説明

デュアル圧力センサ

【課題】部品点数を削減して簡素化するとともに組立作業性、気密性を向上させるようにしたデュアル圧力センサを提供する。
【解決手段】
各感圧ダイヤフラムチップ16A、16Bをそれぞれ台座15A、15Bに固着することにより2つの圧力センサユニット3A、3Bを形成する。台座15A、15Bを、内部が連通路21a、21bを形成する台座本体15A−1、15B−1と、台座本体15A−1、15B−1に一体に突設された圧力導入部15A−2、15B−2とでそれぞれ構成し、各圧力導入部15A−2、15B−2を気密容器2に形成した挿通孔11a、11bより外部に突出させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュアル圧力センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
2つの導圧管から導入された2つの被測定圧力を、感圧ダイヤフラムの両面に加え、その変形を拡散型歪みゲージによって電気信号に変換することにより、2つの被測定圧力を検出するようにしたデュアル圧力センサとしては、例えば特許文献1に開示されている半導体圧力センサが知られている。
【0003】
前記引用文献1に開示されている半導体圧力センサは、2つの被測定圧力をそれぞれ感圧ダイヤフラムチップによって一旦個別に検出した後、これらの検出圧力を減算することにより流体の差圧を測定するようにしている。このため、この半導体圧力センサは、2つの被測定圧力にそれぞれ専用される2つの感圧ダイヤフラムチップと、この2つの感圧ダイヤフラムチップを同時に気密に装着し、しかも2つの感圧ダイヤフラムチップに対応する2つの貫通孔を有する1つの台座と、前記2つの感圧ダイヤフラムチップと1つの台座とを気密に覆い、しかも2つの貫通孔に対応する2本の導圧管を有する気密容器とを備えている。そして、気密容器の内部を2つの感圧ダイヤフラムチップに対して共通の圧力基準室とし、各感圧ダイヤフラムチップからの出力を端子によって気密容器から外部に取り出すようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−52691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した特許文献1に記載されている半導体圧力センサは、気密容器の底部に設けられた2本の導圧管と、各測定圧力を測定する2つの感圧ダイヤフラムチップと、各感圧ダイヤフラムチップが搭載された1つの台座と、各感圧ダイヤフラムチップにワイヤボンディングによって電気的に接続された2本の端子とを備えているので、部品点数が多くて組立作業に長時間を要し、センサの組立作業性が低いという問題があった。
【0006】
また、特に1つの台座を2つの感圧ダイヤフラムチップに対して共通に用いているので、いずれか一方の感圧ダイヤフラムチップが何らかの原因で破損した場合でも、台座毎、言い換えればセンサ全体を新しいものと交換しなければならず、正常な感圧ダイヤフラムチップが無駄になり不経済である。また、各導圧管を別個に製作して蓋部に固着しているため、気密性の高い取付けが要求されるという問題もあった。
【0007】
本発明は上記した従来の問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、部品点数を削減して簡素化するとともに組立作業性、気密性を向上させるようにしたデュアル圧力センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、2つの被測定圧力を2つの感圧ダイヤフラムチップのダイヤフラムにぞれぞれ印加して各ダイヤフラムの変位を電気信号に変換し、前記2つの被測定圧力を検出するデュアル圧力センサにおいて、前記各感圧ダイヤフラムチップをそれぞれ個別の台座に固着することにより2つの圧力センサユニットとし、前記台座を、内部が連通路を形成し前記感圧ダイヤフラムチップが固着される台座本体と、この台座本体に一体に突設され前記連通路を介して被測定圧力を前記感圧ダイヤフラムチップのダイヤフラムに導く圧力導入部とで構成し、前記2つの圧力センサユニットを内部が圧力基準室を形成する気密容器内に並設し、前記各台座の圧力導入部を前記気密容器に設けた挿通孔より外部に突出させたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、圧力導入部を台座に一体に設けているので、部品点数を削減でき、簡素化を可能にするとともにセンサの組立作業が容易で組立作業性を向上させることができる。また、圧力導入部は、気密容器に固着する必要がなく、挿通孔にシール部材を介して挿通するだけでよいので、圧力導入部と挿通孔との間のシール構造も簡単で組立作業性がよく、生産性を向上させることができる。
また、2つの圧力センサユニットは個々に独立しているため、いずれか一方の圧力センサユニットが故障した場合、その圧力センサユニットのみを新しい圧力センサユニットと交換するだけでよく、デュアル圧力センサ全体を新しいものと交換する必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1(a)、(b)、(c)は本発明に係るデュアル圧力センサの正面図、平面図および側面図、図2は図1のII−II線断面図、図3は図2のIII −III 線平面図である。これらの図において、全体を参照符号1で示すデュアル圧力センサは、気密容器2と、この気密容器内2に収納された2つの圧力センサユニット3A、3Bと、基板4等を備えている。
【0011】
前記気密容器2は、合成樹脂等によって形成された上方に開放する有底箱型のケース7と、同じく合成樹脂等によって形成され、前記ケース7の上方開口部を気密に覆う蓋体8とで構成され、内部が2つの圧力センサユニット3A、3Bに対して共通の圧力基準室9を形成している。また、ケース7は、底板7aと、この底板7aの各辺に沿って一体に立設された4つの側板7b〜7eとによって直交する2辺の長さの比が略2対1の矩形箱型に形成され、内部に前記2つの圧力センサユニット3A、3Bが互いに密接して並設されている。ケース7の内面の各隅角部と、対向する長辺側の側板7d、7eの内面の長手方向中央には、各圧力センサユニット3A、3Bを位置決めする三角柱状の位置決め用突出部10がそれぞれ一体に設けられている。また、底板7aには、2つの挿通孔11a、11bが各圧力センサユニット3A、3Bに対応して形成されている。
【0012】
前記蓋体8は、下面に淺い凹陥部12を有する平板状に形成され、前記ケース7の上面に図示を省略したシール部材を介してねじ止め固定されることにより、ケース7の開口部を気密に密封している。蓋体8の上面中央には、外部信号線13の一端が接続されるコネクタ部14が設けられている。
【0013】
前記圧力センサユニット3Aは、台座15Aと、感圧ダイヤフラムチップ16Aと、出力補正回路17Aとで構成されている。
【0014】
前記台座15Aは、合成樹脂によって一体に形成されることにより、台座本体15A−1と、この台座本体15A−1の下面中央に一体に突設された圧力導入部15A−2とで構成されている。台座本体15A−1は、ケース7の内部形状の半分の大きさと略一致する平面視正方形の薄箱型に形成されて内部が連通路21aを形成し、上面には前記感圧ダイヤフラムチップ16Aに被測定圧力P1 を導くための小孔22aが形成されている。台座本体15A−1の四隅部は、前記位置決め用突出部10に対応して斜めに切り落とされている。なお、台座本体15A−1を大きく形成して、連通路21aの容積を大きくした理由は、被測定圧力P1 の急激な変動を吸収し、ダイヤフラムの破損を防止するためである。
【0015】
前記圧力導入部15A−2は、円筒状に形成されて、内部が前記台座本体15A−1の連通路21aに連通し、前記被測定圧力P1 を前記連通路21aおよび小孔22aを介して感圧ダイヤフラムチップ16Aに導く圧力導入孔23aを形成している。
【0016】
前記感圧ダイヤフラムチップ16Aは、薄肉の感圧部(ダイヤフラム)が形成された半導体基板(シリコン)と、この半導体基板に不純物もしくはイオンの打ち込み技術によって形成され前記ダイヤフラムの被測定圧力P1 による歪みをピエゾ抵抗効果を利用して検出し電気信号に変換する拡散型歪みゲージとで公知の半導体圧力センサ(例えば、特開平06−213743号公報等)を構成しており、前記基板4の電気回路にボンディングワイヤ25aを介して電気的に接続されている。そして、感圧ダイヤフラムチップ16Aは、台座本体15A−1の上面に固着され、前記小孔22aから被測定圧力P1 がダイヤフラムの一方の面に印加されている。なお、他方の面には、気密容器2内の圧力が基準圧力として印加されている。
【0017】
前記出力補正回路17Aは、前記感圧ダイヤフラムチップ16Aによって検出された
被測定圧力P1 を補正するための回路で、回路内に測温抵抗素子を有し、この測温抵抗素子の抵抗値に基づいて被測定圧力P1 を補正するものであり、前記台座本体15A−1の上面に固着され、感圧ダイヤフラムチップ16Aにボンディングワイヤ26aを介して電気的に接続されている。
【0018】
前記圧力センサユニット3Bは、前記圧力センサユニット3Aと同一構造に形成されているため、同一構成部材、部分についてはその数字の添え字「A」、「a」、「−1」を「B」、「b」、「−2」にそれぞれ置き換えて示し、その説明を省略する。
【0019】
このような圧力センサユニット3Aと3Bは、ケース7内に互いに密接して並設されることにより、図3に示すように台座15Aと15Bの台座本体15A−1、15B−1がケース内面と位置決め用突出部10とによって位置決めされ、互いに対向する側面20aどうしが接触し、残り3つの側面20b〜20dがケース7の内面にそれぞれ接触し、台座本体15A−1、15B−1の底面が底板7aの内面に接触している。そして、各台座15A、15Bの圧力導入部15A−2、15B−2は、底板7aの挿通孔11a、11bからケース7の下方に図示を省略したOリングを介して突出され、圧力配管24A、24Bにそれぞれ接続されている。なお、各圧力センサユニット3A、3Bは、ケース7内に収納されると、止めねじによって固定される。このように、2つの台座本体15A−1、15B−1の側面20aどうしを互いに接触させておくと、2つの台座15A、15Bの温度を等しくすることができる。
【0020】
前記基板4は、ボンディングワイヤ25a、25bがボンディングされた後、圧力センサユニット3A、3Bとともに前記ケース7内に収容されると、複数個の止めねじによって位置決め用突出部10に固定され、リード線28が蓋体8のコネクタ部14に接続される。
【0021】
このようなデュアル圧力センサ1は、例えば弁本体内を流れる流体の流量を制御する流量制御弁と組合わせて、差圧式流量計測により幅広く流量を測定できる。
【0022】
流量制御弁の流路内を流れる流体の流量Qは、弁体の一次側(上流側)流路と二次側(下流側)流路中の流体の差圧と、弁体の開度で決まる流量係数(Cv値)から次式(1)によって算出することができる。
【0023】
Q=A・Cv・√ΔP ・・・・(1)
ただし、Aは定数、ΔPは流体の上流側と下流側の圧力差である。
一般に固定オリフィスを用いた差圧式流量計測に比べ、流量制御弁の開度に応じて絞り効果が変わるために幅広い流量の測定が可能になる。また、流量制御弁部の配管圧力が判るため、流量を測定する他に圧力異常などの診断にもその情報を利用することができる。
【0024】
デュアル圧力センサ1は、流量制御弁に取付けられると、一方の圧力センサユニット3Aの台座15Aの圧力導入部15A−2が流量制御弁に導圧管24Aを介して接続され、弁体より上流側の被測定圧力P1 が感圧ダイヤフラムチップ16Aのダイヤフラムに印加される。また、他方の圧力センサユニット3Bの台座3Bの圧力導入部15B−2は、流量制御弁に導圧管24Bを介して接続され、弁体より下流側の被測定圧力P2 が感圧ダイヤフラムチップ16Bのダイヤフラムに印加される。このため、各感圧ダイヤフラムチップ16A、16Bのダイヤフラムは、印加された圧力P1 、P2 に応じて歪み、この歪みにより拡散型歪みゲージの出力電圧が変化することで、圧力P1 、P2 が測定される。この場合、ダイヤフラムには気密容器2内の圧力が基準圧力として印加されているので、各感圧ダイヤフラムチップ16A、16Bの出力電圧は、それぞれ被測定圧力P1 、P2 に相当する絶対圧の出力電圧となる。そして、各感圧ダイヤフラムチップ16A、16Bの出力電圧は、出力補正回路17A、17Bに送られる。出力補正回路17A、17Bでは、それぞれの回路内の測温抵抗素子の抵抗値に基づいて温度補償した後、出力補正されたそれぞれの被測定圧力P1 、P2 を外部信号線13を介してこのデュアル圧力センサ1に接続されている流量測定装置(図示せず)に送る。そして、流量測定装置では、受信した出力補正されたそれぞれの被測定圧力P1 、P2 から差圧ΔP(P1−P2)を算出し、この差圧ΔPを上記式1に代入して演算処理することにより、流量制御弁を流れる流体の流量Qが測定される。
【0025】
このような構造からなる流量制御弁1においては、各台座15A、15Bに圧力導入部15A−2、15B−2をそれぞれ一体に突設しているので、部品点数を削減することができる。また、前述した特許文献1のように圧力導入部15A−2、15B−2を別部材によって製作した場合は、ケース7の下面に位置決めして気密に固定する必要があるが、本発明においては挿通孔11a、11bにOリング等のシール部材を介して挿通するだけでよいため、圧力導入部15A−2、15B−2の取付作業が容易で、センサの組立性を向上させることができる。
【0026】
また、個々独立した2つの圧力センサユニット3A、3Bを備えているので、いずれか一方が故障した場合、その故障したセンサユニットのみを新しいものと交換するだけで、センサ全体を交換する必要がなく、経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)、(b)、(c)は本発明に係るデュアル圧力センサの正面図、平面図および側面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図2のIII −III 線平面図である。
【符号の説明】
【0028】
1…デュアル圧力センサ、2…気密容器、3A、3B…圧力センサユニット、4…基板、7…ケース、8…蓋体、9…圧力基準室、11a、11b…挿通孔、15A、15B…台座、15A−1、15B−1…台座本体、15A−2、15B−2…圧力導入部、16A、16B…感圧ダイヤフラムチップ、21a、21b…連通路、22a、22b…小孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの被測定圧力を2つの感圧ダイヤフラムチップのダイヤフラムにぞれぞれ印加して各ダイヤフラムの変位を電気信号に変換し、前記2つの被測定圧力を検出するデュアル圧力センサにおいて、
前記各感圧ダイヤフラムチップをそれぞれ個別の台座に固着することにより2つの圧力センサユニットとし、
前記台座を、内部が連通路を形成し前記感圧ダイヤフラムチップが固着される台座本体と、この台座本体に一体に突設され前記連通路を介して被測定圧力を前記感圧ダイヤフラムチップのダイヤフラムに導く圧力導入部とで構成し、
前記2つの圧力センサユニットを内部が圧力基準室を形成する気密容器内に並設し、前記各台座の圧力導入部を前記気密容器に設けた挿通孔より外部に突出させたことを特徴とするデュアル圧力センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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