説明

トラップイオン用の装置および方法

本発明は多極イオントラップを提供する。トラップは長手方向軸線を有する。振動軸上電位が長手方向軸線に沿って設定されて、イオンがトラップされる電位ウェルが提供される。いくつかの実施形態では、極を形成するロッドが、長手方向軸線を中心として対称的および等距離に配置され、また異なる大きさを有するRF信号が極に印加される。他の実施形態では、ロッドが長手方向軸線を中心として対称的に配置されず、また極に印加されたRF信号が、同一のまたは異なる大きさを有することが可能である。本発明に使用される極は2つ以上のロッドを含み得る。本発明によるイオントラップは3つ以上の極を含むことが可能であり、いくつかの実施形態においては、第3の極または追加の極を加えて、振動軸上電位を供給することが可能である。イオントラップを質量選択的に使用して、イオン、すなわちフラグメントイオンをスキャンし、また他の使用において、別々に帯電されたイオンをトラップして分離することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオントラップに関し、より具体的には、質量分析計に使用するのに適切な細長い多極ロッドの線形イオントラップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の線形イオントラップは、典型的に、2つ以上の極を含み、これらの極の各々は2つ以上のロッドを含む。イオントラップのロッドはロッドセットまたはロッドアレイを集合的に形成する。従来の線形イオントラップでは、ロッドはイオントラップの長手方向軸線に対して平行である。長手方向軸線はZ寸法に沿って位置する。Z寸法に対して垂直の平面は、直交したX寸法およびY寸法によって規定されたX−Y面に位置する。4つのロッドを有する線形イオントラップでは、対向する2つのロッドは、典型的に、X極ロッドとして画成され、またX寸法の長手方向軸線から等距離に離間している。X極ロッドはX極を形成する。対向する他の2つのロッドは、典型的に、Y極ロッドとして規定され、またY寸法の長手方向軸線から等距離に離間している。Y極ロッドはY極を形成する。
【0003】
イオントラップとして機能させるために、平行のロッドセットは、軸方向トラップ電位を供給する端部キャップまたは端部レンズによって補強される。
【0004】
RF電位はX極およびY極に印加される。典型的に、RF電位の大きさおよび周波数は等しいが、位相が180°ずれている。端部キャップはフリンジ電界を供給する。半径方向トラップ電位の特性に依存する複数のイオンは、ロッドセット内にトラップされ、一方、他のイオンは半径方向に排出される。
【0005】
質量分析の目的で、イオンは、1つ以上のロッドを通して半径方向に、または質量選択的な軸方向排出(MSAE)の工程を通して軸方向に排出される。MSAE技術において、イオンは、最初に、上記で規定された電界半径rの大部分に半径方向に励起され、次に、イオントラップの出口のフリンジ電界と相互作用することによって軸方向に検出される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、イオントラップ質量分析計または他のタイプの分光器に使用するのに適切な線形イオントラップを提供する。
【0007】
本発明による線形イオントラップは少なくとも2つの極を含む。各極は2つ以上のロッドを含み、また極のすべてのロッド群は極アレイと呼ぶことができる。また、線形イオントラップは、その長手方向端部に配置された入射レンズおよび出射レンズを有する。振動軸上電位が線形イオントラップに印加される。振動軸上電位は、時間の経過と共に、ゼロでない第2の誘導体を有する。さらに、フリンジ電界をトラップの端部に供給するために、DC電位が入射レンズおよび出射レンズに印加される。ロッドアレイのロッドの長さは、ほぼ3rよりも短いことが好ましく、ここで、rはロッドアレイのロッドとイオントラップの長手方向軸線との間の距離である。
【0008】
ゼロでない第2の誘導体が、時間の経過と共にトラップの長手方向軸線に沿って軸上電位に存在することにより、イオンの運動がトラップの長手方向軸線に沿って発生される。イオンは、長手方向軸線に沿って質量に依存する運動の周波数を表す。双極励起信号のような励起信号を出射レンズに印加することにより、イオンをトラップから長手方向にスキャンする手段が提供される。イオンの運動の周波数は、イオントラップに発生された振動軸上電位の大きさと、入射レンズおよび出射レンズに印加されたDC電位とに依存する。励起信号定数の周波数を保持し、また振動軸上電位の大きさをスキャンしてイオンを励起信号の周波数に共鳴させることによって、イオンをトラップからスキャンできる。振動軸上電位定数の大きさを保持し、一方、励起信号の周波数をスキャンすることによって、イオンをトラップからスキャンすることも可能である。いずれかの技術によって、質量スペクトルが生成される。
【0009】
本発明による線形イオントラップにより、出射レンズを通したイオンの効率的な抽出が可能になる。励起方向におけるイオンの抽出により、高いスキャン速度でスキャンしつつ抽出効率を向上させることが可能になる。
【0010】
本発明の一実施形態では、線形イオントラップは、その長手方向軸線に対して平行でありかつそこから等距離にある4つのロッドを含む。入射レンズおよび出射レンズはイオントラップの長手方向端部に隣接して配置される。
【0011】
4つのロッドはX極およびY極内に対をなして配置される。一方の一対のロッドはX極ロッドであり、X極を形成する。他方の一対のロッドはY極ロッドであり、Y極を形成する。X極ロッドは、互いに長手方向軸線の反対側に配置され、同様に、Y極ロッドも、互いに長手方向軸線の反対側に配置される。ロッドアレイの隣接するロッドは互いに等距離にある。
【0012】
半径方向トラップ電位を供給するために、RF電位がX極およびY極に印加される。X極に印加されたRF電位は、Y極に印加されたRF電位とは、位相が180°ずれている。固定DC電位を入射レンズおよび出射レンズの位置に供給することによってイオントラップの長手方向軸線に沿ってイオンをトラップするための手段を提供する入射レンズおよび出射レンズに、DC電位が印加される。入射レンズおよび出射レンズは、トラップの端部の規定を補助するために、開口部を覆う格子を有する大きな開口部であることができる。
【0013】
線形イオントラップの長手方向軸線はZ寸法を規定する。X寸法はX極ロッドの間に規定され、またY寸法はY極ロッドの間に規定される。
【0014】
RF電位の不均一な振幅をX極およびY極に印加することによって、振動軸上電位が発生される。このことにより、RF主駆動周波数に対応する周波数で振動するゼロでない振動軸上電位が発生される。入射レンズおよび出射レンズによって供給されたフリンジ電界により、入射レンズおよび出射レンズが近似されるにつれて、振動軸上電位の大きさが減少する。ロッドと線形イオントラップの長手方向中心軸線との間の距離はrである。ロッドアレイのロッドの長さは、ほぼ3rよりも短いことが好ましく、ここで、rは各ロッドの内縁とイオントラップの長手方向軸線との間の距離である。このことにより、VボルトのRF振幅において、時間の経過と共にトラップの長手方向の長さに沿って、ゼロでない第2の誘導体を有する振動軸上電位が供給される。極に印加されるRF電位の周波数または大きさを変化させることによって、振動軸上電位の周波数または大きさを制御できる。
【0015】
本発明の他の実施形態では、X極およびY極の均一である(しかし位相がずれている)RF電位を保持し、またZ寸法に対してロッドの1つ以上を傾斜させるかまたはずらすことによって、振動軸上電位が発生される。入射レンズおよび出射レンズは、依然としてロッドアレイの一方の端部に配置され、またロッドの全長も、好ましくは、ほぼ3rよりも短く保持される。
【0016】
他の実施形態では、ロッドアレイのロッドの1つ以上を傾斜させ、一方、RF電位の不均一な振幅をX極およびY極に印加することも可能である。
【0017】
他の実施形態では、ロッドアレイは、相殺されたRF信号が印加される2つ以上の極を含み得る。追加の極(1つ以上の追加のロッドからなり得る)を設け、またRF信号を追加の極に印加することによって、振動軸上電位が発生される。追加のRF信号により、相殺されない電位が、Z寸法に対して垂直のX−Y面に発生され、これによって、振動軸上電位を発生させる。他の実施形態では、2つ以上の追加の極を設けることが可能であり、また不均一なRF電位を前記2つ以上の追加の極に印加することが可能である。
【0018】
本発明によるイオントラップを使用して、分解(fragmentation)の目的でイオンを励起することも可能である。1×10−5Torr〜数mTorr程度の低い範囲にある圧力において、本発明によるイオントラップを動作させることができる。励起信号を入射レンズ、出射レンズまたはそれらの両方のレンズに供給することによって、イオンを励起できる。励起信号は、イオンが軸方向の運動エネルギーを得ることになる双極信号または他の任意の種類の励起信号であることができる。イオンを背景ガスに衝突させることにより、イオンの分解が生じる。代わりに、励起信号をロッドの1つ以上に印加して、トラップされたイオンの半径方向励起を行うことによって、イオンを励起してもよい。励起信号は、イオンが半径方向の運動エネルギーを得ることになる双極励起信号、四重極励起信号または他の任意の種類の励起信号であることができる。イオンの半径方向の運動エネルギーを増加させることにより、背景ガスとのエネルギー衝突を発生させることができ、この結果、イオンの分解が生じる。半径方向励起または軸方向励起の結果として得られた分解パターンを用いて、励起されたイオンの同定を補助することができる。
【0019】
本発明のこれらのおよび他の特徴が、本発明の複数の模範的な実施形態の以下の発明の詳細な説明にさらに記述されている。
【0020】
次に、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。これらの図面では、同様の要素が同様の参照番号で示されている。これらの図面において、図示されている要素は一定の縮尺で描かれていないが、説明しようとしている実施形態を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に説明する模範的な線形イオントラップは、2つの極で構成される4つのロッドを含む。しかし、本発明は、3つ以上の極を、または3つ以上のロッドを含む極を線形イオントラップに等しく適用できる。
【0022】
以下に説明する線形イオントラップは、Z寸法において、トラップの長手方向軸線に対して平行または非平行であり得る4つのロッドを含む。対向する第1の一対のロッドはX極と呼び、また対向する第2の一対のロッドはY極と呼ぶ。四重極の理論技術で周知のように、半径方向トラップ電位を発生させるべく、RF電位がX極およびY極に印加される。ロッドの長手方向端部に隣接して配置された入射レンズおよび出射レンズは、固定電位を入射レンズおよび出射レンズの位置に供給することによりイオントラップの長手方向軸線に沿ってイオンをトラップするための手段を設ける。入射レンズおよび出射レンズは、トラップの端部を規定するために、開口部を覆う格子を有する大きな開口部であることができる。
【0023】
本発明による第1の線形イオントラップ100を示している図1について説明する。トラップ100は、名目上の(すなわち仮想の)箱128の4つの平行縁部120、122、124、および126に対して配置された4つの搬送ロッド、すなわち、搬送ロッド112、114、116および118を含むロッドセット110を含む。
【0024】
第1の一対のロッド112と114は、反対側の縁部120と122に位置し、X極を形成する。第2の一対のロッド116と118は、反対側の縁部124と126に位置し、Y極を形成する。ロッド112、114、116および118は円筒状であり得るかまたは双曲線断面を有し得る。
【0025】
イオントラップ100は長手方向軸線144を有する。ロッド112、114、116および118は、距離rだけ長手方向軸線からほぼ均等に離間している。ロッド112、114、116および118は、ほぼ3rの長さである。長手方向軸線144は、Z寸法に対して平行に位置する。X極ロッド112と114はX寸法を規定し、またY極ロッド116と118はY寸法を規定する。Z寸法、X寸法およびY寸法は図1に示されており、また互いに直交している。
【0026】
また、イオントラップ100は、電源130と、ロッドセット110の一方の端部134の近傍にある第1の端部装置132と、ロッドセット110の反対側端部138の近傍にある第2の端部装置136と、追加の電源140とを含む。例えば、端部装置132と136はエンドプレートまたは端部レンズであることができる。第1の端部装置132は入射装置または出射装置であることができる。第1の端部装置132が入射装置であった場合、第2の端部装置136は出射装置であり、また第1の端部装置132が出射装置であった場合、第2の端部装置136は入射装置である。端部装置132は切り取られて図示されており、また端部装置132の周辺の部分は、トラップ100の他の構成要素をより分かりやすく図示することを可能にするために点線の輪郭で示されている。
【0027】
本実施形態では、第1の端部装置132は、入射レンズであり、またイオンがロッドセット110に入ることを可能にするために、8mmのメッシュで覆われた開口部を有する。第2の端部装置136は、出射レンズであり、またイオンがロッドセット110を出ることを可能にするために、同様に、8mmのメッシュで覆われた開口部を有する。励起電界を端部装置132または端部装置136の一方に、あるいは端部装置132と136の両方に印加することによって、トラップから端部装置を通して質量選択的にイオンを排出できる。
【0028】
電源130は、第1の電圧を第1の一対のロッド112と114にまた第2の電圧を第2の一対のロッド116と118に印加する。1組の4つのロッド12、14、16および18に電圧を印加することにより、イオンをトラップできるロッドセット11の内部にトラップ電位が発生される。
【0029】
第1の一対のロッド112と114に印加される第1の電圧は第1のRF電圧であり、また第2の一対のロッド116と118に印加される第2の電圧は第2のRF電圧である。第1の電圧と第2の電圧は、位相が180°ずれている。また、第1のRF電圧および第2のRF電圧は共通のDCオフセット電圧を含み得る。
【0030】
従来の線形イオントラップでは、極に印加された電圧を、式φ=U+Vcos(Ωt)で示すことが可能であり、ここで、Uは、極から接地までのDC電圧であり、またVは、極から接地までのゼロからピークのRF電圧である。典型的に、Y極に印加されたRF電位の位相は、X極に印加されたRF電位の位相とは180度ずれており、すなわち、X極への電位は、U+Vcos(Ωt)で示され、またY極への電位はU+Vcos(Ωt+δ)で示され、ここで、UとUのDC電位はゼロであってもゼロでなくてもよい。VとVは、極から接地まで測定されたようなRF電位である。線形イオントラップの主駆動周波数はΩで表されており、また180度の位相差は変数δで表されている。時間は変数tで表されている。入射レンズ132および出射レンズ136は、線形イオントラップの長手方向軸線の固定電位を入射レンズおよび出射レンズの位置に供給することによってイオントラップの長手方向軸線に沿ってイオンをトラップするための手段を設ける。
【0031】
追加の電源140は、第1の端部電圧を第1の端部装置132にまた第2の端部電圧を第2の端部装置136に印加する。
【0032】
本実施形態では、VがVに等しくないRF電位の不均一な振幅をX極およびY極に印加することによって、振動軸上電位が発生される。このことにより、ほぼ3rよりも長い長さのロッドについて、イオントラップの長手方向中央で(V−V)/2の絶対値に等しい振幅と、駆動周波数Ωに対応する周波数とを有するゼロでない軸上電位が発生される。入射レンズおよび出射レンズによって供給されたフリンジ電界により、入射レンズ132および出射レンズ136が近似されるにつれて、軸上電位の大きさが減少する。好ましくは、ロッドの全長をほぼ3rよりも短く制限すべきである。このことにより、軸上電位のゼロでない第2の誘導体が、本質的または実質的にトラップの長手方向軸線全体に沿って提供され、またイオンが、イオントラップの長手方向軸線に沿って振動させられる。ロッド長さおよびアンバランス量により、電位の一方の位相のゼロでない第2の誘導体を有する電位ウェルが得られる。
【0033】
トラップ長さの領域に沿ってゼロの二次誘導体が得られるトラップ長さは、イオンの軸方向運動が熱エネルギーのみによって決定される領域、すなわち、イオンが長手方向軸線に対して平行にまたはそれに沿ってそれほど振動しない領域を提供する。軸上電位の大きさは、X極およびY極に印加されたRF電位の差の大きさに比例する。差の大きさが大きくなると、イオンの軸方向運動の周波数がそれだけ高くなる。
【0034】
図2は、図1の軸上電位と同様であるが、ロッド長さが2rに等しく、ここでrが4.5mmに設定された装置において、816kHzの駆動周波数でV=2000V、V=0Vであった(VがX極に印加され、VがY極に印加された)場合の軸上電位を示している。Vが最大値および最小値であった場合に180度離間したVの2つの異なる位相に関する軸上電位が示されている。一方の位相は実線で示されており、また他方の位相は破線で示されている。常に、端部装置は0Vの一定の電位に保持される。
【0035】
次に、本発明による第2の線形イオントラップ200を示している図3について説明する。図3では、分かりやすくするために、電源230と240、およびそれらの電源とロッドセット210との接続が図示されていない。線形イオントラップ200は、ロッド212と214からなるX極を含む。ロッド212と214は、長手方向軸線244に対して平行であり、またロッド212と214の長さに沿って長手方向軸線から均等に離間している。ロッド212と214は名目上の箱228の縁部220と222に位置する。線形イオントラップ200はまた、ロッド216と218からなるY極を含む。ロッド216と218は、長手方向軸線244に対して傾斜または摂動される。ロッド216と218の軸線は名目上の箱228の縁部224と226と同一平面にある。線形イオントラップ200の入射端234において、ロッド216の軸線は縁部224に一致する。出射端238において、ロッド216の軸線は長手方向軸線244から縁部224よりも遠くに離間している。同様に、ロッド218は、線形イオントラップの入射端におけるよりも、線形イオントラップの出射端における方が長手方向軸線244から深く傾斜される。模範的なこの実施形態では、ロッド216と218は約5°の角度で傾斜される。好ましくは、ロッドの傾斜角は0.1〜0.8のロッドのq値を保持する。
【0036】
電源230(図示せず)は、第1のRF電圧をX極にまた第2のRF電圧をY極に印加する。従来の線形イオントラップに印加される電圧に関して上述したように、第1の電圧および第2の電圧は、大きさおよび周波数が同一であるが、位相が180°ずれている。
【0037】
電源240(図示せず)は、第1の端部電圧を第1の端部装置232にまた第2の端部電圧を第2の端部装置236に印加し、上記のようなフリンジ電界を発生させる。
【0038】
長手方向軸線244に対して平行位置からY極ロッドを傾斜または摂動させることにより、長手方向軸線244に沿った振動軸上電位が発生される。イオンは、ロッドの傾斜によって生じるより高次の電界の歪みが存在することによって形成された可変振動軸上電位でトラップされる。多極の展開に関連して、より高次の電界コントリビューションについて説明する。
【数1】

【0039】
ここで、ロッドの数は値2nで表されており、すなわち、四重極n=2、八重極n=4、等である。軸上電位はn=0の項で表されている(Tech.Phys.から1999年に出版されたダグラス(Douglas)らによる、より高次の電界コントリビューションの一般的な説明(general discussion of higher order field contributions)の第44版の1215〜1219ページを参照)。
【数2】

【0040】
表1は、比率がr/r=1.00でありまたr/r=1.20であるロッドセットに存在するより高次の電界コントリビューションの振幅を示しており、ここで、rとrは、イオントラップの長手方向z軸から、水平X軸および垂直Y軸にそれぞれ位置するロッドまでの距離である。実施例におけるロッドの半径は1.125rである。表1では、VとVは等しい。
【表1】

【0041】
/rの値は、ロッドセットの一方の端部のr/r=1からロッドセットの反対側端部のr/r≠1まで、トラップの長さに沿って変化することを認識できる。n=0の成分の振幅は、ロッドセットの長さに沿って変化し、さらに、ロッドセットの端部に存在するフリンジ電界の影響を受ける。
【0042】
表2は、表1のデータを算出するために用いられた設定の変更を示している。特に、「相殺された」RF電位(すなわち、均一な振幅であるが、位相が180度ずれている)を第1の一対のロッド12と14、および第2の一対のロッド16と18に印加する代わりに、二対に印加される振幅は、表2に示されている電界成分の算出において異なっている。X極に印加される電位は、Y極の電位よりも10%高い。
【表2】

【0043】
3つのロッドが正確に平行である構成から、複数のロッドが平行でもなく同一平面にもない構成の範囲に至るまで、いくつかの方法で1つ以上のロッドを傾斜させることによって、振動軸上電位を発生させることができる。これらの構成では、X極およびY極に印加されるRF電位VとVは等しくても等しくなくてもよい。一般に、相殺されない電界と傾斜ロッドとの組み合わせを用いて、軸方向のトラップ電位を発生させることもできる。
【0044】
図4A〜図4Cは、ロッドセットまたはロッドアレイ310を含む傾斜ロッドトラップ300を示している。分かりやすくするために、電源330と340が省略されている。ロッドセット310は、長さ26mmの4つのロッド312、314、316および318を含む。図2Aでは、イオントラップ300の両端334と338にあるエンドプレート332と336は、ロッド312、314、316および318の端部から2mm離間している。
【0045】
ロッド312と314は、X極を形成し、また長手方向軸線344に対して5度に傾斜される。ロッド316と318はY極を形成し、長手方向軸線344に対して平行である。図4Bは、イオントラップ300の端部334のロッド312〜318の断面図を示している。図4Cは、イオントラップ300の端部338のロッド312〜318の断面図を示している。
【0046】
入力された電極形状データから電位を数値的に算出するSimion(商標)モデリングプログラムから電位を抽出することによって、ロッドセット310の長手方向Z軸344に沿った電位を得ることが可能である。
【0047】
図5は、エンドプレート332と336に0Vが印加されかつX極対およびY極対に±1000Vが印加された(すなわち、相殺されたRF電界が二対に印加された)軸上電位を示している。軸上電位は、最大振幅約300Vの調和していない形態をとる。図6に示したように、平行ロッドの電位の大きさを2000Vまで増加させ、また傾斜ロッドの電位の大きさを0Vまで減少させることにより、約4倍のより深い電位ウェルが形成される。依然として、電位は調和していない形態をとる。図7に示したように、傾斜ロッドに2000Vの大きさを印加し、また平行ロッドに0Vの大きさを印加することにより、それほど深くない非調和ウェルが形成される。
【0048】
ロッドの長さを短くして、より調和した形態と小さな幅とを有するウェルを形成することが可能である。また、範囲の狭いウェルにより、z軸に沿ったイオンの運動のより高い周波数が発生される。
【0049】
他の2つのロッドの長さは12.5mmにまた9mmに設計され、これらのロッドの各々はr=4.5mmの最小値を有する。常に、傾斜ロッド対の角度は5度に保持されている。5度の選択は任意であった。最適化するために、他の角度を考慮してもよい。最適な角度は、四重極の軸に沿った所望のウェルの深さと、ロッドセット11内にイオンを保持するのに必要な半径方向トラップ電位とに依存する。
【0050】
図8と図9は、r=4.5mmにおける長さ9mmのロッド、長さ12.5mmのロッドおよび長さ26mmのロッドの軸上電位の比較を示している。2つの例について、データが取得される。図8は、−1000Vの平行ロッドにおけるまた1000Vの傾斜ロッドにおける例を示している。図9は、−2000Vの平行ロッドにおけるまた0Vの傾斜ロッドにおける例を示している。平行ロッドに2000Vが印加されかつ傾斜ロッドに0Vが印加された長さ9mmのロッドにより、最も調和した形態の電位が発生される。
【0051】
異なる設定のシミュレーションにおいて、異なる質量を有する複数のイオンをロッドセット内に閉じ込めるために、長さ9mmのロッド装置の電位が用いられた。エンドプレートの電位は、シミュレーション中に10Vに保持された。イオンの運動の周波数を調査するために、装置の「入射」端の近傍にあるイオントラップ装置内において、関連するイオンの移動が開始された。イオンは、10度の角度の「出射」端の方向において、1eVのエネルギーでX方向およびY方向の両方に0.5mm移動した。イオンは、衝突相手としての質量28(窒素)を用いて1msの期間冷却させられた。m/z=1000、m/z=1100およびm/z=1500では、冷却期間中の平均自由行程が3mmであった。m/z=2600では、冷却期間中の平均自由行程が1mmであった。500Åの衝突断面積を有するイオンでは、3mmの平均自由行程が2mTorrの圧力に対応する。すべての質量について、冷却期間後に、平均自由行程が0.6mTorrの圧力で10mmに変化させられた。イオン軌道は50msの期間延在した。X座標、Y座標およびZ座標について、データがマイクロ秒毎に記録された。このデータに対して高速フーリエ変換(FFT)を行うことによって、イオンの運動の周波数が得られた。イオンの運動の最小帯域幅を20Hzに減少させるために、50msの軌道が用いられた。
【0052】
図10は、4つの質量に関するFFT結果を示している。z軸に沿ったイオンの運動に関するデータを用いて、FFTが行われた。予想されるように、データは、イオンの運動がイオンの質量の関数であることを示している。より重い質量のイオンは、より軽い質量のイオンよりも運動の周波数が低くなる傾向を示す。周波数は10〜10Hzの範囲にある。2次元トラップ電位および3次元トラップ電位のために用いられたイオンの運動と同様のイオンの運動が描かれ得ることが予想される。その都度、同一のトラップ電位を用いて、すべての質量がイオントラップ内に保持された。
【0053】
低いマシューqでは、2次元四重極におけるイオンの運動の永年周波数は、
【数3】

【0054】
によって算出され、ここで、
【数4】

【0055】
である。
【0056】
定数Vrf、Ωおよびr(ロッドセット11の長さ)において、qは1/mに比例する。図11は、図10のイオンの運動の周波数を1/mの関数としてプロットすることにより、直線が形成されていることを示している。
【0057】
z軸に沿った動作に関する別個の周波数が図10と図11に示されていることに加えて、図12と図13には、Y軸に沿った動作に関する別個の周波数が示されている。再度、イオンの運動の周波数は質量に依存するが、図13に示されているように、質量依存性は全然直線ではない。
【0058】
異なる質量のイオンが、z軸に沿った異なる運動の周波数を有することによって、イオンをイオントラップ300からスキャンするための機会が与えられる。端部装置332または336が開口部またはメッシュ状の開口部である場合に、イオンをスキャンアウトするように、双極信号を端部装置332または336の一方に印加できる。トラップからイオンをスキャンするために、端部装置332または336は、駆動電圧RF振幅をスキャンして、出射レンズに印加された信号にイオンを共鳴させることができる。代わりに、駆動電圧RF振幅が一定に保持され、次に、出射装置に印加された信号が頻繁にスキャンされる。
【0059】
スキャンに加えて、イオンをX方向、Y方向またはZ方向に選択的に分解するための機会があるが、この理由は、ある形態のイオンおよびフラグメントイオンの質量におけるイオンの運動の周波数スケールをロッドセット310内に含むことができるからである。広範囲の質量を同時にトラップすることにより、図10のデータが証明され、ここで、同一のトラップ条件を用いて、m/z=1000〜m/z=2600までの質量がトラップされた。
【0060】
次に、本発明による傾斜ロッドイオントラップ400を示している図14について説明する。分かりやすくするために、電源430と440、およびそれらの電源とイオントラップとの接続が図示されていない。イオントラップ装置400は、長手方向Z軸444を囲む4つのロッド412、414、416および418のロッドセット410を含む。4つのロッド412、414、416および418の各々は、長手方向軸線444に対して略平行であるが、正確に平行でない方向を向いている。ロッドが、ある方向およびある大きさを有するベクトルであるとみなされた場合に、そして次に、ベクトルの最大成分がZ成分であった(X寸法およびY寸法のX成分およびY成分と比較して)場合に、ロッドは長手方向Z軸444に対して略平行であるとみなされる。ロッドセット410の2つのロッドは平行でなく、ロッドのいずれも同一平面にない。さらに、第2の端部438にある4つのロッド412、414、416および418の各々の2つの中心は、長手方向軸線420に対して等距離にない(より一般的には、第1の端部434にあるロッドの中心も等距離にない可能性がある)。端部装置432と436はロッドセットの端部に配置される。
【0061】
電源430は、第1の電圧をX極ロッド412と414にまた第2の電圧をロッドセット410のY極ロッド116と118に印加する。ロッドが平行でなくまた等距離にない結果として、電圧が印加されて、イオンをトラップできるセットの内部に振動軸上電位が発生される。また、電源440はDC電圧を端部装置に供給して、ロッドセットの端部334と338にフリンジ電界を発生させる。
【0062】
次に、本発明の他の実施形態によるロッドセット510の断面図を示している図15について説明する。ロッドセット510では、X極は、ロッド512と514によって形成され、またY極は、ロッド516と518によって形成される。X極ロッド514は、図1に示した状態のY寸法だけずらされている。ロッドのすべては、図15の断面をとるX−Y面に対して垂直のロッドセットの長手方向Z軸544に対して平行である。端部装置532と536(図示せず)はロッドセットの端部に配置される。RF信号およびDC信号をロッドおよび端部装置に供給するために、電源530と540(図示せず)が使用される。
【0063】
例えば、ロッド514を2.5mmだけずらすことが可能である。他の実施形態では、それよりも大きい大きさだけまたはそれよりも小さい大きさだけ、ロッド514をずらしてもよい。
【0064】
図16には、Vがその最大値および最小値にあった場合に180度離間しているVの2つの異なる位相に関するロッドセット510の軸上電位が示されている。
【0065】
イオントラップ100〜500は、本発明によるイオントラップの複数の模範的な構成を示している。他の多数の構成も可能である。
【0066】
例えば、図17は、本発明による他の四重極イオントラップの軸上電位を示している。イオントラップのロッドは長さが9mmであり、また端部装置はロッドの各端部から2mm離間して配置される。一対のX極ロッドおよび一方のY極ロッドは、イオントラップの長手方向軸線に対して平行でありかつそれと同一平面にある。他方のY極ロッドは長手方向軸線と同一平面にあるが、長手方向軸線に対して5°傾斜されている。以下に示す電圧は端部装置および極に印加される。
【0067】
(a)0VのDC電圧が端部装置の各々に印加される。
【0068】
(b)2000Vの大きさを有するRF電圧VがX極に印加される。
【0069】
(c)0Vの電圧VがY極に印加される。
【0070】
他の例として、図18は、本発明による他の四重極イオントラップの軸上電位を示している。ロッドは長さが9mmであり、また一対の端部装置はロッドの端部から2mm離間して配置される。一方のX極ロッドは、イオントラップの長手方向軸線に対して平行でありかつそれと同一平面にある。他方のX極ロッドおよびY極ロッドは長手方向軸線と同一平面にあるが、長手方向軸線に対して5°傾斜されている。以下に示す電圧は端部装置および極に印加される。
【0071】
(a)0VのDC電圧が端部装置の各々に印加される。
【0072】
(b)2000Vの大きさを有するRF電圧VがX極に印加される。
【0073】
(c)0Vの電圧VがY極に印加される。
【0074】
次に、図19と図20について説明する。説明してきたように、本発明によるイオントラップのロッドは、時間の経過と共にロッドの全長に沿って本質的にゼロでない第2の誘導体を有する軸上電位を電位ウェルに供給する長さを有することが好ましい。図19Aは、ウェルの有利な狭いトラップ電位を示しており、これに対して、図20Aは、それほど有利でないより広い電位を示している。図19Bと図20Bはそれらのそれぞれの第1の誘導体をプロットし、また図19Cと図20Cはそれらのそれぞれの第2の誘導体をプロットする。図19は、軸上電位のゼロでない第2の誘導体の望ましい状態がロッドの全長に沿って本質的にゼロでない程度に十分に短い長さを有するロッドセットに対応している。図20は、非常に長期間前記状態にあり、かつ比較的大きい範囲にわたってゼロの第2の誘導体を有するロッドセットに対応している。
【0075】
次に、一方の極性のイオンを本発明によるイオントラップ内にトラップできることを示している図21について説明する。電位が0Vに保持された端部装置によって、イオンをイオントラップに注入できる。振動軸上電位によってイオンがトラップされることを可能にするように、イオンを背景ガスに衝突させることによって、イオンの運動エネルギーを十分に低減できる。同一のトラップ条件を用いて、正イオンまたは負イオンの一方をトラップできる。
【0076】
例えば、最初に、イオンが出口から漏出することを防止する程度に十分に高い電位に保持された出射端部装置によって、正イオンをイオントラップに注入できる。冷却後に、正イオンはイオントラップの中央部に留まる。次に、出射端部装置の電位を負電位まで低下させることができる。その次に、出射端部装置の負電位によって、イオントラップに注入される負イオンがイオントラップから出ることが防止される。冷却後に、出射端部装置の電位を0Vに戻すことができる。このことにより、正・負イオンの化学反応、中和試験等のために、イオントラップを用いる機会が与えられる。
【0077】
負電位を出射端部装置に印加することにより、正イオンが長手方向軸線に沿ってイオントラップの出射端に向かって空間的に移動し、これに対して、負イオンがトラップの入射端に向かって空間的に移動する。このことは、図21Aと図21Bに示したイオン軌道によって証明される。図21Aでは、トラップの入射端の近傍にあるイオントラップ内において、一方のイオンがm/z=−1500でありかつ他方のイオンがm/z=+1500である一対のイオンの移動が開始される。トラップは、各々の長さが9mmの4つの平行ロッドからなる。入射レンズおよび出射レンズ(端部装置)はロッドの端部から2mm離間している。RF電位はV=2000Vであり、V=0Vであり、816kHzで振動する。ロッドに印加されたDCオフセット電位は0Vに等しく設定される。帯電極性の差は別として同一の初期状態で、両方のイオンの移動が同時に開始される。イオン軌道の最初の1000マイクロ秒の間、入射レンズおよび出射レンズの電位は0Vに設定される。1000から10000マイクロ秒まで、z=4.5mmに配置された出射レンズの電位は、図21Aでは0Vに設定され、図21Bでは−40Vに設定される。前記マイクロ秒の間、入射レンズは0Vに設定される。電位が0Vに設定されると、正イオンおよび負イオンのイオン軌道は同一の空間座標を取る。出射レンズの電位が−40Vに設定された場合、正イオンは出射レンズに向かって引き寄せられ、一方、負イオンは、出射レンズによって反発される。このことにより、正イオンと負イオンとを空間的に分離することが可能になり、その結果、正・負イオンが反応するかまたは反応しないようにする能力が得られる。次に、運動を調査することを実現できる。
【0078】
本発明の上記の実施形態は模範的なものであり、限定的または排他的なものではないことが意図される。本発明は、説明してきた四重極ロッドセットを含む種々の多極ロッドセットを有する器具に対して一般的な適用性を有する。「ロッドセット」という用語が用いられている場合には、各「ロッド」が、その意図した機能に適切な任意の形状を有することができ、また少なくとも1つの導電性外装を有することを理解されたい。円形または双曲であるロッドが好ましい。本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明による第1のイオントラップの図面である。
【図2】本発明によるイオントラップの軸上電位のグラフである。
【図3】本発明による第2のイオントラップの図面である。
【図4A】本発明による第3のイオントラップの図面である。
【図4B】本発明による第3のイオントラップの図面である。
【図4C】本発明による第3のイオントラップの図面である。
【図5】種々の動作条件下にある図4のイオントラップの軸上電位のグラフである。
【図6】種々の動作条件下にある図4のイオントラップの軸上電位のグラフである。
【図7】種々の動作条件下にある図4のイオントラップの軸上電位のグラフである。
【図8】本発明による複数のイオントラップの軸上電位を比較したグラフである。
【図9】本発明による複数のイオントラップの軸上電位を比較したグラフである。
【図10】本発明による模範的なイオントラップのイオンの運動のグラフである。
【図11】本発明による模範的なイオントラップのイオンの運動のグラフである。
【図12】本発明による模範的なイオントラップのイオンの運動のグラフである。
【図13】本発明による模範的なイオントラップのイオンの運動のグラフである。
【図14】本発明による第4のイオントラップの図面である。
【図15】本発明の他の実施形態のロッド構成の断面図である。
【図16】本発明の他の実施形態の軸上電位のグラフである。
【図17】本発明の他の実施形態の軸上電位のグラフである。
【図18】本発明の他の実施形態の軸上電位のグラフである。
【図19】2つのイオントラップの軸上電位の第1の誘導体および第2の誘導体の図面である。
【図20】2つのイオントラップの軸上電位の第1の誘導体および第2の誘導体の図面である。
【図21A】本発明によるイオントラップで別々に帯電されたイオンの分離を示したグラフである。
【図21B】本発明によるイオントラップで別々に帯電されたイオンの分離を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線形イオントラップであって、
(a)第1の端部と第2の端部とを有しかつ第1の極と第2の極とを含むロッドアレイであって、前記第1の極が少なくとも2つの第1の極ロッドを含み、また前記第2の極が少なくとも2つの第2の極ロッドを含むロッドアレイと、
(b)前記ロッドアレイの前記第1の端部に隣接して配置された第1の端部装置と、
(c)前記ロッドアレイの前記第2の端部に隣接して配置された第2の端部装置と、
(d)第1のRF電圧を前記第1の極にまた第2のRF電圧を前記第2の極に供給するための第1の電源と、
(e)第1のDC電圧を前記第1の端部装置にまた第2のDC電圧を前記第2の端部装置に供給するための第2の電源と、
を備え、
前記ロッドアレイが長手方向軸線を有し、前記第1の極ロッドおよび前記第2の極ロッドが前記長手方向軸線に対して略平行に配置され、前記第1の極ロッドおよび前記第2の極ロッドの配置と、前記第1のRF電圧および前記第2のRF電圧とが協調して、振動軸上電位を前記長手方向軸線に沿って供給することを特徴とする線形イオントラップ。
【請求項2】
前記振動軸上電位が、本質的に前記ロッドアレイの全長に沿って、ゼロでない第2の誘導体を有することを特徴とする請求項1に記載の線形イオントラップ。
【請求項3】
前記第1の極ロッドおよび前記第2の極ロッドが前記長手方向軸線に対して平行であり、また前記第1のRF信号および第2のRF信号が、異なる大きさを有することを特徴とする請求項1または2に記載の線形イオントラップ。
【請求項4】
前記第1の極ロッドが第1の平面に位置し、前記第2の極ロッドが第2の平面に位置し、前記第1の平面および前記第2の平面が互いに直交していることを特徴とする請求項1または2に記載の線形イオントラップ。
【請求項5】
前記第1の極ロッドが前記長手方向軸線から第1の距離rだけ均等に離間しており、前記第2の極ロッドが前記長手方向軸線から第2の距離rだけ均等に離間していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の線形イオントラップ。
【請求項6】
前記第1の距離と前記第2の距離とが等しいことを特徴とする請求項5に記載の線形イオントラップ。
【請求項7】
前記第1の極ロッドおよび前記第2の極ロッドが、ほぼ3r未満の長さを有することを特徴とする請求項5または6に記載の線形イオントラップ。
【請求項8】
前記第1の極ロッドおよび前記第2の極ロッドのうちの少なくとも一方が、前記長手方向軸線に対して平行でない線に沿って配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の線形イオントラップ。
【請求項9】
前記第1の極ロッドが、前記長手方向軸線に対して対称的に摂動されることを特徴とする請求項8に記載の線形イオントラップ。
【請求項10】
前記第1の極ロッドが、前記長手方向軸線に対して非対称的に摂動されることを特徴とする請求項8に記載の線形イオントラップ。
【請求項11】
前記第1の極ロッドおよび前記第2の極ロッドの各々が、前記長手方向軸線に対して別個に摂動されることを特徴とする請求項8に記載の線形イオントラップ。
【請求項12】
前記第1の極ロッドおよび前記第2の極ロッドが、前記長手方向軸線から平均距離rだけ離間していることを特徴とする請求項8に記載の線形イオントラップ。
【請求項13】
前記第1の極ロッドおよび前記第2の極ロッドが、ほぼ3r未満の長さを有することを特徴とする請求項12に記載の線形イオントラップ。
【請求項14】
イオントラップを動作させる方法であって、
(a)第1の極を形成する少なくとも2つの第1の極ロッドと、第2の極を形成する少なくとも2つの第2の極ロッドとを含むロッドアレイを設けるステップと、
(b)前記ロッドアレイの第1の端部に隣接するように第1の端部装置を設けるステップと、
(c)前記ロッドアレイの第2の端部に隣接するように第2の端部装置を設けるステップと、
(d)第1のDC電圧を前記第1の端部装置に印加して、前記ロッドアレイの前記第1の端部に隣接するように第1のフリンジ電界を供給するステップと、
(e)第2のDC電圧を前記第2の端部装置に印加して、前記ロッドアレイの前記第2の端部に隣接するように第2のフリンジ電界を供給するステップと、
(f)第1のRF信号を前記第1の極に、第2のRF信号を前記第2の極に印加して、前記イオントラップの前記長手方向軸線に沿って振動軸上電位を供給するステップであって、前記第1のRF信号と第2のRF信号とは位相が180°ずれているステップと、
を有してなることを特徴とする方法。
【請求項15】
前記振動軸上電位が、本質的に前記ロッドアレイの全長に沿って、ゼロでない第2の誘導体を有することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の極ロッドを前記長手方向軸線に対して平行に配置するステップと、前記第2の極ロッドを前記長手方向軸線に対して平行に配置するステップとを含み、前記第1のRF信号および前記第2のRF信号が、異なる大きさを有することを特徴とする請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の極ロッドが第1の平面に位置し、前記第2の極ロッドが第2の平面に位置し、前記第1の平面および前記第2の平面が互いに直交していることを特徴とする請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の極ロッドを前記長手方向軸線から第1の距離rだけ均等に離間させるステップと、前記第2の極ロッドを前記長手方向軸線から第2の距離rだけ均等に離間させるステップとを含むことを特徴とする請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の距離と前記第2の距離とが等しいことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の極ロッドおよび前記第2の極ロッドが、ほぼ3r未満の長さを有することを特徴とする請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の極ロッドおよび前記第2の極ロッドを前記長手方向軸線に対して略平行に配置するステップを含むことを特徴とする請求項14または15に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の極ロッドおよび前記第2の極ロッドのうちの少なくとも一方が、前記長手方向軸線に対して平行でない線に沿って配置されることを特徴とする請求項15または21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の極ロッドおよび前記第2の極ロッドが、前記長手方向軸線から平均距離rだけ離間していることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の極ロッドおよび前記第2の極ロッドが、ほぼ3r未満の長さを有することを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1のRF信号および前記第2のRF信号が、異なる大きさを有することを特徴とする請求項21〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記第1のRF信号および前記第2のRF信号が、同じ大きさを有することを特徴とする請求項21〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記軸上電位の大きさをスキャンすることによって、イオンを前記イオントラップからスキャンするステップを含むことを特徴とする請求項14〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記軸上電位の周波数を保持して、励起信号を前記端部装置に印加することによって、また前記励起信号の周波数をスキャンすることによって、イオンを前記イオントラップからスキャンするステップを含むことを特徴とする請求項14〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
励起信号を前記第1の端部装置および第2の端部装置のうちの少なくとも一方に印加して、イオンを励起し、該励起されたイオンを背景ガスに衝突させることを可能にすることによって、半径方向イオントラップでイオンを分解するステップを含むことを特徴とする請求項14〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
最初に、一方の極性のイオンをトラップし、次に、他方の極性のイオンをトラップすることによって、正帯電されたイオンと、負帯電されたイオンとを前記イオントラップで同時にトラップするステップを含むことを特徴とする請求項14〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記端部装置の前記電位が、前記一方の極性のトラップイオンと前記他方の極性のトラップイオンとの間に帯電されることを特徴とする請求項30に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【公表番号】特表2008−500684(P2008−500684A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513630(P2007−513630)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000788
【国際公開番号】WO2005/117061
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(503030676)エムディーエス インコーポレイテッド ドゥーイング ビジネス アズ エムディーエス サイエックス (5)
【氏名又は名称原語表記】MDS INC., doing business as MDS SCIEX
【出願人】(505123697)アプレラ コーポレイション (21)
【Fターム(参考)】