説明

データ・ストリームを部分的にスクランブルする方法

各搬送ストリーム・パケット(7)がヘッダ(8)及びペイロード(9)を有し、搬送ストリーム・パケットのシーケンスが、ユニット(15)に配列された符合化されたデータ素子を担持するペイロードを有する、該搬送ストリーム・パケットを含むデータ・ストリーム(6)を部分的にスクランブルする方法は、シーケンスのサブシーケンスを形成する搬送ストリーム・パケットを選択し、サブシーケンスにおける各搬送ストリーム・パケットのペイロード(9)をスクランブルし、2つの引き続くユニット(15)間の境界を示すデータ(22)の存在に対して、シーケンスにおける搬送ストリーム・パケット(7)の少なくとも幾つかのペイロード(9)を監視し、かつ、選択されたユニット(15)に対しては、サブシーケンスにおける選択されたユニット(15)の部分を形成するデータを担持する搬送ストリーム・パケット(7)の少なくとも1つを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ストリーム・パケットを含むデータ・ストリームを部分的にスクランブルする方法に関し、各搬送(transport)ストリーム・パケットは、ヘッダ及びペイロードを有し、ここに、搬送ストリーム・パケットのシーケンスは、該シーケンスのサブシーケンスを形成する搬送ストリーム・パケットを選択すること、並びにサブシーケンスにおける各搬送ストリーム・パケットのペイロードの少なくとも部分をスクランブルすることを含む、ユニットで配列された符合化されたデータ素子を担持する(carrying)ペイロードを有する。
【0002】
本発明は、また、搬送ストリーム・パケットを含むデータ・ストリームを部分的にスクランブルするためのシステムにも関し、各搬送ストリーム・パケットは、ヘッダ及びペイロードを有し、ここに、搬送ストリーム・パケットのシーケンスは、データ・ストリームを受信するためのポートと、ストリームにおけるデータを処理するための装置とを含む、ユニットで配列された符合化されたデータ素子を担持するペイロードを有し、該システムは、シーケンスのサブシーケンスを形成する搬送ストリーム・パケットを選択するよう、かつサブシーケンスにおける各搬送ストリーム・パケットのペイロードの少なくとも部分をスクランブルするよう構成されている。
【0003】
本発明は、また、コンピュータ・プログラムにも関する。
【0004】
本発明は、また、搬送ストリーム・パケットを含むデータ・ストリームを担持する信号にも関し、各搬送ストリーム・パケットは、ヘッダ及びペイロードを有する。
【背景技術】
【0005】
このような方法、システム、コンピュータ・プログラム及び信号の例は、WO 03/061289−A1から既知である。既知のシステムにおいて、ケーブル・システムのヘッドエンドは、暗号化のためのパケット・セレクタにおいてA/Vコンテント・パケットを選択する。暗号化のために選択されるパケットは、それらの非受信がプログラムの実時間の復号化、並びに記録されたコンテントの何等かの可能な後処理に厳しい影響を与えるように選択される。すなわち、重要なパケットだけが暗号化される。ビデオ及びオーディオに対しては、これは、PES(パケット化された基本(エレメンタリ)ストリーム)ヘッダ及び他のヘッダをペイロードの部分として含む“スタート・オブ・フレーム(フレームの開始)”搬送ストリーム・パケットを暗号化することによって達成され得、その理由は、この情報がなければ、STBデコーダは、MPEG圧縮されたデータを圧縮解除する(decompress)ことができず、MPEG−2ストリームが、搬送ヘッダにおける“パケット・ユニット・スタート・インディケータ”を有する“スタート・オブ・フレーム”パケットを識別するからである。一般的に、ピクチャ・ヘッダまたはビデオ・シーケンス・ヘッダのグループを含むペイロードを担持するパケットは、本スクランブル技術を行うために用いられ得る。他の臨界的なまたは重要なパケットまたはコンテント要素も、本発明から逸脱することなく認可されていない観察を厳重に禁止することができる暗号化のために識別され得る。例えば、MPEG内部(イントラ)符合化されたまたはIフレーム・ピクチャ・パケットが、プログラムのビデオ部分の観察を禁止するために暗号化され得る。
【0006】
既知の方法の問題は、暗号化されたペイロードを大きい割合のパケットが有するストリームを、PESパケット・ヘッダまたは選択された臨界的な(重要な)パケットを含むすべてのTSパケット・ペイロードの暗号化がもたらす、ということである。このことは、解読のために制限された処理能力を有する装置に対して同報通信するために、当該方法を不適切なものにしている。パケットのペイロードが、パケット損失に対して高い程度の弾力性を有する高度の圧縮技術を用いて符合化されたオーディオビジュアル・データを含むとき、PESパケット・ヘッダまたは選択された臨界的な(重要な)パケットを含むTSパケット・ペイロードの2、3のものだけの単なる暗号化は、充分ではないであろう。この場合において、認可されない受信者は、クリアに残されたデータを用いてコンテントを復号化することができるであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、符号化されたデータの消失に対処するための高度の復号化技術の存在において効果的なコンテント保護を維持しつつ、搬送ストリーム・パケットの選択された2、3のものだけのペイロードのスクランブルを可能とする、上述した種類の方法、システム及びコンピュータ・プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、2つの引き続くユニット間の境界を示すデータの存在に対して、シーケンスにおける搬送ストリーム・パケットの少なくとも幾つかのペイロードを監視し、かつ、選択されたユニットに対しては、サブシーケンスにおける選択されたユニットの部分を形成するデータを担持する搬送ストリーム・パケットの少なくとも1つを含むことを特徴とする本発明による方法により達成される。
【0009】
搬送ストリーム・パケットは、サブシーケンス、すなわち、シーケンスにおける搬送ストリーム・パケットのすべてよりも少ないパケットから形成されるシーケンスを形成するために選択されるので、部分的にスクランブルされたストリームを受信するデコーダ上のスクランブル解除する負荷は減少される。符合化されたデータ素子は、ユニットで構造化されるので、それらは、また、復号化されるときにユニット・バイ・ユニット・ベースで処理される。搬送ストリーム・パケットの全体のペイロードは、2つの引き続くユニット間の境界を示すデータの存在のために監視されるので、選択されたユニットだけが分からなくされるということを確実にすることが可能である。その数及び性質は、復号化プロセスに依存され得る。このことは、また、ユニットを形成するデータが、複数の搬送ストリーム・パケットのペイロード内に担持され得るという事実をも考慮する。従って、スクランブルは、符合化技術に一層密接してあつらえられ得る。
【0010】
好適な実施形態においては、データ・ストリームは基本ストリームの多重化であり、当該方法は、搬送ストリーム・パケットのシーケンスを含む少なくとも1つの基本ストリームを識別し、そして、該識別された基本ストリームにおけるパケットのペイロードだけを監視する。
【0011】
従って、比較的効率的な方法が、搬送ストリーム・パケットのペイロードを部分的にスクランブルするために提供される。
【0012】
好適な実施形態においては、選択されたユニットは、ピクチャの符合化された表示の少なくとも部分を含むユニットを含む。
【0013】
この実施形態は、復号化に比較的高い影響を有する。それぞれのユニットに含まれたピクチャは、これらの選択されたユニットを含む搬送ストリーム・パケットのペイロードをスクランブル解除すること無しにはもはや提供され得ない、ほとんど不変にデコーダの所望の出力である。
【0014】
好適な実施形態においては、各ユニットは、追随すべきデータのタイプの指示と、該データを含む部分とを含み、監視されたペイロードにおける各ユニットのタイプは、該指示から決定され、そして該ユニットは、該タイプが少なくとも1つの特定のタイプに対応する場合に、選択されたユニットの内の1つに含まれる。
【0015】
従って、効果的な内容(コンテント)保護を維持しつつ、ペイロードがスクランブルされる搬送ストリーム・パケットの数において大きい減少が達成される。
【0016】
好ましくは、特定のタイプ以外のタイプのユニットは、選択されたユニットの内の1つにランダムに含まれる。
【0017】
従って、余分な内容(コンテント)保護が達成される。
【0018】
先の2つの実施形態の好適な変形例において、タイプは、符合化されたデータ素子が形成された符合化技術によって限定される。
【0019】
従って、復号化プロセスにとって最も重要なユニットを含むこれらのパケット・ペイロードが、スクランブルのために選択可能である。このことは、内容(コンテント)保護を一層効果的にし、その理由は、用いられている特定のCODECに対して、それが正確にあつらえられているからである。
【0020】
好適な実施形態において、符合化されたデータ素子は、予測復号化技術を用いて復号可能であり、特定のタイプは、データ素子に属する復号化されたデータだけから予測が導出されるのを許容するデータ素子のタイプを含む。
【0021】
これらのデータ素子は、符合化されたデータのストリーム内へのランダム・アクセスを許容するので、それらをアクセス不能とすることは、これらの符合化されたデータ素子無しでは概してスタートすることができない、復号化プロセスに影響を与える。
【0022】
好適な実施形態においては、選択されたユニットの部分を形成するデータを担持する第1の搬送ストリーム・パケットに後続する搬送ストリーム・パケットの最大数までがサブシーケンス内に含まれる。
【0023】
このことは、充分な保護を維持しつつ、受信器上の負荷を減少する。エラー修正を不可能にするように最大数が選択される。搬送ストリーム・パケットが、標準の長さのすべてである場合に特に、ユニットの部分を形成するデータを担持するすべての搬送ストリーム・パケットの最大数までを含むことは、データの損失に対処するために受信器における技術を効果的で無くするために必要とされるよりも一層多くのペイロードをスクランブルすることを回避する。従って、部分的にスクランブルされたストリームへのアクセスを提供する認可された受信器への負担をできる限り低く保ちつつ、効果的な保護が達成される。
【0024】
もう1つの態様によれば、本発明によるシステムは、2つのサブシーケンス・ユニット間の境界を示すデータの存在に対して、シーケンスにおける搬送ストリーム・パケットの少なくとも幾つかのペイロードを監視するように構成され、かつ、選択されたユニットに対しては、サブシーケンスにおける選択されたユニットの部分を形成するデータを担持する搬送ストリーム・パケットの少なくとも1つを含むように構成されていることを特徴とする。
【0025】
該システムは、認可された受信器の処理能力に大きな需要を課すること無く、認可されない受信器によるアクセスに対しデータ素子を良好に保護する、部分的にスクランブルされたストリームを生成するために適切である。
【0026】
好ましくは、該システムは、サブシーケンスにおける選択されたユニットの部分を形成するデータを担持する第1の搬送ストリーム・パケットに後続する搬送ストリーム・パケットの最大数までを含むように構成され、かつ、該最大数をセットするための装置が設けられる。
【0027】
このことは、充分な保護を維持しつつ受信器にかかる負荷を減少する。エラー修正を不可能にするように最大数がセットされ得る。搬送ストリーム・パケットが、標準の長さのすべてである場合に特に、ユニットの部分を形成するデータを担持するすべての搬送ストリーム・パケットの最大数までを含むことは、データの損失に対処するために受信器における技術を効果的で無くするために必要とされるよりも一層多くのペイロードをスクランブルすることを回避する。従って、部分的にスクランブルされたストリームへのアクセスを提供する認可された受信器への負担をできる限り低く保ちつつ、効果的な保護が達成される。最大数がセットされ得るので、代表的な受信器のプロフィル、符合化の態様、及び選択されたユニットの数、のような因子が考慮され得る。
【0028】
もう1つの態様によれば、本発明は、コンピュータ上で実行されるとき、本発明による方法を実行するようにコンピュータを構成するために適合されたコンピュータ・プログラムを提供する。
【0029】
もう1つの態様によれば、本発明は、各搬送ストリーム・パケットがヘッダ及びペイロードを有し、搬送ストリーム・パケットのシーケンスが、各ユニットが或るタイプのものである複数のユニットに配列された符合化されたデータ素子を担持するペイロードを有する、該搬送ストリーム・パケットを含むデータ・ストリームを担持する信号を提供する。シーケンスのサブシーケンスにおける各搬送ストリーム・パケットのペイロードの少なくとも部分がスクランブルされ、選択されたタイプに対応するタイプの各ユニットに対して、サブシーケンスは、該ユニットの部分を形成するデータを担持する搬送ストリーム・パケットの少なくとも1つを含み、搬送ストリーム・パケットの少なくとも1つは、2つの引き続くユニット間の境界を示すデータを含む。
【0030】
該信号は、データ損失への高い程度の許容誤差を有するデコーダが装備された、スクランブル解除のための制限された処理能力を有する受信器に対し、ユニキャスト、マルチキャストまたはブロードキャストされるために適切である。これらは、特に、ワイヤレス装置を含む。
【0031】
さて、添付図面を参照して本発明を一層詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明は、ISO/IEC 13818−1、またはMPEG−2システム規準に従った搬送ストリーム・パケットを含むデータ・ストリームを部分的にスクランブルするための実施形態において説明される。この特定の実施形態において、MPEG−2は、H.264/AVC規準に従って符合化されたオーディオビジュアル・データのための配信機構として用いられる。本発明は、MPEG−2以外の他の配信機構にも適用され得るということが理解されるであろう。1つの例は、ヘッダ及びペイロードを有するIPデータグラム(datagrams)を限定するインターネット・プロトコル(IP)である。同様に、コンテント符合化技術としてのH.264/AVCの使用は、達成可能である高度の圧縮及び需要可能な品質のために、有利な例である。しかしながら、選択対象は、符合化されたビデオがフレーム内に配列されるMPEG−2のビデオ・コーディングであるであろう。
【0033】
詳細に説明される例において、データ・ストリームは、MPEG−2の搬送ストリーム・フォーマット(形態)にある。この例は、プログラム・ストリーム・フォーマット(形態)に適合され得る。従って、用語、搬送ストリーム・パケットは、特定のフォーマットの使用が規定されるということを意味しない。プログラム・ストリーム・フォーマットが用いられるとき、データは、各々がヘッダを有するPESパケットで送信されるということが観察され、かつPESパケットは、各々がパック・ヘッダを有するパックにグループ化されるということが観察される。
【0034】
図1において、ビデオ・ファイル・サーバ1は、とりわけ、H.264符合化されたビデオを担持(carrying)するMPEG−2システム・ストリームを提供する。マルチプレクサ2は、条件付けアクセス(限定受信)(CA)メッセージをデータ・ストリームにスプライスする。CAメッセージは、EMM発生器3によって発生された権利付与(Entitlement)管理メッセージ(EMM)と、ECM発生器4によって発生された権利付与(Entitlement)制御メッセージ(ECM)とを含む。ECM発生器4は、制御ワード(CW)を発生する。これらは、マルチプレクサ2の出力データ・ストリームを部分的にスクランブルするよう配列されたスクランブル・ユニット5に与えられる。CWは、サービス・キーをEMMにパックするEMM発生器3によって提供されるサービス・キーのもとで暗号化される。従って、用いられるCA機構は、ディジタル・ビデオ・ブロードキャスティング(DVB)の共通スクランブル・アルゴリズムに実質的に対応し、該アルゴリズムは、例えば、ETSI技術レポート289からそれ自体既知であり、ここでは、さらに詳細には説明しない。図1における構成要素への分離は、機能的性質のものであるということが観察される。これらの構成要素のあるものの機能は、異なった装置によって別々に提供され得るのとちょうど同じように、これらの幾つかまたはすべては、単一の物理的装置に結合されることができる。さらに、この機能の履行は、ソフトウェアまたはハードウェアでであって良い。
【0035】
図2は、搬送(transport)ストリーム(TS)・パケット7a−7pを含むデータ・ストリーム6を示す。各TSパケット7は、TSパケット・ヘッダ8a−8p及びTSパケット・ペイロード9a−9pを有する。データ・ストリーム6は、基本(エレメンタリ)ストリームの多重化である。各基本ストリームは、符合化されたビット・ストリーム、例えば、符合化されたオーディオ、ビデオまたはデータ・ストリームに対応する。例えば、ECMは、別々の基本ストリーム内に担持され(carried)、これに対し、スクランブル・ユニット5によって受信される少なくとも1つの基本ストリームは、H.264符合化されたビデオのストリームである。
【0036】
図3は、TSパケット・ヘッダ8の構成を示す。それは、同期バイト10と、ペイロード・ユニット・スタート・インディケータ11と、パケット識別子(PID)フィールド12と、搬送スクランブル制御フィールド13と、任意選択的に、適合フィールド14とを含む。他の部分は、ISO/IEC 13818−1に説明されている。各基本ストリームは、独特のPIDに対応する。従って、スクランブル・ユニット5は、基本ストリーム、またはH.264符合化されたビデオを担持するストリームを識別することができる。効率性のために、このような1つまたは複数のストリームに属するTSパケット7だけが処理される。ISO/IEC 13818−1から知られているように、MPEG−2搬送ストリームは、種々の基本ストリーム及びそれらの割り付けられたPIDを識別するプログラム特定情報(PSI)、並びに、基本ストリーム内に担持されるデータの型を含む。プログラム関連テーブル(PAT)において識別可能な1つの型は、H.264である。スクランブル・ユニット5は、部分的にスクランブルされるべき基本ストリームのPIDを識別するためにPSIを用いることができる。
【0037】
以下において、ただ1つの基本ストリームだけが部分的にスクランブルされるべきであると仮定する。その特定の基本ストリームに対応するPIDを有するTSパケット8は、データ・ストリームから検索され、従って、H.264符合化されたデータ素子を担持するTSパケット・ペイロード9を有するTSパケット8のシーケンスを形成する。
【0038】
好ましくは、符合化されたデータ素子は、ピクチャ(pictures)の符合化された表示の少なくとも部分を含んでいる。ピクチャは、ビデオ・シーケンスにおけるフレームまたはフィールド(すなわち、全画像または交互ライン)である。マクロブロック、16×16のルーマ(luma)及びクロマ(chroma)のサンプルのブロックが、各ピクチャのデータから形成される。このことは、ラスタ・スキャン(走査)に従って、すなわち、ピクチャにおけるマクロブロックの矩形の二次元パターンの一次元パターンへのマッピングに従って行われ、それにより、一次元パターンにおける第1のエントリは、左から右に走査される二次元パターンの最初の頂部の行からであり、その後、各々が左から右に走査される次の行からのマクロブロックが続く。ピクチャは、スライスのグループ、すなわち、マクロブロックのサブセットに分割される。スライスは、スライス・グループ内にあるが、必ずしもピクチャ内には無い、ラスタ・スキャンにおいて連続するマクロブロックを含む。従って、ピクチャのラスタ・スキャンにおける1つおきのマクロブロックを、例えば、別々のスライス・グループに割り当てることが可能である。スライスは、該スライス内からのサンプルに基づいてのみ、すなわち、他のスライスにおけるサンプルとは無関係に復号される。しかしながら、1つのスライスにおけるデータが送信において喪失されたとき、復号されたピクチャにおける‘空白内を満たす’ために、別のスライスにおけるデータが使用され得る。
【0039】
サンプリングされたピクチャの周波数は、スライスによって与えられた地形的分割に加えて、時間における分割を提供する。H.264は、予測符合化方法の一例であり、ピクセルの値は、予測された値と差の値との合計として符合化され、後者の値は、符合化中にできる限り多く減少される。第1のピクチャからの、及びランダム・アクセス・ポイントとして限定されたピクチャからのデータを含むスライスに対して、予測された値は、そのピクチャそれ自体内の値にのみ基づいており、送信の順番における異なったポイントでのピクチャにおける値には基づいていない。このようなスライスは、内部コード化されたスライスと呼ばれる。残りのスライスは、ピクチャのシーケンスの順番における他のピクチャにおける値をも使用して復号可能であるだけであるようにコード化され得る。従って、内部コード化されたピクチャで開始することによって、しかし、符合化されたピクチャの他のタイプでは開始しないことによって、符合化されたピクチャのシーケンスを復号化することが可能である。
【0040】
今までのところは、H.264の関連部分の記載は、いわゆる、ビデオ・コーディング・レイヤ(VCL)だけに関係していた。符合化されたスライスを送信するために、それらは、いわゆる、ネットワーク・アダプテーション・レイヤ(NAL)ユニット15a−15x(図1)にパッケージングされる。各スライスは、単一のNALユニット15内に含まれる。NALユニット15の組は、アクセス・ユニット(AU)を形成する。各AUは、常に、一次コーディングされた(コード化された)ピクチャ、すなわち、ピクチャのすべてのマクロブロックを含む。NALユニット15のデータ・サイズは、スライス・グループの数に従って、すなわち、スライス等を発生するために用いられる(エントロピ)コーディング(コード化)のタイプに従って変るということが理解されるであろう。従って、TSパケット7のシーケンスは、変化する長さのNALユニット15を含む。
【0041】
AUを形成するNALユニット15の各組は、1つのプログラム基本ストリーム(PES)パケット16内に担持され、該パケット16は、次に、TSパケット7によって担持される。PESパケット16の構成が図3に示されている。それは、パケット・スタート・コードのプリフィックス(pre−fix)17a−d(図2にも示されている)を含んでいる。パケット・スタート・コードのプリフィックス17は、24ビットの長さのコードである。stream_id18と一緒に、それは、PESパケット16の始まりを識別するパケット・スタート・コードを構成する。標準の固定長さのものであるTSパケット7とは対照的に、PESパケット16は、可変長さのものである。該長さは、PESパケット長さフィールド19に示される。このフィールド19の後には、任意選択的に、PESヘッダ20が続く。その後、PESパケット・ペイロード21、すなわち、NALユニット15が来る。
【0042】
stream_id18は、基本ストリームのタイプ及び数の双方を特定するということに留意されたし。従って、それは、スクランブル・ユニット5によって部分的にスクランブルされる基本ストリームを識別するための代替物として用いられ得る。新しいPESパケット16のスタートは、常に、TSパケット・ヘッダ8のすぐ後に続き、その場合において、payload_unit_start_indicator 11は、値‘TRUE’を有する。どの2つのPESパケット16も同じTSパケット7内でスタートしない。
【0043】
図4は、バイト・ストリームにおける送信のためのフォーマットにおけるNALユニット15の構成を示す。それは、スタート・コード・プリフィックス22によって先行される。スタート・コード・プリフィックス22は、各NALユニット15へのプリフィックスとしてバイト・ストリーム内に埋設される、‘0x00 0001’に等しい、3つのバイトの独特のシーケンスである。従って、スタート・コード・プリフィックス22は、2つの引き続くNALユニット15間の境界を示す。スタート・コード・プリフィックス22の後に、forbidden_bit 23、nal_storage_idc 24及びnal_unit_type 25が続く。
【0044】
異なったタイプは、スライスが形成された符合化技術によって限定される。これらの1つは、アクセス・ユニット・デリミタ(AUD)のタイプである。このタイプのNALユニット15の存在は、引き続くAU間の境界を示す。AUの第1のNALユニット15は、常にこのタイプのものである。もう1つの可能なタイプは、瞬間デコーダ・リフレッシュ(IDR)タイプである。このようなNALユニット15は、内部コード化された(イントラ・コーディングされた)スライスを含む。従って、nal_unit_type 25の対応の値は、それに続くバイト整列されたデータ26が、イントラ・コーディングされたピクチャを表すデータ素子の部分であるということを示す。
【0045】
部分的にスクランブルされるべき基本ストリームをデータ・ストリーム6から検索すると、スクランブル・ユニットは、スタート・コード・プリフィックス22の存在のために該ストリームにおけるTSパケット7のTSパケット・ペイロード9を監視する。スクランブル・ユニット5は、引き続くNALユニット15間の境界を示すスタート・コード・プリフィックス22とPESパケット16のパケット・スタート・コード・プリフィックス17との間で区別することができる。PESパケット・スタート・コード・プリフィックス17は常にTSパケット・ヘッダ8の直後に続くということが観察される。スクランブル・ユニット5は、基本ストリーム・パケット、すなわち、PESパケットのスタートを示す構成要素によって、TSパケット・ヘッダ8により分離されるTSパケット・ペイロード9の部分を監視することができる。
【0046】
NALユニット15の終わりが識別されてしまうと、システムは、NALユニット15のタイプを、nal_unit_type 25によって示されるものとして決定する。少なくとも、該タイプがIDRに対応するならば、該NALユニット15の部分を形成するデータを担持するTSパケット7の1つまたは複数が、サブシーケンスに含めるために選択される。サブシーケンスにおけるTSパケット7のTSパケット・ペイロード9がスクランブルされる。用語‘サブシーケンス’は、概念的なものであるということが観察される。ここでは、それは、基本ストリームを形成するTSパケット7のシーケンスにおけるTSパケット7の順番付けられたサブセット、すなわち、より少ない数に言及するために用いられる。
【0047】
好ましくは、選択されたNALユニット15の部分を形成するデータを担持する第1のTSパケット7に続く幾つかの追加のTSパケット7も、スクランブルされるべきサブシーケンスに含めるために選択される。これらの追加のTSパケット7は、PIDフィールド12から決定されるものとしてPIDに基づいて同じ基本ストリームから選択される。システムは、選択される追加のパケットの数を調整するための手段を含んでいる。従って、条件付けアクセス・システムのオペレータは、部分的にスクランブルされたストリームをスクランブル解除するために必要とされる処理能力のレベルとコンテント保護のレベルとの間の妥協案を達成することができる。
【0048】
基本ストリームを担持するシーケンスにおけるスクランブルされたTSパケット7の部分は、選択がタイプIDRのNALユニット15の存在に基づいているとき、比較的低くあり得る。このような場合において、追加のTSパケット7は、スクランブルのために選択され得る。長所的な実施形態においては、システムは、ランダムでIDR以外のタイプのユニットを選択するよう構成される、もしくは構成可能である。選択されたユニットを担持するTSパケット7の少なくとも1つのTSパケット・ペイロード7もスクランブルされる。他のタイプは、IDR以外の9つの限定されたタイプのすべてまたはサブセットであって良い。一実施形態においては、追加のTSパケット7がスクランブルのためにサブシーケンスに含められるレートは、連続的に調整される。これは、或るレベル、例えば、5%に、またはそれ以下に、基本ストリームを表すシーケンスにおけるすべてのTSパケットに対してサブシーケンスにおけるTSパケット7の部分を維持するような態様で行われる。
【0049】
部分的にスクランブルされるデータ・ストリームは、送信器27によって変調される。好適な実施形態においては、MPEG−2搬送ストリーム・パケットは、ディジタル・オーディオ・ブロードキャスティング・スタンダード(ETSI 300 401)のシステムEバリエントに従ってCDMA(符号分割多重アクセス)の搬送波上に変調される。従って、送信器は、部分的にスクランブルされたデータ・ストリームを担持(搬送)する信号を送信する。ワイヤレス送信技術を用いることにより、部分的にスクランブルされたデータ・ストリームは、移動受信器/復号器装置に利用可能となる。これらの装置には、好ましくはソフトウェアで履行されるスクランブル解除及び復号能力が提供される。その場合において、信号は、一層詳細には、データ・ストリームがスクランブルされてしまった方法は、低い処理強度でスクランブル解除及び復号を許容する。
【0050】
スクランブルが、搬送ストリーム・レベルにおいて行われる、すなわち、選択されたTSパケット7のTSパケット・ペイロード9の少なくとも部分をスクランブルすることにより行われる、ということが明瞭であろう。TSパケット・ヘッダ8、特に、搬送スクランブル制御フィールド13は、特定のパケットがスクランブルされたペイロードを有するか否かを受信器に信号送信する効果的な方法を提供する。従って、受信器は、符号化されたデータを選択的にスクランブル解除するために各パケットのペイロードの全コンテントを調査する必要が無い。むしろ、それは、実際のペイロード・コンテントを処理する前にスクランブル解除を行うことができる。
【0051】
本発明は、ここに説明した実施形態に制限されるものではなく、添付の特許請求の範囲内で変更され得る。例えば、符合化されたデータ素子は、ワイヤレス送信のために他のプロトコルによって限定されるものとして搬送ストリーム・パケットのペイロードに担持され得る。また、スクランブルは、PESレベルで行われ得、このことは、特定のタイプ(例えば、IDR)のNALユニット15を担持するために決定されるPESパケット16のペイロードが、スクランブルされるべきパケット・ペイロードの中の1つに含まれるということを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】データ・ストリームを部分的にスクランブルするためのシステムを系統的に示す図である。
【図2】MPEG−2規準に従った搬送ストリーム・パケットを含んだデータ・ストリームを系統的に示す図である。
【図3】MPEG−2搬送ストリーム・パケット・ヘッダの構造を系統的に示す図である。
【図4】図2のデータ・ストリームに担持されるプログラム基本ストリーム・パケットの構造を系統的に示す図である。
【図5】H.264/AVC規準によって限定されるものとして、かつ図2のデータ・ストリームに担持されるものとして、ネットワーク適合レイヤ・ユニットの構造を系統的に示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1 ビデオ・ファイル・サーバ
2 マルチプレクサ
3 EMM発生器
4 ECM発生器
5 スクランブル・ユニット



【特許請求の範囲】
【請求項1】
各搬送ストリーム・パケット(7)がヘッダ(8)及びペイロード(9)を有し、搬送ストリーム・パケット(7)のシーケンスが、ユニット(15)に配列された符合化されたデータ素子を担持するペイロードを有する、該搬送ストリーム・パケット(7)を含むデータ・ストリーム(6)を部分的にスクランブルする方法であって、
シーケンスのサブシーケンスを形成する搬送ストリーム・パケット(7)を選択し、
サブシーケンスにおける各搬送ストリーム・パケット(7)のペイロード(9)をスクランブルし、
2つの引き続くユニット(15)間の境界を示すデータ(22)の存在に対して、シーケンスにおける搬送ストリーム・パケット(7)の少なくとも幾つかのペイロード(9)を監視し、かつ、選択されたユニット(15)に対しては、サブシーケンスにおける選択されたユニット(15)の部分を形成するデータを担持する搬送ストリーム・パケット(7)の少なくとも1つを含む、
ようにした方法。
【請求項2】
データ・ストリーム(6)は基本ストリームの多重化であり、当該方法は、搬送ストリーム・パケットのシーケンスを含む少なくとも1つの基本ストリームを識別し、そして、該識別された基本ストリームにおけるパケットのペイロードだけを監視する、ようにした請求項1に記載の方法。
【請求項3】
選択されたユニット(15)は、ピクチャの符合化された表示の少なくとも部分を含むユニットを含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
各ユニット(15)は、追随すべきデータのタイプの指示(25)と、該データを含む部分(26)とを含み、監視されたペイロードにおける各ユニットのタイプは、該指示から決定され、そして該ユニットは、該タイプが少なくとも1つの特定のタイプに対応する場合に、選択されたユニットの内の1つに含まれる請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
特定のタイプ以外のタイプのユニットは、選択されたユニットの内の1つにランダムに含まれる請求項4に記載の方法。
【請求項6】
タイプは、符合化されたデータ素子が形成された符合化技術によって限定される請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
符合化されたデータ素子は、予測復号化技術を用いて復号可能であり、特定のタイプは、データ素子に属する復号化されたデータだけから予測が導出されるのを許容するデータ素子のタイプを含む請求項4乃至6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
選択されたユニットの部分を形成するデータを担持する第1の搬送ストリーム・パケットに後続する搬送ストリーム・パケットの最大数までがサブシーケンス内に含まれる請求項1乃至7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
各搬送ストリーム・パケット(7)がヘッダ(8)及びペイロード(9)を有し、搬送ストリーム・パケット(7)のシーケンスが、ユニット(15)に配列された符合化されたデータ素子を担持するペイロードを有する、該搬送ストリーム・パケット(7)を含むデータ・ストリーム(6)を部分的にスクランブルするためのシステムであって、
データ・ストリームを受信するためのポートと、
ストリームにおけるデータを処理するための装置(2−5)と、
を含み、当該システムは、シーケンスのサブシーケンスを形成する搬送ストリーム・パケット(7)を選択するように、かつ、サブシーケンスにおける各搬送ストリーム・パケット(7)のペイロードをスクランブルするように構成され、
当該システムは、2つのサブシーケンス・ユニット(15)間の境界を示すデータ(22)の存在に対して、シーケンスにおける搬送ストリーム・パケットの少なくとも幾つかのペイロードを監視するように構成され、かつ、選択されたユニットに対しては、サブシーケンスにおける選択されたユニットの部分を形成するデータを担持する搬送ストリーム・パケットの少なくとも1つを含むように構成されているシステム。
【請求項10】
サブシーケンスにおける選択されたユニットの部分を形成するデータを担持する第1の搬送ストリーム・パケットに後続する搬送ストリーム・パケットの最大数までを含むように構成され、かつ、該最大数をセットするための装置が設けられた請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
コンピュータ上で実行されるとき、請求項1乃至8のいずれかに記載の方法を実行するようにコンピュータを構成するために適合されたコンピュータ・プログラム。
【請求項12】
各搬送ストリーム・パケット(7)がヘッダ(8)及びペイロード(9)を有し、搬送ストリーム・パケットのシーケンスが、各ユニット(15)が或るタイプのものである複数のユニット(15)に配列された符合化されたデータ素子を担持するペイロード(9)を有する、該搬送ストリーム・パケット(7)を含むデータ・ストリーム(6)を担持する信号であって、シーケンスのサブシーケンスにおける各搬送ストリーム・パケット(7)のペイロード(9)がスクランブルされ、選択されたタイプに対応するタイプの各ユニット(15)に対して、サブシーケンスは、該ユニット(15)の部分を形成するデータを担持する搬送ストリーム・パケット(7)の少なくとも1つを含み、搬送ストリーム・パケットの少なくとも1つは、2つの引き続くユニット(15)間の境界を示すデータ(22)を含む、信号。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−513539(P2007−513539A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538830(P2006−538830)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051604
【国際公開番号】WO2006/010386
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(500232617)イルデト・アクセス・ベー・フェー (24)
【Fターム(参考)】