データ取込みシステム
【課題】短い周期によるデータの取込みに際して容易に時刻情報の付加が得られるようにしたデータ取込みシステムを提供すること。
【解決手段】同時刻の複数のデータを、複数のデータ取込み装置1、2間で同期をとり、周期的に取込む方式のデータ取込みシステムにおいて、これらデータ取込み装置1、2が、取込み指示回線3を介して取込み指示情報と時刻情報からなる取込み指示電文5を授受し、これによりデータ取り込み指示と時刻の一致化を同時に実現したもの。
【解決手段】同時刻の複数のデータを、複数のデータ取込み装置1、2間で同期をとり、周期的に取込む方式のデータ取込みシステムにおいて、これらデータ取込み装置1、2が、取込み指示回線3を介して取込み指示情報と時刻情報からなる取込み指示電文5を授受し、これによりデータ取り込み指示と時刻の一致化を同時に実現したもの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電プラントなどにおける設備の試験や監視のためのデータ取込み装置を複数備えたデータ取込みシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電設備などにおいて、立ち上げ試験時や設備稼働監視時には、圧力や流量など各種のデータを、高速、且つ周期的に取込んで分析する必要があり、このためデータ取込み装置が使用されるが、このときのデータの分析には、データを時系列的に配列する必要があり、従って、取込んだデータには時刻情報が付加されていなければならない。
【0003】
しかも、このとき、データの取込み先が多岐にわたる大規模の設備を対象とした場合には、複数台のデータ取込み装置が併用されたシステムになるが、この場合には、複数のデータ取込み装置間で同期をとり、同時刻のデータを周期的に取込む必要がある。
【0004】
また、このとき、データ取込み装置の可用性(availability:有用性)を高めるためには、例えば外来ノイズの影響などにより、或る装置でデータの取込みに失敗した場合や、停復電時など、時刻情報が失われた状態になった場合でも、事後、他の装置と時刻情報の一致化を行い、通常動作への復帰が行われなければならない。
【0005】
そこで、このような事態に対処するため、或る従来技術では、複数の監視対象機器にGPS(全地球測位システム)受信手段を設け、取り込んだデータに時刻情報を付加する方法について提案しており(例えば、特許文献1参照。)、他の従来技術では、ネットワーク上のタイムサーバーから時刻情報を入手する方法について提案している(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2005−258598号公報
【特許文献2】特開2004−266536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術は、システム構成の簡素化に配慮がされているとは言えず、コストの抑制に問題があった。
【0007】
例えば取り込んだデータに時刻情報を付加するため、複数の機器にGPS受信手段を設けるようにした従来技術では、各機器にGPS受信手段を設ける必要があるが、このときGPS装置は一般にかなり高価であるため、多数設置した場合、システム全体では極めて高価なものとなってしまう。
【0008】
また、時刻一致化手段として、ネットワーク上のタイムサーバーから時刻情報を入手するようにした従来技術の場合、複数装置間でナノ秒オーダーまでの時刻情報一致化が可能であるが、しかし、ネットワーク上にタイムサーバーが必要となり、しかもタイムサーバーと時刻情報を送受信するためのプログラムが必要となるため、高価なシステムになってしまう上、開発工数も増大してしまう。
【0009】
本発明の目的は、短い周期によるデータの取込みに際して容易に時刻情報の付加が得られるようにしたデータ取込みシステムを提供することにあり、このとき、外来ノイズや停復電に際してもデータの取込み継続が可能なデータ取込みシステムを提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、同時刻の複数のデータを、複数のデータ取込み装置間で同期をとり、周期的に取込む方式のデータ取込みシステムにおいて、前記データ取込み装置の各々が、取込み指示送信部と取込み指示受信部、時刻情報保持部、データ取込み部、処理装置、それにデータ保存部を備え、前記取込み指示送信部は、取込み指示情報と時刻情報からなる取込み指示電文を、取込み指示回線を介して他のデータ取込み装置の取込み指示受信部に送信し、前記取込み指示受信部は、受信した前記取込み指示電文を前記取込み指示情報と前記時刻情報に分離すると共に、前記データ取込み部にデータの取込みを指示し、且つ前記時刻情報を前記時刻情報格納部に格納し、前記データ取込み部は、データの取込みが終了したことを前記処理装置に伝え、前記処理装置は、前記データ取込み部が取り込んだ前記データと前記時刻情報保持部に格納されている前記時刻情報を関連付けて前記データ保存部に保存し、これにより前記データと前記時刻情報の対応付けが得られるようにして達成される。
【0011】
このとき、更に、前記前記データ取込み装置の各々が、前記取込み指示受信部が受信する前記取込み指示電文の受信周期を監視し、予め定められた取込み周期で前記取込み指示電文を受信しなかった場合は取込み指示を発生する取込み指示周期制御部と、前記取込み指示周期制御部からの取込み指示と前記取込み指示受信部からの取込み指示とを受信し、前記取込み周期で前記取込み指示電文を受信した場合は前記取込み指示受信部からの取込み指示を前記データ取込み部に伝え、前期取り込み周期で前記取込み指示電文を受信しなかった場合は前記取込み指示周期制御部からの取込み指示を前記データ取込み部に伝えるデータ取込み指示切換え部を有し、前記取込み指示電文を受信しない場合でも前記取込み周期でのデータの取込みが継続されるようにしても上記目的が達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、複数のデータ取込み装置間で同期をとり、同時刻のデータを周期的に取込む際、取込み指示電文に時刻情報を付加するだけで、取込んだデータに時刻情報を付加することができ、従って、本発明によれば、短い周期によるデータの取込みに際して容易に時刻情報の付加が得られ、この結果、データ取込みシステムを低コストで実現することができる。
【0013】
また、本発明では、データ取込み指示周期を監視し、予め定められた時刻までにデータ取込み指示電文が受信できなかった場合、データ取込み装置内部でデータ取込み指示を発生するようにしたので、外来ノイズや停復電が発生した場合でも、予め定められた周期でのデータ取込みの継続を可能にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明によるデータ取込みシステムについて、図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態で、これは、図示のように、少なくとも2台のデータ取込み装置1、2を備え、これらが取込み指示回線3と上位計算機4に接続されている場合の一実施形態で、このため、各データ取込み装置1、2は、何れも取込み指示送信部10、20と取込み指示受信部11、21、時刻情報保持部12、22、データ取込み部13、23、処理装置14、24、データ保存部15、25、それに通信インタフェース16、26を備えているものである。
【0016】
そして、これら2台のデータ取込み装置1、2は、各々の通信インタフェース16、26を介して取込み指示回線3に接続されているが、このときの通信インタフェース16、26と取込み指示回線3の電気的インタフェースには、RS485が用いられている。なお、ここでは電気的インターフェースにRS485を用いたが、イーサネット(登録商標)やRS232Cなど他の公知技術で実現してもよい。
【0017】
一方、これらは、各々の処理装置14、24により、上位計算機4とイーサネット(登録商標)回線を介して接続されているが、ここでも同じく、RS232Cなど他の公知技術で実現してもよい。
【0018】
次に、この実施形態の装置の動作について、図2から図6の動作フローにより説明する。なお、ここでは、2台のデータ取込み装置1、2の内の一方のデータ取込み装置1について説明するが、他方のデータ取込み装置2の動作についても同じであり、データ取込み部13、23で取り込むデータが異なっているだけである。
【0019】
まず、図2は、上位計算機4からの取込み指示開始のための動作と停止指示のための動作フローで、この場合、処理が開始されたら、最初、処理装置14は、上位計算機4からの取込み指示送信開始指示を待つ(ステップ100)。そして、ここで送信開始指示があったとき、取込み指示送信部10に取込み指示送信開始を指示する(ステップ101)。
【0020】
こうして開始を指示した後、次いで処理装置14は、上位計算機4から、今度は取込み指示送信停止指示を待つ(ステップ102)。そして、ここで取込み指示送信停止指示があったとき、取込み指示送信部10に取込み指示送信停止を指示し(ステップ103)、この後、処理装置14による処理はステップ100に戻り、同じ処理を繰り返す。
【0021】
なお、この実施形態では、取込み指示送信の開始と停止が上位計算機4から与えられるものとしたが、予め処理装置14に取込み指示開始及び停止の時期を記憶させるなどの処理を追加することにより、上位計算機4が無くても取込み指示開始および停止が可能である。
【0022】
次に、取込み指示送信部10について説明する。ここで、まず、この取込み指示送信部10は、図3に示すように、取込み指示制御部10Aを備えている。そして、この取込み指示制御部10Aでは、例えば1ミリ秒間隔など、予め定められた取込み指示電文5の送信タイミングを、基準クロック(図示してない)から作成するようになっている。
【0023】
また、取込み指示送信部10は、これも図3に示すように、送信バッファ10Bを備えている。そして、この送信バッファ10Bには取込み指示フラグFと時刻情報Tが格納してあるが、ここで、まず取込み指示フラグFは、取込み指示受信部11に対して取込み実施を指示するためのフラグで、例えば10101010など、予め定められた1ビット以上のデータによって構成されている。
【0024】
また、時刻情報Tは、同一の取込み指示電文5に含まれる取込み指示フラグFによって取り込まれたデータを識別するための情報であり、これは取込み指示を行う日時分秒などの時刻即値であってもよく、或いは予め定められた基準時時刻からの予め定められた時間分のオフセット値であってもよい。
【0025】
ここでオフセット値の場合は、それを表わすフリップフロップで構成されたカウンタのデータとなり、この場合のオフセット値とは、例えば、0時0分0秒を基準時時刻として、これから1ミリ秒間隔でデータを取り込む場合、0時0分10秒時点では10000となるデータであり、従って、このときデータ取込み指示電文5に含まれる時刻情報Tはデータ10000となる。
【0026】
次に、この取込み指示送信部10の動作について、図4の処理フローにより説明する。まず、処理装置14からの取込み指示送信開始指示を待つ(ステップ110)。ここで取込み指示送信開始指示があった場合、今度は取込み指示制御部10Aからの送信開始指示を待つ(ステップ110)。そして、送信開始指示があった場合、取込み指示フラグFと時刻情報Tにより構成される送信バッファ10Bの内容を、通信インタフェース部16に出力すると共に、時刻情報を更新するのである(ステップ112)。
【0027】
なお、この実施形態では、時刻情報Tをフリップフロップで構成されたカウンタとしたが、例えばRTC(リアルタイムクロック)ICなど、何らかの時計機能を有するもので代替してもよい。このとき取込み指示フラグFについても例えばHDLCなどの公知の通信手順に含まれるスタートフラグで代替してもよい。
【0028】
このとき通信インタフェース部16は、送信バッファ10Bの内容を、取込み指示電文5として取込み指示回線3に送信する。ここで、この取込み指示電文5の内容は、送信バッファ10Bの内容をそのまま用いればよいが、例えば通信回線品質向上のため、NRZIやマンチェスタなどの公知の技術による変調を施してもよく、更にはパリティビットや巡回冗長ビットなどの健全性確認データを付加するようにしてもよい。
【0029】
なお、このようにデータの変調を行う場合や健全性確認データを付加する場合には、それに対応した機能(復調やデータ健全性確認)が取込み指示受信部11に含まれるように構成することになる。
【0030】
次に、取込み指示受信部11について説明すると、この取込み指示受信部11は、図5に示すように、受信バッファ11Aと取込み待ちタイマ11Bを備え、受信バッファ11Aの内容が意味するところを解読する働きをする。
【0031】
このため、受信バッファ11Aは、送信バッファ10Bと同一かそれ以上の容量をもつバッファで構成されている。そして、通信インタフェース16は、取込み指示回線3から取込み指示電文5を受信し、その内容を、この受信バッファ11Aに格納する。
【0032】
次に、この取込み指示受信部11が取込み指示電文5を受信する際の動作について、図6の処理フローにより説明する。このとき、取込み指示受信部11は、まず、受信バッファ11Aを調べ、取込み指示の受信状態を監視する(ステップ120)。そして取込み指示の受信が完了した場合、データ取込み部13へのデータ取込み指示を行ない(ステップ121)、次いで受信バッファ11Aに含まれる時刻情報Tを時刻情報保持部12に格納する(ステップ122)。
【0033】
そこで、データ取込み部13は、取込み待ちタイマ11Bを起動して設定値による時間の経過を待ち、その間、接点情報などのディジタルデータや流量や温度などのアナログデータを、このデータ取込み装置1が適用されている発電設備の機器などから取込む(ステップ123)。従って、このときの取込み待ちタイマ11Bの設定値は、上記したディジタルデータやアナログデータの入力遅延時間よりも長い時間とする。
【0034】
そして、取込み待ちタイマ11Bのタイマ値が設定値に等しくなったら、ここで処理装置14に対してデータ取込み完了通知を行う(ステップ124)。そこで処理装置14は、時刻情報保持部12の時刻情報Tと、データ取込み部13からのデータを関連付けし、それをデータ保存部15に蓄積し(ステップ125)、この後、まとめて上位計算機4に送信する(ステップ126)。
【0035】
そこで、上位計算機4は、同時刻で周期的に取込んだ接点情報などのディジタルデータや流量や温度などのアナログデータを、時刻情報Tが付加された状態で受信することができる。このときデータ保存部15に蓄積せず、逐次、上位計算機4に送信するようにしてもよい。
【0036】
従って、この実施形態によれば、複数のデータ取込み装置1、2間で同期をとり、同時刻のデータを周期的に取込む際、取込み指示電文5に時刻情報Tを付加するだけで、取込んだデータに時刻情報を付加することでき、よって、この実施形態によれば、短い周期によるデータの取込みに際して容易に時刻情報の付加が得られるようにしたデータ取込みシステムを低コストで実現することができる。
【0037】
次に、本発明の第2の実施形態について説明すると、この場合は、図7に示すデータ取込み装置100が用いられることになるが、これは、図1〜図6で説明したデータ取込み装置1(及び2)に、取込み指示周期監視部101と受信異常カウンタ102を付加したもので、その他の構成は、このデータ取込み装置100が少なくとも2台、存在していて、相互に取込み指示電文5を授受している点も含めて同じである。
【0038】
そして、この取込み指示周期監視部101は、取込み指示電文5が、例えば1ミリ秒など、規定周期で取込み指示受信部11により受信されているか否かを監視する働きをするもので、受信に成功した場合、この取込み指示周期監視部101は受信異常カウンタ102にゼロをセットし、取込み指示受信部11内部の時刻情報Tを時刻情報保持部12に格納すると共に、取込み指示受信部11からデータ取込み部13にデータの取込みを指示する。
【0039】
一方、受信に失敗した場合、この取込み指示周期監視部101は、受信異常カウンタ102をカウントアップし、時刻情報の更新を時刻情報保持部12に指示すると共に、データ取込み部13にデータの取込みを指示する。なお、このときの取込み指示送信処理は、図2のステップ100から103までの処理と同じであり、取込み指示受信処理は、図4のステップ110から112までの処理と同じである。
【0040】
次に、このデータ取込み装置100による本発明の実施形態の動作について説明する。まず、始めに、取込み指示周期とその監視について、図8と図9により説明する。そして、ここでは取込み指示の規定受信周期をKで表わし、取込み指示電文5の受信時刻をT1で表わす。更に次回受信予定時刻(すなわちT0+K)はTyで表わし、このとき規定受信周期の許容誤差をtで表わしている。
【0041】
そして、取込み周期監視部101は、前回受信時刻T0から算出される今回受信予定時刻Tyを、実際に今回受信した時刻T1と比較し、時刻T1が、予定時刻Tyの許容誤差t以内にあるか否か判断する。このとき、以下の式(1)が成立すれば受信成功と判断し、不成立なら受信失敗と判断する。
【0042】
Ty−t≦T1≦Ty+t …………(1)
ここで、図8は受信成功時のT0、T1、K、Ty、及びtの関係を示し、図9は、受信失敗時の関係を表わしている。
【0043】
次に、取込み指示周期の監視結果に関する動作について説明すると、この取込み指示周期の監視結果は、時刻T1の時系列上での位置により、以下の4種のケースに分類される。ここで、ケースAは受信成功の場合であるが、ケースBとケースC及びケースDは受信失敗の場合である。
【0044】
・ケースA:式(1)を満足する時刻T1において取込み指示電文5が受信
できた場合。
【0045】
・ケースB:T1<Ty−tを満足する時刻T1において取込み指示電
文5が受信された場合。
【0046】
・ケースC:T1>Ty+tを満足する時刻T1において取込み指示電
文5が受信された場合。
【0047】
・ケースD:取込み指示電文5が受信されなかった場合。
【0048】
また、この実施形態では、前記4種のケースに加え、受信失敗が連続して発生しているか否かも判断するようになっているが、これは以下の2種の理由による。
【0049】
まず、第1の理由は、ノイズなどの外乱による単発的な受信失敗の場合、あたかも予定時刻に取込み指示電文5が受信されたかの如く動作させ、これによりデータ取込み装置としての可用性が高められるようにするためである。
【0050】
次に、第2の理由は、データ取込み装置間の次回受信予定時刻Tyに存在するずれzが、図10に示すように、連続して受信に失敗した場合は蓄積され、これが受信失敗回数をJとして、これとずれzの積で表される累積ずれJzになるため、この累積ずれJzが仕様上許容できない値となった場合は、受信異常状態としなければならないためである。
【0051】
そこで、受信異常カウンタ101を設け、これにより受信に失敗した回数をカウントし、カウント値が受信失敗回数J未満であれば受信正常状態であることを処理装置14に通知し、カウント値が受信失敗回数J以上であれば受信異常状態であることを通知するようになっている。
【0052】
このときの取込み指示電文5受信状態の遷移条件を、図11に示す。ここで状態200は受信正常状態を表わし、状態201は間欠受信異常状態を表わすが、これらは何れも正常に受信している状態であり、一方、状態202は連続受信異常状態を表わし、状態203は正常復帰準備状態を表わすが、これらは受信が異常の状態である。
【0053】
ここで、いま、状態200のとき、ケースA(式(1)を満足する受信状態)が発生した場合は状態200を維持するが、ケースB又はケースC(式(1)が満足されない受信状態)が発生した場合は状態201に遷移する。そして、状態201では、受信異常カウンタ102が受信失敗回数J未満の間に受信が成功したとすると、ここで状態200に遷移する。
【0054】
また、ケースB又はケースC或いはケースDが発生した場合でも、受信異常カウンタ102が受信失敗回数J未満であれば、状態201を維持する。しかし、このケースB又はケースC或いはケースDのときでも、受信失敗回数Jが連続して発生した場合は状態202に遷移してしまう。
【0055】
この状態202では、取込み指示電文5が受信されるまで、この状態202を維持し、取込み指示電文5が受信されたとき、状態203に遷移する。そして、この状態203では、ケースAが発生したとき状態200に遷移し、ケースB又はケースC或いはケースDが発生した場合は状態201に遷移する。
【0056】
次に、これらケースAとケースB、ケースC、それにケースDの各々における受信後の動作について説明すると、まず、図12は、ケースAの受信が発生した場合の動作を説明したもので、このケースAでは、今回受信時刻T1を次回受信時刻T0とし、これにより今回受信予定時刻Tyを決定する。
【0057】
そして、このとき取込み指示受信部11で受信した時刻情報を時刻情報保持部12に格納すると共にデータ取込み部13に対してデータ取込みを指示し、正常に受信しているため、受信異常カウンタ102はゼロクリアする。
【0058】
次に、図13は、ケースB又はケースCによる受信が発生した場合の動作を説明したもので、ここで、状態200及び状態201のときは、ケースB及びケースCの受信を無視し、今回受信予定時刻Tyに規定受信周期Kを加えた時刻(図ではTy+t+(K−t)と表現されている)を次回受信予定時刻Tyにセットする。
【0059】
このときデータ取込み部13へのデータ取込み指示は、取込み指示周期監視部100が行うが、この場合、データ取込み指示を行った時刻を時刻情報保持部12にセットする必要があるため、図13に示されているように、時刻情報保持部12の内容に1加算することで、時刻情報保持部12の内容と、データ取込み部13で取り込むデータの関係を正しく保つ。また、このときは受信異常カウンタ102にもデータ1を加算する。
【0060】
次に、図14は、連続受信失敗状態202でケースDが発生している状態を示す。この場合、今回受信時の今回受信予定時刻Tyに規定受信周期Kを加えた時刻を、次回受信時のTyにセットすると共に、データ取込み部13へのデータ取込み指示と時刻情報保持部12への1加算、及び受信異常カウンタ102への1加算を行う。
【0061】
そして、図15は、連続受信失敗状態202から取込み指示電文5を受信した場合の動作、すなわち正常復帰準備状態203への遷移時の動作を示す。この場合、今回受信した時刻T1に規定受信周期Kを加えた時刻を、次回受信時の受信予定時刻Tyとしてセットする。
【0062】
このとき時刻情報保持部12へは、取込み指示受信部11で受信した時刻情報をセットする。これは、次回受信時にケースB又はケースC或いはケースDが発生した場合、今回受信時刻を1加算する必要があるためである。また、このときも正常に受信しているので、図15に示されているように、受信異常カウンタ102はゼロクリアする。
【0063】
そして、処理装置14は、時刻情報保持部12に格納されている時刻情報とデータ取込み部13が取り込んだデータに、受信異常カウンタの状態(受信正常、または受信異常)を付加し、逐次、上位計算機4に送信するか、又はデータ保存部15に蓄積した後、まとめて上位計算機4に送信する。
【0064】
従って、この第2の実施形態によれば、データ取込み指示周期を監視し、予め定められた時刻までにデータ取込み指示電文が受信できなかった場合、データ取込み装置100の内部でデータ取込み指示が発生されることになり、この結果、外来ノイズや停復電が発生した場合でも、予め定められた周期でデータ取込みの継続を可能にでき、外来ノイズや停復電に際してもデータが喪失する虞のないデータ取込みシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明によるデータ取込み装置の第1の実施形態を示すブロック構成図である。
【図2】第1の実施形態による取込み指示開始と停止指示を説明するための動作フロー図である。
【図3】第1の実施形態における取込み指示送信部のブロック構成図である。
【図4】第1の実施形態における取込み指示送信部の動作を説明するための動作フロー図である。
【図5】第1の実施形態における取込み指示受信部のブロック構成図である。
【図6】第1の実施形態における取込み指示受信部の動作を説明するための動作フロー図である。
【図7】本発明によるデータ取込み装置の第2の実施形態を示すブロック構成図である。
【図8】第2の実施形態による取込み指示電文の受信成功判定の説明図である。
【図9】第2の実施形態による取込み指示電文の受信失敗判定の説明図である。
【図10】データ取込み装置間の次回受信予定時刻のずれの説明図である。
【図11】本発明の第2の実施形態における取込み指示電文受信状態の遷移条件を示す説明図である。
【図12】本発明の第2の実施形態におけるケースAの動作を示す説明図である。
【図13】本発明の第2の実施形態におけるケースBとケースCの動作を示す説明図である。
【図14】本発明の第2の実施形態において連続受信失敗状態でケースDが発生した場合の動作を示す説明図である。
【図15】本発明の第2の実施形態において連続受信失敗状態で取込み指示電文を受信した場合の動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0066】
1、2:データ取込み装置
3:取込み指示信号回線
4:上位計算機
5:取込み指示電文
10、20:取込み指示送信部
11、21:取込み指示受信部
12、22:時刻情報保持部
13、23:データ取込み部
14、24:処理装置
15、25:データ保存部
16、26:通信インタフェース部
10B:送信バッファ
F:取込み指示フラグ
T:時刻情報
10A:取込み指示制御部
11A:受信バッファ
11B:取込み待ちタイマ
100:取込み指示周期監視部
101:受信異常カウンタ
F:取込み指示フラグ
T:時刻情報
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電プラントなどにおける設備の試験や監視のためのデータ取込み装置を複数備えたデータ取込みシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電設備などにおいて、立ち上げ試験時や設備稼働監視時には、圧力や流量など各種のデータを、高速、且つ周期的に取込んで分析する必要があり、このためデータ取込み装置が使用されるが、このときのデータの分析には、データを時系列的に配列する必要があり、従って、取込んだデータには時刻情報が付加されていなければならない。
【0003】
しかも、このとき、データの取込み先が多岐にわたる大規模の設備を対象とした場合には、複数台のデータ取込み装置が併用されたシステムになるが、この場合には、複数のデータ取込み装置間で同期をとり、同時刻のデータを周期的に取込む必要がある。
【0004】
また、このとき、データ取込み装置の可用性(availability:有用性)を高めるためには、例えば外来ノイズの影響などにより、或る装置でデータの取込みに失敗した場合や、停復電時など、時刻情報が失われた状態になった場合でも、事後、他の装置と時刻情報の一致化を行い、通常動作への復帰が行われなければならない。
【0005】
そこで、このような事態に対処するため、或る従来技術では、複数の監視対象機器にGPS(全地球測位システム)受信手段を設け、取り込んだデータに時刻情報を付加する方法について提案しており(例えば、特許文献1参照。)、他の従来技術では、ネットワーク上のタイムサーバーから時刻情報を入手する方法について提案している(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2005−258598号公報
【特許文献2】特開2004−266536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術は、システム構成の簡素化に配慮がされているとは言えず、コストの抑制に問題があった。
【0007】
例えば取り込んだデータに時刻情報を付加するため、複数の機器にGPS受信手段を設けるようにした従来技術では、各機器にGPS受信手段を設ける必要があるが、このときGPS装置は一般にかなり高価であるため、多数設置した場合、システム全体では極めて高価なものとなってしまう。
【0008】
また、時刻一致化手段として、ネットワーク上のタイムサーバーから時刻情報を入手するようにした従来技術の場合、複数装置間でナノ秒オーダーまでの時刻情報一致化が可能であるが、しかし、ネットワーク上にタイムサーバーが必要となり、しかもタイムサーバーと時刻情報を送受信するためのプログラムが必要となるため、高価なシステムになってしまう上、開発工数も増大してしまう。
【0009】
本発明の目的は、短い周期によるデータの取込みに際して容易に時刻情報の付加が得られるようにしたデータ取込みシステムを提供することにあり、このとき、外来ノイズや停復電に際してもデータの取込み継続が可能なデータ取込みシステムを提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、同時刻の複数のデータを、複数のデータ取込み装置間で同期をとり、周期的に取込む方式のデータ取込みシステムにおいて、前記データ取込み装置の各々が、取込み指示送信部と取込み指示受信部、時刻情報保持部、データ取込み部、処理装置、それにデータ保存部を備え、前記取込み指示送信部は、取込み指示情報と時刻情報からなる取込み指示電文を、取込み指示回線を介して他のデータ取込み装置の取込み指示受信部に送信し、前記取込み指示受信部は、受信した前記取込み指示電文を前記取込み指示情報と前記時刻情報に分離すると共に、前記データ取込み部にデータの取込みを指示し、且つ前記時刻情報を前記時刻情報格納部に格納し、前記データ取込み部は、データの取込みが終了したことを前記処理装置に伝え、前記処理装置は、前記データ取込み部が取り込んだ前記データと前記時刻情報保持部に格納されている前記時刻情報を関連付けて前記データ保存部に保存し、これにより前記データと前記時刻情報の対応付けが得られるようにして達成される。
【0011】
このとき、更に、前記前記データ取込み装置の各々が、前記取込み指示受信部が受信する前記取込み指示電文の受信周期を監視し、予め定められた取込み周期で前記取込み指示電文を受信しなかった場合は取込み指示を発生する取込み指示周期制御部と、前記取込み指示周期制御部からの取込み指示と前記取込み指示受信部からの取込み指示とを受信し、前記取込み周期で前記取込み指示電文を受信した場合は前記取込み指示受信部からの取込み指示を前記データ取込み部に伝え、前期取り込み周期で前記取込み指示電文を受信しなかった場合は前記取込み指示周期制御部からの取込み指示を前記データ取込み部に伝えるデータ取込み指示切換え部を有し、前記取込み指示電文を受信しない場合でも前記取込み周期でのデータの取込みが継続されるようにしても上記目的が達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、複数のデータ取込み装置間で同期をとり、同時刻のデータを周期的に取込む際、取込み指示電文に時刻情報を付加するだけで、取込んだデータに時刻情報を付加することができ、従って、本発明によれば、短い周期によるデータの取込みに際して容易に時刻情報の付加が得られ、この結果、データ取込みシステムを低コストで実現することができる。
【0013】
また、本発明では、データ取込み指示周期を監視し、予め定められた時刻までにデータ取込み指示電文が受信できなかった場合、データ取込み装置内部でデータ取込み指示を発生するようにしたので、外来ノイズや停復電が発生した場合でも、予め定められた周期でのデータ取込みの継続を可能にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明によるデータ取込みシステムについて、図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態で、これは、図示のように、少なくとも2台のデータ取込み装置1、2を備え、これらが取込み指示回線3と上位計算機4に接続されている場合の一実施形態で、このため、各データ取込み装置1、2は、何れも取込み指示送信部10、20と取込み指示受信部11、21、時刻情報保持部12、22、データ取込み部13、23、処理装置14、24、データ保存部15、25、それに通信インタフェース16、26を備えているものである。
【0016】
そして、これら2台のデータ取込み装置1、2は、各々の通信インタフェース16、26を介して取込み指示回線3に接続されているが、このときの通信インタフェース16、26と取込み指示回線3の電気的インタフェースには、RS485が用いられている。なお、ここでは電気的インターフェースにRS485を用いたが、イーサネット(登録商標)やRS232Cなど他の公知技術で実現してもよい。
【0017】
一方、これらは、各々の処理装置14、24により、上位計算機4とイーサネット(登録商標)回線を介して接続されているが、ここでも同じく、RS232Cなど他の公知技術で実現してもよい。
【0018】
次に、この実施形態の装置の動作について、図2から図6の動作フローにより説明する。なお、ここでは、2台のデータ取込み装置1、2の内の一方のデータ取込み装置1について説明するが、他方のデータ取込み装置2の動作についても同じであり、データ取込み部13、23で取り込むデータが異なっているだけである。
【0019】
まず、図2は、上位計算機4からの取込み指示開始のための動作と停止指示のための動作フローで、この場合、処理が開始されたら、最初、処理装置14は、上位計算機4からの取込み指示送信開始指示を待つ(ステップ100)。そして、ここで送信開始指示があったとき、取込み指示送信部10に取込み指示送信開始を指示する(ステップ101)。
【0020】
こうして開始を指示した後、次いで処理装置14は、上位計算機4から、今度は取込み指示送信停止指示を待つ(ステップ102)。そして、ここで取込み指示送信停止指示があったとき、取込み指示送信部10に取込み指示送信停止を指示し(ステップ103)、この後、処理装置14による処理はステップ100に戻り、同じ処理を繰り返す。
【0021】
なお、この実施形態では、取込み指示送信の開始と停止が上位計算機4から与えられるものとしたが、予め処理装置14に取込み指示開始及び停止の時期を記憶させるなどの処理を追加することにより、上位計算機4が無くても取込み指示開始および停止が可能である。
【0022】
次に、取込み指示送信部10について説明する。ここで、まず、この取込み指示送信部10は、図3に示すように、取込み指示制御部10Aを備えている。そして、この取込み指示制御部10Aでは、例えば1ミリ秒間隔など、予め定められた取込み指示電文5の送信タイミングを、基準クロック(図示してない)から作成するようになっている。
【0023】
また、取込み指示送信部10は、これも図3に示すように、送信バッファ10Bを備えている。そして、この送信バッファ10Bには取込み指示フラグFと時刻情報Tが格納してあるが、ここで、まず取込み指示フラグFは、取込み指示受信部11に対して取込み実施を指示するためのフラグで、例えば10101010など、予め定められた1ビット以上のデータによって構成されている。
【0024】
また、時刻情報Tは、同一の取込み指示電文5に含まれる取込み指示フラグFによって取り込まれたデータを識別するための情報であり、これは取込み指示を行う日時分秒などの時刻即値であってもよく、或いは予め定められた基準時時刻からの予め定められた時間分のオフセット値であってもよい。
【0025】
ここでオフセット値の場合は、それを表わすフリップフロップで構成されたカウンタのデータとなり、この場合のオフセット値とは、例えば、0時0分0秒を基準時時刻として、これから1ミリ秒間隔でデータを取り込む場合、0時0分10秒時点では10000となるデータであり、従って、このときデータ取込み指示電文5に含まれる時刻情報Tはデータ10000となる。
【0026】
次に、この取込み指示送信部10の動作について、図4の処理フローにより説明する。まず、処理装置14からの取込み指示送信開始指示を待つ(ステップ110)。ここで取込み指示送信開始指示があった場合、今度は取込み指示制御部10Aからの送信開始指示を待つ(ステップ110)。そして、送信開始指示があった場合、取込み指示フラグFと時刻情報Tにより構成される送信バッファ10Bの内容を、通信インタフェース部16に出力すると共に、時刻情報を更新するのである(ステップ112)。
【0027】
なお、この実施形態では、時刻情報Tをフリップフロップで構成されたカウンタとしたが、例えばRTC(リアルタイムクロック)ICなど、何らかの時計機能を有するもので代替してもよい。このとき取込み指示フラグFについても例えばHDLCなどの公知の通信手順に含まれるスタートフラグで代替してもよい。
【0028】
このとき通信インタフェース部16は、送信バッファ10Bの内容を、取込み指示電文5として取込み指示回線3に送信する。ここで、この取込み指示電文5の内容は、送信バッファ10Bの内容をそのまま用いればよいが、例えば通信回線品質向上のため、NRZIやマンチェスタなどの公知の技術による変調を施してもよく、更にはパリティビットや巡回冗長ビットなどの健全性確認データを付加するようにしてもよい。
【0029】
なお、このようにデータの変調を行う場合や健全性確認データを付加する場合には、それに対応した機能(復調やデータ健全性確認)が取込み指示受信部11に含まれるように構成することになる。
【0030】
次に、取込み指示受信部11について説明すると、この取込み指示受信部11は、図5に示すように、受信バッファ11Aと取込み待ちタイマ11Bを備え、受信バッファ11Aの内容が意味するところを解読する働きをする。
【0031】
このため、受信バッファ11Aは、送信バッファ10Bと同一かそれ以上の容量をもつバッファで構成されている。そして、通信インタフェース16は、取込み指示回線3から取込み指示電文5を受信し、その内容を、この受信バッファ11Aに格納する。
【0032】
次に、この取込み指示受信部11が取込み指示電文5を受信する際の動作について、図6の処理フローにより説明する。このとき、取込み指示受信部11は、まず、受信バッファ11Aを調べ、取込み指示の受信状態を監視する(ステップ120)。そして取込み指示の受信が完了した場合、データ取込み部13へのデータ取込み指示を行ない(ステップ121)、次いで受信バッファ11Aに含まれる時刻情報Tを時刻情報保持部12に格納する(ステップ122)。
【0033】
そこで、データ取込み部13は、取込み待ちタイマ11Bを起動して設定値による時間の経過を待ち、その間、接点情報などのディジタルデータや流量や温度などのアナログデータを、このデータ取込み装置1が適用されている発電設備の機器などから取込む(ステップ123)。従って、このときの取込み待ちタイマ11Bの設定値は、上記したディジタルデータやアナログデータの入力遅延時間よりも長い時間とする。
【0034】
そして、取込み待ちタイマ11Bのタイマ値が設定値に等しくなったら、ここで処理装置14に対してデータ取込み完了通知を行う(ステップ124)。そこで処理装置14は、時刻情報保持部12の時刻情報Tと、データ取込み部13からのデータを関連付けし、それをデータ保存部15に蓄積し(ステップ125)、この後、まとめて上位計算機4に送信する(ステップ126)。
【0035】
そこで、上位計算機4は、同時刻で周期的に取込んだ接点情報などのディジタルデータや流量や温度などのアナログデータを、時刻情報Tが付加された状態で受信することができる。このときデータ保存部15に蓄積せず、逐次、上位計算機4に送信するようにしてもよい。
【0036】
従って、この実施形態によれば、複数のデータ取込み装置1、2間で同期をとり、同時刻のデータを周期的に取込む際、取込み指示電文5に時刻情報Tを付加するだけで、取込んだデータに時刻情報を付加することでき、よって、この実施形態によれば、短い周期によるデータの取込みに際して容易に時刻情報の付加が得られるようにしたデータ取込みシステムを低コストで実現することができる。
【0037】
次に、本発明の第2の実施形態について説明すると、この場合は、図7に示すデータ取込み装置100が用いられることになるが、これは、図1〜図6で説明したデータ取込み装置1(及び2)に、取込み指示周期監視部101と受信異常カウンタ102を付加したもので、その他の構成は、このデータ取込み装置100が少なくとも2台、存在していて、相互に取込み指示電文5を授受している点も含めて同じである。
【0038】
そして、この取込み指示周期監視部101は、取込み指示電文5が、例えば1ミリ秒など、規定周期で取込み指示受信部11により受信されているか否かを監視する働きをするもので、受信に成功した場合、この取込み指示周期監視部101は受信異常カウンタ102にゼロをセットし、取込み指示受信部11内部の時刻情報Tを時刻情報保持部12に格納すると共に、取込み指示受信部11からデータ取込み部13にデータの取込みを指示する。
【0039】
一方、受信に失敗した場合、この取込み指示周期監視部101は、受信異常カウンタ102をカウントアップし、時刻情報の更新を時刻情報保持部12に指示すると共に、データ取込み部13にデータの取込みを指示する。なお、このときの取込み指示送信処理は、図2のステップ100から103までの処理と同じであり、取込み指示受信処理は、図4のステップ110から112までの処理と同じである。
【0040】
次に、このデータ取込み装置100による本発明の実施形態の動作について説明する。まず、始めに、取込み指示周期とその監視について、図8と図9により説明する。そして、ここでは取込み指示の規定受信周期をKで表わし、取込み指示電文5の受信時刻をT1で表わす。更に次回受信予定時刻(すなわちT0+K)はTyで表わし、このとき規定受信周期の許容誤差をtで表わしている。
【0041】
そして、取込み周期監視部101は、前回受信時刻T0から算出される今回受信予定時刻Tyを、実際に今回受信した時刻T1と比較し、時刻T1が、予定時刻Tyの許容誤差t以内にあるか否か判断する。このとき、以下の式(1)が成立すれば受信成功と判断し、不成立なら受信失敗と判断する。
【0042】
Ty−t≦T1≦Ty+t …………(1)
ここで、図8は受信成功時のT0、T1、K、Ty、及びtの関係を示し、図9は、受信失敗時の関係を表わしている。
【0043】
次に、取込み指示周期の監視結果に関する動作について説明すると、この取込み指示周期の監視結果は、時刻T1の時系列上での位置により、以下の4種のケースに分類される。ここで、ケースAは受信成功の場合であるが、ケースBとケースC及びケースDは受信失敗の場合である。
【0044】
・ケースA:式(1)を満足する時刻T1において取込み指示電文5が受信
できた場合。
【0045】
・ケースB:T1<Ty−tを満足する時刻T1において取込み指示電
文5が受信された場合。
【0046】
・ケースC:T1>Ty+tを満足する時刻T1において取込み指示電
文5が受信された場合。
【0047】
・ケースD:取込み指示電文5が受信されなかった場合。
【0048】
また、この実施形態では、前記4種のケースに加え、受信失敗が連続して発生しているか否かも判断するようになっているが、これは以下の2種の理由による。
【0049】
まず、第1の理由は、ノイズなどの外乱による単発的な受信失敗の場合、あたかも予定時刻に取込み指示電文5が受信されたかの如く動作させ、これによりデータ取込み装置としての可用性が高められるようにするためである。
【0050】
次に、第2の理由は、データ取込み装置間の次回受信予定時刻Tyに存在するずれzが、図10に示すように、連続して受信に失敗した場合は蓄積され、これが受信失敗回数をJとして、これとずれzの積で表される累積ずれJzになるため、この累積ずれJzが仕様上許容できない値となった場合は、受信異常状態としなければならないためである。
【0051】
そこで、受信異常カウンタ101を設け、これにより受信に失敗した回数をカウントし、カウント値が受信失敗回数J未満であれば受信正常状態であることを処理装置14に通知し、カウント値が受信失敗回数J以上であれば受信異常状態であることを通知するようになっている。
【0052】
このときの取込み指示電文5受信状態の遷移条件を、図11に示す。ここで状態200は受信正常状態を表わし、状態201は間欠受信異常状態を表わすが、これらは何れも正常に受信している状態であり、一方、状態202は連続受信異常状態を表わし、状態203は正常復帰準備状態を表わすが、これらは受信が異常の状態である。
【0053】
ここで、いま、状態200のとき、ケースA(式(1)を満足する受信状態)が発生した場合は状態200を維持するが、ケースB又はケースC(式(1)が満足されない受信状態)が発生した場合は状態201に遷移する。そして、状態201では、受信異常カウンタ102が受信失敗回数J未満の間に受信が成功したとすると、ここで状態200に遷移する。
【0054】
また、ケースB又はケースC或いはケースDが発生した場合でも、受信異常カウンタ102が受信失敗回数J未満であれば、状態201を維持する。しかし、このケースB又はケースC或いはケースDのときでも、受信失敗回数Jが連続して発生した場合は状態202に遷移してしまう。
【0055】
この状態202では、取込み指示電文5が受信されるまで、この状態202を維持し、取込み指示電文5が受信されたとき、状態203に遷移する。そして、この状態203では、ケースAが発生したとき状態200に遷移し、ケースB又はケースC或いはケースDが発生した場合は状態201に遷移する。
【0056】
次に、これらケースAとケースB、ケースC、それにケースDの各々における受信後の動作について説明すると、まず、図12は、ケースAの受信が発生した場合の動作を説明したもので、このケースAでは、今回受信時刻T1を次回受信時刻T0とし、これにより今回受信予定時刻Tyを決定する。
【0057】
そして、このとき取込み指示受信部11で受信した時刻情報を時刻情報保持部12に格納すると共にデータ取込み部13に対してデータ取込みを指示し、正常に受信しているため、受信異常カウンタ102はゼロクリアする。
【0058】
次に、図13は、ケースB又はケースCによる受信が発生した場合の動作を説明したもので、ここで、状態200及び状態201のときは、ケースB及びケースCの受信を無視し、今回受信予定時刻Tyに規定受信周期Kを加えた時刻(図ではTy+t+(K−t)と表現されている)を次回受信予定時刻Tyにセットする。
【0059】
このときデータ取込み部13へのデータ取込み指示は、取込み指示周期監視部100が行うが、この場合、データ取込み指示を行った時刻を時刻情報保持部12にセットする必要があるため、図13に示されているように、時刻情報保持部12の内容に1加算することで、時刻情報保持部12の内容と、データ取込み部13で取り込むデータの関係を正しく保つ。また、このときは受信異常カウンタ102にもデータ1を加算する。
【0060】
次に、図14は、連続受信失敗状態202でケースDが発生している状態を示す。この場合、今回受信時の今回受信予定時刻Tyに規定受信周期Kを加えた時刻を、次回受信時のTyにセットすると共に、データ取込み部13へのデータ取込み指示と時刻情報保持部12への1加算、及び受信異常カウンタ102への1加算を行う。
【0061】
そして、図15は、連続受信失敗状態202から取込み指示電文5を受信した場合の動作、すなわち正常復帰準備状態203への遷移時の動作を示す。この場合、今回受信した時刻T1に規定受信周期Kを加えた時刻を、次回受信時の受信予定時刻Tyとしてセットする。
【0062】
このとき時刻情報保持部12へは、取込み指示受信部11で受信した時刻情報をセットする。これは、次回受信時にケースB又はケースC或いはケースDが発生した場合、今回受信時刻を1加算する必要があるためである。また、このときも正常に受信しているので、図15に示されているように、受信異常カウンタ102はゼロクリアする。
【0063】
そして、処理装置14は、時刻情報保持部12に格納されている時刻情報とデータ取込み部13が取り込んだデータに、受信異常カウンタの状態(受信正常、または受信異常)を付加し、逐次、上位計算機4に送信するか、又はデータ保存部15に蓄積した後、まとめて上位計算機4に送信する。
【0064】
従って、この第2の実施形態によれば、データ取込み指示周期を監視し、予め定められた時刻までにデータ取込み指示電文が受信できなかった場合、データ取込み装置100の内部でデータ取込み指示が発生されることになり、この結果、外来ノイズや停復電が発生した場合でも、予め定められた周期でデータ取込みの継続を可能にでき、外来ノイズや停復電に際してもデータが喪失する虞のないデータ取込みシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明によるデータ取込み装置の第1の実施形態を示すブロック構成図である。
【図2】第1の実施形態による取込み指示開始と停止指示を説明するための動作フロー図である。
【図3】第1の実施形態における取込み指示送信部のブロック構成図である。
【図4】第1の実施形態における取込み指示送信部の動作を説明するための動作フロー図である。
【図5】第1の実施形態における取込み指示受信部のブロック構成図である。
【図6】第1の実施形態における取込み指示受信部の動作を説明するための動作フロー図である。
【図7】本発明によるデータ取込み装置の第2の実施形態を示すブロック構成図である。
【図8】第2の実施形態による取込み指示電文の受信成功判定の説明図である。
【図9】第2の実施形態による取込み指示電文の受信失敗判定の説明図である。
【図10】データ取込み装置間の次回受信予定時刻のずれの説明図である。
【図11】本発明の第2の実施形態における取込み指示電文受信状態の遷移条件を示す説明図である。
【図12】本発明の第2の実施形態におけるケースAの動作を示す説明図である。
【図13】本発明の第2の実施形態におけるケースBとケースCの動作を示す説明図である。
【図14】本発明の第2の実施形態において連続受信失敗状態でケースDが発生した場合の動作を示す説明図である。
【図15】本発明の第2の実施形態において連続受信失敗状態で取込み指示電文を受信した場合の動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0066】
1、2:データ取込み装置
3:取込み指示信号回線
4:上位計算機
5:取込み指示電文
10、20:取込み指示送信部
11、21:取込み指示受信部
12、22:時刻情報保持部
13、23:データ取込み部
14、24:処理装置
15、25:データ保存部
16、26:通信インタフェース部
10B:送信バッファ
F:取込み指示フラグ
T:時刻情報
10A:取込み指示制御部
11A:受信バッファ
11B:取込み待ちタイマ
100:取込み指示周期監視部
101:受信異常カウンタ
F:取込み指示フラグ
T:時刻情報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同時刻の複数のデータを、複数のデータ取込み装置間で同期をとり、周期的に取込む方式のデータ取込みシステムにおいて、
前記データ取込み装置の各々が、取込み指示送信部と取込み指示受信部、時刻情報保持部、データ取込み部、処理装置、それにデータ保存部を備え、
前記取込み指示送信部は、取込み指示情報と時刻情報からなる取込み指示電文を、取込み指示回線を介して他のデータ取込み装置の取込み指示受信部に送信し、
前記取込み指示受信部は、受信した前記取込み指示電文を前記取込み指示情報と前記時刻情報に分離すると共に、前記データ取込み部にデータの取込みを指示し、且つ前記時刻情報を前記時刻情報格納部に格納し、
前記データ取込み部は、データの取込みが終了したことを前記処理装置に伝え、
前記処理装置は、前記データ取込み部が取り込んだ前記データと前記時刻情報保持部に格納されている前記時刻情報を関連付けて前記データ保存部に保存し、
これにより前記データと前記時刻情報の対応付けが得られるように構成したことを特徴とするデータ取込みシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のデータ取込みシステムにおいて、
前記前記データ取込み装置の各々は、
前記取込み指示受信部が受信する前記取込み指示電文の受信周期を監視し、予め定められた取込み周期で前記取込み指示電文を受信しなかった場合は取込み指示を発生する取込み指示周期制御部と、
前記取込み指示周期制御部からの取込み指示と前記取込み指示受信部からの取込み指示とを受信し、前記取込み周期で前記取込み指示電文を受信した場合は前記取込み指示受信部からの取込み指示を前記データ取込み部に伝え、前期取り込み周期で前記取込み指示電文を受信しなかった場合は前記取込み指示周期制御部からの取込み指示を前記データ取込み部に伝えるデータ取込み指示切換え部を有し、
前記取込み指示電文を受信しない場合でも前記取込み周期でのデータの取込みが継続されることを特徴とするデータ取込みシステム。
【請求項1】
同時刻の複数のデータを、複数のデータ取込み装置間で同期をとり、周期的に取込む方式のデータ取込みシステムにおいて、
前記データ取込み装置の各々が、取込み指示送信部と取込み指示受信部、時刻情報保持部、データ取込み部、処理装置、それにデータ保存部を備え、
前記取込み指示送信部は、取込み指示情報と時刻情報からなる取込み指示電文を、取込み指示回線を介して他のデータ取込み装置の取込み指示受信部に送信し、
前記取込み指示受信部は、受信した前記取込み指示電文を前記取込み指示情報と前記時刻情報に分離すると共に、前記データ取込み部にデータの取込みを指示し、且つ前記時刻情報を前記時刻情報格納部に格納し、
前記データ取込み部は、データの取込みが終了したことを前記処理装置に伝え、
前記処理装置は、前記データ取込み部が取り込んだ前記データと前記時刻情報保持部に格納されている前記時刻情報を関連付けて前記データ保存部に保存し、
これにより前記データと前記時刻情報の対応付けが得られるように構成したことを特徴とするデータ取込みシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のデータ取込みシステムにおいて、
前記前記データ取込み装置の各々は、
前記取込み指示受信部が受信する前記取込み指示電文の受信周期を監視し、予め定められた取込み周期で前記取込み指示電文を受信しなかった場合は取込み指示を発生する取込み指示周期制御部と、
前記取込み指示周期制御部からの取込み指示と前記取込み指示受信部からの取込み指示とを受信し、前記取込み周期で前記取込み指示電文を受信した場合は前記取込み指示受信部からの取込み指示を前記データ取込み部に伝え、前期取り込み周期で前記取込み指示電文を受信しなかった場合は前記取込み指示周期制御部からの取込み指示を前記データ取込み部に伝えるデータ取込み指示切換え部を有し、
前記取込み指示電文を受信しない場合でも前記取込み周期でのデータの取込みが継続されることを特徴とするデータ取込みシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−188236(P2007−188236A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−4999(P2006−4999)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000153443)株式会社日立情報制御ソリューションズ (359)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000153443)株式会社日立情報制御ソリューションズ (359)
【Fターム(参考)】
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