説明

デンプン質植物性材料からアクリルアミドおよび/またはメラノイジン形成細胞成分を除去するための方法、ならびにアクリルアミドおよび/またはメラノイジンの低減した含量をもつ植物性材料

本発明は、洗浄により細胞から大量のデンプンを除去し得ることなくデンプン質植物材料からアクリルアミドおよび/またはメラノイジン形成細胞成分を除去するに当たり、生物学的材料を用意する工程と、該生物学的材料を不可逆的にエレクトロポレーションする工程と、低減した量のアクリルアミドおよび/またはメラノイジン形成細胞成分を有し、そのデンプン含量が原料と比較して洗浄によって大きく減少し得ない植物材料を得る工程とを備える方法に関するものである。さらに、本発明は、前記方法によって生成可能な低減した量のアクリルアミドおよび/またはメラノイジン形成細胞成分を有する植物材料と、該植物材料から生成可能な低減した量のアクリルアミドおよび/またはメラノイジンを有する一口サイズの製品、それぞれのスナックと、エレクトロポレーション反応器、切断設備、任意に少なくとも1個の浸漬浴およびフライまたは乾燥装置とを備えた一口サイズの製品、それぞれのスナックを製造するための装置とに関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デンプン質食物材料、特にナス科群から選択した植物の植物材料(例えば塊根のような)から例えばアスパラギン、グルコースおよびフルクトースのようなアクリルアミドおよび/またはメラノイジン形成細胞成分/物質/含有物を、その後の洗浄により細胞から大量のデンプンを除去し得ることなく除去するプロセス/方法、並びに該方法により生成可能な低減した量のアクリルアミドおよび/またはメラノイジン形成成分を有する植物材料に関するものである。本発明はさらに、上述した植物材料から生成可能な低減したアクリルアミドおよび/またはメラノイジン量を有する一口サイズ(nibble)の製品、一口サイズのスナック、ジャガイモ製品、並びに該一口サイズの製品、一口サイズのスナック、ジャガイモ製品の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポテトチップス等の一口サイズのジャガイモ製品の生産は、当業者に周知である。これは、ジャガイモ塊茎を皮むき、洗浄および分解し、最後にフライまたは乾燥処理に施すことにより行れる。フライまたは乾燥処理におけるジャガイモ製品の褐色化は常に問題を引き起こすので、前記処理中のアクリルアミドの形成も健康上の理由で問題があるものと考える。
【0003】
アクリルアミドの形成は、遊離アミノ酸および還元糖が高温で細胞集合体に存在するとき、たとえば植物材料をフライまたは乾燥させる際にメイラード反応によって主に生起され、また褐色としてのメラノイジンを形成することによる加熱材料の褐色化にしばしば付随いして生起される。メイラード反応内の特異反応経路が最終生成物のアクリルアミドをもたらす。アクリルアミドの生成用の主な原料として、アミノ酸アスパラギンと単糖グルコースおよびフルクトースが同定され、メラノイジンの形成反応にも含まれる。これら物質は、大部分無傷植物細胞に溶解形態で存在する。これらの濃度は、その他の栽培品種、生物活性、熟度、気候および土壌依存性、受精、収穫期、植物の貯蔵雰囲気および気温のような多くの因子に依存する(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。
【0004】
貯蔵期間の終わりや、好ましくない天候条件での収穫期間において特に起こるジャガイモ中の高糖分で、ジャガイモ製品、とくにチップスの生産者は、ポテトチップスの褐色化およびアクリルアミドの可能な生成を妨げるために漂白処理を用いることをしばしば強いられる。
【0005】
熱的影響(82℃前後の温度)によって、漂白は、細胞含有物が漏洩し得るような細胞構造の広範囲の破裂をもたらす。細胞が開いたらすぐに、細胞内容物と周りの液体媒質の交換が拡散の法則に従って生起する。細胞における溶解物質が高濃度であるとき、物質交換が洗浄/漂白媒質に向かって起こる。漂白および洗浄処理に応じて、漂白デバイスおよび/またはその後の洗浄工程で浸出がすでに起こる。有効な濃度勾配は、主に選択した漂白および洗浄処理と、処理パラメーターに依存する。濃度勾配が高くなるほど、流出効果が高くなる。
【0006】
しかし、既知の漂白処理による糖およびアミノ酸含有量の有効減少の利点は、実質的な欠点と共にでしか得られない。
【0007】
物質交換に関して、浸出はとても曖昧である。これは、細胞が妨害する糖およびアミノ酸部分を失うだけでなく、例えばその後のフライまたは乾燥において芳香の形成に寄与するデンプンおよび錯材料化合物のような他の所望細胞成分も失うことを意味する。
【0008】
漂白は、最終生成物の官能的品質に非常に悪い影響を与える。細胞膜が熱処理によって崩壊されるため、大量のデンプン/乾燥物質が漂白および洗浄水を介してなくなる。かかるなくなったデンプンは、後の構造形成に利用できない。加えて、細胞内に残っているデンプンは、ゼラチン化する。さらに、熱が細胞骨格物質の分解を引き起こし、その結果細胞集合体のさらなる弛緩をもたらす。これら全ての悪い事例の結果、例えば漂白したジャガイモスライスから作ったチップが非常にやわらかく、弾力があり、粘着性で、また味が不十分である。
【0009】
さらなるジャガイモの処理の間、乾燥物質がいくつかの処理工程で失われる。すでに多くの細胞がナイフの刃によって破壊されるため、乾燥物質の損失の一部がすでに皮むきおよび切断中に起こり、その後デンプンが洗浄中になくなる。加えて、従来の漂白処理は極めて非能率的である。上述したように、漂白中も大量の有用な植物物質が廃水を介して失われる。最終生成物の量に対する必要量の生素地の関係は、漂白なしの処理と比較して非常に高い。好ましい濃度勾配を維持するため、大量の新鮮な水が漂白温度に設定し、維持するために必要であり、これは逆に大きなエネルギー投入を意味する。さらに、或る生産場では、現存の下水処理場を有する問題がデンプンを含む大量の廃水により起こる場合がある。
【0010】
通常の漂白処理の概説が、例えば非特許文献5において見ることができる。
【0011】
植物および植物の一部をそれぞれ処理するためのさらなる既知の処理は、成分を放出し得る値をふよするエレクトロポレーションである。
【0012】
エレクトロポレーションによって、無傷細胞は高電圧短パルスの作用により加熱することなく開放される。細胞に影響を与える電気パルスは、細胞膜に存在する孔を広げる。ある電位差まで、前記開放が可逆である。
【0013】
前記効果は、長期にわたり既知であり、例えば医療技術において用いられている。
【0014】
細胞膜上の電位が10Vの値を超えると、孔が不可逆に開き、細胞液が出る。しかし、これは数年だけしか効果を有さない。これは細胞成分、たとえばフルーツジュース、砂糖大根ジュース、植物二次代謝物質および色味の穏やかな抽出に主に使用される。通常エレクトロポレーションは、処理液、主に水浴において行う。
【0015】
植物加工材料のエレクトロポレーション用の装置が、特許文献1に開示されている。これは、電気双極となるように設計し、2個の高電圧出口を有する少なくとも一つの双極高電圧パルス発生器からなるエネルギー源を備える。これらに対し、2つの電場形成電極群が接続されている。かかる装置におけるいくつかの双極高電圧パルス発生器は、構造が同一であり、時間規定同時点火用の起爆装置を備える。高電圧パルス発生器の出口またはそれぞれの高電圧パルス発生器の出口に接続した負荷回路は、複素インピーダンスに関して互いに類似している。エネルギー源が少なくとも2個の高電圧パルス発生器からなる場合、同じものは、部分電極間の処理液によって形成される電解抵抗によって除荷される間に互いに電気的に分離する。
【0016】
特許文献2は、ブドウからの成分を付与する値を穏やかに放出するための方法を開示し、この場合ブドウから得たマッシュにワインの製造に用いるマストをうるためのエレクトロポレーションを施す。マッシュのエレクトロポレーションを行うための装置は、誘電性のパイプライン、すなわちマッシュ用の走路からなり、その壁の中に少なくとも2個の離間電極を挿入し、その間のパルスによって電場を形成するようにする。装置の電解負荷としてのマッシュは、最大でも装置に接続した高電圧パルス発生器のインピーダンスと同程度の高さの電気抵抗を有する。
【0017】
特許文献3は、エレクトロポレーションによって砂糖大根から成分を回収および抽出する改良した方法および設備を開示する。
【0018】
エレクトロポレーションによって砂糖大根から成分を回収および抽出する改良したさらなる方法および設備が、特許文献4に開示されている。
【0019】
特許文献5は、エレクトロポレーションによってチコリから成分を回収および抽出する方法および設備を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】独国特許出願公開第102004025046号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102004013762号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102004028782号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第10260983号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第1062073号明細書
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】C.Gertz, S.Klostermann, Eur. J. Lipid Sci. Technol. 2002, 104, 762-771
【非特許文献2】A.Becalaski et al. J.Agric. Food Chem. 2003, 51, 802-808
【非特許文献3】D.V.Zyzak et al. J.Agric. Food Chem. 2003, 51, 4782-4787
【非特許文献4】F.Escher et al. J.Agric. Food Chem. 2006, 54, 5910-5916
【非特許文献5】Potato Business World 2003, vol 11, part 4,page 26-28
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、一般形態における本発明に係る処理中に生ずるエレクトロポレーションを施した植物の細胞膜での変化と、選択的な物質交換とを示す。
【図2】図2は、本発明に係る一口サイズの製品、それぞれのスナック、それぞれのジャガイモ製品の製造用の異なる装置を備えた設備の概略図である。
【発明の概要】
【0023】
本発明の目的は、デンプン質植物材料、とくにジャガイモ塊茎からアクリルアミドおよび/またはメラノイジン形成細胞成分を除去する非熱的方法を提供することにあり、洗浄により細胞から大量のデンプンを除去し得ることなく漂白処理に匹敵する浸出を達成することができ、また漂白手段よりもより経済的である。デンプンの損失は、乾燥物質の損失をもたらす。
【0024】
本発明のさらなる目的は、本発明に係る方法によって生成可能なアクリルアミドおよび/またはメラノイジン形成細胞成分の低減した量を有する植物材料、並びに本発明に係る植物材料から生成可能な低減量のアクリルアミドおよび/またはメラノイジンを有し、かつ前述の漂白処理に施した植物材料から生成した一口サイズの製品、それぞれのスナック、それぞれのジャガイモ製品よりも優れた官能的品質を有する一口サイズの製品、それぞれのスナックを提供することである。加えて、本発明の目的は、低減量のアクリルアミドおよび/またはメラノイジンを有する本発明に係る一口サイズの製品、それぞれの一口サイズのスナック、それぞれのジャガイモ製品を製造し得る装置を提供することである。
【0025】
問題は、洗浄により細胞から大量のデンプンを除去し得ることなくデンプン質植物材料からアクリルアミドおよび/またはメラノイジン形成細胞成分を除去する方法によって解決され、これは、
植物材料、好ましくは洗浄および皮をむいた植物材料を用意する工程と、
植物材料を不可逆的にエレクトロポレーションする工程と、
低減した料のアクリルアミドおよび/またはメラノイジン形成細胞成分を有する植物材料を得る工程と
とを備えることを特徴とする。
【0026】
洗浄による大量のデンプンの損失は、植物材料の不可逆的なエレクトロポレーションの後に植物材料を洗浄する際に7%未満の乾燥物質の損失として現れる。
【0027】
本発明の基本的な概念は、当業界で既知のエレクトロポレーション効果の可逆的使用にある。マトリクスを破壊および廃棄することによる細胞成分の抽出および回収は既知であるが、本発明は最適な方法で堅固な細胞構造を維持することによって不所望な細胞成分を除去することを目的とする。
【0028】
植物材料は、ナス科群の植物から得ることができる。好ましくは、ジャガイモの塊根である。
【0029】
アクリルアミドおよび/またはメラノイジン形成細胞成分は、例えば、アスパラギン、グルコースおよびフルクトースからなる群からの少なくとも1個の物質である。
【0030】
本発明によれば、エレクトロポレーションを処理液中での処理製品としての塊状生成物を電気パルスで連続的に処理するためのエレクトロポレーション反応器において行うのが好ましく、該反応器が誘電体コーティングを有するか、または全体が誘電材料からなる円柱金属ドラムからなり、水平に設置したシリンダー軸/回転軸の周りを0.1〜4rpmで回転するように操作可能で、誘電材料からなる担体をドラムの外側ジャケット壁でその外周に均一に分布するように取り付け、誘電材料からなるハウジングが反応器壁と共に回転軸の上に位置開放領域、ガス抜きゾーン、ドラムおよびハウジングの反応器壁の間の隙間における反応ゾーン、並びに供給ゾーンと、担体が通過する放出ゾーンとを除いて非接触であるが均等に離れるようにドラムと、その担体とを取り囲み、一定充填レベルで生成物放出として機能し、その表面、すなわち放出ゾーンに関して接線方向への円柱ドラムの回転運動により塊状の処理製品を自立的に供給する処理製品供給装置は、回転軸のレベルよりも低い位置に設置した円柱反応器壁におけるカットアウトが処理製品の自立的放出を生起するように設計し、円柱反応器壁におけるカットアウトの上縁が同時に処理液用の流出堰として機能し、あふれた処理液をここで加工する処理製品から分離するものとする。
【0031】
少なくとも一対の電極が、機械的および化学的磨耗に対し不活性な良電気伝導性の裸の材料からなり、誘電材料からなる壁における反応ゾーンの領域でのハウジングの側壁に挿入するのが特に好ましく、単極モードで最大300kV、または双極モードで+150/−150kVの正もしくは負k電位を有する直流パルス電圧を、少なくとも1個の単極または双極電圧パルス発生器に接続することによって印加する。
【0032】
エレクトロポレーションを、1〜2mSの伝導率を有する水浴中で行うのが好ましい。エレクトロポレーション装置の電極間に、好ましくは50〜300kVの電位差、より好ましくは200〜280kVの電位差を印加し、2000〜7000Aの電流を流すのが好ましい。エレクトロポレーション装置の反応ゾーンにおける電流密度は、好ましくは50〜450kA/m、より好ましくは100〜200kA/mである。エレクトロポレーションを、好ましくは1〜30Hz、より好ましくは15〜25Hzのパルス周波数で、かつ好ましくは1〜15μsec、より好ましくは2〜6μsecのパルス電気エネルギーのパルス長で行うのが好ましい。比エネルギー投入は、好ましくは3〜10kJ/kg植物材料、より好ましくは5〜7kJ/kg植物材料である。
【0033】
植物材料にエレクトロポレーションを施した後、これをさらなる処理工程で崩壊し得る。これは、生物学的物質の切断抵抗がエレクトロポレーションによって減少するため、非常に容易である。
【0034】
さらなる処理工程において、切断した植物材料を、塩を含み得る水性浸漬浴に移送するか、またはいくつかのさらなる処理工程においていくつかの浸漬浴に連続的に移送し、例えば、浸漬浴および複数の浸漬浴内にそれぞれ圧送し、洗浄することができる。細胞内部と洗浄水との間の濃度勾配が、所望の選択的な物質交換をもたらす(図1参照)。溶存物質を含む細胞液が洗浄水に入る。これは、濃度勾配が高くなるにつれいっそう良好で、洗浄処理のコース中維持される。最適なのは、2個または3個の浸漬浴にわたる希釈系列で、逆流モードで操作するのが好ましい。しかし、浸漬浴を用いることなく、アクリルアミドおよび/またはメラノイジン形成細胞成分を少量排出することに留意されたい。浸漬浴における水温は、下記の3通りの処理に影響を与える。
1.所望の拡散が、温度の増大と共に増加する。
2.しかし、高温になると、細胞中の不所望な酵素分解処理も増加する。これにより、貯蔵中に結局味の変化をもたらし得る前駆体が生成される。
3.さらに、水温が高くなると、洗浄水の微生物学的汚染が増加し、これはどうしても避ける必要がある。
【0035】
それぞれの操作状況に対する温度は、上述した影響を考慮して画定し、5℃〜30℃の間とすべきである。
【0036】
洗浄中の乾燥物質の損失は、本発明によれば最大7%であり、したがって従来技術による漂白処理中の乾燥物質の損失よりも少ない。洗浄中の乾燥物質の損失がデンプンの損失の目安を示すため、本発明に係る処理中のデンプンの損失は、従来の漂白処理中のものよりも少ない。
【0037】
さらなる処理工程において、生物学的物質を一口サイズの製品、それぞれのスナック、それぞれのジャガイモ製品にさらに加工することができる。アクリルアミドおよび/またはメラノイジン形成物質の事前低減は、それぞれ必要なフライおよび乾燥処理におけるアクリルアミドおよび/またはメラノイジン形成の相当な低減(少なくとも30%減少した)をもたらす。
【0038】
本発明のさらなる目的は、本発明に係る方法によって生成可能な低減した量のアクリルアミドおよび/またはメラノイジン形成細胞成分を有する植物材料にある。
【0039】
植物材料を、ナス科群からの植物から得ることができる。好ましくは、ジャガイモの塊根である。
【0040】
アクリルアミドおよび/またはメラノイジン形成細胞成分は、例えばアスパラギン、グルコースおよびフルクトースからなる群からの少なくとも1個の物質である。
【0041】
本発明のさらなる目的は、予めエレクトロポレーションに施されなかった同種の植物材料から製造した一口サイズの製品、それぞれのスナック、それぞれのジャガイモ製品に関連して少なくとも30%だけ減じたアクリルアミド含有量を有する一口サイズの製品、それぞれのスナック、それぞれのジャガイモ製品にあり、本発明に係る低減した量のアクリルアミド形成細胞成分を有する植物材料から生成可能である。これに関連して、例えば、同じジャガイモ種から生産したポテトチップスに対してアクリルアミド含有量を少なくとも30%だけ減じたポテトチップスに関連する。
【0042】
図2は、本発明のさらなる目的を示す低減した量のアクリルアミドおよび/またはメラノイジンを有する本発明に係る一口サイズの製品、それぞれのスナック、それぞれのジャガイモ製品を製造するための装置の概略図で、
植物材料を運搬する装置(1)と、
エレクトロポレーション反応器(2)と、
切断設備(3)と、
任意に少なくとも1個の浸漬浴(4)と、
任意にフライ装置または乾燥装置(5)
とを備える。
【0043】
以下の実施例は、本発明を限定することなく本発明の詳細を説明する。
【実施例】
【0044】
すべての試験において、22%の乾燥物質を含むジャガイモ種レディロゼッタを原料として用いた。用いたジャガイモバッチは、長期の貯蔵のため糖度が既に増加(グルコース:0.078g/100g;フルクトース:0.0445g/100g)し、したがってアクリルアミド形成の可能性が高くなった。
【0045】
ジャガイモを、1.2mm厚のスライスの製造に用いる従来の切断ユニット(Fa. Urschel)によりそれぞれの場合直ちにスライスした。これから各テスト用に1200gのスライスを秤量し、次いで標準化した方法で水浴において洗浄した。水浴は、24リットルを有した。水温を各テストに関し正確に測定し、摂氏18℃になるように調節した。
【0046】
エレクトロポレーション用のジャガイモ(本発明の)を完全な塊根として、水で満たした直立管中で処理した。
【0047】
その後、塊根を比較サンプルとして同じ方法で処理した。
【0048】
秤量した1200gのスライスを180秒間洗浄した。
【0049】
処理の前後に、乾燥物質の損失を画定し得るために、水サンプルを収集した。このために、予め処理したスライスが切断時から開始した処理中に細胞水を放出しているため、ジャガイモの乾燥物質の含有量を補正した。これはまた、フライドチップスの硬度の明らかな上昇の理由でもある。水分損失の効果は、水浴および乾燥物質およびそれによる製品のパリパリ度を制御するための運搬装置の外側で保持時間の制御により連続製造処理に使用することができる。
【0050】
表面の速やかな脱水後、いくつか必要量(各480g)を標準化した方法でフライにし、残りの水分が185℃の開始温度で可能な限り同程度になるようにする。
【0051】
最終的なチップスを、アクリルアミドおよび知覚特性に対して検討した。パリパリ度(硬度)を比較するため、組織内の5点知覚特性スキームを用いた(1=柔らかい;5=硬い)。
【0052】
解析方法は、
乾燥物質:
乾燥物の画定は、表面蒸発器および105℃のベント型加熱キャビネットにより行った。
溶解した乾燥物質の一部は、未溶解の物質を濾別後に画定する。
アクリルアミド:
画定は、LCMS:パーキンエルマーシリーズ
200のHPLC−システムにより行い、
HPLCカラム:LichroCART250−4 Lichropher CN 5μm 250mmx4.6mm(メルク受付番号:1.50892.0001)
LichroCART4−4 10precolumn cartridges Lichropher 100 CN (5μm) (メルク受付番号:1.50959.0001)
溶離剤:水/アセトニトリル99.5:0.5v/vに、0.1%(v/v)ギ酸(98%)を加えた
アイソクラチック、流量0.250ml/min
化学物質:ベーカー社のHPLCグレードの水
プロラボ社のHPLCクロマノーム用アセトニトリル
ギ酸98〜100%p.A.(メルク)
MS/MS条件:
アプライドバイオシステム社のAPI2000
モード:
陽電子スプレーイオン化モードにおける多重反応モニタリング(MRM)
適否推移:
アクリルアミドm/z72対72およびm/z72対52
内部標準D3−アクリルアミドm/z75対75およびm/z75対58

ターボイオンスプレー源の設定:
源温度:450°C
イオン源ガス1:45.00psi
イオン源ガス2:60.00psi
衝突ガス:3.00psi

イオンエネルギーIE1:0.5V
イオンエネルギーIE3:1.3V
滞留時間:0.25秒
分解Q1:ユニット
分解Q2:ユニット
である。
硬度:
Intersnack Knabbergeback会社の内部指示
5点知覚特性スキーム
フライドチップサンプルを無分別に味見し、咀嚼硬度に関して味利きにより5点尺度でランク付けする必要がある。
したがって、以下の尺度、1=非常に柔らかい、5=非常にパリパリしている/硬いとした。0.1ステップのいかなる格付けも可能とする。
全ての味利きの測定値を平均化する。
【0053】
【表1】

【0054】
平均値を考慮すると、本発明に係る方法の利点がはっきり明確となる。
【0055】
【表2】

【0056】
可溶物質(メイラード反応用の反応相手)を、要望通りかつ未処理のスライスと比較して4倍洗い流す。これは、通常漂白によって達成し得る約53%のアクリルアミド減少をもたらす。しかし、同時に不溶乾燥物質(主にデンプン)の損失が、漂白なしの標準的方法と比較して57%減少する。
【0057】
これらの結果は、本発明に従って用いるエレクトロポレーションによって開放した細胞壁の孔(処理後は約30〜40nm)が溶存物質のみを放出し、より大きいデンプン粒(約15〜100μm、ときどき最大150μmもある)が細胞内に残ることを示す。
【0058】
逆に、漂白は、乾燥物質の損失を大幅に増大する。従って、本発明に係る方法は、漂白中に増大した増加を避けるだけでなく、驚くべきことに漂白なしの標準的な処理と比較してコスト削減をもたらす。洗浄の間、乾燥物質がジャガイモに大いに残留し、これが資源(ジャガイモ、新鮮な水および汚水、エネルギー)を維持し、生産コストを減少させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンプン質植物材料、好ましくはナス科群の植物の植物材料、特に好ましくはジャガイモの塊根からアクリルアミドおよび/またはメラノイジン形成細胞成分、とくにアスパラギン、グルコースおよびフルクトースからなる群からの物質を除去するに当たり、
植物材料、好ましくは洗浄および皮をむいた植物材料を用意する工程と、
該植物材料を不可逆的にエレクトロポレーションする工程と、
低減した量のアクリルアミドおよび/またはメラノイジン形成細胞成分を有する植物材料を得る工程と、
任意に前記植物材料を分解する工程と、
任意に該植物材料を洗浄する工程で、植物材料を少なくとも1個またはそれ以上の浸漬浴に移送してその中で洗浄し、当該少なくとも1個の浸漬浴を好ましくは逆流モードで操作し、浸漬浴における
植物材料の洗浄中に起こる乾燥物質の損失を7重量%またはそれ以下とする工程と、
また任意に前記分解洗浄した植物材料を更に処理する工程
とを備えることを特徴とするアクリルアミドおよび/またはメラノイジン形成細胞成分の除去方法。
【請求項2】
エレクトロポレーションを処理液中での処理製品としての塊状生成物を電気パルスで連続的に処理するためのエレクトロポレーション反応器において行い、該反応器が誘電体コーティングを有するか、または全体が誘電材料からなる円柱金属ドラムからなり、水平に設置したシリンダー軸/回転軸の周りを0.1〜4rpmで回転するように操作可能で、誘電材料からなる担体をドラムの外側ジャケット壁でその外周に均一に分布するように取り付け、誘電材料からなるハウジングが反応器壁と共に回転軸の上に位置開放領域、ガス抜きゾーン、ドラムおよびハウジングの反応器壁の間の隙間における反応ゾーン、並びに供給ゾーンと、担体が通過する放出ゾーンとを除いて非接触であるが均等に離れるようにドラムと、その担体とを取り囲み、一定充填レベルで生成物放出として機能し、その表面、すなわち放出ゾーンに関して接線方向への円柱ドラムの回転運動により塊状の処理製品を自立的に供給する処理製品供給装置は、回転軸のレベルよりも低い位置に設置した円柱反応器壁におけるカットアウトが処理製品の自立的放出を生起するように設計し、円柱反応器壁におけるカットアウトの上縁が同時に処理液用の流出堰として機能し、あふれた処理液をここで加工する処理製品から分離するものとする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エレクトロポレーションをエレクトロポレーション反応器中で行い、ここで少なくとも一対の電極が、機械的および化学的磨耗に対し不活性な良電気伝導性の裸の材料からなり、誘電材料からなる壁における反応ゾーンの領域でのハウジングの側壁に挿入し、単極モードで最大300kV、または双極モードで+150/−150kVの正もしくは負k電位を有する直流パルス電圧を、少なくとも1個の単極または双極電圧パルス発生器に接続することによって印加する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記エレクトロポレーションを0.5〜5mS/cm、好ましくは1〜2mS/cmの比誘電率を有する水浴中で行う請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
50〜300kV、より好ましくは200〜280kVの電位差をエレクトロポレーション装置の電極間に印加する請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
2000〜7000Aの電流をエレクトロポレーション装置の電極間に流す請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
エレクトロポレーション装置の反応ゾーンにおける電流密度が、50〜450kA/m、好ましくは100〜200kA/mである請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記エレクトロポレーションを1〜30Hz、好ましくは15〜25Hzのパルス周波数で行う請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
パルス化電気エネルギーのパルス長が1〜15μsec、好ましくは2〜6μsecである請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記エレクトロポレーションを3〜10kJ/kg植物材料、好ましくは5〜7kJ/kg植物材料の比エネルギー投入で行う請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記浸漬浴の温度を、それぞれ独立して5℃〜30℃の範囲に設定する請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記植物材料を、更なる処理工程で一口サイズの製品、それぞれのスナック、それぞれのジャガイモ製品にさらに処理する請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
植物材料、とくにナス科群の植物、とくに好ましくはジャガイモの塊根から選択し、前記請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法によって生成可能な低減した量のアクリルアミドおよび/またはメラノイジン形成細胞成分、特にアスパラギン、グルコースおよびフルクトースからなる群の物質を有する植物材料。
【請求項14】
請求項13に記載の植物材料から生成可能な低減した量のアクリルアミドおよび/またはメラノイジン形成細胞成分を有する一口サイズの製品、それぞれのスナック、それぞれのジャガイモ製品。
【請求項15】
予めエレクトロポレーションを施されなかった同種の植物材料から生産した一口サイズの製品、それぞれのスナック、それぞれのジャガイモ製品に関連して少なくとも30%でけ減じたアクリルアミド含有量を有する請求項14に記載の一口サイズの製品、それぞれのスナック、それぞれのジャガイモ製品。
【請求項16】
植物材料を運搬する装置(1)と、
エレクトロポレーション反応器(2)と、
切断設備(3)と、
任意に少なくとも1個の浸漬浴(4)と、
任意にフライ装置または乾燥装置(5)
とを備えることを特徴とする請求項14または15に記載の一口サイズの製品、それぞれのスナック、それぞれのジャガイモ製品を製造するための装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−523091(P2010−523091A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501393(P2010−501393)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【国際出願番号】PCT/EP2008/001759
【国際公開番号】WO2008/122333
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(509270465)インターシュナック クナッバーゲベック ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー (1)
【Fターム(参考)】