説明

トランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールおよびトランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールの精製方法

トランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールおよびトランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールの製造方法を本明細書に開示する。一実施形態において、トランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノール組成物は、(±)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールを含む組成物をキラル固定相で分離させて、トランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールおよびトランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールの総量を基準にして少なくとも約99重量%のトランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールを含むトランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノール組成物をもたらすことにより、調製される。本発明は、疼痛などの状態を治療または予防するための方法にも関し、この方法は、カンナビノイドの総重量を基準にして少なくとも約98%の純度を有するトランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールの有効量をその必要がある患者に投与することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールまたはトランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールの精製方法;精製された形態のトランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールまたはトランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールを含む組成物;およびその必要がある患者に精製された形態のトランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールを投与することを含む、疼痛、嘔吐、食欲不振または体重減少などの状態を治療または予防するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(−)−6a,10a−トランス−Δ9−テトラヒドロカンナビノール(「(−)−Δ9−THC」)は、大麻に随伴する制吐作用の主因である(S. E. Sallen et al., N. Engl. J. Med. 302:135 (1980);A. E. Chang et al., Cancer 47:1746 (1981);およびD. S. Poster et al., J. Am. Med. Asso. 245:2047 (1981))。トランス−(−)−Δ9−THCとトランス−(+)−Δ9−THCの両方[それぞれ、(±)−Δ9−THCのトランス−(−)−および(+)−エナンチオマー]が、疼痛を治療するために有用であると報告されており、トランス−(−)−Δ9−THCのほうが、トランス−(+)−Δ9−THCより強力であると報告されている(例えば、G. Jones et al., Biochem. Pharmacol. 23:439 (1974);S. H. Roth, Can. J. Physiol. Pharmacol. 56:968 (1978);B. R. Martin et al., Life Sciences 29:565 (1981);M. Reichman et al., Mol. Pharmacol. 34:823 (1988);およびM. Reichman et al., Mol. Pharmacol. 40:547 (1991) 参照)。トランス−(−)−Δ9−THCは、癌化学療法を受けている患者における悪心嘔吐を軽減するため、および症候性HIV感染症に罹患している患者において体重増加を誘発するための有用な制吐薬であると報告されている(Plasseの米国特許第6,703,418号B2参照)。ゴマ油中の合成トランス−(−)−Δ9−THCのカプセル製剤(「ドロナビノール」)は、2.5、5および10mg 投薬強度(dosage strengths)で、Unimed Pharmaceuticals,Inc.から、Marinol(登録商標)として、現在販売されている。
【0003】
トランス−(−)−Δ9−THCは、ハシシュから抽出することができる(Y. Gaoni et al., J. Am. Chem. Soc. 93:217 (1971);およびElsohlyらの米国特許第6,365,416号B1参照)。しかしハシシュ中のトランス−(−)−Δ9−THCの濃度は、その供給源に依存してわずか約1〜5%の範囲にとどまり、抽出後でさえ、トランス−(−)−Δ9−THCは、カンナビノイド異性体などの他の不純物と分離しなければならない。
【0004】
R. F. Turk et al., J. Pharm. Pharmac. 23:190-195 (1971) には、マリファナからのトランス−(−)−Δ9−THCの単離方法が記載されているが、その生成物は、未定量のTHCカルボン酸前駆体を含有した。
【0005】
以下のパラグラフは、トランス−(−)−Δ9−THCまたは(±)−Δ9−THCを製造する主旨を有する既知の方法に関する。
【0006】
Petrizilkaの米国特許第3,560,528号には、(−)−Δ8−THCを生じさせるための、還流ベンゼン中、p−トルエンスルホン酸・一水和物(「PTSA・H2O」)またはトリフルオロ酢酸の存在下での(+)−p−メンタ−2,8−ジエン−1−オールとオリベトール(olivetol)の反応が記載されており、この(−)−Δ8−THCは、HClの添加、その後の脱塩化水素により、トランス−(−)−Δ9−THCに転化させることができる(Y. Mechoulam et al., J. Am. Chem. Soc. 89:4553 (1967);およびR. Mechoulam et al., J. Am. Chem. Soc. 94:6159 (1972) 参照)。
【0007】
Razdanらの米国特許第4,025,516号には、トランス−(−)−Δ9−THCを形成するための、不活性有機溶媒中、過剰の非アルカリ性脱水剤および酸触媒の存在下でのシス/トランス−(+)−p−メンタ−2,8−ジエン−1−オールの混合物とオリベトールの反応が記載されており、この特許には、トランス−(−)−Δ9−THCを形成するための、不活性溶媒中、無水条件下での(−)−カンナビジオール(「(−)−CBD」)または(−)−アブノーマル−CBD(「(−)−abn−CBD」)とルイス酸、例えば三フッ化ホウ素ジエチルエーテル(「BF3・Et2O」)との反応も記載されている。
【0008】
R. K. Razdan et al., J. Am. Chem. Soc. 96:5860 (1974) には、トランス−(−)−Δ9−THCを形成するための、1%BF3・Et2O、塩化メチレンおよび無水硫酸マグネシウムの存在下でのシス/トランス−(+)−p−メンタ−2,8−ジエン−1−オールの混合物とオリベトールの反応が記載されている。
【0009】
Olsenらの米国特許第4,381,399号には、粗製合成混合物からのトランス−(−)−Δ9−THCの分離方法が記載されており、この方法は、その粗製混合物のエステル化、得られたトランス−(−)−Δ9−THCエステルの単離、そのエステルの加水分解、および減圧下でのトランス−(−)−Δ9−THCの蒸留を含む。
【0010】
K. E. Fahrenholtz et al., J. Am. Chem. Soc. 89:5934-5941 (1967) には、(±)−Δ9−THCを生じさせるための、メタノール水溶液中、NaOHでの(±)−1−m−ニトロベンゼンスルホネート−6a,10a−トランス−Δ9−テトラヒドロカンナビノールの加水分解が記載されており、その(±)−Δ9−THCを、その後、ヘキサンから晶出させている。
【0011】
E. G. Taylor et al., J. Am. Chem. Soc. 88:367 (1966) には、(±)−Δ9−THCを約35%の収率で形成するための、酸性化エタノール中でのシトラールとオリベトールの反応が記載されている。
【0012】
S. L. Levin et al., J. Chromatogr. A 654:53-64 (1993) には、トランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCを、等モル量のトランス−(−)−および(+)−エナンチオマーを含む組成物から分割するための方法が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
記載されているこれらの方法にもかかわらず、トランス−(−)−Δ9−THCを純粋なまたは実質的に純粋な形態で製造するための改善された方法が、いまだ必要とされている。
【0014】
本出願のセクション2におけるいずれの参考文献の引用も、その参考文献が本出願の先行技術であることの承認ではない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、トランス−(−)−Δ9−THCまたはトランス−(+)−Δ9−THCを含む組成物の調製方法に関する。
【0016】
一実施形態において、本発明は、カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも約98重量%のトランス−(−)−Δ9−THCを含む組成物の調製方法に関する。
【0017】
他の実施形態において、本発明は、(±)−Δ9−THCおよび溶出溶媒を含む組成物をキラル固定相で分離させて、トランス−(−)−Δ9−THC組成物をもたらすことを含む、トランス−(−)−Δ9−THCを含む組成物の調製方法に関し、前記(±)−Δ9−THCは、結晶性(±)−Δ9−THCから得る。
【0018】
他の実施形態において、本発明は、(±)−Δ9−THCおよび溶出溶媒を含む組成物をキラル固定相で分離させて、トランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCの総量を基準にして少なくとも約98重量%のトランス−(−)−Δ9−THCを含むトランス−(−)−Δ9−THC組成物をもたらすことを含む、トランス−(−)−Δ9−THC組成物の調製方法に関し、前記(±)−Δ9−THCは、トランス−(−)−Δ9−THC、トランス−(+)−Δ9−THCおよび非極性有機溶媒を含む第一組成物からトランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCを晶出させて、結晶性(±)−Δ9−THCおよび液相を生じさせることにより得た。
【0019】
本発明は、カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも約98重量%のトランス−(+)−Δ9−THCを含む組成物の調製方法にも関する。
【0020】
一実施形態において、本発明は、(±)−Δ9−THCおよび溶出溶媒を含む組成物をキラル固定性で分離させて、トランス−(+)−Δ9−THC組成物をもたらすことを含む、トランス−(+)−Δ9−THCを含む組成物の調製方法にも関し、前記(±)−Δ9−THCは、結晶性(±)−Δ9−THCから得る。
【0021】
他の実施形態において、本発明は、(±)−Δ9−THCおよび溶出溶媒を含む組成物をキラル固定相で分離させて、トランス−(+)−Δ9−THCおよびトランス−(−)−Δ9−THCの総量を基準にして少なくとも約98重量%のトランス−(+)−Δ9−THCを含むトランス−(+)−Δ9−THC組成物をもたらすことを含む、トランス−(+)−Δ9−THC組成物の製造方法に関し、前記(±)−Δ9−THCは、トランス−(−)−Δ9−THC、トランス−(+)−Δ9−THCおよび非極性有機溶媒を含む第一組成物からトランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCを晶出させて、結晶性(±)−Δ9−THCおよび液相を生じさせることにより得た。
【0022】
本発明は、トランス−(−)−Δ9−THCまたはトランス−(+)−Δ9−THCのいずれかを含む組成物にも関する。
【0023】
一実施形態において、本発明は、カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも99.0重量%のトランス−(−)−Δ9−THCを含む組成物に関する。
【0024】
他の実施形態において、本発明は、カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも99.0重量%のトランス−(+)−Δ9−THCを含む組成物に関する。
【0025】
本発明は、トランス−(−)−Δ9−THCを含む医薬組成物にも関する。一実施形態において、本発明は、カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも99.0重量%のトランス−(−)−Δ9−THCを含む医薬組成物に関する。
【0026】
さらに、本発明は、例えば嘔吐、体重減少または食欲不振などの状態を予防または治療するための方法に関し、この方法は、その必要がある患者に、カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも99.0重量%のトランス−(−)−Δ9−THCを含む組成物の有効量を投与することを含む。
【0027】
以下の詳細な説明および例証となる実施例(これらは、本発明の非限定的実施形態を例示するものである)を参照することにより、本発明をさらに十分に理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
4.1.定義
本明細書で用いる場合、総称名「Δ9−THC」は、トランス−(−)−Δ9−THC、トランス−(+)−Δ9−THC、(±)−Δ9−THC、またはこれらの任意の混合物を指す。
トランス−(−)−Δ9−THCは、式(1a):
【化1】

の構造を有する。
トランス−(+)−Δ9−THCは、(1b):
【化2】

の構造を有する。
【0029】
本明細書で用いる場合、総称名「Δ8−THC」は、(−)−Δ8−THC、(+)−Δ8−THC、(±)−Δ8−THC、またはこれらの任意の混合物を指す。
(−)−Δ8−THCは、式(2a):
【化3】

の構造を有する。
(+)−Δ8−THCは、(2b):
【化4】

の構造を有する。
【0030】
本明細書で用いる場合、総称名「CBD」は、(−)−CBD、(+)−CBD、(±)−CBD、またはこれらの任意の混合物を指す。
(−)−CBDは、式(3a):
【化5】

の構造を有する。
(+)−CBDは、式(3b):
【化6】

の構造を有する。
【0031】
本明細書で用いる場合、総称名「CBD−ビス−1,3−(3,5−ジニトロベンゾエート)」は、(−)−CBD−ビス(3,5−ジニトロベンゾエート)、(+)−CBD−ビス(3,5−ジニトロベンゾエート)、(±)−CBD−ビス(3,5−ジニトロベンゾエート)、またはこれらの任意の混合物を指す。
(−)−CBD−ビス(3,5−ジニトロベンゾエート)は、式(4a):
【化7】

(式中、Rは、−C(O)(3,5−C63(NO22である)
の構造を有する。
(+)−CBD−ビス(3,5−ジニトロベンゾエート)は、式(4b):
【化8】

(式中、Rは、−C(O)(3,5−C63(NO22である)
の構造を有する。
【0032】
本明細書で用いる場合、総称名「トランス−Δ9−THCカルボン酸」は、トランス−(−)−Δ9−THCカルボン酸、トランス−(+)−Δ9−THCカルボン酸、トランス−(±)−Δ9−THCカルボン酸、またはこれらの任意の混合物を指し、
トランス−(−)−Δ9−THCカルボン酸は、式(5a):
【化9】

の構造を有し、
トランス−(+)−Δ9−THCカルボン酸は、式(5b):
【化10】

の構造を有する。
【0033】
用語「ハロゲン化物」は、フッ化物、塩化物、臭化物またはヨウ化物を指す。
【0034】
用語「−ハロ」は、−F、−Cl、−Brまたは−Iを意味する。
【0035】
用語「−(C1〜C4)アルキル」は、1から4個の炭素原子を有する飽和直鎖または分枝鎖炭化水素を意味する。代表的な飽和直鎖(C1〜C4)アルキルは、−メチル、−エチル、−n−プロピルおよび−n−ブチルである。代表的な飽和分枝鎖−(C1〜C4)アルキルは、−イソプロピル、−sec−ブチル、−イソブチルおよび−tert−ブチルである。
【0036】
フレーズ「無水有機溶媒」は、本明細書において別様に定義されていない限り、水および有機溶媒の総量の約0.01重量%未満である水分量を有する有機溶媒を意味する。
【0037】
用語「カンナビノイド」は、トランス−Δ9−THCおよびシス−Δ9−THCを含むΔ9−THC;Δ8−THC、(−)−Δ8−イソ−THCおよび(+)−Δ8−イソ−THCをはじめとする、分子式C21302を有するΔ9−THCの構造異性体;C21282の分子式を有する、カンナビノールおよびカンナビノールの構造異性体;Δ9−THC−カルボン酸;CBD、abn−CBD、(+)−abn−CBD、オリベトール、(+)−p−メンタ−2,8−ジエン−1−オールおよび(−)−p−メンタ−2,8−ジエン−1−オールをはじめとする、Δ9−THC前駆体;これらの塩;ならびに酸、エーテル、エステル、アミンなどをはじめとする、これらの誘導体を指す。
【0038】
本明細書において特に別の指定がない限り、フレーズ「カンナビノイド不純物」は、トランス−(−)−Δ9−THCまたはトランス−(+)−Δ9−THC以外のカンナビノイドを意味する。
【0039】
本明細書において特に別の指定がない限り、総称名「Δ9−THC−カルボン酸」は、(−)−Δ9−THC−カルボン酸、(+)−Δ9−THC−カルボン酸、または(±)−THC−カルボン酸を意味する。
【0040】
本明細書で用いる場合、フレーズ「結晶性(±)−Δ9−THC」は、ほぼ等モル量のトランス−(−)−Δ9−THCとトランス−(+)−Δ9−THCを含み、カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも約95重量%である量のトランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCを有する、固体形態のΔ9−THCを意味する。本明細書で用いる場合、用語「患者」は、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモットなど(しかし、これらに限定されない)の動物をはじめとする動物を意味し、さらに好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトである。
4.2.トランス−(−)−Δ9−THCの精製方法
【0041】
上述のように、本発明は、カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも約98重量%のトランス−(−)−Δ9−THCまたはトランス−(+)−Δ9−THCを含む組成物の製造方法に関する。
【0042】
一実施形態において、本発明は、(±)−Δ9−THCおよび溶出溶媒を含む組成物をキラル固定相で分離させて、トランス−(−)−Δ9−THCまたはトランス−(+)−Δ9−THC組成物をもたらすことを含む方法に関し、前記(±)−Δ9−THCは、結晶性(±)−Δ9−THCから得られる。理論による制限を受けないが、本出願人は、トランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCを結晶性(±)−Δ9−THCにさせると、Δ9−THC組成物中に一般に存在するカンナビノイド不純物は、完全にではないにせよ、実質的に除去されると考える。その後、結晶性(±)−Δ9−THCから得た(±)−Δ9−THCを溶出溶媒で、キラル固定相において分割することにより、カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも約98重量%のトランス−(−)−Δ9−THCまたはトランス−(+)−Δ9−THCを含む組成物が得られる。
【0043】
一実施形態において、本発明は、(±)−Δ9−THCおよび溶出溶媒を含む組成物をキラル固定相で分離させて、トランス−(−)−Δ9−THC組成物をもたらすことを含む、トランス−(−)−Δ9−THCを含む組成物の調製方法に関し、前記(±)−Δ9−THCは、結晶性(±)−Δ9−THCから得る。
【0044】
他の実施形態において、本発明は、(±)−Δ9−THCおよび溶出溶媒を含む組成物をキラル固定相で分離させて、トランス−(+)−Δ9−THC組成物をもたらすことを含む、トランス−(+)−Δ9−THCを含む組成物の調製方法に関し、前記(±)−Δ9−THCは、結晶性(±)−Δ9−THCから得る。
【0045】
本発明において有用な結晶性(±)−Δ9−THCは、任意の既知のまたは後に開発される方法によって得ることができる。例えば、結晶性(±)−Δ9−THCを得るための非限定的方法としては、下のセクション4.3で説明するような、結晶性(±)−Δ9−THCを生じさせるためのトランス−(−)−Δ9−THC、トランス−(+)−Δ9−THCおよび非極性有機溶媒を含む第一組成物からの晶出が挙げられる。
【0046】
他の実施形態において、本発明は、(±)−Δ9−THCおよび溶出溶媒を含む組成物をキラル固定相で分離させて、トランス−(−)−Δ9−THCとトランス−(+)−Δ9−THCの総量を基準にして少なくとも約98重量%のトランス−(−)−Δ9−THCを含むトランス−(−)−Δ9−THC組成物をもたらすことを含む、トランス−(−)−Δ9−THC組成物の調製方法に関し、前記(±)−Δ9−THCは、トランス−(−)−Δ9−THC、トランス−(+)−Δ9−THCおよび非極性有機溶媒を含む第一組成物からトランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCを晶出させて、結晶性(±)−Δ9−THCおよび液相を生じさせることによって得た。
【0047】
他の実施形態において、本発明は、(±)−Δ9−THCおよび溶出溶媒を含む組成物をキラル固定相で分離させて、トランス−(+)−Δ9−THCとトランス−(−)−Δ9−THCの総量を基準にして少なくとも約98重量%のトランス−(+)−Δ9−THCを含むトランス−(+)−Δ9−THC組成物をもたらすことを含む、トランス−(+)−Δ9−THC組成物の調製方法に関し、前記(±)−Δ9−THCは、トランス−(−)−Δ9−THC、トランス−(+)−Δ9−THCおよび非極性有機溶媒を含む第一組成物からトランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCを晶出させて、結晶性(±)−Δ9−THCおよび液相を生じさせることによって得た。
【0048】
結晶性(±)−Δ9−THCを得るために有用なトランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCを含む組成物は、セクション4.3において説明する方法によって得ることができる。
4.3.晶出段階
【0049】
上述のように、結晶性(±)−Δ9−THCは、一実施形態において、トランス−(−)−Δ9−THC、トランス−(+)−Δ9−THCおよび非極性有機溶媒を含む組成物からトランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCを晶出させて(「晶出段階」)、結晶性(±)−Δ9−THCおよび液相を生じさせることにより得ることができる。この晶出段階に有用な、トランス−(−)−Δ9−THC、トランス−(+)−Δ9−THCおよび非極性有機溶媒を含む組成物は、任意の既知のまたは後に開発される方法によって得ることができる。
【0050】
例えば、結晶性(±)−Δ9−THCは、適切な量のトランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCを非極性有機溶媒と接触させることにより得ることができる。トランス−(−)−Δ9−THC、トランス−(+)−Δ9−THCおよび非極性有機溶媒の添加順序および速度は重要ではなく、逐次的に行う場合もあり、または実質的に同時に行う場合もある。一例として、トランス−(−)−Δ9−THC(場合により非極性有機溶媒の存在下のもの)およびトランス−(+)−Δ9−THC(場合により非極性有機溶媒の存在下のもの)を、非極性有機溶媒に添加することができる。同様に、非極性有機溶媒の存在下のトランス−(+)−Δ9−THCおよび非極性有機溶媒の存在下のトランス−(−)−Δ9−THCを混合することができる。
【0051】
トランス−(−)−Δ9−THCは、天然産物から得ることができ、または合成法によって得ることができる。一実施形態において、トランス−(−)−Δ9−THCは、天然産物、例えばハシシュまたはマリファナなどから得られる(Y. Gaoni et al., J. Am. Chem. Soc. 93:217 (1971);およびElsohlyらの米国特許第6,365,416号B1参照)。
【0052】
トランス−(−)−Δ9−THCは、酸触媒、例えばp−トルエンスルホン酸、および脱水剤の存在下での(+)−p−メンタ−2,8−ジエン−1−オールのシス/トランス混合物とオリベトールの反応(Petrizilkaの米国特許第3,560,528号およびRazdanらの米国特許第4,025,516号参照);無水条件下、不活性溶媒中での(−)−CBDとBF3・Et2Oなどのルイス酸との反応(Razdanらの米国特許第4,025,516号;および国際公開パンフレット第03/070506号参照);または(−)−Δ8−THCとHClの反応、その後の脱塩化水素(Y. Mechoulam et al., J. Am. Chem. Soc. 89:4553 (1967);およびR. Mechoulam et al., J. Am. Chem. Soc. 94:6159 (1972) 参照)をはじめとする(しかし、これらに限定されない)既知の合成法によっても得ることができる。あるいは、トランス−(−)−Δ9−THCは、セクション5で説明する方法によって得ることができる。
【0053】
天然で発生することは知られていないトランス−(+)−Δ9−THCは、(+)−Δ8−THCとHClの反応、その後の脱塩化水素(R. Mechoulam et al., J. Am. Chem. Soc. 94:6159 (1972) 参照)をはじめとする(しかし、これらに限定されない)既知の合成法によって製造することができる。あるいは、トランス−(+)−Δ9−THCは、セクション5で説明する方法によって得ることができる。一実施形態において、晶出段階において使用されるトランス−(+)−Δ9−THCは、セクション4.4で説明するように、キラル固定相での(±)−Δ9−THCの前の分割から「再循環」される。
【0054】
他の実施形態において、晶出段階において使用されるトランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCは、直接合成法によりエナンチオマーの混合物として得ることができる。合成法を使用するとき、トランス−(−)−Δ9−THCとトランス−(+)−Δ9−THCの比率は、試薬の光学純度および合成プロセスに依存して様々であり得る。一実施形態において、トランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCは、ラセミ試薬を使用する合成経路により、ほぼ等モル量で得られる。直接合成経路によるトランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCを調製するための非限定的な方法としては、ルイス酸の存在下でのシトラールとオリベトールの反応(R. Mechoulam et al., J. Am. Chem. Soc. 94:6159 (1972) 参照)またはメタノール水溶液中、NaOHでの(±)−1−m−ニトロベンゼンスルホネート−6a,10a−トランス−Δ9−THCの加水分解(K. E. Fahrenholtz et al., J. Am. Chem. Soc. 89:5934-5941 (1967) 参照)が挙げられる。あるいは、(±)−Δ9−THCは、セクション5で説明する方法によって得ることができる。
【0055】
さらに他の実施形態において、晶出段階において使用されるトランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCは、トランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCの誘導体から得ることができる。例えば、トランス−(−)−Δ9−THCとトランス−(+)−Δ9−THCの混合物を、フェノール保護基、例えばm−ニトロベンゼンスルホネートと反応させ、結晶化して、2−m−ニトロベンゼンスルホネート−(±)−Δ9−THCを生じさせることができる(Fahrenholtzの米国特許第3,507,885号;およびK. E. Fahrenholtz et al., J. Am. Chem. Soc. 89:5934-5491 (1967) 参照)。その後、その2−m−ニトロベンゼンスルホネート−(±)−Δ9−THCを脱保護し、トランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCを含む、得られた組成物を、トランス−(−)−Δ9−THC、トランス−(+)−Δ9−THCおよび非極性有機溶媒を含む組成物から晶出させて、結晶性(±)−Δ9−THCを生じさせることができる。
【0056】
晶出段階において使用されるトランス−(−)−Δ9−THCとトランス−(+)−Δ9−THCの比率は、様々であり得る。一実施形態において、トランス−(−)−Δ9−THCは、トランス−(+)−Δ9−THCのモル当量あたり、約0.75から約1.25モル当量の量で存在する。他の実施形態において、トランス−(−)−Δ9−THCは、トランス−(+)−Δ9−THCのモル当量あたり、約0.9から約1.1モル当量の量で存在する。他の実施形態において、トランス−(−)−Δ9−THCは、トランス−(+)−Δ9−THCのモル当量あたり、約0.95から約1.05モル当量の量で存在する。および他の実施形態において、トランス−(−)−Δ9−THCは、トランス−(+)−Δ9−THCのモル当量あたり、約1モル当量の量で存在する。
【0057】
晶出段階において有用である非極性有機溶媒の非限定的な例としては、直鎖脂肪族炭化水素、分枝鎖脂肪族炭化水素および環状脂肪族炭化水素またはこれらの混合物を含む脂肪族(C4〜C10)炭化水素、例えばブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンが挙げられる。
【0058】
一実施形態において、晶出段階において使用される非極性有機溶媒は、直鎖または分枝鎖ヘプタンである。他の実施形態において、晶出段階において使用される非極性有機溶媒は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンまたはイソオクタンである。他の実施形態において、晶出段階において使用される非極性有機溶媒は、n−ヘプタンである。
【0059】
晶出段階において使用される非極性有機溶媒の量は様々であり得、これは、カンナビノイド不純物の量および種類ならびに温度に、一部、依存するであろう。一般に、この非極性有機溶媒は、Δ9−THCと非極性有機溶媒の総量を基準にして、約1重量%から約95重量%、好ましくは約20重量%から約75重量%、さらに好ましくは約40重量%から約60重量%のΔ9−THC濃度を有する混合物を生じさせるために十分な量で存在する。
【0060】
晶出段階は、(±)−Δ9−THC結晶を生じさせるために十分な時間および温度で行われる。(±)−Δ9−THCを晶出させるために十分な時間は、約1時間から約200時間であり;他の実施形態において、約5時間から約150時間であり;他の実施形態において、約25時間から約100時間であり;および他の実施形態において、約30時間から約75時間である。
【0061】
一般に、結晶性(±)−Δ9−THCを生じさせるために十分な温度は、約−78℃から約100℃;他の実施形態において、約−50℃から約25℃;他の実施形態において、約−30℃から約0℃;および他の実施形態において、約−25℃から約−15℃である。
【0062】
ある実施形態において、晶出段階は、2つまたはそれ以上の温度で行われる。一実施形態において、トランス−(−)−Δ9−THC、トランス−(+)−Δ9−THCおよび非極性有機溶媒を含む組成物は、第一温度、例えば20℃またはそれ以上で調製される。理論による制限を受けないが、本出願人は、20℃またはそれ以上の温度で組成物を形成することにより、非極性有機溶媒へのトランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCの溶解度が増すと考える。その後、その混合物の温度を第二温度、例えば0℃またはそれ以下に低下させることができる。理論による制限を受けないが、本出願人は、0℃またはそれ以下の温度にその混合物を保つことにより、(±)−Δ9−THCの溶解度が低下し、晶出が促進されると考える。場合により、その混合物の温度をさらに第三温度、例えば、−20から−15℃に低下させてもよい。上述したように、温度のこうした低下は、(±)−Δ9−THC晶出プロセスを増進させると考えられる。
【0063】
一実施形態において、トランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCを非極性有機溶媒に溶解し、得られた溶液を約0℃に冷却し、得られた混合物をさらに約−15℃に冷却し、得られた結晶性(±)−Δ9−THCを液相から分離する。
【0064】
他の実施形態において、晶出段階は、種結晶の存在下で行われる。一般に、種結晶は、使用される場合には、トランス−(−)−Δ9−THC、トランス−(+)−Δ9−THCおよび非極性有機溶媒を含む冷却(例えば0℃またはそれ以下)混合物に添加される。一実施形態において、種結晶は、(±)−Δ9−THCである。
【0065】
晶出段階の進行は、目視でモニターすることができ、または薄層クロマトグラフィー(「TLC」)、高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)、ガスクロマトグラフィー(「GC」)、ガス液体クロマトグラフィー(「GLC」)、赤外分光分析(「IR」)、ラマン分光分析(「ラマン」)および核磁気共鳴分光分析(「NMR」)、例えば1Hまたは1C NMRをはじめとする(しかし、これらに限定されない)従来の分析技術を用いてモニターすることができる。
【0066】
晶出段階は、減圧、大気圧または高圧で行うことができる。一実施形態において、晶出段階は、大気圧で行われる。
【0067】
一実施形態において、晶出段階を行う前に、トランス−(−)−Δ9−THCおよび/またはトランス−(+)−Δ9−THC組成物からある不純物が除去される。晶出段階を行う前に不純物を除去するための非限定的な方法としては、カラムクロマトグラフィー(セクション4.4参照)または下で説明するような塩基性条件下での抽出が挙げられる。
【0068】
一実施形態において、(+)−Δ9−THC、(−)−Δ9−THCまたは(±)−Δ9−THCは、晶出段階を行う前に塩基と接触させる。
【0069】
他の実施形態において、本発明は、トランス−(+)−Δ9−THC、トランス−(−)−Δ9−THCまたは(±)−Δ9−THCの精製方法(「Δ9−THC精製法」)にも関し、この方法は、トランス−(+)−Δ9−THC、トランス−(−)−Δ9−THCまたはトランス−(±)−Δ9−THCを、第一水不混和性有機溶媒、水混和性アルコール、水およびアルカリ金属水酸化物と接触させて(「苛性アルカリ接触段階(Caustic Contacting Step)」)、(i)第一有機相と(ii)トランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCを含むアルコール−苛性アルカリ相(alcoholic-caustic phase)とを含む二相混合物を形成することを含む。
【0070】
理論による制限を受けないが、トランス−(−)−Δ9−THC、トランス−(+)−Δ9−THCおよび非極性有機溶媒を含む組成物からの(±)−Δ9−THCの晶出を妨げるまたは防止することがある不純物は、この苛性アルカリ接触段階によって、Δ9−THC含有アルコール−苛性アルカリ相から第一有機相に抽出されると考える。
【0071】
苛性アルカリ接触段階において使用されるアルカリ金属水酸化物の量は、一般に、Δ9−THCのモル当量あたり約1から約1000モル当量の範囲であり;他の実施形態において、アルカリ金属水酸化物の量は、トランス−Δ9−THCのモル当量あたり約10から約100モル当量の範囲であり;および他の実施形態において、アルカリ金属水酸化物の量は、トランス−Δ9−THCのモル当量あたり、約25から約55モル当量の範囲である。
【0072】
苛性アルカリ接触段階において有用な水混和性アルコールの非限定的な例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。一実施形態において、水混和性アルコールは、メタノールである。
【0073】
苛性アルカリ接触段階において使用される水混和性アルコールの量は、アルカリ金属水酸化物の重量を基準にして約1重量部から約100重量部であり;他の実施形態において、水混和性アルコールの量は、アルカリ金属水酸化物の重量を基準にして約1重量部から約25重量部であり;および他の実施形態において、水混和性アルコールの量は、アルカリ金属水酸化物の重量を基準にして約5重量部から約10重量部である。
【0074】
苛性アルカリ接触段階において有用な第一水不混和性有機溶媒の非限定的な例としては、晶出段階のために上で説明した非極性有機溶媒が挙げられる。一実施形態において、第一水不混和性有機溶媒は、ヘプタンである。
【0075】
苛性アルカリ接触段階において使用される第一水不混和性有機溶媒の量は、一般に、Δ9−THCの重量を基準にして約1重量部から約1000重量部であり;他の実施形態において、水不混和性有機溶媒の量は、Δ9−THCの重量を基準にして約5重量部から約100重量部であり;および他の実施形態において、水不混和性有機溶媒の量は、Δ9−THCの重量を基準にして約5重量部から約20重量部である。
【0076】
苛性アルカリ接触段階は、当分野において既知の方法、例えば、攪拌、振盪、向流カスケードおよび超音波、混合、ポンピング(しかし、これらに限定されない)によって、行うことができる。苛性アルカリ接触段階は、液−液抽出に有用な方法によって行うこともできる(例えば、Lo et al., Extraction, in 7 Kirk - Othmer Encyc. of Chem. Technol. 349-381 (4th ed. 1993) 参照。この全内容が、本明細書に参考として組み込まれる)。
【0077】
苛性アルカリ接触段階は、一般に、約0.25時間から約50時間;他の実施形態において、約0.25時間から約10時間;および他の実施形態において、約0.25時間から約2時間、行われる。
【0078】
苛性アルカリ接触段階は、一般に、約0℃から約100℃;他の実施形態において、約20℃から約50℃;および他の実施形態において、約20℃から約30℃の温度で行われる。
【0079】
苛性アルカリ接触段階は、減圧、大気圧(すなわち、約1気圧)または高圧で行うことができる。一実施形態において、苛性アルカリ接触段階は、大気圧で行われる。
【0080】
苛性アルカリ接触段階の進行は、晶出段階のために上で説明したような従来の技術を用いてモニターすることができる
【0081】
他の実施形態において、本発明のトランス−Δ9−THC精製法は、アルコール−苛性アルカリ相を酸と接触させて、酸処理アルコール相を生じさせることをさらに含む。理論による制限を受けないが、トランス−Δ9−THCは、酸性化アルコール相と不混和性であると考えられる。有用な酸の非限定的な例としては、クエン酸、酢酸などが挙げられる。一実施形態において、前記酸は、クエン酸である。
【0082】
一般に、前記酸は、約5から約9のpHを達成するために十分な量で添加される。他の実施形態において、前記酸は、約6から約8のpHを達成するために十分な量で添加され;他の実施形態において、前記酸は、約7から約8のpHを達成するために十分な量で添加される。
【0083】
他の実施形態において、本発明のΔ9−THC精製法は、酸処理アルコール相を第二の水不混和性有機溶媒と接触させて、(i)トランス−(−)−Δ9−THCを含む第二有機相と(ii)酸処理アルコール相とを形成することをさらに含む。
【0084】
トランス−Δ9−THCを含む第二有機相を形成するための前記酸処理アルコール相との接触に有用な第二水不混和性有機溶媒の非限定的な例としては、晶出段階のために上で説明した非極性有機溶媒が挙げられる。一実施形態において、第二水不混和性有機溶媒は、ヘプタンである。使用される第一水不混和性有機溶媒の量は、一般に、トランス−Δ9−THCの重量を基準にして約1重量部から約1000重量部であり;他の実施形態において、水不混和性有機溶媒の量は、トランス−Δ9−THCの重量を基準にして約1重量部から約50重量部であり;および他の実施形態において、水不混和性有機溶媒の量は、トランス−Δ9−THCの重量を基準にして約1重量部から約10重量部である。酸処理アルコール相を第二水不混和性有機溶媒と接触させるために有用な方法としては、晶出段階のために上で説明したものが挙げられる。
【0085】
他の実施形態において、本発明のΔ9−THC精製法は、前記酸処理アルコール相から第二有機相を分離することをさらに含む。酸処理アルコール相から第二有機相を分離するために有用な方法は、アルコール−苛性アルカリ相から第一有機相を分離するために上で説明したものが挙げられる。酸処理アルコール相から分離した後、一般に、その第二有機相は、例えば共沸蒸留により、および/または第二有機相と乾燥剤(例えば、Na2SO4またはMgSO4)の接触により、乾燥させる。
【0086】
他の実施形態において、本発明のΔ9−THC精製法は、第二有機相を濃縮して、トランス−−Δ9−THCを含む濃縮第二有機相を形成することをさらに含む。第二有機相を濃縮するために有用な非限定的な方法は、蒸留である。第二有機相を蒸留によって濃縮するとき、この蒸留は、高圧、大気圧または減圧で行うことができる。一実施形態において、蒸留は、大気圧で行われる。他の実施形態において、蒸留は、減圧で行われる。
【0087】
他の実施形態において、本発明のΔ9−THC精製法は、前記濃縮第二有機相を非極性有機溶媒と接触させて、トランス−Δ9−THCを含む第一有機組成物を形成することをさらに含む。非極性有機溶媒の量および種類は、上の晶出段階において非極性有機溶媒について説明したものである。
【0088】
他の実施形態において、Δ9−THC精製法において使用されるトランス−Δ9−THCは、トランス−(−)−Δ9−THCを含む。他の実施形態において、Δ9−THC精製法において使用されるトランス−Δ9−THCは、トランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCを含む。他の実施形態において、Δ9−THC精製法において使用されるトランス−Δ9−THCは、トランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCを含み、この場合のトランス−(−)−Δ9−THCは、トランス−(+)−Δ9−THCのモル当量あたり約0.75から約1.25モル当量の量で存在する。
【0089】
他の実施形態において、本発明のΔ9−THC精製法は、
トランス−(−)−Δ9−THCまたはトランス−(+)−Δ9−THCを、(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCを含む第二有機組成物を生じさせるために十分な量で、第一有機組成物に添加すること(この場合、前記トランス−(−)−Δ9−THCは、トランス−(+)−Δ9−THCのモル当量あたり約0.75から約1.25モル当量の量で存在する);および
晶出段階のために上で説明したように、トランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCをその第一有機組成物から晶出させて、結晶性(±)−Δ9−THCを生じさせること
をさらに含む。
【0090】
他の実施形態において、本発明のΔ9−THC精製法は、晶出段階のために上で説明したように、トランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCを第一有機組成物から晶出させて、結晶性(±)−Δ9−THCを生じさせることをさらに含み、(a)前記第一有機組成物は、(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCを含み、ならびに(b)前記トランス−(−)−Δ9−THCは、トランス−(+)−Δ9−THCのモル当量あたり約0.75から約1.25モル当量の量で、第一有機組成物中に存在する。
【0091】
他の実施形態において、本発明は、トランス−(−)−Δ9−THC、トランス−(+)−Δ9−THCおよび非極性有機溶媒を含む第一組成物から、トランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCを晶出させて、結晶性(±)−Δ9−THCを生じさせることを含む、結晶性(±)−Δ9−THCの製造方法に関し、前記トランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCは、
(a)(i)第一水不混和性有機溶媒を含む第一有機相と、(ii)トランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCを含有するアルコール−苛性アルカリ相とを含む、二相組成物を形成すること;
(b)そのアルコール−苛性アルカリ相からトランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCを分離すること;ならびに
(c)(i)段階(b)のトランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCと、(ii)非極性有機溶媒とを含む第一組成物を形成すること
によって得た。
【0092】
前記二相組成物の形成方法、ならびに第一水不混和性有機溶媒、水混和性アルコール、水およびアルカリ金属水酸化物の量および種類としては、苛性アルカリ接触段階のために上で説明したものが挙げられる。同様に、アルコール−苛性アルカリ相からのトランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCの分離方法、ならびに(i)段階(b)のトランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCと、(ii)非極性有機溶媒とを含む第一組成物の形成方法としては、(±)−Δ9−THC精製法のために上で説明したものが挙げられる。
【0093】
一度得られたら、晶出段階において形成された結晶性(±)−Δ9−THCは、当分野において既知の方法により、液相から分離することができる。液相から結晶性(±)−Δ9−THCを分離するための方法としては、例えば、濾過、遠心分離およびデカンテーションが挙げられる。一実施形態において、結晶性(±)−Δ9−THCは、濾過によって液相から分離される。
【0094】
晶出段階において形成された結晶性(±)−Δ9−THCは、場合により、有機洗浄溶媒で洗浄し、上で説明したように液相から分離することができる。結晶性(±)−Δ9−THCを洗浄する場合、その有機洗浄溶媒の温度は、様々であり得る。一般に、洗浄は、行われる場合、約−78℃から約50℃;他の実施形態において、約−30℃から約30℃;および他の実施形態において、約−20℃から約25℃の温度の有機洗浄溶媒で行われる。
【0095】
有用な有機洗浄溶媒の例としては、上で説明したような非極性有機溶媒が挙げられる。一実施形態において、有機洗浄溶媒は、使用される場合、n−ヘプタンである。
【0096】
分離された(±)−Δ9−THCは、場合により乾燥することがある。この乾燥は、スイープガス、例えば乾燥空気、窒素、ヘリウムまたはアルゴンなどを場合により利用して、大気圧で行うことができる。あるいは、(±)−Δ9−THCは、減圧で乾燥させることができる。
【0097】
分離された(±)−Δ9−THCを乾燥させる場合、その乾燥温度は、様々であり得る。一般に、乾燥は、行われる場合、約−25℃から約65℃;他の実施形態において、約0℃から約60℃;および他の実施形態において、約25℃から約50℃の温度で行うことができる。
【0098】
一般に、晶出段階において得られる(±)−Δ9−THCは、カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも約95重量%のトランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCを含む。他の実施形態において、晶出段階において得られる(±)−Δ9−THCは、カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも約98重量%のトランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCを含む。他の実施形態において、晶出段階において得られる(±)−Δ9−THCは、カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも約99重量%のトランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCを含む。
【0099】
その後、その分離された(±)−Δ9−THCは、下のセクション4.4で説明するように、キラル固定相で分割することができる。
4.4.分割段階
【0100】
本発明では、結晶性(±)−Δ9−THCから得られた(±)−Δ9−THCおよび溶出溶媒をキラル固定相と接触させて、トランス−(−)−エナンチオマーとトランス−(+)−エナンチオマーを分割する(「分割段階(Resolving Step)」)。これにより、カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも約98重量%のトランス−(−)−Δ9−THCまたはトランス−(+)−Δ9−THCを含む組成物が得られる。理論による制限を受けないが、本出願人は、結晶性(±)−Δ9−THCから得られた(±)−Δ9−THCを分割することによって、既知の方法によって得られるトランス−(−)−Δ9−THCまたはトランス−(+)−Δ9−THCにおいて見出されるカンナビノイド不純物を、あったとしても低レベルでしか有さない、トランス−(−)−Δ9−THCまたはトランス−(+)−Δ9−THC組成物が得られると考える。
【0101】
この分割段階において使用される(±)−Δ9−THCを含む組成物は、トランス−(+)−Δ9−THCの量より少ない、それと同じ、またはそれより多い量のトランス−(−)−Δ9−THCを含有することができる。例えば、(±)−Δ9−THCを含む組成物は、分割段階前に、結晶性(±)−Δ9−THCをトランス−(−)−Δ9−THC組成物および/またはトランス−(+)−Δ9−THCと混合することによって得ることができる。一般に、(±)−Δ9−THCを含む組成物は、ほぼ等モル量のトランス−(−)−Δ9−THCとトランス−(+)−Δ9−THCを含有する。
【0102】
トランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCを分割する任意の既知のまたは後に開発されるキラル固定相を用いることができる。例えば、トランス−(−)−Δ9−THCエナンチオマーとトランス−(+)−Δ9−THCエナンチオマーとをキラル固定相で分割するための方法は、S. L. Levin et al., J. Chromatogr. A 654:53-64 (1993) に記載されている。一般に、キラル固定相は、例えばポリマーまたは無機酸化物などの支持体に固定されたキラル基または誘導体を含有する。有用なポリマー支持体の非限定的な例は、ビーズ形態のポリスチレンである。有用な無機酸化物支持体の非限定的な例としては、シリカ、ケイ酸マグネシウム、マグネシア、アルミナおよびモレキュラーシーブが挙げられる。一実施形態において、無機酸化物支持体は、シリカである。
【0103】
前記キラル誘導体は、少なくとも1つのキラル中心を含む。有用なキラル誘導体の非限定的な例としては、例えばアミロース、セルロース、キトシン、キシラン、クルドラン、デキストランおよびイヌランなどのサッカリドのトリス(アリールカルバメート)誘導体が挙げられる。一実施形態において、前記サッカリドは、アミロースである。
【0104】
一実施形態において、前記トリス(アリールカルバメート)は、トリス(3,5−ジメチルフェニルカルバメート)、トリス(4−クロロフェニルカルバメート)、トリス(4−メチルカルバメート)、トリス(4−メチルベンゾエート)またはトリス[(S)−フェニルエチルカルバメート]である。他の実施形態において、前記トリス(アリールカルバメート)は、トリス(3,5−ジメチルフェニルカルバメート)である。他の実施形態において、前記キラル固定相は、日本、東京のダイセル化学工業株式会社(Daicel Chemical Industries)からChiralpak(登録商標)AD(商標)として入手できる、シリカに固定されたアミローストリス(3,5−ジメチルフェニルカーボネート)である。
【0105】
有用なキラル固定相の他の非限定的な例としては、セルローストリアセテート;セルローストリベンゾエート;ポリ[(S)−N−アクリロイルフェニルアラニンエチルエステル];3,5−ジニトロベンゾイルフェニルグリシン;架橋ジ−(3,5−ジメチルベンゾイル)−L−ジアリルタルトラミド;架橋ジ−(4−tert−ブチルベンゾイル)−L ジアリルタルトラミド;およびテトラヒドロ−アミノフェナントレン 3,5−ジニトロベンズアミドが挙げられる(E. R. Francotte, J. Chromatogr. A 906:379-397 (2001) 参照)。
【0106】
一般に、(±)−Δ9−THCの濃縮溶液および溶出溶媒は、キラル固定相が入っているカラムの頂部(または前部)に添加する。その後、(±)−Δ9−THCを溶出溶媒(すなわち、移動相)で溶離して、トランス−(−)−Δ9−THCまたはトランス−(+)−Δ9−THCを含有する溶出液をもたらす。
【0107】
分割段階は、バッチクロマトグラフィー、連続クロマトグラフィーまたは擬似移動床クロマトグラフィー(例えば、E. R. Francotte, J. Chromatogr. A 906:379-397 (2001) 参照)を用いて行うことができる。一実施形態において、分割段階は、連続クロマトグラフィーを用いて行われる。
【0108】
分割段階は、約1気圧で、または場合により減圧もしくは高圧で、行うことができる。一実施形態において、分割段階は、約1気圧で行われる。他の実施形態において、分割段階は、高圧で行われる。一実施形態において、分割段階は、フラッシュクロマトグラフィーを用い、中等度の高圧、例えば約1.1から10気圧、約1.1から約5気圧、または約1.1から約1.3気圧で行われる。他の実施形態において、分割段階は、フラッシュクロマトグラフィーを用い、非常に高圧で、例えば約10から約175気圧、約100から175気圧、約125から約175気圧、または約150気圧で行われる。
【0109】
分割段階において有用な溶出溶媒の非限定的な例としては、1つまたはそれ以上の−OH、−OR1、−OC(O)R1、−C(O)OR1、−ハロまたは−CNで置換されている直鎖もしくは分枝鎖(C1〜C4)アルキル;直鎖もしくは分枝鎖(C4〜C10)脂肪族炭化水素;1つもしくはそれ以上の−R1で場合により置換されている(C5〜C7)脂環式炭化水素;1つもしくはそれ以上の−R1で場合により置換されている(C4〜C7)環状エーテル;1つもしくはそれ以上の−R1、−ハロ、−CH2(ハロ)、−CH(ハロ)2、−C(ハロ)3、−O(C1〜C6)アルキルで場合により置換されている芳香族炭化水素;またはこれらの任意の混合物が挙げられ、この場合のR1は、(C1〜C4)アルキルである。
【0110】
1つまたはそれ以上の−OH、−OR1、−OC(O)R1、−C(O)OR1、−ハロまたは−CNで置換されている直鎖または分枝鎖(C1〜C4)アルキルの非限定的な例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、クロロメタン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素塩化物、ジエチルエーテル、ジ−イソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、アセトニトリル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、またはこれらの任意の混合物が挙げられる。
【0111】
直鎖または分枝鎖(C4〜C10)脂肪族炭化水素の非限定的な例としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ノナン、デカン、またはこれらの任意の混合物が挙げられる。
【0112】
1つまたはそれ以上の−R1で場合により置換されている(C5〜C7)脂環式炭化水素の非限定的な例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、またはこれらの任意の混合物が挙げられる。
【0113】
1つまたはそれ以上の−R1で場合により置換されている(C4〜C7)環状エーテルの非限定的な例としては、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、またはこれらの任意の混合物が挙げられる。
【0114】
1つまたはそれ以上の−R1、−ハロ、−CH2(ハロ)、−CH(ハロ)2、−C(ハロ)3、−O(C1〜C6)アルキルで場合により置換されている芳香族炭化水素の非限定的な例としては、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ベンゾトリフルオライド、またはこれらの任意の混合物が挙げられる。
【0115】
一実施形態において、前記溶出溶媒は、脂肪族炭化水素およびアルコールを含む。他の実施形態において、前記溶出溶媒は、n−ヘプタンおよびイソプロパノールを含む。他の実施形態において、前記有機溶媒は、n−ヘプタン:2−プロパノールの(95:5(v/v))混合物を含む。
【0116】
分割段階の進行は、上のセクション4.3において説明した分析方法を用いてモニターすることができる。
【0117】
トランス−(−)−Δ9−THCを含有し、他のカンナビノイドが実質的にない溶出液を併せることができる。一実施形態において、前記溶出液は、トランス−(−)−Δ9−THCとトランス−(+)−Δ9−THCの総量を基準にして、少なくとも約98重量%のトランス−(−)−Δ9−THC;他の実施形態において、少なくとも約99重量%のトランス−(−)−Δ9−THC;他の実施形態において、少なくとも約99.5重量%のトランス−(−)−Δ9−THC;および他の実施形態において、少なくとも約99.9重量%のトランス−(−)−Δ9−THCを含む。
【0118】
同様に、トランス−(+)−Δ9−THCを含有し、他のカンナビノイドが実質的に無い溶出液を併せることができる。一実施形態において、前記溶出液は、トランス−(+)−Δ9−THCとトランス−(−)−Δ9−THCの総量を基準にして、少なくとも約98重量%のトランス−(+)−Δ9−THC;他の実施形態において、少なくとも約99重量%のトランス−(+)−Δ9−THC;他の実施形態において、少なくとも約99.5重量%のトランス−(+)−Δ9−THC;および他の実施形態において、少なくとも約99.9重量%のトランス−(+)−Δ9−THCを含む。
【0119】
第一溶媒およびトランス−(−)−Δ9−THCまたはトランス−(+)−Δ9−THCを含む溶出液を場合により揮発成分と分離して、各エナンチオマーを油として生じさせてもよい。トランス−(−)−Δ9−THCまたはトランス−(+)−Δ9−THCを揮発成分と分離するための方法としては、例えば、大気圧または減圧での蒸留が挙げられる。例えば、トランス−(−)−Δ9−THCまたはトランス−(+)−Δ9−THCは、所望される場合には、分別蒸留によって蒸留して、トランス−(−)−Δ9−THCまたはトランス−(+)−Δ9−THC留分を得ることができる(例えば、Olsenらの米国特許第4,381,399号参照)。
4.5.トランス−(−)−Δ9−THCまたはトランス−(+)−Δ9−THCを含む組成物
【0120】
上述したように、本発明は、トランス−(−)−Δ9−THCまたはトランス−(+)−Δ9−THCを含む組成物にも関する。
【0121】
一実施形態において、本発明は、カンナビノイドの総量を基準にして、少なくとも99.0重量%のトランス−(−)−Δ9−THC;他の実施形態において、少なくとも約99.5重量%のトランス−(−)−Δ9−THC;および他の実施形態において、少なくとも99.9重量%のトランス−(−)−Δ9−THCを含む組成物に関する。
【0122】
一実施形態において、本発明は、カンナビノイドの総量を基準にして、少なくとも99.0重量%から約99.95重量%までのトランス−(−)−Δ9−THCを含む組成物に関する。他の実施形態において、本発明は、カンナビノイドの総量を基準にして、少なくとも99.0重量%から約99.98重量%までのトランス−(−)−Δ9−THCを含む組成物に関する。
【0123】
他の実施形態において、カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも99.0重量%のトランス−(−)−Δ9−THCを含む組成物は、セクション4.6において説明するような医薬組成物として調合される。
【0124】
一実施形態において、本発明は、カンナビノイドの総量を基準にして、少なくとも99.0重量%のトランス−(+)−Δ9−THC;他の実施形態において、少なくとも約99.0.0重量%のトランス−(+)−Δ9−THC;他の実施形態において、少なくとも99.5.0重量%のトランス−(+)−Δ9−THC;および他の実施形態において、少なくとも99.9重量%のトランス−(+)−Δ9−THCを含む組成物に関する。
【0125】
本発明のトランス−(−)−Δ9−THC組成物は、天然源由来のトランス−(−)−Δ9−THC組成物において見出すことができるΔ9−THCカルボン酸(R. F. Turk et al., J. Pharm. Pharmac. 23:190-195 (1971) 参照)を、一般に、含有しない。一実施形態において、本発明のトランス−(−)−Δ9−THC組成物は、カンナビノイドの総量を基準にして、0.05%未満のΔ9−THCカルボン酸;他の実施形態において、0.01%未満のΔ9−THCカルボン酸;他の実施形態において、0.005%未満のΔ9−THCカルボン酸;および他の実施形態において、0.001%未満のΔ9−THCカルボン酸を含有する。他の実施形態において、トランス−(−)−Δ9−THC組成物は、Δ9−THCカルボン酸を含有しない。
【0126】
他の実施形態において、本発明は、カンナビノイドの総量を基準にして、少なくとも99.0重量%のトランス−(−)−Δ9−THCおよび0.05%未満のΔ9−THCカルボン酸;他の実施形態において、少なくとも約99.5重量%のトランス−(−)−Δ9−THCおよび0.05%未満のΔ9−THCカルボン酸;および他の実施形態において、少なくとも99.9重量%のトランス−(−)−Δ9−THCおよび0.05%未満のΔ9−THCカルボン酸を含む組成物に関する。
【0127】
他の実施形態において、本発明は、カンナビノイドの総量を基準にして、少なくとも99.0重量%のトランス−(+)−Δ9−THCおよび0.05%未満のΔ9−THCカルボン酸;他の実施形態において、少なくとも約99.5重量%のトランス−(+)−Δ9−THCおよび0.05%未満のΔ9−THCカルボン酸;および他の実施形態において、少なくとも99.9重量%のトランス−(+)−Δ9−THCおよび0.05%未満のΔ9−THCカルボン酸を含む組成物に関する。
【0128】
上述したように、トランス−(−)−Δ9−THCとともにトランス−(+)−Δ9−THCは、結晶性(±)−Δ9−THCの製造に有用である。
【0129】
トランス−(−)−Δ9−THCまたはトランス−(+)−Δ9−THC組成物は、上で説明した方法によって製造することができる。
【0130】
他の実施形態において、本発明は、(−)−Δ9−THC、トランス−(+)−Δ9−THC、第一水不混和性有機溶媒、水混和性アルコール、水およびアルカリ金属水酸化物を含む組成物に関する。この組成物は、(−)−Δ9−THCおよび/またはトランス−(+)−Δ9−THCからの不純物の除去に有用である。
4.6.トランス−(−)−Δ9−THCを含む組成物の治療的/予防的投与
【0131】
カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも99.0重量%のトランス−(−)−Δ9−THCを含む本発明の組成物は、トランス−(−)−Δ9−THCが有用であることが知られている同じ疾病(diseases)、病気(ailments)もしくは疾患(disorders)(「コンディション(Conditions)」)の治療に有用であり、またはトランス−(−)−Δ9−THCが、治療もしくは予防に有用であると後に判明する任意のコンディションに有用である。例えば、カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも99.0重量%のトランス−(−)−Δ9−THCを含むトランス−(−)−Δ9−THC組成物は、嘔吐、体重減少、食欲不振、多発性硬化症、トゥーレット症候群、パーキンソン病、または麻痺、例えば脳性麻痺の治療または予防に有用であり得る。従って、一実施形態において、本発明は、その必要がある患者にトランス−(−)−Δ9 組成物の有効量を投与することを含む、あるコンディションを治療または予防するための方法にも関し、前記トランス−(−)−Δ9−THC組成物は、カンナビノイドの総量を基準にして、少なくとも99.0重量%のトランス−(−)−Δ9−THC;他の実施形態において、少なくとも99.0重量%のトランス−(−)−Δ9−THC;他の実施形態において、少なくとも99.5重量%のトランス−(−)−Δ9−THC;および他の実施形態において、少なくとも99.9重量%のトランス−(−)−Δ9−THCを含む。
【0132】
他の実施形態において、本発明は、その必要がある患者にトランス−(−)−Δ9組成物の有効量を投与することを含む、あるコンディションを治療または予防するための方法にも関し、前記トランス−(−)−Δ9−THC組成物は、カンナビノイドの総量を基準にして、少なくとも99.0重量%のトランス−(−)−Δ9−THCおよび0.05重量%未満のΔ9−THCカルボン酸;他の実施形態において、少なくとも99.0重量%のトランス−(−)−Δ9−THCおよび0.05重量%未満のΔ9−THCカルボン酸;他の実施形態において、少なくとも99.5重量%のトランス−(−)−Δ9−THCおよび0.05重量%未満のΔ9−THCカルボン酸;ならびに他の実施形態において、少なくとも99.9重量%のトランス−(−)−Δ9−THCおよび0.05重量%未満のΔ9−THCカルボン酸を含む。
【0133】
一実施形態において、前記コンディションは、疼痛である。
【0134】
他の実施形態において、前記コンディションは、嘔吐、例えば、癌化学療法の結果としての嘔吐である。
【0135】
他の実施形態において、前記コンディションは、食欲不振である。
【0136】
他の実施形態において、前記コンディションは、体重減少、例えば、後天性免疫不全症候群(AIDS)またはAIDS関連症候群(ARC)をはじめとする症候性HIV感染症の結果としての体重減少である。
【0137】
患者に投与されるとき、カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも約99.0重量%のトランス−(−)−Δ9−THCを含有する前記トランス−(−)−Δ9−THC組成物は、その患者への適切な投与のための形態を生じさせるために適量の医薬的に許容される担体を含む。
【0138】
特定の実施形態において、用語「医薬的に許容される」は、連邦政府もしくは州政府の監督庁により承認されている、または動物における、さらに特定的には人間における使用について米国薬局方もしくは他の一般に認知されている薬局方に記載されていることを意味する。用語「担体」は、カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも約99.0重量%のトランス−(−)−Δ9−THCを含有するトランス−(−)−Δ9−THCを投与するために用いられる、希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルを指す。こうした医薬担体は、液体、例えば、水および油(石油、動物、植物もしくは合成起源のもの、例えば落花生油、大豆油、鉱物油およびゴマ油など、を含む)であり得る。医薬担体は、生理食塩水、アラビアゴム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイド状シリカおよび尿素などであり得る。加えて、助剤、安定剤、増粘剤、滑沢剤および着色剤が、使用されることがある。本組成物は、所望される場合には、少量の湿潤もしくは乳化剤、および/またはpH緩衝剤を含有することもできる。患者に投与されるとき、これらの医薬的に許容される担体は、好ましくは無菌である。
【0139】
本組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、ピル、ペレット、カプセル、液体含有カプセル、粉末、徐放性製剤、坐剤、エマルジョン、エーロゾル、スプレー剤、懸濁液の形態、または使用に適する他の任意の形態をとることができる。
【0140】
一実施形態において、カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも約99.0重量%のトランス−(−)−Δ9−THCを含有するトランス−(−)−Δ9−THC組成物は、ゴマ油をさらに含む。他の実施形態において、カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも約99.0重量%のトランス−(−)−Δ9−THCを含有する前記トランス−(−)−Δ9−THC組成物は、ゴマ油をさらに含み、得られた混合物は、カプセル化される(例えば、米国特許第6,703,418号B2参照)。
【0141】
他の実施形態において、カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも約99.0重量%のトランス−(−)−Δ9−THCを含有するトランス−(−)−Δ9−THC組成物は、錠剤として成形される。
【0142】
カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも約99.0重量%のトランス−(−)−Δ9−THCを含有するトランス−(−)−Δ9−THC組成物は、任意の適便な経路により、例えば、注入またはボーラス注射により、上皮または粘膜皮膚裏装(lining)(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)を通した吸収により投与することができ、ならびに別の生物活性薬剤と一緒に投与することができる。投与は、全身性である場合もあり、局所性である場合もある。様々な送達システム、例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセル、カプセルなどへの封入が、知られており、本医薬組成物を投与するために用いることができる。投与方法としては、皮内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、静脈内投与、皮下投与、鼻腔内投与、硬膜外投与、経口投与、舌下投与、鼻腔内投与、脳内投与、膣内投与、経皮投与、直腸内投与、吸入による投与、または耳、鼻、目もしくは皮膚への局所投与が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい投与方式は、経口投与であるが、現場の人間の決定に任せて他の投与方式であってもよい。
【0143】
経口送達に使用される場合、カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも約99.0重量%のトランス−(−)−Δ9−THCを含有するトランス−(−)−Δ9−THC組成物は、例えば、錠剤、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁液、顆粒、粉末、エマルジョン、カプセル、シロップまたはエリキシルの形態であり得る。経口投与される組成物は、医薬的に美味な製剤を提供するために、1つまたはそれ以上の任意の薬剤、例えば、甘味剤(例えば、フルクトース、アスパルテームまたはサッカリン);着香剤(例えば、ペパーミント、ウインターグリーン油またはチェリー);着色剤;および保存剤を含有することができる。さらに、錠剤またはピル形での場合、本組成物をコーティングして、胃腸管における分解および吸収を遅らせ、その結果、長期間にわたって持続作用を生じさせることができる。浸透活性駆動化合物を包囲する選択透過性膜も、経口投与用医薬組成物に適する。これら後者のプラットフォームでは、そのカプセルを取り巻く環境からの液体をその駆動化合物が吸収し、膨潤して、開口部を通して薬剤または薬剤組成物を置換する。これらの送達プラットフォームは、即時放出型製剤のスパイク型プロフィールとは対照的に、本質的に0次(zero-order)の送達プロフィールを生じさせることができる。時間遅延材料、例えば、グリセロールモノステアレートまたはグリセロールステアレートが、使用されることもある。経口組成物は、標準的な担体、例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含むことができる。こうした担体は、好ましくは、医薬品グレードのものである。
【0144】
静脈内送達に使用される場合、カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも約99.0重量%のトランス−(−)−Δ9−THCを含有するトランス−(−)−Δ9−THC組成物は、人間への静脈内投与のための常用手順に従って調合される。好ましくは、静脈投与用の医薬組成物は、場合により、可溶化剤を伴う滅菌等張性水性緩衝液中の溶液である。静脈内投与用の組成物は、注射部位の痛みを軽減するために、リグノカインなどの局所麻酔薬を場合により含むことがある。一般に、これらの成分は、別々に、または共に混合して単位剤形で、例えば、活性薬剤の量を示すアンプルまたはサッシェなどの気密封止容器内の凍結乾燥ドライパウダーまたは無水濃縮液として、供給される。本医薬組成物を輸注により投与すべき場合、それらは、例えば、場合により、可溶化剤を伴う医薬品グレードの滅菌水または生理食塩水を収容した輸液ボトルで投薬することができる。本医薬組成物が、注射により投与される場合、投与前に成分を混合することができるように、注射用滅菌水または生理食塩水のアンプルを備えておいてもよい。
【0145】
あるコンディションの治療または予防に有効である、カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも約99.0重量%のトランス−(−)−Δ9−THCを含有するトランス−(−)−Δ9−THC組成物の量は、標準的な臨床法により決定することができる。加えて、場合によりインビボまたはインビトロアッセイを利用して、最適な投薬量の特定に役立てることができる。使用することができる正確な用量は、投与経路およびそのコンディションの重症度にも依存するものであり、現場の人間の判断および/または各動物の環境に従って決定することができる。カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも約99.0重量%のトランス−(−)−Δ9−THCを含有するトランス−(−)−Δ9−THC組成物が、経口投与されるとき、その有効投薬量は、ほぼ4時間ごとの、約0.005mg/(体重のkg)から約0.4mg/(体重のkg)であるが、一般には、約0.1mg/(体重のkg)またはそれ以下である。一実施形態において、前記有効投薬量は、約0.005mg/(体重のkg)から約0.4mg/(体重のkg)であり;他の実施形態において、前記有効投薬量は、約0.01mg/(体重のkg)から約0.1mg/(体重のkg)であり;および他の実施形態において、前記有効投薬量は、約0.01mg/(体重のkg)から約0.075mg/(体重のkg)である。
【0146】
経口剤形は、一般に、約0.1mgから約20mg;他の実施形態において、約2.5mgから約10mg;他の実施形態において、約2.5mg;他の実施形態において、約5mg;他の実施形態において、約10mgの量のトランス−(−)−Δ9−THCを含む。
【0147】
1つの実施形態では、そのコンディションが寛解されるまで、約24時間ごとに有効投薬量が投与される。もう1つの実施形態では、そのコンディションが寛解されるまで、約12時間ごとに有効投薬量が投与される。もう1つの実施形態では、そのコンディションが寛解されるまで、約8時間ごとに有効投薬量が投与される。もう1つの実施形態では、そのコンディションが寛解されるまで、約6時間ごとに有効投薬量が投与される。およびもう1つの実施形態では、そのコンディションが寛解されるまで、約4時間ごとに有効投薬量が投与される。
【0148】
ある実施形態において、脳室内注射およびクモ膜下注射をはじめとする任意の適する経路により、本医薬組成物を中枢神経系に導入することが望ましい場合がある。脳室内注射は、例えば、オマヤレザバーなどのレザバーに取り付けられた、脳室内カテーテルにより容易にすることができる。
【0149】
例えば、吸入器もしくはネブライザーと、エーロゾル化剤を有する調合物とを使用することにより、またはフルオロカーボンもしくは合成肺表面活性物質での潅流により、経肺投与を利用することもできる。ある実施形態において、本医薬組成物は、伝統的な結合剤および担体、例えばトリグリセリドを用いて、坐剤として調合することができる。
【0150】
他の実施形態において、カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも約99.0重量%のトランス−(−)−Δ9−THCを含有するトランス−(−)−Δ9−THC組成物は、小胞、特にリポソームで送達することができる(Langer, Science 249:1527-1533 (1990);Treat et al., in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez - Berestein and Fidler (eds.), Liss, New York, pp. 353-365 (1989);Lopez - Berestein, ibid., pp. 317-327参照;一般に同書参照)。
【0151】
他の実施形態において、カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも約99.0重量%のトランス−(−)−Δ9−THCを含有するトランス−(−)−Δ9−THC組成物は、制御放出システムで送達することができる。一実施形態において、ポンプを使用することができる(Langer, supra;Sefton, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201 (1987);Buchwald et al., Surgery 88:507 (1980);Saudek et al., N. Engl. J. Med. 321:574 (1989) 参照)。他の実施形態において、ポリマー材料を使用することができる(Medical Applications of Controlled Release, Langer and Wise (eds.), CRC Pres., Boca Raton, Fla. (1974);Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, Smolen and Ball (eds.), Wiley, New York (1984);Ranger and Peppas, J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61 (1983) 参照;Levy et al., Science 228:190 (1985);During et al., Ann. Neurol. 25:351 (1989);Howard et al., J. Neurosurg. 71:105 (1989) も参照)。他の実施形態において、制御放出システムは、本医薬組成物のターゲットの近接位に配置することができ、それ故、ほんの少しの全身量しか必要としない(例えば、Goodson, in Medical Applications of Controlled Release, supra, vol. 2, pp. 115-138 (1984) 参照)。Langerが評論誌(Science 249:1527-1533 (1990))の中で論じている他の制御放出システムを使用してもよい。
【0152】
本発明は、カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも約99.0重量%のトランス−(−)−Δ9−THCを含有するトランス−(−)−Δ9−THC組成物を充填した1つまたはそれ以上の容器を含む医薬品パックまたはキットも提供する。医薬品または生物学的製剤の製造、使用または販売を監督する政府機関により指示された形態の注意書きを、場合によりこうした容器に付随させることがあり、この注意書きは、人間への投与のための製造、使用または販売に対する前記機関による承認を表す。
【0153】
以下の実施例は、本発明の理解を助けるために記載するものであり、ここに記載し、特許請求する本発明を限定するものではない。当業者の範囲内であろう、現在既知のまたは後に開発されるすべての等価物の代用、および調合に関する変更または実験計画に関する小さな変更をはじめとする、本発明のそうした変型は、本発明の範囲内に入る。
【0154】
5.実施例
別様に述べない限り、すべての反応は、アルゴンまたは窒素雰囲気下で行った。
【0155】
別様に述べない限り、フレーズ「冷水」、「冷ヘキサン」または「冷ヘプタン」は、約0℃から約5℃の温度の水、ヘキサンまたはヘプタンをそれぞれ意味する。
【0156】
試薬および溶媒:別様に述べない限り、すべての試薬および溶媒は、Aldrich Chemical Companyから購入し、さらに精製せずに使用した。
【0157】
高速液体クロマトグラフィー:高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、以下の条件下で行い、サンプル溶出液の純度は、得られた面積百分率から計算した:
【0158】
標準HPLCは、3μm C18−固定相カラム(150x4.6mm);次の組成物の移動相:25分間にわたってTHF(71%)、MeOH(24%)および水(5%)、10分間にわたってTHF(71%)、MeOH(5%)および水(24%)、そして10分間にわたってTHF(71%)、MeOH(24%)および水(5%)への勾配;1mL/分の流量;および228nmでのUV検出器、を用いて行った。
【0159】
キラルHPLC法1は、20μm Chiralpak AD 250x4.6mm カラム;ヘプタン:イソプロパノール(95:5(v:v))の移動相;1mL/分の流量;および228nmでのUV検出器を用いて行った。サンプルの濃度は、1mLのヘプタンあたり約1mgであった。
【0160】
Chiral HPLC法2は、5μm Chiralpak AD−H 250x4.6mm(Diacel)カラム;CBDについてはヘキサン:エタノール(95:5(v:v))およびΔ9−THCについてはヘキサン:イソプロパノール(90:10(v:v))の移動相;1mL/分の流量;および228nmでのUV検出器を用いて行った。サンプルの濃度は、1mLのヘキサンあたり約1mgであった。
【0161】
ガスクロマトグラフィー:ガスクロマトグラフィー(GC)は、以下の条件下で行い、溶出液の純度は、得られた面積百分率から計算した:
【0162】
標準GCは、HP−5細管カラム(長さ−30m、ID−0.25mm);5%ジフェニル/95%ジメチル)ポリシロキサン(0.25μm フィルム)の固定相;230℃の注入温度;270℃の検出器/温度(FID);および3分間にわたって100℃で保持、毎分10℃で240℃に上昇、10分間にわたって240℃で保持、毎分270℃に上昇、そして10分間にわたって270℃で保持を用いるオーブン温度プログラムを用いて行った。GCサンプルの濃度は、1mLのEtOHあたり約1mgであった。
【0163】
キラルGCは、Alpha−DEX−120、30mx0.25mmカラムを使用し;注入温度が250℃であり;オーブン温度が90℃(恒温)であったことを除き、標準GCについて上で説明したのと同様に行った。
【0164】
粉末X線回折図:粉末X線回折分析は、PANALYTICAL(Philips)X’Pert Pro MPD 粉末X線回折システム(CuKα 線、PW3050/60 ゴニオメーター、PW3011/20 比例検出器)を使用して既知の方法により行った。ビーム集束には、Bragg−Brentano方式を用いた。
【0165】
核磁気共鳴分光分析:核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、(別様に述べない限り)CDCl3を溶媒として使用して、Bruker AM−200(200MHzで1H、50MHzで13C)またはBruker AM−400(400MHzで1H)装置で記録した。化学シフトは、内部TMSに対するδ(ppm)である。
【0166】
融点:融点決定は、Buchi B−545 細管融点測定装置を使用して開放式細管において、またはMettler−Toledo FP−81 融点測定用アクセサリーとFP−900 プロセッサーを用いて行った。融点は、未補正である。
【実施例1】
【0167】
5.1.(−)−シス−p−メント−2,8−ジエン−1−オールの合成
(−)−(1R,2R,S5)−2−フェニルチオ−8−p−メンテン−1−オールの調製:(−)−リモネンオキシド(152.2g、1.00mol(約1:1 シス:トランス ジアステレオマー混合物)(Aldrich Chemical)、チオフェノール(60.6g、0.55モル)(スイス、ブーフスのFluka Chemical)、炭酸カリウム(82.9g、0.60mol)、N,N−ジメチルホルムアミド(18.9g、0.26mol)およびトルエン(400mL)の混合物を、Ar雰囲気下、117℃で19時間攪拌した。その混合物を25℃に冷却し、水(300mL)を添加した。得られた有機相を回収し、水層をトルエン(3x200mL)で抽出した。併せた有機相を水(1x400mL)およびブラインの15%溶液(1x410mL)で洗浄した。その後、有機相をNa2SO4(30g)で乾燥させ、濾過し、得られた濾液を加圧下、65℃で濃縮した。得られた褐色の油(200.5g)を減圧下で分別蒸留して、90.2%の純度(GC)を有する、(−)−シス−リモネンオキシド(33.7g)(1.1mbarで28.1℃から32.1℃)および(−)−(1R,2R,4S)−2−フェニルチオ−8−p−メンテン−1−オール(147.4g)(1.2mbarで128.1℃から138.2℃)を得た。(−)−(1R,2R,4S)−2−フェニルチオ−8−p−メンテン−1−オールの分析サンプルは、50〜51℃の融点(ヘキサン)および99.0%の純度(GC)を有した。
【0168】
旋光度:[α]D20−110°(c=1.55、CHCl3)。
【0169】
1H NMRは、構造と一致した。
【0170】
(1R,2R,4S)−1−ヒドロキシ−8−p−メンテン−2−フェニルスルホキシドの調製:(−)−(1R,2R,4S)−2−フェニルチオ−8−p−メンテン−1−オール(147g;0.56mol)を25℃、Ar雰囲気下で、攪拌しながらメチルアルコール(1.35L)に溶解し、得られた溶液を−10℃から−5℃に冷却した。そのメチルアルコール溶液に、水(1.35L)中のOXONE(登録商標)(ペルオキシモノ硫酸カリウム)(279.1g、0.448mol)(Aldrich Chemical)の溶液を、−10℃から−5℃で、2時間かけて1滴ずつ添加し、得られた混合物をさらに30分間、−10℃から−5℃で攪拌した。その混合物を20℃から25℃に温め、水(2.1L)を添加し、得られた二相混合物をジクロロメタン(3x910mL)で抽出した。併せた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、得られた濾液を減圧下、60℃で濃縮して、150.9gの残留物を得た。その後、その残留物をシリカゲルカラムでのクロマトグラフィー(溶離剤:n−ヘプタン/酢酸エチル 9:1、その後、8:2)によって精製した。(1R,2R,4S)−1−ヒドロキシ−8−p−メンテン−2−フェニルスルホキシドを主として含有する画分を併せ、真空下で10時間、40℃から50℃で濃縮して、(1R,2R,4S)−1−ヒドロキシ−8−p−メンテン−2−フェニルスルホキシドを2つのジアステレオマーの混合物として得た。収量:86.1g;55.2%。この生成物を冷凍庫で保管した。
【0171】
(−)−シス−p−メンタ−2,8−ジエン−1−オール:ジメチルスルホキシド(910mL)中の(1R,2R,4S)−1−ヒドロキシ−8−p−メンテン−2−フェニルスルホキシド(86g、0.31mol)とピペリジン(71.0g、0.83mol)の混合物をAr流雰囲気下、163℃に加熱し、得られた混合物を163℃で3時間攪拌した。その混合物を20℃から25℃に冷却し、水(800mL)で処理し、ジエチルエーテル(2x400mL)で抽出した。併せた有機相を1N HCl(160mL)、炭酸水素ナトリウムの7%溶液(150mL)、ブライン(150mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、有機相を減圧下で濃縮した。得られた残留物(93.3g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:n−ヘプタン、その後、n−ヘプタン:酢酸エチル(1:9(v:v))によって精製し、(−)−シス−p−メンタ−2,8−ジエン−1−オールを主として含有する画分を併せ、減圧下、40℃から50℃で10時間にわたって濃縮して、(−)−シス−p−メンタ−2,8−ジエン−1−オールを得た。収量:26.1g;55%。その生成物の分析(GC)は、それが純度90.9%であることを示した。
【0172】
旋光度:[α]D25 −69°(ニート(neat))。
【0173】
1H NMRは、構造と一致した。
【実施例2】
【0174】
5.2.(+)−シス−p−メント−2,8−ジエン−1−オールの合成
(+)−p−メンタ−2,8−ジエン−1−オールは、(+)−リモネンオキシド(1:1 シス/トランス ジアステレオマー混合物)を(−)−リモネンオキシドの代わりに使用したことを除き、実施例1で説明したとおりに調製した。得られた生成物の分析(GC)は、それが91.0%の純度を有することを示した。
【0175】
旋光度:[α]D25 +78°(ニート)。
【実施例3】
【0176】
5.3.(±)−シス−p−メント−2,8−ジエン−1−オールの合成
(±)−p−メンタ−2,8−ジエン−1−オールは、等量の実施例2の(−)−p−メンタ−2,8−ジエン−1−オールと実施例1の(+)−p−メンタ−2,8−ジエン−1−オールとを混合することによって調製した。
【実施例4】
【0177】
5.4.(+)−CBDの合成
粗製(+)−CBD(3b)の合成:オリベトール(3.6g、20mmol)、塩化亜鉛(3.5g、26mmol)、水(3.5mL、19mmol)およびジクロロメタン(35mL)の混合物を1時間、還流させた。その還流混合物に、ジクロロメタン(10mL)中の(−)−p−メンタ−2,8−ジエン−1−オール(3.0g、20mmol)を0.75時間かけて1滴ずつ添加し、得られた反応混合物を0.5時間、還流させながら混合した。その混合物を25℃に冷却し、氷水(50mL)を添加し、得られた二相混合物を20分間、0℃で攪拌した。得られた有機相を回収し、水(2x20mL)および5% NaHCO3(20mL)で洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、6.0gの第一粗製(+)−CBD残留物を得た。この第一粗製(+)−CBD残留物の分析(GC)は、それが(+)−CBD(46.9%)およびabn−(−)−CBD(19.7%)を含有することを示した。その第一粗製(+)−CBD残留物をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(溶離剤 MTBE/ヘキサン)によって精製して、2.4gの第二粗製(+)−CBD残留物を得た。
【0178】
(+)−CBD−ビス(3,5−ジニトロベンゾエート)(4b)の合成:ジクロロメタン(10mL)中の塩化3,5−ジニトロベンゾイル(3.4g、14.7mmol)の溶液を、0℃から5℃の第二粗製(+)−CBD残留物(2.4g)、4,N,N−ジメチルアミノピリジン(0.05g)、ピリジン(6mL)およびジクロロメタン(15mL)の攪拌混合物に1滴ずつ添加した。その混合物を放置して25℃に温め、2時間、25℃で攪拌した。その後、その混合物を、37% HCl(6mL)、氷(75g)およびジクロロメタン(50mL)の混合物に注入した。得られた有機相を回収し、ブライン(15mL)、5% NaHCO3(15mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過した。得られた濾液を減圧下で濃縮して、5.2gの粗製(+)−CBD−ビス(3,5−ジニトロベンゾエート)(4b)を得た。イソプロパノールと酢酸エチルの10:1(vol:vol)混合物(70mL)中のその粗製(+)−CBD−ビス(3,5−ジニトロベンゾエート)(5.2g)の溶液を一晩、25℃で攪拌し、濾過した。結果として生じた沈殿をイソプロパノールと酢酸エチルの10:1(vol:vol)混合物(3x10mL)で洗浄し、減圧下で乾燥させて、結晶性(+)−CBD−ビス(3,5−ジニトロベンゾエート)(4b)を得た。収量:3.7g、26.5%。
【0179】
融点:90〜92℃(分解(dec.))。
【0180】
旋光度:[α]D20 +80°(c=0.4、CHCl3)。
【0181】
(+)−CBD(3b)の合成:結晶性(+)−CBD−ビス(3,5−ジニトロベンゾエート)(4b)(3.5g、5.0mmol)、ブチルアミン(3.7g、50mmol)およびトルエン(20mL)の混合物を室温で12時間攪拌し、減圧下で濃縮した。得られた残留物をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(溶離剤 ヘキサン:MTBE(70:1(v:v))によって精製して、1.3gの(+)−CBDを油として得た。ヘキサン(1mL)中の(+)−CBD(1.3g)の溶液を一晩、−15℃で保持した。その後、その得られた混合物を濾過し、得られた固体を減圧下で乾燥させて、(+)−CBD(3b)を白色の結晶として得た。収量:1.2g、64%。その生成物の分析(GC)は、それが純度98.6%であることを示した。
【0182】
融点:64〜66℃
【0183】
旋光度:[α]D20 +126°(c=0.12、95% EtOH)。
【実施例5】
【0184】
5.5.(±)−Δ8−THCの調製
ジクロロメタン(6mL)中のメタンスルホン酸(1.1g、11mmol)の溶液を、ジクロロメタン(130mL)中のオリベトール(10.0g、55.5mmol)および(±)−p−メンタ−2,8−ジエン−1−オール(8.5g、55.5mmol)の溶液に添加した。得られた混合物を、Dean−Stark分離器を使用して水を除去しながら、4時間、還流させた。その後、その混合物を25℃に冷却し、NaHCO3水溶液で処理した。得られた有機相を回収し、減圧下で濃縮した。得られた残留物をヘプタン(110mL)に溶解し、10% NaOH(130mL)で洗浄し、得られた有機相を減圧下で濃縮して、15.6gの粗製(±)−Δ8−THCを得た。その粗製生成物の分析(GC)は、それが61.7%の純度を有することを示した。
【実施例6】
【0185】
5.6.(−)−Δ8−THCの調製
粗製(−)−Δ8−THC(2a)は、(+)−p−メンタ−2,8−ジエン−1−オールを(±)−p−メンタ−2,8−ジエン−1−オールの代わりに使用したことを除き、粗製(±)−Δ8−THCの調製について実施例5で説明したのと同様に調製した。
【実施例7】
【0186】
5.7.(+)−Δ8−THCの調製
粗製(+)−Δ8−THC(2b)は、(−)−p−メンタ−2,8−ジエン−1−オールを(±)−p−メンタ−2,8−ジエン−1−オールの代わりに使用したことを除き、粗製(±)−Δ8−THCの調製について実施例5で説明したのと同様に調製した。
【実施例8】
【0187】
5.8.トランス−(−)−Δ9−THCの二部合成
(−)−CBD(3a)の合成:ジクロロメタン(325mL)中の(+)−p−メンタ−2,8−ジエン−1−オール(84.5g、0.56mol)の溶液を、40℃のオリベトール(100.0g、0.56mol)、塩化亜鉛(100.3g、0.72mol)、水(10.0mL、0.56mol)およびジクロロメタン(1L)の攪拌混合物に、1時間かけて1滴ずつ添加した。その混合物をさらに30分間、40℃で攪拌した。その混合物を25℃に冷却し、氷水(500g)に注入し、得られた二相混合物を20分間、0℃で攪拌した。得られた有機相を回収し、冷水(2x250mL)で洗浄した。有機相を回収し、減圧下で濃縮して、第一残留物(185.5g)を得た。その第一残留物の分析(GC)は、それが(−)−CBD(51.8%)、abn−CBD(13.2%)、オリベトール(8.0%)およびジアルキル化オリベトール(13.4%)を含有することを示した。
【0188】
その第一残留物(185.5g)をn−ヘプタン(1.1L)に溶解し、得られた溶液を10%水酸化ナトリウム溶液(1.3L)と混合した。得られた有機相を回収し、水(250mL)で洗浄し、減圧下で濃縮して、油性褐色第二残留物(124.3g)を得た。その第二残留物の分析(GC)は、それが、(−)−CBD(66.0%)、abn−CBD(0.0%)、オリベトール(0.0%)およびジアルキル化オリベトール(16.8%)を含有することを示した。
【0189】
その第二残留物(124.3g)を分別蒸留(171℃〜178℃;0.1mmHg)して、87.0gの留分を得た。その留分の分析(GC)は、それが74.3%の(−)−CBDを含有することを示した。
【0190】
その留分(87.0g)を57℃のヘプタン(425mL)に溶解し、濾過した。得られた濾液を0℃から5℃に冷却し、〜0.02mgの粉末状結晶性(−)−CBD(3a)を種結晶として入れた。その種結晶を入れた溶液を0℃から5℃で5時間攪拌し、その後、−15℃から−20℃で48時間攪拌した。得られた混合物を濾過し、得られた固体を冷ヘプタンで洗浄した。その後、それらの固体を減圧下、40℃で乾燥させて、(−)−CBD(3a)を得た。収量:39.2g;22%。その生成物の分析(GC)は、それが(−)−CBD(3a)(97.1%)およびトランス−(−)−Δ9−THC(1a)(1.44%)を含有することを示した。3aの構造を1H NMR分光分析で確認した。分析サンプルは、上で説明したようにヘプタンから粗製3aの一部を再結晶させることによって調製した。
【0191】
融点:64〜65℃。
【0192】
旋光度:[α]D20 −132°(c=0.12、95% EtOH)。
【0193】
トランス−(−)−Δ9−THC(1a)の合成:無水ジクロロメタン(45mL)中の15.0g(47.8mmol)の結晶(−)−CBD(3a)の溶液を、Ar雰囲気下、−10℃で無水ジクロロメタン(180mL)中のBF3・Et2O(8.4g、59.2mmol)の攪拌溶液に、1時間かけて1滴ずつ添加した。その混合物を2時間、−10℃で攪拌し、氷水(100g)に注入した。得られた二相混合物を20分間、0℃でさらに攪拌した。得られた有機相を回収し、冷水(50mL)、7%重炭酸ナトリウム水溶液(50mL)および水(50mL)で洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過した。得られた濾液を減圧下、40℃で濃縮して、トランス−(−)−Δ9−THC(1a)を黄色の油として得た。収量:14.9g、99%。その生成物の分析(GC)は、それが81.9%のトランス−(−)−Δ9−THC(1a)を含有することを示した。
【実施例9】
【0194】
トランス−(−)−Δ9−THCのワンポット合成
オリベトール(50.0g、0.28mol)、塩化亜鉛(50.0g、0.36mol)および無水ジクロロメタン(510mL)の混合物を40℃で1時間、Ar雰囲気下で攪拌した。(+)−p−メンタ−2,8−ジエン−1−オール(42.2g、0.28mol)およびジクロロメタン(155mL)の溶液を、その攪拌オリベトール含有混合物に、1時間かけて1滴ずつ添加し、得られた混合物をさらに40分間、40℃で攪拌した。その混合物を−10℃に冷却し、無水ジクロロメタン(37mL)中のBF3Et2O(23.6g、166mmol)の溶液を1時間かけて1滴ずつ添加した。得られた混合物を1.5時間、−10℃で攪拌した。冷水(250mL)を添加し、得られた有機相を回収し、冷水(120mL)、7%重炭酸ナトリウム水溶液(120mL)および水(120mL)で洗浄した。有機相をNa2SO4(30g)で乾燥させ、濾過した。得られた濾液を減圧下で濃縮して、トランス−(−)−Δ9−THC(1a)を褐色の油として得た。収量:89.14g、その油中のトランス−(−)−Δ9−THC含有率に基づき46%。その生成物の分析(GC)は、それがトランス−(−)−Δ9−THC(1a)(45.1%)、(−)−Δ8−THC(5.06%)(2a)、(−)−Δ8−イソ−THC(17.6%)、CBD(3a)(0.71%)、オリベトール(7.95%)およびジアルキル化オリベトール(10.8重量%)を含有することを示し、トランス−(+)−Δ9−THC(1b)は、検出されなかった。
【0195】
ヘプタン(120mL)中のトランス−(−)−Δ9−THC油(20.0g)の溶液を10%NaOH(150mL)および水(50mL)で入念に洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過した。その後、その得られた濾液を減圧下で濃縮して、第一粗製残留物(16.6g)を得、これは、HPLCを用いたところ、38.5重量%のトランス−(−)−Δ9−THC(1a)を含有し、ならびにGCを用いたところ、トランス−(−)−Δ9−THC(1a)(47.4%)、Δ8−THC(2a)(8.6%)、Δ8−イソ−THC(19.6%)、CBD(0.5%)、オリベトール(0.0%)およびジアルキル化オリベトール(10.9%)を含有するものであった。
【0196】
ヘプタン(240mL)中のその第一粗製残留物(16.5g)の溶液を、80%メタノール中の9%NaOHのアリコート(3x180mL)で抽出した。併せた塩基性メタノール抽出物を20%クエン酸で約pH7に酸性化し、ヘプタン(3x90mL)で抽出した。併せた有機画分を水(50mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過した。その後、得られた濾液を減圧下で濃縮して、13.7gの粗製残留物を得、これは、HPLCを用いたところ、44.0重量%のトランス−(−)−Δ9−THCを含有し、ならびにGCを用いたところ、トランス−(−)−Δ9−THC(1a)(51.8%)、Δ8−THC(2a)(10.0%)、Δ8−イソ−THC(22.3%)、CBD(0.0%)、オリベトール(0.0%)およびジアルキル化オリベトール(1.3%)を含有するものであった。
【実施例10】
【0197】
5.10.トランス−(+)−Δ9−THCの合成
無水ジクロロメタン(8mL)中のBF3・Et2O(0.34g、2.4mmol)の溶液を、−5℃で無水ジクロロメタン(50mL)中の実施例4からの結晶性(+)−CBD(3a)(1.1g、3.6mmol)の溶液に、攪拌しながら1時間かけて1滴ずつ添加した。得られた混合物を1.5時間、−5℃で攪拌した。その混合物を氷(100g)と7%NaHCO3(100mL)の混合物に添加した。得られた有機相を回収し、水性相をジクロロメタン(2x20mL)で抽出した。併せた有機相を水(20mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過した。得られた濾液を減圧下、40℃で濃縮した。得られた残留物を、MTBE:ヘキサン(1:100から3:100(v:v))を溶離剤として使用するシリカゲル(固定相)でのカラムクロマトグラフィーにより精製して、粗製トランス−(+)−Δ9−THC(1b)を黄色の油として得た:収量:0.7g。その粗製トランス−(+)−Δ9−THCの分析(GC)は、それが92.6%の純度を有することを示した。
【実施例11】
【0198】
5.11.トランス−(+)−Δ9−THCのワンポット合成
オリベトール(14.21g、79.6mmol)、塩化亜鉛(14.25g、102.6mmol)および無水ジクロロメタン(145mL)の混合物を40℃で1時間、攪拌した。(−)−p−メンタ−2,8−ジエン−1−オール(12.00g、76.6mol)および無水ジクロロメタン(45mL)の溶液を、その攪拌オリベトール含有混合物に、40℃で1時間かけて1滴ずつ添加し、得られた混合物をさらに40分間、40℃で攪拌した。その混合物を−10℃に冷却し、無水ジクロロメタン(12mL)中のBF3・Et2O(6.7g、47mmol)の溶液を−10℃で1時間かけて1滴ずつ添加した。その混合物を30分間、−10℃で攪拌した。冷水(50mL)を添加し、得られた二相混合物をさらに20分間、0℃で攪拌した。得られた有機相を回収し、冷水(2x50mL)、5%重炭酸ナトリウム水溶液(50mL)および水(50mL)で洗浄した。その後、有機相を減圧下、40℃で濃縮し、得られた残留物(24.8g)を25℃のn−ヘプタン(140mL)に溶解した。得られた溶液を10%KOH水溶液(124mL)、水(2x50mL)で洗浄し、MgSO4(10g)で乾燥させ、濾過した。得られた濾液を減圧下、40℃で濃縮した。その後、得られた残留物(20.7g)を減圧(0.1mbar)下で分別蒸留して、トランス−(+)−Δ9−THC(1b)を得た。収量:17.16g、69%。その生成物の分析(GC)は、それがトランス−(+)−Δ9−THC(1b)(49.2%)、Δ8−イソ−THC(25.31%)およびジアルキル化オリベトール(1.29%)を含有することを示し、トランス−(−)−Δ9−THC(1a)は、検出されなかった。
【実施例12】
【0199】
5.12.(±)−Δ9−THCの合成
無水ジクロロメタン(8mL)中のBF3・Et2O(0.3g、2.1mmol)の溶液を、−5℃で無水ジクロロメタン(45mL)中の(±)−CBD(1.0g、3.2mmol)の溶液に、攪拌しながら1時間かけて1滴ずつ添加した。得られた混合物を1.5時間、−5℃で攪拌した。その後、その混合物を7%NaHCO3(50mL)に添加した。得られた有機相を回収し、水性相をジクロロメタン(3x30mL)で抽出した。併せた有機相をブライン(20mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過した。得られた濾液を減圧下で濃縮した。得られた残留物を、シリカゲル(固定相)および溶離剤としてのMTBE:ヘキサン(1:100から2:100(v:v))を用いるカラムクロマトグラフィーによって精製して、粗製(±)−Δ9−THCを黄色の油として得た。収量:0.6g、56%。その(±)−Δ9−THC油の分析(GC)は、それが92.6%の純度を有することを示した。その油性(±)−Δ9−THC(0.6g)をヘキサン(0.5mL)に溶解し、得られた混合物を−15℃で24時間維持した。得られた混合物を濾過し、冷ヘキサン(3x1mL)で洗浄し、減圧下で乾燥させて、(±)−Δ9−THCをわずかにばら色の結晶として得た。収量:0.4g。融点:65〜66℃。
【実施例13】
【0200】
5.13.(±)−Δ9−THCのワンポット合成
オリベトール(11.84g、65.7mmol)、塩化亜鉛(11.87g、85.4mmol)および無水ジクロロメタン(120mL)の混合物を40℃で1時間攪拌した。(+)−p−メンタ−2,8−ジエン−1−オール(5.00g、32.84mol)、実施例1からの(−)−p−メンタ−2,8−ジエン−1−オール(5.00g、32.84mol)および無水ジクロロメタン(37mL)の溶液を、その攪拌オリベトール含有混合物に、40℃で1時間にわたって1滴ずつ添加し、得られた混合物をさらに40分間、40℃で攪拌した。その混合物を−10℃に冷却し、無水ジクロロメタン(10mL)中のBF3・Et2O(5.6g、39.4mmol)の溶液を、−10℃で1時間かけて1滴ずつ添加した。その混合物を30分間、−10℃で攪拌し、50mLの冷水を添加した。得られた二相混合物をさらに20分間、0℃で攪拌した。得られた有機相を回収し、冷水(2x50mL)、8%重炭酸ナトリウム水溶液(50mL)および水(50mL)で洗浄した。有機相を減圧下、40℃で濃縮した。得られた残留物(20.5g)を25℃のn−ヘプタン(115mL)に溶解し、10%KOH水溶液(100mL)で40分間、25℃で洗浄し、水(50mL)で洗浄した。その後、有機相を減圧下、50℃で濃縮して、17.1gの粗製(±)−Δ9−THCを褐色の油として得た。
【0201】
その粗製(±)−Δ9−THC油の一部(2.4g)を最小限の量のヘプタンに溶解し、1本のシリンダー(50mmx210mmのLUNA CM 10μm;負荷容量 600mg;溶離剤:n−ヘプタン)でのMerck−Knauer PP K−1800 分取クロマトグラフを用いるシングルパスでのクロマトグラフィーによって精製した。(±)−Δ9−THCを含有する画分を併せ、減圧下、40℃で濃縮して、(±)−Δ9−THC(1)を得た。収量:1.1g。その生成物の分析(GC)は、それが(±)−Δ9−THC(1)(91.27%)、イソ−Δ8−THC(1.87%)およびΔ8−THC(1.08%)を含有することを示した。
【実施例14】
【0202】
(±)−Δ9−THCの調製
オリベトール(15.0g、83.2mmol)、塩化亜鉛(15.0g、108mmol)および無水ジクロロメタン(150mL)の混合物を、40℃で1時間攪拌した。(±)−p−メンタ−2,8−ジエン−1−オール(12.7g、83.2mmol)および無水ジクロロメタン(45mL)の溶液を、その攪拌オリベトール含有混合物に、40℃で1時間にわたって1滴ずつ添加し、得られた混合物をさらに0.50時間、40℃で攪拌した。その混合物を−10℃に冷却し、無水ジクロロメタン(11mL)中のBF3・Et2O(7.1g、49.4mmol)の溶液を、その混合物に、−10℃で1時間にわたって1滴ずつ添加した。その混合物を0.50時間、−10℃で攪拌し、80mLの冷水を攪拌しながら添加して、二相混合物を形成した。有機相を回収し、冷水(80mL)、5%重炭酸ナトリウム水溶液(80mL)および水(80mL)で洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、得られた濾液を減圧下で濃縮して、28.5gの第一粗製(±)−Δ9−THC残留物を得た。その残留物の分析は、それが、HPLCを用いたところ、(±)−Δ9−THC(30.3%)を含有し、ならびにGCを用いたところ、(±)−Δ9−THC(45.2%)、Δ8−THC(3.2%)、(±)−Δ8−イソ−THC(17.3%)、CBD(4.0%)、オリベトール(8.3%)およびジアルキル化オリベトール(11.7%)を含有することを示した。
【0203】
その第一粗製(±)−Δ9−THC残留物の一部(28.5g)をヘプタン(165mL)に溶解し、得られた溶液を10%NaOH(200mL)および水(80mL)で洗浄した。その後、その有機溶液を共沸蒸留により乾燥させ、減圧下で濃縮して、第二粗製(±)−Δ9−THC残留物を得た。収量:23.5g、37.6%。その第二粗製(±)−Δ9−THC残留物の分析は、それが、HPLCを用いたところ、(±)−Δ9−THC(37.6%)を含有し、ならびにGCを用いたところ、(±)−Δ9−THC(50.7%)、Δ8−THC(3.8%)、(±)−Δ8−イソ−THC(19.6%)、CBD(4.4%)、オリベトール(0.0%)およびジアルキル化オリベトール(12.8%)を含有することを示した。
【実施例15】
【0204】
5.15.トランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCの粗原料の混合物からの(±)−Δ9−THCの調製
トランス−(−)−Δ9−THCは、(+)−p−メンタ−2,8−ジエン−1−オールを(±)−p−メンタ−2,8−ジエン−1−オールの代わりに使用したことを除き、粗製第二(±)−Δ9−THC残留物の調製について実施例14において説明したとおりに調製した。得られた粗製トランス−(−)−Δ9−THCの分析(HPLC)は、それが、41.4重量%のトランス−(−)−Δ9−THCを含有することを示した。
【0205】
トランス−(+)−Δ9−THCは、(−)−p−メンタ−2,8−ジエン−1−オールを(±)−p−メンタ−2,8−ジエン−1−オールの代わりに使用したことを除き、粗製第二(±)−Δ9−THC残留物の調製について実施例14において説明したとおりに調製した。得られた粗製トランス−(+)−Δ9−THCの分析(HPLC)は、それが、37.5重量%のトランス−(−)−Δ9−THCを含有することを示した。
【0206】
前記粗製トランス−(−)−Δ9−THC(24.3g;10.0gのトランス−(−)−Δ9−THC)およびトランス−(+)−Δ9−THC(26.7g;10.0gのトランス−(+)−Δ9−THC)を25℃のヘプタン(425mL)に溶解した。得られた溶液を2x180mLの9%NaOH水溶液:メタノール(20:80(v:v))の溶液と混合した。メタノール相を併せ、そのpHが約7になるまで、0℃から約5℃の10%クエン酸で処理した。ヘプタン(290mL)を添加し、得られた有機相を水で洗浄した。その後、有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、得られた濾液を減圧下で濃縮して、41.8gの粗製(±)−Δ9−THCを褐色の油として得た。その粗製(±)−Δ9−THCの分析(HPLC)は、それが48%の純度を有することを示した。
【0207】
その粗製(±)−Δ9−THC(41.8g)をヘプタン(85mL)に溶解し、得られた溶液を0℃に冷却し、結晶性(±)−Δ9−THC(100mg)を種結晶として入れた。得られた混合物を12時間、−15℃にさらに冷却し、濾過した。得られた固体を冷ヘプタン(3x10mL)で洗浄し、減圧下で乾燥させて、(±)−Δ9−THCを白色結晶質固体として得た。収量:8.7g、43%。その生成物の分析(HPLC)は、それが96.5%の純度を有することを示した。その結晶性(±)−Δ9−THCは、25℃で少なくとも3日後、白色のままであった。
【実施例16】
【0208】
5.16.(±)−Δ8−THCからの(±)−Δ9−THCの調製
(±)−9−クロロ−トランス−ヘキサヒドロカンナビノールの調製:実施例5からの粗製(±)−Δ8−THC(15.6g;9.63gの(±)−Δ8−THC)、塩化亜鉛(4.66g、34.23mmol)および無水ジクロロメタン(310mL)の混合物を0.5時間、25℃、Ar雰囲気下で攪拌した。その混合物を0℃に冷却し、気体塩化水素でその混合物を1.5時間、バブリングした。その混合物を氷浴(150g)に注入し、得られた二相混合物を1時間、0から5℃で攪拌した。有機相を回収し、冷水(2x100mL)、8%重炭酸ナトリウム溶液(100mL)および水(100mL)で洗浄した。有機相を無水Na2SO4(15g)で乾燥させ、濾過した。その後、その得られた濾液を減圧下、30℃で濃縮した。得られた残留物(16.3g)をn−ヘプタン(33mL)に溶解し、0℃に冷却し、(±)−9−クロロ−トランス−ヘキサヒドロカンナビノール(0.01g)を種結晶として入れた。その後、その得られた混合物を0℃で5時間攪拌し、−15℃に冷却し、−15℃で60時間攪拌した。その混合物を濾過し、得られた固体を冷n−ヘプタン(14mL)で洗浄した。その後、その固体を減圧下、50℃で乾燥させて、(±)−9−クロロ−トランス−ヘキサヒドロカンナビノールを得た。収量:5.7g;32.7%。その(±)−9−クロロ−トランス−ヘキサヒドロカンナビノールの分析(HPLC)は、それが95.2%の純度を有することを示した。ヘプタンから再結晶させた分析サンプルは、89〜90℃の融点を有した。その分析サンプルの純度(HPLC)は、99.6%であった。
【0209】
旋光度:[α]D20 0.0°(c=0.53、CHCl3)。
【0210】
1H NMRは、構造と一致した。
【0211】
13C NMR(CDCl3) δ 13.9、19.1、22.4、24.2、27.6、30.4、31.3、31.5、34.1、35.3、42.0、44.8、48.7、72.6、76.7、107.7、108.9、110.0、142.8、154.5、155.0。
【0212】
その結晶性(±)−9β−Cl−HHCの粉末X線回折図は、約7.5、11.2、13.3、14.9、15.4、15.9、19.4、19.7、20.0および22.5での回折角2θで表される特性ピークを有した。
【0213】
(±)−Δ9−THCの調製:カリウム−tert−アミレート(6.6g)、(±)−9−クロロ−トランス−ヘキサヒドロカンナビノール(5.7g、16.2mmol)および無水トルエン(280mL)の混合物を75分間、65℃で攪拌した。その混合物を25℃に冷却し、氷水(100g)に注入した。得られた有機相を回収し、冷水(2x100mL)、7%重炭酸ナトリウム、および水(2x100mL)で洗浄した。その後、有機相を無水Na2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。得られた残留物(5.35g)をn−ヘプタン(3.4mL)に溶解し、0℃に冷却し、(±)−Δ9−THC(0.01g)を種結晶として入れた。得られた混合物を0℃で5時間攪拌し、−15℃に冷却し、−15℃で60時間攪拌した。その混合物を濾過し、得られた固体を冷n−ヘプタン(4ml)で洗浄した。その後、それらの固体を減圧下、50℃で乾燥させて、(±)−Δ9−THCを得た。収量:3.3g、64.7%。その生成物の分析(HPLC)は、それが97.23%の純度を有することを示した。
【実施例17】
【0214】
5.17.(±)−Δ9−THCの精製
(±)−Δ9−THC m−ニトロベンゼンスルホネートの調製:実施例14の第二粗製(±)−Δ9−THC残留物(20.0g;7.52gの(±)−Δ9−THC)、塩化3−ニトロベンゼンスルホニル(14.5g、65.4mmol)、トリエチルアミン(9.7g)およびジクロロメタン(300mL)の混合物を25℃で1時間攪拌した。その後、その得られた混合物を冷水(200mL)で処理した。得られた有機相を回収し、10% HCl(80mL)、水(100mL)、5% NaHCO3(100mL)そして水(100mL)で順次洗浄した。その後、有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過した。得られた濾液を減圧下で濃縮して、25.8gの第一粗製(±)−Δ9−THC m−ニトロベンゼンスルホネート残留物を得た。その第一粗製(±)−Δ9−THC m−ニトロベンゼンスルホネート残留物の分析(HPLC)は、それが42.9重量%の純度を有することを示した。
【0215】
その第一粗製(±)−Δ9−THC m−ニトロベンゼンスルホネート残留物を50℃のイソプロパノール(95mL)に溶解した。得られた溶液を室温に冷却し、粉末状結晶性(±)−Δ9−THC m−ニトロベンゼンスルホネートを種結晶として入れ、0℃に冷却し、12時間、0℃で攪拌した。得られた混合物を濾過し、得られた固体を冷ヘプタン(65mL)で洗浄した。その後、それらの固体を減圧下で乾燥させて、10.3gの第二粗製(±)−Δ9−THC m−ニトロベンゼンスルホネート残留物を黄色の固体として得た。その第二粗製(±)−Δ9−THC m−ニトロベンゼンスルホネート残留物の分析(HPLC)は、それが79.1%の純度を有することを示した。
【0216】
その第二粗製(±)−Δ9−THC m−ニトロベンゼンスルホネート(10.0g)をジクロロメタン(13mL)に溶解し、得られた溶液を、10cm ヴィグロウカラム(Vigreux column)および添加口を装備した蒸留ポットに添加した。その後、その蒸留ポット内容を蒸留し、この間、その添加口を通してイソプロパノール(40mL)をその混合物に連続的に1滴ずつ添加した。カラムヘッドにおける蒸気温度が82.4℃に達したとき、蒸留を停止させた。蒸留ポットの内容物をその中で0℃から5℃に冷却し、得られた懸濁液を12時間、0℃から約5℃で攪拌した。その懸濁液を濾過し、得られた固体を冷ヘプタン(22mL)で洗浄した。その後、それらの固体を減圧下で乾燥させて、結晶性(±)−Δ9−THC m−ニトロベンゼンスルホネートを得た。収量:7.0g、59%。生成物の分析(HPLC)は、それが99.0%の純度を有することを示した。
【0217】
融点:105〜107℃。
【0218】
粉末X線回折図:約9.3、10.6、12.5、15.2、18.7、19.3、21.2および22.9で観察された、回折角2θで表される特性ピーク。
【0219】
(±)−Δ9−THCの調製:結晶性(±)−Δ9−THC m−ニトロベンゼンスルホネート(4.5g、7.5mmol)、50% NaOH(5.3g)およびメタノール(110mL)の混合物を50℃で約1〜2時間攪拌し、その後、室温に冷却した。その後、その冷却した混合物を冷水(1x150mL)で処理し、その後、そのpHが約7になるまで10% HClで処理した。得られた混合物をヘプタン(3x75mL)で抽出し、併せた有機抽出物を7% NaHCO3(100mL)および水(100mL)で洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過した。その後、得られた濾液を減圧下で濃縮して、2.5gの粗製(±)−Δ9−THCを得た。その粗生成物の分析(HPLC)は、それが92.6重量%の(±)−Δ9−THCを含有することを示した。
【0220】
その粗製(±)−Δ9−THCを40℃のヘプタン(5mL)に溶解した。得られた溶液を0℃に冷却し、粉末状結晶性(±)−Δ9−THCを種結晶として入れ、12時間、−15℃で攪拌した。得られた混合物を濾過し、得られた固体を冷ヘプタン(3.5mL)で洗浄した。その後、それらの固体を減圧下で乾燥させて、(±)−Δ9−THCをオフホワイトの結晶として得た。収量:2.1g、74%。その結晶性(±)−Δ9−THCは、25℃で、空気および実験室の照明のもとで安定であった。その生成物の分析(HPLC)は、それが99.0%の純度を有することを示した。ヘキサンから再結晶させた分析サンプルは、65〜66℃の融点を有した。
【0221】
旋光度:[α]D20 0.0°(c=0.53、CHCl3)。
【0222】
1H NMR:生成物のスペクトルは、構造と一致した。
【実施例18】
【0223】
5.18.トランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCからの(±)−Δ9−THCの調製
トランス−(−)−Δ9−THC(1a)(10g;93.5%の純度に基づいて9.35gのトランス−(−)−Δ9−THC)、実施例11からのトランス−(+)−Δ9−THC(1b)(17.0g;49.2%の純度に基づいて8.36g)およびヘプタン(28mL)の溶液を0℃に冷却し、(±)−Δ9−THC(0.02g)を種結晶として入れ、5時間、0℃で攪拌した。得られた混合物を−15℃に冷却し、さらに48時間、−15℃で攪拌した。その混合物を濾過し、得られた固体を冷n−ヘプタン(4mL)で洗浄した。その後、それらの固体を減圧下、35℃で乾燥させて、粗製(±)−Δ9−THCを得た。収量:11.4g、68%。その粗製(±)−Δ9−THCの分析(HPLC)は、それが93.6%の純度を有することを示した。
【0224】
その粗製(±)−Δ9−THC(11.2g)を50℃のヘプタン(15g)に溶解し、その混合物を攪拌しながら0℃に冷却した。得られた混合物を0℃で2時間攪拌し、−15℃に冷却し、さらに48時間、−15℃で攪拌した。その混合物を濾過し、得られた結晶質固体を冷n−ヘプタン(4mL)で洗浄した。その後、それらの固体を減圧下、35℃で乾燥させて、結晶性(±)−Δ9−THCを得た。収量:9.2g、82%。その結晶性(±)−Δ9−THCの分析(HPLC)は、それが97.7%の純度を有することを示した。
【実施例19】
【0225】
結晶性(±)−Δ9−THCの調製
(+)−Δ9−THC(2.70g;94.3%の純度に基づいて2.55gのトランス−(+)−Δ9−THC)(実施例21で説明するような結晶性(±)−Δ9−THCのエナンチオ選択的クロマトグラフィーから得たもの)および実施例9からのトランス−(−)−Δ9−THC(3.36g;82.2%の純度に基づいて2.76gのトランス−(−)−Δ9−THC)をヘプタン(9.5mL)に溶解した。得られた溶液を0℃に冷却し、結晶性(±)−Δ9−THC(0.01g)を種結晶として入れた。得られた混合物を5時間、0℃で、そして72時間、−15℃で攪拌した。得られた混合物を濾過し、得られた固体を冷ヘプタン(8mL)で洗浄した。その後、それらの固体を減圧下、35℃で乾燥させて、結晶性(±)−Δ9−THCを得た。収量:4.4g、79.7%。その生成物の分析(HPLC)は、それが98.7%の純度を有することを示した。
【実施例20】
【0226】
5.20.結晶性(±)−Δ9−THCの調製
実施例9および11でそれぞれ説明したプロセスにより、粗製トランス−(−)−Δ9−THCおよび粗製トランス−(+)−Δ9−THCを調製した。65mLのヘプタン中の粗製トランス−(−)−Δ9−THC(27.7g;10.0gのトランス−(−)−Δ9−THCを含有)および粗製トランス−(+)−Δ9−THC(24.3g;10.0gのトランス−(+)−Δ9−THCを含有),50%およびヘプタン(315mL)を、50%苛性アルカリ(caustic)(33g)、水(16.5mL)およびメタノール(190mL)を含有するメタノール−苛性アルカリ溶液と、20分間、25℃で混合した。得られた紫色のメタノール−苛性アルカリ(下)相を回収し、有機相を、50%苛性アルカリ(33g)、水(16.5mL)およびメタノール(190mL)を含有するメタノール−苛性アルカリ溶液と、20分間、25℃で再び混合した。得られたメタノール−苛性アルカリ相を回収し、併せたメタノール−苛性アルカリ相を、水中のクエン酸の10%溶液(545g)で、ゆっくりと処理した。その後、得られた黄色の混合物をヘプタン(200g)で抽出した。得られた有機相を回収し、水(150mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過した。得られた濾液を共沸蒸留によって乾燥させ、減圧下で濃縮した。得られた赤色の油(41.76g)をヘプタン(57g)に溶解し、0℃に冷却し、100mgの結晶性(±)−Δ9−THCを種結晶として入れた。得られた混合物を−15℃に冷却し、−15℃で12時間攪拌した。得られた混合物を吸引濾過し、固体を冷ヘプタン(3x10mL)で洗浄した。得られた黄色の固体を吸引しながら放置して乾燥させて、12.45gの粗製(±)−Δ9−THCを得た。
【0227】
その粗製(±)−Δ9−THC(12.45g)を50℃のヘプタン(25mL)に溶解し、得られた溶液を2〜3時間、−10℃に冷却した。得られた混合物を吸引濾過し、固体を3回、冷ヘプタン(10、10および20mL)で洗浄した。その後、それらの固体を吸引しながら放置して乾燥させて、(±)−Δ9−THCを白色の結晶として得た。収量:8.70g;収率14%(オリベトールに基づく);(−)−Δ9−THCおよび(+)−Δ9−THCに基づき収率44%。その結晶性(±)−Δ9−THCの分析(HPLC)は、それが96.45%の純度を有することを示した。
【実施例21】
【0228】
5.21.(±)−Δ9−THCからのトランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCの分割
固定相としてChiralpak(登録商標)AD(商標)20μm キラル(日本、東京のダイセル化学工業株式会社)(負荷容量 1注入あたり500mg、228nmでのUV)および移動相としてn−ヘプタン:2−プロパノール(95:5(v:v))を20℃から25℃で、200mL/分の流量で用いる、Merck カラム(210x50mm)でのフラッシュクロマトグラフィーにより、(±)−Δ9−THC(2.00g、純度97.7%)を溶離した。トランス−(−)−Δ9−THCのみが観察された画分を併せ、35℃から40℃でロータリーエバポレーターを使用して揮発成分を除去して、トランス−(−)−Δ9−THC(1a)を得た。収量:0.89g;89%。その生成物の分析(HPLC)は、それが少なくとも99.9%の純度であることを示し、すなわち、他のカンナビノイドは、検出されなかった。
【実施例22】
【0229】
5.22.(±)−Δ9−THCからのトランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCの分割
実施例15からの結晶性(±)−Δ9−THC(3.8g)を8mLのヘプタン:2−プロパノール(95:5(v:v))混合物に溶解した。得られた溶液を、Chiralpak(登録商標)AD キラル誘導体化シリカ(ペンシルバニア州、エクストンのChiral Technologies Inc.)を充填した2インチ ステンレス鋼「ロード・アンド・ロック(Load and Lock)」カラム(Varian)に注入した。溶離は、イソクラティック条件下、ヘプタン:イソプロパノール(95:5(v:v))の溶液で、約25℃の温度および250mLの溶出液/分の流量で行った。溶出液中の化合物の検出は、235nmでのUV吸収により行った。
【0230】
トランス−(+)−Δ9−THCが最初に溶出し、併せたトランス−(+)−Δ9−THC溶出液を減圧下で濃縮して、1.5gのトランス−(+)−Δ9−THC(1b)を赤みを帯びた黄色の油として得た。
【0231】
トランス−(−)−Δ9−THCは、トランス−(+)−Δ9−THCの後に溶出し、併せたトランス−(−)−Δ9−THC溶出液を減圧下で濃縮して、トランス−(−)−Δ9−THC(1a)を、濃稠で粘稠な赤みを帯びた黄色の油として得た。収量:1.4g。そのトランス−(−)−Δ9−THC生成物の分析(HPLC)は、それが99.4%の純度を有することを示した。
【実施例23】
【0232】
23.3.(±)−Δ9−THCからのトランス−(−)−Δ9−THCおよびトランス−(+)−Δ9−THCの分割
実施例13からの結晶性(±)−Δ9−THC(約2.0g)を約26mLの95:5 ヘプタン:IPA(v:v)混合物に溶解して、10重量%溶液を得た。その10%溶液の一部(約5g)を、Chiralpak(登録商標)AD 20μm キラル誘導体化シリカ(日本、東京のダイセル化学工業株式会社)を充填した220x50mm ステンレス鋼カラム(Merck)に注入した。溶離は、イソクラティック条件下、ヘプタン:2−プロパノール(95:5(v:v))溶媒の溶液で、約25℃で、および200mLの溶出液/分の流量で行った。溶出液中の生成物の検出は、228nmでのUV吸収により行った。その10%溶液の残りの部分の溶離は、約3x5g サンプルを用い、上で説明したとおりに行った。
【0233】
(+)−Δ9−THCを含有する画分を併せ、減圧下で濃縮して、(+)−Δ9−THCを、赤みを帯びた黄色の油として得た。収量:1.0g。その油の分析(HPLC)は、それが97.0%の純度を有することを示した。
【0234】
トランス−(−)−Δ9−THCを含有する画分を併せ、減圧下で濃縮して、トランス−(−)−Δ9−THC(1a)を、濃稠で粘稠な赤みを帯びた黄色の油として得た。収量:1.0g。その生成物の分析(HPLC)は、それが99.9%の純度を有することを示した。
【0235】
その生成物を冷凍庫で保管し、光および酸素から保護した。
【0236】
本発明の幾つかの態様の例証を意図する上記実施例に開示した特定の実施形態によって本発明の範囲が限定されることはなく、ならびに機能的に等価であるあらゆる実施形態が、本発明の範囲内である。実際、本明細書において示したものおよび説明したものに加えて、本発明の様々な変形が、当業者には明らかになることだろう。それらは、添付の特許請求の範囲内に入ると解釈する。
【0237】
多数の参考文献を引用したが、それらの全開示が、本明細書に参考として組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノール組成物が、カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも約98重量%のトランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールを含み、かつトランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノール組成物が、カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも約98重量%のトランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールを含む、トランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールまたはトランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノール組成物。
【請求項2】
トランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノール組成物が、カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも約99.0重量%のトランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールを含み、かつトランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノール組成物が、カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも約99.0重量%のトランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールを含む、請求項1に記載のトランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールまたはトランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノール組成物。
【請求項3】
カンナビノイドの総量を基準にして少なくとも99.0重量%のトランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールおよび0.05%未満のΔ9−テトラヒドロカンナビノール酸を含む、請求項2に記載のトランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノール組成物。
【請求項4】
カンナビノイドの総量を基準にして、少なくとも99.5重量%、好ましくは少なくとも99.9重量%、さらに好ましくは約99.95重量%以下、さらにいっそう好ましくは約99.98重量%以下のトランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールを含む、請求項3に記載のトランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノール組成物。
【請求項5】
(±)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールおよび溶出溶媒を含む組成物をキラル固定相で分離させて、トランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノール組成物をもたらすことを含む、トランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノール組成物の調製方法、または
(±)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールおよび溶出溶媒を含む組成物をキラル固定相で分離させて、トランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノール組成物をもたらすことを含む、トランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノール組成物の調製方法であって、
前記(±)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールが、結晶性(±)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールから得られる、前記方法。
【請求項6】
前記トランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノール組成物が、トランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールおよびトランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールの総量を基準にして、少なくとも約98重量%のトランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールを含み;ならびに
前記トランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノール組成物が、トランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールおよびトランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールの総量を基準にして、少なくとも約98重量%のトランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールを含む方法であって、
前記(±)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールが、トランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノール、トランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールおよび非極性有機溶媒を含む第一組成物からトランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールおよびトランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールを晶出させて、結晶性(±)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールおよび液相を生じさせることにより得たものである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記トランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノール組成物が、トランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールおよびトランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールの総量を基準にして、少なくとも約99.5重量%、好ましくは少なくとも約99.8重量%のトランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記トランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノール組成物が、カンナビノイドの総量を基準にして、少なくとも約98重量%、好ましくは少なくとも約99重量%、およびさらに好ましくは少なくとも約99.5重量%のトランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールを含む、請求項5から7に記載の方法。
【請求項9】
前記トランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールが、トランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールのモル当量あたり、約0.75から約1.25モル当量、好ましくは約0.9から約1.1モル当量、さらに好ましくは約0.95から約1.05モル当量、およびさらにいっそう好ましくは約1モル当量で、前記第一組成物中に存在する、請求項5から8に記載の方法。
【請求項10】
前記(±)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールが、カンナビノイドの総量を基準にして、少なくとも約95重量%、好ましくは少なくとも約98重量%、およびさらに好ましくは少なくとも約99重量%のトランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールおよびトランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールを含む、請求項5から9に記載の方法。
【請求項11】
前記非極性有機溶媒が、直鎖または分枝鎖(C4〜C10)脂肪族炭化水素、(C4〜C10)脂環式炭化水素、またはこれらの任意の混合物であり、この場合の直鎖または分枝鎖炭化水素が、好ましくは、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、またはこれらの任意の混合物であり、さらに好ましくはn−ヘプタンである、請求項5から10に記載の方法。
【請求項12】
前記第一組成物が、(±)−Δ9−テトラヒドロカンナビノール種結晶をさらに含む、請求項5から11に記載の方法。
【請求項13】
前記溶出溶媒が、1つもしくはそれ以上の−OH、−OR1、−OC(O)R1、−C(O)OR1、−ハロまたは−CNで置換されている直鎖もしくは分枝鎖(C1〜C4)アルキル;直鎖もしくは分枝鎖(C4〜C10)脂肪族炭化水素;1つもしくはそれ以上の−R1で場合により置換されている(C5〜C7)脂環式炭化水素;1つもしくはそれ以上の−R1で場合により置換されている(C4〜C7)環状エーテル;1つもしくはそれ以上の−R1、−ハロ、−CH2(ハロ)、−CH(ハロ)2、−C(ハロ)3、−O(C1〜C6)アルキルで場合により置換されている芳香族炭化水素;またはこれらの任意の混合物であり[この場合のR1は、(C1〜C4)アルキルである]、好ましくは、前記溶出溶媒が、1つまたはそれ以上の−OH、−OR1、−OC(O)R1、−C(O)OR1、−ハロ、または−CNで置換されている直鎖または分枝鎖(C1〜C4)アルキルであり、さらに好ましくは、前記溶出溶媒が、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、塩化メチレン、またはこれらの任意の混合物であり、ならびにさらにいっそう好ましくは、前記溶出溶媒が、n−ヘプタンと2−プロパノールの混合物である、請求項5から12に記載の方法。
【請求項14】
前記キラル固定相が、無機酸化物に結合したペンダント基を有する無機酸化物であり、好ましくは、前記無機酸化物が、シリカまたはアルミナであり、ならびにさらに好ましくは前記無機酸化物が、シリカであり、前記ペンダント基が、アミローストリス(3,5−ジメチルフェニルカルバメート)である、請求項5から13に記載の方法。
【請求項15】
トランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノール、トランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールおよび非極性有機溶媒を含む第一組成物から、トランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールおよびトランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールを晶出させて、結晶性(±)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールを生じさせることを含む、結晶性(±)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールの製造方法であって、
前記第一組成物が、
(a)(i)第一有機相と、(ii)トランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールおよびトランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールを含有するアルコール−苛性アルカリ相とを含む、二相組成物を形成すること;
(b)そのアルコール−苛性アルカリ相からトランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールおよびトランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールを分離すること;ならびに
(c)段階(b)からのトランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールと、トランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールと、非極性有機溶媒とを含む、第一組成物を形成すること
により得られる方法。
【請求項16】
トランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノール、トランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールおよび非極性溶媒を含む第一組成物から、トランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールおよびトランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールを晶出させて、結晶性(±)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールを生じさせることを含む、結晶性(±)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールの製造方法であって、
前記第一組成物が、
(a)(i)第一有機相と、(ii)トランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールを含有するアルコール−苛性アルカリ相とを含む、二相組成物を形成すること;
(b)そのアルコール−苛性アルカリ相からトランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールを分離すること;
(c)段階(b)からのトランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールを、トランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールおよび非極性溶媒と接触させて、第一組成物を形成すること
によって;または
(a)(i)第一有機相と、(ii)トランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールを含有するアルコール−苛性アルカリ相とを含む、二相組成物を形成すること;
(b)そのアルコール−苛性アルカリ相からトランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールを分離すること;
(c)段階(b)からのトランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールを、トランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールおよび非極性溶媒と接触させて、第一組成物を形成すること
によって得られる方法。
【請求項17】
前記結晶性(±)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールが、請求項15または16に記載の方法から得られる、請求項5から14に記載の方法。
【請求項18】
請求項5から17に記載の方法によって得られる、トランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノール組成物またはトランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノール組成物。
【請求項19】
請求項5から17に記載の方法によって得ることができる、請求項1から4に記載のトランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノール組成物またはトランス−(+)−Δ9−テトラヒドロカンナビノール組成物。
【請求項20】
疼痛、嘔吐、食欲不振または体重減少を治療するための方法であって、その必要がある患者に請求項1から4、18または19に記載のトランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノール組成物の有効量を投与することを含む方法。
【請求項21】
疼痛、嘔吐、食欲不振または体重減少の治療用の医薬品を調製するための、請求項1から4、18または19に記載のトランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノール組成物の使用。
【請求項22】
請求項1から4、18または19に記載のトランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノール組成物の有効量および医薬的に許容される担体を含む剤形であって、前記剤形が好ましくはカプセル状剤形であり、ならびに前記医薬的に許容される担体が好ましくはゴマ油である剤形。
【請求項23】
前記トランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールの量が、約0.1mgから約20mgである、請求項22に記載のカプセル状医薬剤形。
【請求項24】
前記トランス−(−)−Δ9−テトラヒドロカンナビノールの量が、約2.5mg、約5mgまたは約10mgである、請求項23に記載のカプセル状医薬剤形。

【公表番号】特表2008−520608(P2008−520608A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541798(P2007−541798)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012378
【国際公開番号】WO2006/053766
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(599108792)ユーロ−セルティーク エス.エイ. (134)
【Fターム(参考)】