説明

デュアルアキシャルギャップ型回転機

【課題】デュアルアキシャルギャップ型回転機の回転軸方向に沿う長さを短くして、薄型化や扁平化を図る。
【解決手段】ロータコア101とロータシャフト102と永久磁石103a,103bによりロータが構成されており、このロータは、ケース105内に収納されている。ケース105内には、周方向に沿い等間隔に複数のステータコア片121が配置されている。巻線122が巻回されたステータコア片121は、その軸方向に沿う両端面が、ケース105のブラケット105a,105bの内周面に固定されている。このため、ステータのヨークが不要になり、回転軸方向に沿う長さが短くなりモータが薄型や扁平にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデュアルアキシャルギャップ型回転機に関し、従来技術のものに比較して、より扁平で薄型な回転機を実現するように工夫をしたものである。
【背景技術】
【0002】
デュアルアキシャルギャップ型モータとは、概略的に言うと、ロータコアを間に挟んでステータコアが対向して配置されることにより、ロータコアとステータコアとの間にギャップが2つ形成され、この2つのギャップが軸方向に沿って並んでいるモータのことをいう。
【0003】
ここで、従来の4極6スロットのデュアルアキシャルギャップ型モータの詳細構造について、断面図である図6、及び、ケースを省略して示す図7を参照して説明する。
【0004】
両図に示すように、ロータコア1は円板状をなしており、このロータコア1の回転中心部から回転軸方向に沿ってロータシャフト2が両側に伸びた状態で形成されている。ロータコア1とロータシャフト2は一体的に形成されている。
ロータコア1の一方の端面(図6では右側の円環状の端面)1aには、界磁極となる永久磁石3aが配置されており、ロータコア1の他方の端面(図6では左側の円環状の端面)1bには、界磁極となる永久磁石3bが配置されている。
【0005】
上記のロータコア1とロータシャフト2と永久磁石3a,3bによりロータ(回転子)が構成されており、このロータ(回転子)は、ケース5内に収納されている。
そして、ケース5のブラケット5a,5bに備えた一対の軸受6a,6bが、ロータシャフト2を回転自在に支持している。
【0006】
ケース5内には、第1のステータコア10と、第2のステータコア20が配置されている。
第1のステータコア10は、リング板状のヨーク(継鉄)11と、複数のティース12とで形成されている。ヨーク11と複数のティース12は一体的に形成されている。ヨーク11は、ケース5の一方のブラケット5aの内周面に取り付けられている。各ティース12には、巻線13が巻回されている。
第2のステータコア20は、リング板状のヨーク(継鉄)21と、複数のティース22とで形成されている。ヨーク21と複数のティース22は一体的に形成されている。ヨーク21は、ケース5の他方のブラケット5bの内周面に取り付けられている。各ティース22には、巻線23が巻回されている。
【0007】
デュアルアキシャルギャップ型モータは、一般的な片側のギャップを有するアキシャルギャップ型モータと比較して、トルクを発生させるギャップが2倍であるため、トルクは2倍となり出力密度が高い。
また、デュアルアキシャルギャップ型モータは、一般的な片側だけのギャップを有するアキシャルギャップ型モータと比較して、ロータと一方のステータとの間で回転軸方向に沿って働くスラスト力が、ロータと他方のステータとの間で回転軸方向に沿って働くスラスト力とキャンセルすることができる点で望ましい。
【0008】
また参考文献として挙げた特許文献1(特開平10−164779号公報)に記載されている「アクシャルギャップ同期機」では、ロータに対して、一対のステータがその回転軸における両側から対向する構造のデュアルアキシャルギャップ型モータが開示されている。
特許文献1に示す技術では、ロータと一方のステータとの間で回転軸方向に沿って働くスラスト力が、ロータと他方のステータとの間で回転軸方向に沿って働くスラスト力によりキャンセルされるという点で望ましい。
【0009】
また参考文献としてあげた特許文献2(特開2004−222492号公報)に記載されている「三次元ステーター構造の回転機」では、ステータ構造が三次元構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−164779号公報
【特許文献2】特開2004−222492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図6及び図7に示す従来のデュアルアキシャルギャップ型モータでは、2枚のヨーク11,21が必要であるため、ヨーク11,21の厚さに相当する分だけモータの回転軸方向に沿う長さL1が長くなり、デュアルアキシャルギャップ型モータの厚さが厚く大型になっていた。
【0012】
特許文献1の技術では、巻線を回転軸方向に配置し、更にはステータコアを繋ぐ継鉄(ヨーク)も必要となるため、回転軸方向に厚みが増えてしまう問題がある。
【0013】
特許文献2の技術では、巻線を回転軸方向に配置しているため、回転軸方向に厚みが増えてしまう問題がある。また、巻線が多くの箇所に配置されているため、巻線作業が煩雑である。
【0014】
本発明は、上記従来技術に鑑み、モータの回転軸方向に沿う長さを短くして薄型化を図ったデュアルアキシャルギャップ型回転機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決する本発明の構成は、
円板状のロータコアと、前記ロータコアの回転中心部から回転軸方向に沿って伸びたロータシャフトと、前記ロータコアの一方の端面および他方の端面に配置された永久磁石とでなるロータと、
前記ロータが収納されると共に、ブラケットに備えた軸受により前記ロータシャフトを回転自在に支持するケースと、
前記ケース内において、前記ロータコアの周方向に沿い等間隔に配置された複数のステータコア片と、各ステータコア片に巻回された巻線とを有し、
前記ステータコア片は、前記ロータコアの一方の端面のうち前記永久磁石が配置された面と、前記ロータコアの周面と、前記ロータコアの他方の端面のうち前記永久磁石が配置された面に対して隙間をとって対向配置されるよう湾曲しているとともに、
前記ステータコア片は、その軸方向に沿う一方の端面が前記ケースの一方のブラケットの内周面に取り付けられ、その軸方向に沿う他方の端面が前記ケースの他方のブラケットの内周面に取り付けられており、
前記巻線は、前記ステータコア片のうち前記ロータコアの周面に対して径方向に沿って対向する部分に巻回されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のデュアルアキシャルギャップ型回転機(モータ)は、従来のデュアルアキシャルギャップ型モータのヨークをなくし、ティースを径方向で繋げて、回転軸方向に配置された巻線を、ロータの径方向に配置した構造であるため、モータの回転軸方向に沿う長さを短くすることができ、モータの薄型化や扁平化を図ることができる。
【0017】
また、本発明のデュアルアキシャルギャップ型回転機(モータ)は、特許文献2の構造と比較しても、回転軸方向に巻線がないため回転軸方向のモータ寸法をより短くすることが可能であり、巻線箇所が少なく、ステータコアが巻線毎に分かれているため巻線作業が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例に係るデュアルアキシャルギャップ型モータを示す断面図。
【図2】本発明の実施例に係るデュアルアキシャルギャップ型モータを、ケースを省略して示す斜視図。
【図3】本発明の実施例に用いるステータコア片の一例を示す斜視図。
【図4】本発明の実施例に用いるステータコア片の一例を示す斜視図。
【図5】本発明の実施例に用いるステータコア片の一例を示す斜視図。
【図6】従来のデュアルアキシャルギャップ型モータを示す断面図。
【図7】従来のデュアルアキシャルギャップ型モータを、ケースを省略して示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例】
【0020】
ここで、本発明の実施例に係る4極6スロットのデュアルアキシャルギャップ型モータの詳細構造について、断面図である図1、及び、ケースを省略して示す図2を参照して説明する。
【0021】
両図に示すように、ロータコア101は円板状をなしており、このロータコア101の回転中心部から回転軸方向に沿ってロータシャフト102が両側に伸びた状態で形成されている。ロータコア101とロータシャフト102は一体的に形成されている。
ロータコア101の一方の端面(図1では右側の円環状の端面)101aには、界磁極となる永久磁石103aが配置されており、ロータコア101の他方の端面(図1では左側の円環状の端面)101bには、界磁極となる永久磁石103bが配置されている。
【0022】
上記のロータコア101とロータシャフト102と永久磁石103a,103bによりロータ(回転子)が構成されており、このロータ(回転子)は、ケース105内に収納されている。
そして、ケース105のブラケット105a,105bに備えた一対の軸受106a,106bが、ロータシャフト102を回転自在に支持している。
【0023】
ケース105内には、複数(本例では6個)のステータコア片121からなるステータコア120が収納・配置されている。
【0024】
各ステータコア片121は、断面形状がほぼC字形状となった湾曲部材であり、ロータコア101の一方の端面101aのうち永久磁石103aが配置された面と、ロータコア101の周面と、ロータコア101の他方の端面101bのうち永久磁石103bが配置された面に対して、隙間をとって対向配置されている。
ステータコア片121は、後述するように、電磁鋼板や圧粉磁心により形成されている。
【0025】
各ステータコア片121は、その軸方向に沿う一方の端面が、ケース105の一方のブラケット105aの内周面に取り付けられ、その軸方向に沿う他方の端面が、ケース105の他方のブラケット105bの内周面に取り付けられて固定設置されている。
しかも、このような複数のステータコア片121は、ロータコア101の周方向に沿い等間隔で配置されている。
【0026】
各ステータコア片121には、それぞれ、巻線122が巻回されている。巻線122が巻回されている位置は、ステータコア片121のうち、ロータコア101の周面に対して、径方向に沿って対向する部分である。
【0027】
結局、本実施例のデュアルアキシャルギャップ型モータは、概略的に言うと、従来のデュアルアキシャルギャップ型モータのヨークをなくし、ティースを径方向で繋げて、回転軸方向に配置されていた巻線を、径方向に配置した構成となっている。
このように、本実施例のデュアルアキシャルギャップ型モータは、ヨークが無い分だけ、モータの回転軸方向に沿う長さLを短くして扁平にすることができ、薄型化や扁平化を図ることができる。
【0028】
また、特許文献2の構造と比較しても、回転軸方向に巻線がないため回転軸方向のモータ寸法を短くすることが可能である。更には巻線箇所が少なく(合計6か所)、ステータコアが巻線毎に分かれているため巻線作業が容易である。
【0029】
本実施例のデュアルアキシャルギャップ型モータの動作原理は、従来のラジアルギャップ型及びアキシャルギャップ型のモータと同じであり、以下のようになる。
1) 巻線122にロータの回転速度に応じた周波数の交流電流を流して発生する磁束を、ステータコア101に通すことで永久磁石103a,103bの対向面に4極の回転電磁石を作る。
例えば、図1,図2の構造の場合、U,V,W各相の巻線を巻き回したステータコア121が2つずつあり、U相がピークのときにV相とW相は磁束の向きが反対でU相から出
た磁束を半分ずつ受けて2極を構成するので、図1,図2の構成では4極となる。また、時間と共に回転方向に磁束の強弱が移動するので、回転電磁石となる。
2) 上記の4極の回転磁石と永久磁石103a,103bの間で、反発力または吸引力が働き、永久磁石103a,103bが回転方向に力を受ける。
3) 永久磁石103a,103bはロータシャフト102(ロータコア101)に固定されているため、永久磁石103a,103bに働く回転力で永久磁石103a,103bとロータシャフト102(ロータコア101)が共に回転する。
【0030】
本実施例のデュアルアキシャルギャップ型モータのステータコア片121の構成として、「電磁鋼板」を用いた場合と、磁性粉末を樹脂で焼結した「圧粉磁心」を用いた場合と、「電磁鋼板」と「圧粉磁心」の両方を用いた場合が考えられる。
【0031】
図3は、ステータコア片121を、「電磁鋼板」のみで形成した場合のステータコア片1個分の形状例を示す。
図4は、ステータコア片121を、に「圧粉磁心」のみで形成した場合のステータコア片1個分の形状例を示す。
図5は、ステータコア片121を、「電磁鋼板121a」と「圧粉磁心121b」を用いて形成した場合のステータコア片1個分の形状例を示す。
【符号の説明】
【0032】
101 ロータコア
102 ロータシャフト
103a,103b 永久磁石
105 ケース
105a,105b ブラケット
106a,106b 軸受
120 ステータコア
121 ステータコア片
122 巻線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状のロータコアと、前記ロータコアの回転中心部から回転軸方向に沿って伸びたロータシャフトと、前記ロータコアの一方の端面および他方の端面に配置された永久磁石とでなるロータと、
前記ロータが収納されると共に、ブラケットに備えた軸受により前記ロータシャフトを回転自在に支持するケースと、
前記ケース内において、前記ロータコアの周方向に沿い等間隔に配置された複数のステータコア片と、各ステータコア片に巻回された巻線とを有し、
前記ステータコア片は、前記ロータコアの一方の端面のうち前記永久磁石が配置された面と、前記ロータコアの周面と、前記ロータコアの他方の端面のうち前記永久磁石が配置された面に対して隙間をとって対向配置されるよう湾曲しているとともに、
前記ステータコア片は、その軸方向に沿う一方の端面が前記ケースの一方のブラケットの内周面に取り付けられ、その軸方向に沿う他方の端面が前記ケースの他方のブラケットの内周面に取り付けられており、
前記巻線は、前記ステータコア片のうち前記ロータコアの周面に対して径方向に沿って対向する部分に巻回されている
ことを特徴とするデュアルアキシャルギャップ型回転機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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