説明

データロガー、データロガーを用いた電気機器、及び電気機器におけるストレス履歴の通知方法

【課題】歪センサとRTCを搭載した小型、低価格で消費電力の少ないデータロガーを電気機器に搭載し、物流過程を含め電気機器に与えられたストレス情報を保持し利用する。
【解決手段】データロガーが有する歪センサが所定値以上のストレスを検出すると、RTCはストレスが与えられた時刻を保持する。最初のストレスを検出した際に検出動作を終了する。ユーザは搬入された電気機器のRTCが停止していた場合には、当該電気機器をメーカに返品する。メーカは返品された電気機器のRTCが示す時刻から、ストレスを与えた責任元を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデータロガー、データロガーを用いた電気機器、及び電気機器におけるストレス履歴の通知方法に係り、特に消費電力を低減し小型化したデータロガー、データロガーを用いた電気機器、及び電気機器におけるストレス履歴の通知方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種のデータを計測して保持するデータロガー(データキャリアとも呼ぶ)においては、半導体デバイスの低価格化、低消費電力化、及び小型化に伴い、産業用製品ではもちろんのこと、民生用製品においても多くの適用方法が検討されている。
特許文献1では、データキャリアおよび物流過程の品質保証方法が開示されている。その課題は「荷物が物流過程で受ける環境の影響を簡単に確認し、品質保証を行うことを可能にする。」と記載され、その解決手段は「物流過程で荷物に添付されるデータキャリア20に、環境の影響を監視する加速度センサ31、衝撃センサ32、湿度センサ33、温度センサ34および圧力センサ35を設ける。検知情報は、A/D27でデジタル変換され、CPU22によってメモリ24に記憶されて蓄積される。RTC25が出力する時刻もメモリ24に記憶される。メモリ24の記憶内容は、CPU24がIrDA26を介して外部から読出し指令を受けると、メモリ24から読出されて、IrDA26を介して送信される。メモリ24には、荷物に関する識別情報も記憶され、荷物に関する識別情報と、物流過程で荷物が受けた環境の影響とを合わせて読出して確認することができる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−302211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のデータロガーは特許文献1でも示されるように、センサ、RTC(Real Time Clock)、電池のほかに、ADC(Analogue to Digital Converter)、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、IrDA(Infrared Data Association)をはじめとする多くの構成要素を必要とするため、価格は高く、消費電力やサイズは大きいという問題がある。
本発明の目的は前記した問題に鑑み、消費電力を低減し小型化したデータロガー、データロガーを用いた電気機器、及び電気機器におけるストレス履歴の通知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため本発明は、搭載された装置に対して与えられるストレスを検出してストレス履歴を保持するデータロガーであって、前記ストレスを監視して検出したストレスに係る検出信号を出力するストレス監視部と、該ストレス監視部が出力した前記検出信号が供給され該検出信号の大きさは所定値以上であるか否かを判定して判定結果に係る制御信号を出力する観察制御部と、時刻を計時し前記観察制御部が出力した前記制御信号が供給され、供給された前記制御信号が前記検出信号の大きさは所定値以上であることを示す場合には時刻の計時を停止し、計時を停止した時刻を保持する計時部を有することを特徴としている。
【0006】
また本発明は、搭載された装置に対して与えられるストレスを検出してストレス履歴を保持するデータロガーを用いた電気機器であって、前記ストレスを監視して検出したストレスに係る検出信号を出力するストレス監視部、該ストレス監視部が出力した前記検出信号が供給され該検出信号の大きさは所定値以上であるか否かを判定して判定結果に係る制御信号を出力する観察制御部、及び時刻を計時し前記観察制御部が出力した前記制御信号が供給され供給された前記制御信号が前記検出信号の大きさは所定値以上であることを示す場合には時刻の計時を停止し計時を停止した時刻を保持する計時部を有するデータロガーと、前記電気機器の全体の動作を制御し、前記計時部における時刻の計時が停止しているか否かを判定する制御部を有することを特徴としている。
【0007】
また本発明は、搭載された装置に対して与えられるストレスを検出してストレス履歴を保持するデータロガーを用いた電気機器におけるストレス履歴の通知方法であって、前記ストレスを監視して検出するストレス監視ステップと、該ストレス監視ステップが検出した前記ストレスの大きさは所定値以上であるか否かを判定する観察制御ステップと、時刻を計時し前記観察制御ステップが前記ストレスの大きさは所定値以上であると判定した場合には時刻の計時を停止し、計時を停止した時刻を保持する計時ステップと、該計時ステップにおける時刻の計時が停止しているか否かを判定し、時刻の計時が停止していると判定した場合には、前記ストレスが与えられたことをユーザに通知するストレス通知ステップと、前記計時ステップにおける時刻の計時が停止しているか否かを判定し、時刻の計時が停止していると判定した場合には、保持された計時を停止した時刻を読取る停止時刻読取りステップを有し、前記ストレスの原因を特定するための情報として前記停止時刻読取りステップが読取った前記時刻を提供することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、消費電力を低減し小型化したデータロガー、データロガーを用いた電気機器、及び電気機器におけるストレス履歴の通知方法を提供でき、データロガーの適用範囲を広げることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施例におけるデータロガーを用いた電気機器のブロック図である。
【図2】一実施例におけるデータロガーを用いた電気機器の動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例につき図面を用いて説明する。
振動を検出するためのデバイスとして、歪ゲージ、或いは歪センサと呼ばれる検出デバイスが以前から使われていた。多くは金属箔を備えており、該金属箔が例えば圧力を受けたことによる電気抵抗の変化に応じて歪を検出していた。しかし、従来の歪センサは大きさが長手方向に数センチメータ程度あり、また電気抵抗の変化を示す微弱な信号を増幅するための増幅器を外付けする必要があった。このため、例えば民生用の製品に使用するうえでは、必ずしも適したデバイスとは言えなかった。
【0011】
これに対して、最近では半導体歪センサと呼ばれる新しい検出デバイスが実用化の段階にある。半導体歪センサは、半導体チップのピエゾ抵抗の変化に応じて歪を検出するデバイスである。半導体チップは、例えば2〜3ミリメータ角の大きさであって、歪検出部のみならず、前記した増幅器を内蔵することもできる。前記半導体チップは、10ミリメータ角程度の小型基板に搭載されて使用される。このため、小型で狭い場所に取付けることができ、また量産効果により低価格化することもでき、民生用の製品への広範囲な応用が期待されている。
【0012】
本実施例においては、例えば半導体歪センサのような小型のセンサが開発された現状に鑑み、物流過程において運搬物が受ける衝撃をはじめとするストレスを計測してストレス履歴を保持するデータロガーに関し、特に民生用の製品に適用できるよう、価格と消費電力を低減し、サイズを小型化することを目的としている。
【0013】
図1は、一実施例におけるデータロガー10を用いた電気機器1のブロック図である。電気機器1は、例えばディジタル放送を受信して処理する映像処理装置、PC(Personal Computer)をはじめとする情報機器、携帯電話機をはじめとする携帯情報機器であって良く、また冷蔵庫をはじめとする白物家電機器であっても良い。ここでは主に映像処理装置である場合を例にとって説明する。
電気機器1は、データロガー10とAV(Audio and Video)処理部20を有する。本実施例の特徴の一つは、電気機器1が特にデータロガー10を有することにある。
【0014】
データロガー10は、ストレス監視部101、観察制御部102、計時部103、電源供給部104を有する。データロガー10は、例えば電気機器1が搬送中であるなどして商用電源が供給されない際も、動作を要することがある。このため、電源供給部104は電池を含んでおり、充電式電池を用いる場合には、電気機器1が有する充電部30により充電される。
【0015】
AV処理部20は、CPU(制御部とも記す)201、メモリ202、AV演算部203、AV出力部204、電源供給部205を有する。AV処理部20は、電源供給部205が生成する電源により動作する。電源供給部205は供給された商用電源から直流電源を生成するが、電気機器1が例えば携帯情報機器であれば、充電式電池を含むことが望まれる。充電式電池を用いる場合には、該充電式電池は先の充電部30により充電される。
【0016】
CPU201は、以下で述べるようなAV処理部20の動作を制御する。
電気機器1が光ディスク装置である場合には、図示しない光ディスクドライブをさらに有する。該光ディスクドライブにより記録媒体である光ディスクから読取られた信号は、メモリ202に一時的に書込まれながら、AV演算部203によりデータ伸張の処理を施され、AV出力部204を介して図示しない出力端子から外部の装置へ出力される。
電気機器1がディジタル放送を受信して表示するテレビジョン表示装置である場合には、図示しない放送受信部、表示部、スピーカをさらに有する。前記放送受信部で受信した放送信号に対してメモリ202とAV演算部203は前記と同様の処理を行い、処理後の映像信号は前記表示部に表示され、音声信号は前記スピーカから出力される。
【0017】
電気機器1が放送を受信して表示する機能を有する情報機器、携帯情報機器である場合には、前記テレビジョン表示装置と同様の構成要素のほか、例えば携帯電話回線、或いは無線LAN(Local Access Network)に対応した通信処理部を有する。また、メモリ202の容量は一般に大きく、機種によっては半導体メモリのみならず各種のディスクメモリも用いられる。メモリ202には予め多くのソフトウェア、ファームウェアが書込まれる。
電気機器1が冷蔵庫である場合には、AV処理部20は図示しない冷蔵サイクルに置き換えられる。
いずれの場合においても、本実施例におけるデータロガー10は同様の動作をして、目的とした作用を得ることができる。
【0018】
次に、データロガー10の動作について説明する。
例えば、テレビジョン表示装置、光ディスク装置においては、受信した放送を一時記録するためのHDD(Hard Disc Drive)を有することがある。また情報機器、携帯情報機器はHDDを有する機種が多い。周知のとおり、HDDに対しては外部から衝撃を与えないようにすることが大切である。衝撃を受けることにより動作不良を起こすことがあるほか、その時は動作不良を起こさなくとも寿命が短くなる場合がある。従って、HDDを有する電気機器においては、当面の動作の良否に関わりなく、所定値以上の衝撃を受けたことがあるか否かについて、ユーザを含む関係者に知らせる機能が望まれる。データロガー10は、このために電気機器1が備える構成要素である。
【0019】
民生用の電気機器への応用を進めるうえで、データロガー10は低価格、かつ小型で消費電力が少ないことが要求される。
データロガー10は、例えば電気機器1が完成した後に起動される。ストレス監視部101は、例えば半導体歪センサを含み、電気機器1に与えられた応力を検出して検出信号を観察制御部102に供給する。即ち、外部から衝撃が加えられた場合に、該衝撃による応力がストレス監視部101で検出され、検出信号が観察制御部102に供給される。半導体歪センサがAD変換器を有すれば、検出した応力をディジタル化されたデータとして観察制御部102に供給することも考えられる。しかし、ここではアナログ信号を供給すれば処理を簡素化でき、回路規模を小さくできるため、より望ましい実施形態となり易い。
【0020】
前記した半導体歪センサは、電気機器1が有する筐体(図示せず)の内部に設けることで、不用意に人が触れて誤動作しないようにすることが望ましい。また、半導体歪センサでは応力を検出する際の感度において、方向に対する依存性を持つ。このため、重量の大きい電気機器の場合には、垂直方向の感度を高くするように取付ければ、地面に落とされた際の衝撃を誤りなく検出することができる。
【0021】
観察制御部102は、ストレス監視部101から供給された信号に基づき、前記した衝撃の大きさを所定値と比較して、所定値よりも大きいか否かを判定し、判定した結果を示す制御信号を計時部103に供給する。雑音による誤動作を防ぐため、観察制御部102は例えば周波数帯域の制限回路を有しても良く、また不感帯を有するシュミットトリガ付きラッチ回路を有しても良い。
【0022】
計時部103は、例えばRTCを有し、データロガー10が起動されて以後、RTCは現在時刻を刻んでいる。時刻は年月日を含んでいるが、必ずしも秒単位の情報は示さなくても良い。計時部103は、観察制御部102から供給された制御信号に基づき、計時動作を停止する。即ち、所定値よりも大きい衝撃が電気機器1に加えられたと観察制御部102が判定した場合には、計時部103は衝撃が加えられた時刻を示す状態で計時動作を停止する。
【0023】
計時動作が停止された際の時刻の情報は、必要となり次第、AV処理部20が有するCPU201により読み出される。これにより、例えばユーザは納入された電気機器1に以前衝撃が与えられたか否かを知ることができる。また、メーカは返品された電気機器1に衝撃を与えられた時刻を知ることができ、例えばメーカ、流通業者、ユーザのいずれに問題があったかを知ることができる。即ち、交換修理をする際の責任元を明確にできる効果がある。
【0024】
電気機器1がテレビジョン表示装置、情報機器、或いは携帯情報機器である場合には、CPU201が読み出した前記情報を、これらが元来有する液晶パネルをはじめとする表示部に表示すると良い。表示パネルを有さない電気機器、或いは表示パネルを有していても既に故障して情報を表示できない場合には、当該電気機器が元来有するLED(Light Emitting Diode;複数備えて文字表示をする場合もある)を点灯或いは点滅或いは消灯させ、またはスピーカから音声を出力させ、またはブザーからビープ音を出力させて知らせると良い。これにより、メーカとユーザを含む関係者は、電気機器1にはデータロガー10以外の新たな構成要素を追加することなく、前記情報を知ることができる。
【0025】
データロガー10の価格と消費電力を低減し、小型化するための本実施例における特徴を述べる。ストレス監視部101が有する歪センサにおいて、アナログ出力を使用することは前記したとおりである。これによりAD変換部は不要となる。また、前記したように衝撃に係る情報を表示するためには既存の構成要素が使われるため、データロガー10は、図1で示す以外に表示のための構成要素を備える必要はない。
【0026】
所定値以上の衝撃を最初に検出した際にRTCを停止して時刻情報を保持することにより、時刻情報を保持するためのメモリが不要である。衝撃が何回も与えられた場合に、全ての時刻情報を保持するには別途メモリが必要である。しかし、本実施例においては、衝撃が何回与えられたかを示す情報はさほど重要ではなく、一度でも与えられたか否かを示す情報が重要である。このため、最初に衝撃を検出した際の時刻情報を計時部103で保持すれば、目的を達成することができる。
【0027】
交換修理をする際の責任元を明確にするためには、時刻情報ではなく、衝撃を与えられた場所の情報を保持しても良い。しかし、そのためにはデータロガー10がGPS(Global Positioning System)を有する必要があり、例えばRTCと比較して遥かに高価となる問題がある。従い、本実施例では時刻情報を保持するようにしている。
保持された時刻情報は、AV処理部20が有するCPU201により読み出される。これにより、データロガー10がCPUを有する必要はなく、また外部に時刻情報を送信するためのIrDAを有する必要もない。
【0028】
なお、CPU201がデータロガー10から読取った情報を外部に送信するためには、例えばAV処理部20が通信処理部を備えれば良い。当該通信処理部は各種電話回線、無線LANをはじめとする通信ネットワークとのインタフェースであっても良く、情報機器及び携帯情報機器ではもちろんのこと、最近ではテレビジョン表示装置でも該当する構成要素を既に有している。例えば、ユーザの手元に電気機器1が納品されて起動され、ユーザが計時部103の状態を確認する際に、RTCが既に停止していた場合には、ユーザに手間をかけることなくメーカにその旨を直ちに通知することができる。
【0029】
このようにすることにより、データロガー10を有する電気機器1は、ネットワークを介した他の装置とシステムを構成することができる。また近距離の通信機能で良い場合には、AV処理部20がIrDAを備えても良い。
以上で述べた実施形態により、データロガー10の価格と消費電力の低減、さらには小型化が実現される。
【0030】
さらに本実施例においては、電気機器及びその構成要素において、外観をチェックしただけでは判らない将来の不良発生要因を事前に知って、ユーザに返品を促すことができる。これにより、電気機器1の構成要素の交換作業を、当該構成要素が故障した後ではなく、衝撃が与えられたことで近く故障する危険があることを知った段階で行うことができる。即ち、電気機器1がユーザに納品され、重要な情報ファイルを蓄積された後に故障して返品されるような不都合を、解消することができるという特徴がある。
【0031】
ストレス監視部101が有する半導体歪センサは、応力の検出における温度特性を低減するため、温度検出部を有することが多い。従い、データロガー10は力学的な衝撃だけではなく、電気機器1の性能が保証されないような高温、或いは低温の環境に置かれたか否かに係る、ストレス履歴の情報を保持することができ、その応用範囲を広げることができる。本実施例において、ここまでは主に力学的な衝撃を例にとって述べてきたが、温度に係る事項も含むことができる。このため、双方を含めてストレスと記することがある。
【0032】
次に、本実施例の動作フローを説明する。動作フローの中の各ステップは、互いに異なる場所で行われる場合がある。
図2は、一実施例におけるデータロガー10を用いた電気機器1の動作を示すフロー図である。動作フロー中の各ステップ(図中にSを付して示す)を実施する場所が、図の左端に示されている。また、各ステップを行う構成要素が、図の上端に示されている。
【0033】
メーカにおいて電気機器1が完成した際に、データロガー10の構成要素であるストレス監視部101、観察制御部102及び計時部103に対して、CPU201から所定のメーカコマンドが与えられ、データロガー10の各構成要素は所定の動作を開始する(ステップS201)。即ち、ストレス監視部101は歪センサによる衝撃の監視、或いは温度センサによる温度の監視を開始する。観察制御部102はストレス監視部101から供給されるデータの観察を開始する。計時部103は例えばRTCを起動して現在時刻の計時を開始する。
【0034】
これらの動作は、少なくも後記するステップS204、ステップS205までは継続される必要がある。この際は、電気機器1には外部からの商用電源が与えられないため、データロガー10の電源供給部104が内蔵する電池は前記した各構成要素に対して動作電源を供給する必要がある。本実施例においては、前記したように消費電力が低減されているので、電源供給部104を充電部30から充電できない期間が長くても、前記した各構成要素は長い時間に渡って所定の動作を継続することができる。
次いで電気機器1は、ユーザの手元に送付されるよう物流業者に渡されて運搬される。その際、電気機器に衝撃または異常な温度によるストレスが与えられたとする。直ちにストレス監視部101は、ストレスを検出し検出信号を観察制御部102に供給する(ステップS202)。
【0035】
観察制御部102は、供給された検出信号の大きさが所定値以上であるか否かを判定する(ステップS203)。ステップS203での判定の結果、検出信号の大きさが所定値よりも大きいと判定された場合には、観察制御部102は、計時部103に指示して計時動作を停止させ、停止した時刻の情報を保持させる(ステップS205)。また、ストレス監視部101に指示して監視動作を停止させる(ステップS204)。これに伴い観察制御部102には、ストレス監視部101から検出信号が供給されなくなり、観察動作が停止される。
以上のようにして、最初にストレスを与えられた時刻を保持した際には、データロガー10の動作は一旦終了される(ステップS214)。なお、電気機器1がユーザの手に渡され電源を投入されるまでの間は、ステップS203での判定の結果、検出信号の大きさが所定値よりも小さいと判定された場合には、ステップS202に戻り、ストレス監視部101での監視動作を繰返す。
【0036】
次に、電気機器1は物流業者からユーザに渡される。ユーザ(あるいは設置サービス者)が電気機器1の電源を投入すると、CPU201は、データロガー10が有する計時部103の動作を確認するためのコマンドを計時部103に送る(ステップS206)。さらにCPU201は、計時部103からの応答に基づき、計時部103が停止されていたか否かを判定する(ステップS207)。
【0037】
ステップS207での判定の結果、計時部103が停止されていない場合には、電気機器1は特にストレスを受けていないと考えられるので、ユーザはそのまま電気機器1を活用する。この場合、CPU201はユーザに対して、特に判定結果を知らせなくても良い。
一方、計時部103が既に停止されていたと判定された場合には、電気機器1は製造後に衝撃または温度に係るストレスを受けたと考えられ、例えば内蔵するHDDの寿命が短くなっていると考えられる。このため、CPU201は電気機器1がストレスを受けた旨をユーザに対して通知する(ステップS208)。
【0038】
この際に、電気機器1が表示部を有する場合は、当該表示部に計時部103が既に停止されていた旨を文字表示し通知しても良い。前記したようにLED、スピーカ、ブザーを用いて通知しても良い。或いは、電気機器1が例えば放送の受信をはじめ、装置本来の動作を行わないことにより、その旨を示しても良い。
電気機器1が通信処理部を有する場合には、当該通信処理部を介して電気機器1がストレスを受けた旨をメーカに報告するようにしても良い。もちろん、ユーザが通常の電話回線を使ってメーカに報告しても良い。
【0039】
その後、ユーザは電気機器1に供給する電源を切断する。さらにユーザはメーカに対して、物流業者を介して電気機器1を返品する。
返品された電気機器1を受取ったメーカは、まず電源を投入してユーザからの報告を確認する。即ち、CPU201は、データロガー10が有する計時部103の動作を確認するためのコマンドを計時部103に送る(ステップS209)。さらにCPU201は、計時部103からの応答に基づき、計時部103が既に停止されていたか否かを判定する(ステップS210)。
【0040】
ステップS210での判定の結果、計時部103が停止されていない場合には、先のステップS207におけるユーザ側での判定結果とは異なるというレアケースとなるので、改めてメーカはユーザと連絡をとり善後策を打合せる。
一方、計時部103が停止されていたと判定された場合には、CPU201は電気機器1がストレスを受けた旨をメーカ側の操作者に対して通知する(ステップS211)。このための方法は、先のステップS208におけるユーザへの通知方法と同様でも良く、他の専用のツールを用いた方法であっても良い。この場合は、先のステップS207におけるユーザ側での判定結果と一致することが確認できたので、次のステップに進む。
【0041】
次にCPU201は、計時部103が有する例えばRTCに保持された時刻情報を、必要に応じて年月日を含めて読取るためのコマンドを計時部103に送る(ステップS212)。このコマンドについては、必ずしもユーザが使用する必要はないので、メーカのサービス部門が管理すれば良い。
計時部103は前記コマンドに応答して、保持した時刻情報をCPU201に送る(ステップS213)。電気機器1が表示部を有する場合は、CPU201は当該表示部に供給された時刻情報を表示して、メーカ側の操作者に知らせても良い。また当該操作者は、専用のツールを用いてCPU201に供給された時刻情報を知るようにしても良い。
【0042】
メーカ側では、前記時刻情報に基づき、電気機器1に前記したストレスが与えられた場所を検討し、例えばメーカから出荷する前、物流過程、ユーザに到着後のいずれであるかを判定し、責任の所在を明らかにする。
いずれの場合であれ、返品された電気機器1におけるHDDをはじめとする構成要素は、外観上の問題がなく、特に動作不良がない場合であっても、再出荷する際には新品と交換することが望ましい。交換のための費用の負担元はメーカの判断で決定されるが、例えば前記した方法で明らかになった責任者に負担させることができる。
【0043】
なお、図2のステップS201の説明において、データロガー10の動作開始をメーカにおいて電気機器1が完成した際としたが、さらに早い段階で動作を開始させ、製造過程でのトラブル発生の時刻情報を保持できるようにしても良い。これにより、衝撃をはじめとするストレスが製造過程で与えられた製品を、外観上の問題がないために出荷するような不都合を解消することができる。
【0044】
また、図2のステップS208において、ストレス監視部101や計時部103が停止されていない場合には、ユーザはそのまま電気機器1を活用すると述べたが、ユーザが平穏な環境で使用する限りは必ずしもストレス監視を続ける必要はないため、ユーザによる電気機器1への電源投入のタイミングに基づいて、データロガー10の動作である計時部103での計時動作やストレス監視部101での監視動作を停止させるようにしても良い。また、ユーザ側でデータロガー10の動作を停止させ、引越しなどで電気機器1を移動する際に再起動させるようにしても良い。このようにすれば、電源供給部104が有する電池が充電の繰返しにより寿命を縮めることはなくなる。また、引越しの際に本実施例による機能を再び活用できる効果もある。
【0045】
さらには、ユーザが電気機器1を使用する際に、データロガー10をさらに別な目的で利用することもできる。例えば、最近のテレビジョン表示装置では大型の液晶パネルを有することが多く、リモコンの指示に応じてモータを回転させ、その方角をユーザに向ける機能を備えることがある。しかし、ユーザによるリモコン操作からモータの回転に到るまでに多少の時間遅れがあるため、また、ユーザが液晶パネル周辺の障害物の状態を確認できないことがあるため、液晶パネルが周辺に置かれた物品や壁等と衝突する場合がある。本実施例のデータロガー10が前記した衝突による応力を検出した場合には、モータの回転を直ちに停止し、次いで逆の方向に僅かな角度だけ回転させて位置を定めるように機能させると良い。
また、冷蔵庫においては、品物の詰め過ぎによって扉を閉じた際に品物が挟まれ、扉が完全に閉まらず冷却効果を低下させる場合がある。この際は、データロガー10は品物の挟み込みによる応力を検出してLEDを発光させ、また、ブザーでビープ音を出し、ユーザに警告すると良い。
【0046】
以上、本実施例の代表的な構成例と効果を記載したが、さらには次のような効果も考えられる。まず、本実施例で説明したような電気機器1への応用に限らず、データロガー10のさらに広い分野での効果が期待できる。ストレスを与えた部署が特定できるため、例えば物流過程でのストレス抑止の意識を高めることができる。ユーザからの使用開始から間もない段階での返品やクレームを低減することができる。これは、ユーザに対するサービス性の向上につながる効果もある。
ここまで示した実施形態は一例であって、本発明を限定するものではない。本発明の趣旨に基づきながら異なる実施形態を考えられるが、いずれも本発明の範疇にある。
【符号の説明】
【0047】
1:電気機器、10:データロガー、20:AV処理部、30:充電部、101:ストレス監視部、102:観察制御部、103:計時部、104:電源供給部、201:CPU、202:メモリ、203:AV演算部、204:AV出力部、205:電源供給部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭載された装置に対して与えられるストレスを検出してストレス履歴を保持するデータロガーであって、
前記ストレスを監視して検出したストレスに係る検出信号を出力するストレス監視部と、
該ストレス監視部が出力した前記検出信号が供給され該検出信号の大きさは所定値以上であるか否かを判定して判定結果に係る制御信号を出力する観察制御部と、
時刻を計時し前記観察制御部が出力した前記制御信号が供給され、供給された前記制御信号が前記検出信号の大きさは所定値以上であることを示す場合には時刻の計時を停止し、計時を停止した時刻を保持する計時部
を有することを特徴とするデータロガー。
【請求項2】
請求項1に記載のデータロガーにおいて、前記ストレス監視部は、前記ストレスを監視して検出する半導体歪センサを有することを特徴とするデータロガー。
【請求項3】
請求項1に記載のデータロガーにおいて、前記計時部は、日付を含めて時刻を計時することを特徴とするデータロガー。
【請求項4】
請求項1に記載のデータロガーにおいて、前記ストレス監視部が監視して検出するストレスは力学的な衝撃、または温度に係ることを特徴とするデータロガー。
【請求項5】
搭載された装置に対して与えられるストレスを検出してストレス履歴を保持するデータロガーを用いた電気機器であって、
前記ストレスを監視して検出したストレスに係る検出信号を出力するストレス監視部、該ストレス監視部が出力した前記検出信号が供給され該検出信号の大きさは所定値以上であるか否かを判定して判定結果に係る制御信号を出力する観察制御部、及び時刻を計時し前記観察制御部が出力した前記制御信号が供給され供給された前記制御信号が前記検出信号の大きさは所定値以上であることを示す場合には時刻の計時を停止し計時を停止した時刻を保持する計時部を有するデータロガーと、
前記電気機器の全体の動作を制御し、前記計時部における時刻の計時が停止しているか否かを判定する制御部
を有することを特徴とするデータロガーを用いた電気機器。
【請求項6】
請求項5に記載のデータロガーを用いた電気機器において、
該電気機器は、画像を表示する表示部を有し、
前記制御部は、前記計時部における時刻の計時が既に停止していると判定した場合には、前記表示部に計時の停止を表示することを特徴とするデータロガーを用いた電気機器。
【請求項7】
請求項5に記載のデータロガーを用いた電気機器において、
該電気機器は、動作状態を報知する点灯部またはスピーカまたはブザーを有し、
前記制御部は、前記計時部における時刻の計時が既に停止していると判定した場合には、前記点灯部を点灯または点滅または消灯させて計時の停止を表示し、または前記スピーカより音声を発生させて計時の停止を通知し、または、前記ブザーよりビープ音を発生させて計時の停止を通知することを特徴とするデータロガーを用いた電気機器。
【請求項8】
請求項5に記載のデータロガーを用いた電気機器において、前記制御部は、前記計時部における時刻の計時が既に停止していると判定した場合には、前記計時部が時刻の計時を停止した時刻を前記計時部から読取ることを特徴とするデータロガーを用いた電気機器。
【請求項9】
搭載された装置に対して与えられるストレスを検出してストレス履歴を保持するデータロガーを用いた電気機器におけるストレス履歴の通知方法であって、
前記ストレスを監視して検出するストレス監視ステップと、
該ストレス監視ステップが検出した前記ストレスの大きさは所定値以上であるか否かを判定する観察制御ステップと、
時刻を計時し前記観察制御ステップが前記ストレスの大きさは所定値以上であると判定した場合には時刻の計時を停止し、計時を停止した時刻を保持する計時ステップと、
該計時ステップにおける時刻の計時が停止しているか否かを判定し、時刻の計時が停止していると判定した場合には、前記ストレスが与えられたことをユーザに通知するストレス通知ステップと、
前記計時ステップにおける時刻の計時が停止しているか否かを判定し、時刻の計時が停止していると判定した場合には、保持された計時を停止した時刻を読取る停止時刻読取りステップ
を有し、前記ストレスの原因を特定するための情報として前記停止時刻読取りステップが読取った前記時刻を提供すること
を特徴とする電気機器におけるストレス履歴の通知方法。
【請求項10】
請求項9に記載の電気機器におけるストレス履歴の通知方法において、前記ストレス監視ステップが監視して検出するストレスは力学的な衝撃、または温度に係ることを特徴とする電気機器におけるストレス履歴の通知方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−68498(P2013−68498A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206798(P2011−206798)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】