説明

トナー及びその製造方法、並びに現像剤

【課題】トナー組成液を吐出する際に、吐出孔が詰まることなく長時間安定してトナー組成液を吐出でき、粒度分布が狭く、均一で小粒径、かつ、低温で定着できるトナーを得ることができるトナーの製造方法、粒度分布が狭く、均一で小粒径、かつ、優れた低温定着性を有し、低消費電力で画像形成できるトナー、及び該トナーを含有する現像剤の提供。
【解決手段】少なくとも結着樹脂及び離型剤を含有するトナー組成物を有機溶剤に溶解又は分散させたトナー組成液を調製するトナー組成液調製工程と、少なくとも1つの吐出孔から前記トナー組成液を吐出して液滴化する液滴形成工程と、前記液滴化したトナー組成液中の前記有機溶剤を乾燥させて固化させる乾燥工程と、を含み、前記結着樹脂が、少なくとも結晶性ポリエステル樹脂を含有し、前記結晶性ポリエステル樹脂が、液滴化する前のトナー組成液中に溶解しているトナーの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真、静電記録、静電印刷等における静電荷像を現像するためのトナー、前記トナーの製造方法、及び前記トナーを含有する現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真、静電記録、静電印刷等において使用されるトナーは、その現像工程において、例えば、静電荷像が形成されている静電潜像担持体等の像担持体に一旦付着され、次に転写工程において静電潜像担持体から転写紙等の転写媒体に転写された後、熱による定着工程において、トナーを溶融させて紙面に定着される。その際、潜像保持面上に形成される静電荷像を現像する為の現像剤として、キャリアとトナーから成る二成分系現像剤やキャリアを必要としない一成分系現像剤(磁性トナー、非磁性トナー)が知られている。
【0003】
従来、電子写真、静電記録、静電印刷などに用いられる乾式トナーとしては、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等のトナーバインダーを着色剤などと共に溶融混練し微粉砕した、いわゆる粉砕型トナーが広く用いられている。
しかしながら、近年高画質な画像を得るためトナーが小粒径化する傾向にあり、前記粉砕法では、6μm以下の小粒径にすると粉砕効率が低下するとともに分級によるロスが大きくなり、生産性が低くコストアップとなってしまう点で問題であった。
【0004】
また、最近では、懸濁重合法、乳化重合凝集法といったいわゆる重合型トナーや、ポリマー溶解懸濁法とよばれる体積収縮を伴う工法が提案され実用化もされている(特許文献1参照)。これらのトナーは、小粒径のトナーを製造する点では優れている。
しかしながら、水系媒体中で分散剤を使用することを前提としているためにトナーの帯電特性を損なう分散剤がトナー表面に残存し、環境安定性が損なわれるなどの不具合が発生したり、これを除去するために非常に大量の洗浄水を必要としたりすることが知られており、必ずしも製法として満足のいくものではない点で問題であった。
【0005】
これに代わるトナーの製造方法として、圧電パルスを利用して微小ノズルから微小液滴を形成し、更にこれを乾燥固化してトナー化する工法が提案されている(特許文献2参照)。また、ノズル内の熱膨張を利用し、微小液滴を形成し、これを乾燥固化してトナー化する工法が提案されている(特許文献3参照)。更に、音響レンズを利用し、微小液滴を形成し、これを乾燥固化してトナー化する工法が提案されている(特許文献4参照)。
しかしながら、これらの方法では、トナーの小粒径化は容易であるが、一つのノズルから単位時間あたりに吐出できる液滴数が少なく、生産性が悪いという問題があると同時に、液滴同士の合一による粒度分布の広がりが避けられず、均一粒径のトナーが得られないばかりでなく、分級によるロスを伴う場合がある点で問題であった。
【0006】
また最近では、省エネルギー化のため、低温で溶融するトナーを使用して、定着工程で発生するエネルギーを低減している。そのため、低温で溶融できる結晶性樹脂をトナーに用いることが提案されている(例えば、特許文献5〜8参照)。
しかしながら、これらの結晶性樹脂を、微小液滴形成によるトナー製法で作製した場合は、溶媒に結晶性樹脂が溶解されにくいため分散体として使用することとなり、吐出孔で結晶性樹脂が詰まる点で問題であった。
【0007】
したがって、トナー組成液を吐出する際に、吐出孔が詰まることなく長時間安定してトナー組成液を吐出でき、粒度分布が狭く、均一で小粒径、かつ、低温で定着できるトナーを得ることができるトナーの製造方法、粒度分布が狭く、均一で小粒径、かつ、優れた低温定着性を有し、低消費電力で画像形成できるトナー、及び該トナーを含有する現像剤の提供が求められているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、トナー組成液を吐出する際に、吐出孔が詰まることなく長時間安定してトナー組成液を吐出でき、粒度分布が狭く、均一で小粒径、かつ、低温で定着できるトナーを得ることができるトナーの製造方法、粒度分布が狭く、均一で小粒径、かつ、優れた低温定着性を有し、低消費電力で画像形成できるトナー、及び該トナーを含有する現像剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。即ち、本発明のトナーの製造方法は、少なくとも結着樹脂及び離型剤を含有するトナー組成物を有機溶剤に溶解又は分散させたトナー組成液を調製するトナー組成液調製工程と、少なくとも1つの吐出孔から前記トナー組成液を吐出して液滴化する液滴形成工程と、前記液滴化したトナー組成液中の前記有機溶剤を固化させて粒子を形成する乾燥工程と、を含み、前記結着樹脂が、少なくとも結晶性ポリエステル樹脂を含有し、前記結晶性ポリエステル樹脂が、液滴化する前のトナー組成液中に溶解していることにより、前記トナー組成液を吐出する際に、吐出孔が詰まることなく長時間安定してトナー組成液を吐出でき、粒度分布が狭く、均一で小粒径、かつ、低温で定着できるトナーを得ることができることを知見し、本発明の完成に至った。
【0010】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも結着樹脂及び離型剤を含有するトナー組成物を有機溶剤に溶解又は分散させたトナー組成液を調製するトナー組成液調製工程と、少なくとも1つの吐出孔から前記トナー組成液を吐出して液滴化する液滴形成工程と、前記液滴化したトナー組成液中の前記有機溶剤を乾燥させて固化させる乾燥工程と、を含み、前記結着樹脂が、少なくとも結晶性ポリエステル樹脂を含有し、前記結晶性ポリエステル樹脂が、液滴化する前のトナー組成液中に溶解していることを特徴とするトナーの製造方法である。
<2> 液滴形成工程が、少なくとも1つの吐出孔が形成された液柱共鳴液室内のトナー組成液に振動を付与して液柱共鳴による定在波を形成し、前記定在波の腹となる領域に形成された前記吐出孔から前記トナー組成液を吐出して液滴を形成する工程である前記<1>に記載のトナーの製造方法である。
<3> 液滴形成工程が、同じ開口径を有する複数の吐出孔が形成された薄膜に振動手段により振動を付与し、前記吐出孔からトナー組成液を吐出して液滴を形成する工程である前記<1>に記載のトナーの製造方法である。
<4> 結晶性ポリエステル樹脂が、2価のアルコール成分及び2価の酸成分を少なくとも含有し、前記2価のアルコール成分及び前記2価の酸成分の少なくともいずれかが、少なくとも2種のモノマーを含有する前記<1>から<3>のいずれかに記載のトナー製造方法である。
<5> 結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量が、1,000〜100,000である前記<1>から<4>のいずれかに記載のトナー製造方法である。
<6> 結着樹脂中に結晶性ポリエステル樹脂を3質量%〜50質量%含有する前記<1>から<5>のいずれかに記載のトナーの製造方法である。
<7> トナー粒子中の離型剤の含有量が3質量%〜20質量%である前記<1>から<6>のいずれかに記載のトナーの製造方法である。
<8> 結着樹脂が結晶性ポリエステル樹脂以外の樹脂を含有し、前記結晶性ポリエステル樹脂以外の樹脂のTgが50℃〜70℃である前記<1>から<7>のいずれかに記載のトナーの製造方法である。
<9> 前記<1>から<8>のいずれかに記載のトナーの製造方法により得られ、重量平均粒径が1μm〜10μmであり、粒度分布(重量平均粒径/個数平均粒径)が、1〜1.15の範囲にあることを特徴とするトナーである。
<10> 前記<9>に記載のトナーとキャリアとを少なくとも含有することを特徴とする現像剤である。
【0011】
<11> 2価のアルコール成分が、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、及び1,12−ドデカンジオールから選択される少なくとも1種である前記<4>から<8>のいずれかに記載のトナーの製造方法である。
<12> 2価の酸成分が、フマル酸、1,4−ブタン二酸、1,6−ヘキサン二酸、1,8−オクタン二酸、1,10−デカン二酸、及び1,12−ドデカン二酸から選択される少なくとも1種である前記<4>から<8>及び<11>のいずれかに記載のトナーの製造方法である。
<13> 有機溶剤が、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、トルエンから選択される少なくとも1種である前記<1>から<8>及び<11>から<12>のいずれかに記載のトナーの製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、トナー組成液を吐出する際に、吐出孔が詰まることなく長時間安定してトナー組成液を吐出でき、粒度分布が狭く、均一で小粒径、かつ、低温で定着できるトナーを得ることができるトナーの製造方法、粒度分布が狭く、均一で小粒径、かつ、優れた低温定着性を有し、低消費電力で画像形成できるトナー、及び該トナーを含有する現像剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、液柱共鳴定在波の速度及び圧力変動の定在波の一例を示す概略図である。
【図2A】図2Aは、液柱共鳴液室の一例を示す概略断面図である。
【図2B】図2Bは、液柱共鳴液室における吐出孔の一例であり、図2Aを拡大した概略断面図である。
【図2C】図2Cは、液柱共鳴液室における吐出孔の一例であり、図2Aを拡大した概略断面図である。
【図2D】図2Dは、液柱共鳴液室における吐出孔の一例であり、図2Aを拡大した概略断面図である。
【図2E】図2Eは、液柱共鳴液室における吐出孔の一例であり、図2Aを拡大した概略断面図である。
【図2F】図2Fは、図2B〜Eの吐出孔を下から見た構造の一例を表す概略図である。
【図3】図3は、本発明の一実施の形態に係るトナーの製造方法を実施するためのトナー製造装置の全体を示す断面図の一例である。
【図4A】図4Aは、図3の液滴形成ユニットにおける液滴吐出ヘッドの一例を示す断面図である。
【図4B】図4Bは、図3の液滴形成ユニットを示すA−A’線断面図である。
【図5A】図5Aは、N=1の場合の速度及び圧力変動の定在波の一例を示す概略図である。
【図5B】図5Bは、N=2の場合の速度及び圧力変動の定在波の一例を示す概略図である。
【図5C】図5Cは、N=2の場合の速度及び圧力変動の定在波の一例を示す概略図である。
【図5D】図5Dは、N=3の場合の速度及び圧力変動の定在波の一例を示す概略図である。
【図5E】図5Eは、N=4の場合の速度及び圧力変動の定在波の一例を示す概略図である。
【図5F】図5Fは、N=4の場合の速度及び圧力変動の定在波の一例を示す概略図である。
【図5G】図5Gは、N=5の場合の速度及び圧力変動の定在波の一例を示す概略図である。
【図6A】図6Aは、液滴形成ユニットにおける液滴吐出ヘッド内の液柱共鳴流路で生じる液柱共鳴現象の様子の一例を示す概略図である。
【図6B】図6Bは、液滴形成ユニットにおける液滴吐出ヘッド内の液柱共鳴流路で生じる液柱共鳴現象の様子の一例を示す概略図である。
【図6C】図6Cは、液滴形成ユニットにおける液滴吐出ヘッド内の液柱共鳴流路で生じる液柱共鳴現象の様子の一例を示す概略図である。
【図6D】図6Dは、液滴形成ユニットにおける液滴吐出ヘッド内の液柱共鳴流路で生じる液柱共鳴現象の様子の一例を示す概略図である。
【図6E】図6Eは、液滴形成ユニットにおける液滴吐出ヘッド内の液柱共鳴流路で生じる液柱共鳴現象の様子の一例を示す概略図である。
【図7】図7は、本発明のトナーの製造方法を実施するための膜振動タイプ(間接振動型及び直接振動型)の吐出手段の液滴吐出原理を示すグラフである。
【図8A】図8Aは、本発明のトナーの製造方法を実施するための膜振動タイプ(間接振動型)の吐出手段の構造の一例を示す概略図である。
【図8B】図8Bは、本発明のトナーの製造方法を実施するための膜振動タイプ(間接振動型)の吐出手段を下から見た構造の一例を示す概略図である。
【図9A】図9Aは、本発明のトナーの製造方法を実施するための膜振動タイプ(直接振動型)の吐出手段の構造の一例を示す概略図である。
【図9B】図9Bは、本発明のトナーの製造方法を実施するための膜振動タイプ(直接振動型)の吐出手段を下から見た構造の一例を示す概略図である。
【図10A】図10Aは、本発明の一実施の形態に係るトナーの製造方法を実施するためのトナー製造装置の全体を示す断面図の一例である。
【図10B】図10Bは、本発明のトナーの製造方法の実施形態の一例を説明する図である。
【図11】図11は、本発明のトナーの製造方法を実施するために液滴を吐出する液滴吐出ユニットの構造の一例を示す概略図である。
【図12】図12は、従来のトナーの製造方法であって、搬送気流がない場合の液滴の落下状況を示す図である。
【図13】図13は、本発明のトナーの製造方法で得られたトナー粒度分布の一例を示す図である。
【図14】図14は、従来のトナーの製造方法で得られたトナー粒度分布の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(トナー及びトナーの製造方法)
本発明のトナーの製造方法は、トナー組成液調製工程と、液滴形成工程と、乾燥工程と、を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
本発明のトナーは、結着樹脂と、離型剤と、を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含有する。本発明のトナーは、本発明の前記トナーの製造方法により製造される。
以下、本発明のトナーの製造方法の説明と併せて、本発明のトナーについても詳細に説明する。
【0015】
<トナーの製造方法>
<<トナー組成液調製工程>>
前記トナー組成液調製工程は、トナー組成物を有機溶剤に溶解乃至分散させたトナー組成液を調製する工程である。
【0016】
−トナー組成物−
前記トナー組成物は、結着樹脂と、離型剤と、を少なくとも含有し、必要に応じて、更にその他の成分を含有する。
【0017】
−−結着樹脂−−
前記結着樹脂は、少なくとも結晶性ポリエステル樹脂を含有し、必要に応じて更に、前記結晶性ポリエステル樹脂以外の結着樹脂等のその他の成分を含有する。
【0018】
−−−結晶性ポリエステル樹脂−−−
一般的な結晶性ポリエステル樹脂は、有機溶剤中に溶解し難いため、有機溶剤中に結晶性ポリエステル樹脂を微分散させるが、微分散した結晶性ポリエステル樹脂は、有機溶剤中で凝集し、吐出孔(以下、「ノズル」と称することがある。)が詰まりやすくなるという問題がある。
一方、本発明において、前記結晶性ポリエステル樹脂は、有機溶剤に溶解される。これにより、吐出孔の詰まりを防止することができ、トナー組成液を吐出する際に、長時間安定してトナー組成液を吐出できる点で有利である。
したがって、結晶性ポリエステル樹脂を溶解させるためには、結晶性ポリエステル樹脂の種類、有機溶剤の種類、溶剤温度を適切に組み合わせることにより、溶解させることができる。
また、前記結晶性ポリエステルをトナー組成物中に含有させると、該トナー組成物を用いて製造されたトナーは、低温で定着できる点でも有利である。
【0019】
前記結晶性ポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2価のアルコール(ジオール)成分と、2価の酸(ジカルボン酸)成分とを主成分として合成される直鎖状の樹脂が、結晶性を得られやすい点で好ましい。
【0020】
前記2価のアルコールとしては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、炭素数2〜12の飽和脂肪族ジオール化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記2価のアルコールの具体例としては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、又はこれらの誘導体などが挙げられる。
【0021】
また、1価のアルコール成分を更に添加することにより、前記結晶性ポリエステル樹脂分子の末端がキャップされ、結晶性ポリエステル樹脂の分子量を小さくすることができ、結晶性ポリエステル樹脂の有機溶剤への溶解度が高くなる点で好ましい。
前記1価のアルコール成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記2価の酸としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、二重結合(C=C結合)を有する炭素数2〜12のジカルボン酸、炭素数2〜12の飽和ジカルボン酸などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記2価の酸の具体例としては、フマル酸、1,4−ブタン二酸、1,6−ヘキサン二酸、1,8−オクタン二酸、1,10−デカン二酸、1,12−ドデカン二酸、又はこれらの誘導体などが挙げられる。
【0023】
また、1価の酸成分を更に添加することにより、結晶性ポリエステル樹脂分子の末端がキャップされ、結晶性ポリエステル樹脂の分子量を小さくすることができ、有機溶剤への溶解度が高くなる点で好ましい。
前記1価の酸成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸などの飽和脂肪酸、若しくは、不飽和脂肪酸、安息香酸、ピルビン酸。などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
また、前記2価のアルコール成分と、前記2価の酸成分のどちらか一方又は両方について、2種類以上の2価のアルコール成分又は、2種類以上の2価の酸成分を使用することにより、分子同士の規則性に乱れが生じ、結晶化度が低下する。これにより、前記結晶性ポリエステル樹脂がほぐれやすくなり、有機溶剤への溶解度が高くなる点で好ましい。
【0025】
前記結晶性ポリエステル樹脂の合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記アルコール成分と、前記酸成分とを、適当な触媒下で縮重合反応させる方法などが挙げられる。
【0026】
前記結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1,000〜100,000が好ましく、5,000〜50,000がより好ましく、15,000〜20,000が特に好ましい。前記個数平均分子量が、前記好ましい範囲内であると、前記結晶性ポリエステル樹脂の有機溶剤への溶解度が高くなる点で好ましい。
前記結晶性ポリエステル樹脂の分子量分布は、THFを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0027】
前記結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃〜130℃が好ましく、50℃〜100℃がより好ましい。前記結晶性ポリエステル樹脂のTgが、50℃未満であると、トナーの保存性が悪くなることがあり、130℃を超えると、低温で定着することができないことがある。
【0028】
前記Tgは、例えば、示差走査熱量測定(DSC)で測定することができる。
具体的には、試料約10mgをアルミ製試料容器に入れ、それをホルダユニットにのせ、電気炉中にセットする。まず、室温から昇温速度10℃/分間で150℃まで加熱した後、150℃で10分間放置し、室温まで試料を冷却して10分間放置後、窒素雰囲気下で再度150℃まで昇温速度10℃/分間で加熱してDSCの測定を行う。Tgは、示差走査熱量測定装置の解析システムを用いて、Tg近傍の吸熱カーブの接線とベースラインとの接点から算出することができる。
前記結晶性ポリエステル樹脂は、前記融点温度未満では、ある程度規則的に分子が並び結晶構造を持つものであり、融点温度以上になると、この結晶構造は崩れ、ランダムな構造をとり、溶融した状態となるため、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを指す。
【0029】
前記結晶性ポリエステル樹脂の酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0mgKOH/g〜70mgKOH/gが好ましく、1.0mgKOH/g〜50mgKOH/gがより好ましい。前記酸価が70mgKOH/gを超えると、帯電の環境変動が大きくなることがある。
【0030】
前記酸化は、例えば、基本操作はJIS K−0070に準じて、以下の方法で測定することができる。
(1)試料は予め結着樹脂(重合体成分)以外の添加物を除去して使用するか、結着樹脂及び架橋された結着樹脂以外の成分の酸価及び含有量を予め求めておく。試料の粉砕品0.5g〜2.0gを精秤し、重合体成分の重さをW(g)とする。例えば、トナーから結着樹脂の酸価を測定する場合は、着色剤又は磁性体等の酸価及び含有量を別途測定しておき、計算により結着樹脂の酸価を求める。
(2)300mLのビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(体積比4/1)の混合液150mLを加え溶解する。
(3)0.1mol/LのKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する。
(4)この時のKOH溶液の使用量をS(mL)とし、同時にブランクを測定し、この時のKOH溶液の使用量をB(mL)とし、下記式で算出する。ただしfは、KOHのファクターである。
酸価[mgKOH/g]=[(S−B)×f×5.61]/W
【0031】
前記結晶性ポリエステル樹脂が、前記有機溶剤に溶解しているか否かを判断する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、目視にて透明性を確認する方法、濁度を測定する方法、光散乱度を測定する方法、透過率を測定する方法などが挙げられる。
なお、本発明において、前記結晶性ポリエステル樹脂が溶解しているものは、有機溶剤に結晶性ポリエステルを溶解したときに、溶解液が目視にて透明になっている状態のものである。不溶解の場合は、結晶性ポリエステルが溶け残っているか、若しくは、白濁して濁っている状態を示す。
【0032】
前記結着樹脂中の前記結晶性ポリエステル樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3質量%〜50質量%が好ましく、5質量%〜30質量%がより好ましい。前記結晶性ポリエステル樹脂の含有量が、3質量%未満であると、結晶性ポリエステル樹脂の量が少なすぎて、低温定着の効果が十分に得られないことがあり、50質量%を超えると、結晶性ポリエステル量が多すぎて、定着時にトナーの溶融粘度が下がりすぎ、ホットオフセットが発生しやすくなることがある。
【0033】
−−−結晶性ポリエステル樹脂以外の結着樹脂−−−
前記結晶性ポリエステル樹脂以外の結着樹脂(以下、「その他の結着樹脂」と称することがある。)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記結晶性ポリエステル樹脂が有機溶剤中に溶解させて用いられるため、前記その他の結着樹脂も有機溶剤中に溶解できるものであることが、前記結晶性ポリエステル樹脂と、前記その他の結着樹脂とがよく混合され、分散タイプの結晶性ポリエステル樹脂を使用する場合に比較して、更に低温定着化が図ることができる点で好ましい。
【0034】
このようなその他の結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体等のビニル重合体、これらの単量体又は2種類以上からなる共重合体、ポリエステル系重合体、ポリオール樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油系樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フエニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−アミルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−へキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン等のスチレン、又はその誘導体などが挙げられる。
【0036】
前記アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ドデシル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸、又はそのエステル類などが挙げられる。
【0037】
メタクリル系単量体としては、例えば、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸又はそのエステル類などが挙げられる。
【0038】
前記その他の結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂の場合、樹脂成分のテトラヒドロフラン(THF)に可溶分のGPCによる分子量分布で、分子量が3,000〜50,000(個数平均分子量換算)の領域に少なくとも1つのピークが存在する。また、100,000以上の領域に少なくとも1つのピークが存在する樹脂が、定着性、オフセット性、保存性の点で好ましい。
また、THF可溶分としては、個数平均分子量分布が100,000以下の成分が50%〜90%となるような樹脂が好ましく、個数平均分子量が5,000〜30,000の領域にメインピークを有する樹脂がより好ましく、5,000〜20,000の領域にメインピークを有する樹脂が特に好ましい。
【0039】
前記ビニル重合体、又は共重合体を形成する他のモノマーの例としては、以下の(1)〜(18)などが挙げられる。
(1)エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のモノオレフイン類;(2)ブタジエン、イソプレン等のポリエン類;(3)塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;(4)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;(5)ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;(6)ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;(7)N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;(8)、ビニルナフタリン類;(9)アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体等;(10)マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸;(11)マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物;(12)マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステル、シトラコン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、アルケニルコハク酸モノメチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、メサコン酸モノメチルエステル等の不飽和二塩基酸のモノエステル;(13)ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸等の不飽和二塩基酸エステル;(14)クロトン酸、ケイヒ酸等のα,β−不飽和酸;(15)クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物等のα,β−不飽和酸無水物;(16)該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物、アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステル等のカルボキシル基を有するモノマー;(17)2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;(18)4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルへキシル)スチレンの等のヒドロキシ基を有するモノマー。
【0040】
前記その他の結着樹脂のビニル重合体、又は共重合体は、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよい。
この場合に用いられる架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6へキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの等のアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類;ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの等のエーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類などが挙げられる。
【0041】
その他、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物、ジメタクリレート化合物も挙げられる。ポリエステル型ジアクリレート類としては、例えば、商品名MANDA(日本化薬株式会社製)などが挙げられる。
【0042】
多官能の架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、又は以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートなどが挙げられる。
【0043】
これらの中でも、前記その他の結着樹脂としては、定着性、耐オフセット性の点から、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を1つ含む結合鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が好ましく、スチレン系共重合体、スチレン−アクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合わせが特に好ましい。
【0044】
これらの架橋剤は、他のモノマー成分100質量部に対して、0.01質量部〜10質量部用いることが好ましく、0.03質量部〜5質量部用いることがより好ましい。
【0045】
前記ビニル重合体又は共重合体の製造に用いられる重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロへキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2’,4’−ジメチル−4’−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパ−オキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロへキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジークミルパーオキサイド、α−(tert−ブチルパーオキシ)イソプロピルべンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルへキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−エトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロへキシルスルホニルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサレート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチル−オキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、tert−ブチルパーオキアリルカーボネート、イソアミルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキシへキサハイドロテレフタレート、tert−ブチルパーオキシアゼレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
前記ポリエステル系重合体は、例えば、アルコール成分と、酸成分とから合成することができる。前記ポリエステル系重合体を形成するモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、以下のものなどが挙げられる。
【0047】
2価のアルコール成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、又は、ビスフェノールAにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテルが重合して得られるジオールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
また、ポリエステル樹脂を架橋させるためには、3価以上のアルコールを併用することが好ましい。
前記3価以上の多価アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、例えば、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
前記酸成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のべンゼンジカルボン酸類又はその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類又はその無水物;マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物などがあげられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
また、ポリエステル樹脂を架橋させるためには、3価以上の酸を併用することが好ましい。
前記3価以上の多価カルボン酸成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリメット酸、ピロメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、又はこれらの無水物、部分低級アルキルエステルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
前記その他の結着樹脂がポリエステル系樹脂の場合、ポリエステル系樹脂の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、個数平均分子量で、3,000〜50,000の領域に少なくとも1つのピークが存在する結晶性ポリエステル樹脂が、トナーの定着性、耐オフセット性の点で好ましい。
また、THF可溶分としては、個数平均分子量が100,000以下の成分が、60%〜100%となるような結晶性ポリエステル樹脂が好ましく、個数平均分子量が5,000〜20,000の領域に少なくとも1つのピークが存在するポリエステル系樹脂がより好ましい。
前記分子量分布は、THFを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0052】
前記その他の結着樹脂がポリエステル樹脂の場合、その酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1mgKOH/g〜100mgKOH/gが好ましく、0.1mgKOH/g〜70mgKOH/gがより好ましく、0.1mgKOH/g〜50mgKOH/gが特に好ましい。
【0053】
また、前記ポリエステル系重合体、前記ビニル重合体と、前記その他の樹脂とを併用する場合、前記その他の結着樹脂全体の酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1mgKOH/g〜50mgKOH/gを有する樹脂を60質量%以上有するものが好ましい。
前記酸価は、例えば、基本操作はJIS K−0070に準じて、前記同様の方法で測定することができる。
【0054】
前記その他の結着樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナーの保存性の観点から、35℃〜80℃が好ましく、50℃〜70℃がより好ましい。前記その他の結着樹脂のTgが、35℃未満であると、高温雰囲気下でトナーが劣化しやすく、また定着時にオフセットが発生しやすくなることがあり、80℃を超えると、定着性が低下することがある。
前記Tgは、例えば、示差走査熱量測定(DSC)装置により測定することができる。
【0055】
−−離型剤−−
前記離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ワックス類が好ましい。
前記ワックス類としては、特に制限はなく、通常使用されるものを適宜選択して使用することができ、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合体;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう等の植物系ワックス;みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペテロラタム等の鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの等の脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したものなどが挙げられる。
【0056】
前記ワックス類の例としては、更に、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、あるいは更に直鎖のアルキル基を有する直鎖アルキルカルボン酸類等の飽和直鎖脂肪酸;プランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸等の不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウピルアルコール、セリルアルコール、メシリルアルコール、あるいは長鎖アルキルアルコール等の飽和アルコール;ソルビトール等の多価アルコール;リノール酸アミド、オレフィン酸アミド、ラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド;メチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセパシン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩;脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸等のビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス;ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化合物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
【0057】
前記ワックス類のより好ましい例としては、オレフィンを高圧下でラジカル重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィン重合時に得られる低分子量副生成物を精製したポリオレフィン、低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒等の触媒を用いて重合したポリオレフィン、放射線、電磁波又は光を利用して重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィンを熱分解して得られる低分子量ポリオレフィン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ジントール法、ヒドロコール法、アーゲ法等により合成される合成炭化水素ワックス、炭素数1個の化合物をモノマーとする合成ワックス、水酸基又はカルボキシル基等の官能基を有する炭化水素系ワックス、炭化水素系ワックスと官能基を有する炭化水素系ワックスとの混合物、これらのワックスを母体としてスチレン、マレイン酸エステル、アクリレート、メタクリレート、無水マレイン酸等のビニルモノマーでグラフト変性したワックスなどが挙げられる。
【0058】
また、これらのワックス類を、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は溶液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものなども挙げられる。また、低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものも好ましく用いられる。
これらの離型剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
前記離型剤の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性と耐オフセット性のバランスを取る点で、50℃〜140℃が好ましく、60℃〜120℃がより好ましい。前記離型剤の融点が、50℃未満であると、耐ブロッキング性が低下することがあり、140℃を超えると、耐オフセット効果が発現しにくくなることがある。
【0060】
前記離型剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する乾燥工程において固化されたトナー中に、3質量%〜20質量%含有することが好ましく、4質量%〜15質量%含有することがより好ましい。前記離型剤の含有量が、3質量%未満であると、定着の際に、定着ローラーがトナーが離型しにくくなり、オフセットが発生し易くなることがあり、20質量%を超えると、トナーの強度が弱くなり、耐久性がなくなることがある。
【0061】
−−その他の成分−−
前記トナー組成物中のその他の成分としては、特に制限はなく、従来の電子写真用トナー材料と同じもの等目的に応じて適宜選択することができ、例えば、着色剤、分散剤、帯電制御剤、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
−−−着色剤−−−
前記着色剤は、一般的にトナーに添加し、紙や画像保持体上で発色させるために用いられる。但し、画像の光沢付与、画像保護の目的で、クリアートナーのように着色剤を入れないトナーも存在する。本発明においては、着色剤を添加してもよく、添加しなくてもよいため、クリアートナーにも、一般的な着色トナーにも適応できる。
【0063】
前記着色剤としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びこれらの混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
前記着色剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する乾燥工程において固化されたトナー中に、1質量%〜15質量%となるように含有することが好ましく、3質量%〜10質量%となるように含有することがより好ましい。
【0065】
前記着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。
前記マスターバッチの製造又はマスターバッチと共に混練される結着樹脂としては、前記結着樹脂と同様のものを用いることができ、その他に、例えば、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0066】
前記マスターバッチは、着色剤とマスターバッチ用の結着樹脂とを高せん断力をかけて混合、混練して得る事ができる。この際、着色剤と結着樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いることができる。また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる、着色剤の水を含んだ水性ペーストを、結着樹脂と有機溶剤と共に混合混練し、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も使用できる。この方法は、着色剤のウエットケーキをそのまま用いる事ができ、乾燥する必要がない点で好適に使用される。混合混練するには、3本ロールミル等の高せん断分散装置が好適に使用される。
【0067】
前記マスターバッチの使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部〜20質量部が好ましい。
【0068】
前記着色剤を分散させる際の、前記マスターバッチ用の結着樹脂の酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30mgKOH/g以下が好ましく、20mgKOH/g以下がより好ましい。前記酸価が、30mgKOH/gを超えると、高湿下での帯電性が低下することや、顔料分散性が不十分となることがある。
前記酸価は、例えば、JIS K0070に準じて測定することができる。
【0069】
前記着色剤を分散させる際の、前記マスターバッチ用の結着樹脂のアミン価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1〜100が好ましく、10〜50がより好ましい。前記アミン価が、1未満又は100を超えると、顔料分散性が不十分となることがある。
前記アミン価は、例えば、JIS K7237に準じて測定することができる。
【0070】
−−分散剤−−
前記分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、顔料分散性の点で、結着樹脂との相溶性が高いことが好ましい。
前記分散剤の具体例としては、商品名で、「アジスパーPB821」、「アジスパーPB822」(以上、味の素ファインテクノ株式会社製)、「Disperbyk−2001」(ビックケミー株式会社製)、「EFKA−4010」(EFKA社製)、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
前記分散剤の重量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるスチレン換算重量での、メインピークの極大値の分子量で、500〜100,000が好ましく、顔料分散性の観点から、3,000〜100,000がより好ましく、5,000〜50,000が更に好ましく、5,000〜30,000が特に好ましい。重量平均分子量が、500未満であると、極性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがあり、100,000を超えると、溶剤との親和性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがある。
【0072】
前記分散剤の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記着色剤100質量部に対して、1質量部〜200質量部が好ましく、5質量部〜80質量部がより好ましい。前記分散剤の使用量が、1質量部未満であると、分散能が低くなることがあり、200質量部を超えると、帯電性が低下することがある。
【0073】
−帯電制御剤−
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩、及びサリチル酸誘導体の金属塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0074】
前記帯電制御剤の具体例としては、商品名で、ニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のEー82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業株式会社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業株式会社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット株式会社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物などが挙げられる。
【0075】
前記帯電制御剤の使用量としては、特に制限はなく、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法などに応じて適宜選択することができるが、前記結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部〜10質量部好ましく、0.2質量部〜5質量部がより好ましい。前記帯電制御剤の使用量が、10質量部を超えると、トナーの帯電性が大きすぎて画像濃度の低下を招くことがある。
【0076】
−有機溶剤−
前記有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記結着樹脂を溶解でき、分散体が安定に分散でき、容易に乾燥できる有機溶剤が好ましく選択される。
このような有機溶剤としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、メトキシエタノール、ジメトキシエタン、ジオキサン、ジオキソラン、アニソール等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、トルエン等の炭化水素類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、ブタノール等のアルコール類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、前記有機溶剤は、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、トルエンなどが、前記結晶性ポリエステルの溶解度が高い点で特に好ましい。
【0077】
−トナー組成液の調製方法−
前記トナー組成液の調製方法としては、前記トナー組成物を、前記有機溶剤に溶解又は分散させることができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー組成物と、前記有機溶剤とを、ホモミキサーやビーズミルなどを用いて混合する方法が、前記トナー組成物中の成分を、吐出孔の開口径に対して充分に微細にすることができ、吐出孔の詰まりを防止することができる点で好ましい。
前記トナー組成物中の、離型剤や、必要に応じてその他の成分は、前記結着樹脂と共に溶融混練してもよく、有機溶剤に溶解乃至分散させる際に添加してもよい。
また、前記トナー組成物と、前記有機溶剤とを熱溶融混練し、得られた混練物を各種溶媒に一度溶解乃至分散した液をトナー組成液としてもよい。
【0078】
前記トナー組成液の温度としては、特に制限はなく、有機溶剤の種類などに応じて適宜選択することができるが、前記有機溶剤の凝固点以上、沸点以下が好ましい。前記トナー組成液の温度が高い場合は、乾燥しやすくなり、トナー組成液の吐出孔が詰り易くなる。そのため、トナー組成液の吐出孔付近に有機溶剤の蒸気を当てるなどして、乾燥を防ぐ必要が生じる。一方、トナー組成液の温度が低い場合は、前記結晶性ポリエステルが溶解しないことがある。
【0079】
前記トナー組成液の固形分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5質量%〜40質量%が好ましい。前記固形分が、5質量%未満であると、生産性が低下することや、前記離型剤や着色剤等のその他の成分の分散体が沈降や凝集を起こしやすくなるためトナー粒子ごとの組成が不均一になりやすく、トナー品質が低下することがある。また、前記固形分が40質量%を超えると、小粒径のトナーが得られないことがある。
【0080】
<<液滴形成工程>>
前記液滴形成工程は、少なくとも1つの吐出孔から前記トナー組成液を吐出して液滴を形成する工程である。前記液滴形成工程において、前記トナー組成液を吐出して液滴を形成する方法としては、粒度分布が狭い液滴を得ることができ、トナーの生産性を確保できる方法であれば、特に制限はなく、公知の方法の中から目的に応じて適宜選択することができる。
液滴の粒径分布が狭く、トナーの生産性を確保する方法としては、例えば、(1)少なくとも1つの吐出孔が形成された液柱共鳴液室内のトナー組成液に振動手段により振動を付与して液柱共鳴による定在波を形成し、前記定在波の腹となる領域に形成された前記吐出孔から前記トナー組成液を吐出して液滴化する態様(以下、「液柱共鳴方式」と称することがある。)、(2)同じ開口径を有する複数の吐出孔が形成された薄膜に振動手段により振動を付与し、前記吐出孔からトナー組成液を吐出して液滴化する態様(以下、「膜振動方式」と称することがある。)が好ましい。また、(3)トナー組成液を貯留する貯留部を加圧して、該貯留部が有する貫通孔より前記トナー組成液を吐出させて液柱を形成し、該液柱に振動手段により微細な振動を与え、該液柱にレイリー分裂を誘起させる態様を用いることもできる。液柱にレイリー分裂を誘起させる態様(以下、「レイリー分裂方式」と称することがある。)としては、例えば、特開2007−199463号公報に記載の方法を用いることができる。
【0081】
−液柱共鳴方式−
前記液柱共鳴方式は、前記液滴形成工程において、前記吐出孔が形成された液柱共鳴液室内の前記トナー組成液に振動手段により振動を付与して液柱共鳴により圧力定在波を形成し、該圧力定在波の腹となる領域に形成された前記吐出孔から前記トナー組成液を液滴状に吐出することを必須とする液滴形成方法である。
【0082】
前記吐出孔としては、前記圧力定在波の腹となる領域に形成されたものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記圧力定在波の腹となる領域の少なくとも1つに対して、複数形成されていることが好ましく、また、1つの液柱共鳴液室に、複数形成されていることが好ましい。
【0083】
前記「圧力定在波の腹となる領域」とは、液柱共鳴定在波の圧力波において振幅が大きく、圧力変動が大きい領域であり、かつ液滴を吐出するのに十分な大きさの圧力変動を有する領域である。そのような圧力定在波の腹となる領域としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、図1及び図2Aに示すように、前記圧力定在波の振幅が極大となる位置(速度定在波としての節)から極小となる位置に向かって±1/3波長が好ましく、±1/4波長がより好ましい。
前記吐出孔が、前記圧力定在波の腹となる領域に形成されていると、複数の吐出孔が開口されていても、それぞれの吐出孔からほぼ均一な液滴を形成することができ、更には効率的に液滴の吐出を行うことができ、吐出孔の詰まりも生じ難くなる点で好ましい。
【0084】
前記圧力定在波の腹となる領域の少なくとも1つに対して、形成された吐出孔の個数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1個〜20個が好ましく、4個〜15個がより好ましく、4個〜10個が特に好ましい。前記吐出孔の個数は多いほど生産性が高くなるが、20個を超えると、吐出孔が密集しすぎ、吐出した液滴が合体して粗大な粒子となって画質に悪影響を及ぼすことがある。
【0085】
前記1つの液柱共鳴液室に形成された吐出孔の個数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1つでも構わないが、複数個配置することが生産性の観点から好ましく、2個〜100個がより好ましく、4個〜60個が更に好ましく、4個〜20個が特に好ましい。前記吐出孔の個数が、100個を超えると、100個の吐出孔から所望のトナー組成液の液滴を形成させる場合に、前記振動手段に与える電圧を高く設定する必要が生じ、前記振動手段の挙動が不安定となることがある。また、4個〜20個の場合、定在波が安定し、かつ生産性が保たれる。
【0086】
前記吐出孔の開口径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜40μmが好ましく、2μm〜15μmがより好ましく、6μm〜12μmが特に好ましい。前記開口径が、1μm未満であると、形成される液滴が非常に小さくなるためトナーを得ることができない場合がある。また、トナー組成液の成分として顔料などの固形微粒子が含有された場合、前記吐出孔の閉塞が頻繁に発生して生産性が低下する恐れがある。また、前記開口径が、40μmを超えると、トナー液滴の直径が大きく、これを乾燥固化させて所望のトナー粒子径1μm〜8μmを得る場合、有機溶媒でトナー組成を非常に希薄な液に希釈する必要がある場合があり、一定量のトナーを得るために乾燥エネルギーが大量に必要となってしまい、不都合となる。一方、前記開口径が、6μm〜12μmであると、吐出孔が開口する部材を製造する際に、多数の吐出孔の孔径ばらつきを小さく保つことができ、吐出孔を密集させて生産性を高く保つことができるため有利である。
前記吐出孔の開口径は、吐出孔が複数である場合、全て同じ開口径であってもよく、少なくとも1つの吐出孔において異なっていてもよいが、全て同じ開口径であることが好ましい。なお、ここで「同じ」とは、開口径が±5%の範囲内であることをいう。
なお、前記吐出孔の開口径は、真円であれば直径を意味し、楕円や、四角形、六角形、八角形等の多角形又は正多角形であれば平均径を意味する。
【0087】
また、複数の吐出孔が形成された場合、圧力定在波の腹となる領域の1つにおける前記吐出孔間のピッチ(隣接する吐出孔の中心部間の最短間隔)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20μm以上、液柱共鳴液室の長さ以下であることが好ましく、20μm〜200μmがより好ましく、40μm〜135μmが更に好ましく、40μm〜80μmが特に好ましい。前記吐出孔間のピッチが20μm未満であると、隣合う吐出孔より放出された液滴同士が衝突して大きな滴となってしまう確率が高くなり、トナーの粒径分布悪化につながることがある。
吐出孔間のピッチは、複数の吐出孔間において、全て等間隔であってもよく、少なくとも1つのピッチが異なっていてもよいが、等間隔であることが、均一な粒子径のトナー粒子を得ることができる点で好ましい。
【0088】
吐出孔の開口部の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、開口部と接液面とで大きさが変わらない形状であってもよく、適宜断面形状を変更してもよい。
例えば、図2A〜Eに示すような断面形状などが挙げられる。図2Aは、液柱共鳴液室の概略断面図の一例であり、図2Aの吐出孔19は、図2B〜Eのような形状であってもよい。
図2Bは、吐出孔19の接液面から吐出口に向かってラウンド形状を持ちながら開口径が狭くなるような形状を有しており、振動が発生した際に吐出孔19の出口付近で液にかかる圧力が最大となるため、吐出の安定化に際しては最も好ましい形状である。
図2Cは、吐出孔19の接液面から吐出口に向かって一定の角度を持って開口径が狭くなるような形状を有しており、この吐出孔の断面における接液面から吐出口に向かう角度(以下、「吐出孔の角度」と称することがある。)44は、適宜変更することができる。図2Cと同様に吐出孔の角度によって振動が発生した際の吐出孔19の出口付近で液にかかる圧力を高めることができる。その範囲としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60°〜90°が好ましい。60°未満であると、液に圧力がかかりにくく、更に加工もし難いため好ましくない。
吐出孔の角度が90°のときは、図2Dが相当するが、吐出孔19の出口に圧力がかかりにくくなるため、90°が最大値となる。90°を超えると、吐出孔19の出口に圧力がかからなくなるため、液滴吐出が非常に不安定化する。
図2Eは、図2Bと図2Cとを組み合わせたような形状である。このように段階的に形状を変更しても構わない。
【0089】
また、図2B〜Eの吐出孔の開口を下から(吐出孔の開口側)から見た図の一例を図2Fに示す。吐出孔の開口配置位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
例えば、図2Fに示すような配置であってもよく、液柱共鳴液室の幅方向及び長手方向に連続して規則的に配置されていてもよい。
【0090】
前記液柱共鳴液室とは、後述する液柱共鳴現象の原理に従い、前記振動手段によって付与される振動により圧力定常波を形成することができる液室であり、該圧力定在波の腹となる領域に吐出孔が形成され、(液柱共鳴液室の長手方向の端部に)トナー組成液供給のための連通口を有してなり、必要に応じて、液柱共鳴液室の長手方向の片端乃至両端における、少なくとも一部に(該長手方向の軸と垂直な)反射壁面を有する。前記液柱共鳴液室としては、液柱共鳴液室の長手方向と平行な壁の1つに配置された振動手段を有することが好ましく、また、振動手段が配置された壁と対面する壁に吐出孔が形成されていることが好ましい。
【0091】
前記液柱共鳴液室の形状としては、前記振動により圧力定常波を形成することができれば特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、四角柱(長方体)、円柱、円すい台などが挙げられる。
【0092】
前記液柱共鳴液室の長手方向の両端における、少なくとも一部に反射壁面が設けられることが好ましい。ここで、「反射壁面」とは、液体の音波を反射させる程度に硬質な部材、例えばアルミ、ステンレス等の金属部材、シリコーン等の部材などにより形成された壁面をいう。
【0093】
また、図4Aに示すように、前記液柱共鳴液室の長手方向の両端の壁面間の長さLとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述するような液柱共鳴原理に基づいて決定されることが好ましい。
また、図4Bに示すように、前記液柱共鳴液室の幅Wとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、液柱共鳴に余分な周波数を与えないように、前記液柱共鳴液室の長さLの2分の1より小さいことが好ましい。
【0094】
また、液共通供給路側の端部と、該端部に最も近い吐出孔19の中心部との距離をLeとしたとき、前記Lと、前記Leとの距離比(Le/L)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.6より大きいことが好ましい。
【0095】
また、前記液柱共鳴液室としては、前記振動の駆動周波数においてトナー組成液の共鳴周波数に影響を与えない程度の高い剛性を持つ材質により形成されたフレームがそれぞれ接合されて形成されたことが好ましく、そのような材質としては、金属やセラミックス、シリコーンなどが挙げられる。
【0096】
前記液柱共鳴液室は、生産性を飛躍的に向上させるために1つの液滴吐出手段に対して複数配置されることが好ましい。1つの液滴吐出手段に対して設置される液柱共鳴液室の個数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、操作性と生産性が両立できる点において、100個〜2,000個が好ましく、100個〜1,000個がより好ましく、100個〜400個が特に好ましい。液柱共鳴液室の数が、前記好ましい範囲で備えられた1つの液滴形成ユニットであると、操作性と生産性が両立でき点で有利である。
【0097】
前記振動手段としては、所定の周波数で駆動でき、液柱共鳴液室内の前記トナー組成液に振動を付与するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、圧電体、超音波振動体などが挙げられる。
前記圧電体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックス、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電高分子、水晶、LiNbO、LiTaO、KNbO等の単結晶などの材質から形成された圧電体などが挙げられる。
前記超音波振動体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、磁歪素子などが挙げられる。
【0098】
前記振動手段は、弾性板に貼りあわせた形態であることが好ましく、該弾性板は、振動手段が接液しないように液柱共鳴液室の壁の一部を形成することが好ましい。
更に、前記振動手段は、1つの液柱共鳴液室毎に個別に制御できるように配置されることが好ましい。また、液柱共鳴液室の配置にあわせて、弾性板を介してブロック状の圧電体などの振動手段を配置することが、それぞれの液柱共鳴液室を個別制御できる観点から好ましい。
【0099】
前記振動の周波数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、吐出孔の開口配置によって液柱共鳴周波数が変動するため、液滴の吐出を確認して適宜決定することが好ましいが、300kHz以上の高周波振動であることが好ましく、300kHz〜1,000kHzがより好ましい。
【0100】
−−液滴形成のメカニズム−−
次に、本実施の形態の液滴形成のメカニズムについて説明する。
図4Aは、液滴形成ユニットにおける液滴吐出ヘッドの一例を示す断面図である。図4Aにおいて、液滴吐出ヘッド11は、トナー組成液14を内部に貯留する液柱共鳴共鳴液室18と、液共通供給路17とを有する。液柱共鳴液室の一の壁面に吐出孔19が設けられており、吐出孔19の反対側の壁面に振動手段20を有する。
まず、図4Aの液滴吐出ヘッド11内の液柱共鳴液室18において生じる液柱共鳴現象の原理について説明する。液柱共鳴液室内のトナー組成液の音速をcとし、振動手段20から媒質であるトナー組成液に与えられた駆動周波数をfとした場合、液体の共鳴が発生する波長λは、下記式1の関係にある。
λ=c/f ・・・(式1)
【0101】
また、図4Aの液柱共鳴液室18において固定端側のフレームの端部から液共通供給路17側の端部までの長さをLとし、更に液共通供給路17側のフレームの端部の高さをh1とし、連通口の高さをh2とする。
液共通供給路17側の端部が閉じている固定端と等価であるとした両側固定端の場合には、長さLが波長λの4分の1の偶数倍に一致する場合に共鳴が最も効率的に形成される。つまり、次の式2で表現される。
L=(N/4)λ ・・・(式2)
(但し、Nは偶数を表す。)
なお、固定端と等価である場合とは、ある端において圧力の逃げ部がないとみなすことができる場合であり、例えば、ある端において反射壁面の高さが、トナー組成液供給のための連通口の高さの2倍以上である場合、及びある端において反射壁面の面積が、トナー組成液供給のための連通口の開口部の面積の2倍以上である場合などを指す。
図4Aにおいて、液柱共鳴液室18の固定端側のフレームの端部から液共通供給路17側の端部までの長さが、長さLに相当する。また、液共通供給路17側のフレームの端部の高さh1(=約80μm)は連通口の高さh2(=約40μm)の約2倍あり当該端部が閉じている両側固定端と等価であるとみなすことができる。
【0102】
また、両端が完全に開いている両側開放端の場合乃至両側開放端と等価である場合にも上記式2が成り立つ。
同様にして、片方側が圧力の逃げ部がある開放端と等価で、他方側が閉じている(固定端)の場合、つまり片側固定端又は片側開放端の場合には、長さLが波長λの4分の1の奇数倍に一致する場合に共鳴が最も効率的に形成される。つまり、上記式2のNが奇数で表現される。なお、両側開放端の場合は、Lが波長の4分の1の偶数倍、片側固定端の場合は、Lが波長の4分の1の奇数倍に相当する。
【0103】
最も効率の高い駆動周波数fは、上記式1と上記式2より、下記式3が導かれる。
f=N×c/(4L) ・・・(式3)
(L:液柱共鳴液室の長手方向の長さ、c:トナー組成液の音波の速度、N:整数)
したがって、本発明のトナーの製造方法において、前記トナー組成液に対して、上記式1が成立する周波数fの振動を付与することが好ましい。しかし、実際には、液体は共鳴を減衰させる粘性を持つために無限に振動が増幅されるわけではなく、Q値を持ち、後述する式4、式5に示すように、式3に示す最も効率の高い駆動周波数fの近傍の周波数でも共鳴は発生する。
【0104】
図5A〜Gに、N=1、2、3、4、5の場合の速度及び圧力変動の定在波の形状(共鳴モード)を示す。本来は疎密波(縦波)であるが、図5A〜Gのように表記することが一般的である。実線が速度定在波、点線が圧力定在波である。
例えば、N=1の片側固定端の場合を示す図5Aからわかるように、速度分布の場合閉口端で速度分布の振幅がゼロとなり、開口端で振幅が最大となる。
液柱共鳴液室の長手方向の両端の間の長さをLとしたとき、液体が液柱共鳴する波長をλとし、整数Nが1〜5の場合に定在波が最も効率よく発生する。また、両端の開閉状態によっても定在波パターンは異なるため、それらも併記した。後述するが、吐出孔の開口や供給側の開口の状態によって、端部の条件が決まる。
なお、音響学において、開口端とは長手方向の媒質(液)の移動速度がゼロとなる端であり、逆に圧力は極大となる。閉口端においては、逆に媒質の移動速度がゼロとなる端と定義される。閉口端は音響的に硬い壁として考え、波の反射が発生する。理想的に完全に閉口若しくは開口している場合は、波の重ね合わせによって図5A〜Gのような形態の共鳴定在波を生じるが、吐出孔数、吐出孔の開口位置によっても定在波パターンは変動し、上記式3より求めた位置からずれた位置に共鳴周波数が現れるが、適宜駆動周波数を調整することで安定吐出条件を作り出すことができる。
【0105】
例えば、液体の音速cが1,200m/s、液柱共鳴液室の長さLが1.85mmを用い、両端に壁面が存在して、両側固定端と完全に等価のN=2の共鳴モードを用いた場合、上記式2より、最も効率の高い共鳴周波数は324kHzと導かれる。
他の例では、液体の音速cが1,200m/s、液柱共鳴液室の長さLが1.85mmと、上記と同じ条件を用い、両端に壁面が存在して、両側固定端と等価のN=4の共鳴モードを用いた場合、上記式2より、最も効率の高い共鳴周波数は648kHzと導かれ、同じ構造を有する液柱共鳴液室であっても、より高次の共鳴を利用することができる。
【0106】
なお、図3及び図4Aに示す本実施の形態の液滴形成ユニット10の液滴吐出ヘッド11における液柱共鳴液室18は、両端が閉口端状態と等価であるか、吐出孔19の開口の影響で、音響的に軟らかい壁として説明できるような端部であることが周波数を高めるためには好ましいが、それに限らず開放端であってもよい。ここでの吐出孔19の開口の影響とは、音響インピーダンスが小さくなり、特にコンプライアンス成分が大きくなることを意味する。よって、図5B及び図5Eのような液柱共鳴液室18の長手方向の両端に壁面を形成することは、両側固定端の共鳴モード、そして吐出孔側が開口とみなす片側開放端の全ての共鳴モードが利用できるために好ましい。
【0107】
また、吐出孔19の開口数、開口配置位置、吐出孔の断面形状も駆動周波数を決定する因子となり、駆動周波数はこれに応じて適宜決定することができる。
例えば、吐出孔19の数(開口数)を多くすると、徐々に固定端であった液柱共鳴液室18の先端の拘束が緩くなり、ほぼ開口端に近い共鳴定在波が発生し、駆動周波数は高くなる。更に、最も液共通供給路17側に存在する吐出孔19の開口配置位置を起点に緩い拘束条件となり、また吐出孔19の断面形状がラウンド形状となったりフレームの厚さによる吐出孔の体積が変動したり、実際上の定在波は短波長となり、駆動周波数よりも高くなる。このように決定された駆動周波数で振動手段に電圧を与えたとき、振動手段20が変形し、駆動周波数にて最も効率よく共鳴定在波を発生する。また、共鳴定在波が最も効率よく発生する駆動周波数の近傍の周波数でも液柱共鳴定在波は発生する。つまり、液柱共鳴液室の長手方向の両端間の長さをL、液共通供給路17側の端部に最も近い吐出孔19までの距離をLeとしたとき、L及びLeの両方の長さを用いて下記式4及び式5で決定される範囲の駆動周波数fを主成分とした駆動波形を用いて振動手段を振動させ、液柱共鳴を誘起して液滴を吐出孔から吐出することが可能である。
【0108】
N×c/(4L)≦f≦N×c/(4Le) ・・・(式4)
N×c/(4L)≦f≦(N+1)×c/(4Le) ・・・(式5)
(L:液柱共鳴液室の長手方向の長さ、Le:液供給路側の端部に最も近い吐出孔までの距離、c:トナー組成液の音波の速度、N:整数)
【0109】
以上説明した液柱共鳴現象の原理を用いて、図4Aの液柱共鳴液室18において液柱共鳴圧力定在波が形成され、液柱共鳴液室18の一部に配置された吐出孔19において連続的に液滴吐出が発生するのである。なお、定在波の圧力が最も大きく変動する位置に吐出孔19を配置すると、吐出効率が高くなり、低い電圧で駆動することができる点で好ましい。
【0110】
次に、液滴形成ユニットにおける液滴吐出ヘッド内の液柱共鳴液室で生じる液柱共鳴現象の様子について当該様子を示す図6A〜Eを用いて説明する。
なお、図6A〜Eにおいて、液柱共鳴液室内に記した実線は液柱共鳴液室内の固定端側から液共通供給路側の端部までの間の任意の各測定位置における速度をプロットした速度分布を示し、液共通供給路側から液柱共鳴液室への方向を+とし、その逆方向を−とする。
また、液柱共鳴液室内に記した点線は液柱共鳴液室内の固定端側から液共通供給路側の端部までの間の任意の各測定位置における圧力値をプロットした圧力分布を示し、大気圧に対して正圧を+とし、負圧は−とする。
また、正圧であれば図中の下方向に圧力が加わることになり、負圧であれば図中の上方向に圧力が加わることになる。
更に、図6A〜Eにおいて、上述したように液共通供給路側が開放されているが液共通供給路17と液柱共鳴液室18とが連通する開口の高さ(図4Aに示す高さh2)に比して固定端となるフレームの高さ(図4Aに示す高さh1)が好ましくは約2倍以上であるため、液柱共鳴液室18はほぼ両側固定端であるという近似的な条件のもとでの速度分布及び圧力分布の時間的なそれぞれの変化を示している。
【0111】
図6Aは、液滴吐出時の液柱共鳴液室18内の圧力波形と速度波形を示している。また、図6Bは、液滴吐出直後の液引き込みを行った後再びメニスカス圧が増加してくる。これらの図6A及びBに示すように、液柱共鳴液室18における吐出孔19が設けられている流路内での圧力は極大となっている。その後、図6Cに示すように、吐出孔19付近の正の圧力は小さくなり、負圧の方向へ移行して液滴21が吐出される。
【0112】
そして、図6Dに示すように、吐出孔19付近の圧力は極小になる。このときから液柱共鳴液室18へのトナー組成液14の充填が始まる。その後、図6Eに示すように、吐出孔19付近の負の圧力は小さくなり、正圧の方向へ移行する。この時点で、トナー組成液14の充填が終了する。そして、再び、図6Aに示すように、液柱共鳴液室18の液滴吐出領域の正の圧力が極大となって、吐出孔19から液滴21が吐出される。このように、液柱共鳴液室内には振動手段の高周波駆動によって液柱共鳴による定在波が発生し、また圧力が最も大きく変動する位置となる液柱共鳴による定在波の腹に相当する液滴吐出領域に吐出孔19が配置されていることから、当該腹の周期に応じてトナー液滴21が吐出孔19から連続的に吐出される。
【0113】
以下、本発明のトナーの製造方法の液柱共鳴方式を利用した液滴形成工程の一実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明のトナーの製造方法における液滴形成工程は、これに限られるものではない。
【0114】
図3は、本発明の一実施の形態に係るトナーの製造方法を実施するためのトナー製造装置の全体を示す断面図の一例である。図4Aは、図3の液滴形成ユニットにおける液滴吐出ヘッドの一例を示す断面図である。図4Bは、図3の液滴形成ユニットを示すA−A’線断面図である。
【0115】
図3に示す液滴化工程が液柱共鳴により行なわれる形態のトナー製造装置1は、主に、液滴形成ユニット10(液滴形成手段)及び乾燥捕集ユニット30(粒子形成手段)を有する。
トナー製造装置1において、液滴形成ユニット10は、吐出孔によって外部と連通する液吐出領域を有する液室であって、後述する条件下で液柱共鳴定在波が発生する液柱共鳴液室内のトナー組成液を液滴として吐出孔から吐出する液滴化手段である液滴吐出ヘッド11が複数配列されている。
各液滴吐出ヘッド11の両側には、液滴吐出ヘッド11から吐出したトナー組成液の液滴が乾燥捕集ユニット30側に流出されるように図示していない気流発生手段によって発生する気流が通る気流通路12が設けられている。
また、液滴形成ユニット10は、トナー原料であるトナー組成液14を収容する原料収容器13と、原料収容器13に収容されているトナー組成液14を、液供給管16を通して液滴吐出ヘッド11内の後述する液共通供給路17に供給し、更に液戻り管22を通って原料収容器13に戻すために液供給管16内のトナー組成液14を圧送する液循環ポンプ15とを有する。
【0116】
液滴吐出ヘッド11は、図4Aに示すように、液共通供給路17及び液柱共鳴液室18を有する。
液柱共鳴液室18は、長手方向の両端の壁面のうち一方の壁面に設けられた液共通供給路17と連通されている。また、液柱共鳴液室18は、両端の壁面と連結する壁面のうち一つの壁面にトナー液滴21を吐出する吐出孔19と、吐出孔19と対向する壁面に設けられ、かつ液柱共鳴定在波を形成するために高周波振動を発生する振動手段20とを有している。なお、振動手段20には、図示していない高周波電源が接続されている。
また、液柱共鳴液室毎に、液供給のための流路が液共通供給路17から連通接続されており、液共通供給路17には複数の液柱共鳴液室18と連通している。
吐出孔19は液柱共鳴液室18内に1つであってもよいが、図4Bに示すように、吐出孔19を液柱共鳴液室18内の幅方向に設けることで、吐出孔19の開口を多数設けることができ、よって生産効率が高くなるために好ましい。
【0117】
また、液滴吐出ヘッド11における振動手段20としては、所定の周波数で駆動できるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、圧電体を、弾性板に貼りあわせた形態が好ましい。前記弾性板は、前記圧電体が接液しないように液柱共鳴液室の壁の一部を形成している。
【0118】
図3に示す乾燥捕集ユニット30は、チャンバ31及びトナー捕集手段32を有する。
チャンバ31内では、図示していない気流発生手段によって発生する気流と下降気流33が合流した大きな下降気流が形成されている。液滴形成ユニット10の液滴吐出ヘッド11から吐出されたトナー液滴21は、重力よってのみではなく、下降気流33によっても下方に向けて搬送されるため、吐出されたトナー液滴21が空気抵抗によって減速されることを抑制できる。これにより、トナー液滴21を連続的に吐出したときに、前に吐出されたトナー液滴21が空気抵抗によって減速し、後に吐出されたトナー液滴21が前に吐出されたトナー液滴21に追い付くことで、トナー液滴21同士が合着して一体となり、トナー液滴21の粒径が大きくなることを防止できる。
なお、気流発生手段として、上流部分に送風機を設けて加圧する方法と、トナー捕集手段32より吸引して減圧する方法のいずれを採用することもできる。
また、トナー捕集手段32には、鉛直方向に平行な軸周りに回転するような回転気流を発生させる回転気流発生装置(図示せず)が配置されている。更に、トナー捕集手段32には、チャンバ31と連通するトナー捕集チューブ34を通った乾燥及び固化されたトナー粒子を貯留するトナー貯留手段35を有している。
【0119】
次に、液柱共鳴方式による液滴化について概説する。
図3に示す原料収容器13に収容されているトナー組成液14は、当該トナー組成液14を循環させるための液循環ポンプ15によって液供給管16を通って、図4Bに示す液滴形成ユニット10の液共通供給路17内に流入し、図4Aに示す液滴吐出ヘッド11の液柱共鳴液室18に供給される。
そして、トナー組成液14が充填されている液柱共鳴液室18内には、振動手段20によって発生する液柱共鳴定在波により圧力分布が形成される。そして、液柱共鳴定在波において振幅の大きな部分であって圧力変動が大きい、定在波の腹となる領域に配置されている吐出孔19からトナー液滴21が吐出される。
【0120】
液共通供給路17を通過したトナー組成液14は、液戻り管22を流れて原料収容器13に戻される。トナー液滴21の吐出によって液柱共鳴液室18内のトナー組成液14の量が減少すると、液柱共鳴液室18内の液柱共鳴定在波の作用による吸引力が作用し、液共通供給路17から供給されるトナー組成液14の流量が増加し、液柱共鳴液室18内にトナー組成液14が補充される。そして、液柱共鳴液室18内にトナー組成液14が補充されると、液共通供給路17を通過するトナー組成液14の流量が元に戻り、液供給管16及び液戻り管22には装置内を循環するトナー組成液14の流れが再び形成された状態となる。
【0121】
−膜振動方式−
前記膜振動方式は、前記液滴形成工程において、同じ開口径を有する複数の吐出孔が形成された薄膜に振動手段により振動を付与し、前記吐出孔からトナー組成液を吐出して液滴化することを必須とする液滴形成方法である。
膜振動方式における前記振動手段としては、薄膜に間接的に振動を付与する間接振動型吐出手段と、薄膜に直接振動を付与する直接振動型吐出手段とが挙げられる。
【0122】
前記薄膜は、トナー組成物の溶解乃至分散液を吐出させて液滴とする部材である。
前記薄膜の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm〜500μmが好ましい。
前記吐出構造体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、均一に振動させる点で、円形が好ましい。
【0123】
前記薄膜の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属などが挙げられる。
前記薄膜は、露出表面全体に後述する絶縁体の撥液膜が形成されていてもよい。
前記薄膜としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、振動させられた際に、前記薄膜に撓みが発生するように設けられていることが好ましい。前記薄膜にたわみを発生させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記薄膜の最外周部に設けられたフレームと接合部とを介して接合固定させる方法などが挙げられる。
【0124】
前記接合部の部材の弾性率としては、特に制限はなく、目的に応じて選択することができるが、吐出孔における同心円状の均一な振動状態が得られ、液滴吐出状態が安定化し、均一な粒径分布のトナーを得ることができる点で、10Pa以上が好ましい。
前記接合部の部材として弾性率の高い材料を用いることで、前記薄膜の最外周部と薄膜をしっかりと固定することができる点で有利である。これにより、前記薄膜に振動が効率よく伝播される。特に、前記薄膜が、円形(膜)である場合に振動が効率よく伝播される点で好ましい。
前記弾性率は、例えば、超音波法により測定することができる。
【0125】
前記薄膜と前記フレーム、及び/又は、前記薄膜と前記振動発手段とは、前記絶縁体の撥液膜又は前記絶縁体の接合部剤により電気的に絶縁されていることが好ましい。
【0126】
前記撥液膜又は前記接合部剤に用いる材料としては、絶縁体であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のエポキシ樹脂;SiOなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、特開2010−107904号公報に記載の、SiO膜上にパーフルオロアルキル基を有し、かつ末端にシロキサン結合アルキル基を有する化合物からなる撥液膜も好適に用いることができる。
【0127】
膜振動方式において、複数の吐出孔は、同じ開口径を有するものである。同じ開口径を有しない場合、均一な粒径のトナーを得られない点で好ましくない。なお、ここで「同じ」とは、開口径が±5%の範囲内であることをいう。
なお、前記吐出孔の開口径は、真円であれば直径を意味し、楕円や、四角形、六角形、八角形等の多角形又は正多角形であれば平均径を意味する。
【0128】
前記薄膜における複数の吐出孔の開口数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2個〜3,000個が好ましい。
【0129】
複数の吐出孔の前記吐出孔間のピッチ(隣接する吐出孔の中心部間の最短間隔)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20μm以上、液柱共鳴液室の長さ以下であることが好ましく、20μm〜200μmがより好ましく、40μm〜135μmが更に好ましく、40μm〜80μmが特に好ましい。前記吐出孔間のピッチが20μm未満であると、隣合う吐出孔より放出された液滴同士が衝突して大きな滴となってしまう確率が高くなり、トナーの粒径分布の悪化につながることがある。
吐出孔間のピッチは、複数の吐出孔間において、全て等間隔であってもよく、少なくとも1つのピッチが異なっていてもよいが、等間隔であることが、均一な粒子径のトナーを得ることができる点で好ましい。
【0130】
吐出孔の開口部の断面形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記液柱共鳴で記載した吐出孔の形状と同様の形状などが挙げられる。
【0131】
−−−間接振動型吐出手段−−−
前記間接振動型吐出手段は、前記同じ開口径を有する複数の吐出孔を有する薄膜に縦振動を付与する手段である。
【0132】
前記間接振動型吐出手段としては、薄膜に確実な縦振動を一定の周波数で与えることができるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記液柱共鳴方式の振動手段と同様の、圧電体、超音波振動体などが挙げられる。
これらの中でも、前記間接振動型吐出手段は、前記薄膜にバイモルフ型の撓み振動を励起する圧電体が好ましい。
前記圧電体は、電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換する機能を有する。具体的には、電圧を印加することにより、撓み振動が励起され、薄膜を振動させることが可能となる。
前記圧電体の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記液柱共鳴方式の振動手段と同様のものなどが挙げられる。
【0133】
撓み振動は、図7に示すように、薄膜の中心で変位ΔLが最大(ΔLmax)となり、最も外側の吐出孔で振動変位ΔLが最小(ΔLmin)となる断面形状となり、振動方向に周期的に上下振動する。膜が周期的に上下振動することで吐出孔から液滴を周期的に吐出することとなる。
【0134】
前記間接振動型吐出手段の配置としては、薄膜に対して垂直方向の振動を与えることができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、振動面と薄膜とが平行に配置されることが好ましい。これにより、前記薄膜は、前記間接振動型吐出手段により効率よく縦振動が付与される。
【0135】
−−−直接振動型吐出手段−−−
前記直接型吐出手段は、前記同じ開口径を有する複数の吐出孔を有する薄膜に振動を付与する手段である。
前記直接型吐出手段の配置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、薄膜における複数の周囲に設けられることが好ましく、円環状に設けられることがより好ましい。
【0136】
前記直接振動型吐出手段としては、薄膜に一定の周波数で振動を与えることができるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記間接振動型吐出手段と同様の、圧電体、超音波振動体などが挙げられる。
これらの中でも、前記間接振動型吐出手段は、前記薄膜にバイモルフ型の撓み振動を励起する圧電体が好ましい。前記圧電体の材料としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記間接振動型吐出手段と同様のものなどが挙げられる。
【0137】
撓み振動は、間接振動型吐出手段と同様に、図7に示すように、薄膜の中心で変位ΔLが最大(ΔLmax)となり、最も外側の吐出孔で振動変位ΔLが最小(ΔLmin)となる断面形状となり、振動方向に周期的に撓み振動する。膜が周期的に撓み振動することで吐出孔から液滴が周期的に吐出することとなる。
【0138】
−−液滴形成のメカニズム−−
次に、間接振動型吐出手段及び直接振動型吐出手段による液滴形成のメカニズムについて説明する。
図8A、図9Aに示すように、これらの液滴吐出手段は液流路311に臨む複数の吐出孔314を有する薄膜310に、振動手段によって発生した振動を伝播させて、薄膜310を周期的に振動させ、比較的大面積の領域に複数の吐出孔314を配置し、それら複数の吐出孔314より液滴を周期的に、安定に形成して放出することができるようになる。
【0139】
薄膜の振動により、薄膜各所に設けられたノズル近傍の液体には、薄膜の振動速度Vmに比例した音圧Pacが発生する。音圧は、媒質(トナー組成液)の放射インピーダンスZrの反作用として生じることが知られており、音圧は、放射インピーダンスと薄膜の振動速度Vmの積で下記式6の方程式を用いて表される。
Pac(r,t)=Zr・Vm(r,t) ・・・式(6)
薄膜の振動速度Vmは時間とともに周期的に変動しているため時間(t)の関数であり、例えば、サイン波形、矩形波形など、様々な周期変動を形成することが可能である。
また、図7に示すように、薄膜の各所で振動方向の振動変位は異なっており、Vmは、膜上の位置座標の関数でもある。本発明で用いられる薄膜の振動形態は、上述のとおり軸対象である。したがって、実質的には半径(r)座標の関数となる。
【0140】
以上のように、分布を持った薄膜の振動変位速度に対して、それに比例する音圧が発生し、音圧の周期的変化に対応してトナー組成液が、吐出孔の外部(気相)へ吐出される。
吐出孔の外部へ周期的に排出されたトナー組成液は、吐出孔の内部(液相)と吐出孔の外部(気相)との表面張力差によって球体を形成するため、液滴化が周期的に発生する。
【0141】
液滴を吐出することができる薄膜の速度範囲は、図7に示すような関係があり、吐出可能な面積範囲は限られるため、この面積範囲に吐出孔を形成することが望ましい。吐出孔314は、図8B、図9Bに示されるように薄膜310の中心部に配置されている。
なお、図8B、図9Bにおいて、複数の吐出孔は、同心正六角形状に配置されているが、この配置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
また、図8B、図9Bにおいて、薄膜310は円形薄膜として示されているが、薄膜310の形状としても特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0142】
液滴化を可能とする膜の振動周波数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20kHz〜2.0MHzが好ましく、50kHz〜500kHzがより好ましい。20kHz以上の振動周期であれば、液体の励振によって、トナー組成液中の顔料やワックスなどの微粒子の分散が促進される。
更には、前記音圧の変位量が、10kPa以上となることによって、上述の微粒子分散促進作用がより好適に発生する。
【0143】
以下、本発明のトナーの製造方法の膜振動方式を利用した液滴形成工程の一実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明のトナーの製造方法における液滴形成工程は、これに限られるものではない。
【0144】
図10Aは、膜振動方式によるトナーの製造方法を実施するためのトナー製造装置の全体を示す断面図の一例である。
まず、図10Aを用いて、間接振動型吐出手段又は直接振動型吐出手段により液滴を吐出させる液滴形成ユニット104へのトナー組成液14の送液形態の一例について説明する。
【0145】
図10Aに示すトナー製造装置210において、トナー組成液14は、原料収容器201に収容され、液供給管202によって液滴形成ユニット104に接続されている。送液の駆動力については送液手段203を用いてもよいし、重力を利用したり、吐出ユニット自体による液体の吸引力を用いたりしてもよい。液滴形成ユニット104へのトナー組成液14の送液は、脈動があると吐出に悪影響が出るため、送液手段203としては、好ましくは重力又は吐出ユニットの吸引力による脈動のないものが望ましい。この他の送液手段203としては各種ポンプを用いることができ、前述のように脈動を生じないものとして、例えば、ギヤポンプの使用が望ましい。
【0146】
図10Aでは、液滴形成ユニット104に供給されたトナー組成液14は、循環されて原料収容器201に戻るように示されているが、必ずしも循環させる必要はなく、液滴形成ユニット104が吐出するトナー組成液が供給されるだけであってもよい。
トナー組成液14を循環する場合は、液供給管202の途中に設けたバルブ204によって液量を制御することができる。バルブの種類としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができる。
また図10Aに記載のチャンバ206の、図面に向かって右側に示される液滴形成ユニット104にはトナー組成液14の送液経路が記載されているが、左側に示される液滴形成ユニット104では全く同じ送液経路を有しているが記載を省略している。
【0147】
液滴形成ユニット104への送液圧力及び、チャンバ206内の圧力は、圧力計P1及びP2によって管理される。このとき、P1>P2の関係であると、トナー組成液14が吐出孔から染み出す恐れがあり、P1<P2の場合には吐出手段に気体が入り、吐出が停止する恐れがあるため、P1≒P2があることが望ましい。
【0148】
このように、液滴形成ユニット104に送液されたトナー組成液14は、以下の間接振動手段又は直線振動手段により吐出される。
【0149】
−−−間接振動型吐出手段−−−
図8Aは、間接振動型の吐出手段の構造の一例を示す概略図である。図8Bは、間接振動型の吐出手段を下から見た構造の一例を示す概略図である。
間接振動型吐出手段300は、同じ開口径を有する複数の吐出孔314が形成された薄膜310と、薄膜310に対して、電気を機械的振動に変換して振動を付与する振動手段(機械的振動手段)305と、薄膜310と振動手段305との間にトナー組成液14を供給する液流路311を形成するフレーム308とを備えている。トナー組成液14はトナー組成液供給口309から供給され、液流路311を通り、トナー組成液排出口315から排出される。
【0150】
前記複数の吐出孔314を有する薄膜310は、振動手段305の振動面313に対して平行に設置されており、薄膜310の一部がフレーム308に接合固定されており、振動手段305の振動方向とは実質的に垂直な位置関係となる。即ち、薄膜310は、振動手段305により縦振動が付与される。
前記振動手段305の振動発生手段303の上下面に電圧信号が付与されるように、回路306が設けられており、駆動信号発生源307からの信号を機械的振動に変換することができる。
電気信号を与える回路としては、表面を絶縁被覆されたリード線が適している。また、振動手段305は後述する各種ホーン型振動子、ボルト締めランジュバン型振動子など、振動振幅の大きな素子を用いることが、効率的かつ安定なトナー生産には好適である。
【0151】
振動手段305は、振動を発生する振動発生手段303と、この振動発生手段303で発生した振動を増幅する振動増幅手段304とを有し、駆動信号発生源307から所要周波数の駆動電圧(駆動信号)が振動発生手段303の電極302間に印加されることによって、振動発生手段303に振動が励起され、この振動が振動増幅手段304で増幅され、薄膜310と平行に配置される振動面313が周期的に振動し、この振動面313の振動による周期的な圧力によって薄膜310が所要周波数で振動する。
【0152】
図8Aで示した例では、振動発生手段303と振動増幅手段304を有する振動手段305としてホーン型振動子を用いており、このホーン型振動子は、圧電素子などの振動発生手段303の振幅を振動増幅手段304で増幅することができるため、機械的振動を発生する振動発生手段303自体は小さな振動でよく、機械的負荷が軽減するために生産装置としての長寿命化につながる点で好ましい。
ホーン型振動子の形状としては、特に制限はなく、公知の代表的なホーン形状の中から、目的に応じて適宜選択することができる。
【0153】
また、振動発生手段303としては、前記ホーン型振動子に限られず、特に高強度なボルト締めランジュバン型振動子を用いることもできる。
このボルト締めランジュバン型振動子は、圧電セラミックスが機械的に結合されており、高振幅励振時に破損することがない点で好ましい。
【0154】
機械的振動を発生する振動手段305の大きさは、発振振動数の減少に伴い大きくなることが一般的であり、必要な周波数に応じて、適宜振動手段に直接穴あけ加工を施し貯留部を設けることができる。また、貯留部全体を効率的に振動させることも可能である。
【0155】
−−−直接振動型吐出手段−−−
図9Aは、直接振動型の吐出手段の構造の一例を示す概略図である。図9Bは、直接振動型の吐出手段を下から見た構造の一例を示す概略図である。
直接振動型吐出手段400は、少なくともトナー液滴21を吐出させる同じ開口径を有する吐出孔314を備えた薄膜310と、薄膜310を振動させるための円環状振動発生手段403と、トナー組成液14を供給する液流路311を設けたフレーム308を備えている。トナー組成液14はトナー組成液供給口309から供給され、液流路311を通り、トナー組成液排出口315から排出される。
【0156】
薄膜310は、外周部をフレーム308に接合固定している。円環状振動発生手段403は、この薄膜310の吐出孔314を設けた領域の周囲に配されている。
この円環状振動発生手段403は、円環状圧電体401と電極402とを有し、電極402に回路306を通じて駆動信号発生源307から所要周波数の駆動電圧(駆動信号)が印加されることで、例えば、撓み振動を発生する。
【0157】
吐出孔314の断面形状は、図8Aや図9Aにおいては吐出孔314の開口部と接液面とで大きさが変わらない形状として記載されているが、適宜断面形状を変更することができ、例えば、前記液柱共鳴方式と同様の図2A〜Eのような断面形状などが挙げられる。
【0158】
<<乾燥工程>>
前記乾燥工程は、前記液滴形成工程で液滴化したトナー組成液中の前記有機溶剤を乾燥させてトナー粒子を固化させる工程である。
前記液滴を固化する方法としては、液滴を固化させて粒子化できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜公知の方法を選択することができ、例えば、液滴に含まれる有機溶媒を乾燥気体へ蒸発させ、乾燥による収縮固化を行う方法などが挙げられる。
【0159】
以下、本発明のトナーの製造方法の乾燥工程の一実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明のトナーの製造方法における乾燥工程は、これに限られるものではない。
【0160】
−液柱共鳴方式−
前記液滴形成工程が液柱共鳴方式で行われる場合、図3に示すように、液滴吐出ユニット10の液滴吐出ヘッド11から吐出されたトナー液滴21は、重力よってのみではなく、図示していない気流発生手段によって発生する気流が気流通路12を通り形成される下降気流33によって下方に向けて搬送される。次に、トナー捕集手段32における図示していない回転気流発生装置が発生させる回転気流と下降気流33とによって、トナー捕集手段32を形成する円錐状内壁面に沿って螺旋気流が形成され、トナー粒子はその螺旋気流にのって層流状態で乾燥、固化される。乾燥、固化されたトナー粒子はトナー捕集チューブ34を通ってトナー貯留手段35に収納される。
【0161】
−膜振動方式−
次に、前記液滴形成工程が膜振動方式で行われる場合の乾燥工程について説明する。
図11は、本発明のトナーの製造方法において、膜振動方式で液滴を吐出する液滴吐出ユニットの構造の一例を示す概略図である。
図11において、前記液滴形成工程により、原料収容器201に貯留されたトナー組成液14は、原料収容器201から液供給管202によって液滴形成ユニット104に搬送される。液滴形成ユニット104には液滴吐出ヘッド312に設けられた吐出孔314があり、この吐出孔314からトナー液滴21が吐出される。
【0162】
前記液滴形成工程で吐出孔314から吐出されたトナー液滴21は、重力によってのみではなく、吐出方向と同方向に流れる1次搬送気流207に沿ってトナー液滴21は搬送されるため、吐出されたトナー液滴21が空気抵抗によって減速されることを抑制できる。これにより、トナー液滴21を連続的に吐出したときに、前に吐出されたトナー液滴21が空気抵抗によって減速し、後に吐出されたトナー液滴21が前に吐出されたトナー液滴21に追い付くことで、トナー液滴21同士が合着して一体となり、トナー液滴21の粒径が大きくなることを防止できる。
【0163】
1次搬送気流207として用いられる気体の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、空気、窒素等の不燃性気体などが挙げられる。
また、液滴形成ユニット104に配置された吐出孔314及びその周辺でトナー組成液14が乾くことによって、吐出孔314が閉塞することによる液滴吐出停止を防止するために、トナー組成液14に用いられる溶剤と同じ又は類似物質の蒸気を含ませてもよい。
【0164】
1次搬送気流207の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、生産時において変動がないことが望ましい。
1次搬送気流の気流速度Hとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、液滴吐出速度と同一か、若しくはそれより速いことが好ましいが、大幅に速い必要はない。より好ましくは、液滴吐出速度に対して1.0倍〜1.5倍の範囲である。
【0165】
1次搬送気流207は、シュラウド気流出口103より気体が供給されることでシュラウド気流105が作られ、シュラウドカバー108によって気流の方向が液滴吐出方向と同一となるように設計されている。
シュラウド気流105は、液滴形成ユニット104の液滴吐出ヘッド312を通過した箇所での気流速度、即ち、1次搬送気流速度を決定するために流速が調整される。液滴吐出ヘッド312付近の気流速度が均一でないとトナー液滴21の合着が生じるためにシュラウド出口への気体の供給は精密に行う必要がある。
【0166】
シュラウドカバー108の形状としては、気流の方向が液滴吐出方向と同一となる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、図11に示されるように液滴形成ユニット104の液滴吐出ヘッド312付近で開口部を絞ることによって流速を制御してもよく、絞りを持たせなくてもよい。
【0167】
液滴形成ユニット104は、トナー液滴21の自由落下速度より速く、かつ、トナー液滴21の吐出方向に対して角度をもった2次搬送気流208を設けている。
1次搬送気流207により搬送されたトナー液滴21は、次に、トナー液滴21の自由落下速度より速く、かつ、トナー液滴21の吐出方向に対して角度をもったその気流に乗せられたトナー液滴21は2次搬送気流208の流れる方向に曲げられ、図11に示すように同じ吐出孔314から吐出する粒子同士の合着確率は極端に低下する。
2次搬送気流208の角度は、1次搬送気流207に対して120°未満の角度であることが好ましい。
【0168】
図11において、2次搬送気流208は、液滴形成ユニット104では1次搬送気流207に対して90°の角度を有するように図示されているが、90°に限定されるわけではなく、120°未満が好ましく、45°以上100°未満がより好ましく、60°以上90°以下が特に好ましい。前記角度が、120°以上であると、吐出された液滴21が2次搬送気流208によって吐出ユニット側に戻ることになるため、液滴吐出ヘッド312にトナー液滴21が付着しやすくなり、付着した液滴が吐出孔314を閉塞するため、吐出が停止することがある。また、45°未満であるとトナー液滴21の吐出方向が強制的に曲げられることによって生じる合着確立を低減する効果が小さい。
【0169】
2次搬送気流208の気流速度Vとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1次搬送気流207の気流速度Hに対して、V/Hが、トナー液滴21の合着を防止する点で、0.5〜3.0が好ましく、0.75〜2.0がより好ましく、1.0〜1.5が更に好ましいる。V/Hが0.5未満であると、2次搬送気流導入口209による吐出方向を強制的に曲げる効果が弱く合着を防ぐ効果が小さいことがあり、3.0を超えると、水平方向に吐出されたトナー液滴21の吐出軌跡が2次搬送気流の流れる方向に過剰に曲げられるため、合着の防止効率が低下することがある。
【0170】
2次搬送気流208として用いられる気体の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、空気、窒素等の不燃性気体などが挙げられる。
また、前記液滴21の乾燥により合着を防止するために、液滴の乾燥を促進できる条件を有することが好ましい。このことから、トナー組成液に含まれる溶剤の蒸気を含まないことが望ましい。乾燥が進んだ液滴は、飛散している状態で粒子が接触したとしても既に表面の固化が進行しているため、合着を抑制できる点で有利である。
2次搬送気流208の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、適宜調整可能であり、生産時において変動がないことが望ましい。
【0171】
このようにして、吐出されたトナー液滴21は、合着する確立を低く保ったまま乾燥され、乾燥粒子22となる。生成した乾燥粒子22は図示されない捕集機によって捕集され、図示されないトナー貯留部に送られる。
【0172】
このようにして捕集したトナーの粒径分布は、例えば、図13のようになる。これは捕集したトナーの一例であるが、ほとんど単一粒径のトナー粒子しか存在しないことがわかる。これは前述のように吐出されたトナー液滴21が合着することなく、乾燥して得られた場合に得られる。
【0173】
一方、従来のトナーの製造方法であって、搬送気流がない場合の液滴の落下状況について図12を用いて説明する。図12は、1次搬送気流207及び2次搬送気流208を用いていないこと以外は、図11と同じである。
液滴形成ユニット104から吐出したトナー液滴21は、空気抵抗を受けて吐出速度が急速に低下し、且つ自然落下を始める。吐出速度が低下すると液滴間距離が短くなり、やがては液滴間の合着を生じるようになる。また、合着した粒子は空気抵抗が増し、乾燥も遅れるために更に別の液滴と合着を引き起こすようになり、数個の液滴が合着する場合もあり、これが乾燥すると合着した後に乾燥した粒子24を生じ、結果として得られるトナーの粒径分布は広くなる。
【0174】
このようにして捕集したトナーの粒径分布は図14のようになる。
これは捕集したトナーの一例であるが、図中の基本粒径と示したピークを形成する乾燥粒子は合着しなかった液滴21がそのまま乾燥固化したものである。2倍と記載されたピークを形成する乾燥粒子は液滴21が吐出後に合着した後に乾燥固化してえられたものである。同様に3倍、4倍、それ以上の合着が進行していることが粒径分布測定結果から推測することができる。
【0175】
図10Aに示すトナー製造装置210は、乾燥捕集ユニット220、トナーが吐出される空間であるチャンバ206を有し、チャンバ206の側壁に、図11に示した液滴形成ユニット104が組み込まれている。液滴形成ユニット104の詳細は図11に示したとおりであるため詳細な図示は割愛しているが、液滴吐出手段と1次搬送気流207を発生させるシュラウドを装備している。
【0176】
チャンバ206は、上方の2次搬送気流導入口209から、チャンバ206連通する誘導管212に2次搬送気流208が流れるようになっている。
【0177】
チャンバ206の側壁には液滴形成ユニット104内の1次搬送気流207が、2次搬送気流208に対して垂直に流れるような角度を持って液滴形成ユニット104が取り付けられている。吐出ユニットの取り付けはチャンバ206内に複数個あっても構わない。
図10Aでは吐出ユニットが2つ配置された様子を示している。なお、図10Aは2次搬送気流208が上方から下方に流れる様子が示されているが、1次搬送気流207の方向に対し120℃未満の角度を有していれば、2次搬送気流208の流れ方向に特に制限はなく、適宜設定することができるが、チャンバ206内で液滴が乾燥してできた、乾燥粒子がチャンバ206壁に付着しにくくなるため、上方から下方に流れることが好ましい。
【0178】
液滴形成ユニット104から図示されない液滴は、1次搬送気流207の方向に吐出され、その後、2次搬送気流208によってその方向を強制的に曲げられることで、符号500で示すような軌跡を描き、液滴同士の合着を防ぐことができ、1次搬送気流207、2次搬送気流208での搬送中に液滴内に含まれる有機溶剤が揮発することからも、粒子の合着を防ぐことができ、粒径分布の狭い乾燥粒子がチャンバ206内の搬送中に生成する。
図示されない乾燥粒子は、2次搬送気流208によって誘導管212を通過し、トナー捕集手段213にて捕集され、トナー貯留手段214に納められる。トナー捕集手段213としては一般的な装置を用いることができ、サイクロン捕集機が好適に用いられる。
【0179】
図10Bは、チャンバ206に取り付けられた液滴形成ユニット104の配置を上から見た概略図である。ここで、吐出ユニットへのトナー組成液供給装置は実際には付帯しているが、説明の簡略化のため図示していない。
チャンバ206内に配置する吐出ユニットの数は、ここでは4つの例を示しているが、特に制限はなく、生産量に合わせて増やすことができる。また縦方向に複数配列しても構わない。
【0180】
チャンバ206(a)では、液滴形成ユニット104がチャンバ206内に4つ配置され、全てチャンバ206の中心に向かって吐出し、吐出したトナー液滴の軌跡500がすべてチャンバ206の中心部に向かっていることが示され、中心に向かう間に図示されない2次搬送気流によって、液滴が下方に搬送される。
チャンバ206(b)では液滴形成ユニット104がチャンバ206内に4つ配置されているが、中心に対して角度を持って配置されている。角度をつけることによって、対抗する吐出ユニットから吐出した液滴との合着を考慮しなくて済み、チャンバ206の容積を効率よく用いることができるため、複数の吐出ユニットを配置する場合に好適である。このような液滴形成ユニット104の中心に対する角度は任意に調整することができる。
【0181】
<<その他の工程>>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、必要に応じて、乾燥工程で乾燥捕集ユニットによって乾燥された粒子を、更に流動床乾燥や真空乾燥といった二次乾燥させる工程を有することが好ましい。
有機溶剤がトナー中に残留すると、耐熱保存性や定着性、帯電特性等のトナー特性が経時で変動するだけでなく、加熱による定着時において有機溶剤が揮発するため、使用者及び周辺機器へ悪影響を及ぼす可能性が高まるため、充分な乾燥を実施することが好ましい。
【0182】
<トナー>
本発明のトナーは、本発明の前記トナーの製造方法により製造されるトナーであり、少なくとも結晶性ポリエステル樹脂を含有する結着樹脂と、離型剤とを含有し、必要に応じて更にその他の成分を含有する。
前記結着樹脂、前記離型剤としては、前記トナー組成物中の成分と同様である。
【0183】
<<その他の成分>>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、流動性向上剤、クリーニング性向上剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0184】
−流動性向上剤−
前記流動性向上剤は、トナー表面に添加することにより、トナーの流動性を改善できる(流動しやすくなる)点で好ましい。
【0185】
前記流動性向上剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末等のフッ素系樹脂粉末;湿式製法シリカ、乾式製法シリカ等の微粉末シリカ;微粉未酸化チタン、微粉未アルミナ、それらをシランカップリング剤、チタンカップリング剤若しくはシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカ、処理酸化チタン、処理アルミナなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、前記流動性向上剤は、微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナが好ましく、また、これらをシランカップリング剤やシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカが更に好ましい。
【0186】
前記微粉末シリカは、ケイ素ハロゲン化含物の気相酸化により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。
【0187】
ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体の市販品の具体例としては、例えば、商品名で、AEROSIL−130、AEROSIL−300、AEROSIL−380、AEROSIL−TT600、AEROSIL−MOX170、AEROSIL−MOX80、AEROSIL−COK84(以上、日本アエロジル株式会社製);Ca−O−SiL−M−5、Ca−O−SiL−MS−7、Ca−O−SiL−MS−75、Ca−O−SiL−HS−5、Ca−O−SiL−EH−5(以上、CABOT社製);Wacker HDK−N20 V15、Wacker HDK−N20E、Wacker HDK−T30、Wacker HDK−T40(以上、WACKER−CHEMIE社製);D−CFineSi1ica(ダウコーニング社製);Franso1(Fransi1社製)などが挙げられる。
【0188】
更には、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を疎水化処理した処理シリカ微粉体がより好ましい。前記処理シリカ微粉体における、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30%〜80%の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。前記疎水化処理した処理シリカ微粉体は、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等で、化学的あるいは物理的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する方法がよい。
【0189】
有機ケイ素化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルビニルクロロシラン、ジビニルクロロシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、へキサメチルジシラン、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、α−クロルエチルトリクロロシラン、β−クロロエチルトリクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、へキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフエニルテトラメチルジシロキサン、及び1分子当り2個〜12個のシロキサン単位を有し、未端に位置する単位にそれぞれSiに結合した水酸基を0個〜1個含有するジメチルポリシロキサンなどが挙げられる。更に、ジメチルシリコーンオイル等のシリコーンオイルなども挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0190】
前記流動性向上剤の粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、平均一次粒径として、0.001μm〜2μmが好ましく、0.002μm〜0.2μmがより好ましい。
また、前記流動性向上剤の個数平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm〜100nmが好ましく、5nm〜50nmがより好ましい。
前記粒径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)などにより測定することができる。
【0191】
前記流動性向上剤の、BET法で測定した窒素吸着による比表面積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30m/g以上が好ましく、60m/g〜400m/gがより好ましい。また、表面処理された微粉体としては、20m/g以上が好ましく、40m/g〜300m/gがより好ましい。
【0192】
これらの流動性向上剤の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー粒子100質量部に対して、0.03質量部〜8質量部が好ましい。
【0193】
−クリーニング性向上剤−
前記クリーニング性向上剤は、記録紙等にトナーを転写した後、静電潜像担持体や一次転写媒体に残存するトナーの除去性を向上させることができる点で好ましい。
前記クリーニング性向上剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩;ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合によって製造されたポリマー微粒子などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0194】
前記ポリマー微粒子の重量平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、比較的粒度分布が狭いものが好ましく0.01μm〜1μmのものがより好ましい。
【0195】
前記流動性向上剤やクリーニング性向上剤等の前記その他の成分は、トナーの表面に付着乃至固定化させて用いられるため、外添剤とも呼ばれている。
トナーに外添する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、各種の粉体混合機等を用いる方法などが挙げられる。
前記粉体混合機としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサーなどが挙げられ、固定化も行う場合に用いる粉体混合機としては、ハイブリタイザー、メカノフュージョン、Qミキサーなどが挙げられる。
【0196】
<<トナーの重量平均粒径>>
前記トナーの重量平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜10μmが好ましく、3μm〜6μmがより好ましい。前記トナーの重量平均粒径が、1μm未満であると、トナーの凝集力や帯電力が高くなりすぎることや、十分なトナーを紙又は画像保持体上に写すことが困難になることや、濃度が薄い画像となることがある。一方、10μmを超えると、トナーが大きすぎて、高精細な画像を作ることができないことがある。
【0197】
<<トナーの粒度分布>>
前記トナーの粒度分布としては体積平均粒子径(Dv)と個数平均粒子径(Dn)の比で比較することができ、Dv/Dnで示すことができる。
一般的な粉砕トナーは、Dv/Dn=1.15〜1.25程度である。また一般的な重合トナーは、Dv/Dn=1.10〜1.15程度であるが、電子写真システムにおいては粒径分布が狭いことが現像工程、転写工程、定着工程に求められるため、このような粒径分布の広がりは望ましくない。
一方、本発明のトナーのDv/Dnとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、長期にわたって安定した画像を維持でき、印刷品質が向上する点で、1〜1.15が好ましく、1〜1.12がより好ましく、1〜1.09が特に好ましい。
なお、Dv/Dnが1のとき、すべての粒径が同一であることを示し、Dv/Dnが大きいほど粒径分布が広いことを示す。
前記粒径分は、フロー式粒子像解析装置(シスメックス社 FPIA−2000)を用い解析を行うことができる。
【0198】
(現像剤)
本発明の現像剤は、少なくともトナーと、キャリアとを含有し、必要に応じて、更にその他の成分を含有する。二成分現像剤は、情報処理速度の向上に対応した高速プリンター等に使用する場合には、寿命を向上できるなどの点で有利である。
前記現像剤に含まれるトナーは、本発明の前記トナーであるため、詳細な説明は省略する。
【0199】
<キャリア>
前記キャリアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、キャリアコア粒子と、該キャリアコア粒子を被覆材で被覆(コート)した被覆層を有する樹脂コートキャリアが好ましい。
【0200】
<<キャリアコア粒子>>
前記キャリアコア粒子の材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェライト、鉄過剰型フェライト、マグネタイト、γ−酸化鉄等の酸化物や、鉄、コバルト、ニッケルのような金属、又はこれらの合金等の磁性材料などが挙げられる。
前記磁性材料に含まれる元素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウム、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムなどが挙げられる。これらの中でも、銅、亜鉛、及び鉄成分を主成分とする銅−亜鉛−鉄系フェライト;マンガン、マグネシウム、及び鉄成分を主成分とするマンガン−マグネシウム−鉄系フェライトが特に好ましい。
【0201】
<<被覆層>>
前記被覆層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体等のスチレン−アクリル系樹脂;アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素含有樹脂;シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂などが好適に挙げられる。この他にも、アイオモノマー樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂なども挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、樹脂中に磁性粉が分散されたバインダー型のキャリアコアも用いることができる。
【0202】
前記樹脂コートキャリアにおいて、キャリアコアの表面を少なくとも樹脂被覆剤で被覆する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂を溶剤中に溶解又は懸濁せしめて塗布したキャリアコアに付着せしめる方法、あるいは、単に粉体状態で混合する方法などが挙げられる。
【0203】
前記樹脂コートキャリアに対する前記被覆材の使用割合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、樹脂コートキャリア100質量部に対して、0.01質量部〜5質量部が好ましく、0.1質量部〜1質量部がより好まい。
【0204】
2種以上の混合物の被覆(コート)材でキャリアコア粒子(磁性体)を被覆する使用例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)酸化チタン微粉体100質量部に対してジ、メチルジクロロシランとジメチルシリコンオイル(質量比1:5)の混合物12質量部で処理したもの、(2)シリカ微粉体100質量部に対して、ジメチルジクロロシランとジメチルシリコーンオイル(質量比1:5)の混合物20質量部で処理したものなどが挙げられる。前記樹脂中、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、含フッ素樹脂とスチレン系共重合体との混合物、シリコーン樹脂が好適に使用され、特にシリコーン樹脂が好ましい。
【0205】
前記含フッ素樹脂とスチレン系共重合体との混合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリフッ化ビニリデンとスチレン−メタクリ酸メチル共重合体との混合物、ポリテトラフルオロエチレンとスチレン−メタクリル酸メチル共重合体との混合物、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合(共重合体質量比10:90〜90:10)とスチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体(共重合質量比10:90〜90:10)とスチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル−メタクリル酸メチル共重合体(共重合体質量比20〜60:5〜30:10:50)との混合物などが挙げられる。
【0206】
前記シリコーン樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、含窒素シリコーン樹脂及び含窒素シランカップリング剤と、シリコーン樹脂とが反応することにより生成された、変性シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0207】
前記キャリアの体積抵抗値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10Ω・cm〜1010Ω・cmが好ましい。このような体積抵抗値に調整する方法としては、例えば、キャリアの表面の凹凸度合い、被覆する樹脂の量を調整する方法などが挙げられる。
【0208】
前記キャリアの粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、4μm〜200μmが好ましく、10μm〜150μmがより好ましく、20μm〜100μmが更に好ましい。これらの中でも、前記キャリアは、50%粒径が20μm〜70μmであることが特に好ましい。
【0209】
前記トナーと、前記キャリアとの混合比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記キャリア100質量部に対して、前記トナー1質量部〜200質量部が好ましく、前記キャリア100質量部に対して、前記トナー2質量部〜50質量部がより好ましい。
【0210】
本発明のトナーを用いた現像方法は、従来の電子写真法に使用する静電潜像担持体が全て使用できる。例えば、有機静電潜像担持体、非晶質シリカ静電潜像担持体、セレン静電潜像担持体、酸化亜鉛静電潜像担持体、などが好適に使用可能である。
【実施例】
【0211】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0212】
(合成例1:結晶性ポリエステル樹脂Aの合成)
アルコール成分として、1,6−ヘキサンジオール0.8モル及び1,5−ペンタンジオール0.2モル、カルボン酸成分として、フマル酸1モル、エステル化触媒としてオクチル酸スズを、窒素導入管、脱水管、攪拌器、及び熱電対を装備した5リットルの四つ口フラスコ内に入れ、窒素雰囲気下、170℃で4時間縮重合反応させた後、200℃に昇温して1時間反応させ、更に8kPaにて1時間反応させることにより、結晶性ポリエステル樹脂Aを合成した。なお、結晶性ポリエステル樹脂Aの合成に使用した化合物について、下記表1にまとめて示す。
【0213】
(合成例2:結晶性ポリエステル樹脂Bの合成)
合成例1において、アルコール成分を、1,6−ヘキサンジオール0.8モル及び1,5−ペンタンジオール0.2モルに代えて、1,5−ペンタンジオール0.1モル、1,4−ブタンジオール0.9モル用い、カルボン酸成分を、フマル酸1モルに代えて、1,8オクタンジカルボン酸1モル用いたこと以外は、合成例1と同様の方法で結晶性ポリエステル樹脂Bを合成した。なお、結晶性ポリエステル樹脂Bの合成に使用した化合物について、下記表1にまとめて示す。
【0214】
(合成例3:結晶性ポリエステル樹脂Cの合成)
合成例1において、アルコール成分である1,6−ヘキサンジオールの添加量を0.8モルから1モルに変え、1,5−ペンタンジオール0.2モルを添加しなかったこと以外は、合成例1と同様の方法で結晶性ポリエステル樹脂Cを合成した。なお、結晶性ポリエステル樹脂Cの合成に使用した化合物について、下記表1にまとめて示す。
【0215】
(合成例4:結晶性ポリエステル樹脂Dの合成)
合成例1において、アルコール成分を、1,6−ヘキサンジオール0.8モル及び1,5−ペンタンジオール0.2モルに代えて、1,4−ブタンジオール1モル用い、カルボン酸成分を、フマル酸1モルに代えて、1,8オクタンジカルボン酸1モル用いたこと以外は、合成例1と同様の方法で結晶性ポリエステル樹脂Dを合成した。なお、結晶性ポリエステル樹脂Dの合成に使用した化合物について、下記表1にまとめて示す。
【0216】
(合成例5:結晶性ポリエステル樹脂Eの合成)
合成例1において、アルコール成分を、1,6−ヘキサンジオール0.8モル及び1,5−ペンタンジオール0.2モルに代えて、1,6−ヘキサンジオール1モル用い、カルボン酸成分を、フマル酸1モルに代えて、フマル酸0.9モル、1,8オクタンジカルボン酸0.1モル用いたこと以外は、合成例1と同様の方法で結晶性ポリエステル樹脂Eを合成した。なお、結晶性ポリエステル樹脂Eの合成に使用した化合物について、下記表1にまとめて示す。
【0217】
(合成例6:ポリエステル樹脂F)
合成例1において、アルコール成分を、1,6−ヘキサンジオール0.8モル及び1,5−ペンタンジオール0.2モルに代えて、BPA−PO0.7モル及びBPA−EO0.3モル用い、カルボン酸成分を、フマル酸1モルに代えて、テレフタル酸0.9モル及び無水トリメット酸0.07モル用いたこと以外は、合成例1と同様の方法でポリエステル樹脂Eを合成した。なお、ポリエステル樹脂Eの合成に使用した化合物について、下記表1にまとめて示す。
【0218】
【表1】

【0219】
<物性の確認>
合成例1〜6で合成した結晶性ポリエステル樹脂A、結晶性ポリエステル樹脂B、結晶性ポリエステル樹脂C、結晶性ポリエステル樹脂D、結晶性ポリエステル樹脂E、及びポリエステル樹脂Fの個数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、フローテスターT1/2、及びガラス転移点(Tg)を、以下の方法で測定した。
また、合成例1〜6で合成した結晶性ポリエステル樹脂A、結晶性ポリエステル樹脂B、結晶性ポリエステル樹脂C、結晶性ポリエステル樹脂D、結晶性ポリエステル樹脂E、及びポリエステル樹脂Fの酢酸エチルへの溶解度についても試験した。
【0220】
−個数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)の測定−
トリフルオロ酢酸ナトリウム(CFCOONa)を添加したヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)[濃度0.005M(mol/L)−CFCOONa/HFIP]に、合成例1〜6で合成した各樹脂を、濃度0.06%(wt/vol)で溶解させた後、0.45μm−Millex−LH(ミリポア製)フィルターによりろ過して、GPC用サンプルを調製した。このようにして調製したサンプルを、GPCを用いて、下記条件にて測定した。結果を下記表2に示す。
[GPC測定条件]
装置:ゲル浸透クロマトグラフGPC−7(Waters社製)
カラム:ShodexHFIP−806M(内径8.0mm/長さ30cm)×2本(昭和電工株式会社製)
流速 :0.5mL/分間
温度 :23℃
注入量 :300μL
検出器 :示差屈折率検出器R−401(Waters社製)
分子量校正 :単分散ポリメチルメタクリレート(PMMA)標準試料(昭和電工株式会社製)
【0221】
−フローテスターT1/2の測定−
フローテスターT1/2とは、1/2法における溶融温度のことである。
合成例1〜6で合成した各樹脂をそれぞれ1.0g用いて加圧成形したペレット状のサンプルを作製し、フローテスター(高架式フローテスター CFT500型、株式会社島津製作所製)を用いて、軟化点(Tf1/2)、流出開始温度(Tfb)と流出終了温度(Tend)との差(Tend−Tfb)を下記条件にて測定した。結果を下記表2に示す。
[フローテスター測定条件]
荷重:30kg/cm
昇温速度:3.0℃/分間
ダイ口径:0.50mm、
ダイ長さ:1.0mm
Tf1/2算出法:1/2法
【0222】
−ガラス転移点(Tg)の測定−
合成例1〜6で合成した各樹脂をそれぞれ10mg用い、アルミニウム製セルにパッキングし、示差走査熱量計(DSC)(自動示差走査熱量計 DSC−60A、株式会社島津製作所製)を用いて、下記の条件で測定した。なお、Tgは、2度目の昇温時のDSC曲線の吸熱ピーク若しくは吸熱ショルダーの吸熱開始温度(吸熱開始前の接線と吸熱後の交点の温度)とした。結果を下記表2に示す。
[示差走査熱量計測定条件]
測定温度 :0℃〜200℃
昇温速度 :10℃/分間
【0223】
【表2】

【0224】
−酢酸エチルへの溶解度−
合成例1〜6で合成した各樹脂を濃度別に30℃の酢酸エチルに溶解させ、目視にて溶解したか否かを判断し、溶解せずに残ったもの若しくは濁りが生じていたものを「×」、すべて溶解し透明になったものを「○」とした。結果を下記表3に示す。
【0225】
【表3】

結晶性ポリエステル樹脂A、結晶性ポリエステル樹脂B、結晶性ポリエステルE、及びポリエステル樹脂Fについては、酢酸エチルに溶解することを確認した。
【0226】
(調製例1:着色剤分散液の調製)
カーボンブラック(Regal400、Cabot社製)20質量部及び顔料分散剤(アジスパーPB821、味の素ファインテクノ株式会社製)2質量部を、酢酸エチル78質量部に、攪拌羽を有するミキサーを使用して一次分散させた。得られた一次分散液を、ダイノーミルを用いて強力なせん断力により細かく分散し、凝集体を完全に除去した二次分散液を調製した。更に、0.45μmの細孔を有するフィルター(PTFE社製)を通過させ、サブミクロン領域まで分散させたカーボンブラック分散液を調製した。
【0227】
(調製例2:ワックス分散液(離型剤)の調製)
撹拌羽と温度計をセットした容器に、カルナバワックス20質量部及び酢酸エチル80質量部を仕込み、85℃に加温し20分間撹拌しカルナバワックスを溶解させた後、急冷しカルナバワックスの微粒子を析出させた。この分散液を、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填したビーズミル(LMZ06、アシザワファインテック株式会社製)を用いて強力なせん断力により更に細かく分散した。
ワックスの重量平均粒径をレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA−950、堀場製作所製)を用いて測定したところ、0.56μmであった。
【0228】
(調製例3:結晶性ポリエステル樹脂Aの溶解液の調製)
合成例1で合成した結晶性ポリエステル樹脂A10質量部及び酢酸エチル90質量部を仕込み、30℃で結晶性ポリエステル樹脂Aを完全に溶解した。なお、この溶液は30℃に保持した。
【0229】
(調製例4:結晶性ポリエステル樹脂Bの溶解液の調製)
合成例2で合成した結晶性ポリエステル樹脂B10質量部及び酢酸エチル90質量部を仕込み、30℃で結晶性ポリエステル樹脂Aを完全に溶解した。なお、この溶液は30℃に保持した。
【0230】
(調製例5:結晶性ポリエステル樹脂Cの分散液の調製)
撹拌羽と温度計をセットした容器に、合成例3で合成した結晶性ポリエステル樹脂C20質量部及び酢酸エチル80質量部を仕込み、85℃に加温し20分間撹拌し結晶性ポリエステル樹脂Cを溶解させた後、急冷し結晶性ポリエステル樹脂Cの微粒子を析出させた。この分散液を、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填したビーズミル(アシザワファインテック株式会社製、LMZ06)を用いて強力なせん断力により更に細かく分散し、結晶性ポリエステル樹脂Cの分散液を得た。
結晶性ポリエステル樹脂Cの分散液の重量平均粒径を調製例2と同様の方法で測定したところ、0.73μmであった。
【0231】
(調製例6:結晶性ポリエステル樹脂Dの分散液の調製)
調製例5において、結晶性ポリエステル樹脂Cに代えて、合成例4で合成した結晶性ポリエステル樹脂Dを用いたこと以外は、調製例5と同様の方法で結晶性ポリエステル樹脂Dの分散液を調製した。
結晶性ポリエステル樹脂Dの分散液の重量平均粒径を調製例2と同様の方法で測定したところ、0.67μmであった。
【0232】
(調製例7:結晶性ポリエステル樹脂Eの溶解液の調製)
合成例2で合成した結晶性ポリエステル樹脂B10質量部及び酢酸エチル90質量部を仕込み、30℃で結晶性ポリエステル樹脂Aを完全に溶解した。なお、この溶液は30℃に保持した。
【0233】
(調製例8:ポリエステル樹脂Fの溶解液の調製)
ポリエステル樹脂F20質量部及び酢酸エチル80質量部を仕込み、ポリエステル樹脂Fを完全に溶解した。なお、この溶液は30℃に保持した。
【0234】
(調製例8:トナー組成液の調製)
下記表4に示す組成及び添加量となるように、結晶性ポリエステル樹脂Aの溶解液(調製例3)、結晶性ポリエステル樹脂Bの溶解液(調製例4)、結晶性ポリエステル樹脂Cの分散液(調製例5)、結晶性ポリエステル樹脂Dの分散液(調製例6)、結晶性ポリエステル樹脂Eの分散液(調製例7)、及びポリエステル樹脂F(調製例8)の溶解液の少なくともいずれかと、着色剤分散液(調製例1)と、ワックス分散液(調製例2)と、酢酸エチルとを混合し、固形分10%のトナー組成液を得た。各トナー組成液中の粗大粒子を取り除くため、目開き1μmのフィルター(ロキテクノ社製 SBP−010)を通過させて、トナー組成液1〜9を得た。なお、トナー組成液は、液温を25℃とした。
【0235】
【表4】

【0236】
(実施例1−1)
<トナー母体粒子1−1の作製>
トナー組成液を、図1〜3に示すトナー製造装置を用い、図3に示す液柱共鳴原理を用いた液滴吐出ヘッドにより以下に示す条件で液滴を吐出させた。その後、該液滴を乾燥固化し、サイクロン捕集した後、更に35℃にて48時間2次乾燥させることにより、トナー母体粒子1−1を作製した。
[液柱共鳴条件]
共鳴モード :N=2
液柱共鳴液室の長手方向の両端間の長さ :L=1.8mm
液柱共鳴液室の液共通供給路側のフレームの端部の高さ :h1=80μm
液柱共鳴液室の連通口の高さ :h2=40μm
[トナー母体粒子作製条件]
分散液比重 :ρ=1.1g/cm
吐出孔の形状 :真円
吐出孔直径 :7.5μm
吐出孔の開口数 :液柱共鳴液室1つ当たり4個
隣接する吐出孔の中心部間の最短間隔 :130μm(全て等間隔)
乾燥エアー温度 :40℃
印加電圧 :10.0V
駆動周波数 :395kHz
【0237】
<トナー1−1の作製>
このトナー母体粒子1−1 100質量部に対して、流動性向上剤として疎水性シリカ(H2000、クラリアントジャパン株式会社製)1.0質量部及び酸化チタン(SMT−150AI、テイカ株式会社製)1.0質量部を、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて外添処理を行い、トナー1−1を得た。
【0238】
(実施例1−2)
<トナー母体粒子1−2の作製>
トナー組成液を、図10A、図9A、及び図9Bに示すトナー製造装置を用いてトナー化した。即ち、以下に示すトナー母体粒子作製条件で、吐出孔を有する薄膜を振動させることにより液滴を吐出させた。その後、該液滴を乾燥固化し、サイクロン捕集した後、更に35℃にて48時間2次乾燥することにより、トナー母体粒子1−2を作製した。
[トナー母体粒子作製条件]
分散液比重 :ρ=1.1g/cm
吐出孔の形状 :真円
吐出孔直径 :7.5μm
吐出孔の開口数 :19個
隣接する吐出孔の中心部間の最短間隔 :200μm(全て等間隔)
乾燥エアー温度 :40℃
印加電圧 :45.0V
駆動周波数 :80kHz
【0239】
<トナー1−2の作製>
このトナー母体粒子1−2 100質量部に対して、流動性向上剤として疎水性シリカ(H2000、クラリアントジャパン株式会社製)1.0質量部及び酸化チタン(SMT−150AI、テイカ株式会社製)1.0質量部を、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて外添処理を行い、トナー1−2を得た。
【0240】
(実施例2−1、3−1、4−1、5−1、6−1、7−1、比較例1−1、2−1、3−1)
実施例1−1において、トナー組成液1に代えて、下記表5に示すトナー組成液を用いたこと以外は、実施例1−1と同様の方法で、実施例2−1、3−1、4−1、5−1、6−1、及び7−1、並びに、比較例1−1、2−1、及び3−1のトナー2−1、3−1、4−1、5−1、6−1、7−1、8−1、9−1、及び10−1を作製した。
【0241】
(実施例2−2、3−2、4−2、5−2、6−2、7−2、比較例1−2、2−2、3−2)
実施例1−2において、トナー組成液1に代えて、下記表5に示すトナー組成液を用いたこと以外は、実施例1−2と同様の方法で、実施例2−2、3−2、4−2、5−2、6−2、及び7−2、並びに、比較例1−2、2−2、及び3−2のトナー2−2、3−2、4−2、5−2、6−2、7−2、8−2、9−2、及び10−2を作製した。
【0242】
【表5】

【0243】
−粒度分布の評価−
トナー1−1〜10−2の重量平均粒径(Dw)及び個数平均粒径(Dn)は、粒度測定器(マルチサイザーIII、ベックマンコールター社製)を用いて、アパーチャー径100μmで測定し、解析ソフト(Beckman Coulter Mutlisizer 3 Version3.51)にて解析を行った。
具体的には、ガラス製ビーカー(100mL容)に10質量%界面活性剤(アルキルベンゼンスホン酸塩 ネオゲンSC−A、第一工業製薬株式会社製)を0.5mL添加した。次いで、各トナーをそれぞれ0.5g添加し、ミクロスパーテルでかき混ぜた後、イオン交換水 80mLを添加した。次いで、超音波分散器(W−113MK−II、本多電子株式会社製)で10分間分散処理した。
この分散液について、前記マルチサイザーIIIを用いて、測定用溶液としてアイソトンIII(ベックマンコールター社製)を用いて測定を行った。測定は、前記マルチサイザーIIIが示す濃度が8±2%になるように前記トナー分散液を滴下した。2.001μm以上20.1874μ以下の粒径を対象とした。
【0244】
トナー粒子又はトナーの体積及び個数を測定後、体積分布と個数分布を算出した。得られた分布から、トナーの重量平均粒径(Dw)、個数平均粒径(Dn)を求めた。結果を表6に示す。
粒度分布の指標としては、トナーの重量平均粒径(Dw)を個数平均粒径(Dn)で除したDw/Dnを用いた。完全に単分散であればDw/Dn=1となり、この数値が大きいほど分布が広いことを意味する。
【0245】
<キャリアの作製>
下記組成をホモミキサーで20分間分散し、コート層形成液を調製した。このコート層形成液を、流動床型コーティング装置を用いて、粒径40μmの球状マグネタイト1,000質量部の表面にコーティングして磁性キャリアを得た。
[組成]
シリコーン樹脂(オルガノストレートシリコーン) 100質量部
トルエン 100質量部
γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン 5質量部
カーボンブラック 10質量部
【0246】
<現像剤の作製>
トナー1−1〜トナー10−2それぞれについて、ブラックトナー4質量部及び上記磁性キャリア96質量部をボールミルで混合して二成分現像剤を作製した。
各二成分現像剤について、以下に示す方法で、定着下限温度及びホットオフセット性について評価した。
【0247】
−定着下限温度の評価−
前記作製した各二成分現像剤を市販の複写機(イマジオネオ455、リコー株式会社製)に入れ、定着温度を100度から10度おきに上げ、紙(タイプ6000ペーパー、リコー株式会社製)に画像を出力した。出力された画像を手で擦り、トナーが剥がれなくなった温度を定着下限温度として評価した。結果を下記表6に示す。
【0248】
−ホットオフセット性の評価−
前記作製した各二成分現像剤を市販の複写機(イマジオネオ455、リコー株式会社製)に入れ、定着温度を低温から高温に変化させながら、紙(タイプ6000ペーパー、リコー株式会社製)に画像を出力した。出力された画像の光沢度が低下した温度、若しくは画像にオフセット画像が認められた温度をオフセット発生温度とし、下記評価基準に基づいてホットオフセット性を評価した。結果を下記表6に示す。
[評価基準]
○ :オフセット発生温度が200℃以上
× :オフセット発生温度が200℃未満
【0249】
−吐出孔の詰まりの評価−
トナー母体粒子の作製の際、液滴吐出ヘッドをCCDカメラにより観察し、吐出口から、吐出液滴が出ているかを確認し、吐出口の詰りを評価した。結果を下記表6に示す。
[評価基準]
○ :3時間吐出孔に詰まりが生じることなく連続滴化できた
△ :1時間で5割未満の吐出孔に詰まりが生じた
× :1時間で5割以上の吐出孔に詰まりが生じた
【0250】
【表6】

【0251】
−製造性の評価−
実施例1−1〜7−2の、トナー1−1〜7−2は、3時間の連続液滴化において、吐出孔が詰まることなく、好適にトナーを液滴化することができた。
一方、比較例1−1〜比較例2−2のトナー8−1〜10−2は、トナー液滴化時に一部の吐出孔が詰り、トナーが液滴化できなくなった。
比較例1−1においては、1時間で約6割の吐出孔に詰まりが発生し、トナーが液滴化できなくなった。比較例1−2においては、1時間で約4割の吐出孔に詰まりが発生し、トナーが液滴化できなくなった。これらの詰まりの発生した吐出孔を分析すると、結晶性ポリエステル樹脂Cが主な成分であった。
比較例2−1においては、1時間で約7割の吐出孔に詰まりが発生し、トナーが液滴化できなくなった。比較例2−2においては、1時間で約5割の吐出孔に詰まりが発生し、トナーが液滴化できなくなった。これらの詰まりの発生した吐出孔を分析すると、結晶性ポリエステルDが主な成分であった。
なお、比較例3−1及び3−2の、トナー10−1及び10−2は、3時間の連続液滴化において、吐出孔が詰まることなくトナーを液滴化することができた。
【0252】
なお、前記吐出孔における結晶性ポリエステル樹脂の分析は、顕微レーザーラマン分光装置にて分析し、各トナー成分と比較して、同定を行った。
【0253】
表6及び製造性の評価の結果より、実施例1−1〜7−2のトナー1−1〜7−2は、製造性が良好であり、Dw/Dnが1.15以下と粒度分布が狭い小粒径トナーが得られ、かつ低温定着可能であり、ホットオフセット性も良好なトナーであった。
一方、比較例1−1〜2−2のトナー8−1〜9−2は、ホットオフセット性は良好であったものの、吐出孔が詰り生産性に問題があった。また、比較例3−1及び3−2のトナー10−1及び10−2は、製造性及びホットオフセット性は良好であったが、定着下限温度が150℃と高く、低温定着可能なトナーを得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0254】
本発明のトナーの製造方法は、トナー組成液を吐出する際に、吐出孔が詰まることなく長時間安定してトナー組成液を吐出できるため、トナーの生産性に優れ、更に粒度分布が狭く、均一で小粒径、かつ、優れた低温定着性を有し、低消費電力で画像形成できるトナー、及び該トナーを含有する現像剤を得ることができる。
本発明のトナー及び現像剤は、電子写真、静電記録、静電印刷等における静電荷像の現像に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0255】
1、210 トナー製造装置
10、104 液滴形成ユニット(液滴形成手段)
11、312 液滴吐出ヘッド
12 気流通路
13、201 原料収容器
14 トナー組成液
15 液循環ポンプ
16、202 液供給管
17 液共通供給路
18 液柱共鳴液室
19、314 吐出孔
20、305 振動手段
21 トナー液滴
22 液戻り管
23 合着していない粒子
24 合着した粒子
30 乾燥捕集ユニット(粒子形成手段)
31、206 チャンバ
32、213 トナー捕集手段
33 下降気流
34 トナー捕集チューブ
35、214 トナー貯留手段
44 吐出孔の断面における接液面から吐出口に向かう角度
103 シュラウド気流出口
104 液滴形成ユニット
203 送液手段
204 バルブ
205 シュラウド気流
207 1次搬送気流
208 2次搬送気流
209 2次搬送気流導入口
212 誘導管
300 間接振動型吐出手段
301 圧電体
302、402 電極
303 振動発生手段
304 振動増幅手段
306 回路
307 駆動信号発生源
308 フレーム
309 トナー組成液供給口
310 薄膜
311 液流路
313 振動面
315 トナー組成液排出口
400 直接振動型吐出手段
401 円環状圧電体
403 円環状振動発生手段
500 軌跡
L 液柱共鳴液室18において固定端側のフレームの端部から液共通供給路17側の端部までの長さ
W 液柱共鳴液室18の幅
h1 液共通供給路17側のフレームの端部の高さh1
h2 液共通供給路17側の連通口の高さ
PG1、PG2、P1、P2 圧力計
【先行技術文献】
【特許文献】
【0256】
【特許文献1】特開平7−152202号公報
【特許文献2】特開2003−262976号公報
【特許文献3】特開2003−280236号公報
【特許文献4】特開2003−262977号公報
【特許文献5】特開平05−045929号公報
【特許文献6】特開平11−249339号公報
【特許文献7】特開2001−117268号公報
【特許文献8】特開2001−222138号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂及び離型剤を含有するトナー組成物を有機溶剤に溶解又は分散させたトナー組成液を調製するトナー組成液調製工程と、
少なくとも1つの吐出孔から前記トナー組成液を吐出して液滴化する液滴形成工程と、
前記液滴化したトナー組成液中の前記有機溶剤を乾燥させて固化させる乾燥工程と、を含み、
前記結着樹脂が、少なくとも結晶性ポリエステル樹脂を含有し、前記結晶性ポリエステル樹脂が、液滴化する前のトナー組成液中に溶解していることを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項2】
液滴形成工程が、少なくとも1つの吐出孔が形成された液柱共鳴液室内のトナー組成液に振動を付与して液柱共鳴による定在波を形成し、前記定在波の腹となる領域に形成された前記吐出孔から前記トナー組成液を吐出して液滴を形成する工程である請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項3】
液滴形成工程が、同じ開口径を有する複数の吐出孔が形成された薄膜に振動手段により振動を付与し、前記吐出孔からトナー組成液を吐出して液滴を形成する工程である請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項4】
結晶性ポリエステル樹脂が、2価のアルコール成分及び2価の酸成分を少なくとも含有し、前記2価のアルコール成分及び前記2価の酸成分の少なくともいずれかが、少なくとも2種のモノマーを含有する請求項1から3のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項5】
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量が、1,000〜100,000である請求項1から4のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項6】
結着樹脂中に結晶性ポリエステル樹脂を3質量%〜50質量%含有する請求項1から5のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項7】
トナー粒子中の離型剤の含有量が3質量%〜20質量%である請求項1から6のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項8】
結着樹脂が結晶性ポリエステル樹脂以外の樹脂を含有し、前記結晶性ポリエステル樹脂以外の樹脂のTgが50℃〜70℃である請求項1から7のいずれかに記載のトナー。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載のトナーの製造方法により得られ、重量平均粒径が1μm〜10μmであり、粒度分布(重量平均粒径/個数平均粒径)が、1〜1.15の範囲にあることを特徴とするトナー。
【請求項10】
請求項9に記載のトナーとキャリアとを少なくとも含有することを特徴とする現像剤。

【図1】
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【図4A】
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【図13】
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【図14】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図3】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−93425(P2012−93425A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238560(P2010−238560)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】