説明

データ入力装置、データ入力方法ならびにデータ入力プログラムおよびこれを記録した記録媒体

【課題】 力センサに加えられた力を極座標データとして入力し、r値およびθ値を利用してデータ入力処理を行う新規な方式によるデータ入力装置を提供する。
【解決手段】 携帯電話1は、入力部50の力センサ51により加えられた力を直交座標データとして検出し、検出した直交座標データを極座標データに変換する。ついで、キャラクタと各キャラクタを割り付けるθ値の範囲とを登録した割り付けテーブルを参照して、得られたθ値に割り付けられたキャラクタを選択する。そして、所定の閾値より大きいr値が入力されると、選択していたパラメータの入力を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ入力装置(ヒューマンインプットデバイス)に関する。詳しくは、力センサに加えられた力を極座標データとして入力するデータ入力装置である。
【背景技術】
【0002】
ノート型パーソナルコンピュータ等のポインティングデバイスやテレビゲーム等のジョイスティック等の入力装置では、4方向または多方向の力センサーが用いられている。これらの力センサでは、静電容量変化や抵抗線変化等を利用してセンサ部分に加えられた力を測定し、これを電気信号に変換して出力する。この場合、力センサからの出力信号は通常は直交座標系データとして、すなわちXY方向の各成分として得られる。
【0003】
例えば、ゲーム機器の場合、力センサに加えられた力が直交座標データとしてゲーム機に入力され、ゲーム上のキャラクタはかかる入力データに相当する分量の動作をXY平面上で行う(例えば現在位置から入力されたXY成分の分量だけ移動する)。また、メニュー選択画面等では、力センサから入力された直交座標データの属する領域に割り付けられた項目やメニューが選択される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明のごとく、力センサに加えられた力を極座標データとして、すなわちr値(力の大きさ)およびθ値(力の方向)として入力するデータ入力装置は知られていなかった。
【0005】
したがって本発明は、力センサに加えられた力を極座標データとして入力し、r値およびθ値を利用してデータ入力処理を行う新規な方式によるデータ入力装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0007】
(1)加えられた力を検出する検出手段と、前記検出手段により検出した力の方向に従って入力するパラメータを選択する選択手段と、前記検出手段により検出した力の大きさに従って前記選択手段により選択したパラメータの入力を決定する決定手段と、を有することを特徴とするデータ入力装置。
【0008】
(2)加えられた力を直交座標データとして検出する検出手段と、前記力検出手段により検出した直交座標データを極座標データに変換する変換手段と、前記変換手段により変換した極座標データのθ値に従って入力するパラメータを選択する選択手段と、前記変換手段により変換した極座標データのr値に従って前記選択手段により選択したパラメータの入力を決定する決定手段と、を有することを特徴とするデータ入力装置。
【0009】
(3)パラメータと各パラメータを割り付けるθ値の範囲とを登録した割り付けテーブルを記憶する記憶手段をさらに有し、前記選択手段は、前記記憶手段に記憶された割り付けテーブルを参照して、前記変換手段により得られたθ値に割り付けられたパラメータを、入力するパラメータとして選択することを特徴とする、(2)に記載のデータ入力装置。
【0010】
(4)前記記憶手段により記憶した割り付けテーブルには、各パラメータを割り付けたθ値の範囲間にパラメータを割り付けていないθ値の範囲を含むことを特徴とする、(3)に記載のデータ入力装置。
【0011】
(5)前記変換手段により得られたθ値の変化量を算出する第1の算出手段をさらに有し、前記選択手段は、前記第1の算出手段により算出した変化量に対し所定の変化量ごとに所定の順列で入力するパラメータを選択することを特徴とする、(2)に記載のデータ入力装置。
【0012】
(6)前記選択手段により選択したパラメータを表示する表示手段をさらに有することを特徴とする、(2)〜(5)のいずれか1つに記載のデータ入力装置。
【0013】
(7)前記変換手段により得られたr値が所定の閾値より大きいか否かを判断する第1の判断手段をさらに有し、前記選択手段は、前記第1の判断手段によりr値が閾値より大きいと判断した場合に入力するパラメータを選択することを特徴とする、(2)〜(6)のいずれか1つに記載のデータ入力装置。
【0014】
(8)前記変換手段により得られたr値が所定の閾値より大きいか否かを判断する第2の判断手段をさらに有し、前記決定手段は、前記第2の判断手段によりr値が閾値より大きいと判断した場合に前記選択手段により選択したパラメータの入力を決定することを特徴とする、(2)〜(7)のいずれか1つに記載のデータ入力装置。
【0015】
(9)前記変換手段により得られたr値の変化量を算出する第2の算出手段と、前記第2の算出手段により算出したr値の変化量が所定の閾値より大きいか否かを判断する第3の判断手段とをさらに有し、前記決定手段は、前記第3の判断手段によりr値の変化量が閾値より大きいと判断した場合に前記選択手段により選択したパラメータの入力を決定することを特徴とする、(2)〜(7)のいずれか1つに記載のデータ入力装置。
【0016】
(10)前記変換手段により得られたθ値の変化量を算出する第3の算出手段と、前記変換手段により得られたr値の変化量を算出する第4の算出手段と、前記第3の算出手段により算出したθ値の変化量と前記第4の算出手段により算出したr値の変化量とを所定条件下で比較し、いずれの変化量が大きいかを判断する第4の判断手段とをさらに有し、前記選択手段は、前記第4の判断手段によりθ値の変化量の方が大きいと判断した場合に入力するパラメータを選択し、前記決定手段は、前記第4の判断手段によりr値の変化量の方が大きいと判断した場合に前記選択手段により選択したパラメータの入力を決定することを特徴とする、(2)〜(7)のいずれか1つに記載のデータ入力装置。
【0017】
(11)前記パラメータは、数字および所定の記号であることを特徴とする、(1)〜(10)のいずれか1つに記載のデータ入力装置。
【0018】
(12)キートップまたはキートップ周縁部筐体に前記パラメータが表示されていることを特徴とする、(1)〜(11)のいずれか1つに記載のデータ入力装置。
【0019】
(13)キートップまたはキートップ周縁部筐体にキャラクタの選択を補助するための点状または線状の突起、溝または凹凸が設けられていることを特徴とする、(1)〜(12)のいずれか1つに記載のデータ入力装置。
【0020】
(14)キートップが花弁型または星型の形状を有することを特徴とする、(1)〜(13)のいずれか1つに記載のデータ入力装置。
【0021】
(15)携帯電話、PHS、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯型ゲーム機、PDA、電子手帳、電子機器用リモコン、カメラ、デジタルカメラまたはカムコーダである、(1)〜(14)のいずれか1つに記載のデータ入力装置。
【0022】
(16)コンピュータまたはゲーム機器用の周辺機器である、(1)〜(15)のいずれか1つに記載のデータ入力装置。
【0023】
(17)加えられた力を検出する検出ステップと、前記検出ステップにより検出した力の方向に従って入力するパラメータを選択する選択ステップと、前記検出ステップにより検出した力の大きさに従って前記選択ステップにより選択したパラメータの入力を決定する決定ステップと、を有することを特徴とするデータ入力方法。
【0024】
(18)加えられた力を直交座標データとして検出する検出ステップと、前記力検出ステップにより検出した直交座標データを極座標データに変換する変換ステップと、前記変換ステップにより変換した極座標データのθ値に従って入力するパラメータを選択する選択ステップと、前記変換ステップにより変換した極座標データのr値に従って前記選択ステップにより選択したパラメータの入力を決定する決定ステップと、を有することを特徴とするデータ入力方法。
【0025】
(19)加えられた力を検出する検出ステップと、前記検出ステップにより検出した力の方向に従って入力するパラメータを選択する選択ステップと、前記検出ステップにより検出した力の大きさに従って前記選択ステップにより選択したパラメータの入力を決定する決定ステップと、をデータ入力装置に実行させることを特徴とするデータ入力プログラム。
【0026】
(20)加えられた力を直交座標データとして検出する検出ステップと、前記力検出ステップにより検出した直交座標データを極座標データに変換する変換ステップと、前記変換ステップにより変換した極座標データのθ値に従って入力するパラメータを選択する選択ステップと、前記変換ステップにより変換した極座標データのr値に従って前記選択ステップにより選択したパラメータの入力を決定する決定ステップと、をデータ入力装置に実行させることを特徴とするデータ入力プログラム。
【0027】
(21)(19)または(20)に記載のデータ入力プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、力センサに加えられた力を極座標データとして入力し、r値およびθ値を利用してデータ入力処理を行う新規な方式によるデータ入力装置が提供されるので、多数の入力キーや操作キーを要することなく、高機能を維持しつつシンプルで使いやすいデータ入力装置が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0030】
図1は、本発明にかかるデータ入力装置が適用された携帯電話の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態にかかる携帯電話1は、制御部10、記憶部20、表示部30、音声部40、入力部50および通信部60を備えており、これらは信号をやり取りするためのバス70を介して相互に接続されている。
【0031】
制御部10はCPUであり、プログラムに従って上記各部の制御や各種の演算処理等を行う。記憶部20は、予め各種プログラムやパラメータを格納しておくROM、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶するRAM等からなる。表示部30は液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示するために使用される。音声部40はスピーカおよびマイクであり、音声を入出力するために使用される。入力部50は後述する力センサ51からなり、さらに必要により入力部50の機能を選択するための選択キーや電源をオンオフする電源キー等の各種機能キー52を有し、各種の入力を行うために使用される。通信部60は、FDMA、TDMA、PDC、GSM、CDMA、GPRS等の所定の通信方式により、所定の周波数帯の電波を用いて移動通信網に接続して移動通信を行う。
【0032】
図2は、携帯電話1の外部構成を説明するための概略平面図である。図2に示すように、携帯電話1の入力部50は、通常の携帯電話の入力部を構成するテンキーの代わりに力センサ51を備えた構成となっている。また、力センサ51のキートップ部の周縁部の筐体表面には、数字および記号からなるキャラクタ53が配置、表示されている。力センサ51およびキャラクタ53の機能については後述する。
【0033】
次に、本実施携帯にかかる携帯電話1の入力部50に用いられる力センサ51について、図3を参照して説明する。図3は、力センサ51の構成の一例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は(A)のI−I線断面図であり、(C)は(B)において力センサ51の一部に力が加わった状態を示す。
【0034】
力センサ51は静電容量方式の力センサであり、図3(A)および(B)に示すように、基盤511と、基盤511上に設けられた変位部512とからなる。変位部512は、円盤状のキートップ部512Aと、円筒状の周壁部512Bと、中軸部分に設けられた円柱状の支持部512Cとが一体に形成されてなり、ゴム等の弾性材料や金属等で形成され、外力を受けて変形し、外力を受けなくなると原型を復元するように構成されている。
【0035】
また、力センサ51の内部には、変位部512のキートップ部512Aの内面部と基盤511とに円環上の電極513が対抗して設けられている。そして、図3(C)に示すように、力センサ51のキートップ部512Aにユーザの指先等により力Fが加えられると、変位部512はその力に応じて変形し、加力された部分の対向電極513間が接近してその距離が狭まる。力センサ51は、これによって増加した静電容量を取り出して電気信号として出力するものである。力センサ51からの出力は、直交座標データ、すなわち直行するXY方向の各分力として得られる。
【0036】
なお、本発明のデータ入力装置に利用することのできる力センサの方式および構造は、加えられた力を電気信号に変換して直交座標データとして出力することができるものであれば特に限定されるのもではなく、上述した静電容量変化を利用するもの以外にも、抵抗線変化、可変抵抗変化、磁力変化等を利用した様々の方式および構造の力センサを用いることができる。
【0037】
つぎに、本実施形態における携帯電話1の動作の概要を説明する。図4は、本実施形態における携帯電話1の制御部10によるキャラクタの入力処理の手順を示すフローチャートである。なお、図4のフローチャートにより示されるアルゴリズムは、携帯電話の記憶部20に制御プログラムとして記憶されており、動作開始の際に制御部10により読み出されて実行される。
【0038】
図4において、携帯電話1の制御部10は、入力部50からの入力があるまで待機する(S101のNO)。ユーザの指先等により入力部50の力センサ51のキートップ部512Aに外力が加えられると、入力部50は加えられた力を直行座標データとして取り出し制御部10に出力する。
【0039】
制御部10は、入力部50から入力があると(S101のYES)、図5に示す変換式に従って、入力された直交座標データを極座標変換して極座標データとし、r値(力の大きさ)およびθ値(力の方向)を得る(S102)。θ値への変換は前記変換式によらずに、図6に示すようなX/Y値からθへの変換テーブル81を記憶部20に格納しておいて、これを利用するものであってもよい。なお、図6は5°刻みのθ値の変換テーブルの例を示しているが、利用する変換テーブルの間隔は必要に応じて任意に調整しうることはいうまでもない。
【0040】
つぎに、ステップS102で得られたr値を所定の閾値と比較し、r値が閾値以下の場合は(S103のNO)、ステップS101に戻って入力部から新たな入力があるまで待機する。これにより、この閾値を適切なレベルに設定することにより、入力部の誤操作やセンサノイズ等ユーザの意図しない入力を有効に除外することができる。
【0041】
ステップS103でr値が閾値以上である場合は(S103のYES)、記憶部20に格納されているキャラクタ割り付けテーブルを参照して、ステップS102で得られたθ値に基づいてキャラクタを選択する(S104)。
【0042】
図7は、キャラクタ割り付けテーブルの一例を示す図である。図7に示すように、本実施形態では、θ値30°の範囲ごとに「0」〜「9」の数値ならびに「#」および「*」の記号の合計12個のキャラクタが割り付けられている。従って、図7のキャラクタ割り当てテーブル82によれば、力センサ51のキートップ部512Aは、図8に示すようにθ値30°ごとに12分割された各領域に対して1つのキャラクタが割り付けられることになり、θ=0°の位置調整をすることにより、各領域に当該領域の隣接周縁部に配置されたキャラクタを割り付けることが可能となる。ゆえに、例えば図8において、キートップ部512Aの斜線で示す領域がユーザにより押下された場合、キャラクタの「2」が選択されるように構成することが可能となる。
【0043】
図9は、キャラクタ割り付けテーブルの他の一例を示す図である。図9のキャラクタ割り付けテーブル83によれば、θ値20°の範囲に対して1つのキャラクタを割り付けるとともに、次のθ値10°の範囲はキャラクタを割り付けないようにしたので、力センサ51のキートップ部512Aには、図10に示すようにキャラクタが割り振られた感帯αと、キャラクタが割り振られていない不感帯βとが交互に出現することとなる。これにより、図8の例では、各領域の境界付近が押下された場合、通常指先での入力にはぶれ(手ぶれ)が生ずるため、ユーザの意図しないキャラクタが選択されてしまう場合があるのに対し、図10の例では、不感帯の存在によりキャラクタの確実な選択が可能となるものである。
【0044】
なお、上記各例においてキャラクタ割り付けテーブルにより割り付けるキャラクタの数および種類、ならびにキャラクタを割り付ける(または割り付けない)θ値の範囲およびその大きさは、必要により適宜変更可能であることはいうまでもない。また、キャラクタを割り付ける(または割り付けない)θ値の範囲の大きさは一定であってもよいし、キャラクタの種類、状態、位置等により異なるものであってもよい。例えば、選択されたキャラクタを表示部にポップアップ表示させる場合、または通常表示の場合でも決定操作をし易くするため、選択されたキャラクタについては他のキャラクタよりも大きな範囲を割り付けるようにしてもよい。また、右利きや左利き等のユーザの操作特性に合わせてキャラクタの位置(角度)によりθ値の割り付け範囲の大きさが異なるように構成してもよい。
【0045】
ステップS104でキャラクタが選択されると、選択したキャラクタを表示部30に表示する(S105)。図11は、選択したキャラクタを表示する表示部30の画面の一例を示す図である。画面91において、「090」は既に入力決定されたキャラクタであり、「2」は選択されたキャラクタであって反転表示されている。このように、キャラクタが選択状態であることがわかるように、キャラクタを反転表示、点滅表示、強調(太文字)表示、カーソル表示等したり、文字サイズ、文字色、背景色等を他と異なるものにしたりして表示してもよい。
【0046】
つぎに、ステップS102で得られたr値を所定の閾値と比較し、r値が閾値以下の場合は(S106のNO)、ステップS101に戻って入力部から新たな入力があるまで待機する。この閾値には、ステップS103の閾値より大きい値が設定される。これにより、ユーザがステップS104で選択したキャラクタの入力を決定する意図で、力センサ51のキートップ部512Aを強い力で押下するまでは、何度でも選択したキャラクタを変更することができるものである。
【0047】
一方、ステップS106で、r値が閾値以上の場合は(S106のYES)、ステップS104で選択したキャラクタの入力を決定し(S107)、キャラクタ入力処理の終了命令があるまで次のキャラクタ入力処理を繰り返す(S108のNOおよびS101〜S107)。そして、キャラクタ入力処理の終了命令があると(S108のYES)、入力決定したキャラクタにかかるコードデータを他のアプリケーションに出力して(S109)、キャラクタの入力処理を終了する。
【0048】
上記実施形態では、入力されたθ値に基づいて当該θ値の範囲に割り付けられたキャラクタを選択するものであったが、キャラクタの選択方法の他の例として、r値が閾値以上となった時点で(S103のYES)、θ値の記録を開始してθ値の変化量(差分量)を求め、所定の変化量ごとに所定の順列でキャラクタの選択候補をディスプレイに表示するものであってもよい。図12は、この方法により選択したキャラクタを表示する表示部30の画面の一例を示す図である。画面92において、例えばθが+20°変化するごとに所定のキャラクタ表示順列に従って「0」〜「9」、「#」、「*」、「$」、「%」、「&」の順に(あるいは−20°変化するごとに逆順で)、選択候補が入れ替わり表示される。
【0049】
上記実施形態では、ユーザによるキャラクタの決定の意図を、r値の大きさにより、つまり所定以上の大きさの力が加えられたか否かにより判断するものであったが、本発明ではキャラクタの決定方法はこれに限定されるものではない。上記以外の方法としては、r値の変化量(r値の微分量または差分量)の大きさにより、すなわち加える力が急激に大きくなったか否かにより判断する方法や、別途設けられた決定キーと組み合わせる方法等が挙げられる。また、r値の変化量とθ値の変化量とを組み合わせて判断するものであってもよく、例えば、r値の変化量に比べてθ値の変化量が大きい場合は、所望するキャラクタを選んでいるものと判断して、多少の大きさの力が加えられていてもそのキャラクタを決定とみなさず選択として処理し、他方θ値の変化量に比べてr値の変化量が大きい場合は、決定動作に入っているものとみなし、多少θ値が変動していても(ぶれていても)、そのキャラクタを決定として処理するように構成してもよい。
【0050】
上記実施形態では、力センサのキートップ部の周縁部筐体にキャラクタが配置された構成となっていたが、本発明のデータ入力装置におけるキートップ部およびその周縁部筐体の構成はこれに限定されるものではなく、様々な応用が可能である。図13は、本発明のデータ入力装置におけるキートップ部およびその周縁部筐体のその他の構成例を示す図である。(A)は筐体に替えてキートップ部にキャラクタを配した例である。キャラクタ表示に替えてまたはキャラクタ表示とともに、指先の触覚により選択方向を把握するためにキートップ部もしくは筐体またはその両方に凹凸、突起、溝等を設けてもよい。(B)は点状突起、(C)は線状突起をキートップ部に設けた例であり、(D)は点状突起を筐体に設けた例であり、(E)および(F)はキャラクタ表示と併用して線状突起を設けた例である。これらの表示や突起、溝等は、LEDで発光するように構成し、選択された場合に点灯するようにしてもよい。(G)はキートップを12分割する稜線で構成され、稜線間(キャラクタ割り付け領域)に凹部が形成されている例であり、キャラクタを確実に選択することができる。(H)は、キャラクタの方向がキートップ周囲の形状でわかり易くするために、キートップ形状を花弁型、星型等に形成した例である。
【0051】
上記実施形態では、携帯電話においてテンキーの代替としてキャラクタ入力処理を行う場合について説明したが、本発明のデータ入力装置の利用方法はこれに限定されるものではない。本発明のデータ入力装置は、上記以外にも、各種機能を拡張しまたは切り換えるための機能キーや、項目やメニューを選択するための選択キーの代替としてのデータ入力処理にも利用することができる。
【0052】
上記実施形態では、本発明のデータ入力装置を携帯電話の例で説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、データ入力部(ヒューマンインプットデバイス)を備えた機器であればいずれにも応用することができる。
【0053】
本発明のデータ入力装置の他の例として、自動焦点、自動露出機構等を備えた電子制御式カメラがある。すなわち、電子制御式カメラのシャッターボタンに本発明のデータ入力装置を応用し、例えばシャッター、露出調整(露出+、露出−)、焦点距離(ズーム、ワイド)等を割り付けることにより、1つの入力部でこれらの複数の操作が可能となり、また軽く押すとシャッター機能が選択され自動焦点機能が作動してスタンバイ状態になり、強く押すとシャッターが切れるという利用態様が可能となる。
【0054】
本発明のデータ入力装置のさらに他の例としては、PHS、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯型ゲーム機器、PDA、電子手帳等の携帯型コンピュータ、各種電子機器用リモコン、デジタルカメラ、カムコーダ等の家電機器等を挙げることができる。また、本発明のデータ入力装置は、パーソナルコンピュータやゲーム機器等の周辺機器として、特に、マウス、キーボード、ジョイスティック等の代替としての入力装置として構成されてもよい。
【0055】
本発明によるデータ入力装置およびデータ入力方法は、上記各手順を実行するための専用のハードウエア回路によっても、また、上記各手順を記述したプログラムをCPUが実行することによっても実現することができる。後者により本発明を実現する場合、データ入力装置を動作させる上記プログラムは、フロッピー(登録商標)ディスクやCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。この場合、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムは、通常、ROMやハードディスク等に転送され記憶される。また、このプログラムは、たとえば、単独のアプリケーションソフトとして提供されてもよいし、専用ドライバとして提供されることによりデータ入力装置の一機能としてその装置の基本ソフトウエアに組み込まれてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、力センサに加えられた力を極座標データとして入力し、r値およびθ値を利用してデータ入力処理を行う新規な方式によるデータ入力装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明にかかるデータ入力装置が適用された携帯電話の構成を示すブロック図である。
【図2】携帯電話1の外部構成を説明するための概略平面図である。
【図3】力センサ51の構成の一例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は(A)のI−I線断面図であり、(C)は(B)において力センサ51の一部に力が加わった状態を示す。
【図4】携帯電話1の制御部10によるキャラクタの入力処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】直交座標データを極座標データに変換するための変換式である。
【図6】X/Y値からθへ変換するための変換テーブルである。
【図7】キャラクタ割り付けテーブルの一例を示す図である。
【図8】キャラクタ割り付けテーブル82によるキートップ部512Aのキャラクタ割り付け領域を示す図である。
【図9】キャラクタ割り付けテーブルの他の一例を示す図である。
【図10】キャラクタ割り付けテーブル83によるキートップ部512Aのキャラクタ割り付け領域を示す図である。
【図11】選択したキャラクタを表示する表示部30の画面の一例を示す図である。
【図12】他の方法により選択したキャラクタを表示する表示部30の画面の一例を示す図である。
【図13】本発明のデータ入力装置におけるキートップ部およびその周縁部筐体のその他の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 携帯電話
10 制御部
20 記憶部
30 表示部
40 音声部
50 入力部
51 力センサ
52 機能キー
53 キャラクタ
60 通信部
70 バス
511 基板
512A キートップ部
512C 支持部
512B 周壁部
512 変位部
513 対向電極
513 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加えられた力を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出した力の方向に従って入力するパラメータを選択する選択手段と、
前記検出手段により検出した力の大きさに従って前記選択手段により選択したパラメータの入力を決定する決定手段と、
を有することを特徴とするデータ入力装置。
【請求項2】
加えられた力を直交座標データとして検出する検出手段と、
前記力検出手段により検出した直交座標データを極座標データに変換する変換手段と、
前記変換手段により変換した極座標データのθ値に従って入力するパラメータを選択する選択手段と、
前記変換手段により変換した極座標データのr値に従って前記選択手段により選択したパラメータの入力を決定する決定手段と、
を有することを特徴とするデータ入力装置。
【請求項3】
パラメータと各パラメータを割り付けるθ値の範囲とを登録した割り付けテーブルを記憶する記憶手段をさらに有し、
前記選択手段は、前記記憶手段に記憶された割り付けテーブルを参照して、前記変換手段により得られたθ値に割り付けられたパラメータを、入力するパラメータとして選択することを特徴とする、
請求項2に記載のデータ入力装置。
【請求項4】
前記記憶手段により記憶した割り付けテーブルには、各パラメータを割り付けたθ値の範囲間にパラメータを割り付けていないθ値の範囲を含むことを特徴とする、
請求項3に記載のデータ入力装置。
【請求項5】
前記変換手段により得られたθ値の変化量を算出する第1の算出手段をさらに有し、
前記選択手段は、前記第1の算出手段により算出した変化量に対し所定の変化量ごとに所定の順列で入力するパラメータを選択することを特徴とする、
請求項2に記載のデータ入力装置。
【請求項6】
前記選択手段により選択したパラメータを表示する表示手段をさらに有することを特徴とする、
請求項2〜5のいずれか1項に記載のデータ入力装置。
【請求項7】
前記変換手段により得られたr値が所定の閾値より大きいか否かを判断する第1の判断手段をさらに有し、
前記選択手段は、前記第1の判断手段によりr値が閾値より大きいと判断した場合に入力するパラメータを選択することを特徴とする、
請求項2〜6のいずれか1項に記載のデータ入力装置。
【請求項8】
前記変換手段により得られたr値が所定の閾値より大きいか否かを判断する第2の判断手段をさらに有し、
前記決定手段は、前記第2の判断手段によりr値が閾値より大きいと判断した場合に前記選択手段により選択したパラメータの入力を決定することを特徴とする、
請求項2〜7のいずれか1項に記載のデータ入力装置。
【請求項9】
前記変換手段により得られたr値の変化量を算出する第2の算出手段と、
前記第2の算出手段により算出したr値の変化量が所定の閾値より大きいか否かを判断する第3の判断手段とをさらに有し、
前記決定手段は、前記第3の判断手段によりr値の変化量が閾値より大きいと判断した場合に前記選択手段により選択したパラメータの入力を決定することを特徴とする、
請求項2〜7のいずれか1項に記載のデータ入力装置。
【請求項10】
前記変換手段により得られたθ値の変化量を算出する第3の算出手段と、
前記変換手段により得られたr値の変化量を算出する第4の算出手段と、
前記第3の算出手段により算出したθ値の変化量と前記第4の算出手段により算出したr値の変化量とを所定条件下で比較し、いずれの変化量が大きいかを判断する第4の判断手段とをさらに有し、
前記選択手段は、前記第4の判断手段によりθ値の変化量の方が大きいと判断した場合に入力するパラメータを選択し、
前記決定手段は、前記第4の判断手段によりr値の変化量の方が大きいと判断した場合に前記選択手段により選択したパラメータの入力を決定することを特徴とする、
請求項2〜7のいずれか1項に記載のデータ入力装置。
【請求項11】
前記パラメータは、数字および所定の記号であることを特徴とする、
請求項1〜10のいずれか1項に記載のデータ入力装置。
【請求項12】
キートップまたはキートップ周縁部筐体に前記パラメータが表示されていることを特徴とする、
請求項1〜11のいずれか1項に記載のデータ入力装置。
【請求項13】
キートップまたはキートップ周縁部筐体にキャラクタの選択を補助するための点状または線状の突起、溝または凹凸が設けられていることを特徴とする、
請求項1〜12のいずれか1項に記載のデータ入力装置。
【請求項14】
キートップが花弁型または星型の形状を有することを特徴とする、
請求項1〜13のいずれか1項に記載のデータ入力装置。
【請求項15】
携帯電話、PHS、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯型ゲーム機、PDA、電子手帳、電子機器用リモコン、カメラ、デジタルカメラまたはカムコーダである、
請求項1〜14のいずれか1項に記載のデータ入力装置。
【請求項16】
コンピュータまたはゲーム機器用の周辺機器である、
請求項1〜15のいずれか1項に記載のデータ入力装置。
【請求項17】
加えられた力を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにより検出した力の方向に従って入力するパラメータを選択する選択ステップと、
前記検出ステップにより検出した力の大きさに従って前記選択ステップにより選択したパラメータの入力を決定する決定ステップと、
を有することを特徴とするデータ入力方法。
【請求項18】
加えられた力を直交座標データとして検出する検出ステップと、
前記力検出ステップにより検出した直交座標データを極座標データに変換する変換ステップと、
前記変換ステップにより変換した極座標データのθ値に従って入力するパラメータを選択する選択ステップと、
前記変換ステップにより変換した極座標データのr値に従って前記選択ステップにより選択したパラメータの入力を決定する決定ステップと、
を有することを特徴とするデータ入力方法。
【請求項19】
加えられた力を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにより検出した力の方向に従って入力するパラメータを選択する選択ステップと、
前記検出ステップにより検出した力の大きさに従って前記選択ステップにより選択したパラメータの入力を決定する決定ステップと、
をデータ入力装置に実行させることを特徴とするデータ入力プログラム。
【請求項20】
加えられた力を直交座標データとして検出する検出ステップと、
前記力検出ステップにより検出した直交座標データを極座標データに変換する変換ステップと、
前記変換ステップにより変換した極座標データのθ値に従って入力するパラメータを選択する選択ステップと、
前記変換ステップにより変換した極座標データのr値に従って前記選択ステップにより選択したパラメータの入力を決定する決定ステップと、
をデータ入力装置に実行させることを特徴とするデータ入力プログラム。
【請求項21】
請求項19または20に記載のデータ入力プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−178742(P2006−178742A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−371390(P2004−371390)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(504188796)アップサイド株式会社 (3)
【Fターム(参考)】