説明

データ送信制御プログラム及びデータ送信制御システム

【課題】 SNMPにおけるコミュニティ名の不一致によるエラーを防止する。
【解決手段】 FAXドライバ10が導入されたPC1を、入力に応じ認証データを送信する認証データ送信手段、受信した照合情報をFAXドライバ10の照合情報として返信する照合情報設定返信手段、受信した識別データとFAXドライバ10の識別データとが対応する場合、実行データを複合機2に送信するデータ送信制御手段、として機能させ、複合機2を、受信した認証データを検証し正当性が認められた場合、ユニークIDを自己の照合情報として送信する照合情報設定送信手段、受信したFAXドライバ10の照合情報が複合機2の照合情報と同一である場合、複合機2を特定する識別データをPC1に送信する識別データ送信手段、受信した実行データに基づきジョブを実行するジョブ実行手段、として機能させるためのプログラムとしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来の通信手順に認証方法を組み合わせることによって、所定のジョブを安全かつ円滑に実行するデータ送信制御プログラム及び制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、FAX機器やFAX機能付きの複合機と、FAXドライバがインストールされたパーソナルコンピュータ(以下、PCという。)と、が接続された環境において、PCにおける入力操作に応じたFAXドライバの働きにより、PCで作成したドキュメント等を、前記複合機等を介してそのままFAX送信を行う、いわゆるPC−FAXが実用化されている。
【0003】
この種のPC−FAXでは、その過程においてSNMP(Simple Network Management Protocol)を利用することがあり、FAX送信の際、予めFAXドライバの識別情報と複合機の識別情報とを比較し、双方の情報が同一の場合のみFAXの実行を許可するといった仕組みが採られている。
これは、多種類のFAXドライバが存在している中、PCにインストールされたFAXドライバが必ずしも複合機に対応しているとは限らず、実際、FAXドライバがその複合機に対応していなければ、PC−FAXを実行してもファクシミリ送信エラーや未送信等の不具合が生じるからである。
【0004】
具体的には、FAXドライバや装置に割り当てられたコミュニティ名の照合やドライバ名・装置名の照合の結果に応じて、FAX送信が制限されるようになっており、これによってFAX通信が正しく行われるためのアルゴリズムが確立されている。
【0005】
また、SNMPのSNMPv1,SNMPv2では、パスワードに相当するコミュニティ名を随時変更することによって不正なアクセスを防ぐことも可能である。
ところが、マネージャー側のコミュニティ名の変更に応じて、正当なエージェントにおいてもコミュニティ名を変更しなければ相互の通信ができなくなるため、新たなコミュニティ名の通知や設定等の手間が増え、運用・管理面での煩わしさが問題となっていた。
【0006】
そこで、従来のSNMPのSNMPv1,SNMPv2ではなく、SNMPv3を利用した権限情報生成方法等が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この権限情報生成方法等によれば、SNMPv3をベースに通信手順を構成しているため、コミュニティ名といった概念は存在しない。
そして、SNMPv3では、ユーザの認証、ユーザ毎のアクセス制御、暗号処理等の安全措置が標準的に採られているため、従来のようにパスワード(コミュニティ名)を変更する必要性はなくなっている。
【0007】
【特許文献1】特開2006−85643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、以上のような従来提案されている権限情報生成方法等の実現には、少なくともマネージャーの機能としてSNMPv3に対応した装置であることが不可欠となっているため、SNMPv1又はSNMPv2のみに対応している既存の装置では、そもそもマネージャーとしての役割を果たすことができない。
これを、PC−FAXに置き換えて考えると、少なくともマネージャーとしての複合機等がSNMPv3に対応していなければならないこととなる。
このため、既存の複合機等では対応できないケースも多く、実現化のためには新たな装置の導入が必要となるばかりか、既存装置が無駄になるといった環境的問題が発生するものとなっていた。
また、マネージャー側の装置において、必要な改造等を行ったとしても費用や手間が発生するため、これも経済的な問題となる。
【0009】
本発明は、以上のような従来の技術が有する問題を解決するために提案されたものであり、通信プロトコル上の照合情報が一致しない場合のジョブの不実行を回避するとともに、別個に認証を行うことによって、所定の通信プロトコルを利用しつつ安全かつ円滑にジョブを実行し得るデータ送信制御プログラム及び制御システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のデータ送信制御プログラムは、請求項1に記載するように、画像形成装置と当該画像形成装置を制御する所定のドライバがインストールされた情報処理端末とから構成されるシステムにおいて、所定の通信プロトコルにより前記画像形成装置及び情報処理端末間で行うデータ送受信を制御するデータ送信制御プログラムであって、前記情報処理端末を構成するコンピュータを、入力操作に応じて前記画像形成装置に対し当該情報処理端末の正当性を示す所定の認証データを送信する認証データ送信手段、前記画像形成装置から受信した前記通信プロトコル上の所定の照合情報を前記ドライバの照合情報として設定するとともに、当該照合情報を前記画像形成装置に返信する照合情報設定返信手段、前記画像形成装置から受信した当該画像形成装置を特定する所定の識別データと前記ドライバが保持する当該ドライバを特定する識別データとを比較する比較手段、前記比較手段で比較された前記画像形成装置からの識別データと前記ドライバが保持する識別データとが対応する場合、所定の実行データを前記画像形成装置に送信するデータ送信制御手段、として機能させるとともに、前記画像形成装置を構成するコンピュータを、前記情報処理端末から受信した認証データの正当性を検証する認証手段、前記認証手段において正当性が認められた場合、所定のユニークIDを前記画像形成装置の照合情報として設定するとともに、当該照合情報を前記情報処理端末に送信する照合情報設定送信手段、前記情報処理端末から受信した前記ドライバの照合情報が前記画像形成装置の照合情報と同一である場合に、当該画像形成装置を特定する所定の識別データを前記情報処理端末に送信する識別データ送信手段、前記情報処理端末から受信した実行データに基づき、所定のジョブを実行するジョブ実行手段、として機能させるためのプログラムとしてある。
【0011】
また、本発明のデータ送信制御プログラムは、前記通信プロトコルが、SNMPv1又はSNMPv2からなるようにしてある。
【0012】
このような構成からなる本発明のデータ送信制御プログラムによれば、画像形成装置と当該画像形成装置を制御する所定のドライバがインストールされた情報処理端末とから構成されるシステムにおいて、所定のジョブの実行に先立ち、まず、画像形成装置においてユーザIDやパスワード等による認証を行わせ、この認証により正当性が認められた場合のみユニークIDを設定するようにしている。
次に、このユニークIDを画像形成装置及びドライバの照合情報(例えばSNMPのコミュニティ名)として割り当てるようにしている。
ここで、SNMPv1又はSNMPv2では、マネージャーとエージェント間で通信を行う際、双方のコミュニティ名を比較し、係るコミュニティ名が同一の場合のみデータ送受信ができるようになっており、本発明においてもこの仕組みを採用するようにしている。
具体的には、照合情報が同一の場合、マネージャー側(又はエージェント側)の識別データ(装置名等)が、エージェント側(又はマネージャー側)に通知されることとなる。
【0013】
本発明においては、双方の照合情報はともに同じユニークIDによって割り当てられるため、必ず双方の照合情報は同一となる仕組みとなっている。このため、本来(初期)のコミュニティ名の異同にかかわらず、画像形成装置を特定する識別データは情報処理端末に通知されるようになっている。
そして、情報処理端末側では画像形成装置の識別データ(装置名等)と、当該情報処理端末にインストールされているドライバの識別データ(ドライバの名称等)とを比較し、対応する場合にのみ所定の実行データを画像形成装置に送信し、所定ジョブを実行させるようにしている。
【0014】
このように、本発明のデータ送信制御プログラムによれば、本来設定されているコミュニティ名が種々の理由により変更されたとしても、個別に設定された共通のユニークIDを照合情報として確認することにより、従来のようにコミュニティ名の違いにのみ起因するジョブの不実行は発生しなくなる。
一方、認証による正当性判断を予め行うようにしているため、一定のセキュリティを確保することもできるようになっている。
しかも、通信手順を構成する主なアルゴリズムは、従来から普及しているSNMPv1やSNMPv2を利用して実現することが可能となっている。
したがって、本発明のデータ送信制御プログラムを簡単に生成することができるとともに、本プログラムを各装置にインストールすることによって、利便性及び信頼性に優れたシステムを容易に実現することができる。
【0015】
また、本発明のデータ送信制御プログラムは、請求項3に記載するように、前記画像形成装置がFAX機能を備えるとともに、前記情報処理端末に前記画像形成装置にFAX機能を行わせるためのFAXドライバがインストールされ、前記情報処理端末のデータ送信制御手段は、前記比較手段で比較された前記画像形成装置からの識別データと前記ドライバが保持する識別データとが対応する場合、所定のFAXデータ及び宛先データを前記画像形成装置に送信する手段として機能させるとともに、前記画像形成装置のジョブ実行手段は、前記情報処理端末から受信したFAXデータ及び宛先データに基づき、FAX送信を実行する手段として機能させるためのプログラムとしてある。
【0016】
このような構成からなる本発明のデータ送信制御プログラムによれば、当該プログラムを情報処理端末や画像形成装置にインストールすることによって、情報処理端末で生成されたドキュメントを画像形成装置からそのままFAX送信させるPC−FAX機能に応用できるようになる。
このため、実用性に優れたシステムを構築し、提供できるようになる。
【0017】
更に、本発明のデータ送信制御プログラムは、請求項4に記載するように、前記比較手段で比較された前記画像形成装置からの識別データと前記ドライバが保持する識別データとが対応していない場合、所定のエラー通知を行うエラー通知手段、として機能させるためのプログラムとしてある。
【0018】
このような構成からなる本発明のデータ送信制御プログラムによれば、ドライバが保持する識別データと画像形成装置を特定する識別データとを比較し、双方が対応関係になかった場合には、エラー通知を行うようにしており、具体的には、ディスプレイ等にその旨を表示させ、知らせることができる。
このため、ユーザは、ジョブのエラー発生を事前に察知し、係る不具合を未然に防ぐことができるようになる。
したがって、本プログラムを各装置にインストールすることによって、より利便性、信頼性に優れたデータ送信制御システムを実現することが可能である。
【0019】
また、本発明のデータ送信制御プログラムは、請求項5に記載するように、前記ユニークIDは、前記認証データに含まれるユーザIDあるいはパスワード又は前記画像形成装置のIPアドレス、MACアドレスのうちのいずれか一以上のデータと日時データとを組み合わせて生成されるようになっている。
【0020】
このような構成からなる本発明のデータ送信制御プログラムによれば、ユニークIDは、アクセス時の日時データを含んで設定されるようになっている。
このため、そのアクセス時にのみ有効なIDを割り当てることができ、不正アクセスを確実に防止すること可能となっている。
【0021】
また、本発明のデータ送信制御システムは、請求項6に記載するように、画像形成装置と当該画像形成装置を制御する所定のドライバがインストールされた情報処理端末とから構成されるシステムであって、前記情報処理端末は、入力操作に応じて前記画像形成装置に対し当該情報処理端末の正当性を示す所定の認証データを送信する認証データ送信手段と、前記画像形成装置から受信した前記通信プロトコル上の所定の照合情報を前記ドライバの照合情報として設定するとともに、当該照合情報を前記画像形成装置に返信する照合情報設定返信手段と、前記画像形成装置から受信した当該画像形成装置を特定する所定の識別データと前記ドライバが保持する当該ドライバを特定する識別データとを比較する比較手段と、前記比較手段で比較された前記画像形成装置からの識別データと前記ドライバが保持する識別データとが対応する場合、所定の実行データを前記画像形成装置に送信するデータ送信制御手段と、を備え、前記画像形成装置は、前記情報処理端末から受信した認証データの正当性を検証する認証手段と、前記認証手段において正当性が認められた場合、所定のユニークIDを前記画像形成装置の照合情報として設定するとともに、当該照合情報を前記情報処理端末に送信する照合情報設定送信手段と、前記情報処理端末から受信した前記ドライバの照合情報が前記画像形成装置の照合情報と同一である場合に、当該画像形成装置を特定する所定の識別データを前記情報処理端末に送信する識別データ送信手段と、前記情報処理端末から受信した実行データに基づき、所定のジョブを実行するジョブ実行手段と、を備える構成としてある。
【0022】
このような構成からなる本発明は、上述のプログラムのみならずシステムとしても実現化することができる。
これにより、システムの構築や具現化の利便が図られるため、ユーザは簡易にシステムを導入し、早期に運用を開始することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、従来の通信プロトコルをベースに別の認証方法を併せて利用することによって、既存の装置を転用できるだけでなく、セキュリティも確保しながら、その円滑なジョブ実行制御が可能となる。
このため、本発明のデータ送信制御プログラムを各装置にインストールすることによって、利便性、安全性、信頼性、汎用性、及び拡張性に優れたデータ送信制御システムを実現化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施形態について図1〜図6を参照して説明する。
ここで、以下に示す本実施形態のデータ送信制御システムは、プログラム(ソフトウェア)の命令によりコンピュータで実行される処理,手段,機能によって実現される。プログラムは、コンピュータの各構成要素に指令を送り、以下に示すような所定の処理・機能を行わせる。すなわち、本実施形態のデータ送信制御システムにおける各処理・手段は、プログラムとコンピュータとが協働した具体的手段によって実現される。
なお、プログラムの全部又は一部は、例えば、磁気ディスク,光ディスク,半導体メモリ,その他任意のコンピュータで読取り可能な記録媒体により提供され、記録媒体から読み出されたプログラムがコンピュータにインストールされて実行される。また、プログラムは、記録媒体を介さず、通信回線を通じて直接にコンピュータにロードし実行することもできる。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係るデータ送信制御システムの機能構成を示すブロック図である。
図1に示すとおり、本実施形態のデータ送信制御システムは、一以上のPC(1a〜1c)、一以上の複合機(2A〜2B)及びこれらを接続するネットワーク3から構成される。
なお、各PC1には、FAXドライバ10が予めインストールされており、又、各複合機2は少なくともFAX機能を備えていれば各装置の性能が異なっていても良い。
そして、ユーザは、PC1において所定の入力操作を行うことで、FAXドライバ10から複合機2に様々な命令や要求が行われ、いわゆるPC−FAXが実行されるようになっている。
【0026】
図2は、本発明の一実施形態に係るデータ送信制御システムを構成するPCにインストールされたFAXドライバの機能を示したクラス図である。
図2に示すとおり、FAXドライバ10は、主に、FAXデータ生成手段101、装置名取得手段102、ドライバ名比較手段103及びエラー表示手段104から構成される。
【0027】
FAXデータ生成手段101は、アプリケーションからの印刷命令によって生成された描画データを、複合機2が処理できる画像データに変換するものである。
これにより、PC−FAXで実行されるFAXデータが生成されることとなる。
装置名取得手段102は、SNMP(Simple Network Management Protocol)、SOAP(Simple Object Access Protocol)、PJL(Printer Job Language)等の通信プロトコル、プリンタ制御言語などを利用して複合機2の装置名を取得するものである。
具体的には、複合機2で行われるコミュニティ名比較の結果、複合機2のコミュニティ名とFAXドライバ10のコミュニティ名が同一の場合に複合機2の装置名データがPC1側に送信され(本発明の識別データ送信手段)、これをFAXドライバ10の機能によって受信・取得するものである。
【0028】
ドライバ名比較手段103は、装置名取得手段102によって取得した複合機2の装置名とFAXドライバ10のドライバ名とを比較し、対応関係にあるか否かを判断するものであり、本発明の比較手段を構成する。
なお、ドライバ名と装置名が対応関係にある場合、FAXデータ生成手段で生成されたFAXデータ(宛先番号含む)が複合機2に送信され(本発明のデータ送信制御手段)、また、送信されたFAXデータは、複合機2のジョブ実行手段によって所定の宛先番号にFAX送信され、これによってユーザの目的は達成される。
【0029】
エラー表示手段104は、装置名取得に失敗した場合や、ドライバ名比較手段において複合機2の装置名とFAXドライバ10のドライバ名が違ったような場合に、エラー表示等を行うもので、本発明のエラー通知手段を構成するものである。
例えば、PC1や複合機2のディスプレイ等にその旨を表示させるようにすればよい。
【0030】
ところで、本実施形態に係るデータ送信制御システムは、PC−FAXの実行に先立ち、予め認証を行うようにしているところに特徴を有する。
具体的には、ユーザの入力操作に応じて、FAXドライバ10がユーザIDやパスワード等の認証データを複合機2に送信し(本発明の認証データ送信手段)、複合機2ではこの認証データを基に正当性が判断される(本発明の認証手段)。
認証手段において、アクセスの正当性が認められた場合には、ユニークIDを複合機2のコミュニティ名(照合情報)として別個に設定し、PC1側に送信するようにしている(本発明の照合情報設定送信手段)。
【0031】
照合情報設定送信手段によって、複合機2から送られてきたユニークIDは、PC1側で受信されると、そのFAXドライバ10のコミュニティ名として認識されるとともに、そのまま複合機2に返信される(本発明の照合情報設定返信手段)。これにより、FAXドライバ10のコミュニティ名と複合機2のコミュニティ名とは、本アクセスに限り常に同一のものとなる。
【0032】
また、本実施形態に係るデータ送信制御システムは、SNMPv1又はSNMPv2が機能しており、複合機2では、PC1側から受信したコミュニティ名と自己のコミュニティ名との照合を行うようにしている。そして、前述の通り、本発明の識別データ送信手段は、これらコミュニティ名が同一の場合には複合機2の識別データをPC1側に送信するようにしているため、所定の認証が認められた場合は、そのアクセスに限り、常に、複合機2を特定する識別データ(装置名)がPC1側に送信されることとなる。
このため、認証手段及びドライバ名比較手段により正当性が認められた場合には、デフォルトコミュニティ名の異同に係わらず、PC−FAXを確実に実行させることが可能となっている。
【0033】
次に、以上のような構成からなる本実施形態のデータ送信制御システムの動作手順について図面を参照しながら説明を行う。
図3は、本実施形態のデータ送信制御システムにおける動作手順を示したシーケンス図である。
ここでは、FAXドライバ10のコミュニティ名は「public」、複合機2のデフォルトコミュニティ名は「testcommunity」であり、FAXドライバ名は「KKKKK AAAA FAX Driver」、複合機2の装置名は、「KKKKK AAAA」に設定されているものとする。
【0034】
図3に示すとおり、まず、ユーザは、PC1側(PCにインストールされたFAXドライバ10)に対して印刷(FAX送信)要求を行うとともに、認証のためのユーザIDやパスワードを入力する(S1)。
これを受け、FAXドライバ10は、認証データとしてユーザIDやパスワードを複合機2に送信する(S2)。
具体的には、SOAP等を利用してユーザID「kkkkk12345」、パスワード「****」を複合機2に送信すると良い。
複合機2では、FAXドライバ10から受信した認証データに基づいて認証を行い(S3)、複合機2に予め登録されている被照合データと一致したならば、ユニークIDを自己のコミュニティ名として一時的に登録したうえで、FAXドライバ10に送り返す(S4)。
【0035】
ここで、ユニークIDは、ユーザID、パスワード、複合機2のIPアドレス、MACアドレス等に、アクセスの日時の情報を組み合わせることによって一意なデータを設定するようにすればよい。例えば、複合機2のMACアドレスが00-0B-DB-44-55-00、アクセス日時が2007/06/12の11時11分11秒とした場合のユニークIDは、これらの組み合わせ(MACアドレス+アクセス日時)により「000BDB44550020070612111111」とすることができる。
【0036】
次に、FAXドライバ10は、受信したユニークIDを自己のコミュニティ名として設定するとともに、複合機2に対して装置名取得要求を行う(S5)。
複合機2では、装置名取得要求とともに受信したFAXドライバ10のコミュニティ名と自己の装置に一時的に登録されたコミュニティ名とを比較し、双方のコミュニティ名が一致した場合のみ、自己の装置名データをFAXドライバ10に送信することとなる。
本実施形態に関しては、双方のコミュニティ名は必ず一致するため、この場合において、複合機2の装置名データは常にFAXドライバ10に送信されることとなる(S6)。具体的には、双方のコミュニティ名は、デフォルトコミュニティ名を認識せず、新たに設定されたID「000BDB44550020070612111111」をコミュニティ名として認識するため、複合機2の装置名「KKKKK AAAA」は必ずFAXドライバ10に送信されることとなる。
【0037】
FAXドライバ10は、複合機2の装置名データを受け取ると、そのFAXドライバ10に予め設定されている名称と一致するか否かを判断する(S7)。
具体的には、FAXドライバ10の名称「KKKKK AAAA FAX Driver」と、複合機2の名称「KKKKK AAAA」とを文字列比較する。し、「KKKKK AAAA」の文字列が一致するため、このFAXドライバ10は複合機2に対応したドライバと認識される。
ステップS7の結果、FAXドライバ10の名称と、複合機2の名称とが一致すると認められた場合、予めFAXデータ生成手段によって生成されたFAXデータが複合機2に送信され(S8)、その複合機2でFAX送信が実行される(S9)。
具体的には、FAXドライバ10の名称「KKKKK AAAA FAX Driver」と、複合機2の名称「KKKKK AAAA」とは、「KKKKK AAAA」の文字列部分が一致し、FAXドライバ10は複合機2に対応したドライバと認められることから、FAXデータが複合機2に送信され実行されることとなる。
【0038】
なお、前述の通り、ユニークIDは、複合機2及びFAXドライバ10の共通のコミュニティ名として一時的に認識されることとなるが、本アクセスに係るジョブ終了後は破棄するようにし、複合機2では元のデフォルトコミュニティ名に再設定されるようにするとよい。これにより、そのアクセス時のみにおいて有効なユニークIDが設定されることとなり、不正アクセスをより効果的に防ぐことが可能となる。
【0039】
ここで、本実施形態の特徴を、従来の通信手順と比較して説明する。
図4は、SNMPを利用した従来のFAX送信処理手順を説明するためのシーケンス図であり、正常なFAX送信処理が行われる例を示したものである。
ここでは、FAXドライバ10、複合機2のコミュニティ名はともに「public」であり、FAXドライバ名は「KKKKK AAAA FAX Driver」、複合機2の装置名は、「KKKKK AAAA」に設定されているものとする。
【0040】
図4に示すとおり、ユーザは、PC1にインストールされたFAXドライバ10に対してFAX送信要求を行う(S11)と、FAXドライバ10は複合機2に対して装置名取得要求を行う(S12)。
ここで、複合機2は、SNMP手順に基づき自己のコミュニティ名「public」とFAXドライバ10のコミュニティ名「public」を比較することとなる。
比較の結果、相互のコミュニティ名が一致することを確認すると、複合機2は、FAXドライバ10に対して装置名「KKKKK AAAA」を受け渡す(S13)。
【0041】
次に、FAXドライバ10は、受け取った複合機2の装置名「KKKKK AAAA」と自己のドライバ名「KKKKK AAAA FAX Driver」を比較する(S14)。
比較の結果、相互の名称(KKKKK AAAA)が一致することを確認すると、FAXドライバ10は、FAXデータを、ユーザID、パスワード、宛先番号とともに複合機2に送信する(S15)。
FAXデータ等を受信した複合機2は、ともに受信したユーザIDとパスワードがその複合機2に登録されたID、パスワードと一致しているか否か確認する(S16)。
その結果、ID、パスワードが一致していることが確認されると、複合機2は、係る宛先番号にFAX送信を実行するようにしている(S17)。
【0042】
次に、図5は、SNMPを利用した従来のFAX送信処理手順を説明するためのシーケンス図であり、正常にFAX送信処理が行われない一例を示したものである。
ここでは、FAXドライバ10、複合機2のコミュニティ名はともに「public」であり、FAXドライバ名は「KKKKK AAAA FAX Driver」、複合機2の装置名は、「KKKKK BBBB」に設定されているものとする。
【0043】
図5に示すとおり、ユーザは、PC1にインストールされたFAXドライバ10に対してFAX送信要求を行う(S21)と、FAXドライバ10は複合機2に対して装置名取得要求を行う(S22)。
【0044】
ここで、複合機2は、前述の図4の場合と同様、SNMP手順に基づき自己のコミュニティ名「public」とFAXドライバ10のコミュニティ名「public」を比較することとなるが、相互のコミュニティ名が一致することを確認すると、複合機2が、FAXドライバ10に対して装置名「KKKKK BBBB」を受け渡す(S23)。
そして、FAXドライバ10は、受け取った複合機2の装置名「KKKKK BBBB」と自己のドライバ名「KKKKK AAAA FAX Driver」を比較し、その結果、相互の名称が一致しないことを確認する(S24)と、FAX送信できない旨のエラー表示を行うこととしている(S25)。
【0045】
また、図6は、SNMPを利用した従来のFAX送信処理手順を説明するためのシーケンス図であり、正常にFAX送信処理が行われない他の例を示したものである。
これは、図5と同様に正常にFAX送信できない例だが、コミュニティ名の相違に起因してFAX送信が制限されるケースを示したものである。
ここでは、FAXドライバ10のコミュニティ名は「public」、複合機2のコミュニティ名は「testcommunity」であり、FAXドライバ名は「KKKKK AAAA FAX Driver」、複合機2の装置名は、「KKKKK AAAA」に設定されているものとする。
【0046】
図6に示すとおり、ユーザは、PC1にインストールされたFAXドライバ10に対してFAX送信要求を行う(S31)と、FAXドライバ10は複合機2に対して装置名取得要求を行う(S32)。
【0047】
ここで、複合機2は、SNMP手順に基づき自己のコミュニティ名「testcommunity」とFAXドライバ10のコミュニティ名「public」を比較することとなる。
比較の結果、相互のコミュニティ名が一致しないことを確認すると、複合機2は、FAXドライバ10に対して装置名「」(空白)を受け渡す(S33)。
次に、FAXドライバ10は、受け取った複合機2の装置名「」と自己のドライバ名「KKKKK AAAA FAX Driver」を比較し、その結果、相互の名称が一致しないことを確認する(S34)と、FAX送信できない旨のエラー表示を行うこととしている(S35)。
【0048】
このように、図4乃至図6で示す従来の通信手順においては、ドライバ、複合機の双方のコミュニティ名や名称が一致しない限りエラーとなり、所望のジョブが実行されない煩わしさがあったが、本実施形態に係るデータ送信制御システムにおいては、係る問題点を改善している。
具体的には、別の認証手段によってアクセスの正当性が認められた場合には、別個に共通のコミュニティ名を一時的に設定し、そのアクセス時においては、双方のコミュニティ名が不一致にならないようにし、例え、双方のデフォルトコミュニティ名が異なる場合であってもエラーが発生せず、円滑な実行が遂行できるようになっている。
【0049】
以上説明したように、本実施形態のデータ送信制御システムによれば、SNMPv1又はSNMPv2と、所定の認証機能とを組み合わせた通信手順を利用するようにしている。
そして、ユーザ認証によって一定の正当性が認められた場合には、コミュニティ名(ユニークID)を個別に設定し、マネージャー側のコミュニティ名とエージェント側のコミュニティ名とが常に一致するようにしてある。
【0050】
このため、セキュリティ向上のためにデフォルトコミュニティ名が変更された場合であっても、コミュニティ名の相違のみを理由とするジョブエラーの発生を回避することができる。
したがって、これまでの通信プロトコルを利用しつつ、一定のセキュリティを保持しながら円滑にジョブが実行され、利便性、安全性、信頼性、拡張性及び汎用性に優れたデータ送信制御システム等を実現することが可能となる。
【0051】
以上、本発明のデータ送信制御プログラム及びデータ送信制御システムについて、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明にかかるデータ送信制御システムは、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、本発明の情報処理端末としてパーソナルコンピュータ、画像形成装置として複合機を例に取って説明したが、本発明に係る情報処理端末、画像形成装置としては、PC、複合機に限定されるものではなく、FAX機能等の所望のデータ送信機能を実行可能な情報処理端末及び画像形成装置であれば、PDA等の情報処理端末、プリンタやFAX専用機等の画像形成装置など、他の端末、装置等であっても良い。このように、本発明によれば、拡張性がさらに優れたデータ送信制御システムを実現することが可能となる。
【0052】
また、本発明で実行可能な画像処理機能として、上記実施形態ではFAX機能(PC−FAX)を例にとって示したが、本発明に係るデータ送信制御は、FAX機能以外の機能についても好適に利用できる。例えば、PC側のプリンタドライバでMFP(複合機)の機器情報を取得するような場合にも、本発明は好適である。
また、装置名とドライバ名の対応関係を照合するための通信プロトコルとして、上記実施形態ではSNMPのv1及びv2を示したが、本発明は他の通信プロトコルについて適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、FAXドライバがインストールされた情報処理端末とFAX機能を備えた画像形成装置とからなるシステムに好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係るデータ送信制御システムの機能構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るデータ送信制御システムを構成するPCにインストールされたFAXドライバの機能を示したクラス図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るデータ送信制御システムにおける動作手順を示したシーケンス図である。
【図4】従来のFAX送信処理手順を説明するためのシーケンス図(正常なFAX送信処理が行われる例)である。
【図5】従来のFAX送信処理手順を説明するためのシーケンス図(正常にFAX送信処理が行われない一例)である。
【図6】従来のFAX送信処理手順を説明するためのシーケンス図(正常にFAX送信処理が行われない他の例)である。
【符号の説明】
【0055】
1 パーソナルコンピュータ(PC)
10 FAXドライバ
2 複合機
3 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置と当該画像形成装置を制御する所定のドライバがインストールされた情報処理端末とから構成されるシステムにおいて、所定の通信プロトコルにより前記画像形成装置及び情報処理端末間で行うデータ送受信を制御するデータ送信制御プログラムであって、
前記情報処理端末を構成するコンピュータを、
入力操作に応じて前記画像形成装置に対し当該情報処理端末の正当性を示す所定の認証データを送信する認証データ送信手段、
前記画像形成装置から受信した前記通信プロトコル上の所定の照合情報を前記ドライバの照合情報として設定するとともに、当該照合情報を前記画像形成装置に返信する照合情報設定返信手段、
前記画像形成装置から受信した当該画像形成装置を特定する所定の識別データと前記ドライバが保持する当該ドライバを特定する識別データとを比較する比較手段、
前記比較手段で比較された前記画像形成装置からの識別データと前記ドライバが保持する識別データとが対応する場合、所定の実行データを前記画像形成装置に送信するデータ送信制御手段、として機能させるとともに、
前記画像形成装置を構成するコンピュータを、
前記情報処理端末から受信した認証データの正当性を検証する認証手段、
前記認証手段において正当性が認められた場合、所定のユニークIDを前記画像形成装置の照合情報として設定するとともに、当該照合情報を前記情報処理端末に送信する照合情報設定送信手段、
前記情報処理端末から受信した前記ドライバの照合情報が前記画像形成装置の照合情報と同一である場合に、当該画像形成装置を特定する所定の識別データを前記情報処理端末に送信する識別データ送信手段、
前記情報処理端末から受信した実行データに基づき、所定のジョブを実行するジョブ実行手段、として機能させるためのデータ送信制御プログラム。
【請求項2】
前記通信プロトコルが、SNMPv1又はSNMPv2からなることを特徴とする請求項1のデータ送信制御プログラム。
【請求項3】
前記画像形成装置がFAX機能を備えるとともに、前記情報処理端末に前記画像形成装置にFAX機能を行わせるためのFAXドライバがインストールされ、
前記情報処理端末のデータ送信制御手段は、
前記比較手段で比較された前記画像形成装置からの識別データと前記ドライバが保持する識別データとが対応する場合、所定のFAXデータ及び宛先データを前記画像形成装置に送信する手段として機能させるとともに、
前記画像形成装置のジョブ実行手段は、
前記情報処理端末から受信したFAXデータ及び宛先データに基づき、FAX送信を実行する手段として機能させることを特徴とする請求項1又は2のデータ送信制御プログラム。
【請求項4】
前記比較手段で比較された前記画像形成装置からの識別データと前記ドライバが保持する識別データとが対応していない場合、所定のエラー通知を行うエラー通知手段、として機能させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかのデータ送信制御プログラム。
【請求項5】
前記ユニークIDは、前記認証データに含まれるユーザIDあるいはパスワード又は前記画像形成装置のIPアドレス、MACアドレスのうちのいずれか一以上のデータと日時データとを組み合わせることによって生成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかのデータ送信制御プログラム。
【請求項6】
画像形成装置と当該画像形成装置を制御する所定のドライバがインストールされた情報処理端末とから構成されるシステムであって、
前記情報処理端末は、
入力操作に応じて前記画像形成装置に対し当該情報処理端末の正当性を示す所定の認証データを送信する認証データ送信手段と、
前記画像形成装置から受信した前記通信プロトコル上の所定の照合情報を前記ドライバの照合情報として設定するとともに、当該照合情報を前記画像形成装置に返信する照合情報設定返信手段と、
前記画像形成装置から受信した当該画像形成装置を特定する所定の識別データと前記ドライバが保持する当該ドライバを特定する識別データとを比較する比較手段と、
前記比較手段で比較された前記画像形成装置からの識別データと前記ドライバが保持する識別データとが対応する場合、所定の実行データを前記画像形成装置に送信するデータ送信制御手段と、を備え、
前記画像形成装置は、
前記情報処理端末から受信した認証データの正当性を検証する認証手段と、
前記認証手段において正当性が認められた場合、所定のユニークIDを前記画像形成装置の照合情報として設定するとともに、当該照合情報を前記情報処理端末に送信する照合情報設定送信手段と、
前記情報処理端末から受信した前記ドライバの照合情報が前記画像形成装置の照合情報と同一である場合に、当該画像形成装置を特定する所定の識別データを前記情報処理端末に送信する識別データ送信手段と、
前記情報処理端末から受信した実行データに基づき、所定のジョブを実行するジョブ実行手段と、を備えることを特徴とするデータ送信制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−32017(P2009−32017A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195014(P2007−195014)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】