は、前記接続されるデバイスは、印刷装置及び表示装置であり、前記アプリケーションから出力されるデバイス向けデータは、印刷装置向けデータ又は表示装置向けデータである、ことを特徴とする。
【0014】
更に、上記の発明において、一つの態様は、前記接続されるデバイスの数が2であり、前記アプリケーションから出力されるデバイス向けデータにデバイス切替信号が含まれる場合には、当該切替信号に基づいて前記出力するデバイスが決定される、ことを特徴とする。
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明の別の側面は、OSカーネル層のオペレーティングシステムによって動作しアプリケーション層に備えられるアプリケーションによって所定の処理を実行する、2以上の通信ポートを有するコンピューターで構成され、前記アプリケーションから出力されるデバイス向けデータの分散処理を実行する分散処理装置が、所定の1の前記通信ポートへ出力される前記デバイス向けデータを、当該通信ポートが受け取る前に、前記OSカーネル層で取得するデータ取得部と、前記アプリケーション層で、前記データ取得部で取得されたデバイス向けデータを解析し、当該解析の結果に基づいて、当該デバイス向けデータを出力するデバイスを決定し、当該決定したデバイスが接続される通信ポートにデバイス向けデータを出力するデータ処理部と、を有する、ことである。
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明の更に別の側面は、OSカーネル層のオペレーティングシステムによって動作しアプリケーション層に備えられるアプリケーションによって所定の処理を実行する、2以上の通信ポートを有するコンピューターにおいて、前記アプリケーションから出力されるデバイス向けデータの分散処理を実行する分散処理方法が、前記コンピューターが、所定の1の前記通信ポートへ出力される前記デバイス向けデータを、当該通信ポートが受け取る前に、前記OSカーネル層で取得するデータ取得工程と、前記コンピューターが、前記アプリケーション層で、前記データ取得工程で取得されたデバイス向けデータを解析し、当該解析の結果に基づいて、当該デバイス向けデータを出力するデバイスを決定し、当該決定したデバイスが接続される通信ポートにデバイス向け
データを出力するデータ処理工程と、を有する、ことである。
【0017】
本発明の更なる目的及び、特徴は、以下に説明する発明の実施の形態から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用したPOS端末装置の実施の形態例に係る概略構成図である。
【図2】POS端末装置の概略機能構成図である。
【図3】出力先分散処理の処理手順を例示したフローチャートである。
【図4】POSシステムの改良を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態例を説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。なお、図において、同一又は類似のものには同一の参照番号又は参照記号を付して説明する。
【0020】
図1は、本発明を適用したPOS端末装置の実施の形態例に係る概略構成図である。また、図2は、当該POS端末装置の概略機能構成図である。図1及び図2に示すPOS端末装置2が本発明を適用した装置であり、当該装置では、POSアプリケーション201から出力されるデバイス向けのデータをOSカーネル層230の仮想ポート203(データ取得部)で取得する。そして、取得したデータをアプリケーション層220のポートハンドラー204で受け取り、そのデータの解析結果に基づいて所定の出力先を決定する。その後、ポートハンドラー204から決定された通信ポート209へ処理後のデータを出力する。本POS端末装置2は、かかる処理を実行することにより、POSアプリケーション201のプログラムを変更することなく、デバイス向けデータの分散処理を容易に実現するものである。
【0021】
本実施の形態例では、スーパーマーケットなどで用いられるPOSシステムを想定しており、図1に示すように、POSサーバー1にネットワーク4を介して複数のPOS端末装置2が接続される構成をしている。POSサーバー1は、コンピューターシステムで構成され、上記複数のPOS端末装置2の管理とそれらのPOS端末装置2から取得される各種データの集計、管理等の処理を実行する。
【0022】
POS端末装置2は各レジに設置され、それぞれ、プリンター3と接続される。プリンター3は、POS端末装置2から出力されるデバイス向けデータのうちの印刷データに従って、レシートやクーポンを出力する。従って、POS端末装置2はプリンター3のホスト装置と位置づけられる。
【0023】
また、POS端末装置2には、ディスプレイ5が接続され、当該ディスプレイ5では、POS端末装置2から出力されるデバイス向けデータのうちの表示データに従って、顧客に示す商品の金額等が表示される。
【0024】
各POS端末装置2は、図1に示すように、POS端末本体21、キーボード23、バーコードリーダー24、及びカードリーダー25等を備える。キーボード23は、価格や商品コードなどの商品情報、性別、年代などの顧客情報をオペレーターが入力するために用いられる。また、バーコードリーダー24は、商品に付されたバーコードを読み取って商品情報を取得し、カードリーダー25は、各種カードに記憶された情報を読み取って、清算に必要な情報などを取得する。
【0025】
POS端末本体21は、上述したキーボード23、バーコードリーダー24、及びカー
ドリーダー25から取得される情報に基づいて、レシートやクーポンに印刷する情報を生成して、プリンター3へ出力したり、ディスプレイ5に表示する情報を生成して出力する。当該POS端末本体21は、コンピューターで構成され、図示していないが、CPU、RAM、ROM、HDDなどを備えている。後述するPOSアプリケーション201のプログラムや上記分散処理のためのプログラムは、ROMに記憶され、それらのプログラムに従ってCPUが動作することにより各処理が実行される。
【0026】
また、POS端末装置2は、図2に示すような機能構成となっている。POSアプリケーション201は、上述したレシートやクーポンに印刷する情報、ディスプレイ5に表示する情報を生成してそれらを出力させる処理を行うが、ここで生成されるデータは出力先の分散処理を行う前の元データである。また、生成される印刷データは、そのままプリンター3Aへ出力できる形式の、すなわち、プリンター3Aの機種(デバイス)に依存したコマンドの、印刷データ、あるいは、プリンター3A用ドライバー202に渡す形式のデータである。前者は、テキストだけの印刷など簡単な印刷データの場合に生成される。また、表示データもそのままディスプレイ5に出力される形式のデータである。
【0027】
また、プリンター3A用ドライバー202は、プリンター3A用のプリンタードライバーであり、POSアプリケーション201から出力されたデータを、プリンター3Aの機種(デバイス)に依存したコマンドによる、プリンター3Aが受信して印刷可能な印刷データとして出力する。
【0028】
なお、POSアプリケーション201とプリンター3A用ドライバー202は、図2に示すように、コンピューターのオペレーティングシステム(OS)に基づきその上でプログラムが各処理を実行するアプリケーション層220に位置する。また、両者は、それぞれの処理内容を指示する上記ROMに格納されたプログラムと当該プログラムに従って処理を実行する上記CPU等によって構成される。また、両者は、本発明によって新たに追加、改良される部分ではなく、従来装置のものがそのまま用いられる。
【0029】
次に、仮想ポート203は、POSアプリケーション201又はプリンター3A用ドライバー202から出力された印刷データ又は表示データ(ここでは、元データと呼ぶ)を、通信ポート209が受け取る前に上記オペレーティングシステムが位置するOSカーネル層230で受け取る部分である。そして、仮想ポート203は、取得した元データをポートハンドラー204へ引き渡す。
【0030】
次に、ポートハンドラー204、データ解析部205、データ加工部206、コマンド変換部207、及びデータ格納部208は、元データを用いて出力先分散処理を実行するデータ処理部であり、これら各部の処理により、上記POSアプリケーション201の機能は拡張され得る。
【0031】
ポートハンドラー204は、上記仮想ポート203から引き渡された元データをデータ解析部205に転送すると共に、出力先分散処理後のデータ(ここでは、処理後データと呼ぶ)を受け取って、当該データに対応した通信ポート209へ処理後データを出力する処理を行う。
【0032】
データ解析部205は、元データを解析して処理内容を決定すると共に、処理後データを出力する通信ポート209を決定する部分である。
【0033】
データ加工部206は、データ解析部205が決定した処理内容に従って、元データを加工する部分である。
【0034】
また、コマンド変換部207は、元データで指定されていた通信ポート209に接続されたプリンター3と、処理後データが出力される通信ポート209に接続されたプリンター3とで使用コマンドが異なる場合に、コマンドを変更する処理を行う部分である。
【0035】
データ格納部208は、上記データ解析部205及びデータ加工部206が使用する各種データを記憶する部分である。ここには、キーワードデータベースとプリンターデータベースが格納されており、前者には、キーワードとなる各文字列又は各イメージと、それらに対応する処理内容等が対応付けて収められ、後者には、各プリンター3の使用コマンド、印刷設定の情報、接続される通信ポート209の情報等が収められている。なお、当該データ格納部208は上記HDD等で構成される。
【0036】
以上説明したデータ処理部における処理の具体的な手順については後述する。
【0037】
なお、仮想ポート203、ポートハンドラー204、データ解析部205、データ加工部206、及び、コマンド変換部207は、それぞれ、各部が行う処理を指示するプログラムと当該プログラムに従って処理を実行する上記CPU等によって構成される。また、これらの部分に係るプログラムが本発明の分散処理プログラムに相当する。
【0038】
次に、POS端末装置2には、物理層240に通信ポート209A及び209Bが備えられ、それぞれ、プリンター3A又はディスプレイ5と、プリンター3Bに接続される。ここでは、一例として、通信ポート209Aは、シリアル通信のCOM通信ポートであり、通信ポート209Bは、USB通信を行うUSB通信ポートである。また、プリンター3については、一例として、プリンター3Aがモノクロプリンターであり、プリンター3Bがカラープリンターである。なお、ここでは、2つ通信ポート209が備えられ、2つのプリンター3がPOS端末装置2に接続されるが、接続される通信ポート209及びプリンター3の数はこれに限定されることはなく3以上でもよい。また、通信ポート209の種類も、両方をUSB通信ポートとするなど、他の構成とすることができる。また、プリンター3の種類に関しても、SIDMプリンターとレーザープリンターの組合せ、あるいは、SIDMプリンターとTMプリンターの組合せにするなど、用途に応じ他の構成とすることができる。
【0039】
以上説明したような構成を有する本POS端末装置2では、元データを用いた出力先分散処理に特徴があり、以下、その具体的な処理手順について説明する。図3は、当該出力先分散処理の処理手順を例示したフローチャートである。なお、ここでは、プリンター3A及び3Bが設けられ、デバイス向けデータが印刷データである場合について説明する。
【0040】
まず、前述の通り、POSアプリケーション201から直接、又は、プリンター3A用ドライバー202を介して、元データが出力される(ステップS1)。例えば、当該元データは、プリンター3Aから出力することを想定しているレシートの印刷データであり、従って、出力先の通信ポートには通信ポート209Aが指定され、プリンター3Aに依存したコマンドで表現されている。
【0041】
次に、出力された元データは、指定された通信ポートに(ここでは、通信ポート209Aに)届く前に仮想ポート203によって受け取られる(ステップS2)。かかる処理は、いずれの通信ポート209へ向けたデータも、まず、仮想ポート203が受け取るように、レジストリーの(優先度の)設定を変更しておくことで実現され、かかる設定変更はOSの起動時に実行される。その後、受け取られた元データは、仮想ポート203からアプリケーション層220のポートハンドラー204に送付される(ステップS2)。
【0042】
次に、ポートハンドラー204は、送付された元データを、データ解析部205に転送
する(ステップS3)。データ解析部205では、元データのコマンドを解釈し、当該データの内容を解析する(ステップS4)。そして、解析結果から、処理内容及び出力先通信ポート209を決定する。
【0043】
具体的には、データ解析部205は、元データの中から上記データ格納部208に記憶されるキーワードを検出して、そのキーワードに対応付けられている処理内容を実施すると決定し、当該処理に応じた出力先の通信ポート209を決定する。当該処理は、出力先を分散する処理であり、その処理内容としては、元データの印刷内容を複数に分割し、それらを、それぞれの内容に相応しい出力先へ出力する処理(分割処理)、元データの印刷内容を複数の出力先へ出力する処理(複製処理)、及び、印刷データの出力先を変更する処理(振分処理)等があり、これらの中から所定の内容が上記キーワードに対して予め定められている。なお、より具体的な処理内容の例については後述する。
【0044】
当該データ解析部205で決定された上記出力先通信ポート209は、ポートハンドラー204に通知され、また、決定された上記処理内容は、データ加工部206に通知される。なお、元データに関わらず処理内容及び出力先が固定の場合には、当該データ解析部205は必要なく、元データはポートハンドラー204からデータ加工部206に引き渡される。
【0045】
次に、データ加工部206が元データに対するデータ加工処理を実行する(ステップS5)。具体的には、上記決定された処理内容に従って印刷データの加工を実行し、処理後印刷データを生成する。主な処理としては、上述した印刷内容の分割、出力先の仕様に合ったデータへの改変などが行われる。具体的な処理例については後述する。なお、かかる加工処理においても、上述したプリンターデータベースの情報など、必要に応じてデータ格納部208のデータが参照される。
【0046】
また、当該データ加工部206は、複数の処理内容がある場合には、各処理内容に対応した複数の加工部から構成されてもよい。また、上記データ解析部205の判断が、処理(データ加工)を行わないというものである場合には、当該データ加工部206は加工処理を実行しない。
【0047】
次に、データ加工部206で生成された上記処理後印刷データについてコマンドの変更を必要とする場合には、コマンド変換部207がコマンドの変換処理を実行する(ステップS6)。前述のとおり、印刷データは出力先のプリンター3に依存したコマンドで表現されているので、元データのコマンドと、上記決定された出力先のプリンター3のコマンドが異なる場合には、当該出力先に適したコマンドに変換する。本実施例では、元データがプリンター3A用のコマンドで表現されているので、出力先がプリンター3B(機種がプリンター3Aと異なる)に変更される場合には当該コマンド変換処理を実行する。処理後のデータはポートハンドラー204へ引き渡される。なお、コマンド変換を必要としない場合には、データ加工部206から転送された印刷データがポートハンドラー204へ引き渡される。
【0048】
次に、ポートハンドラー204は、引き渡された処理後印刷データを上記決定された通信ポート209へ出力する(ステップS7)。本実施例では、通信ポート209A及び/又は通信ポート209Bへ出力される。
【0049】
その後、印刷データが通信ポート209から接続されるプリンター3へ送信され、プリンター3において当該印刷データによる印刷が実行され、レシートなどの印刷物が出力される(ステップS8)。例えば、プリンター3Aから出力されればモノクロの印刷物が得られ、プリンター3Bから出力されればカラーの印刷物が得られる。
【0050】
以上説明したような手順で、本POS端末装置2における出力先分散処理が実行されるが、以下に、出力先分散処理の具体例を説明する。
【0051】
まず、上述した分割処理の具体例について説明する。例えば、当該POSシステムがレストランに設置され、料理内容により厨房が異なる場所にあり、各厨房にプリンター3が設けられているケースを想定する。この場合に、注文票を出力するための元データがPOSアプリケーション201から発せられ、そのデータに複数の厨房で料理する品物が含まれていれば、当該分割処理を行って、各厨房で料理すべき品物だけを示す注文票をその厨房に設けられたプリンター3から出力させる。当該処理では、データ解析部205は、上述したデータ格納部208のデータを参照し、元データに含まれる品物の文字列をキーワードにして、その品物に対応付けられている厨房(プリンター3)を出力先として決定する。データ加工部206は、その各品物に対する決定に基づいて、元データの内容を各厨房に分割し、各厨房の注文票データを生成する。その後、コマンド変換部207における必要な変換処理が行われた後、ポートハンドラー204から各注文票の印刷データが各出力先に出力される。
【0052】
また、同様の例で、元データがレシート出力のためのものである場合に、その通りレシート出力用の印刷データを出力すると共に、品物の情報を注文票の形で各厨房に分割して出力してもよい。
【0053】
次に、上述した複製処理の例としては、出力する印刷物の控も同時に出力しておきたい場合(正本と副本を作っておきたい場合)、複数毎のクーポンを早く出力した場合などがある。かかる印刷データの処理では、データ解析部205が、元データに含まれる所定のキーワードを検出した場合に、例えば、所定のクーポン券を示す文字列を検出した場合に、複製処理を行うと決定し、データ加工部206が、当該決定に従って各プリンター3へ出力する印刷データを同じ印刷内容で生成する。その後、コマンド変換部207における必要な変換処理が行われた後、ポートハンドラー204から各印刷データが各出力先に出力される。
【0054】
また、上述した振分処理の例としては、出力する印刷物の種類に応じて適切なプリンター3で印刷されるように出力先を決定する場合がある。例えば、印刷物がレシートである場合には、モノクロであるプリンター3Aから出力されるように処理し、印刷物がクーポンである場合には、カラーであるプリンター3Bから出力されるように処理する。また、印刷物が保証書である場合には、色があせないようにSIDMプリンターから出力されるように出力先を決定するといったこともできる。また、印刷物によって印刷紙の品質を変えたい場合にも、備えられる印刷紙が異なるプリンター3を備えれば、同様の処理で実現できる。
【0055】
かかる振分処理では、データ解析部205が、元データに含まれる所定のキーワードを検出してその印刷物の種類を把握し、その種類に相応したプリンター3を決定する。データ加工部206は、当該決定に従ってそのプリンター3へ出力する印刷データを生成する。その後、コマンド変換部207における必要な変換処理が行われた後、ポートハンドラー204から印刷データが出力先に出力される。
【0056】
また、本POS端末装置2にディスプレイ5とプリンター3Bが接続される構成の場合には、POSアプリケーション201から同じ通信ポート209Aへ出力された、ディスプレイ5向けの表示データとプリンター3B向けの印刷データを、それぞれ、所定の出力先に振り分ける(分散する)処理が行われる。前述したように、POSアプリケーション201は従来装置に備えられていたものであるので、従来装置が、シリアル通信の通信ポ
ートを一つのみ備え、そこから、プリンターとディスプレイがシリアルに接続されている場合には、POSアプリケーション201からプリンター3用データとディスプレイ5用データが同じその通信ポートへ出力されるからである。
【0057】
具体的には、図3に基づいて説明した全て印刷データである場合と同様に、どちらかのデータを仮想ポート203が取得して、当該データがポートハンドラー204を介してデータ解析部205に渡される。データ解析部205では、データの種類が印刷データであるか表示データであるかを解析し、その結果に応じて出力先デバイス及びそのデバイスが接続される通信ポート209を決定する。その後、出力先に応じた所定の処理がデータ加工部206及びコマンド変換部207で行われて、処理後のデータがポートハンドラー204を介して、決定された通信ポート209へ出力される。そして、印刷データである場合には、プリンター3Bから出力され、表示データである場合には、ディスプレイ5に表示が行われる。
【0058】
なお、POSアプリケーション201からデバイス切替信号が出力される場合には、データ解析部205が、当該信号を検出することにより、出力先の通信ポート209を決定することもできる。すなわち、図2に示すように、1つのディスプレイ5と1つのプリンター3Bが接続される構成においては、上記デバイス切替信号が出力されることにより、切替先が決定するので、その信号の有無により通信ポート209を決定することができる。
【0059】
以上説明したように、本実施の形態例に係るPOS端末装置2では、POSアプリケーション201から出力されたデータの出力先分散処理を実行することができる。そして、当該処理を行わないPOS端末装置及びPOSシステムを、比較的容易な方法で本POS端末装置2及びそれを含むPOSシステムに改良することができる。
【0060】
図4は、当該改良を説明するための図である。当該図は、図2と同じ機能構成図であり、実線部分が上述した改良前のPOS端末装置及びPOSシステムを示している。すなわち、改良前のシステムは、POSアプリケーション201から直接又はプリンタードライバー202を介して出力されたデータが通信ポート209Aで受け取られ、プリンター3A又はディスプレイ5から出力がなされる構成となっている。そして、このような構成のシステムに対して、破線で示される部分を追加することにより、本POS端末装置2及びそれを含むPOSシステムにすることが可能である。
【0061】
すなわち、既存のPOSアプリケーション201を変更することなく、上述したデータ処理プログラム、データ格納部208のデータ、及び新たなプリンター3Bを追加することにより、既存のPOSシステムの機能の拡張が可能となる。そして、この改良(追加)は、新たなプリンター3Bの設置と上記データ処理プログラムとデータを含む当該プリンタードライバーソフトウェアのインストールという作業で実行され得る。なお、プリンター3Aやディスプレイ5も新設してよいし、さらに、既存のPOSアプリケーション201のプログラムを変えずに、POS端末装置2を構成するコンピューター自体を新しいものに変えてもよい。
【0062】
このように、本実施の形態例に係る分散処理プログラムを用いることにより、既存のPOSアプリケーションプログラムの変更を伴わない容易な方法で、多彩な出力先の分散処理によるPOSシステムの機能拡張を実現することができるようになる。また、それを実現するための主な処理は、コンピューターのアプリケーション層で行うように構成するので、多彩な処理を実行させるプログラムの開発を容易に行うことができる。
【0063】
また、当該プログラムの適用により、出力がよりユーザーに相応しい内容で実行できる
ようになるので、ユーザー利便性を向上させることができる。
【0064】
また、当該プログラムの適用により、出力が分散されるので、所定のケースでは、出力を早く行うことができるようになる。また、合わせて、コンピューターや通信形態を新しいものに変えることにより、より出力を早くすることができる。
【0065】
なお、本実施の形態例では、POSサーバー1が複数のPOS端末装置2と接続されるシステムであったが、本発明は、当該構成に限らず、POS端末装置とプリンター等が接続される環境に対して適用することができる。
【0066】
また、本実施の形態例ではPOSシステムの例を示したが、本発明は、POSシステムに限らず、病院や運送会社で使用されるシステムなど、プリンターからの印刷物の出力を含む所定のアプリケーションを備えたシステムに適用可能であり、特に、既存のアプリケーションプログラムの改変が困難である場合に有効である。
【0067】
また、本実施の形態例では、POSアプリケーションのプログラムや分散処理のためのプログラムがROMに記憶されている例を示したが、これらプログラムはROMに限らず、RAMやHDD等の記憶媒体に記憶されていてもよい。また、これらプログラムは別々の記憶媒体に記憶されていてもよい。
【0068】
本発明の保護範囲は、上記の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【符号の説明】
【0069】
1 POSサーバー、 2 POS端末装置(分散処理装置)、 3 プリンター、 4 ネットワーク、 5 ディスプレイ、 21 POS端末本体、 23 キーボード、 24 バーコードリーダー、 25 カードリーダー、 201 POSアプリケーション、 202 プリンター3A用ドライバー、 203 仮想ポート、 204 ポートハンドラー、 205 データ解析部、 206 データ加工部、 207 コマンド変換部、 208 データ格納部、 209 通信ポート、 220 アプリケーション層、 230 OSカーネル層、 240 物理層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
OSカーネル層のオペレーティングシステムによって動作しアプリケーション層に備えられるアプリケーションによって所定の処理を実行する、2以上の通信ポートを有するコンピューターに、前記アプリケーションから出力されるデバイス向けデータの分散処理を実行させる分散処理プログラムであって、
所定の1の前記通信ポートへ出力される前記デバイス向けデータを、当該通信ポートが受け取る前に、前記OSカーネル層で取得するデータ取得工程と、
前記アプリケーション層で、前記データ取得工程で取得されたデバイス向けデータを解析し、当該解析の結果に基づいて、当該デバイス向けデータを出力するデバイスを決定し、当該決定したデバイスが接続される通信ポートにデバイス向けデータを出力するデータ処理工程と、を前記コンピューターに実行させる
ことを特徴とする分散処理プログラム。
【請求項2】
請求項1において、
前記接続されるデバイスは、印刷装置及び表示装置であり、
前記アプリケーションから出力されるデバイス向けデータは、印刷装置向けデータ又は表示装置向けデータである
ことを特徴とする分散処理プログラム。
【請求項3】
請求項1あるいは2において、
前記接続されるデバイスの数が2であり、前記アプリケーションから出力されるデバイス向けデータにデバイス切替信号が含まれる場合には、当該切替信号に基づいて前記出力するデバイスが決定される
ことを特徴とする分散処理プログラム。
【請求項4】
OSカーネル層のオペレーティングシステムによって動作しアプリケーション層に備えられるアプリケーションによって所定の処理を実行する、2以上の通信ポートを有するコンピューターで構成され、前記アプリケーションから出力されるデバイス向けデータの分散処理を実行する分散処理装置であって、
所定の1の前記通信ポートへ出力される前記デバイス向けデータを、当該通信ポートが受け取る前に、前記OSカーネル層で取得するデータ取得部と、
前記アプリケーション層で、前記データ取得部で取得されたデバイス向けデータを解析し、当該解析の結果に基づいて、当該デバイス向けデータを出力するデバイスを決定し、当該決定したデバイスが接続される通信ポートにデバイス向けデータを出力するデータ処理部と、を有する
ことを特徴とする分散処理装置。
【請求項5】
OSカーネル層のオペレーティングシステムによって動作しアプリケーション層に備えられるアプリケーションによって所定の処理を実行する、2以上の通信ポートを有するコンピューターにおいて、前記アプリケーションから出力されるデバイス向けデータの分散処理を実行する分散処理方法であって、
前記コンピューターが、所定の1の前記通信ポートへ出力される前記デバイス向けデータを、当該通信ポートが受け取る前に、前記OSカーネル層で取得するデータ取得工程と、
前記コンピューターが、前記アプリケーション層で、前記データ取得工程で取得されたデバイス向けデータを解析し、当該解析の結果に基づいて、当該デバイス向けデータを出力するデバイスを決定し、当該決定したデバイスが接続される通信ポートにデバイス向けデータを出力するデータ処理工程と、を有する
ことを特徴とする分散処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−59102(P2012−59102A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202776(P2010−202776)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】