説明

データセンターおよびそのための計算機格納用ラック

【課題】サーバ等の計算機を安定的に運用させることができ、大幅に運用時のエネルギー消費を抑制し得るデータセンター、および、そこで用いられる計算機格納用ラックを提供する。
【解決手段】計算機を設置および運用するための建物であって、建物内に外気を取り込む吸入装置を備えた吸気エリア10と、建物外へ空気を排出する排気装置を備えた排気エリア20と、吸気エリア10と排気エリア20とを遮断する隔壁40と、隔壁40の一部を貫通するように設置された計算機格納用ラック30と、吸気エリア10内の空気が計算機格納用ラック30を通過して排気エリア20へと流れるように気流を制御する気流制御手段と、を有するデータセンター1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計算機を設置および運用するための建物であるデータセンターおよびそこで使用するための計算機格納用ラックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、サーバをはじめとする計算機の増加に伴い、データセンターの電力消費が増加している。近時は、環境問題への意識の高まりとともに、データセンターにおけるエネルギー節約が重要課題としてクローズアップされている。このため、最近のデータセンターの設計では、使用電力量を抑え、発生する熱なども管理することが求められている。
【0003】
一般的なデータセンターでは、特開2009−63226号公報に示されるように、計算機から発生する熱を除去するために、床下から冷気を入れて、天井から熱気を逃がす構造などがとられている。言い換えれば、冷却媒体として空気を利用した空調設備によって計算機を冷却している。具体的には、閉鎖されたデータセンター内で冷却媒体である空気を循環させ、これを空調機器によって計算機に作用させることで冷却が実現される。そして、計算機によって熱せられた空気それ自体を冷却機によって冷却して、再び、計算機に作用させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−63226号公報
【発明の開示】
【0005】
最近では、環境問題および省エネルギーへのさらなる意識が高まっている。また、情報通信分野では、インターネット利用者の激増、あるいは、Saasやクラウドコンピューティングの普及などにより、サーバの使用は加速度的に増加している。一方で、サーバ自体の技術の進歩によって、従来よりも少ない発熱で稼動する計算機や、従来より高い温度のもとでも稼動できる計算機も増えてきている。
【0006】
これらのことに鑑みて、本発明は、サーバ等の計算機を安定的に運用させることができ、運用時のエネルギー消費を大幅に抑制し得るデータセンター、および、そこで用いられる計算機格納用ラックを提供することを課題とする。
【0007】
本発明者らが鋭意検討した結果、以下のような本発明を完成した。
(1)計算機を設置および運用するための建物であって、建物内に外気を取り込む吸入装置を備えた吸気エリアと、建物外へ空気を排出する排気装置を備えた排気エリアと、吸気エリアと排気エリアとを遮断する隔壁と、隔壁の一部を貫通するように設置された計算機格納用ラックと、吸気エリア内の空気が計算機格納用ラックを通過して排気エリアへと流れるように気流を制御する気流制御手段と、を有するデータセンター。
(2)吸気エリアおよび排気エリアとは気流が遮断された気密室をさらに有し、気密室には吸気エリアへの出入口および排気エリアへの出入口が設けられている(1)のデータセンター。
(3)建物内に外気を取り込む吸入装置を備え上記吸気エリアとは別個の第2の吸気エリアと、排気エリアと第2の吸気エリアとを遮断する第2の隔壁と、第2の隔壁の一部を貫通するように設置された第2の計算機格納用ラックと、第2の吸気エリア内の空気が第2の計算機格納用ラックを通過して排気エリアへと流れるように気流を制御する第2の気流制御手段と、をさらに有する(1)または(2)のデータセンター。
(4)排気装置から吸入装置に至る空気のバイパス経路をさらに有する(1)〜(3)のいずれかのデータセンター。
(5)吸気エリアおよび排気エリアの少なくとも一方に温度センサをさらに有し、温度センサからの信号によって、(A)気流制御手段における気流の制御、および/または、(B)排気装置から上記バイパス経路を介した吸入装置への気流の制御、が行われるよう構成された、(1)〜(4)のいずれかのデータセンター。
(6)計算機を設置および運用するための建物内に設置するための計算機格納用ラックであって、当該ラック本体を貫通するように構成された計算機の格納領域を有し、前記格納領域内には閉鎖板を設置することができ、該格納領域に計算機を格納しない場合には閉鎖板によってラックを貫通する方向の気流が遮断されるよう構成されてなる、計算機格納用ラック。
【0008】
本発明によるデータセンターによれば、吸気エリア内に取り込んだ外気は計算機格納用ラックを通過して排気エリアへと流され、その際に、前記ラックに格納された計算機で発生した熱を奪うことができる。計算機によって暖められた空気は外部に排気されるから、空気自体を冷却する必要性は全くないか著しく小さい。このように、気流の制御によってデータセンターを構築することができるから、データセンターにおける消費エネルギーが著しく小さくなり、コスト低減および環境負荷低減が大いに見込まれる。本発明によれば、従来のデータセンターにおける空調のための二重床などの複雑な建築要素を必要としない。本発明による計算機格納用ラックは、格納した計算機内へ空気を効率よく流すことができるから、上述のデータセンターへの適用に好適である。
【0009】
本発明の好適態様によれば、気密室を介して吸気エリアと排気エリアとを作業者が往来できるので、データセンター内における作業効率が向上する。別の好適態様によれば、データセンター内に設けられる吸気エリアを増やすことができ、格納および運用できる計算機を増やすことができる。さらに別の好適態様では、排気された暖かい空気を必要に応じて吸入エリアに取り込むことができる。これによって、夜間や冬季など低温時に、計算機の過冷却を抑制したりデータセンターを暖めたりすることができる。また別の好適態様によれば、温度センサからの信号のフィードバックを利用して、気流を制御したり、暖められて排気される空気の一部を吸気エリアに取り入れたりすることで、データセンター内の温度変化を抑制させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一態様であるデータセンターの模式平面図である。
【図2】本発明の一態様である計算機格納用ラックの模式図である。
【図3】本発明の一態様であるデータセンターの模式平面図である。
【図4】本発明の一態様であるデータセンターの模式平面図である。
【図5】本発明の実施例で用いた19インチラックの模式正面図である。
【符号の説明】
【0011】
図面において、1はデータセンターであり、10と110は吸気エリアであり、11と111は吸入口であり、20は排気エリアであり、21は排気口であり、12、22と112はファンであり、30は計算機格納用ラックであり、31は天板であり、32は側板であり、33は閉鎖板であり、34はサーバを格納しない領域であり、35はサーバであり、36はエアーブランクであり、40と140は隔壁であり、50は気密室であり、13、23、51と52は出入口である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明を詳述する。しかし、本発明は図示された態様に限定されるわけでは無い。図面は、一部の構成要素を強調して描写している場合があるので、図面に表れた寸法は本発明の範囲を制限するものではない。
【0013】
図1は、本発明の一つの実施態様であるデータセンターの模式平面図である。データセンター1は隔壁40によって吸気エリア10と排気エリア20とに区画されている。隔壁40の一部には、隔壁40を貫通するように計算機格納用ラック30が設置されていて、該ラック30は吸気エリア10および排気エリア20の両方に面している。図1のデータセンター1では、外気が吸入口11を経て吸気エリア10へ取り込まれ、計算機格納用ラック30を通過して排気エリア20へ流れ、排気口21を経て外部に排出される。計算機格納用ラック30では、好ましくは該ラック30内に格納された計算機(図示せず)の内部を空気が通過し、その際に、計算機から発生した熱が空気によって奪われ、計算機内部の効率的な冷却が達成される。データセンター1内ではファン12および22などによって気流が制御される。作業者は、出入口13、23から吸気エリア10および排気エリア20へ出入する。
【0014】
吸気エリア10はデータセンター1内に区画された領域である。吸気エリア10には外気が取り込まれる。外気を取り込むための吸入装置は一般的な空調装置を適宜援用することができ、例えば、吸入口11とファン12との組合わせが挙げられる。データセンター1の内部の清潔のために、吸入口11には防塵のためのフィルターなどを適宜備え付けることができる。吸気エリア10は、外気を取り込む吸入装置および計算機格納用ラック30を除いては、空気の出入が生じないことが好ましい。吸気エリア10の床や天井などは空気の出入をできるだけ少なくするため、孔などは存在しないことが好ましいが、電気配線などのために孔を設けてもよい。吸入エリア10内で作業者が計算機の操作をするに足る広さがある限り、吸入エリア10の広さは特に限定はない。図1の態様では、吸入エリア10には、建物外からの出入口13が設けられている。出入口13は、複数の扉を有するエアロックを構成していることが好ましい。
【0015】
排気エリア20はデータセンター1内に、吸気エリア10とは別に、区画された領域である。排気エリア20からデータセンター1の外部に空気が排出される。排気装置としては一般的な空調装置を適宜援用することができ、例えば、排気口21とファン22との組合わせが挙げられる。排気エリア20は、排気装置および計算機格納用ラック30を除いては、空気の出入が生じないことが好ましい。排気エリア20の床や天井などは空気の出入をできるだけ少なくするため、孔などは存在しないことが好ましいが、電気配線などのために孔を設けてもよい。排気エリア20内で作業者が計算機の操作をするに足る広さがある限り、排気エリア20の広さは特に限定はない。図1の態様では、排気エリア20には、建物外からの出入口23が設けられている。出入口23は、複数の扉を有するエアロックを構成していることが好ましい。
【0016】
隔壁40は、吸気エリア10と排気エリア20とを遮断する。両エリア10および20の気流を遮断することができれば、隔壁40の構造や材質は特に限定されず、一般的な建築用ボードなどを適宜援用することができる。吸気エリア10と排気エリア20との気流の遮断を確保するため、通常は、隔壁40は床から天井にまでわたって構築されている。隔壁40の一部には、吸気エリア10から排気エリア20へと貫通するように計算機格納用ラック30が設置されている。好ましくは、この計算機格納ラック30が吸気エリア10と排気エリア20との間の唯一の流路を構成する。
【0017】
計算機格納用ラック30(以下、「ラック」と略すこともある。)は、運用すべき計算機を格納する領域が設けられている棚状の構造物である。図2は、本発明の一つの実施態様であるラックの模式図である。このラック30は、天板31と側板32を有している。ラック30の本体を貫通するように棚状の格納領域が設けられている。この棚状の格納領域に計算機(図示せず)が格納される。ここで用いられる計算機は、内部において一軸方向に空気が流れるように設計されていることが好ましい。格納領域には、該領域の貫通方向の気流を遮断することができるような閉鎖板33を設置することができる。ラック30が複数の格納領域を有してデータセンター1の運用時にいくつかの格納領域に計算機を格納しない場合には、計算機を格納しない格納領域に閉鎖板33を設置しておくことによって、より効率的に、計算機内部に空気を導くことができ、計算機の冷却をより確実にすることができる。
【0018】
従来の計算機格納用ラック(図示せず)は、天板31や側板32を有さず、フレームのみで構成されることが多い。そのようなラックであっても、隔壁40の延長線上に閉鎖板33を設置できるように構成したり、ラックの格納領域のなるべく多くの割合を計算機で占めるようにすれば、計算機の効率的な冷却は可能である。ただし、天板31や側板32を有していたほうが、気流の制御がし易いため、設置条件や使用する計算機の選択の幅が広がる。ラック30に計算機格納領域以外の空隙部がある場合には、当該空隙部にも閉塞板を設置するなどして、格納した計算機の内部に効率的に空気が流れ込むようにすることが好ましい。
【0019】
本発明によれば、データセンター1において設置および運用する計算機の種類は特に限定されない。好ましくは、計算機の正面から背面へと空気を流すことによって冷却が達成されるよう構成された計算機が用いられる。それ以外の計算機であっても、吸気エリア10内の空気は計算機を通って排気エリア20へと流れるから、所定の冷却効果を期待することができる。
【0020】
本発明によれば、吸気エリア10に導入された外気は、計算機格納用ラック30を通過して排気エリア20へと流れる。このような空気の流れは、図1の態様では、吸気口11、排気口21およびファン12、22の動作によって制御される。よって、この実施態様においては、吸気口11、排気口21およびファン12、22が気流制御手段として作用していると評価することができる。気流制御手段はファンに限定されるわけではなく、所望の気流をつくることができる代替手段を併用したり置き換えたりしてもよい。
【0021】
ファンなどの出力を調整することによって、気流の強さなどを適宜調節することができる。本発明者らの知見によれば、十分な風量によって、計算機内部の温度を外気温よりも10〜16℃程度高温に維持することができる。したがって、計算機を作動させた状態で前記温度領域が達成するような風量となるように、ファンの数などを適宜調整することができる。
【0022】
図3は、本発明の好適な一つの実施態様であるデータセンターの模式平面図である。このデータセンター1には、上述した吸気エリア10および排気エリア20に加えて、気密室50が区画されている。気密室50は吸気エリア10とも排気エリア20とも気流が遮断されるよう構成されている。気密室50には、吸気エリア10への出入口51と排気エリア20への出入口52が設けられている。気密室50を利用することによって、吸気エリア10から計算機格納用ラック30を介して排気エリア20へ至る気流を乱すことなく、作業者は吸気エリア10および排気エリア20の相互間を移動をすることができる。その結果、計算機の作業の際に出入口13や23からデータセンター1の外に出なくてもよいので、作業効率が増す。気密室50を設けることによって、出入口13および23のいずれか一方を設置しなくてもよい可能性もある。気密室50の設計や構築は、一般的な建築技術を適宜援用することができる。本発明において想定する「気密」は、計算機格納用ラック30を通過する気流を著しく阻害しない程度の気密であればよい。なお、データセンター1の出入口13および23についても、各々の出入口に複数の扉を設けて気密室の構造を構築することが好ましい。
【0023】
図4は、本発明の好適な一つの実施態様であるデータセンターの模式平面図である。このデータセンター1は3つのエリアに区画されている。排気エリア20の両側に、第1の吸気エリア10および第2の吸気エリア110が存在する。第1の吸気エリア10と排気エリア20とは第1の隔壁40によって気流が遮断されている。第2の吸気エリア110と排気エリア20とは第2の隔壁140によって気流が遮断されている。第1および第2の隔壁40および140を貫通するように、第1の計算機格納用ラック30および第2の計算機格納用ラック130が設けられている。
【0024】
図面中の太い矢印は、空気の流れを表している。第1の吸気エリア10と排気エリア20との関係は、図1に示した実施態様の場合と同様である。図4の態様では、第2の吸気エリア110には、吸入口111およびファン112が設けられていて、外気を取り込むことができるように構成されている。取り込まれた外気は、第2の計算機格納用ラック130を通過して排気エリア20へと至るように制御される。このような、第2の吸気エリア110における空気の流れの制御は、吸気口111、ファン112および22が担っており、これらは第2の気流制御手段であると評価することができる。
【0025】
図4には表現されていないが、データセンター1には、上述したような気密室や出入口を適宜設けることができる。このように第2の吸気エリア110を設けることによって、データセンター1において格納および運用する計算機の数を増やすことができる。さらに、図1、図3および図4の態様のデータセンターを適宜組合わせることによって、4室以上に区画されたデータセンターを構築することもできる。
【0026】
本発明によれば、計算機によって暖められた空気は、排気エリア20からデータセンター1の外へ排出される。本発明の更なる好適態様によれば、排出された暖かい空気を吸気エリアに再度取り込むためのバイパス経路(図示せず)が備えられている。従来、データセンター1における計算機は冷やせば冷やすほどよいと考えられる傾向にあった。しかし、本発明者らの新たな知見によれば、近時の計算機技術の発達により、計算機から発する熱量は必ずしも大きいとはいえない場合があるほか、計算機を冷やし過ぎることによる弊害もあり得る。とりわけ、冬季や夜間など、外気温が著しく低い場合には、過冷却の懸念が生じたり、あるいは、データセンター1の内部を暖める必要が生じたりする。そういった場合には、吸気エリア10に取り込む外気を加温する必要が生じ得る。ここで、排気エリア20から排出された暖かい空気を利用することで、加温のためのエネルギーを節約することができる。バイパス経路の具体的な構成は特に限定されることはなく、ダクトなどを用いて適宜構築することができる。図4に示した実施態様の場合には、分岐したダクト(図示せず)を用いて、排気エリア20の排気口21から第1の吸気エリア10および第2の吸気エリア110の両方へのバイパス経路を構築することもできる。
【0027】
好ましくは、吸気エリア10および排気エリア20の少なくとも一方には温度センサ(図示せず)が設置される。さらに好ましくは、温度センサからの信号によって、データセンター内の気流が制御される。例えば、計算機の冷却が不足して温度上昇を示す信号が生じた場合には、ファン12および22の回転出力を増して、気流を強くすることにより、計算機の冷却を促進することができる。逆に、温度センサからの信号によって、計算機の冷却が十分に達成されていることが認められた場合には、ファン12および22の回転出力を低減して、エネルギー消費のさらなる低減を図ることもできる。上述した排気装置から吸入装置に至る空気のバイパス経路を有し、温度センサによって過冷却が認められる場合には、暖められた空気と外気との混合割合を制御することによって、データセンター1の内部を暖めることも可能である。これらの制御の具体的手段については、従来公知の制御技術を適宜援用することができる。これらの気流制御に関する発明は、データセンターの内部を単に冷却すればよいのではなく、気流の制御によって温度変化を小さくしたほうがよいという、本発明者らの新たな技術的指針の提示によってはじめて提示されるものである。
【0028】
本発明によれば、従来のデータセンターのように、空気自体を冷却する必要性は無いか極めて小さいが、発明の実施に際しては、本発明の作用および効果を阻害しない範囲において従来技術を適宜援用することができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
[実施例1]
以下のように、実際のデータセンターにおいてサーバを運用した。
データセンターの模式的な平面図は、先に参照した図1に表されるとおりである。ただし、サーバの作業のし易さを考慮して、排気エリア20よりも吸気エリア10を広くした。具体的には、吸気エリア10は、4.5m×2.1mの広さ、排気エリア20は、4.5m×1.0mの広さにした。吸気口11にはフードを設け、吸気用のファン12を3台設置した。ファン12の能力は以下の通りである:圧力扇40cm、1700m/h:100Pa、単相100V、135W。排気口21にもフードを設け、排気用のファン22を3台設置した。排気用のファン22は、上述した吸気用のファンと同様のものを用いた。これらのフードおよびファンが吸入装置、排気装置、気流制御手段を担うこととなった。
【0031】
隔壁40として12cmの厚さの耐火壁を床から天井に至るまで設置した。この隔壁40を貫通するように、19インチラック30を2台設置した。該ラック30は天板および側板が備えられていた。図5は、この19インチラック30の模式的な正面図である。ラック30に25台の1Uサーバ35を格納した。ラック30において、サーバ35を格納しない領域34がいくつか生じた。この領域34にはパネル(図示せず)を設置して、ラックの正面から裏面への空気の流れを遮断した。ラック30には外周付近にエアーブランク36(物が無く、通気可能な領域)が生じていた。このエアーブランク36にもパネルを嵌め込んで、ラックの正面から裏面への空気の流れを遮断した。
【0032】
サーバ35のCPUおよびHDDの温度をモニタできるようにするとともに、ラック30における吸気エリア側および排気エリア側にも温度センサを設置して、温度をモニタできるようにした。
【0033】
2009年8月18日、東京において、このデータセンターにおいてサーバを運用した。この日の外気は30.1℃(最高気温)であった。
【0034】
この実施例では、CPUおよびHDDに特段の負荷をかけない状態でファン12および22を運転して気流を制御した。その際の各部の温度は以下の通りであった。

時刻 CPU温度 HDD温度 ラック吸気側温度 ラック排気側温度
12:00 43℃ 37℃ 32℃ 32℃
14:00 43℃ 37℃ 32℃ 33.59℃
16:00 42℃ 37℃ 32℃ 32℃
18:00 42℃ 35℃ 31.2℃ 32℃
20:00 41℃ 35℃ 30.56℃ 30.56℃
【0035】
[実施例2]
実施例1と同じデータセンターで、別の日(2009年9月2日)にサーバを運用した。この日の外気温は24℃(最高気温)であった。
【0036】
この実施例では、CPUおよびHDDに負荷をかけた状態でサーバを運用した。CPUに負荷をかけるために、サイン関数を100万回実行した。特段の冷却措置を行わずにこのような負荷をかけると、通常は、CPUは50℃にまで達する。この実施例では、ファン12および22を運転して気流を制御した。その際の各部の温度は以下の通りであった。

時刻 CPU温度 HDD温度 ラック吸気側温度 ラック排気側温度
12:00 38℃ 30℃ 23.1℃ 27.04℃
14:00 40℃ 31℃ 23.58℃ 27.68℃
16:00 40℃ 31℃ 23.58℃ 27.68℃
18:00 39℃ 30℃ 23.26℃ 27.36℃
20:00 38℃ 30℃ 22.78℃ 26.88℃
【0037】
以上のように、実施例1および2では、長時間にわたって安定した温度が保たれた。いずれの場合もCPU温度が外気温より10〜16℃程度高い状態に維持され、更なる温度上昇は生じなかった。現在のサーバ技術によれば、十分に実運用にたえる温度維持効果であると評価できる。上記実施例で構築したデータセンターを従来のようにコンプレッサーを用いた冷却によって運用しようとすると、5000Wから10000W程度の電力消費を見込む必要があった。一方、実施例1および2では、6台のファン(各最大出力は135W)によって温度維持が達成でき、計算上の最大の消費電力は810Wであった。このように、実施例1および2では、データセンターの温度管理における顕著な電力削減を達成することができた。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、データセンターにおけるエネルギーの消費を著しく低減することができ、情報技術のさらなる発展および環境負荷のさらなる低減に貢献すること大である。
本願は日本で出願された特願2009-244340を基礎としており、その内容は参照することにより本明細書に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計算機を設置および運用するための建物であって、
建物内に外気を取り込む吸入装置を備えた吸気エリアと、
建物外へ空気を排出する排気装置を備えた排気エリアと、
吸気エリアと排気エリアとを遮断する隔壁と、
隔壁の一部を貫通するように設置された計算機格納用ラックと、
吸気エリア内の空気が計算機格納用ラックを通過して排気エリアへと流れるように気流を制御する気流制御手段と、を有するデータセンター。
【請求項2】
吸気エリアおよび排気エリアとは気流が遮断された気密室をさらに有し、気密室には吸気エリアへの出入口および排気エリアへの出入口が設けられている、請求項1記載のデータセンター。
【請求項3】
建物内に外気を取り込む吸入装置を備え上記吸気エリアとは別個の第2の吸気エリアと、
排気エリアと第2の吸気エリアとを遮断する第2の隔壁と、
第2の隔壁の一部を貫通するように設置された第2の計算機格納用ラックと、
第2の吸気エリア内の空気が第2の計算機格納用ラックを通過して排気エリアへと流れるように気流を制御する第2の気流制御手段と、をさらに有する請求項1記載のデータセンター。
【請求項4】
吸気エリアおよび排気エリアの少なくとも一方に温度センサをさらに有し、
温度センサからの信号によって、気流制御手段における気流の制御が行われるよう構成された、請求項1〜3のいずれかに記載のデータセンター。
【請求項5】
計算機を設置および運用するための建物内に設置するための計算機格納用ラックであって、当該ラック本体を貫通するように構成された計算機の格納領域を有し、前記格納領域内には閉鎖板を設置することができ、該格納領域に計算機を格納しない場合には閉鎖板によってラックを貫通する方向の気流が遮断されるよう構成されてなる、計算機格納用ラック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−69276(P2013−69276A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−199979(P2012−199979)
【出願日】平成24年9月11日(2012.9.11)
【分割の表示】特願2011−537233(P2011−537233)の分割
【原出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(501028552)
【出願人】(509294874)
【Fターム(参考)】