説明

デルタ運動ロボット

【課題】パラレルリンク式のロボットにおいて、ツール取付部に対して垂直軸回りの自由度を、小さな機械的作用で駆動可能とすること。
【解決手段】ツール取付部10を有するデルタ運動ロボットにおいて、前記ツール取付部10は、制御アーム12を介してロボット基部14に接続されているジョイントプレートと、前記ツール取付部10に取り付けられたツールを回転させる駆動部と、を有し、前記駆動部は前記ジョイントプレートに固定されていることを制御アーム12を介してロボット基部に接続されているジョイントプレートと、前記ツール取付部10によって取り付けられたツールを回転させる駆動部と、を有し、当該駆動部は当該ジョイントプレートに固定される構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デルタ運動ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
デルタ原理で動作するデルタロボットまたはパラレルロボットとも称されるロボットは、一般的に知られており、食料品産業の分野等において真空吸引器または把持器で食製品のポーション等の軽い物体を迅速かつ正確に位置決めするために使用されている。デルタ運動特有の利点は高い運動性及び位置決めの格別な正確性にある。
【0003】
デルタロボットは一般的に、通常は固定的に設けられるロボット基部と、ロボット基部に対して移動自在でありかつ利用分野の各々に適合したツール(把持器等)が取り付けられるツール取付部と、を有する。ツール取付部は、少なくとも3つのモータ駆動の移動自在制御アームによってロボット基部に接続される。制御アームの各々は、ロボット基部に固定されている上腕部、及び上腕部に枢動自在に接続されてツール取付部を案内する前腕部を含む。
【0004】
移動自在ツール取付部に伝達されるべきトルクを有する回転駆動部は、通常はロボット基部の領域内に固定態様にて設けられ、ツール取付部に取り付けられたツールを第4の軸とも称されるツールの軸周りに回転させる。
【0005】
このために、周知のデルタロボットは、伸縮自在の軸を有する。この場合、トルクの伝達はスプラインシャフトによってかまたは部分要素の横方向にオフセットした配置によってなされる。両方の解決法は、伸縮自在軸へのトルクの伝導が、ロボット基部に固定接続されかつ枢動可能にジャーナル支持されたスライディングシートの第1の部分の端部を介してなされ、トルクの外部への伝導は、スライディングシートの第2の部分を介してなされ、当該第2の部分は第1の部分に対して移動自在でありかつツール取付部に取り付けられていることが特徴である。
【0006】
トルクを伝達するためのこれらのデバイスは、摩耗しがちでありかつ小さいトルクの伝達にしか適さない。トルク伝達デバイスにおいて必然的に存在する間隙の低減は、必然的に全体システムの剛性をもたらす。さらなる欠点はストローク制限である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の基本的な目的は、第4の軸が小さな機械的作用で駆動可能なデルタロボットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の特徴を有するロボットが提供されて、この目的が達成される。
【0009】
本発明によるロボットはツール取付部を有し、当該ツール取付部は、制御アームを介してロボット基部に接続されたジョイントプレートと、当該ツール取付部に取り付けられているツールを回転する駆動部と、を有し、駆動部はジョイントプレートに固定されている。
【0010】
本発明の基本の全体的発想は、ツールの回転のための駆動部、すなわち第4の軸の駆動部をロボット基部に取り付けずにジョイントプレートに取り付けるというものである。従って、換言すれば、ツールの回転のための駆動部はツール取付部内に一体化されている。
【0011】
従って、本発明によれば、トルクはロボット基部からツール取付部に伝達される必要は無い。従って、本発明によるロボットは、ロボット基部とツール取付部との間のトルクの伝達のためのデバイスを持たないので単純な機械的構造を有する。特に、周知のトルク伝達デバイスの摩耗に起因する問題点または当該トルク伝達デバイス故の全体システムの剛性に起因する問題点が解決される。
【0012】
本発明の有利な実施例は、従属請求項、明細書及び添付の図面から理解され得る。
【0013】
1つの実施例において、駆動部はモータ、特に電気モータによって形成される。モータがさらにギア付きのモータである場合、駆動部の特にコンパクトなデザインが達成される。なぜならば、この場合、トランスミッションが既にモータ内に一体化されており、追加のトランスミッションをモータとツールとの間に設ける必要が無いからである。むしろ、ツールはモータの出力シャフトに直接結合され得る。
【0014】
駆動部は、ハウジング内に有利に設けられる。これによって、ロボットは容易に清浄化されるので、食製品の取扱等の衛生状態に敏感な用途に特に好適である。
【0015】
さらなる実施例によれば、駆動部はジョイントプレートのツールから離れた側面に固定される。換言すれば、駆動部はジョイントプレートの上側に設けられ、ツールはジョイントプレートの下側においてツール取付部に取り付けられる。
【0016】
ジョイントプレートの上側に設けられている駆動部からジョイントプレートの下側に取り付けられたツールへのトルクの伝達を可能とするために、好ましくは、ジョイントプレート内に孔が設けられる。この孔は、中央に有利に配される、すなわち孔の中心がジョイントプレートの中心に一致する。
【0017】
駆動部の出力シャフトは、この孔を通って伸長し得る。
【0018】
駆動部の一部分が孔内に係合する、特に形状適合態様にて係合するのがさらに特に有利である。なぜならば、これによって、ジョイントプレートに対する駆動部の正確なアラインメントが特に単純な態様にて保証されるからである。
【0019】
駆動部の出力シャフトがジョイントプレートを越えて突出して、ツールが駆動部と直接結合され得るのが好ましい。
【0020】
取り付けられるべきツールと駆動部との結合は、取り付けられるべきツールのためのアダプタが駆動部の出力シャフトに取り付けられている場合にさらに単純になされる。この場合、アダプタは、適切なラッチ装置によってツールがこのアダプタに配されるだけで固定されるようにデザインされ得る。このようなラッチ装置は、ラッチ機構及び/または固定ねじもしくは固定ピンであり得る。アダプタが駆動部からツールへのトルクの伝達においてツールに対して回転しないように、アダプタは、真円ではない部分、例えば、ツールの断面であってアダプタへ取り付ける取付部の断面に有利に適合する多面部を有し得る本発明は、有利な実施例及び添付の図を参照して、単に例示の目的で以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明によるロボットの斜視図である。
【図2】図1のロボットのロボット基部の斜視図である。
【図3】ロボット基部への図1のロボットの制御アームの駆動部の固定を示した部分斜視図である。
【図4】図1のロボットの制御アームの上腕部における前腕部のベアリングを示した部分斜視図である。
【図5】ソケット部材の部分斜視図である。
【図6】ベアリングスリーブ及び取付ねじを有するソケット部材の断面図である。
【図7】図1のロボットのツール取付部の上方から見た斜視図である。
【図8】図7のツール取付部の下方から見た斜視図である。
【図9】球状結合ヘッドを有するジョイントプレートの平面図である。
【図10A】切断されたジョイントプレート及び収容されていないモータによって示されたツール取付部の斜視図である。
【図10B】切断されたジョイントプレート及び収容されていないモータによって示されたツール取付部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明によるデルタロボットは、図1に示されている。当該ロボットは、3つの制御アーム12を介してロボット基部に接続されているツール取付部10を含んでいる。
【0023】
制御アーム12の各々は、上腕部16及び前腕部18を含み、前腕部18は一組の薄肉チューブ20を含む。チューブ20は、ステンレス鋼または炭素繊維で形成され得、関連する上腕部16及びツール取付部10に枢動自在に各々接続されている。
【0024】
上腕部16は、互いに120度オフセットしてロボット基部14に枢動自在に支持されている。電気モータを含みかつトランスミッション及びベアリングを含む主駆動部22が上腕部16の各々と関連付けられ、上腕部16が枢動させられる。この場合、主駆動部22は、追加のハウジング無しに設けられ得るようにデザインされる。3つの主駆動部22は円に沿って配され、互いに120°離れている。この場合、主駆動部22の回転軸は、120°オフセットしており、円の各々の接線に平行である。
【0025】
ロボット基部14は基部プレート24を有し、主駆動部22のための3つのプレート状ベアリングシート26が、基部プレート24の下側に、例えば溶接で取り付けられている(図1及び図2)。主駆動部22は、ベアリングシート26にねじ固定されていても良い。
【0026】
ロボットは、ロボット基部を用いて特に基板プレート24によってセル構造とも称される適切な担持構造に設けられ(ねじ固定等)得る。
【0027】
上腕部16の各々は、関連する主駆動部22に直接接続(ねじ固定等)されている。対応するねじは、カバー30(図3)によって覆われている。カバープレート32に設けられているシール(図示せず)は、上腕部16の各々とそれに関連するベアリングシート26との間に設けられる。
【0028】
上腕部16と前腕部18のチューブ20との枢動接続は、上腕部16の互いに反対の位置にある側面に配されている2つのボールジョイント(図4)によってなされる。
【0029】
ボールジョイントまたは球状ベアリングの各々は、上腕部16の担持部33内にねじ固定されているジョイントヘッドまたはボール部材34とソケット部材36とを含み、ソケット部材36はジョイントヘッド34に関連付けられ、前腕部16のチューブ20に取り付けられている。ソケット部材36は、例えば、チューブ20に接着固定され得かつ/または形状適合態様にてチューブ20に挿入され得る。
【0030】
ソケット部材36の各々は、チューブ20から離れた前部38内に、実質的に半球状に形成されたベアリングソケット40を有し、ベアリングソケット40内にベアリングシェル42が挿入されている。ベアリングシェル42は、ベアリングソケット40内に締まりばめによる摩擦固定で固定されておりかつ/またはベアリングソケット40に取り外し可能に接着固定されている。孔44が、ソケット部材36の前部38内にさらに設けられ、孔44は、ベアリングシェル42をベアリングソケット40の外に押し出すことを可能とする。ベアリングソケット40内のベアリングシェル42の正確な位置決めを保証するため、ベアリングシェル42は基部46を有し、基部46が孔44に形状適合態様で係合している。
【0031】
ベアリングシェル42は、ジョイントヘッド34を受けるために設けられるので、ジョイントヘッド34の形状に適合させられる。ソケット部材36がそれらの各々のジョイントヘッド34から跳ねることを防止するために、制御アーム12のチューブ20が引張ばね48によって互いに拘束される。引張ばね48は、その両端において、実質的にU字フープの形状のホルダ50に接続されており、ホルダ50は固定ねじ60によってソケット部材36の1つに枢動自在に支持されている。固定ねじ60は、ベアリングスリーブ62を通って伸長しており、ベアリングスリーブ62は、ソケット部材36を横切って伸長している孔64内に挿入されている(図5及び図6)。
【0032】
引張ばね48は、チューブ20同士を結び付けるのに特に良好に適しているが、引張ばね48の代わりに、通常は、エラストマ等の弾性特性を有する他のコンポーネントまたは非弾性接続要素も、チューブ20同士を拘束するために使用可能である。
【0033】
図1並びに、特に図7及び図8からわかるように、前腕部18を形成する一組のチューブ20は、それらの各々の上腕部16に枢動自在に接続されているだけではなく、ツール取付部10にも枢動可能に接続されており、当該接続は、実際は、図4から図6に関連して上述された様なボールジョイントを用いてなされている。
【0034】
ツール取付部10は、ジョイントプレート66を有する。ジョイントプレート66は、3つのプレート部70含む。3つのプレート部70は、中心孔68の周りに配され、互い120°離間して設けられている。プレート部70の各々は、制御アーム12に関連付けられている。ジョイントヘッド34は、プレート部70の各々の互いに反対に配された側部に取り付けられ、対応する制御アーム12のチューブ20に接続されているソケット部材36を受けるために設けられている。図4から図6について説明しかつそれに関連してこれらのソケット部材36の構造に関して説明する。制御アーム12のチューブ20同士は、引張ばね(図示せず)によってジョイントプレート66の領域内で拘束される。当該引張ばねは、上述の様なホルダ50によってソケット部材36に接続される。上述の実施例に従って、引張ばねの代わりに非弾性接続要素も使用され得る。
【0035】
ギア付き電気モータ74は、ロボット基部14に面しているジョイントプレート66の上面72に設けられて、ツール取付部10に取り付けられた把持器等のツールを、ジョイントプレート66に垂直な軸周りに回転させる。換言すれば、ギア付きモータ74は、第4の軸と称される駆動部を形成する。ギア付きモータ74は、ジョイントプレート66に設けられたハウジング76内に収容される(図7及び図8)。ギア付きモータ74及びハウジング76は、ジョイントプレート66にねじ固定され得る。
【0036】
その下面において、ギア付きモータ74は基部78を有し、基部78は、ジョイントプレート66の孔68内に少なくともほぼ形状適合態様で係合し、ジョイントプレート66におけるギア付きモータ74の正確な位置決めを保証する(図10A及び10B)。
【0037】
取り付けられるツールのためのアダプタは、ギア付きモータ74の出力シャフトの一部であってジョイントプレート66の下面から突出している部分に取り付けられている。アダプタ82は、ギア付きモータ74の出力シャフトに垂直な平面において真円ではない部分、特に多面部分を有し、当該部分はアダプタ82に取り付けられるべきツールの取付部分の断面に適合して、取り付けられたツールに対するアダプタ82の回転を防止する。取り付けられるべきツールは、アダプタ82を介してギア付きモータ74に直接的にフランジ付けされ、特に、追加のトランスミッションの介在無しにギア付きモータ74にフランジ付けされる。ジョイントプレート66内の第4の軸の支持は、ツールとギア付きモータ74との直接的なフランジ付けによって省略され得る。
【符号の説明】
【0038】
10 ツール取付部
12 制御アーム
14 ロボット基部
16 上腕部
18 前腕部
20 チューブ
22 主駆動部
24 基部プレート
26 ベアリングシート
28 主駆動出力
30 カバー
32 カバープレート
33 担持部
34 ジョイントヘッド
36 ソケット部材
38 前部
40 ベアリングソケット
42 ベアリングシェル
44 孔
46 基部
48 引張ばね
50 ホルダ
60 固定ねじ
62 ベアリングスリーブ
64 孔
66 ジョイントプレート
68 孔
70 プレート部
72 上面
74 ギア付きモータ
76 ハウジング
78 基部
80 下面
82 アダプタ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツール取付部(10)を有するデルタ運動ロボットであって、前記ツール取付部(10)は、制御アーム(12)を介してロボット基部(14)に接続されているジョイントプレート(66)と、前記ツール取付部(10)に取り付けられたツールを回転させる駆動部(74)と、を有し、前記駆動部は前記ジョイントプレート(66)に固定されていることを特徴とするロボット。
【請求項2】
請求項1に記載ロボットであって、前記駆動部はモータ、特にギア付きモータ(74)を含むことを特徴とするロボット。
【請求項3】
請求項1または2に記載のロボットであって、前記駆動部(74)がハウジング(76)内に収容されていることを特徴とするロボット。
【請求項4】
先行する請求項のいずれか1に記載のロボットであって、前記駆動部(74)が、前記ジョイントプレート(66)の前記ツールから離れている方の側面(72)に固定されていることを特徴とするロボット。
【請求項5】
先行する請求項のいずれか1に記載のロボットであって、孔(68)特に中心孔が前記ジョイントプレート(66)に設けられていることを特徴とするロボット。
【請求項6】
請求項5に記載のロボットであって、前記駆動部(74)の出力シャフトが前記孔(68)を通って伸長していることを特徴とするロボット。
【請求項7】
請求項5または6に記載のロボットであって、駆動部(74)の部分(78)が、孔(68)に、特に形状適合態様で係合していることを特徴とするロボット。
【請求項8】
先行する請求項のいずれか1に記載のロボットであって、前記駆動部(74)の出力シャフトの自由端部が、ジョイントプレート(66)を越えて突出していることを特徴とするロボット。
【請求項9】
先行する請求項のいずれか1に記載のロボットであって、取り付けられるべきツールのためのアダプタ(82)が駆動部(74)の出力シャフトに取り付けられていることを特徴とするロボット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【公開番号】特開2010−247324(P2010−247324A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−61880(P2010−61880)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(502451557)ヴェーバー マシーネンバオ ゲーエムベーハー ブレイデンバッハ (7)
【Fターム(参考)】