説明

データ入力方式

【課題】ボタン操作及びポインティング操作と容易に連携できる方向キーの構成を与え、この方向キーとボタン操作、ポインティング操作を組み合わせて多様な情報を入力する方式(ソフトウェア)によってポインティングエリアとボタンのサイズを大きくして操作性を向上する。
【解決手段】親指と人差し指の一方に装着するか、または両指で保持しながら方向キー操作とポインティング操作を連携して能率良く実行できるデータ入力装置を用いるデータ入力方式において、装置に密着している指の触覚を刺激する機構を導入し、仮想的な方向キーを感じさせて操作性を向上し、この装置を用いて位置と方向を組み合わせて能率良く多様なデータを入力する方法を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
機器の高機能化に伴い、ボタンやディスプレイ上のポインティングエリアの数が増えかつサイズが縮小化し、機器の操作性は低下している。本発明はボタンやディスプレイ上のポインティングエリアの個数を削減し、またこれらのサイズを拡大しながら多様な情報を明瞭に区別して能率良く入力することを可能とするデータ入力方式(ソフトウェア)に関する。また片手の親指のみまたは片手の親指と人差し指のみを用いてポインティング(位置指定)と方向キーの操作を連携して同時に行うことを可能とするデータ入力方式(ソフトウェア)に関する。またタッチパネルを押す指の触覚または力覚に応答を返す方式に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術においてデータ入力装置の操作性を向上するために重要な役割を果たしている触覚フィードバック機構に関しては、以下の特許文献1−17に示される各種方式が提案されている。
【特許文献1】 特開平11−161152号公報
【特許文献2】 特開平10−55252号公報
【特許文献3】 特開平6−102997号公報
【特許文献4】 特開2001−356862号公報
【特許文献5】 特開2000−29623号公報
【特許文献6】 特開2000−259333号公報
【特許文献7】 特開2000−47792号公報
【特許文献8】 特開平10−143301号公報
【特許文献9】 特開平11−224161号公報
【特許文献10】 実開平5−55222号公報
【特許文献11】 特開2002−278694号公報
【特許文献12】 特開平3−90922号公報
【特許文献13】 特開平11−353091号公報
【特許文献14】 特開2001−166871号公報
【特許文献15】 特願2003−33020
【特許文献16】 特願2003−277427
【特許文献17】 特願2004−111648
【0003】
本発明のデータ入力装置では、指を常時装置に密着させながら動かすときに触覚フィードバック機構を用いて指の触覚または力覚に応答を返して使用者に仮想上の方向キーを知覚させる。この方式によれば指が常時装置に密着するため装置を安定に保持しながら方向キーを感じてそれを操作することができる。また触覚フィードバックによって指の運動方向の差異が明瞭化するため、前後左右のみならず斜め方向も確実に区別して多様な方向を正しく入力できる。さらに触覚フィードバックを小型の機構で実現することで、片手の親指のみまたは親指と人差し指のみを用いて装置を保持しながら方向キーを操作できるようになり、その結果、「ポインティングの操作と方向キーを押す操作」あるいは「他のボタンを押す操作と方向キーを押す操作」を同時に連携させて実行できる。本発明ではこのように方向キーの操作と他の操作を組み合わせることによって、ポインティングエリアやボタンの数を少なくしても多様な情報を入力することが可能となり、ポインティングエリアやボタンの数が減少する分、個々のポインティングエリアやボタンのサイズを大きくして操作性を向上できる。こうした目的に触覚フィードバック機構を利用している技術は上記のいずれの文献にも認められない。また従来のタッチパネルは指で押しても触覚や力覚に対する応答がないため操作性が悪かったが、本発明ではこの応答を生成するための新規の方法を与えている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年機器の小型化や機能の増加によってボタンは縮小化し、画面上でカーソルを当ててクリックする(ポインティングする)メニューの項目やタブなどの面積(ポインティングエリア)も小型化する傾向にある。ボタンやポインティングエリアが小型化すると操作に時間と注意を要し、誤入力も増加する。また作業の疲労も増大することになる。本発明では、この問題に対処するため次の各課題を解決する。(1)触覚フィードバックを通じて方向を明瞭に区別しながら指の小さな運動で操作できる方向キーを導入し、この方向キーとポインティングデバイスを兼ねた入力装置を一本の指(親指)または二本の指(親指と人差し指)だけで安定に保持しながら、これらの指で方向キーとポインティングデバイスを連携して操作できるようにし、両操作の組み合わせにより入力できる情報を多様化することで、ポインティングエリアの数を減らす。(2)上記の方向キーを人差し指の側面と親指のみを用いて支持できるように構成し、人差し指でボタンを押す操作(あるいはポインティングの操作)と方向キーを押す操作を連携して同時に実行できるようにする。両操作の組み合わせによって多様な情報を指定できるので、ボタンの数(あるいはポインティングエリアの数)を減らすことができて、数の減る分、ボタン(あるいはポインティングエリア)のサイズを大きくして操作性を向上できる。通常の入力装置では、方向キーを押す操作とボタンを押す操作(あるいは方向キーを押す操作とポインティング操作)を組み合わせて同時に実行しようとすると両手や複数の指を同時に使わなければならず操作が難しく作業能率が落ちるが、本発明では両操作を片手の親指のみ(または片手の親指と人差し指のみ)を用いて連携して同時に実行できるようにすることで、両操作の組み合わせを容易かつ能率的に実行できるようにする。また操作中に注意をこれらの二つの指に注ぐだけで済むようにして心理的負荷を軽減させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
片手の親指一本だけで方向キーを押す操作とボタンを押す操作(あるいは方向キーを押す操作とポインティング操作)を連携して能率良く実行するためには、指輪のように親指に装着するデータ入力装置を用いる。このデータ入力装置は親指に密着する部位(指密着部)と、外界に別個に設けられた着地用パネル表面に着地した後に滑って移動することのないようにその表面に密着する部位(底面部)を備えており、パネル上の目標ボタン(または目標ポインティングエリア)上に底面部を着地して目標ボタンを押した後(パネル表面に着地する場合には、着地位置を検出して検出位置に基づき目標ポインティングエリアをポインティングした後)、底面部をパネル表面に密着して固定して、底面部に対して可動となっている指密着部を親指に密着させたまま親指と連動して動かし、その移動方向を検出して、検出した方向に対応する方向キーが押されたものとみなす。こうすると「親指を着地用パネル上に着地した後でパネルと平行に動かす運動、あるいは着地後は下方と水平方向の運動が融合して親指を斜め下方に動かす運動」によってボタンを押す操作(あるいはポインティングする操作)と方向キーを押す操作を連続的に実行できる。このような操作の組み合わせは直感的にも分かりやすく、両操作が連続的、円滑に接続して一体の運動となるため簡単かつ高速に実行できる。また使用者は操作中親指一本のみに注意を注げば良いため心理的負荷も小さくなる。
【0006】
片手の親指と人差し指で方向キーを押す操作とボタンを押す操作(あるいは方向キーを押す操作とポインティング操作)を連携して能率良く実行するためには、前述の底面部を人差し指の側面に当てて滑ることのないように皮膚表面に密着した上で、前述の指密着部に親指を密着しながら親指を動かし、指密着部を底面部に対して相対的に動かすときの移動方向を検出して、この移動方向に対応した方向キーが押されたものとみなす。このようにして方向キーを操作しながら同時に人差し指で目標ボタンを押す(あるいは位置検出用パネル表面に接触する人差し指先端の位置(または当該装置の一端の位置)を検出して検出した位置に基づきポインティングする)ことができる。こうすると片手の親指と人差し指だけを用いてボタンを押す操作(あるいはポインティングする操作)と方向キーを押す操作を円滑に連携して実行できる。両手や多数の指を同時に用いる他の作業に比べると、片手の親指と人差し指だけを用いる作業は、注意を隣接した2本の指に注ぐだけで済むため心理的負荷が小さい。また日常の他の行動でも同じ手の親指と人差し指を連携することが多いため人はこれらの指を同時に使う作業に習熟しており、練習しなくとも簡単に両操作を連携させて高速に遂行できる。
【0007】
通常の方向キーでは方向ごとに異なるキーがあり、目的の方向に対応したキーを押して方向を指定する。現在押しているキーと異なるキーへ指を移動するときには指を一度キーから離して宙を移動する必要がある。本発明のデータ入力装置では親指と人差し指だけで装置を保持しながらこれらのいずれかの指で方向キーを操作しなければならない。装置を保持し続けるためには指が宙を移動することができず、指を密着し続けながら操作できる特別な方向キーが必要となる。そのため本発明のデータ入力装置では親指を指密着部に密着しながら動かす時の移動方向を検出し、それを方向キーの入力として扱うが、このままでは複数の異なるキーの感触がなく、方向を正確に区別して入力することが難しい。例えばゲーム機用の入力装置において方向を入力するスティックが使用されているがこうしたスティックでは前後左右の4方向は区別できるものの斜め方向を含む8方向を区別することが難しい。
【0008】
そこで本発明では、指密着部に密着している親指または底面部に密着している人差し指の皮膚表面の触覚に作用する刺激、または指密着部を底面部に対して相対的に動かす際に指の力覚に作用する反発力を生成し、この触覚または力覚に対する作用を指密着部の底面部に対する移動方向に応じて変えることで使用者が触覚または力覚を通じて指を動かす方向を把握できるようにする。この際に指の運動量が小さくとも、触覚または力覚に対する作用を強調して加えることで使用者は指の移動方向の違いを明瞭に把握して誤入力を減らすことができる。指の移動量が僅かで済めば装置を小型化できるし、操作速度も向上できる。また親指を人差し指に対して大きく動かすと関節や筋肉に無理な負担を与え、装置を安定に保持できなくなるが操作量を少なくて済ませることができればこうした問題を生じない。また触覚刺激の加え方を工夫すれば触覚上仮想のボタンを知覚することができて、操作が直感的に分かりやすくなる。
【0009】
指に触覚刺激を加える方法としては、電気的に駆動するアクチュエータを用いて突起を動かしても良いが、消費電力やコストを低減するためには指の運動を機械的に変換して突起を動かすことが望ましい。本発明では小型、軽量で信頼性の高い運動変換機構を考案し、親指または人差し指の一方に装着したり、親指と人差し指で保持したりしても違和感を伴わない小型のデータ入力装置を実現する。またデータ入力装置と他装置間で無線で信号や電力を伝送しあえばケーブルの制約から解放されてさらに自由に操作できる。この無線伝送には無線ICカードや無線ICタグで実用化されている近距離無線方式をそのまま転用することができる。また装置内に認証用のコードを記録すれば、本装置自身により暗証番号やパスワードの入力も行えるので、別途入力装置を用意しなくとも認証を行えるようになる。例えば現在のATMやデビットカード用端末、ドアのセキュリティー管理システムでは、カードに記録されたIDコードと入力する暗証番号で認証を行っている。暗証番号の入力には別途入力用のテンキーが用意されているが、本データ入力装置で暗証番号を入力できるのでIDコードも本データ入力装置に記録すれば、別途入力用のテンキーを用意しなくともい本データ入力装置だけで完全な認証を行えるようになる。
【0010】
本発明で用いるデータ入力装置では常時指が密着しているため、振動モータなどで生成する入力装置の振動を確実に指に伝達できる。そこで本発明の入力装置に振動生成機構を設けて、これを外部からの指令で振動させて使用者の操作に対する応答として、あるいは使用者の注意を喚起するためのプロンプトとして用いると良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明のデータ入力装置では、少数個の大きなボタンあるいは少数個の大きなポインティングエリアを用いて多様な情報を簡単、高速、確実に入力することを可能とする。従来の入力装置では他のボタンを押す操作あるいはポインティングする操作と方向キーを押す操作は連携しにくく、両手を使用したり、多数の指を使用したりする必要があり、習熟するのに時間を要した。本発明によれば片手の親指のみまたは親指と人差し指のみで両操作を容易に連携して実行でき、押すボタンと方向キーの組み合わせ、またはポインティングするエリアと方向キーの組み合わせによって多様な情報を入力できる。例えば9種の方向を識別できる方向キーを用いると、3つの大きなボタンまたは3つの大きなポインティングエリアを組み合わせて27通りの情報を入力できるので英字のアルファベットをすべて入力することができる。従来手法ではこうした組み合わせ操作は難しく、操作が遅くなりがちであったが、本発明によれば、ボタンを押す操作またはポインティングエリアを指定する操作と方向キーを押す操作を容易にまた高速に連携して実行できる。
さらに指を動かす方向に応じて異なる触覚刺激または力覚刺激を指に加える仕組みにより、指を装置に密着したまま操作しても、また指の運動範囲が狭くとも、指先の運動方向を明瞭に区別しながら操作できる。操作中にも指を装置に密着できるので装置を安定に保持できる。また指の運動範囲が狭くて済むため、装置が小型化し、片手の親指一本または親指と人差し指のみを用いて装置を保持できるようになる。従来のタッチパネルやタブレットは平坦で触れても凹凸の感触がなく、指で押してもクリック感(反発力)がないため、触覚や力覚に対する応答がなく操作性が悪かったが、本発明により凹凸感や反発力を生成して操作性を向上できる。
【実施例】
【0012】
図1(a)は本発明のデータ入力装置の斜視図を示す。また図1(b)には同じデータ入力装置を前方(正面)から見た様子を示す。親指を乗せる指保持用台座5の上面が親指に接しており、この上面を指密着部と呼ぶ。これらの図に示すように親指を指密着部に密着させて親指の側面を押さえ具4で挟み込んで装置を親指に固定する。押さえ具4を広げれば装置を親指から容易に着脱できる。また指のサイズに応じて押さえ具4の締め付け具合を調整することもできる。この押さえ具は人差し指を挟み込むように設けても良い。底面部1は着地用パネル6の表面に着地した後でパネルに圧着するように適度な圧力が加えられるとパネル上に滑らないように固定される。ポインティング用突起2の先端にはパネル接触部3があり、パネル接触部3がパネルに接触するときの圧力を検出して接触したか否か、また必要に応じて接触の強さを判定する。この接触の判定機能は着地用パネル6側に設けても良い。着地用パネル6には3つのエリア(Area−A、Area−B、Area−C)が設けられていて底面部1が着地する位置あるいはポインティング用突起の先端部3の接触位置がこれらのエリアのいずれに属するか検出する機構が備わっている。この検出機構は親指に装着される装置の側に持たせても良いし、着地用パネル6側に持たせても良い。具体的には現在タッチパネルやタッチディスプレイで用いられている抵抗値や静電容量に基づく位置検出方式を使うことができる。あるいは一部のタブレットに利用されている電磁誘導方式によればタブレットに接触しなくとも最接近位置を検出することができる。コストを削減するためにはもっと簡単に図1(d)に示すようにボタンを並べて底面部1が着地するときに底面部に押されるボタンの位置として位置を検出しても良い。このように装置を親指に固定して使用すれば、親指一本の運動でポインティングと方向キーの操作を同時に行うことができる。すなわち、親指を降下させて底面部1をパネル表面に着地して、検出される着地地点をポインティング位置として入力した後に、底面部1を滑らないようにパネル表面に密着させて親指をパネルと平行に動かすと親指装着部が親指と共に動いて指保持用台座5が図5、図6に示すように変形する。この変形で傾く台座の傾斜方向から親指先の移動方向を検出し、検出された方向に対応する方向キーが押されたものと解釈する。こうすると親指一本の連続した運動でポインティング操作と方向キーの操作を一括して実行できる。ポインティング操作の結果得られる位置情報と方向キー操作の結果得られる方向情報は図1(a)の通信および情報統合手段52によって統合されて両情報の組み合わせに基づき入力情報を決定する。図中では通信手段をケーブル58で実現しているがこれを無線で実現しても良い。なお情報統合手段52は指に装着する入力装置に設けても良いが、着地位置を検出するパネル内に設けても、あるいはパソコンなど外部の装置にソフトウェアで実現しても良い。
なお着地するパネル表面の形状を位置に応じて変えると、着地したときに感じる表面形状の違いから着地位置を区別することができる。例えば図1(a)のArea−A、Area−B、Area−Cの各範囲でパネル表面の傾斜の仕方を変えると、傾斜方向の違いに基づき着地した位置がこの3つの領域のいずれであるのか把握することができる。
【0013】
図1(c)と図1(d)では二本の指(親指と人差し指)で入力装置を保持している。親指は図1(a)の場合と同様に指密着部に密着しているが底面部1は人差し指の側面に密着し、親指と人差し指で挟むことで装置を保持しているので押さえ具4は不要となる。しかし押さえ具4を導入して本装置を親指に装着するか、または同様の押さえ具を人差し指側に導入して本装置を人差し指側に装着すればより安定に保持でき、常に二本の指で挟み続ける必要がなくなるため指は制約から解放されて、他の操作に関わることができる。例えば図1(d)のように本装置を保持しながら人差し指で既存の入力装置に対して任意の操作(この例ではボタンを押す操作)を行える。特に図15に示すように人差し指の根元近くの側面に底面部1を押さえ具やバンドで固定して使用するようにすれば本装置は邪魔になりにくく、装置を装着したまますべての指を自由に使って各種操作を行うことができる。
このように装置を保持して底面部1を人差し指に密着させながら指密着部に密着した親指を人差し指に対して相対的に動かすと、指保持用台座5が図6に示すように指の移動方向に傾斜するので、この傾斜方向を検出し、傾斜方向に対応する方向キーが押されたものと解釈する。このように方向キーとして使用しながら、図1(c)に示すようにポインティング用突起の先端部3または人差し指の先端7をパネル6に接触させたときの接触位置を検出することによってポインティングの位置情報を入力する。また同様の方法で方向キーとして使用しながら、図1(d)に示すように人差し指の先端7でボタン8を押すこともできる。このように親指で方向キーを操作しながら同じ手の人差し指が自由に他の操作に関われるようにすることで操作性を向上できる。例えば上述した例では自由になった人差し指でボタンを押したり、パネル上の目標地点をポインティングしたりしているが、使用者各人の指のサイズの差異に応じて適した位置に装置を置けば各人に適した位置で方向キーを操作できる。
【0014】
現状のデータ入力装置においてもポインティング操作(あるいはボタンを押す操作)と方向キーを押す操作を同時に遂行することができるが、そのためには両手を使ったり、連携しにくい複数の指を使用したりする必要があり、操作が難しく入力速度が遅いことが問題であった。一方、本発明のデータ入力装置を用いて図1(c)、図1(d)に示すようにポインティング操作(あるいはボタンを押す操作)と方向キーを押す操作を同時に実行する場合には、日常生活で同時に使用する頻度の高い同じ手の親指と人差し指のみを用いて実行するため、特別な訓練をしなくとも容易に両操作を連携し、高速にデータ入力することができる。なお図1(c)、図1(d)に示すように親指と人差し指だけで装置を保持する場合には方向キーの操作中にも常時親指を装置に密着し続けなければならない。もしもボタンが前後左右に4つ並んだ通常の方向キーを用いると、異なるボタンを押す度に一方の指をボタンから離さなければならないが、そうすると他方の指だけでは装置を保持できず、装置は指から離れて落ちててしまう。保持し続けるために指を密着したまま操作するにはジョイスティックのような入力装置が適するが、従来のジョイスティックでは前後左右の4方向の区別はできても斜め方向も含む8方向を区別することは困難であった。
【0015】
一方、本発明のデータ入力装置では、次に述べる触覚または力覚刺激手段を導入することにより、指を指密着部に密着したまま動かすときに、その移動方向に応じて異なる凹凸感または反発力を使用者に感じさせることができ、使用者はこの凹凸感または反発力を通じて指を動かす方向を正確に把握でき、8つの方向を区別して入力できるようになる。さらに触覚刺激の形態を工夫することにより、仮想上の方向キー(突出したボタンの感触)を感じさせることもでき、この感触によって操作が直感的に分かりやすくなる。また指を微小に動かすときに触覚刺激または力覚刺激を強調して加えると微小な指位置の違いを明瞭に区別できるようになり、小さな指の動作で8つの方向を区別して入力できるので入力速度が向上する。
【0016】
図2(b)に親指に触覚刺激を加える手段を示す。ここで指刺激用突起9(図中では単純化して突起というよりも平板になっている)が上下に動いて図2(a)に示すように指密着部10の上に乗っている親指の腹を刺激する。同様の機構を人差し指側に設ければ人差し指に触覚刺激を加えることもできるし、指の移動方向に応じて刺激する指を使い分けて、前後方向に指を動かすときには親指側に、左右方向に指を動かすときには人差し指側に触覚刺激を加えるようにしても良い。図2(b)で指保持用台座5は軸31が回転できるように軸受30を通じて底面部1に接続されている。この軸が回転できるので指保持用台座5は図5、図6に示すように指の移動方向に傾斜する。図2(b)中のポインティング用突起部2の先端部3は位置検出用のパネルに接触し接触位置によって位置を指定する目的に使用する。先端部3がパネルに接触するときに突起部2に力を伝達するため、この力をスイッチや圧電素子を使って検出することによって接触した時点を検出できる。この時点にパネル上で圧力のかかる位置を検出することで位置を入力できる。また圧力が加わるときに先端部3が突起部2の側に引っ込むようにして、引っ込む際に反発力を指に加えるようにすると力覚への応答が生じるため操作性が改善する。
【0017】
図3(a)、(b)には、本発明のデータ入力装置の斜視図を示す。指密着部10はこの上に親指を密着して動かすと親指と共に移動する。指密着部10は軸受13を通じて軸12に接合している。したがって軸12は軸受13に対して回転可能であり、軸12が回転するとそれと一体化している指刺激用突起24の先端部が上下に動いて指密着部10に密着している親指を刺激する。軸31は軸受30を通じて底面部1に接続しており、軸31は軸受30に対して回転可能である。このように各軸が回転可能になっているため親指で指密着部10を前方に押すと指保持用台座5が図5(b)、図6(b)に示すように前方に傾斜する。図3(b)には、指保持用台座5の構造が良く分かるように、図3(a)の底面部1と指密着部10を除外した図を示す。図3(b)では円に囲まれる部分を拡大して示しているが、ここで軸12、20はそれぞれ支柱21に対して18、19を中心に回転できるように構成されている。同様に軸16、11はそれぞれ支柱17に対して15、14を中心に回転できるように構成されている。このように各軸が回転できるため、親指を指密着部10に密着したまま移動して指密着部10を前後左右に押すと指保持用台座5が図5、図6に示すように変形し、各回転軸の回転と共に指刺激用突起が回転し、その先端部が指を刺激することで触覚刺激手段を実現する。図3(c)は図3(a)のデータ入力装置を図中に矢印で示すDの方向から見たときの正面図である。指密着部10が軸受13を通じて軸12に接続し、軸31は軸受30を通じて底面部1に接続している様子が分かる。図3(d)には図3(a)のデータ入力装置を図中に矢印で示すEの方向から見たときの側面図である。ただし指密着部10と底面部1を省き、指保持用台座5のみの側面を示している。
【0018】
図4には指を指密着部10に密着して動かすときにその移動方向に応じて指保持用台座5が傾斜する方向と、その傾斜によって指刺激用突起24、25の先端が指を刺激するように動く様子を矢印で示している。また指を指密着部10から離したときに指保持用台座5を正規の状態に復帰するためのバネ28、29を示す。この復帰の機構は軸54と一体化してバネ28によって押し上げられる板26と軸53と一体化してバネ29によって押し上げられる板27から成る。なお34は指保持用台座5が傾斜する方向を検出するスイッチへの導線である。これらの導線間の導通関係は指保持用台座5の傾斜方向によって変わるのでこの導通関係によって傾斜方向を検出できる。例えば指を図4(a)の矢印Aの方向(前方)に動かすと支柱22は図中の矢印の方向に傾斜する。この時に指刺激用突起24は矢印の方向に持ち上がり指を刺激し、板26は矢印の方向に動いてバネ28を押し下げる。各種支柱や軸および板26には導電性があり、板26が接点32に接触すると導線34の左側2つが導通する。この様子を矢印Eで示される側方から見ると図4(c)のようになる。また親指を図4(a)の矢印Bの方向に動かすと支柱23が矢印の方向に倒れ、この時、指刺激用突起25は矢印の方向に持ち上がり指を刺激し、板27は矢印の方向に動いてバネ29を押し下げる。各種支柱や軸および板27には導電性があり、板27が接点33に接触すると導線34の右側2つが導通する。同様の接点は反対側にもあり、それらの接触関係から指の前後左右の移動方向を検出できる。この様子を矢印Dで示される正面から見ると図4(b)のようになる。図4(b)に示すように板27をバネ29で押し上げるのと同様の機構が反対側にもあり、この機構によって指保持用台座5は左右方向について中央位置に復帰して正立する。同様に図4(c)に示すように板26をバネ28によって押し上げる機構は反対側にもあり、この機構によって指保持用台座5は前後方向について中央位置に復帰して正立する。
なお以上には接点の導通関係をもとに指の移動方向を検出する方式を述べたがロータリーエンコーダを用いて指保持用台座5の傾斜方向及び傾斜量を検出することによって指の移動方向を検出しても良い。ロータリエンコーダを用いると指の移動量と移動方向をより精密に計測して計測量に基づいてカーソルやスクロール、コンテンツのストリームを制御できる。しかしながら図4に示す簡易なスイッチを用いても、指の移動中に一つのスイッチがOFFしてから別のスイッチがONするまでの時間に基づいて指の速度を算出して、この速度に基づいて映像の再生速度を定めたり、スクロールの速度変えたり、ページや画像の読み飛ばし間隔を変えたりして、コンテンツのストリームを制御できる。
【0019】
図4(b)、(c)のバネ35とスイッチ36は指先の上下方向の運動(図4(a)の矢印C方向の運動)を検出するためにある。指先を下方向に動かすとバネ35が縮みスイッチ36が接触して導通する。こうして指先の下方向の運動を検出し、前述の方向検出手段が指の前後左右の運動方向を検出する時点を指定するタイミング指定手段として使用する。すなわち指先を下方向に動かしてスイッチ36を導通させる(ONにする)時点の接点32、33等の導通状態を調べて、指先の移動方向を判断する。または指先を上げてスイッチ36を非導通にする(OFFにする)時点の接点32、33等の導通状態を調べて指先の移動方向を判断しても良い。このようにタイミング指定手段を導入すると指を移動する際に一時的に移動方向を誤っても最終的にタイミング指定時点の指先の移動位置さえ正しければ正しい方向を入力できる。したがって操作途中の移動方向の誤りを訂正することができるが、タイミング指定手段を用いずに指の移動が検出された時点に即座に移動方向が入力する方式の場合には指先が誤った方向に移動したら訂正の余地なく誤った方向が入力してしまう。またタイミング指定手段を用いると、方向キーで入力すべき方向が位置を指定する以前に分かっている場合に、位置決めに先立って方向キーの操作を開始できるので(そうしても方向が入力するのは後でタイミングを指定するときになるので問題ない)、位置決めのために指を動かす運動と方向キーを操作する作業を並列して実行できて入力速度が向上する。このようにタイミングを指定する以前については操作の順序に関わらず同一の情報が入力するようにするタイミング指定手段を備えることによって入力方式の操作性が向上する。
【0020】
図5(a)(b)(c)(d)には図4(a)の指保持用台座5を矢印Dの方向から見た正面図を左側にまた矢印Eの方向から見た側面図を右側に示す。図5(a)は指位置が中央にあるとき、図5(b)は指が前方に動いたとき、図5(c)は指が左方向に動いたとき、図5(d)は指が斜め左前方に動いたとき、について指保持用台座5の傾斜の様子と指刺激用突起の動きの様子を示す。図5(a)では指刺激用突起は指を刺激しないが、図5(b)では指刺激用突起24が、また図5(c)では指刺激用突起25が、そして図5(d)では指刺激用突起24と指刺激用突起25が共に指を刺激して、この刺激形態の違いから使用者は動かした指の移動方向を確認できる。また使用者は指を移動したときに上昇して指を刺激する指刺激用突起をその位置に元々あったボタンであるかのように錯覚する。図5のように指を前後左右に動かしたときに指刺激用突起が上昇して指を刺激すると、使用者はこれをあたかも前後左右に4つのボタンが配列した通常の方向キーであるかのように錯覚してこの装置を操作することになる。4つのボタンを用いる通常の方向キーでは、あるボタンから異なるボタンへ指を移動するときに一度指をボタンから離して宙を移動するする必要があるが、本装置では指を密着したまま操作しながら4つのボタンがあるように感じることができる。また指を微小に動かしたときに指刺激用突起を大きく動かせば、指の微小の移動を指刺激用突起からの刺激を手掛かりに正確にコントロールすることができて、狭い操作範囲の僅かな指の運動で正確に方向を区別して入力できる。
【0021】
図6には指刺激用突起24、25が指を刺激する様子を示す。図6(a)は指を向かって左方向に動かしたときに指保持用台座5が傾斜して指刺激用突起25が上昇して指を刺激する様子を示す正面図である。図6(b)は指を向かって前方向に動かしたときに指保持用台座5が傾斜して指刺激用突起24が上昇して指を刺激する様子を示す側面図である。
【0022】
図7には図3(b)に示した指保持用台座5の構成を若干修正した実施例を示す。支柱21と軸37、38などの接続部分を単純化しているが基本的な構造は同一である。図7(a)は指が中央位置にある場合に各支柱は直立し、指刺激用突起は水平で指を刺激しない。図7(b)は指を図中の矢印で示す方向に移動するときに各支柱も矢印の側に傾斜し、軸37と一体化している指刺激用突起24が軸37と共に矢印の方向に回転してその先端が指を刺激する。図7(c)は指を図中の矢印で示す方向に移動するときに各支柱も矢印の側に傾斜し、軸38と一体化している指刺激用突起25が軸38と共に矢印の方向に回転してその先端が指を刺激する。
【0023】
図8には指を移動するときに移動方向に応じて異なる触覚刺激を指に加えるための別の機構を示す。図中の39の部分が指に連動して動くものとする。指と共に39を図8(b)に示すように左方向へ動かすと支柱40は傾斜して支柱40と一体化している指刺激用突起41が傾いて図に示すように先端部が上方に動いて39の上に乗っている指を刺激する。ここで39と40及び40と43は2軸の回転機構により接続されいるため、支柱は前後左右の2次元方向に傾斜することができる。その間39の上面及び43の底面は水平に保たれる。図8(c)には図8(a)の機構を矢印Fの方向から見た図を示す。支柱40と指刺激用突起41が一体化している様子、39と40及び40と43が2軸の回転機構により接続されている様子が分かる。図8(c)で39を指と共に右に動かすと図8(d)に示すように支柱40が傾斜する。この時、指刺激用突起41は先端部が上昇しないので指を刺激することはない。このように図8の機構を用いると指を特定の方向に移動するときにだけ(この例では図8(b)で左に動かすときにだけ)指刺激用突起41が指を刺激する。ここで2軸の回転機構は次のように動作する。支柱40は42に対して回転軸60を中心として回転する。42は43に対して回転軸59を中心にして回転する。このように直交する2つの回転軸が独立に回転するように設けられているので支柱40は43に対して前後左右の方向に2次元の自由度で傾斜できる。支柱40の上部についても同様に2つの直交する回転軸が設けられており、支柱40は39に対しても前後左右の方向に2次元の自由度で傾斜できる。
【0024】
図9は図8の機構を前後左右に4つ対向するように配置して指が前後左右に移動するときに移動方向に配置された機構のみが突起を上昇させて指先を刺激するように構成したものである。図9(a)では指先は中央位置にあり各支柱は直立しておりどの支柱の突起も指先を刺激しない。図9(b)では指先は前方(図上では左側)に移動し、各支柱も前方に傾斜する。このとき前方の支柱のみが突起を出して指先を刺激する。
【0025】
図10には方向検出手段によって検出される指の方向を入力するデータに関連付ける関連付けマップを視覚化して画面表示した例を示す。この例においては、図1(a)の位置検出パネル6(このパネルは位置検出機能のみを備えたタブレットと、表示と位置検出を兼ねたタッチディスプレイのいずれでも良い)に設けられた3つのポインティングエリアArea−A、Area−B、Area−Cに対してそれぞれ9字ずつアルファベット等の文字を割り当て、各エリアにおいて指の前後左右及び斜めの移動方向に関連付けられて入力する9個の文字を指の運動方向を示唆するように配置して表示している。この例では単純に文字を3行3列に配列して関連付けマップを視覚化しているが、指先の運動方向を示唆する矢印の絵に入力するデータを示唆するアイコンを付随して表示しても良い。図10の例では3つのエリアの各々に関連付けマップを設けてある。図1(a)の例では位置検出用パネル上で底面部が着地する位置に応じて3つのエリアの一つを選択する。また図1(b)の例ではタブレットなどの位置指定手段を用いて指で保持する装置の一端や指先で指定する位置に基づきエリアの一つを選択する。さらに図1(c)の例では3つのボタンの一つを押して対応するエリアを選択する。このようにエリアを指定するとそのエリアに割り当てられている関連付けマップが選択されて、そのマップに従って指の移動方向に関連付けられているデータが入力する。指の移動方向は図4(b)に示されるタイミング指定用のスイッチ36が指の上下方向の運動によってONまたはOFFする時点の指位置によって判定する。このようにタイミング指定手段を用いると、指先を前後左右及び斜め方向に移動後タイミング指定する場合と移動せずに中央位置に留まったままタイミング指定する場合の計9種の指運動を区別して9種の文字を入力できる。各エリアに設けられた関連付けマップはこの9種の指運動に対して入力する文字を関連付け、実行された指運動に対応するデータを入力する。この際に上述した方法で位置を指定してエリアを選択するとそのエリアに割り当てられている関連付けマップを視覚化して画面表示する。または3つのエリアに割り当てられている関連付けマップを常時表示しておき、選択されたマップのみを目立つようにハイライト化して表示しても良い。なお指を特定の方向に移動してもタイミング指定用のスイッチをONまたはOFFするまでは入力が確定しないのでエリアを指定する作業と方向指定のために指を移動する作業を同時に平行して実行して入力能率を向上できる。図10(a)には英字のアルファベットを入力するための関連付けマップを、図10(b)には数字と記号を入力するための関連付けマップを、図10(c)にはローマ字入力でひらがなを入力するための関連付けマップを、それぞれ示す。ローマ字入力ではまず子音に相当する英字を入力後、母音に相当する英字を入力し両者の組み合わせでひらがなを指定する。母音と子音がそれぞれ別個のエリアに割り当てられているため分かりやすい。また母音は前後左右の方向への指運動のみを用いて入力するようにして、混乱しやすい斜め方向の運動は用いない。
【0026】
図11には本発明のデータ入力方式を使ってゲームのキャラクターの動きをコントロールする方法を示す。図1(a)の実施例を用いる場合にはまず底面部1をパネル6上に着地する位置によって画面44内のキャラクター45の位置を指定する。この際にキャラクターは連続的にしか移動できないように拘束し、突然離れた地点に出現するような不自然な動作が生じないようにする。着地位置で底面部1を固定して指を前後左右に動かすとその動きに応じてキャラクターの向く方向を変えたり腕47を動かしたり、武器46を動作させたりする。ただしこうしたキャラクターの取れる行動はキャラクターの位置に応じて異なる場合がある。したがってこの場合にも位置に応じて異なる関連付けマップを用いて指の移動方向とキャラクターの動作との対応付けを行う必要がある。図1(c)の実施例を用いる場合も同様にキャラクターの位置をポインティング用突起の先端部3の着地位置に応じて定め、キャラクターの動作を指の前後左右の移動方向を用いて定めると良い。
【0027】
図12(a)には本発明のデータ入力方式を使ってインターネットのウェッブ上のページの特定項目をポインティングしている様子を示す。図2に示す入力装置を親指と人差し指で保持して画面に表示されているウェッブのページ中の特定項目をポインティング用突起3で触れて指定する。あるいは人差し指7で目的の項目に触れてポインティングしても良い。または画面に触れなくとも画面に近づけるだけでデータ入力装置の最も近くにある項目が選択されるようにしてもよい。例えば図12(a)でポインティング用突起3を矢印48の方向に動かしてゆくとItem−AがItem−Bよりも入力装置の近くに来るので画面に接触しなくともItem−Aが選択されるようにする。ここで最短距離にある項目を検出するためには、空中の入力装置の位置を電磁的あるいは光学的に非接触のまま計測する仕組みが必要である。図12(a)でポインティングエリア49にある項目Item−Aを選択すると、そのエリア(項目)に割り当てられている関連付けマップが視覚化されて表示される。表示された関連付けマップを図12(b)に示す。視覚化された関連付けマップにおいては指先を前後左右及び斜めの8方向に移動してタイミングスイッチをON(またはOFF)するときに入力するデータと指先を移動せずに中央位置でタイミングスイッチをON(またはOFF)するときに入力するデータを示唆するアイコンを表示する。これらのアイコンを表示した例が図12(b)中のItem−1からItem−9である。指先の移動方向と入力するデータの対応を把握できるようにこれらのアイコンは前後左右、斜め及び中央位置に配置して3行3列に表示する。例えば指を矢印50の方向に移動するとその方向に対応する位置51に配置された項目Item−4が選ばれて入力する。携帯端末の小さな画面に多数の項目を同時に表示することは難しい。図12に示すように項目を階層的に表示すればこうした端末の小さな画面を有効に利用できる。すなわち入力装置に最も近い位置にある項目(Item−A)についてのみ関連付けマップを視覚化して下位の階層の項目(Item−1からItem−9)を表示するようにすれば、画面を混雑させずに多数の項目を扱うことができる。しかも矢印48の方向に指を動かして画面をポインティングする操作と矢印50の方向に指先を移動して方向を入力する操作は連携して同時に実行できるので能率的に項目を選択できる。項目Item−Aについてはポインティングしやすいように大きなエリアを使うと良い。項目Item−1からItem−9については指の移動方向によって選択するので小さなエリアで表示しても操作性は低下しない。
【0028】
現状のインターネットブラウザーではカーソルが近づくとウェッブのページ中に埋め込まれたリンク先等の項目の色が変わったり、項目の下にアンダーラインが表示されたり、項目が立体的に浮き出るように表示されたりして(ハイライト化して)その項目が選択されたことが示される。上述した方式では、項目を選択するとその項目に関連した複数の項目が方向キーに幾何学的に対応するように配置されてポップアップして(ハイライト化して)画面に表示されるようにする。それが指の運動方向を入力データに対応付ける関連付けマップの視覚化になる。こうすると特に画面の小さな携帯機器では小さな画面を節約して多数の項目(リンク先やメニュー)を扱えるので好都合である。またブラウザーを両手や複数の指で操作することには抵抗があるが、本発明の入力装置では一本指か二本指で気軽に操作することができる。また入力装置が位置検出用パネルに非接触の状態でその位置を検出できる位置検出手段を用いると、パネル接触前にも入力装置に最も近い位置にある項目を選択することができるし、あるいは、パネルから離れているときにはフォーカス範囲(ハイライト化する項目の範囲)を広げて多数の項目をハイライト化して表示し、入力装置がパネルに接近するにつれてフォーカス範囲を狭めてハイライト化する項目を一つに絞るようにすることもできる。
【0029】
図13には本発明のデータ入力方式で用いるデータ入力装置に埋め込む各種機能を示す。ここでは図2(b)の装置の底面部1に機能を埋め込んでいるが他の部位に埋め込んでも構わない。まず56は振動モータであり、使用者に振動を通じてメッセージを通知する目的に用いる。55は指の移動方向の検出結果やタイミングの検出結果を処理し、無線で電力や信号を送受信するために用いる回路とアンテナである。57は認証用のコードを登録し、使用者が本装置で入力するパスワードと比較して個人認証するための回路である。無線ICタグという書き込み可能である程度の計算能力をも備え、無線でデータ通信、電力供給可能な小型チップが普及し低コスト化しつつあるのでそのような無線ICタグを本発明のデータ入力装置に埋め込めば、本入力方式によって外部機器を用いずに無線ICタグへ情報を書き込めて都合がよい。また無線ICタグに備わっているデータ通信、電力供給、計算、メモリー機能を上述してきた本発明のデータ入力装置の各種機能を実現する目的に利用することができる。
【0030】
図14には、本発明のデータ入力方式の構成と処理のフローチャートの例を示す。まず親指と人差し指で保持しながら、これらの指で操作するデータ入力装置の内部に設けられる方向検出手段、タイミング指定手段、触覚刺激手段が点線で囲まれた枠内に示されている。触覚刺激手段は親指または人差し指に触覚刺激を与えて操作者が指の移動方向などを把握するのを助ける。また方向検出手段はタイミング指定手段が与える時点の指の位置から指の移動方向を判定して判定結果(方向情報)を通信及び情報統合手段を通じてパーソナルコンピュータ内のソフトウェアへ送る。また別個に設けられたタッチパネルやタブレットなどの位置検出手段によって検出される位置情報も通信及び情報統合手段を通じてパーソナルコンピュータ内のソフトウェアへ送られる。パーソナルコンピュータ内のソフトウェアは位置情報から用いるべき関連付けマップを選択し、選択した関連付けマップによって方向情報に関連付けられた入力データを入力する。また位置情報から選択された関連付けマップを視覚化して表示装置の画面に表示する。この際に関連付けマップ視覚化手段を用いて入力データを示唆するアイコンを関連付けられている指の移動方向と幾何学的に対応の取れるように表示する。
【0031】
図15には、本発明のデータ入力方式で用いるデータ入力装置を人差し指に装着して使用する例を示す。データ入力装置62をバンド61で人差し指に装着している。図に示すように人差し指の中央部分の側面に装着すれば、人差し指や親指の先でキーを操作する作業を妨害することはない。データ入力装置62には方向を入力するためのボタン63が4つ設けられていて、他の指でキーボードを操作しながら親指先をデータ入力装置62側に移動してこれらの方向キーを操作できる。このように方向キーを人差し指側面に装着するとキーボードやタッチパネルを人差し指や他の指で従来通り操作しながら、同時に親指で方向キーを操作できるようになる。
【0032】
以上に述べてきた本発明の入力方式の特徴を要約すると、指定する方向に応じて異なる触覚刺激を指に加える機構を備えた入力装置を指で保持して位置指定と方向指定を組み合わせて入力するデータを定める入力方式であって、指で保持する入力装置の位置を検出する手段と、検出した位置に基づき入力装置から与えられる信号の解釈を変える手段と、を備えることを特徴とする。ボタンやポインティングエリアを大きくしてこれらの位置の指定(ポインティング)を容易にすると指定できる位置の数が減ってしまうが、この装置によれば位置の指定と方向の指定を組み合わせることによって多様な情報を入力できる。方向を指定する際には指の移動方向に応じて指の触覚へ異なる刺激を加えることで、使用者が入力しようとしている方向を明瞭に識別できるようにし、しかも指一本で保持できる小さな入力装置を用いて位置指定と方向指定を連続的に接続する一体の運動で高速に実行できるようにする。あるいは指二本で保持できる小さな入力装置においてタイミング指定手段を用いて方向を検出するタイミングを指定することによって位置指定と方向指定を同時に行えるようにして入力を高速化する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】 本発明のデータ入力方式の実施例と利用形態を示す図である。(a)親指に装着し、その底面部が着地する位置がArea−A、Area−B、Area−Cのいずれに含まれるかパネル上で検出する。(b)親指に装着している入力装置の正面図。(c)親指と人差し指で保持して装置の一端または人差し指がパネルに接触する位置を検出する。(d)親指と人差し指で保持して人差し指でボタンを押す。
【図2】 本発明のデータ入力方式で親指を刺激する触覚刺激手段の仕組みを示す。(a)本発明のデータ入力装置を親指と人差し指で保持する様子を示す。(b)指密着部に乗る指の触覚を刺激する機構を示す。
【図3】 本発明のデータ入力方式で親指を刺激する触覚刺激手段の仕組みの詳細を示す。(a)触覚刺激手段の全体像を示す。(b)触覚刺激手段の指保持用台座の仕組みを示す。(c)(a)の正面図である。(d)(b)の側面図である。
【図4】 本発明のデータ入力方式で指密着部に乗せた親指を前後左右に移動するときに触覚刺激用突起が指を刺激する仕組みと指の移動方向を検出する仕組みを示す。(a)斜視図。(b)正面図とタイミング指定手段。(c)側面図とタイミング指定手段。
【図5】 本発明のデータ入力方式で指密着部に乗せた親指を前後左右に移動するときに触覚刺激用突起が指を刺激する仕組みを正面図(左図)と側面図(右図)によって示す。(a)指が中央位置にいるとき。(b)指が前方に移動したとき。(c)指が左方向に移動したとき。(d)指が左斜め前方に移動したとき。
【図6】 本発明のデータ入力方式で指密着部に乗せた親指を触覚刺激用突起が刺激する様子を示す。(a)指を左に動かした時の正面図である。(b)指を前方に動かしたときの側面図である。
【図7】 本発明のデータ入力方式で指密着部に乗せた指を刺激する触覚刺激手段の別の実施例を示す。(a)指が中央位置にあるときの指保持用台座の様子。(b)指を矢印の方向に動かした時に指保持用台座が傾斜して触覚刺激用突起の一つが指を刺激するように先端を上げる様子。(c)指を矢印の方向に動かした時に指保持用台座が傾斜して触覚刺激用突起の一つが指を刺激するように先端を上げる様子。
【図8】 本発明のデータ入力方式で用いる触覚刺激手段の別の実施例を示す。(a)指が中央位置にあるときには直立しており、突起は指を刺激しない。(b)〜(d)は指を各方向に動かしたときに対応する方向に傾斜するが、これらの中で(b)の方向に傾斜するときにのみ指を刺激する突起が上昇する。
【図9】 図8に示した機構を4つ対向するように前後左右に配列してその上で指を移動する場合に突起が指を刺激する様子を側面図で示す。(a)指が中央位置にあるときにはどの突起も上昇しない。(b)指を前方に移動すると前方にある突起のみが上昇して指を刺激する。
【図10】 図1のArea−A、Area−B、Area−Cに割り当てられた関連付けマップ(指の移動方向と入力するデータの関連付けを行う対応表)の視覚化例を示す。(a)英字のアルファベットを入力する場合。(b)数字を入力する場合。(c)ひらがなをローマ字入力する場合。
【図11】 本発明のデータ入力方式でゲームのキャラクターをコントロールする実施例を示す。
【図12】 本発明のデータ入力方式で親指と人差し指だけで入力装置を保持しながら、位置入力と方向入力を連携して能率良く行い、ウェッブのページ中の項目の一つ(Item−A)をポインティングして表示される関連付けマップの項目の一つ(Item−4)を選択する様子を示す。(a)入力装置の一端で画面に触れて項目Item−Aを選択する。画面に触れなくとも入力装置に最も近い項目としてItem−Aを選択するようにしても良い。(b)Item−Aを選択後に表示される関連付けマップの項目の一つ(Item−4)を対応する方向に指を動かして選択している様子を示す。
【図13】 本発明のデータ入力方式で用いるデータ入力装置に振動モータ、無線ICタグ用のチップ、認証用のコードと回路を組み込んだ実施例を示す。
【図14】 本発明のデータ入力方式で用いる各種手段と処理の流れを示す。各手段は指に装着する(指で保持する)データ入力装置、パーソナルコンピュータ上のソフトウェア、一検出手段を備えたパネル、表示装置の画面などに実装され、各手段の間は通信および情報統合手段で結ばれる。各手段の間でやり取りされる情報の流れを矢印で示す。
【図15】 データ入力装置をバンドで人差し指に装着すると、通常のキーボード操作と干渉することなく連携させることができて、親指で人差し指に装着されたデータ入力装置を操作しながらキーボードを操作できることを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着地面に着地後その表面に密着して固定する底面部と、
指に密着する指密着部と、
前記指密着部が前記底面部に対して移動することを可能とする可動手段と、
前記指密着部の前記底面部に対する移動方向を検出する方向検出手段と、
を備えて指に装着して使用する指装着型データ入力装置のためのデータ入力方式であって、
前記方向検出手段によって区別される前後左右および斜め方向の指運動と入力データの対応関係を定める関連付けマップと、
前記着地面上で前記底面部が着地する位置に基づいて前記関連付けマップを変更する手段と、
を備え、
前記底面部の着地地点に応じて定まる前記関連付けマップを用いて前記方向検出手段の検出する指の運動方向に対して前記関連付けマップによって関連付けられている入力データを入力することを特徴とするデータ入力方式。
【請求項2】
人差し指に密着する底面部と、
親指に密着する指密着部と、
前記指密着部が前記底面部に対して相対的に移動することを可能とする可動手段と、
前記指密着部の前記底面部に対する相対的な移動方向を検出する方向検出手段と、
前記指密着部または前記底面部または人差し指または親指で接触するか接近することによって位置を指定する位置指定手段と、
を備えて前記底面部に密着する親指と前記指密着部に密着する人差し指で保持して使用するデータ入力装置のためのデータ入力方式であって、
前記位置指定手段から与えられる位置情報と、
前記方向検出手段によって区別される前後左右および斜め方向の指運動と入力データの対応関係を定める関連付けマップと、
前記方向検出手段が検出する方向情報と前記位置指定手段が指定する位置情報を統合する通信および情報統合手段と、
前記位置指定手段が指定する位置に応じて前記関連付けマップを変更する手段と、
を備え、
前記位置指定手段が指定する位置に応じて定まる前記関連付けマップを用いて前記方向検出手段の検出する指の運動方向に対して前記関連付けマップによって関連付けられている入力データを入力することを特徴とするデータ入力方式。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載したデータ入力方式において、前記方向検出手段が方向を検出する時点を指定するタイミング指定手段を導入し、タイミング指定手段が指定する時点の指の移動状況から指の移動方向を算出して前記方向検出手段の方向検出結果とすることを特徴とするデータ入力方式。
【請求項4】
請求項1または請求項2または請求項3記載のデータ入力方式において、
指の触覚または力覚を刺激する触覚刺激手段を備え、
前記指密着部と前記底面部の相対的位置関係に応じて指に加える触覚刺激を変化させることを特徴とするデータ入力方式。
【請求項5】
請求項4記載のデータ入力方式において、
前記指密着部の前記底面部に対する相対的運動を指に接触する部材の変位運動に機械的に変換する手段を用いて触覚刺激を変化させることを特徴とするデータ入力方式。
【請求項6】
請求項1記載のデータ入力方式において、
画面上に設けられた複数の領域の各々に割り当てられる前記関連付けマップと、
前記領域のうち、前記底面部に最も近い領域に対して割り当てられている前記関連付けマップを視覚化し、指先の各移動方向に関連付けられている入力データを関連付けられている指先の移動方向と幾何学的に対応が取れるように配置して表示する関連付けマップ視覚化手段と、
を備えることを特徴とするデータ入力方式。
【請求項7】
請求項2に記載のデータ入力方式において、
画面上に設けられた複数の領域の各々に割り当てられる前記関連付けマップと、
前記領域のうち、前記位置指定手段によって指定される位置に最も近い領域に対して割り当てられている前記関連付けマップを視覚化し、指先の各移動方向に関連付けられている入力データを関連付けられている指先の移動方向と幾何学的に対応の取れるように配置して表示する関連付けマップ視覚化手段と、
を備えることを特徴とするデータ入力方式。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載のデータ入力方式において、データ入力装置本体に記録するIDコードとデータ入力装置本体自身を用いて入力する暗証番号を用いて認証を行うことを特徴とするデータ入力方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−50512(P2006−50512A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−256286(P2004−256286)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】