説明

トップ−エミッション型OLEDのための乾燥剤

トップ-エミッション型OLEDデバイスの水分汚染を減らす方法は、上面(110)と底面(120)を有する基板を用意し;上記基板の上面の上方に、光を発生させるトップ-エミッション型ELユニット(130)を形成するが、その光が主にその基板を通過することはなく;上記基板の上面の上方に第1の保護カバー(140)を形成し、その基板の底面の下方に第2の保護カバー(160)を形成することにより、それぞれ第1のチェンバー(150)と第2のチェンバー(170)を画定し;上記第2のチェンバーに水分吸収材料(180)を組み合わせ;上記第1のチェンバーと上記第2のチェンバーを連通させる(190)ことにより、上記第1のチェンバーまたは第2のチェンバーに含まれる水分を上記水分吸収材料によって吸収させる操作を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OLEDデバイスを水分から保護することに関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード・デバイス(OLEDデバイスとも呼ばれる)は、一般に、基板と、アノードと、有機化合物からなる正孔輸送層と、適切なドーパントを含む有機発光層と、有機電子輸送層と、カソードを備えている。OLEDデバイスが魅力的なのは、駆動電圧が低く、高輝度で、視角が広く、フル・カラーのフラット発光ディスプレイが可能だからである。Tangらは、この多層OLEDデバイスをアメリカ合衆国特許第4,769,292号と第4,885,211号に記載している。
【0003】
光が基板を通過して下方に出るボトム-エミッション型ディスプレイでは、発光可能な全面積は、基板上に不透明な回路(例えば薄膜トランジスタ(TFT))が存在していることによって制限される。その結果、光を出すのに利用できる空いた面積が少なくなる。光が主として基板とTFT回路の上面を通過して出るようにされたトップ-エミッション型デバイス構造では、発光面積を従来のボトム-エミッション型デバイスよりもはるかに広くすることができる。したがってトップ-エミッション型または表面発光型のOLEDディスプレイを製造するために多くの研究がなされてきた。この構成は、ボトム-エミッション型OLEDと比べてディスプレイの性能を向上させる可能性を持っている。
【0004】
OLEDディスプレイに共通する1つの問題は、水分に敏感であることである。典型的なエレクトロニクス・デバイスでは、デバイスの所定の動作寿命/保管寿命が尽きるよりも先にデバイスの性能が低下するのを防ぐため、水分のレベルが約2500〜5000ppmの範囲になっている必要がある。包装されたデバイスの内部で水分のレベルがこの範囲になるように環境を制御するには、デバイスを封止したり、デバイスと乾燥剤をカバーの内部に入れて密封したりする。乾燥剤(例えば分子篩材料、シリカゲル材料、一般にドリーライトと呼ばれる材料)を用いて水分のレベルを上記の範囲内に維持する。水分に極めて敏感なエレクトロニクス・デバイス(例えば有機発光デバイス(OLED)や有機発光パネル)では、水分を約1000ppm未満に制御する必要がある。そのためにはOLEDディスプレイの周囲を例えば気密シールによって封止してOLEDディスプレイに水分が侵入しないようにする必要がある。しかし気密にすることは、極めて難しかったり、高価になったりする。ほぼ気密にするのでは、水分に敏感なこのようなデバイスにとって不十分なことが頻繁にあるため、非常に活性な水分吸収材料を付属させねばならないことがしばしばある。
【0005】
封鎖または封止したエレクトロニクス・デバイスの内部における水分のレベルを制御する方法および/または材料が、多数の刊行物に記載されている。Kawamiらは、アメリカ合衆国特許第5,882,761号において、OLEDディスプレイの有機層の上方において基板と上面シールの間に乾燥剤層を用いることを教示している。Kawamiらは、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、硫酸塩、金属ハロゲン化物、過塩素酸塩などの乾燥剤を使用することを教示している。このような材料は、真空蒸着、スパッタリング、スピン-コーティングなどの方法で所定の形状に堆積させることができる。Borosonらは、アメリカ合衆国特許第6,226,890号において、上記の乾燥剤と適切な結合剤の成形可能混合物を使用することを開示している。しかし多くの乾燥剤はOLEDデバイスの各層および電極と反応する可能性があるため、乾燥剤がOLEDの各構成要素と接触しないようにする方法が多数提案されている。Kawamiらは、'761号特許において、気密容器の内面を乾燥剤で覆うことを教示している。Borosonらは、'890号特許において、密封容器の内面を覆うために成形可能な上記混合物を用いている。これらの方法は、追加の材料と作業を必要とする。
【0006】
さらに、上記の2つの特許に記載されている構成では、不透明な層をデバイスの有機層の上方に配置する必要がある。この構成はボトム-エミッション型では許容できるが、トップ-エミッション型OLEDディスプレイでは、発光の一部または全部が阻止されるために利用できない。
【0007】
Tsuruokaらは、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0110981において、化学吸着によって機能し、OLEDディスプレイで使用できる一連の透明な乾燥剤を開示している。乾燥剤層を光が透過できることが望ましいOLEDデバイスでは、こうすることが有効であると考えられる。しかし乾燥剤(特に化学吸着式の乾燥剤)は、水分の存在下で変化するように設計されている。したがってデバイスの光路の性質がデバイスの寿命が尽きるまでの間に変化し、ディスプレイの見え方が変化する可能性がある。そのためこの方法の有効性が制限される可能性がある。
【0008】
トップ-エミッション型ディスプレイで上記の問題を回避するための可能な1つの方法は、有機層の周辺に乾燥剤のリングを置くことであった。こうすると、乾燥剤がデバイスの外側シールの近くという非常に好ましい位置に来て、その外側シールを通過する水分は、まず最初に必ずその乾燥剤リングと遭遇する。しかしこの方法には望ましくない副作用があり、ディスプレイの面積が増えないのにデバイスのサイズが大きくなったり、乾燥剤の量が制限されるためにディスプレイの面積増加が最少になったりする。したがってこの方法を利用したトップ-エミッション型デバイスは、同等なボトム-エミッション型デバイスよりも著しく大きくなったり、著しく少ない乾燥剤を含むことになったりする。それは、用途によっては許容できない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって本発明の1つの目的は、トップ-エミッション型OLEDディスプレイの光路を妨げず、そのディスプレイの成分が乾燥剤で汚染されたり乾燥剤と反応したりするリスクをなくし、そのディスプレイの非発光面積が増えないようにしつつ、そのディスプレイの水分汚染を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、トップ-エミッション型OLEDデバイスの水分汚染を減らす方法であって、
a)上面と底面を有する基板を用意し;
b)上記基板の上面の上方に、光を発生させるトップ-エミッション型ELユニットを形成するが、その光が主にその基板を通過することはなく;
c)上記基板の上面の上方に第1の保護カバーを形成し、その基板の底面の下方に第2の保護カバーを形成することにより、それぞれ第1のチェンバーと第2のチェンバーを画定し;
d)上記第2のチェンバーに水分吸収材料を組み合わせ;
e)上記第1のチェンバーと上記第2のチェンバーを連通させることにより、上記第1のチェンバーまたは第2のチェンバーに含まれる水分を上記水分吸収材料によって吸収させる操作を含む方法によって達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の1つの利点は、完全な気密シールを必要とすることなく、トップ-エミッション型OLEDディスプレイを形成できることである。本発明のさらに別の利点は、トップ-エミッション型OLEDディスプレイの寿命を維持するために選択する乾燥剤の光学的特性に制約がないことである。本発明のさらに別の利点は、選択する乾燥剤が、水分を吸収した後に固体に留まる材料に限定されないことである。本発明のさらに別の利点は、トップ-エミッション型OLEDディスプレイの中に閉じ込められている乾燥剤が水分を吸収することによってディスプレイの光学的特性が変化しないことである。本発明のさらに別の利点は、狭いシールを備えるトップ-エミッション型OLEDディスプレイが可能になるため、トップ-エミッション型OLEDディスプレイをボトム-エミッション型デバイスと同じ面積にできる可能性があることである。本発明のさらに別の利点は、水分に対する大きな収容力を持つOLEDを製造しても乾燥剤を収容したディスプレイのサイズが大きくならないことである。本発明のさらに別の利点は、OLEDの有機層および/または電極と接触または化学反応するリスクなしに乾燥剤を使用できることである。本発明のさらに別の利点は、複数のトップ-エミッション型複合OLEDディスプレイを同時に製造するための方法で利用できることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
デバイスの特徴的なサイズ(例えば層の厚さ)は1μm未満の範囲であることがしばしばあるため、図面は、サイズを正確にというよりは、見やすくなるように描いてある。
【0013】
“OLEDデバイス”または“有機発光ディスプレイ”という用語は、従来技術で使用されているように、画素として有機発光ダイオードを備えるディスプレイ装置を意味する。カラーOLEDデバイスは、少なくとも一色の光を出す。“マルチカラー”という用語は、異なる領域に異なる色相の光を出すことのできるディスプレイ・パネルを記述するのに用いる。この用語は、特に、いろいろな色の画像を表示することのできるディスプレイ・パネルを記述するのに用いる。領域は、必ずしも互いに連続している必要はない。“フル・カラー”という用語は、一般に、可視スペクトルの赤色領域と緑色領域と青色領域で光を出すことができて、色相を任意に組み合わせた画像を表示できるマルチカラー・ディスプレイ・パネルを記述するのに用いる。赤、緑、青は三原色を構成し、その三原色を適切に混合することによって他のあらゆる色を作り出すことができる。しかし追加の色を使用してデバイスの色域を広げることが可能である。“色相”という用語は、可視スペクトル内の発光の強度プロファイルを意味する。色相が異なると、目で見て色の違いを識別することができる。“画素”という用語は、従来技術で使用されているように、ディスプレイ・パネルのある領域であって、刺激することによって他の領域とは独立の光を出すことのできる領域を示すのに用いる。“ボトム-エミッション型”という用語は、ベースとなる基板を通過した発光を見るディスプレイ装置を意味する。“トップ-エミッション型”という用語は、光が主に基板を通過して出ることはなく、基板とは反対側から出るため、その光を基板とは反対側から見るディスプレイ装置を意味する。
【0014】
“水分に対して非常に敏感なエレクトロニクス・デバイス”という用語は、周囲にある水分のレベルが1000ppmを超えたときに測定できるほど性能が低下する可能性のあるエレクトロニクス・デバイスを指すのに用いる。“基板”という用語は、水分に対して非常に敏感な1つ以上のエレクトロニクス・デバイスを表面上に製造するための有機固体、または無機固体、または有機固体と無機固体の組み合わせを指すのに用いる。“封止材料”という用語は、封止用囲いを基板と結合させ、水分に対して非常に敏感な1つ以上のエレクトロニクス・デバイスを水分から保護するのに用いる有機材料、または無機材料、または有機材料と無機材料の組み合わせを指すのに用いる。そのため封止材料を水分が通過することが阻止または制限される。“ギャップ”という用語は、1つ以上のエレクトロニクス・デバイスを取り囲んでいる封止材料の中に存在する不連続性を指すのに用いる。“水分吸収材料”という用語は、水分が存在していると水分に対して非常に敏感なエレクトロニクス・デバイスが傷むため、その水分を物理的または化学的に吸収したり、その水分と反応させたりするのに用いる有機材料または無機材料を指すのに用いる。
【0015】
ここで図1を参照すると、OLEDデバイスの水分汚染を減らすためにKawamiらがアメリカ合衆国特許第5,882,761号に記載している従来の装置が示してある。OLEDデバイス10では、アノード40と、有機層50と、カソード60とを有する発光エレクトロルミネッセンス(EL)ユニット30が、基板20の上に形成されている。水分吸収材料70をガラス封止ケース80の内部に配置することができる。水分吸収材料70とELユニット30は、封止剤90によって外部に対して気密にすることができる。OLEDデバイス10はボトム-エミッション型である。すなわち光25が基板20を通過して出て行く。水分吸収材料70に用いられる多くの材料は不透明である。したがってこの構造は、トップ-エミッション型デバイスの水分汚染を減らすには一般に有効でない。
【0016】
ここで図2を参照すると、本発明のトップ-エミッション型OLEDデバイスの水分汚染を減らすのに使用できる装置の一実施態様が示してある。トップ-エミッション型OLEDデバイス100は、上面110と底面120を有する基板20を備えている。トップ-エミッション型エレクトロルミネッセンス(EL)ユニット130が基板20の上面110に形成されている。ELユニット130は、水分に対して非常に敏感なエレクトロニクス・デバイスである。ELユニット130はトップ-エミッション型である。すなわちOLEDデバイス100の上部を通じて光(例えば光105)が出る。OLEDデバイス100の材料は、基板20の方向に発生するあらゆる光が反射または吸収されて基板20を通過することがないように選択される。
【0017】
基板20は、有機固体、または無機固体、または有機固体と無機固体の組み合わせにすることができる。基板20は堅固でも可撓性があってもよく、独立した個別の部材(例えばシートやウエハ)として処理すること、または連続したロールとして処理することができる。典型的な基板材料としては、ガラス、プラスチック、金属、セラミック、半導体、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物、半導体酸化物、半導体窒化物、半導体硫化物、炭素、またはこれらの組み合わせ、またはOLEDデバイス(パッシブ-マトリックス・デバイスでもアクティブ-マトリックス・デバイスでもよい)を形成するのに一般に用いられる他のあらゆる材料がある。基板20は、諸材料の均一な混合物、諸材料の複合体、諸材料の多層体のいずれかにすることが可能である。基板20は、OLEDデバイスの製造で一般に使用される基板であるOLED基板(例えばアクティブ-マトリックス低温ポリシリコン基板、またはアモルファス-シリコンTFT基板)にすることができる。上部電極を通してEL光を見る用途では、底部支持体の透光特性は重要ではないため、底部支持体は、透光性、光吸収性、光反射性のいずれでもよい。
【0018】
基板20は、基板の上面110と基板の底面120の間で水分をやり取りする手段(例えば基板20を貫通する通路190)を備えている。別の一実施態様では、基板20またはその一部が、蒸気の形態または液体の形態になった水分が透過できるようにされているため、連通状態が実現される。この場合には、通路190は使用されない。
【0019】
ELユニット130は、場合によっては保護層195で封止した後、基板20の上面110の上方に保護カバーを形成することができる。保護層195は、無機材料、または有機材料、または無機材料と有機材料の組み合わせのうちで、導電率が小さくて優れた熱抵抗を持ち、付着させた面によく接着し、保護層195を基板20の表面全体に付着させた場合には封止材料にもよく接着する任意のものを選択することができる。保護層195は、その下にある層を、接合ステップの間に発生する高温によって起こる望ましくない化学反応や物理的変化から保護する。なお接合ステップについては、あとで詳しく説明する。保護層195は、気密にする全領域に付着させると、続く製造ステップで処理を行なっている間を通じて敏感なOLEDユニットを保護するとともに、接合ステップの前後に敏感なOLEDユニットが水分に曝露されないようにすることができる。
【0020】
保護層の材料をいくつか例示すると、金属酸化物(例えばアルミニウム酸化物);金属窒化物;金属オキシ窒化物;ダイヤモンド様炭素;半導体酸化物(例えば二酸化ケイ素);半導体窒化物(窒化ケイ素);半導体オキシ窒化物(例えばオキシ窒化ケイ素);多層材料(例えばヴィテックス社から供給されているアルミニウム酸化物/アクリレート・ポリマー);ポリマー層(ペリレン、エポキシ、ポリエステル、ポリオレフィンなど);有機化合物または有機金属化合物(例えばアルミニウムトリスオキシン(AlQ)、4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB));有機材料、または無機材料、または無機材料と有機材料の組み合わせからなる多層;これらの任意の組み合わせがある。保護層195は一般に、10〜数百ナノメートルの厚さにされる。
【0021】
保護層用の材料からなる層を気相から形成するための有用な方法としては、熱による物理的蒸着、スパッタリング蒸着、電子ビーム蒸着、化学蒸着、プラズマ支援化学蒸着、レーザー誘導化学蒸着、原子層蒸着、スクリーン印刷、スピン・コーティングなどがある。保護層用の材料は、溶液や別の流動化マトリックス(例えばCO2の超臨界溶液)から堆積させることができる場合がある。デバイスの性能に悪い影響が及ばない溶媒または流体マトリックスを選択するよう注意せねばならない。材料のパターニングは多くの手段で実現することができる。例えばフォトリソグラフィ、リフト-オフ法、レーザー除去、シャドウ・マスク法などがある。
【0022】
第1の保護カバー140は基板の上面110に形成することができる。第1の保護カバー140は、有機固体、または無機固体、または有機固体と無機固体の組み合わせにすることができる。第1の保護カバー140は堅固でも可撓性があってもよく、独立した個別の部材(例えばシートやウエハ)として処理すること、または連続したロールとして処理することができる。保護カバー用の典型的な材料としては、ガラス、プラスチック、金属、セラミック、半導体、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物、半導体酸化物、半導体窒化物、半導体硫化物、炭素、またはこれらの組み合わせがある。トップ-エミッション型ELユニット130上で第1の保護カバー140がある部分は透明だが、OLEDデバイス100の非発光領域を覆っている部分は不透明にすることができる。第1の保護カバー140は、諸材料の均一な混合物、諸材料の複合体、諸材料の多層体、複数材料の組立体(例えば不透明なフレームを有する透明な窓)のいずれかにすることが可能である。
【0023】
第1の保護カバー140はさらに、OLEDデバイス100または発生する光105に望ましい性質を付与するために1つ以上の光学的に活性な層を含むことができる。光学的に活性な有用な層の例として、出る光の波長を制限するカラー・フィルタ・アレイ、ある範囲の波長を別の範囲の波長に変換する色変更モジュール(例えば蛍光層)、あらゆる内部反射に起因する損失を制限するための光抽出層、反射防止層、偏光層などがある。
【0024】
上部封止材料165が個々のELユニット130を取り囲んでいるが、最終製品が単一の素子内に2つ以上のELユニットを必要とする場合には、その封止材料が2つ以上のELユニットからなるグループも取り囲むことができる。さらに、それぞれのELユニット130またはELユニットのグループを取り囲む封止材料は、ギャップを含んでいない。そのためELユニット130を水分から保護した後、より小さな単一のデバイス・エレメントまたは複数のデバイス・エレメントに分割する。上部封止材料165は、有機固体、または無機固体、または有機固体と無機固体の組み合わせにすることができる。有機封止材料としては、エポキシ、ポリウレタン、アクリレート、シリコーン、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、またはこれらの組み合わせがある。無機封止材料としては、ガラス、セラミック、金属、半導体、金属酸化物、半導体酸化物、金属ハンダ、またはこれらの組み合わせがある。封止材料は、接合ステップにおいて、プレス、溶融と冷却、反応硬化、これらの組み合わせのいずれかにより、基板20と第1の保護層140を接合することができる。圧力によって接合される典型的な材料として、感圧性接着剤などがある。溶融と冷却によって接合される典型的な材料として、ガラス;ホット・メルト接着剤(例えばポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、またはこれらの組み合わせ);無機ハンダ(例えばインジウム、スズ、鉛、銀、金、またはこれらの組み合わせ)などがある。典型的な反応硬化法として、熱、照射(例えばUV照射)、2種類以上の成分の混合、周囲にある水分への曝露、周囲にある酸素の除去、またはこれらの組み合わせなどによって生じる反応がある。反応硬化によって接合される典型的な材料として、アクリレート、エポキシ、ポリウレタン、シリコーン、またはこれらの組み合わせなどがある。封止材料として一般に使用される他の無機材料としては、ガラス、セラミック、金属、半導体、金属酸化物、半導体酸化物、またはこれらの組み合わせなどがある。第1の保護カバー140、基板の上面110、第1の保護カバー140と基板20の間にある封止材料165(または他の囲い込み材料)が、第1のチェンバー150を画定しており、その中には、トップ-エミッション型ELユニット130が含まれ、使用される場合には保護層195も含まれている。いくつかの実施態様では、チェンバー150の空間にポリマー緩衝層も含まれていてよい。ポリマー緩衝層は、任意の材料(UV硬化エポキシ樹脂、熱硬化エポキシ樹脂、アクリレート、感圧性接着剤)にすることができる。ポリマー緩衝層は、保護層としても機能する。有用なUV硬化エポキシ樹脂の一例は、エレクトロニック・マテリアルズ社のオプトキャスト3505である。有用な感圧性接着剤の一例は、3M社のOptically Clear Laminating Adhesive(光学的に透明な積層用接着剤)8142である。
【0025】
第2の保護カバー160は、基板の底面120の下方に形成することができる。第2の保護カバー160は、第1の保護カバー140のための上記材料のうちの任意のものを含むことができるが、第2の保護カバー160の透明性は重要でない。底部封止材料175は、上部封止材料165と同じ材料の中から選択でき、上部封止材料165と同じ方法を選択して基板20と第2の保護カバー160を接合する。第2の保護カバー160、基板の底面120、保護カバー160と基板20の間の底部封止材料175が、第2のチェンバー170を画定している。第2のチェンバー170と底部封止材料175は、第1のチェンバー150および上部封止材料165と同時に形成すること、またはこれら2つのチェンバーを順番に形成して封止することができる。
【0026】
水分吸収材料180(乾燥剤としても知られている)は、第2のチェンバー170に組み合わされる。水分吸収材料180は、水分が存在していると水分に対して非常に敏感なELユニット130が傷むため、その水分を物理的または化学的に吸収したり、その水分と反応させたりするのに用いる。典型的な水分吸収材料として、金属(アルカリ金属(例えばLi、Na)、アルカリ土類金属(例えばBa、Ca)、水分と反応する他の金属(例えばAl、Fe)など);アルカリ金属酸化物(例えばLi2O、Na2O);アルカリ土類金属酸化物(例えばMgO、CaO、BaO);硫酸塩(例えば無水MgSO4);金属ハロゲン化物(例えばCaCl2);過塩素酸塩(例えばMg(ClO4)2);分子篩;Takahashiらによるアメリカ合衆国特許第6,656,609号とTsuruokaらによるアメリカ合衆国特許出願2003/0110981に記載されている有機金属化合物(例えば
【化1】

(ただし、R1、R2、R3の選択は、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、複素環式基、アシル基のうちで炭素原子を1個以上有するものからなるグループの中からなされ、Mは3価の金属原子である);以下の一般式で表わされるタイプの有機金属化合物:
【化2】

(ただし、R1、R2、R3、R4、R5の各選択は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、複素環式基、アシル基のうちで炭素原子を1個以上有するものからなるグループの中からなされ、Mは3価の金属原子である);以下の一般式で表わされるタイプの有機金属化合物:
【化3】

(ただし、R1、R2、R3、R4の各選択は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、複素環式基、アシル基のうちで炭素原子を1個以上有するものからなるグループの中からなされ、Mは4価の金属原子である));仕事関数が4.5eV未満であって水分の存在により酸化され得る金属;これらの組み合わせなどがある。水分吸収材料は、水分透過性容器または水分透過性結合剤の中に封入することができる。水分吸収材料は、単一の材料、諸材料の均一な混合物、諸材料の複合体、諸材料の多層体のいずれかにすることが可能である。水分吸収材料は、蒸気または溶液から堆積させること、または多孔性マトリックス(透過性パッケージまたは透過性テープ)として提供することができる。特に有用な水分吸収材料としては、Borosonらのアメリカ合衆国特許第6,226,890号に記載されているように、パターニングできるポリマー・マトリックスとして提供されるものがある。水分吸収材料180は、基板20の上に設けること、または第2の保護カバー160の上または中に設けることができる。第1のチェンバー150と第2のチェンバー170を連通させる手段(例えば通路190、または水分透過性基板20)により、第1のチェンバー150または第2のチェンバー170の水分を水分吸収材料180に吸収させることができる。
【0027】
第1の保護カバー140と第2の保護カバー160を基板20に対して気密にするとき、デバイス内にガスが捕捉されるために内部の圧力が大きくなる可能性がある。そのことは、Borosonらにより、アメリカ合衆国特許出願第09/957,851号、アメリカ合衆国特許第6,470,594号、第6,594,916号、第6,590,157号において認識されている。圧力上昇を阻止するためにBorosonらが記載している方法を本発明に適用することができる。
【0028】
例えば第1の保護カバー140と第2の保護カバー160の一方または両方が、過剰な内部ガスを逃がすための通気穴を備えることができる。通路190が基板20の中に存在している場合には、その通路が通気穴として機能することができるため、一方の保護カバーを封止する。そのため通気穴を備えた保護カバーは1つしか必要ない。接合ステップの後、通気穴を通気穴封止材料で塞ぐ。通気穴封止材料は、上部封止材料165と同じでも異なっていてもよい。適切な通気穴封止材料の例は、接着剤、ハンダ、テープ、接着剤で接合した多層積層体、接着剤で接合した複数の無機カバーである。
【0029】
別の一実施態様では、保護カバーと基板20の間に1つ以上のギャップが残るように封止材料(例えば上部封止材料165)を配置する。過剰な内部ガスは、接合ステップの間にそのギャップを通って出て行くことができる。そのギャップは、接合ステップが終了した後に封止することができる。別の一実施態様では、ギャップのサイズは、接合ステップの間に封止材料が広がることによってそのギャップを満たすことができるように選択する。
【0030】
別の一実施態様では、接合ステップは、初期周囲圧が小さいときに開始される。デバイス(例えば第1のチェンバー150または第2のチェンバー170)内のガス圧が大きくなる可能性がある接合ステップの間に、周囲圧力を、基板20、保護カバー140と160、封止材料165と175の周囲の初期圧力よりも大きくすることができる。このようにするとデバイスの内部(例えば、基板と、保護カバーと、封止材料とによって画定される第1のチェンバー150または第2のチェンバー170)とその増加した周囲圧の圧力差を小さくできるため、封止材料165と175の変形が防止される。
【0031】
ここで図3を参照すると、トップ-エミッション型OLEDデバイスの水分汚染を減らすのに使用できる本発明による装置の別の一実施態様の断面図が示してある。トップ-エミッション型OLEDデバイス200は、図2のOLEDデバイスと多くの特徴を共有している。しかし基板20の内部に連通手段を備えている必要はない。OLEDデバイス200では、折り曲げることのできる単一の保護材料210が第1と第2の保護カバーとなるとともに、基板20の少なくとも1つの縁部の少なくとも一部の周囲に通路を形成することによって第1と第2のチェンバーを連通させている。あるいは別のステップにおいて単一の材料を図示した形状にすること、または2つ以上の独立した部材を組み立てて図示した形状を形成することができる。保護材料210のための材料としては、第1の保護カバーに関して上に説明した材料が挙げられるが、可撓性という追加条件が加わる。保護材料210を折り曲げると通路240が形成される。支持部材220と230は、上部封止材料165および底部封止材料175と同じ材料を含むことができる。しかし支持部材220と230は、連続的なシールではない。支持部材220と230の区画に挟まれたギャップにより、通路240が第1のチェンバー150と第2のチェンバー170の両方と通じるようになるため、第1のチェンバー150または第2のチェンバー170に含まれる水分を水分吸収材料180が吸収できるようになる。
【0032】
ここで図4を参照すると、トップ-エミッション型OLEDデバイスの水分汚染を減らすのに使用できる本発明による装置の別の一実施態様の断面図が示してある。トップ-エミッション型OLEDデバイス250は、図2のOLEDデバイスと多くの特徴を共有している。しかし基板20の内部に連通手段を備えている必要はない。上部チェンバー150と底部チェンバー170を封止する前に、上部封止材料165と底部封止材料175を貫通するように接続チューブ260を配置して両方のチェンバーをつなげると第1のチェンバー150または第2のチェンバー170が連通するため、第1のチェンバー150または第2のチェンバー170に含まれる水分を水分吸収材料180が吸収できるようになる。あるいは接合ステップの間に内部ガスが出て行くことのできるギャップが封止材料165と175に含まれている場合には、接続チューブ260をギャップの中に配置した後にそのギャップを最終的に封止することができる。
【0033】
ここで図5に移り、同時に図2も参照すると、トップ-エミッション型OLEDデバイスの水分汚染を減らすための本発明による方法の一実施態様に関するブロック・ダイヤグラムが示してある。この中の手続きとその後の手続きにおいてステップの順番をいくらか変更しても同じ結果が得られることが理解されよう。まず最初に、基板20を用意し(ステップ300)、連通手段(例えば通路190)を設ける(ステップ310)。トップ-エミッション型ELユニット130を基板の上面110に設け(ステップ320)、望むのであれば、ELユニット130を保護層195で封止する(ステップ330)。第1の保護カバーを基板の上面110に形成または配置し(ステップ340)、上部封止材料165で封止して第1のチェンバー150を形成する(ステップ350)。水分吸収材料180を配置し(ステップ360)、第2の保護カバー160を基板の底面120の下方に形成または配置する(ステップ370)。次に、第2のチェンバー170を底部封止材料175で封止する(ステップ380)。
【0034】
ここで図6に移り、同時に図3も参照すると、トップ-エミッション型OLEDデバイスの水分汚染を減らすための本発明による方法の別の一実施態様に関するブロック・ダイヤグラムが示してある。まず最初に、基板20を用意する(ステップ400)。トップ-エミッション型ELユニット130を基板の上面110に設け(ステップ410)、望むのであれば、ELユニット130を保護層195で封止する(ステップ420)。支持部材220を基板の上面110に配置し、支持部材230を基板の底面120に配置する(ステップ430)。基板の上面110の上方に保護材料210の一部を配置することによって第1の保護層を形成し(ステップ440)、上部封止材料165で封止して第1のチェンバー150を形成する(ステップ450)。水分吸収材料180を配置する(ステップ460)。保護材料210を基板の底面120の下方で折り曲げて水分が通路240を通れるようにするとともに、基板の底面120の下方に第2の保護カバーを形成する(ステップ470)。あるいは保護材料210の形状をあらかじめ決めて基板の底面120の下方に配置するか、追加の保護材料210を基板の底面120の下方に配置する。次に、第2のチェンバー170を底部封止材料175で封止する(ステップ480)。
【0035】
ここで図7に移り、同時に図4も参照すると、トップ-エミッション型OLEDデバイスの水分汚染を減らすための本発明による方法の別の一実施態様に関するブロック・ダイヤグラムが示してある。まず最初に、基板20を用意する(ステップ500)。トップ-エミッション型ELユニット130を基板の上面110に設け(ステップ510)、望むのであれば、ELユニット130を保護層195で封止する(ステップ520)。第1の保護カバー140を基板の上面110に形成または配置する(ステップ530)。接続チューブ260を最初の第1のチェンバー150と第2のチェンバー170の間に設けて水分が行き来できるようにし(ステップ540)、第1の保護カバー140を上部封止材料165で封止して第1のチェンバー150を形成する(ステップ550)。水分吸収材料180を配置し(ステップ560)、第2の保護カバー160を基板の底面120の下方に形成または配置する(ステップ570)。次に、第2のチェンバー170を底部封止材料175で封止する(ステップ580)。
【0036】
本発明は、OLEDデバイスのほとんどの構造で利用できる。その中には、単一のアノードとカソードを含む非常に簡単な構造から、より複雑なデバイス(例えば、画素を形成するアノードとカソードの直交アレイからなるパッシブ-マトリックス・ディスプレイや、各画素が例えば薄膜トランジスタ(TFT)を用いて独立に制御されるアクティブ-マトリックス・ディスプレイ)までが含まれる。本発明のOLEDデバイスは、順バイアスで作動することができるため、DCモードで機能することが可能である。交流モードで逆バイアスを印加すると好ましい場合がときにある。一般に、OLEDは逆バイアス下では光を出さないが、アメリカ合衆国特許第5,552,678号に記載されているように、安定性が顕著に増大することがわかっている。
【0037】
ここで図8を参照すると、典型的なトップ-エミッション型OLEDデバイス600のさまざまな層の断面図が示してある。OLEDデバイス600は、少なくとも、上に説明した基板610と、アノード620と、そのアノード620から離れた位置にあるカソード670と、発光層650を備えている。このデバイスは、正孔注入層630と、正孔輸送層640と、電子輸送層660も備えることができる。正孔注入層630、正孔輸送層640、発光層650、電子輸送層660には、図1の有機層50が含まれている。これらの要素についてさらに詳しく説明する。
【0038】
底部電極層が基板610の上に形成されるが、その電極はアノード620にされるのが最も一般的である。しかし本発明のOLEDデバイスがこの構成に限定されることはなく、代わりにカソードを底部電極層にすることができる。この明細書では、底部電極層がアノードであると見なす。トップ-エミッション型デバイスでは、アノード620は、興味の対象となる光に対して透明でも、反射性でも、不透明であってもよい。本発明において有用な透明なアノード用の一般的な材料は、インジウム-スズ酸化物とスズ酸化物であるが、他の金属酸化物(例えばアルミニウムをドープした亜鉛酸化物、インジウムをドープした亜鉛酸化物、マグネシウム-インジウム酸化物、ニッケル-タングステン酸化物)も可能である。これら酸化物に加え、金属窒化物(例えば窒化ガリウム)、金属セレン化物(例えばセレン化亜鉛)、金属硫化物(例えば硫化亜鉛)をアノード用材料として用いることができる。アノード用材料としては、導電性金属(例えば金、銀、アルミニウム、イリジウム、モリブデン、パラジウム、白金)やその合金などがある。好ましいアノード用材料は、透光性であろうとそうでなかろうと、仕事関数が4.1eV以上である。望ましいアノード用材料は、適切な任意の手段(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段)で堆積させることができる。アノード用材料は、よく知られているフォトリソグラフィ法を利用してパターニングすることができる。
【0039】
必ずしも必要なわけではないが、有機発光ディスプレイでは、正孔注入層630をアノード620の上に形成すると有用であることがしばしばある。正孔注入材料は、その後に形成する有機層の膜形成特性を改善することと、正孔輸送層に正孔を容易に注入することに役立つ。正孔注入層630で使用するのに適した材料としては、アメリカ合衆国特許第4,720,432号に記載されているポルフィリン化合物、アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているプラズマ堆積させたフルオロカーボン・ポリマー、無機酸化物(例えばバナジウム酸化物(VOx)、モリブデン酸化物(MoOx)、ニッケル酸化物(NiOx))などがある。有機ELデバイスで有用であることが報告されている別の正孔注入材料は、ヨーロッパ特許第0 891 121 A1号と第1 029 909 A1号に記載されている。
【0040】
必ずしも必要なわけではないが、正孔輸送層640をアノード620の上方に形成して配置すると有用であることがしばしばある。望ましい正孔輸送材料は、適切な任意の手段(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段、熱転写、レーザーによるドナー材料からの熱転写)で堆積させることができる。正孔輸送層640で有用な正孔輸送材料は周知であり、例えば、芳香族第三級アミンなどの化合物がある。芳香族第三級アミンは、炭素原子(そのうちの少なくとも1つは芳香族環のメンバーである)だけに結合する少なくとも1つの三価窒素原子を含んでいる化合物であると理解されている。芳香族第三級アミンの1つの形態は、アリールアミン(例えばモノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ポリマー・アリールアミン)である。具体的なモノマー・トリアリールアミンは、Klupfelらによってアメリカ合衆国特許第3,180,730号に示されている。1個以上のビニル基で置換された他の適切なトリアリールアミン、および/または少なくとも1つの活性な水素含有基を含む他の適切なトリアリールアミンは、Brantley他によってアメリカ合衆国特許第3,567,450号と第3,658,520号に開示されている。
【0041】
芳香族第三級アミンのより好ましいクラスは、アメリカ合衆国特許第4,720,432号と第5,061,569号に記載されているように、少なくとも2つの芳香族第三級アミン部分を含むものである。このような化合物としては、構造式(A):
【化4】

で表わされるものがある。ただし、
Q1とQ2は、独立に、芳香族第三級アミン部分の中から選択され、
Gは、炭素-炭素結合の結合基(例えば、アリーレン基、シクロアルキレン基、アルキレン基など)である。
【0042】
一実施態様では、Q1とQ2の少なくとも一方は、多環式縮合環構造(例えばナフタレン部分)を含んでいる。Gがアリール基である場合には、Q1とQ2の少なくとも一方は、フェニレン部分、ビフェニレン部分、ナフタレン部分のいずれかであることが好ましい。
【0043】
構造式(A)に合致するとともに2つのトリアリールアミン部分を含むトリアリールアミンの有用な1つのクラスは、構造式(B):
【化5】

で表わされる。ただし、
R1とR2は、それぞれ独立に、水素原子、アリール基、アルキル基のいずれかを表わすか、R1とR2は、合わさって、シクロアルキル基を完成させる原子を表わし;
R3とR4は、それぞれ独立にアリール基を表わし、そのアリール基は、構造式(C):
【化6】

に示したように、ジアリール置換されたアミノ基によって置換されている。ただし、
R5とR6は、独立に、アリール基の中から選択される。一実施態様では、R5とR6のうちの少なくとも一方は、多環式縮合環構造(例えばナフタレン)を含んでいる。
【0044】
芳香族第三級アミンの別のクラスは、テトラアリールジアミンである。望ましいテトラアリールジアミンとして、構造式(C)に示したように、アリーレン基を通じて結合した2つのジアリールアミノ基が挙げられる。有用なテトラアリールジアミンとしては、一般式(D):
【化7】

で表わされるものがある。ただし、
それぞれのAreは、独立に、アリーレン基(例えばフェニレン部分またはアントラセン部分)の中から選択され;
nは1〜4の整数であり;
Ar、R7、R8、R9は、独立に、アリール基の中から選択される。
【0045】
典型的な一実施態様では、Ar、R7、R8、R9のうちの少なくとも1つは多環式縮合環構造(例えばナフタレン)である。
【0046】
上記の構造式A、B、C、Dのさまざまなアルキル部分、アルキレン部分、アリール部分、アリーレン部分は、それぞれ、置換されていてもよい。典型的な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン化物(例えばフッ化物、塩化物、臭化物)などがある。さまざまなアルキル部分とアルキレン部分は、一般に、1〜約6個の炭素原子を含んでいる。シクロアルキル部分は、3〜約10個の炭素原子を含むことができるが、一般には5個、または6個、または7個の炭素原子を含んでいる(例えばシクロペンチル環構造、シクロヘキシル環構造、シクロヘプチル環構造)。アリール部分とアリーレン部分は、通常は、フェニル部分とフェニレン部分である。
【0047】
OLEDデバイスにおける正孔輸送層は、単一の芳香族第三級アミン化合物、または芳香族第三級アミン化合物の混合物から形成することができる。特に、トリアリールアミン(例えば構造式Bを満たすトリアリールアミン)をテトラアリールジアミン(例えば構造式Dに示したもの)と組み合わせて使用することができる。トリアリールアミンをテトラアリールジアミンと組み合わせて使用する場合には、テトラアリールジアミンは、トリアリールアミンと電子注入・輸送層の間の層として位置する。有用な芳香族第三級アミンの代表例として、以下に示すものが挙げられる。
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4'"-ジアミノ-1,1':4',1":4",1'"-クアテルフェニル
ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)-フェニルメタン
1,4-ビス[2-[4-[N,N-ジ(p-トリル)アミノ]フェニル]ビニル]ベンゼン(BDTAPVB)
N,N,N',N'-テトラ-p-トリル-4,4'-ジアミノビフェニル
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4'-ジアミノビフェニル
N,N,N',N'-テトラ-1-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル
N,N,N',N'-テトラ-2-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル
N-フェニルカルバゾール
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ビフェニル(TNB)
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]-p-テルフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(3-アセナフテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン
4,4'-ビス[N-(9-アントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(1-アントリル)-N-フェニルアミノ]-p-テルフェニル
4,4'-ビス[N-(2-フェナントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(8-フルオランテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ピレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ナフタセニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ペリレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(1-コロネニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
2,6-ビス(ジ-p-トリルアミノ)ナフタレン
2,6-ビス[ジ-(1-ナフチル)アミノ]ナフタレン
2,6-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ナフタレン
N,N,N',N'-テトラ(2-ナフチル)-4,4"-ジアミノ-p-テルフェニル
4,4'-ビス{N-フェニル-N-[4-(1-ナフチル)-フェニル]アミノ}ビフェニル
2,6-ビス[N,N-ジ(2-ナフチル)アミノ]フルオレン
4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA)
4,4'-ビス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(TPD)。
【0048】
有用な正孔輸送材料の別のクラスとして、ヨーロッパ特許第1 009 041号に記載されている多環式芳香族化合物がある。ヨーロッパ特許第0 891 121 A1号と第1 029 909A1号に記載されているいくつかの正孔注入材料は、有用な正孔輸送材料になることもできる。さらに、正孔輸送ポリマー材料を使用することができる。それは、例えば、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、コポリマー(例えばポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSSとも呼ばれる))などである。
【0049】
発光層650は、正孔-電子再結合に応答して光を発生させる。発光層は一般に、OLEDディスプレイの正孔輸送層640の上方に配置される。望ましい有機発光材料は、適切な任意の手段(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段、照射によるドナー材料からの熱転写)で堆積させることができる。有用な有機発光材料はよく知られている。アメリカ合衆国特許第4,769,292号と第5,935,721号により詳しく説明されているように、有機EL素子の各発光層は発光材料または蛍光材料を含んでおり、この領域で電子-正孔対の再結合が起こる結果としてエレクトロルミネッセンスが生じる。発光層は単一の材料で構成できるが、より一般的には、ゲスト化合物またはドーパントをドープしたホスト材料からなる。光は主として発光材料から発生する。ホストは、単一のホスト材料、または複数のホスト材料の混合物を含むことができる。ドーパントは、特定のスペクトルを持つ着色光が発生するように選択する。発光層650内のホスト材料は、以下に示す電子輸送材料、または上記の正孔輸送材料、または正孔-電子再結合をサポートする別の材料にすることができる。ドーパントは、通常は、強い蛍光染料の中から選択されるが、リン光化合物(例えばWO 98/55561、WO 00/18851、WO 00/57676、WO 00/70655に記載されている遷移金属錯体)も有用である。ドーパントは、一般に、0.01〜10質量%の割合でホスト材料に組み込まれる。
【0050】
ホスト材料および発光材料としては、小さな非ポリマー分子またはポリマー材料が可能である(例えばポリフルオレン、ポリビニルアリーレン(例えばポリ(p-フェニレンビニレン)、PPV))。ポリマーの場合、小分子発光材料は、ホスト・ポリマーの中に分子として分散させること、または発光材料を微量成分とコポリマー化してホスト・ポリマーに添加することができる。
【0051】
発光材料を選択する際の重要な1つの関係は、分子の最高被占軌道と最低空軌道のエネルギー差として定義されるバンドギャップ・ポテンシャルの比較である。ホスト材料から発光材料にエネルギーが効率的に移動するための必要条件は、ドーパントのバンドギャップがホスト材料のバンドギャップよりも小さいことである。リン光発光体(三重項励起状態から発光する材料、すなわちいわゆる“三重項発光体”が含まれる)では、ホスト材料から発光材料にエネルギーが移動できるためには、ホストの三重項エネルギー・レベルが十分に高いことも重要である。
【0052】
有用であることが知られているホスト材料および発光材料としては、アメリカ合衆国特許第4,768,292号、第5,141,671号、第5,150,006号、第5,151,629号、第5,294,870号、第5,405,709号、第5,484,922号、第5,593,788号、第5,645,948号、第5,683,823号、第5,755,999号、第5,928,802号、第5,935,720号、第5,935,721号、第6,020,078号に開示されているものなどがある。
【0053】
8-ヒドロキシキノリンの金属錯体と、それと同様の誘導体(一般式E)は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の1つのクラスを形成し、波長が500nmよりも長い光(例えば緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。
【0054】
【化8】

ただし、
Mは金属を表わし;
nは1〜3の整数であり;
Zは、各々独立に、少なくとも2つの芳香族縮合環を有する核を完成させる原子を表わす)。
【0055】
以上の説明から、金属は、一価、二価、三価の金属が可能であることが明らかである。金属としては、例えばアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウムなど)、土類金属(ホウ素、アルミニウムなど)が可能である。一般に、キレート化金属として有用であることが知られている任意の一価、二価、三価の金属を使用することができる。
【0056】
Zは、少なくとも2つの芳香族縮合環を持っていてそのうちの少なくとも一方はアゾール環またはアジン環である複素環の核を完成させる。必要な場合には、必要なその2つの環に追加の環(例えば脂肪族環と芳香族環の両方)を縮合させることができる。機能の向上なしに分子が大きくなることを避けるため、環の原子数は、通常は18個以下に維持する。
【0057】
有用なキレート化オキシノイド系化合物の代表例としては、以下のものがある。
CO-1:アルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-2:マグネシウムビスオキシン[別名、ビス(8-キノリノラト)マグネシウム(II)]
CO-3:ビス[ベンゾ{f}-8-キノリノラト]亜鉛(II)
CO-4:ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)-μ-オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)
CO-5:インジウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)インジウム]
CO-6:アルミニウムトリス(5-メチルオキシン)[別名、トリス(5-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-7:リチウムオキシン[別名、(8-キノリノラト)リチウム(I)]
CO-8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)ガリウム(III)]
CO-9:ジルコニウムオキシン[別名、テトラ(8-キノリノラト)ジルコニウム(IV)]
【0058】
本発明の1つ以上の発光層に含まれるホスト材料は、9位と10位に炭化水素置換基または置換された炭化水素置換基を有するアントラセン核の誘導体にすることができる。例えば9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセン(一般式F)の誘導体は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の1つのクラスを形成し、波長が400nmよりも長い光(例えば青、緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。
【0059】
【化9】

ただし、
R1、R2、R3、R4、R5、R6は、各環上にある、以下に示すグループの中から個別に選択した1個以上の置換基を表わす。
グループ1:水素、または1〜24個の炭素原子を有するアルキル;
グループ2:5〜20個の炭素原子を有するアリールまたは置換されたアリール;
グループ3:アントラセニル、ピレニル、ペリレニルいずれかの芳香族縮合環を完成させるのに必要な4〜24個の炭素原子;
グループ4:フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、または他の複素環系の複素芳香族縮合環を完成させるのに必要な、5〜24個の炭素原子を有するヘテロアリールまたは置換されたヘテロアリール;
グループ5:1〜24個の炭素原子を有するアルコキシアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ;
グループ6:フッ素、塩素、臭素、シアノ。
【0060】
一般式(I)のモノアントラセン誘導体もエレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料であり、波長が400nmよりも長い光(例えば青、緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。一般式(I)のアントラセン誘導体は、2003年10月24日にLelia Cosimbescuらによって「アントラセン誘導体ホストを含むエレクトロルミネッセンス・デバイス」という名称で出願されて譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/693,121号に記載されている(その開示内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。
【0061】
【化10】

ただし、R1〜R10は以下のようになっている。
R1〜R8はHである。
R9は、脂肪族炭素環のメンバーを有する縮合環を含まないナフチル基である。ただしR9とR10は同じではなく、アミンとイオウ化合物を含んでいない。R9は、1つ以上の縮合環をさらに備えていて芳香族縮合環系(例えばフェナントリル、ピレニル、フルオランテン、ペリレン)を形成している置換されたナフチル基であるか、1個以上の置換基(例えばフッ素、シアノ基、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、複素環式オキシ基、カルボキシ基、トリメチルシリル基)で置換されたナフチル基であるか、縮合した2つの環からなる置換されていないナフチル基であることが好ましい。R9は、パラ位が置換された2-ナフチルまたは1-ナフチルか、パラ位が置換されていない2-ナフチルまたは1-ナフチルであることが好ましい。
R10は、脂肪族炭素環のメンバーを有する縮合環を含まないビフェニル基である。R10は、置換されていて芳香族縮合環(例えばナフチル、フェナントリル、ペリレン)を形成しているビフェニル基か、1個以上の置換基(例えばフッ素、シアノ基、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、複素環式オキシ基、カルボキシ基、トリメチルシリル基)で置換されたビフェニル基か、置換されていないビフェニル基であることが好ましい。R10は、置換されていない4-ビフェニルまたは3-ビフェニルか、縮合環を含まない他のフェニル環で置換されていて三フェニル環系を形成している4-ビフェニルまたは3-ビフェニルか、2-ビフェニルであることが好ましい。特に有用なのは、9-(2-ナフチル)-10-(4-ビフェニル)アントラセンである。
【0062】
アントラセン誘導体の別の有用なクラスは、一般式(II):
A1-L-A2 (II)
で表わされる。ただし、A1とA2は、それぞれ、置換された、または置換されていないモノフェニルアントリル基、置換された、または置換されていないジフェニルアントリル基のいずれかであり、互いに同じでも異なっていてもよく;Lは、単結合または二価の結合基を表わす。
【0063】
アントラセン誘導体の別の有用なクラスは、一般式(III):
A3-An-A4 (III)
で表わされる。ただし、Anは、置換された、または置換されていない二価のアントラセン残基であり;A3とA4は、それぞれ、置換された、または置換されていない一価の芳香族縮合環基、置換された、または置換されていない炭素原子が6個以上の非縮合環アリール基のいずれかであり、互いに同じでも異なっていてもよい。発光層で使用するための有用なアントラセン材料の特別な例として以下のものがある。
【0064】
【化11】

【0065】
【化12】

【0066】
ベンズアゾール誘導体(一般式G)は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の別のクラスを形成し、波長が400nmよりも長い光(例えば青、緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。
【0067】
【化13】

ただし、nは3〜8の整数であり;
Zは、O、NR、Sのいずれかであり;
R'は、水素;1〜24個の炭素原子を有するアルキル(例えばプロピル、t-ブチル、ヘプチルなど);5〜20個の炭素原子を有するアリールまたはヘテロ原子で置換されたアリール(例えばフェニル、ナフチル、フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、ならびに他の複素環式系);ハロ(例えばクロロ、フルオロ);芳香族縮合環を完成させるのに必要な原子のいずれかであり;
Lは、アルキル、アリール、置換されたアルキル、置換されたアリールのいずれかを含んでいる結合単位であり、複数のベンズアゾールを互いに共役または非共役に結合させる。
【0068】
有用なベンズアゾールの一例は、2,2',2"-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール]である。
【0069】
上記の正孔輸送材料のうちのいくつか(例えば4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニルや4,4'-ビス[N-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル)は、本発明の1つ以上の発光層のための有用なホストになることもできる。
【0070】
リン光発光体に適したホスト材料(三重項励起状態から発光する材料、すなわちいわゆる“三重項発光体”が含まれる)は、三重項励起のエネルギーがホスト材料からリン光材料に効率的に移動できるように選択する必要がある。このエネルギー移動が起こるためには、リン光材料の励起状態のエネルギーが、最低三重項状態とホストの基底状態のエネルギー差よりも小さいというのが極めて望ましい条件である。しかしホスト材料のバンドギャップは、OLEDの駆動電圧を許容できないくらい上昇させるほど大きくなるように選択してはならない。適切なホスト材料は、WO 00/70655 A2、WO 01/39234 A2、WO 01/93642 A1、WO 02/074015 A2、WO 02/15645 A1、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0117662に記載されている。適切なホスト材料としては、ある種のアリールアミン、トリアゾール、インドール、カルバゾール化合物などがある。望ましいホスト材料の具体例は、4,4'-N,N'-ジカルバゾール-ビフェニル(CBP)、2,2'-ジメチル-4,4'-(N,N'-ジカルバゾール)ビフェニル、m-(N,N'-ジカルバゾール)ベンゼン、ポリ(N-ビニルカルバゾール)と、これらの誘導体である。
【0071】
望ましいホスト材料は、連続膜を形成することができる。発光層は、デバイスの膜の形状、電気的特性、発光効率、寿命の改善を目的として、2種類以上のホスト材料を含むことができる。発光層は、優れた正孔輸送特性を有する第1のホスト材料と、優れた電子輸送特性を有する第2のホスト材料を含むことができる。
【0072】
OLEDディスプレイのための望ましい蛍光ドーパントとしては、一般に、ペリレンまたはペリレンの誘導体や、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドンの誘導体や、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、ビス(アジニル)メタンホウ素錯体化合物、カルボスチリル化合物などがある。有用なドーパントの代表例としては、以下のものがある。
【0073】
【化14】

【0074】
【化15】

【0075】
【化16】

【0076】
【化17】

【0077】
他の有機発光材料として、ポリマー物質が可能である。それは、例えば、譲受人に譲渡されたWolkらのアメリカ合衆国特許第6,194,119 B1号とその中で引用されている参考文献に記載されているポリフェニレンビニレン誘導体、ジアルコキシ-ポリフェニレンビニレン、ポリ-パラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体である。
【0078】
本発明の発光層で使用できる有用なリン光材料の例が記載されているのは、WO 00/57676、WO 00/70655、WO 01/41512 A1、WO 02/15645 A1、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0017361 A1、WO 01/93642 A1、WO 01/39234 A2、アメリカ合衆国特許第6,458,475 B1号、WO 02/071813 A1、アメリカ合衆国特許第6,573,651 B2号、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0197511 A1、WO 02/074015 A2、アメリカ合衆国特許第6,451,455 B1号、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0072964 A1、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0068528 A1、アメリカ合衆国特許第6,413,656 B1号、アメリカ合衆国特許第6,515,298 B2号、アメリカ合衆国特許第6,451,415 B1号、アメリカ合衆国特許第6,097,147号、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0124381 A1、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0059646 A1、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0054198 A1、ヨーロッパ特許第1 239 526 A2号、ヨーロッパ特許第1 238 981 A2号、ヨーロッパ特許第1 244 155 A2号、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0100906 A1、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0068526 A1、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0068535 A1、日本国特開2003-073387A、日本国特開2003-073388A、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0141809 A1、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0040627 A1、日本国特開2003-059667A、日本国特開2003-073665A、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0121638 A1などである。
【0079】
IrL3タイプとIrL2L'タイプのシクロメタル化されたIr(III)錯体(例えば緑色の光を出すfac-トリス(2-フェニルピリジナト-N,C2')イリジウム(III)、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2')イリジウム(III)(アセチルアセトネート))の発光波長は、シクロメタル化リガンドL上の適切な位置における電子供与基または電子求引基の置換によってシフトさせること、またはシクロメタル化リガンドLのためにいろいろな複素環を選択することによってシフトさせることができる。発光波長は、補助リガンドL'を選択することによってシフトさせることもできる。赤色発光体の例は、ビス(2-(2'-ベンゾチエニル)ピリジナト-N,C3')イリジウム(III)(アセチルアセトネート)と、トリス(1-フェニルイソキノリナト-N,C)イリジウム(III)である。青色発光体の一例は、ビス(2-(4,6-ジフルオロフェニル)-ピリジナト-N,C2')イリジウム(III)(ピコリネート)である。
【0080】
リン光材料としてビス(2-(2'-ベンゾ[4,5-a]チエニル)ピリジナト-N,C3)イリジウム(アセチルアセトネート)[Btp2Ir(acac)]を用いた赤い電気リン光が報告されている(Adachi, C.、Lamansky, S.、Baldo, M.A.、Kwong, R.C.、Thompson, M.E.、Forrest, S.R.、App. Phys. Lett.、第78巻、1622〜1624ページ、2001年)。
【0081】
有用なリン光材料のさらに別の具体例として、3価ランタニド(例えばTb3+、Eu3+)の配位錯体がある(J. Kido他、Appl. Phys. Lett.、第65巻、2124ページ、1994年)。
【0082】
リン光材料を用いたOLEDデバイスは、ホスト材料とリン光材料を含む発光層にエキシトンまたは電子-正孔再結合中心を限定しやすくするため、適切なホストに加え、少なくとも1つのエキシトン阻止層または正孔阻止層を必要とすることがしばしばある。一実施態様では、このような阻止層は、リン光発光層とカソードの間に、リン光発光層と接触させて配置することになろう。その場合、阻止層のイオン化ポテンシャルの条件は、ホストから電子輸送層(または金属をドープした有機層)への正孔の移動に対するエネルギー障壁が存在しているが、電子の親和性は、電子が電子輸送層(または金属をドープした有機層)から、ホスト材料とリン光材料を含む発光層により容易に移動できるようになっていなくてはならないというものである。さらに、絶対に必要というわけではないが、阻止材料の三重項エネルギーはリン光材料の三重項エネルギーよりも大きいことが望ましい。適切な正孔阻止材料は、WO 00/70655A2とWO 01/93642 A1に記載されている。有用な材料の2つの例として、バソクプロイン(BCP)とビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(BAlQ)がある。アメリカ合衆国特許出願公開2003/0068528に記載されているように、BAlQ以外の金属錯体も正孔とエキシトンを阻止することが知られている。アメリカ合衆国特許出願公開2003/0175553 A1には、電子/エキシトン阻止層でfac-トリス(1-フェニルピラゾラト-N,C2)イリジウム(III)(Irppz)を使用することが記載されている。
【0083】
必ずしも必要なわけではないが、OLEDデバイス600は、発光層650の上に配置された電子輸送材層660を含んでいると好ましい場合がしばしばある。望ましい電子輸送材料は、適切な任意の手段(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段、熱転写、レーザーによるドナー材料からの熱転写)で堆積させることができる。電子輸送層660で用いるのが好ましい電子輸送材料は、金属キレート化オキシノイド系化合物(オキシンそのもの(一般には8-キノリノールまたは8-ヒドロキシキノリンとも呼ばれる)のキレートも含む)である。このような化合物は、電子の注入と輸送を容易にし、優れた性能を示すのを助け、しかも容易に薄膜の形態にすることができる。考えられるオキシノイド系化合物の例は、すでに説明した一般式Eを満たすものである。
【0084】
他の電子輸送材料としては、アメリカ合衆国特許第4,356,429号に開示されているさまざまなブタジエン誘導体や、アメリカ合衆国特許第4,539,507号に記載されているさまざまな複素環式蛍光増白剤がある。一般式Gを満たすベンズアゾールも、有用な電子輸送材料である。まとめてBAlqと表記される関連材料も電子輸送材料として使用できる。Bryanらは、アメリカ合衆国特許第5,141,671号において、このような材料について議論している。BAlq化合物は、混合リガンド・アルミニウム・キレート(特にビス(Rs-8-キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム(III)キレート(ただしRsは、8-キノリノラト環核の環置換基である))である。これらの化合物は、一般式(RsQ)2AlOL(ただしQは、3個以上の置換された8-キノリノラト・リガンドがアルミニウム・イオンと結合するのを立体的に阻止する8-キノリノラト環置換基を表わし、OLはフェノラト・リガンドであり、Oは酸素であり、Lは、炭素原子が6〜24個のフェニル、または炭化水素で置換されたフェニル部分である)で表わされる。これらの材料は、従来技術で知られているように、三重項発光材料とともに使用される優れた正孔阻止層またはエキシトン阻止層にもなる。
【0085】
他の電子輸送材料としては、ポリマー物質が可能である。それは例えば、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリ-パラ-フェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリチオフェン、ポリアセチレンや、他の導電性ポリマー有機材料(例えば『導電性分子と導電性ポリマーのハンドブック』、第1〜4巻、H.S. Nalwa編、ジョン・ワイリー&サンズ社、チチェスター、1997年に記載されているもの)である。
【0086】
従来技術で一般的なように、上に説明した層のいくつかは、2つ以上の機能を持ちうることが理解されよう。例えば発光層650は、OLEDデバイスの性能にとって望ましい正孔輸送特性または電子輸送特性を持つことができる。正孔輸送層640と電子輸送層660の一方または両方は、発光特性も持つことができる。その場合には、3つの層がこの明細書に記載した発光品質を有するのであれば、望む発光特性を得るのにより少ない数の層で済む。
【0087】
上記有機EL媒体の材料は、気相法(例えば昇華、スパッタリング、化学蒸着、ドナー・エレメントからの熱転写)で堆積させることが好ましい。あるいは有機EL媒体の材料は、流体から(例えば溶媒)堆積させることもできる。そのとき、場合によっては結合剤を用いて膜の形成を改善する。流体からの堆積は多数の方法で行なうことができる。例えば、インク-ジェット、スピン・コーティング、カーテン・コーティング、スプレー・コーティング、電気化学的堆積などの方法がある。材料がポリマーである場合には、通常は溶媒堆積が好ましいが、他の方法(例えばスパッタリング、電気化学的堆積、電気泳動堆積、ドナー・シートからの熱転写)も利用できる。昇華によって堆積させる材料は、タンタル材料からなることの多い昇華用“ボート”から気化させること(例えばアメリカ合衆国特許第6,237,529号に記載されている)や、まず最初にドナー・シートにコーティングし、次いで基板のより近くで昇華させることができる。混合材料からなる層では、別々の昇華用ボートを用いること、または材料をあらかじめ混合し、単一のボートまたはドナー・シートからコーティングすることができる。
【0088】
図示していないが、電子注入層がカソードと電子輸送層の間に存在していてもよい。電子注入材料の例としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属ハロゲン化物(例えば上記のLiF)、アルカリ金属をドープした有機層、アルカリ土類金属をドープした有機層などがある。
【0089】
上部電極層は底部電極層から離れている。上部電極層はカソード670にされることが最も一般的であり、電子輸送層660の上に形成され、電子輸送層を使用しない場合には発光層650の上に形成される。トップ-エミッション型デバイスでは、上部電極層は、透明であるか、半透明である必要がある。このような用途のためには、金属が薄いか、透明な導電性酸化物を使用するか、このような材料の組み合わせを用いる必要がある。光学的に透明なカソードは、アメリカ合衆国特許第5,776,623号により詳しく記載されている。透明なカソード材料だけを用いる場合には、光の一部を反射させるために別の半透明構造が必要とされる。カソード材料は、蒸着、スパッタリング、化学蒸着によって堆積させることができる。必要な場合には、よく知られた多数の方法でパターニングすることができる。方法としては、例えば、スルー・マスク蒸着、アメリカ合衆国特許第5,276,380号とヨーロッパ特許第0 732 868号に記載されている一体化シャドウ・マスキング、レーザー除去、選択的化学蒸着などがある。
【0090】
カソード670は、アクティブ・マトリックス・デバイスの一部にすることができ、その場合には、ディスプレイ全体で電極が1つだけになる。あるいはカソード670は、パッシブ・マトリックス・デバイスの一部にすることもできる。その場合、それぞれのカソード670が1つの画素列をアクティブにすることができ、カソード670はアノード620と直角に配置される。
【0091】
カソード材料は、蒸着、スパッタリング、化学蒸着によって堆積させることができる。必要な場合には、よく知られた多数の方法でパターニングすることができる。方法としては、例えば、スルー・マスク蒸着、アメリカ合衆国特許第5,276,380号とヨーロッパ特許第0 732 868号に記載されている一体化シャドウ・マスキング、レーザー除去、選択的化学蒸着などがある。
【0092】
ここで図9aを参照すると、本発明を適用できる複合OLED素子700が示してある。2つ以上の上部発光ELユニット(例えばELユニット130a〜130d)が基板705の上面に形成されている。ELユニット130a〜130dは上部から発光する。すなわち発生した光が基板700を通過することはない。これらELユニットは同時に製造されるが、それぞれのELユニットは、上に説明したのと同様の個別のデバイスを形成し、基板の上面には第1の保護カバーを、底面には第2の保護カバーを備え、それぞれ第1チェンバーまたは第2のチェンバーを持ち、それぞれの第2のチェンバーには水分吸収材料が付随している。各ELユニットは、第1チェンバーと第2のチェンバーを連通させる手段も備えている(例えば通路190a〜190d)。
【0093】
図9bは、図9aの切断線710に沿って上記の複合OLED素子を見た断面図である。ELユニット(例えば130cと130d)が基板705の上面730に形成されている。すでに説明した保護層(図示せず)を場合によってはELユニットの上に設けた後、1つ以上の保護カバーを形成することができる。第1の保護カバー140cと140dが基板705の上面730の上方に形成されている。第1の保護カバー140cと140dは、それぞれ上部封止材料165cと165dによって封止されて第1のチェンバー150cと150dを形成している。この明細書で説明したように、水分吸収材料180cと180dが基板705と接しており、単一の第2の保護カバー720が基板705の底面740の下方に配置され、例えば底部封止材料175cと175dによって封止されて第2のチェンバー170cと170dを形成している。このような複合OLED素子を封止する1つの方法が、Borosonらのアメリカ合衆国特許第6,470,594号と第6,544,916号に記載されている。
【0094】
第1または第2の保護カバーを単一の保護カバー(例えば保護カバー720)にすること、または2つ以上の保護カバー(例えば保護カバー140cと140d)にすることが可能であることが理解されよう。封止することで、第1の保護カバーは2つ以上の第1のチェンバーを形成し、第2の保護カバーは2つ以上の第2のチェンバーを形成することになる。水分吸収材料は、それぞれの第2のチェンバーに付随することになる。
【0095】
第1と第2の保護カバーを封止した後、複合OLED素子700を個別の上部発光OLEDデバイス、または上部発光OLEDデバイスのグループに分割することができる。それぞれのデバイス、またはデバイスのグループは、元の基板705の一部を有する。Borosonらは、分割された複合OLEDデバイスを記載している。
【0096】
各ELユニットの第1のチェンバーと第2のチェンバー(例えば第1のチェンバー150cと第2のチェンバー170c)を連通させることにより、第1のチェンバーまたは第2のチェンバーに含まれる水分が水分吸収材料(例えば水分吸収材料180c)によって吸収される。すでに説明した多くの方法で連通させることができる。例えば図2の通路190と同様の通路を設けることができる。その場合、基板705には、それぞれのELユニットごとに少なくとも1つの通路が含まれることになろう。あるいは基板またはその一部を、蒸気の形態または液体の形態になった水分が透過できるようにすることができる。あるいは図4の接続チューブ260のような構造によって連通させることができる。接続チューブは以下のようにして設けることができる。1)各ELユニットの周囲を第1と第2の保護カバーで封止するとき、各ELユニットの周囲のシールの中にギャップが残るようにする;2)上記のようにしてデバイスを個別のユニットに分割する;3)分割された個々のELユニットごとに、上部封止材料と底部封止材料のギャップの中に接続チューブを配置する;4)ギャップを封止する。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】OLEDデバイスの水分汚染を減らすための従来の装置の断面図である。
【図2】トップ-エミッション型OLEDデバイスにおいて水分汚染を減らすのに使用できる本発明による装置の一実施態様の断面図である。
【図3】トップ-エミッション型OLEDデバイスの水分汚染を減らすのに使用できる本発明による装置の別の一実施態様の断面図である。
【図4】トップ-エミッション型OLEDデバイスの水分汚染を減らすのに使用できる本発明による装置の別の一実施態様の断面図である。
【図5】トップ-エミッション型OLEDデバイスの水分汚染を減らすための本発明による方法の一実施態様に関するブロック・ダイヤグラムである。
【図6】トップ-エミッション型OLEDデバイスの水分汚染を減らすための本発明による方法の別の一実施態様に関するブロック・ダイヤグラムである。
【図7】トップ-エミッション型OLEDデバイスの水分汚染を減らすための本発明による方法の別の一実施態様に関するブロック・ダイヤグラムである。
【図8】典型的なOLEDデバイスのさまざまな層の断面図である。
【図9a】本発明を適用できる複合OLED素子である。
【図9b】図9aの切断線に沿って上記の複合OLED素子を見た断面図である。
【符号の説明】
【0098】
10 OLEDデバイス
20 基板
25 光
30 ELユニット
40 アノード
50 有機層
60 カソード
70 水分吸収材料
80 ガラス封止ケース
90 封止剤
100 トップ-エミッション型OLEDデバイス
105 光
110 基板の上面
120 基板の下面
130 トップ-エミッション型ELユニット
130a トップ-エミッション型ELユニット
130b トップ-エミッション型ELユニット
130c トップ-エミッション型ELユニット
130d トップ-エミッション型ELユニット
140 第1の保護カバー
140c 第1の保護カバー
140d 第1の保護カバー
150 第1のチェンバー
150c 第1のチェンバー
150d 第1のチェンバー
160 第2の保護カバー
165 上部封止材料
165c 上部封止材料
165d 上部封止材料
170 第2のチェンバー
170c 第2のチェンバー
170d 第2のチェンバー
175 底部封止材料
175c 底部封止材料
175d 底部封止材料
180 水分吸収材料
180c 水分吸収材料
180d 水分吸収材料
190 通路
190a 通路
190b 通路
190c 通路
190d 通路
195 保護層
200 トップ-エミッション型OLEDデバイス
210 保護材料
220 支持部材
230 支持部材
240 通路
250 トップ-エミッション型OLEDデバイス
260 接続チューブ
300 ブロック
310 ブロック
320 ブロック
330 ブロック
340 ブロック
350 ブロック
360 ブロック
370 ブロック
380 ブロック
400 ブロック
410 ブロック
420 ブロック
430 ブロック
440 ブロック
450 ブロック
460 ブロック
470 ブロック
480 ブロック
500 ブロック
510 ブロック
520 ブロック
530 ブロック
540 ブロック
550 ブロック
560 ブロック
570 ブロック
580 ブロック
600 OLEDデバイス
610 基板
620 アノード
630 正孔注入層
640 正孔輸送層
650 発光層
660 電子輸送層
670 カソード
700 複合OLED素子
705 基板
710 切断線
720 第2の保護層
730 基板の上面
740 基板の底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップ-エミッション型OLEDデバイスの水分汚染を減らす方法であって、
a)上面と底面を有する基板を用意し;
b)上記基板の上面の上方に、光を発生させるトップ-エミッション型ELユニットを形成するが、その光が主にその基板を通過することはなく;
c)上記基板の上面の上方に第1の保護カバーを形成し、その基板の底面の下方に第2の保護カバーを形成することにより、それぞれ第1のチェンバーと第2のチェンバーを画定し;
d)上記第2のチェンバーに水分吸収材料を組み合わせ;
e)上記第1のチェンバーと上記第2のチェンバーを連通させることにより、上記第1のチェンバーまたは第2のチェンバーに含まれる水分を上記水分吸収材料によって吸収させる操作を含む方法。
【請求項2】
上記第1のチェンバーと上記第2のチェンバーの連通を、上記基板を貫通する通路を形成することによって実現する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記第1のチェンバーと上記第2のチェンバーの連通を、上記基板の少なくとも1つの縁部の少なくとも一部の周辺に通路を設けることによって実現する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
折り曲げることのできる単一の保護材料が上記第1の保護カバーと上記第2の保護カバーになるとともに、上記第1のチェンバーと上記第2のチェンバーを連通させている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記基板またはその一部を水分が蒸気の形態または液体の形態で通過することができ、そのことによって上記第1のチェンバーと上記第2のチェンバーが連通している、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
接続チューブが上記第1のチェンバーと上記第2のチェンバーを連通させている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
上記水分吸収材料の選択が、アルカリ金属;アルカリ土類金属;水分と反応する他の金属;アルカリ金属酸化物;アルカリ土類金属酸化物;硫酸塩;金属ハロゲン化物;過塩素酸塩;分子篩;以下の一般式で表わされるタイプの有機金属化合物:
【化1】

(ただし、R1、R2、R3の選択は、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、複素環式基、アシル基のうちで炭素原子を1個以上有するものからなるグループの中からなされ、Mは3価の金属原子である);以下の一般式で表わされるタイプの有機金属化合物:
【化2】

(ただし、R1、R2、R3、R4、R5の各選択は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、複素環式基、アシル基のうちで炭素原子を1個以上有するものからなるグループの中からなされ、Mは3価の金属原子である);以下の一般式で表わされるタイプの有機金属化合物:
【化3】

(ただし、R1、R2、R3、R4の各選択は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、複素環式基、アシル基のうちで炭素原子を1個以上有するものからなるグループの中からなされ、Mは4価の金属原子である);仕事関数が4.5eV未満であって水分の存在により酸化され得る金属;ならびにこれらの組み合わせからなるグループの中からなされる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
上記水分吸収材料を上記第2の保護カバーの上または内部に配置する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記水分吸収材料を上記基板に接して配置する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
上記基板の上面の上方に第1の保護カバーを形成する前に、上記ELユニットの上に保護層を設ける操作をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
請求項10に記載の保護層が封止領域全体の上方に設けられている封止されたOLEDデバイス。
【請求項12】
上記保護層が、金属酸化物、金属窒化物、金属オキシ窒化物、ダイヤモンド様炭素、半導体酸化物、半導体窒化物、半導体オキシ窒化物のいずれかを含んでいる、請求項11に記載の封止されたOLEDデバイス。
【請求項13】
上記保護層が有機化合物を含んでいる、請求項11に記載の封止されたOLEDデバイス。
【請求項14】
上記保護層が、アルミニウム酸化物、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、オキシ窒化ケイ素のいずれかを含んでいる、請求項12に記載の封止されたOLEDデバイス。
【請求項15】
上記保護層が、有機材料と無機材料の一方または両方からなる複数の層を含んでいる、請求項11に記載の封止されたOLEDデバイス。
【請求項16】
上記保護層が、熱による物理的蒸着、スパッタリング蒸着、電子ビーム蒸着、化学蒸着、プラズマ支援化学蒸着、レーザー誘導化学蒸着、原子層蒸着、スピン・コーティング、スクリーン印刷、分散法のいずれかによって設けられる、請求項11に記載の封止されたOLEDデバイス。
【請求項17】
上記基板が堅固であるか可撓性を持ち、ガラス、プラスチック、金属、セラミック、半導体、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物、半導体酸化物、半導体窒化物、半導体硫化物、炭素、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
上記保護カバーが堅固であるか可撓性を持ち、ガラス、プラスチック、金属、セラミック、半導体、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物、半導体酸化物、半導体窒化物、半導体硫化物、炭素、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
上記第1の保護カバーが、光学的に活性な1つ以上の追加層を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
光学的に活性な1つ以上の上記層がカラー・フィルタ・アレイを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
光学的に活性な1つ以上の上記層が色変更モジュールを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
光学的に活性な1つ以上の上記層が反射防止層を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
光学的に活性な1つ以上の上記層が偏光層を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
光学的に活性な1つ以上の上記層が光抽出層を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
上記保護カバーと上記基板の間にある封止材料または他の密封材料が上記チェンバーの一部を画定している、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
上記封止材料が、有機材料、または有機材料と無機材料の組み合わせである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
上記有機封止材料の選択が、エポキシ、ポリウレタン、アクリレート、シリコーン、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ならびにこれらの組み合わせからなるグループの中からなされる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
上記封止材料の選択が、ガラス、セラミック、金属、半導体、金属酸化物、半導体酸化物、金属ハンダ、ならびにこれらの組み合わせからなるグループの中からなされる、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
上記封止材料が、上記保護カバーと上記基板の間に接合され、その接合ステップが、プレス、溶融、冷却、反応硬化、またはこれらの組み合わせによって実現される、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
上記反応に、熱、照射、2種類以上の成分の混合、周囲にある水分への曝露、周囲にある酸素の除去、またはこれらの組み合わせから生じる反応が含まれる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
上記第1のカバーと上記第2のカバーの一方または両方が通気穴を備えていて、上記接合ステップの後にその通気穴を通気穴シール材料で封止する、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
上記基板と一方または両方の保護カバーの間に1つ以上のギャップが残るように上記封止材料を配置して過剰なガスをそのギャップを通じて排出させ、そのギャップを上記結合ステップの後に封止する、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
上記基板と一方または両方の保護カバーの間に1つ以上のギャップが残るように上記封止材料を配置し、その封止材料が広がってそのギャップに満たされるまで過剰なガスをそのギャップを通じて排出させる、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
上記結合ステップの間に、上記基板と上記保護カバーと上記封止材料の周囲の初期圧よりも周囲圧を大きくして上記基板と上記保護カバーと上記封止材料の間に区画される空間内の圧力とその上昇した周囲圧の差を小さくすることにより、封止材料の変形を防ぐ、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
トップ-エミッション型OLEDデバイスの水分汚染を減らす方法であって、
a)上面と底面を有する基板を用意し;
b)上記基板の上面の上方に、光を発生させる2つ以上のトップ-エミッション型ELユニットを形成するが、その光が主にその基板を通過することはなく;
c)上記基板の上面の上方に1つ以上の第1の保護カバーを形成し、その基板の底面の下方に1つ以上の第2の保護カバーを形成することにより、それぞれ2つ以上の第1のチェンバーと2つ以上の第2のチェンバーを画定し;
d)第2のチェンバーの各々に水分吸収材料を組み合わせ;
e)各ELユニットの上記第1のチェンバーと上記第2のチェンバーを連通させることにより、上記第1のチェンバーまたは第2のチェンバーに含まれる水分を上記水分吸収材料によって吸収させる操作を含む方法。
【請求項36】
単一の第1の保護カバーを上記基板の上面の上方に形成する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
2つ以上の第1の保護カバーを上記基板の上面の上方に形成する、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
単一の第2の保護カバーを上記基板の底面の下方に形成する、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
2つ以上の第2の保護カバーを上記基板の底面の下方に形成する、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
トップ-エミッション型OLEDデバイスを、初期基板の一部を含む個別のデバイスまたはデバイスのグループに分割するステップをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
上記基板を貫通する通路を形成することにより、上記第1のチェンバーと上記第2のチェンバーを連通させる、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
上記第1のチェンバーと上記第2のチェンバーの連通を、上記基板の少なくとも1つの縁部の少なくとも一部の周辺に通路を設けることによって実現する、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
上記基板を水分が蒸気の形態または液体の形態で通過することができ、そのことによって上記第1のチェンバーと上記第2のチェンバーが連通している、請求項35に記載の方法。
【請求項44】
接続チューブが上記第1のチェンバーと上記第2のチェンバーを連通させている、請求項35に記載の方法。
【請求項45】
上記水分吸収材料の選択が、アルカリ金属;アルカリ土類金属;水分と反応する他の金属;アルカリ金属酸化物;アルカリ土類金属酸化物;硫酸塩;金属ハロゲン化物;過塩素酸塩;分子篩;以下の一般式で表わされるタイプの有機金属化合物:
【化4】

(ただし、R1、R2、R3の選択は、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、複素環式基、アシル基のうちで炭素原子を1個以上有するものからなるグループの中からなされ、Mは三価の金属原子である);以下の一般式で表わされるタイプの有機金属化合物:
【化5】

(ただし、R1、R2、R3、R4、R5の各選択は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、複素環式基、アシル基のうちで炭素原子を1個以上有するものからなるグループの中からなされ、Mは三価の金属原子である);以下の一般式で表わされるタイプの有機金属化合物:
【化6】

(ただし、R1、R2、R3、R4の各選択は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、複素環式基、アシル基のうちで炭素原子を1個以上有するものからなるグループの中からなされ、Mは四価の金属原子である);仕事関数が4.5eV未満であって水分の存在により酸化され得る金属;ならびにこれらの組み合わせからなるグループの中からなされる、請求項35に記載の方法。
【請求項46】
上記水分吸収材料を上記第2の保護カバーの上または内部に配置する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
上記水分吸収材料を上記基板に接して配置する、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
上記基板の上面の上方に第1の保護カバーを形成する前に、上記ELユニットの上に保護層を設ける操作をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項49】
請求項48に記載の保護層が封止領域全体の上方に設けられている封止されたOLEDデバイス。
【請求項50】
上記保護層が、金属酸化物、金属窒化物、金属オキシ窒化物、ダイヤモンド様炭素、半導体酸化物、半導体窒化物、半導体オキシ窒化物のいずれかを含んでいる、請求項49に記載の封止されたOLEDデバイス。
【請求項51】
上記保護層が有機化合物を含んでいる、請求項49に記載の封止されたOLEDデバイス。
【請求項52】
上記保護層が、アルミニウム酸化物、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、オキシ窒化ケイ素のいずれかである、請求項50に記載の封止されたOLEDデバイス。
【請求項53】
上記保護層が、有機材料と無機材料の一方または両方からなる複数の層を含んでいる、請求項49に記載の封止されたOLEDデバイス。
【請求項54】
上記保護層が、熱による物理的蒸着、スパッタリング蒸着、電子ビーム蒸着、化学蒸着、プラズマ支援化学蒸着、レーザー誘導化学蒸着、原子層蒸着、スピン・コーティング、スクリーン印刷、分散法のいずれかによって設けられる、請求項49に記載の封止されたOLEDデバイス。
【請求項55】
上記基板が堅固であるか可撓性を持ち、ガラス、プラスチック、金属、セラミック、半導体、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物、半導体酸化物、半導体窒化物、半導体硫化物、炭素、またはこれらの組み合わせを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項56】
上記保護カバーが堅固であるか可撓性を持ち、ガラス、プラスチック、金属、セラミック、半導体、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物、半導体酸化物、半導体窒化物、半導体硫化物、炭素、またはこれらの組み合わせを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項57】
上記第1の保護カバーが、光学的に活性な1つ以上の追加層を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項58】
光学的に活性な1つ以上の上記層がカラー・フィルタ・アレイを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
光学的に活性な1つ以上の上記層が色変更モジュールを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
光学的に活性な1つ以上の上記層が反射防止層を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
光学的に活性な1つ以上の上記層が偏光層を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項62】
光学的に活性な1つ以上の上記層が光抽出層を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項63】
上記保護カバーと上記基板の間にある封止材料または他の密封材料が上記チェンバーの一部を画定している、請求項35に記載の方法。
【請求項64】
上記封止材料が、有機材料、または有機材料と無機材料の組み合わせである、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
上記有機封止材料の選択が、エポキシ、ポリウレタン、アクリレート、シリコーン、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ならびにこれらの組み合わせからなるグループの中からなされる、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
上記封止材料の選択が、ガラス、セラミック、金属、半導体、金属酸化物、半導体酸化物、金属ハンダ、ならびにこれらの組み合わせからなるグループの中からなされる、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
上記封止材料が、上記保護カバーと上記基板の間に接合され、その接合ステップが、プレス、溶融、冷却、反応硬化、またはこれらの組み合わせによって実現される、請求項63に記載の方法。
【請求項68】
上記反応に、熱、照射、2種類以上の成分の混合、周囲にある水分への曝露、周囲にある酸素の除去、またはこれらの組み合わせから生じる反応が含まれる、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
上記第1のカバーと上記第2のカバーの一方または両方が通気穴を備えていて、上記接合ステップの後にその通気穴を通気穴シール材料で封止する、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
上記基板と一方または両方の保護カバーの間に1つ以上のギャップが残るように上記封止材料を配置し、そのギャップを上記結合ステップの後に封止する、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
上記基板と一方または両方の保護カバーの間に1つ以上のギャップが残るように上記封止材料を配置し、その封止材料が広がってそのギャップに満たされるまで過剰な周囲ガスをそのギャップを通じて排出させる、請求項67に記載の方法。
【請求項72】
上記結合ステップの間に、上記基板と上記保護カバーと上記封止材料の周囲の初期圧よりも周囲圧を大きくして上記基板と上記保護カバーと上記封止材料の間に画定される空間内の圧力とその上昇した周囲圧の差を小さくすることにより、封止材料の変形を防ぐ、請求項67に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【公表番号】特表2008−508682(P2008−508682A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523608(P2007−523608)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/024917
【国際公開番号】WO2006/019857
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】