説明

トラックボール装置

【課題】ボールへの所定操作によって各種入力操作が可能なトラックボール装置に関し、非接触による回転検知が行われながら回転操作時のクリック感触も得られるものを提供する。
【解決手段】ボール10への回転操作時に、ローラ4に固定されて共廻りする磁石5の磁束変化をリードスイッチ41により非接触で検出すると共に、上記磁石5と上記リードスイッチ41のリード片42との間に発生する吸引力が上記ローラ4の回転状態に影響を与えるように上記リードスイッチ41の配置をなし、その影響が上記ボール10に伝わり回転操作時のクリック感触として感じられるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の入力操作部に塔載され、ボールへの所定操作によって各種入力操作が可能なトラックボール装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種入力操作用として用いられるトラックボール装置は、各種電子機器に多く搭載されるようになってきた。
【0003】
このような従来のトラックボール装置について、以下に図面を用いて説明する。
【0004】
図14は従来のトラックボール装置の断面図、図15は同機構構成部と配線基板構成部との組み合わせ前の斜視図、図16は同機構構成部の分解斜視図、図17は同トラックボール装置の上面図、図18は同トラックボール装置の左側面図である。
【0005】
同図を用いて当該トラックボール装置の機構構成部から説明していく。
【0006】
同図において、1は、略十字状に形成された樹脂製の上ケース、2は、上ケース1の下方に重ねて配置された同じく略十字状に形成された樹脂製の取付台である。
【0007】
上ケース1の上方には、重ねて金属板からなり中央部分に孔を有するカバー3の平板部が配されている。そのカバー3は、図15や図16などに示すように、平板部における側端部の一方の対向位置から各々垂下する第1脚部3A、またそれと直交する他方の対向位置から各々垂下する第2脚部3Cを有している。その第1脚部3Aの先端部には貫通孔3Bが配設されている。また第2脚部3Cの下端は、側方に延設されたカシメ爪部3Dとして構成されている。
【0008】
そして、そのカバー3における第1脚部3Aの貫通孔3B内に、取付台2の側面部に突設された突起2Aが嵌め込まれると共に、第2脚部3Cのカシメ爪部3Dが取付台2の側面段部に係止するようにカシメられることによって上ケース1と取付台2は結合状態となっている。
【0009】
そして、上ケース1の略十字状をなす側方への突出部分の各々には、下方開口の鉤形に形成された鉤状部1Aがそれぞれ一対で設けられている。その鉤状部1Aの下方開口部分が、ローラ保持部1B(図16参照)としてなり、ローラ保持部1Bの各々には、略円柱形状のローラ4が回転可能に収納保持されている。そのローラ4は、上面視で対向する二本ずつの二組が互いに直交する正方形状で四本配されている。各ローラ4の下方部分は、取付台2の上面で回転可能に保持されている。上記各ローラ4の中央部は、凹凸を有する当接部として構成されている。
【0010】
また、各ローラ4の一端部には、図18に示すように、所定角度ピッチ毎にN極とS極が交互に着磁されたリング状の磁石5がそれぞれ各ローラ4と共廻りするように同軸状で固定されている。そして、その磁石5が、上ケース1および取付台2の十字における窪み部分に位置するように各ローラ4は配置されている。つまり、各ローラ4で構成される矩形の角部にそれぞれの磁石5は配されている。
【0011】
そして、10は、上ケース1と取付台2とで構成される内部空間内に配されているフッ素ゴムなどからなるボールである。
【0012】
ここで上ケース1と取付台2とで構成される内部空間の構成について説明する。まず、上記内部空間における底部側を構成する取付台2の十字状中央位置には円形孔2Bが設けられている。その円形孔2B内には、一端側が円形孔2Bの側壁部分に埋設固定された片持ち状の板ばね6の他端側が配されている。その板ばね6の他端側は、下方への突出部6Aを備えた外形円形に形成され、その他端側によって上記ボール10は下方から押し上げられている。
【0013】
一方、上記内部空間を構成する上ケース1は、上方に突出した筒状部を有し、その筒状部の上端位置の円形に形成された上方孔部1Cの径は、上ケース1の上面中央位置でボール10径よりも少し小さい径で設定されている。そして、上方に板ばね6で付勢されたボール10は、上記上方孔部1Cの端部で上方への位置規制がなされ、その上部部分は、上方孔部1Cから外方に突出している。上記ボール10の配置状態で、ボール10と各ローラ4の当接部との間には、所定間隔が空く設定となっている。
【0014】
そして、上記ボール10は、下方向への押し下げ力が加わったときには、ボール10下端で板ばね6を押し下げて上ケース1と取付台2によって構成される内部空間内で上下移動可能となっている。
【0015】
当該トラックボール装置における機構構成部は、以上のように構成され、その機構構成部の下方位置には、配線基板15が配置され、図15や図18に示すように、その配線基板15の上面には磁気センサとしてのホールIC20と自力復帰型で節度付きのプッシュスイッチ25が実装されている。当該構成部分を配線基板構成部として呼称して以下に説明する。
【0016】
上記配線基板構成部のホールIC20は、各磁石5の配置位置に応じた上下で対向する位置のそれぞれに配置され、対応するローラ4の回転時に共廻りする各磁石5からの磁束変化に反応してオンオフ出力がなされるものである。
【0017】
また、上記配線基板構成部のプッシュスイッチ25は、ボール10の下方位置に対応する配線基板15上、つまりホールIC20で囲まれる中央部にあたる位置に配置されている。
【0018】
このプッシュスイッチ25は、図14に示すように、スイッチケース内に配された中央固定接点26Aおよび外側固定接点26Bと、中央部下面が中央固定接点26Aに所定間隔を空けて対峙するように、その外周下端が外側固定接点26B上に載せられた上方凸型ドーム状に構成された金属薄板製の可動接点27とからなるスイッチ接点部を備えている。上記可動接点27としては、中央部の反転動作時に節度感触が得られるものとなっている。
【0019】
上記のように当該トラックボール装置は構成されている。
【0020】
次に、当該トラックボール装置の動作について説明する。
【0021】
まず、トラックボール装置を操作していない図14に示す通常状態から、上ケース1の上方孔部1Cより上方に突出したボール10の上部を指等で触れてボール10を左方向に回転操作すると、図19に示すように、ボール10が板ばね6の他端側を押し下げ若干下方位置に下がりつつ左側に移動し、上記回転操作方向に対応する同図中の左側のローラ4の当接部とのみ当接して当該左側のローラ4を回転させる。この時、その他のローラ4は回転せず、またプッシュスイッチ25も作動されない。
【0022】
そして、この左側のローラ4の回転に伴い、左側のローラ4に固定された磁石5も共廻りして、当該磁石5に対応するホールIC20に、当該磁石5のNまたはS極が交互に接近を繰り返し、それに応じてホールIC20から所定出力が得られる。
【0023】
同様に、ボール10を右方向や前後方向に回転操作する場合は、上記と同様な動作をなし、所定のホールIC20から所定の出力が得られる。
【0024】
また、斜め方向にボール10を回転操作した場合は、ボール10は直交関係で位置する二つのローラ4に当接して両者を回転させ、同様に、二つのホールIC20から所定の出力が得られる。
【0025】
次に、図14に示す通常状態からボール10の上部を指などで押し下げ操作すると、ボール10は、板ばね6の他端側を押し下げつつ取付台2の円形孔2B方向に下がっていく。これに伴い、板ばね6の他端側に設けられた突出部6A下面でプッシュスイッチ25の中央部が下方に押圧される。
【0026】
そして、その押し下げ力が所定の値を超えると、図20に示すように、プッシュスイッチ25の可動接点27が節度感を伴いながら反転動作して、中央固定接点26Aと外側固定接点26B間が可動接点27を介して電気的に接続されたスイッチオン状態になる。
【0027】
その後、ボール10に加えた押し下げ力を除くと、プッシュスイッチ25の可動接点27が自らの弾性復元力により元の上方凸型のドーム形状に復元し、プッシュスイッチ25の中央固定接点26Aと外側固定接点26Bとの間は再び電気的な独立状態に戻ると共に、板ばね6の他端側も元の位置に復帰していき、板ばね6の復帰に伴ってボール10は上方に押し戻される。ボール10は、上ケース1の上方孔部1C端部に当接して停止し、元の図14に示す通常状態に戻るものであった。
【0028】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2002−373055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
しかしながら、上記従来のトラックボール装置は、磁石5の回転状態をホールIC20により非接触で検出していたのでローラ回転検出部分が長寿命なものにでき好ましかったが、ホールIC20が高価であったため、全体として高価なものになってしまうという課題があった。
【0030】
また、その一方で、ボール10への回転操作時における操作性向上も求められ、特に、ボール10への回転操作時にクリック感触が得られるものへの要望が高まっていた。
【0031】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、従来と同様に非接触による回転検知が行われながら回転操作時のクリック感触も得られるトラックボール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0033】
本発明の請求項1に記載の発明は、ボールと、上記ボールへの回転操作時に上記ボールに接して回転する磁石付きローラと、上記ローラの回転に伴う磁束変化によりオンオフ状態が切り換わるローラ回転検出用のリードスイッチとを備え、上記ボールへの回転操作時に、上記磁石と上記リードスイッチとの間に発生する吸引力が上記ローラの回転状態に影響を与えるように上記リードスイッチが配置され、その影響が上記ボールに伝わり回転操作時のクリック感触として感じられるトラックボール装置であり、安価なリードスイッチを用いて磁石付きローラの回転検出が非接触で行えると共に、他の部品などを用いることなく回転操作時のクリック感触も得られるものが安価に実現できるという作用を有する。
【0034】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、N極とS極が所定角度ピッチで交互に着磁されたリング状の磁石がローラに固定され、その磁石の回転中心軸線とリードスイッチの外装体内におけるリード片の長手側の設置方向とが直交関係になるようにして上記磁石の下方位置に上記リードスイッチを配置したものであり、磁石からの磁束がリード片に多く作用するようになり、良好なクリック感触が得られ易くなるという作用を有する。
【0035】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載の発明において、リードスイッチを装着する配線基板に、上記リードスイッチの外装体の下方部分が収容可能な孔部を設けたものであり、配線基板面からの高さ方向が低背化されたものにできるという作用を有する。
【0036】
請求項4に記載の発明は、請求項1記載の発明において、N極とS極が所定角度ピッチで交互に着磁されたリング状の磁石がローラに固定され、その磁石の回転中心軸線とリードスイッチのリード片の長手側の設置方向とが直交関係になるようにして上記磁石の周方向における側方位置に、上記磁石の回転中心軸線と上記リード片の高さ位置を合わせて上記リードスイッチを配置したものであり、当該配置でも磁石からの磁束がリード片に多く作用するようになり、良好なクリック感触が得られ易くなるという作用を有する。
【発明の効果】
【0037】
以上のように本発明によれば、ボールの回転に追従し磁石付きのローラが回転した際の磁束変化をリードスイッチにより非接触状態で検出でき、かつ上記リードスイッチを、リード片と磁石との吸引力による作用により上記ローラの回転状態に影響を与える位置で配置してあるため、そのローラの回転状態の影響がボールを介してクリック感触として感じられるトラックボール装置を安価に構成できるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図13を用いて説明する。
【0039】
なお、従来の技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0040】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態によるトラックボール装置の外観斜視図、図2は同上面図、図3は同側面図、図4は同機構構成部と配線基板構成部との組み合わせ前の斜視図である。
【0041】
同図に示すように、本発明によるトラックボール装置は、従来のものと同様に、上ケース1から上方に突出しているボール10の上部が操作部分となり、その機構構成部をなす各部材(上ケース1、取付台2、カバー3、磁石5付きのローラ4など)の構成や配置状態は従来と同じであるため説明は省略する。また、上記ボール10は、非操作状態では、同図中にはあらわれない板ばね6で上方に付勢され四つの各ローラ4とは所定間隔が空く設定となり、かつその上方への付勢力に抗してボール10が押し下げ操作された際に上ケース1と取付台2によって構成される内部空間内で上下移動可能となっていることも従来と同じである。
【0042】
一方、上記機構構成部に組み合わせられる配線基板構成部は、図4に示すように、配線基板31およびその配線基板31に配された四つのリードスイッチ41とプッシュスイッチ25から構成されている。なお、上記プッシュスイッチ25は、従来と同じもので、また配置位置としてもボール10の下方位置に対応させて配してあることも同じである。
【0043】
そして、上記リードスイッチ41は、不活性ガスが封入されたガラスなどからなる細長い略筒状の外装体43内に、その長手の中央位置で、パーマロイなどの磁性薄板からなる細幅直線状の二つのリード片42の一端側どうしが所定間隔をあけた対向状態で配され、そのリード片42の各他端側は、その長手の側方部分からそれぞれ直線状に導出され、その導出部が所定位置で下方に曲げられ端子部となっている。
【0044】
そして、各リードスイッチ41は、ローラ4に固定された各磁石5の真下の位置に外装体43の長手の中央位置を合わせ、かつ外装体43の長手方向がそれぞれ対応するローラ4の回転中心軸線と直交関係になるようにして配線基板31に配置されている。上記配置であれば、それぞれ対応するリング状の磁石5において所定角度ピッチで交互に着磁された磁極と各リードスイッチ41の二つのリード片42とが近接的な配置状態となると共に、磁石5の回転中心軸線に対してリード片42の長手側の設置方向が直交関係となって磁極の幅方向がリード片42の長手側の設置方向に合い磁石5からの磁束が多くリード片42に作用するようにできる。なお、外装体43の下方部分を配線基板31に設けた孔部31A内に収容可能に構成すれば、配線基板31面からの高さ方向の低背化が容易に図れる。なお、上記プッシュスイッチ25は、各リードスイッチ41で囲まれる矩形部分内の中央位置で半田付け装着され、各リードスイッチ41の端子部も半田付け固定されている。
【0045】
以上のように本発明のトラックボール装置は構成され、その回転操作時には、突出したボール10上部を指等で触れてボール10を回転操作、またはボール10を押し下げ操作して使用される。なお、ボール10への押し下げ操作に応じた動作は従来と同じであるため説明は省略する。
【0046】
そして、ボール10を回転操作すると、機構構成部が従来と同じ動作をなし、ボール10と当接した操作方向に対応するローラ4およびそれに固定された磁石5が回転する。これにより、その下方に対向して配されたリードスイッチ41に上記磁石5のNまたはS極が交互に接近を繰り返し、その磁束変化によりリードスイッチ41におけるリード片42の一端側どうしの接離が繰り返し行われ、その信号でローラ4つまりボール10の回転量が非接触状態で検出できる。なお、リードスイッチは磁気センサの中では比較的安価なものであるため、これを用いることによりトラックボール装置としても安価なものに構成できる。
【0047】
ここで、上記磁石5の回転時におけるリードスイッチ41の状態変移等について図5〜図7を用いて説明する。なお、以下ではリードスイッチ41の二つのリード片42に対し、図中で左側に示したものを左側リード片42A、右側に示したものを右側リード片42Bと表記して説明する。
【0048】
まず、図5に示すように、例えば磁石5のN極における中央角度位置がリードスイッチ41に対向した状態では、左側リード片42Aは、その磁石5からの磁束で外装体43の中央部側に位置する一端側がS極になり、外装体43からの導出部側がN極となる。また、右側リード片42Bも、外装体43の中央部側に位置する一端側がS極になり、外装体43からの導出部側がN極となる。この場合には、対向配置された左側リード片42Aと右側リード片42Bの一端どうしは、両者共にS極であるため反発しあってリードスイッチ41はオフ状態が維持される。
【0049】
この状態で、磁石5と各リード片42A,42Bとの間に強い引き付け力が発生しており、その引き付け力がローラ4側としては回転規制力となって作用し、それがボール10を介してクリック感として感じられる。その引き付け力を強いものとするには、磁石5の各磁極が、各リード片42A,42Bの長手側の設置方向に応じて位置するようリードスイッチ41を配し、磁石5からの磁束が各リード片42A,42Bに多く作用する配置とすればよい。一般的に各リード片42A,42Bは外装体43内およびその導出部では直線状で設置されているため、上記状態とするには、ローラ4の回転中心軸線とリードスイッチ41の外装体43の長手方向における中心軸が直交関係になる配置にすればよい。
【0050】
そして、上記状態からボール10を回転操作しローラ4つまり磁石5を時計廻り方向に回転させると、図6に示すように、上記N極に隣り合うS極が外装体43の中央部近傍に共に近接する状態となる。この状態では、磁束方向が外装体43内の各リード片42A,42Bの長手側の設置方向に略平行関係で働くように変わるため、左側リード片42Aは中間部近傍から一端側がS極に、また右側リード片42Bは一端側から中間部近傍がN極となる。このとき、同図に示すように、上記対向配置された各リード片42A,42Bの一端側どうしが互いに引き付け合って接触し、リードスイッチ41はオン状態となる。
【0051】
なお、このときにも、磁石5と各リード片42A,42Bとの間には引き付け力が発生している。しかし、その力の大きさは各リード片42A,42Bに働く磁束方向に応じて弱いものになり、ローラ4の回転規制力として感じられるまでの大きさはない。
【0052】
さらに、ローラ4が同方向に回転して磁石5の上記S極における中央角度位置が外装体43の中央部近傍に対向した状態になると、各リード片42A,42Bの一端側どうしは両者ともにN極になって再び反発し合って離れた状態に戻り、リードスイッチ41はオフ状態に戻る。このとき、磁石5と各リード片42A,42Bとの引き付け力は大きく働き、それによりローラ4は回転規制をされてボール10を介して操作する指などにクリック感として感じられる。
【0053】
続いて、ローラ4が同方向に回転し次のN極が近接してくると各リード片42A,42Bに働く磁束方向は再びその長手側の設置方向に対し略平行関係に変わり、各リード片42A,42Bの一端どうしがそれぞれ異極となってリードスイッチ41はオン状態となる。このときの磁石5と各リード片42A,42Bとの間に発生している引き付け力は上述同様に磁束方向に応じた弱いものとなり、クリック感としては感じられない。
【0054】
上記動作がローラ4の回転に応じて繰り返し行われる。図7に、その出力信号状態およびその際のローラ4の回転を妨げる力の推移を示す。
【0055】
同図に示すように、リードスイッチ41から得られる出力信号は、オンオフが繰り返されるもので、その出力信号を図示しないマイクロコンピュータなどで演算処理することにより、ローラ4の回転量つまりボール10の回転量が検出できる。
【0056】
一方、磁石5と各リード片42A,42Bとの間で働く引き付け力によるローラ4の回転を妨げる力すなわちローラ4への回転規制力は、同図に示すように所謂正弦波のような曲線的な推移をするが、それがスイッチオフ時に強く働くようにリードスイッチ41を磁石5に対して配置してあるため、スイッチオフ時にそれがボール10を介して良好なクリック感触として感じられるものにできる。
【0057】
以上のように、当該トラックボール装置は、ローラ4に固定された磁石5とリードスイッチ41でローラ4の回転検出が非接触で行え、しかもクリック感触生成用の他の部品などを用いず、上記磁石5とリードスイッチ41のみでローラ4への回転規制をなし、それが回転操作時の良好なクリック感としてボール10を介して伝わる安価な構成のものとして実現することができる。なお、クリック感触生成用の他の部品などを用いずに構成できるため、近年の機器の小型軽量化などにも寄与することができる。
【0058】
(実施の形態2)
当該実施の形態は、実施の形態1に説明した上記ローラへの回転規制力を働かせるための磁石およびリードスイッチを他の配置状態とした事例を説明するものであり、リードスイッチは同じものを用いているが、判り易くするため符号を変えて表記する。なお、その他上述した構成と同じ部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0059】
図8は、本発明の第2の実施の形態によるトラックボール装置の外観斜視図、図9は同上面図、図10は同側面図である。
【0060】
同図に示すように、当該トラックボール装置は、上記構成と同じ機構構成部を備え、その矩形状に配された四つの磁石5付きローラ4に対応させて、それぞれリードスイッチ51を外周位置に配置して構成したものである。
【0061】
各リードスイッチ51は、略筒状の外装体53の側方部分から直線状で引き出されたリード片52のいずれか一方の導出部が、対応するローラ4つまり磁石5の回転中心軸線と同じ高さ位置で、かつその一方のリード片52における長手側の設置方向と上記ローラ4の回転中心軸線とが直交関係になるようにして、ローラ4の一端に固定された磁石5の周方向における側方位置に近接させて配置されている。なお、二つのリード片52の導出部は、所定位置で下方に曲げられ端子部となっている。
【0062】
以下に、上記配置状態のものの動作について説明するが、当該構成のものもボール10への押し下げ操作に応じてボール10下方に配されたプッシュスイッチ25が作動される動作は同じであるため説明を省略する。また、ボール10の上部を指等で触れてボール10が回転操作され操作方向に応じた磁石5付きローラ4が回転すると、そのローラ4に応じて配置されたリードスイッチ51は、二つのリード片52における外装体53内の中央位置で対向配置された一端側どうしの接離がなされ、その出力信号でローラ4つまりボール10の回転量が図示しないマイクロコンピュータなどで検出できることも同じである。
【0063】
ここで、実施形態1と同様に、そのリードスイッチ51の状態変移等について図11〜図13を用いて説明する。なお、以下では実施の形態1と同様にリードスイッチ51の二つのリード片52に対し、図中で左側に示したものを左側リード片52A、右側に示したものを右側リード片52Bと表記して説明する。
【0064】
まず、図11に示すように、例えば磁石5のN極における中央角度位置がリードスイッチ51の右側リード片52Bの外装体53からの導出部に対向している状態では、上記導出部は磁石5からの磁束でS極になり、外装体53内の一端側がN極となる。また、それの影響を受け左側リード片52Aの外装体53内の一端側はS極となって、上記一端側どうしが互いに引き付け合って接触し、リードスイッチ51はオン状態となる。
【0065】
上記状態では、磁石5と一端側どうしが接触している各リード片52B,52Aとの間に強い引き付け力が発生しており、その作用でローラ4は回転規制をなされ、それがボール10を介して操作する指などにクリック感として感じられる。上記引き付け力を強いものとするには、磁石5からの磁束が各リード片52B,52Aに多く作用するように、リードスイッチ51の右側リード片52Bにおける導出部が磁石5からの磁束方向に合い、しかも近接配置できる上記リードスイッチ51の配置状態とすればよい。
【0066】
その状態からローラ4が時計廻り方向に回転し、図12に示すように、磁石5の上記N極に隣り合うS極が右側リード片52Bの端子部分に近接してくると磁束方向はその端子側に向かう方向に変わり、右側リード片52Bの外装体53からの導出部近傍がS極、端子側がN極になる。このとき、右側リード片52Bは上記磁束方向に応じて磁化された状態になるため、外装体53内の一端側は十分に磁化されていない状態となる。これに応じて左側リード片52Aの外装体53内の一端側も十分に磁化されていない状態となり、上記一端側どうしは互いに引き付け合わず接点間が離れたスイッチオフ状態となる。
【0067】
また、その状態では、磁石5と各リード片52B,52Aとの間の引き付け力も弱く、その引き付け力がローラ4の回転規制力として感じられるまでの大きさはない。
【0068】
そして、さらにローラ4が同方向に回転して上記S極における中央角度位置が右側リード片52Bの外装体53からの導出部に対向した状態となると、再び磁石5からの磁束方向が右側リード片52Bの長手側の設置方向と合い、上記導出部はN極に、また外装体53内の一端側はS極になる。それに応じて左側リード片52Aの一端側がN極になって一端側どうしは互いに引き付けあって接触したスイッチオン状態となる。このときも、磁石5と一端側どうしが接触している各リード片52B,52Aとの間には強い引き付け力が発生しており、その作用でローラ4は回転規制をされ、それがボール10を操作する指などにクリック感として感じられる。
【0069】
続いて、ローラ4が同方向に回転し次のN極が右側リード片52Bの端子部分に近接してくると、上記右側リード片52Bの導出部はN極、端子側はS極になると共に、右側リード片52Bの一端側は十分に磁化されていない状態となる。これに応じて左側リード片52Aの一端側も十分に磁化されていない状態となり、上記一端側どうしは互いに引き付け合わず接点間が離れたスイッチオフ状態となる。この状態では、磁石5と各リード片52B,52Aとの間の引き付け力も弱く、その引き付け力がローラ4側の回転規制力として感じられない。
【0070】
上記動作がローラ4の回転に応じて繰り返し行われ、図13に、その出力信号状態およびその際のローラ4の回転を妨げる力の推移を示す。
【0071】
なお、同図に示すように、当該構成のものも、リードスイッチ51からの出力信号としてはオンオフが繰り返され、ローラ4の回転を妨げる力すなわちローラ4への回転規制力は所謂正弦波のような曲線的な推移をするが、それがスイッチオフ時に強く働くようにリードスイッチ51を磁石5に対して配置してあるため、スイッチオフ時にそれがボール10を介して良好なクリック感触として感じられるものにできる。なお、上記リードスイッチ51から得られる出力信号を図示しないマイクロコンピュータなどで演算処理することにより、ローラ4の回転量つまりボール10の回転量が検出できることは上述したとおりである。
【0072】
このように、当該構成のものも、ローラ4に固定された磁石5とリードスイッチ51でローラ4の回転検出が非接触で行え、しかもクリック感触生成用の他の部品などを用いず、上記磁石5とリードスイッチ51のみでローラ4への回転規制をなし、それが回転操作時の良好なクリック感としてボール10を介して伝わる安価な構成のものにできる。
【0073】
なお、上記に説明したいずれのものも、リードスイッチを磁石に近接配置し、磁石とリード片との間を近接させるほど、磁石からの磁束がリード片に多く作用するようになるため、クリック感触に優れたものとなる。
【0074】
なお、上記に説明した以外の磁石とリードスイッチの配置状態としてボールの回転操作時にクリック感が得られるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によるトラックボール装置は、ボールの回転に追従し磁石付きのローラが回転した際の磁束変化をリードスイッチにより非接触状態で検出でき、しかもそのリードスイッチのリード片と磁石との吸引力による作用により回転操作時にクリック感触が得られるものを安価に実現でき、各種電子機器の入力操作部を構成する際等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるトラックボール装置の外観斜視図
【図2】同上面図
【図3】同側面図
【図4】同機構構成部と配線基板構成部との組み合わせ前の斜視図
【図5】同磁石の回転時におけるリードスイッチの状態変移を説明する図
【図6】同磁石の回転時におけるリードスイッチの状態変移を説明する図
【図7】同リードスイッチからの出力信号状態およびその際のローラの回転を妨げる力の推移を示す図
【図8】本発明の第2の実施の形態によるトラックボール装置の外観斜視図
【図9】同上面図
【図10】同側面図
【図11】同磁石の回転時におけるリードスイッチの状態変移を説明する図
【図12】同磁石の回転時におけるリードスイッチの状態変移を説明する図
【図13】同リードスイッチからの出力信号状態およびその際のローラの回転を妨げる力の推移を示す図
【図14】従来のトラックボール装置の断面図
【図15】同機構構成部と配線基板構成部との組み合わせ前の斜視図
【図16】同機構構成部の分解斜視図
【図17】同トラックボール装置の上面図
【図18】同トラックボール装置の左側面図
【図19】同回転操作状態を示す断面図
【図20】同押し下げ操作状態を示す断面図
【符号の説明】
【0077】
1 上ケース
2 取付台
3 カバー
4 ローラ
5 磁石
6 板ばね
10 ボール
25 プッシュスイッチ
31 配線基板
31A 孔部
41,51 リードスイッチ
42,52 リード片
42A,52A 左側リード片
42B,52B 右側リード片
43,53 外装体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールと、上記ボールへの回転操作時に上記ボールに接して回転する磁石付きローラと、上記ローラの回転に伴う磁束変化によりオンオフ状態が切り換わるローラ回転検出用のリードスイッチとを備え、上記ボールへの回転操作時に、上記磁石と上記リードスイッチとの間に発生する吸引力が上記ローラの回転状態に影響を与えるように上記リードスイッチが配置され、その影響が上記ボールに伝わり回転操作時のクリック感触として感じられるトラックボール装置。
【請求項2】
N極とS極が所定角度ピッチで交互に着磁されたリング状の磁石がローラに固定され、その磁石の回転中心軸線とリードスイッチの外装体内におけるリード片の長手側の設置方向とが直交関係になるようにして上記磁石の下方位置に上記リードスイッチを配置した請求項1記載のトラックボール装置。
【請求項3】
リードスイッチを装着する配線基板に、上記リードスイッチの外装体の下方部分が収容可能な孔部を設けた請求項2記載のトラックボール装置。
【請求項4】
N極とS極が所定角度ピッチで交互に着磁されたリング状の磁石がローラに固定され、その磁石の回転中心軸線とリードスイッチのリード片の長手側の設置方向とが直交関係になるようにして上記磁石の周方向における側方位置に、上記磁石の回転中心軸線と上記リード片の高さ位置を合わせて上記リードスイッチを配置した請求項1記載のトラックボール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−260179(P2006−260179A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−76811(P2005−76811)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】