説明

データ収集装置、データ収集システム及びデータ収集方法

【課題】 本発明は、データ再現確認時の作業性を向上させたデータ収集装置、データ収集システム及びデータ収集方法の提供を目的とする。
【解決手段】 撮影対象物の画像データを取得する画像データ取得手段と、前記撮影対象物の経時的変化に関する測定データを取得する測定データ取得手段と、前記画像データ取得手段により取得された画像データと前記測定データ取得手段により取得された測定データとを同期して記憶する記憶手段と、前記記憶手段により記憶された両データを読み出して同一画面上に同時に再生する再生制御手段とを備えることを特徴とするデータ収集装置によって課題が解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の画像データとその対象物の経時的変化に関する測定データを収集するデータ収集装置、データ収集システム及びデータ収集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、撮像手段により得られるビデオ信号とその撮像手段の撮像対象の経時的変化に伴って生じる随伴データとを収集するデータ収集システムが知られている(例えば、特許文献1)。このデータ収集システムは、上記のビデオ信号と上記の随伴データとを合成した合成ビデオ信号を記録媒体に記録するようにしている。そして、その経時的変化を視認可能に再現するためには、その記録媒体に記録された合成ビデオ信号をビデオ信号と随伴データに再度分離して別々の装置に出力している。つまり、ビデオ信号はモニターに出力され、随伴データは紙にグラフを描画するX−Yレコーダに出力される。
【特許文献1】特開平6−131475号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の従来のデータ収集システムの記録媒体に記憶されている信号は、撮像手段により得られるビデオ信号とその撮像手段の撮像対象の経時的変化に伴って生じる随伴データとを合成した合成ビデオ信号である。しかしながら、合成ビデオ信号であるがゆえ、その合成ビデオ信号をビデオ信号と随伴データに再度分離し、それぞれを別々の装置に出力しなければ、撮像対象の画像とその撮像対象の経時的変化を表すデータを再現することができず、データ再現時の確認作業において視認性等の困難な点がある。
【0004】
そこで、本発明は、データ再現確認時の作業性を向上させたデータ収集装置、データ収集システム及びデータ収集方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の一局面によれば、
撮影対象物の画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記撮影対象物の経時的変化に関する測定データを取得する測定データ取得手段と、
前記画像データ取得手段により取得された画像データと前記測定データ取得手段により取得された測定データとを同期して記憶する記憶手段と、
前記記憶手段により記憶された両データを読み出して同一画面上に同時に再生する再生制御手段とを備えることを特徴とするデータ収集装置が提供される。
【0006】
また、本発明のその他の一局面によると、
対象物を撮影する撮影手段と、
前記対象物の経時的変化状態を測定する測定手段と、
前記撮影手段により撮影された対象物の画像データと前記測定手段により測定された経時的変化状態の測定データとを同期して記憶する記憶手段と、
前記記憶手段により記憶された両データを読み出して同一画面上に同時に再生する再生制御手段とを備えることを特徴とするデータ収集システムが提供される。
【0007】
また、本発明のその他の一局面によると、
撮影対象物の画像データを取得するステップと、
前記撮影対象物の経時的変化に関する測定データを取得するステップと、
前記取得された画像データと前記取得された測定データとを同期して記憶するステップと、
前記記憶された両データを読み出して同一画面上に同時に再生するステップとを備えることを特徴とするデータ収集方法が提供される。
【0008】
また、そのデータ収集方法を実現するコンピューター読み取り可能なプログラムを含む記憶媒体が提供される。
【0009】
したがって、これらの局面において、撮影対象物の画像データとその撮影対象物の経時的変化に関する測定データという性質の異なるデータを同期して記憶することによって、時系列的に一元管理することが可能になる。そして、記憶されたデータを分離することなく読み出し、同一画面上に同時に再生することができるので、視認性等の困難な点が無くなりデータ再現確認時の作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、データ再現確認時の作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0012】
図1は、本発明を引き剥がし装置に適用した場合の一試験システムの構成を示す図である。本試験システムでは、引き剥がし装置1に車両12をセットし、車両12の車両ワイヤハーネス9にJフック10を引っ掛ける。そして、引き剥がし装置1によって、ロードセル2を介して、車両ワイヤハーネス9は引っ張り上げられる。つまり、引き剥がし装置1によって車両12から車両ワイヤハーネス9が引き剥がされる際の荷重変化や破壊状況を確認・評価する試験システムである。
【0013】
本試験システムは、自動車部品をリサイクルするときの「リサイクルのしやすさ」を事前評価する確認試験等で使用される。近年の自動車リサイクル法の成立をはじめ、自動車業界ではリサイクルシステムの構築が急速に進められ、クルマのリサイクル率を上げる試みがされている。廃車されたクルマは解体業者等に移送され、解体される。樹脂等からできているバンパー等の部品は、中古部品及び再生材として再利用される。さらに、鉄からできているボディ等は、金属素材としてリサイクルされる。この他にもリサイクルされる部品は多々あり、自動車には様々な種類の部品や素材が使われている。したがって、リサイクルする部品に異部品や異素材が混じらないよう分別する必要があるため、その分別がし易いようにクルマを設計する段階でリサイクルのしやすさを事前評価しておくことが重要である。
【0014】
そこで、本発明を実施するための形態例として、鉄素材であるボディから銅素材である車両ワイヤハーネス9を引き剥がす際の荷重変化や破壊状況を確認・評価する試験システムを挙げる。
【0015】
それでは、図1を参照しながら本試験システムの各構成について説明する。引き剥がし装置1は、ホイストとも呼ばれ、物体を上げ下げしたり運搬したりするクレーンの一種である。
【0016】
ロードセル2には、引き剥がし装置1が車両12から車両ワイヤハーネス9を引き上げたときの荷重データ変化を検出する歪みゲージが備えられている。この歪みゲージは、荷重データの変化を検出する任意の位置に設定可能であり、ここでは引き剥がし装置1とJフック10の間に設置した例を示す。
【0017】
ロードセル制御装置3は、ロードセル2によって検出された荷重データ変化に基づいて、車両12から車両ワイヤハーネス9を引き上げたときの荷重データを測定している。
【0018】
カメラ7は、引き剥がし装置1が車両12から車両ワイヤハーネス9を引き上げたときの推移を撮影するものである。カメラ7によって撮影された画像データはパソコン4内のキャプチャーボード5を介して読み込まれる。キャプチャーボード5は、デジタル形式の画像データに限らずアナログ形式の画像データをパソコン4に読み込むためのハードウェアである。
【0019】
パソコン4には、データ収集・解析専用プログラム6(以下、専用プログラム6という)が内蔵されている。専用プログラム6は、ロードセル制御装置3によって測定された荷重データをパソコン4に読み込むプログラム機能を持つ。また、上述の読み込まれた荷重データ及び画像データがハードディスク等の記憶手段に記憶される際に、両データを時間同期して記憶するように制御するプログラム機能も持つ。読み込まれた荷重データ及び画像データは、所定のデジタルデータ形式に変換されてパソコン4に備えられたハードディスク等の記憶手段に記憶される。なお、ロードセル制御装置3とパソコン4間のデータ転送は、有線LAN13を介しても無線LAN11を介してもよい。また、ロードセル制御装置3とパソコン4との間に限らず、カメラ7とパソコン4との間やロードセル2とロードセル制御装置3との間を接続する有線の全てを無線接続してもよく、また、一部のみを無線接続するようにしてもよい。
【0020】
また、専用プログラム6は、記憶手段に記憶された画像データ及び荷重データを読み出してパソコン4の同一の画面上に同時に再生制御する制御プログラムでもある。つまり、引き剥がし装置1が車両12から車両ワイヤハーネス9を引き上げたときの推移を撮影した画像とその引き上げたときの荷重推移グラフとをパソコン4の同一の画面上に同期して再生することが可能になる。
【0021】
したがって、上記の構成によれば、取得された画像データと測定データを詳細に解析するため、パソコン4上で専用プログラム6を実行することにより、画像と荷重推移グラフをパソコン4の同一の画面上に同期させて再生することが可能になる。そして、同一画面上で、画像の動きに合わせて荷重推移グラフをトレースすることが可能なため、表示されている画像に対応する荷重推移グラフ上の荷重値とそのときのタイミングを容易に把握することが可能になる。
【0022】
この同一の画面上に表示される画像と荷重推移グラフについて、図2を参照しながら詳細に説明する。図2は、パソコン4の同一の画面上に専用プログラム6により同時に再生された画像と荷重推移グラフの詳細画像である。画面上段は引き剥がし装置1が車両12から車両ワイヤハーネス9を引き上げたときの推移を撮影した画像であり、画面下段はその引き上げたときの荷重推移グラフである。荷重推移グラフにおいて、縦軸が荷重を示し、横軸が時間を示す。
【0023】
画像データ及び荷重データの収集が始まると、パソコン4の画面上には、カメラ7によって撮影されている画像とともに、測定された荷重が画面下段にプロットされていく。そして、データ収集後、画面下段の荷重推移グラフが全体表示されることになる。
【0024】
取得された画像データと測定データを詳細に解析するため、例えば再生ボタンを押すと、画像の動きに同期してトレースライン20が左右に動く。つまり、トレースライン20が表示されている画像に対応する荷重推移グラフ上の荷重値とそのときのタイミングを示しており、結果として、視認性が良くなり、データ再現確認時の作業性が向上することとなる。
【0025】
また、試験データ収集途中の荷重推移グラフ、経過時間、荷重、最大荷重値ホールド表示をパソコン4の画面上で確認することが可能になるため、記憶されたデータを読み出すのではなくリアルタイムに試験データを画面上に表示させることができるので、評価を実施しながら試験データを確認することができる。
【0026】
また、一連の試験状況を等倍、スロー、早送り再生が何度でも可能になる。また、再生時の時間、荷重数値及びその時間における最大荷重数値も同時表示することが可能である。
【0027】
また、さらに詳細な解析をするため、画像のコマ送り・コマ戻し再生ができるようになるため、その時々の荷重を荷重推移グラフ上でトレースすることにより、現在表示されている画像に対する荷重数値を把握することが可能になる。
【0028】
さらに、解析したい荷重推移グラフをマウス8で範囲指定することにより、範囲指定された時間帯の画像の再生と荷重推移グラフのトレースが可能になる。これにより、例えば余分に収集してしまったデータをすべて見る必要がなくなり、編集時間の手間を省くことができる。なお、荷重推移グラフを範囲指定するのではなく、ピンポイントで指定することも可能であり、その場合、荷重推移グラフ上のピンポイント指定した点に対応する画像が表示される。
【0029】
さらに、表示されている画像中に解析したい画像部分をマウス8で範囲指定することにより、範囲指定された画像部分のみの再生と荷重推移グラフのトレースが可能になる。このとき、範囲指定された画像部分のみ拡大再生することが可能である。これにより、例えば、荷重推移グラフ上で荷重がピークを示しているタイミングで車両ワイヤハーネス9の引き剥がし画像を拡大再生することで、引き剥がされていく状況を詳細に解析することができる。
【0030】
さらに、保存したい荷重推移グラフをマウス8で範囲指定することにより、その範囲指定された荷重推移グラフの部分が保存されるとともに、その範囲に対応する画像も保存される。これにより、解析に不必要な無駄な保存データを省くことができる。
【0031】
さらに、記憶手段に記憶された画像データ及び荷重データを2種類読み出してパソコン4の同一の画面上に2画面同時再生することが可能である。例えば、車両ワイヤハーネス9を引き剥がした結果、所定の判定基準を満たさない荷重が測定された場合、所定の判定基準を満たすために対策を織り込んだ車両ワイヤハーネス9を再評価する必要がある。この場合、判定基準を満たさなかった試験結果と再試験の結果とを比較検証する際に、2画面同時再生することによって解析がしやすくなる。なお、同時再生された2画面ともに、上述の1画面表示と同様に、等倍、スロー、早送り再生や画像のコマ送り・コマ戻し再生等が可能である。
【0032】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0033】
例えば、衝突試験での部品の破壊画像に対する荷重入力モードの時系列変化を解析することも可能である。また、部品単品における強度実験での破壊・変形画像と荷重入力モードの時系列変化を解析することも可能である。さらに、あらゆる分野における物の破壊・変形等とその時々の荷重入力変化を時系列的に解析が必要なものすべてにおいて対応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明を引き剥がし装置に適用した場合の一試験システムの構成を示す図である。
【図2】パソコン4の同一の画面上に専用プログラム6により同時に再生された画像と荷重推移グラフの詳細画像である。
【符号の説明】
【0035】
1 引き剥がし装置
2 ロードセル
3 ロードセル制御装置
4 パソコン
5 キャプチャーボード
6 データ収集・解析専用プログラム
7 カメラ
8 マウス
9 車両ワイヤハーネス
10 Jフック
20 トレースライン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影対象物の画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記撮影対象物の経時的変化に関する測定データを取得する測定データ取得手段と、
前記画像データ取得手段により取得された画像データと前記測定データ取得手段により取得された測定データとを同期して記憶する記憶手段と、
前記記憶手段により記憶された両データを読み出して同一画面上に同時に再生する再生制御手段とを備えることを特徴とするデータ収集装置。
【請求項2】
対象物を撮影する撮影手段と、
前記対象物の経時的変化状態を測定する測定手段と、
前記撮影手段により撮影された対象物の画像データと前記測定手段により測定された経時的変化状態の測定データとを同期して記憶する記憶手段と、
前記記憶手段により記憶された両データを読み出して同一画面上に同時に再生する再生制御手段とを備えることを特徴とするデータ収集システム。
【請求項3】
撮影対象物の画像データを取得するステップと、
前記撮影対象物の経時的変化に関する測定データを取得するステップと、
前記取得された画像データと前記取得された測定データとを同期して記憶するステップと、
前記記憶された両データを読み出して同一画面上に同時に再生するステップとを備えることを特徴とするデータ収集方法。
【請求項4】
請求項3記載のデータ収集方法を実現するコンピューター読み取り可能なプログラムを含む記憶媒体。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−46999(P2006−46999A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225513(P2004−225513)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】