説明

トランスミッション用の潤滑剤組成物

【課題】車両の省燃費性能を大幅に向上することができ、さらに、動作寿命も長い潤滑剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明にかかる潤滑剤組成物は、100℃での動粘度が5.5〜7mm/sであり、耐摩耗剤および/または極圧剤と、式:RCOOCHで表される少なくとも1種の脂肪酸メチルエステルを少なくとも30重量%とを含み、さらに、(i)100℃での動粘度が90〜3,000mm/sであり、かつ、重量平均分子量が2,500ダルトンを超える重質ポリαオレフィン類、あるいは、(ii)100℃での動粘度が1.5〜6mm/sであり、40℃での動粘度が4〜30mm/sであり、かつ、重量平均分子量が500ダルトン未満である軽質ポリαオレフィン類と、重量平均分子量が30,000ダルトン未満であるポリメタクリレート系化合物との組合せを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスミッション用の潤滑剤組成物、特に、ギアボックス用の潤滑剤組成物に関する。さらに、本発明は、自動車の燃費を減少させる潤滑剤組成物の使用に関する。本発明にかかる組成物は、あらゆる種類の車両に適しており、特に、軽量自動車両(light duty vehicle)に好適であり、そして、ハイブリッドエンジンを備える車両(ハイブリッド車両)に極めて好適である。
【背景技術】
【0002】
今日の環境に対する懸念、特に、二酸化炭素の排出量の軽減に関する懸念により、軽量自動車両やトラック車両の燃費、さらには、建設現場用機械や農業用機械などの燃費を減少させることが急務となっている。特に、エンジン、トランスミッション、減速ギア、コンプレッサ、油圧システムなどに関して、エネルギー消費量の低い装置の需要が高まっている。
【0003】
そのため、これらの装置で用いる潤滑剤としては、摩擦や飛沫による損失が最小限に抑えられた潤滑剤が望ましい。低粘度の潤滑油によってトランスミッションの省燃費性を向上させることが可能であると、当該技術分野において知られている。
【0004】
エンジン/ギアボックスのアセンブリを含んだパワートレイン(PT)のベンチテストによると、省燃費率(燃料節約率)は、トランスミッション用潤滑剤の動作温度(自動車のショートトリップ時で一般的に20〜40℃に相当)での粘度に直接比例している。ASTM D445規格に準拠して動作温度で測定された際の動粘度が約20mm/sであるオイルが、最も良好な性能を有する。
【0005】
車両の製造元は、自家用車両のトランスミッション用のオイルの規格として、ASTM D445規格に準拠して測定される100℃での粘度(KV100)を5〜15mm/s、一般的には6〜9mm/s、好ましくは6.5mm/s前後と体系的に定めている。
【0006】
この規格は、ギアボックス、軸受、ギアなどの機械設計に配慮したものである。事実、潤滑剤の粘度が約5mm/sの下限粘度に満たないものは、部品の荷重を十分支持することができないため、部品面積単位の荷重を軽減するために、部品の寸法変更を余儀なくされる。
【0007】
オイルの粘度挙動は、そのオイルに配合される基剤に大きく影響される。一般的な基剤の配合量は、オイルに対して少なくとも50質量%である。
【0008】
したがって、高い省燃費率を有するトランスミッション用のオイル、さらには、高い省燃費性、すなわち、いわゆる《燃料エコ》性能を有するトランスミッション用のオイルを処方したいのであれば、粘度指数VIが極めて高い潤滑剤基剤を使用するのが望ましい。ASTM D2270規格に従い測定される基剤の粘度指数VIは、ASTM D445規格に従い測定される40℃での動粘度(KV40)および100℃での動粘度(KV100)に基づき、当該基剤の粘度の温度依存的変化に対する限界を定量化したものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来既知の鉱物由来の基剤の粘度指数VIは、最大で約200である。一部の合成由来の基油(合成油)には、約400の極めて高い粘度指数VIにまで達するものも見受けられるが、このような高い粘度指数VIでは、粘度が高過ぎたり、添加剤の可溶性が低下したりするので、ギアを保護したり摩擦を制御したりするといった、製造元が期待する潤滑剤用添加剤の効果を得ることができない。そのため、燃料エコ性能を有するトランスミッション用のオイルを処方するうえで、このような基剤を主成分とするのは難しい。さらに、このような基剤は、コストや入手容易性の面にも問題があり、それらを主成分とした潤滑剤を大規模産業化するのは困難である。
【0010】
一部の天然由来の脂肪酸エステルには、低粘度であると同時に、約250、さらには約300以上の極めて高い粘度指数VIを固有的に兼ね備えたものがある。しかしながら、当業者は、これらのエステルを自動車潤滑剤、特に、エンジンやトランスミッションの用途に使用することに抵抗を感じる。というのも、この種のエステルは、室温で液体であり、かつ、脂肪酸鎖に少なくとも1つの二重結合を有するため、耐酸化能力が極めて低く、動作時に劣化する恐れがあるからである。
【0011】
特に、このようなエステルを使用した基剤は、触媒存在下および触媒不在下の両方で高温酸化試験(上記の用途に対して自動車製造業者が設けた規格の一種)について満足のいく結果を出すことができない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことに、出願人は、250超、好ましくは280超、より好ましくは300超、さらに好ましくは約320以上に達する極めて高い粘度指数VIを有しながら動作寿命も既存の製品に比べて申し分のないトランスミッション用のオイルを、天然由来の脂肪酸メチルエステル系基剤から処方できることを見出した。ギアボックス用のオイルは《一生持続》条件に合致するように、すなわち、車両の寿命期間中決して空にならないように調製されている。
【0013】
特定の理論に頼らずとも、このようなエステルによって摩擦部品の表面に薄膜が形成されることにより、大きな負荷下でも流体力学的条件が維持され、動作時のオイルの加熱が抑えられることは明白である。したがって、規格で定められた酸化試験の結果が乏しくとも、このようなエステルの動作性能は極めて満足のいくものとなる。
【0014】
本発明は、ギアボックス用の潤滑剤組成物に関し、このギアボックス用の潤滑剤組成物は、ASTM D445規格に従い測定される100℃での動粘度が5.5〜7mm/sであり、
−リン含有、硫黄含有、またはリン−硫黄含有の、少なくとも1種の耐摩耗剤および/または極圧剤と、
−式:RCOOCHで表される少なくとも1種の脂肪酸メチルエステル(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数13〜19のパラフィン基またはオレフィン基である)を少なくとも30重量%と、
を含み、さらに、
(i)ASTM D445規格に従い測定される100℃での動粘度が40〜3,000mm/sであり、かつ、重量平均分子量が2,500ダルトンを超える重質ポリαオレフィンの群から選択される少なくとも1種の化合物、または
(ii)ASTM D445規格に従い測定される100℃での動粘度が1.5〜6mm/sであり、ASTM D445規格に従い測定される40℃での動粘度が4〜32mm/sであり、かつ、重量平均分子量が500ダルトン未満である軽質ポリαオレフィンの群から選択される少なくとも1種の化合物と、重量平均分子量が30,000ダルトン未満である少なくとも1種のポリメタクリレート系化合物との組合せ、
を含む。
【0015】
一実施形態において、本発明にかかる潤滑剤組成物は、式:RCOOCHで表される少なくとも1種の脂肪酸メチルエステル(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数15〜19、より好ましくは炭素数17のモノ、ジまたはトリ不飽和オレフィン基である)を少なくとも20重量%含む。
【0016】
一実施形態において、本発明にかかる潤滑剤組成物は、式:RCOOCHで表される少なくとも1種の脂肪酸メチルエステル(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数15〜19、より好ましくは炭素数17のモノ不飽和オレフィン基である)を少なくとも20重量%含む。
【0017】
好ましくは、オレフィン基Rおよび/またはRの不飽和結合はシス配置である。
【0018】
好ましくは、本発明にかかる潤滑剤組成物において、重質ポリαオレフィンの含有量は少なくとも10質量%であり、脂肪酸メチルエステルの含有量は少なくとも60質量%である。
【0019】
一実施形態において、本発明にかかる潤滑剤組成物は、式:RCOOCHで表される少なくとも1種の脂肪酸メチルエステル(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数15〜19、より好ましくは炭素数17のモノ、ジまたはトリ不飽和オレフィン基である)を少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも55重量%含む。
【0020】
一実施形態において、本発明にかかる潤滑剤組成物は、式:RCOOCHで表される少なくとも1種の脂肪酸メチルエステル(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数15〜19、より好ましくは炭素数17のモノ不飽和オレフィン基である)を少なくとも45重量%、好ましくは少なくとも50重量%含む。
【0021】
好ましくは、本発明にかかる潤滑剤組成物において、軽質ポリαオレフィンの含有量は少なくとも10質量%であり、脂肪酸メチルエステルとポリメタクリレート系化合物との混合物の含有量は少なくとも60質量%である。
【0022】
好ましくは、本発明にかかる潤滑剤組成物において、ポリメタクリレート系化合物の質量%と脂肪酸エステルの質量%との比は0.8〜1.2である。
【0023】
一実施形態において、本発明にかかる潤滑剤組成物は、式:RCOOCHで表される少なくとも1種の脂肪酸メチルエステル(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数13〜19のパラフィン基またはオレフィン基である)を、当該潤滑剤組成物に含まれる脂肪酸エステルの全重量に対して少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%含む。
【0024】
一実施形態において、本発明にかかる潤滑剤組成物は、式:RCOOCHで表される少なくとも1種の脂肪酸メチルエステル(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数15〜19、より好ましくは炭素数17のモノ、ジまたはトリ不飽和オレフィン基である)を、当該潤滑剤組成物に含まれる脂肪酸エステルの全重量に対して少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%含む。
【0025】
一実施形態において、本発明にかかる潤滑剤組成物は、式:RCOOCHで表される少なくとも1種の脂肪酸メチルエステル(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数15〜19、より好ましくは炭素数17のモノ不飽和オレフィン基である)を、当該潤滑剤組成物に含まれる脂肪酸エステルの全重量に対して少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%含む。
【0026】
好ましくは、オレフィン基Rおよび/またはRの不飽和結合はシス配置である。
【0027】
一実施形態において、本発明にかかる潤滑剤組成物は、飽和脂肪酸エステルを、当該潤滑剤組成物に含まれる脂肪酸エステルの全重量に対して最大15%、好ましくは最大10%含む。
【0028】
一実施形態において、本発明にかかる潤滑剤組成物では、ASTM D2622規格に従い測定される硫黄元素の含有質量と、ASTM D5185規格に従い測定されるリン元素の含有量との比S/Pが3〜60、好ましくは30未満、より好ましくは20未満、さらに好ましくは10未満、なおいっそう好ましくは5〜10である。
【0029】
一実施形態において、本発明にかかる潤滑剤組成物は、ASTM D2270規格に従い測定される粘度指数VIが250を超え、好ましくは280を超え、より好ましくは300を超える。
【0030】
本発明の他の構成は、前述したギアボックス用の潤滑剤組成物の使用に関する。このとき、ギアボックス用の潤滑剤組成物は、各国の特定大気汚染物の上限排出量の設定したDirective EEC90/C81/01に準拠したNEDC試験(「欧州における軽量自動車の認可のための排出量試験サイクル」Brussels, 2001)の規格条件下で測定される、マニュアルギアボックス、オートマチックギアボックス、またはセミオートマチックギアボックスを装備した自動車の省燃費率が1%を超え、好ましくは2.5%を超える用途に使用される。
【0031】
好ましくは、省燃費率は、軽量自動車両のエンジン、好ましくはハイブリッド車両のエンジンの省燃費率である。
【0032】
本発明の好ましい使用は、マニュアルギアボックス、またはセミオートマチックギアボックスが装備された車両に対する使用に関する。
【0033】
最後に、本発明は、粘度指数VIが250を超え、かつ、100℃での動粘度が7mm/s未満である、式:RCOOCHで表される脂肪酸メチルエステル(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数13〜19のパラフィン基またはオレフィン基である)を少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも90重量%含む脂肪酸メチルエステル系基剤の使用に関する。このとき、そのような脂肪酸メチルエステル系基剤は、各国の特定大気汚染物の上限排出量の設定したDirective EEC90/C81/01に準拠したNEDC試験(「欧州における軽量自動車の認可のための排出量試験サイクル」Brussels, 2001)の規格条件下で、1%を超える省燃費率、好ましくは2.5%を超える省燃費率を達成可能なギアボックス用のオイルを配合するうえでの潤滑剤基剤として使用される。
【0034】
好ましくは、式:RCOOCHで表される少なくとも1種の脂肪酸メチルエステル(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数15〜19、より好ましくは炭素数17のモノ不飽和オレフィン基、ジ不飽和オレフィン基、またはトリ不飽和オレフィン基である)を少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも80%含む組成物が使用される。
【0035】
好ましくは、式:RCOOCHで表される少なくとも1種の脂肪酸メチルエステル(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数15〜19、より好ましくは炭素数17のモノ不飽和オレフィン基である)を少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%含む組成物が使用される。
【0036】
好ましくは、オレフィン基Rおよび/またはRの不飽和結合がシス配置である組成物が使用される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】Directive EEC90/C81/01に準拠したNEDC(新欧州ドライビングサイクル)のモデルサイクルにおけるECE15サイクルの性質とEUDCサイクルの性質とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明にかかる潤滑剤組成物は、トランスミッション用の組成物、特に、ギアボックス用の組成物であり、車両、特に、軽量自動車両、さらには、ハイブリッド車両の大幅な省燃費率(燃料節約率)をもたらす。
【0039】
上記の省燃費率は、パワートレインをベンチテストにかけるか、あるいは、実際の車両をNEDC(新欧州ドライビングサイクル)のモデルサイクル(ECE/EUDCサイクルとも称される)(「欧州における軽量自動車の認可のための排出量試験サイクル」Brussels, 2001)にかけることで測定される。なお、モデルサイクルは、各国の特定大気汚染物の上限排出量を設定したDirective EEC90/C81/01に準拠している。
【0040】
省燃費率は、動粘度の低さに関係しており、特に、ASTM D445規格に従い測定される40℃での動粘度(ショートトリップ時の動作温度での動粘度に相当)との間に強い相関性を有する。なお、本発明にかかる潤滑剤組成物のASTM D445規格に従い測定される40℃での動粘度は、一般的に、約20から約25mm/sである。
【0041】
機械部品の保護を踏まえて、本発明にかかるオイルは、ASTM D445規格に従い測定される100℃での動粘度が、車両の製造元が求める5.5〜7mm/s、好ましくは6〜7mm/s、より好ましくは6〜6.7mm/sである。
【0042】
機械部品を保護すると同時に省燃費性を確保するために、本発明にかかるオイルの粘度指数VI(ASTM 2270)は、250超、好ましくは280超、より好ましくは300超、さらに好ましくは約320以上に設定される。
【0043】
この目的のため、本発明にかかるオイルは、100℃での動粘度が7mm/s未満であり且つ高い粘度指数VI(250超)を有する脂肪酸メチルエステル系の潤滑剤基剤が配合され、かつ、後述するように、重質ポリαオレフィン(重質PAO)、または軽質ポリαオレフィンとポリメタクリレート系化合物(PMA)、および/または変形例として、このPMAの代わりに、当該技術分野において増ちょう剤であるとして知られるその他の化合物)との組合せを含む。
【0044】
詳細には、本発明にかかるオイルは、式:RCOOCHで表される少なくとも1種の脂肪酸メチルエステル(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数13〜19のパラフィン基またはオレフィン基である)を少なくとも30重量%含む。この下限の含有量でも、動作時に低い粘度および高い粘度指数VIの両方を実現することができ、これにより、省燃費効果が得られる。
【0045】
本発明にかかるオイルは、そのような少なくとも1種の脂肪酸メチルエステルを少なくとも35重量%、少なくとも50重量%、さらには、少なくとも60、70、80重量%含んでいてもよい。なお、このようなエステルが70重量%超、あるいは、80重量%超の高含有量で含まれている場合、オイルの使用期間が長くなるにつれて形成される不溶性物質の量に望ましくない影響を及ぼす可能性がある。
【0046】
そのため、このようなエステルの含有量は、一般的に30〜80重量%、好ましくは30〜70重量%に設定される。軽質PAOとPMAとの組合せを備える変形例では、当該エステルの含有量は、一般的に30〜50重量%、好ましくは30〜40重量%に設定される。
【0047】
好ましくは、前記脂肪酸メチルエステルの多くは、式:RCOOCH(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数15〜19、より好ましくは炭素数17のモノ、ジまたはトリ不飽和オレフィン基である)で表される脂肪酸メチルエステルである。好ましくは、本発明にかかるギアボックス用の潤滑剤組成物は、このようなエステルを少なくとも20重量%、より好ましくは25重量%含む。
【0048】
より好ましくは、前記脂肪酸メチルエステルの多くは、式:RCOOCH(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数15〜19、より好ましくは炭素数17のモノ不飽和オレフィン基である)で表される脂肪酸メチルエステルである。好ましくは、本発明にかかるギアボックス用の潤滑剤組成物は、このようなエステルを少なくとも20重量%含む。
【0049】
好ましくは、上記の全てのエステルは、後述の脂肪酸メチルエステル系基剤から得られたものである。
【0050】
最終的な潤滑剤組成物の粘度指数VIが250超、好ましくは280超、さらに好ましくは300超、なおいっそう好ましくは約320以上となり且つ100℃での動粘度が5.5〜7mm/s、好ましくは6〜6.5mm/sになるのであれば、本発明にかかる潤滑剤の基剤系は、他種の基剤で補ってもよい。
【0051】
そのような他種の基剤は、鉱物由来であっても、合成由来であっても、天然由来であってもよい。しかしながら、後述の脂肪酸メチルエステル系基剤以外の脂肪酸エステルを含む基剤は、できる限り使用しないのが好ましい。
【0052】
(脂肪酸メチルエステル系基剤)
本発明にかかる潤滑剤の処方に用いられる脂肪酸エステル系の基剤(本明細書では「脂肪酸メチルエステル系基剤」と称する)は、式:RCOOCHで表される脂肪酸メチルエステル(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数13〜19のパラフィン基またはオレフィン基である)を少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%、あるいは、少なくとも92重量%、より好ましくは95重量%、さらに好ましくは少なくとも98重量%、なおいっそう好ましくは少なくとも99重量%含む、脂肪酸エステル混合物である。
【0053】
好ましくは、本発明にかかる潤滑剤に使用される脂肪酸メチルエステル系基剤は、エチルエステル系の不純物をほぼ含んでおらず、一般的に、炭素数2以上のアルコールから誘導されたエステルを含まない。
【0054】
さらに、脂肪酸メチルエステル系基剤は、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドを実質的に含まず、さらに、ステロール系化合物またはトコフェロール系化合物(ビタミンE系化合物)を実質的に含まない。
【0055】
これらのような不純物は、エステル系基剤の粘度レベルおよび粘度指数VIに影響を及ぼし、特に、粘度指数VIを所望数値未満に下げる(例えば、250未満に相当)可能性がある。
【0056】
したがって、上記のような不純物の総含有量は、本発明にかかる潤滑剤を処方するのに使用されるエステル系基剤中の15質量%未満、好ましくは10質量%未満、8質量%未満または5質量%未満、さらに好ましくは2質量%未満または1質量%未満であってもよい。
【0057】
好ましくは、脂肪酸メチルエステル系基剤は、式:RCOOCHで表される少なくとも1種の脂肪酸メチルエステル(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数15〜19、より好ましくは炭素数17のモノ、ジまたはトリ不飽和オレフィン基である)を少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも75重量%、さらに好ましくは少なくとも80重量%含む。
【0058】
好ましくは、脂肪酸メチルエステル系基剤は、式:RCOOCHで表される少なくとも1種の脂肪酸メチルエステル(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数15〜19、より好ましくは炭素数17のモノ不飽和オレフィン基である)を少なくとも65重量%、好ましくは少なくとも70重量%含む。
【0059】
好ましくは、基剤のエステルを構成する脂肪酸の平均鎖長は17〜19である。
【0060】
好ましくは、脂肪酸メチルエステル系基剤に含まれるオレフィン基Rおよび/またはRの少なくとも1つの不飽和結合がシス配置である。
【0061】
《シス》配置は、二重結合C=Cの片方の同じ側に水素原子が配置された《舟形》のことを指し、《トランス》配置は椅子形のことを指す。
【0062】
前述のモノ不飽和脂肪酸メチルエステルは、シス配置とトランス配置のどちらを取るのかによってその技術的特性が変化する。シス型二重結合は炭素鎖に屈曲構造を形成し、トランス型二重結合は伸長構造を形成する。
【0063】
自然界に存在する不飽和脂肪酸の大部分は《シス》配置を取る。自然界に存在する《トランス》配置の不飽和脂肪酸は、乳脂肪に約2〜8重量%含まれ、牛肉脂肪や羊肉脂肪に約4.5質量%含まれている。しかしながら、《トランス》配置の不飽和脂肪酸の多くは、油類に含まれる多価不飽和脂肪鎖の水添工程によって得るのが一般的である。
【0064】
好ましくは、脂肪酸メチルエステル系基剤における、オレフィン鎖の少なくとも1つの不飽和結合がトランス配置である不飽和脂肪酸メチルエステル(以降、《トランス型不飽和脂肪酸メチルエステル》と称することがある)の含有量は、5重量%未満である。
【0065】
脂肪酸エステルは、天然資源由来の脂肪酸から得られたものであってもよいし、あるいは、合成脂肪酸から得られたものであってもよく、例えば、石油のカット(留分)から得られたものであってもよい。
【0066】
本明細書において脂肪酸とは、炭素数8〜24の炭化水素直鎖を有する一価の酸(モノ酸)のことを指す。この脂肪酸は、飽和脂肪酸であっても、一価不飽和脂肪酸であっても、多価不飽和脂肪酸であってもよい。天然資源由来の脂肪酸の炭素数は偶数のものが多い。
【0067】
脂肪酸メチルエステルとしては、例えば、パルミトオレイン酸(16:1)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リノレン酸(18:3)、エイコセノン酸(20:1)、エルカ酸(22:1)、ネルボン酸(24:1)などのメチルエステルが挙げられる。オレイン酸(18:1)のメチルエステルが最も好ましい。
【0068】
上述の脂肪酸メチルエステルの中でも、特に、パルミトオレイン酸(16:1)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)のメチルエステルが、主成分として好ましい。オレイン酸のメチルエステルが最も好ましい。
【0069】
上述の脂肪酸は、例えば、トリグリセリド、すなわち、グリセロールトリエステルの形態で植物油中に含まれている。トリグリセリドを加水分解すると、対応する脂肪酸とグリセロールとが得られる。メチルエステルは、このようにして得られる脂肪酸のエステル化によって得ることができ、あるいは、油とメタノールとのエステル交換反応によって直接得ることができる。
【0070】
天然由来の油(天然油)として、ココナッツオイル、パーム油、オリーブオイル、ピーナッツオイル、菜種油やひまわり油(一般的な菜種油もしくはひまわり油、または高オレイン酸含有の菜種油もしくはひまわり油)、大豆油、綿実油、牛脂油などが挙げられる。
【0071】
好ましくは、本発明に用いられる脂肪酸メチルエステル系基剤は、天然由来、特に、植物油由来であり、例えば、パーム油、オリーブオイル、ピーナッツオイル、一般的な菜種油やひまわり油、高オレイン酸含有の菜種油やひまわり油などから得られたものである。
【0072】
本発明に用いられる脂肪酸メチルエステル系基剤は、一般的に、ASTM D445規格に従い測定される100℃での動粘度が1.5〜10mm/sであり、好ましくは1.5〜7mm/sであり、ASTM D2270規格に従い測定される粘度指数VIが約250〜約400である。
【0073】
本発明に用いられる脂肪酸メチルエステル系基剤の粘度指数VIは、一般的に250を超えており、好ましくは280を超え、より好ましくは300を超え、さらに好ましくは約320以上である。
【0074】
これら脂肪酸メチルエステル系基剤は、本発明にかかる潤滑剤組成物の基剤として使用され、最終的な潤滑剤製品の少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも35重量%を占める。潤滑剤における脂肪酸メチルエステル系基剤の含有量の上限は、潤滑剤の総重量に対して少なくとも約50%、少なくとも60%、少なくとも70%、あるいは、少なくとも80%としてもよい。
【0075】
このように高い粘度指数VIを有する脂肪酸メチルエステル系基剤が配合された本発明にかかる潤滑剤は、例えばギアボックス用のオイルとして使用された際に、優れた省燃費性をもたらす。
【0076】
このような潤滑剤は、GFCT−021−A−90において空気バブリングを窒素バブリングに置き換えた試験で測定される熱安定性が、極めて優れている。
【0077】
不確実性を避ける観点からは、本発明にかかる組成物における脂肪酸メチルエステルの含有量の下限30%、および上述の脂肪酸メチルエステル系基剤における脂肪酸メチルエステルの含有量の下限85%には、硫黄含有化合物エステル、リン含有化合物エステル、またはリン−硫黄含有化合物エステルは含まれない。これらのエステルは、耐摩耗剤および/または極圧剤として知られている。
【0078】
さらに、上記の数字には、摩擦調整剤として知られるホウ酸エステルも含まれない。
【0079】
(ポリαオレフィンとポリメタクリレート系化合物(PMA))
[重質ポリαオレフィン]
本発明にかかる潤滑剤組成物には、重質ポリαオレフィンまたは高粘度ポリαオレフィンと称されるポリαオレフィンが含まれていてもよい。これを、(任意でポリメタクリレート系化合物(PMA)と共に)上記エステルと混合することにより、本発明にかかる潤滑剤組成物において、250を超える粘度指数VIを維持しながら所望の目標粘度(100℃で5.5〜7mm/s、好ましくは6〜7mm/s、より好ましくは6〜6.7mm/sの粘度)を得ることができる。
【0080】
本発明にかかる組成物に投入(混合)される《重質》ポリαオレフィン(《重質》PAO)系化合物、すなわち、《高粘度》ポリαオレフィン系化合物は、ASTM D445規格に従い測定される100℃での動粘度が40〜3,000mm/s、好ましくは150〜1,500mm/s、より好ましくは300〜1,200mm/sであるポリαオレフィン(PAO)から選択される。
【0081】
本発明にかかる潤滑剤組成物における重質ポリαオレフィンの重量平均分子量Mwは、2,500ダルトンを超えており、一般的には約4,000〜約50,000ダルトンである。
【0082】
本発明にかかる潤滑剤組成物における重質ポリαオレフィンの数平均分子量Mnは、2,500ダルトンを超えており、一般的には3,000〜20,000であり、好ましくは3,000〜10,000であり、より好ましくは3,000〜7,000である。
【0083】
本発明にかかる潤滑剤組成物における重質ポリαオレフィンの多分散度(分子量分布)Mw/Mnは、約1.1〜約5であるか、または約5以上である。
【0084】
本発明にかかる潤滑剤組成物における重質ポリαオレフィンは、例えば、オクテン、デセン、ドデセン、テトラデセン、ヘキサデセンなどの単量体単独か、または他種のオレフィンとの混合物から得られたものである。
【0085】
本発明にかかる潤滑剤組成物中の重質ポリαオレフィンは、単一の重質ポリαオレフィンであってもよいし、複数の重質ポリαオレフィンの混合物であってもよく、その含有量は、組成物中の少なくとも10重量%であってもよい。好ましくは、本発明にかかる組成物における重質ポリαオレフィンの含有量は、添加剤の可溶性が制限されたり、組成物の粘度が高くなり過ぎないように、組成物中30重量%未満とされる。言い換えれば、重質ポリαオレフィンの含有量は、組成物を所望の粘度にするのに十分でありながら、添加剤の可溶性の問題が生じたり組成物の粘度が高くなり過ぎない所定範囲内の重量%に設定される。
【0086】
本発明にかかるギアボックス用の潤滑剤組成物における重質ポリαオレフィンの含有量は、一般的に10〜25重量%、10〜20重量%、15〜25重量%、または10〜18重量%であり、好ましくは15〜18重量%である。
【0087】
本発明にかかるギアボックス用の潤滑剤組成物が上記重質ポリαオレフィン(重質PAO)を含むものである場合、好ましくは、当該組成物における式:RCOOCHで表される脂肪酸メチルエステル(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数13〜19のパラフィン基またはオレフィン基である)の含有量は組成物中60%を超える。
【0088】
好ましくは、本発明にかかる組成物における式:RCOOCHで表される少なくとも1種の脂肪酸メチルエステル(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数15〜19、より好ましくは炭素数17のモノ、ジまたはトリ不飽和オレフィン基である)の含有量が、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも55重量%である。
【0089】
より好ましくは、本発明にかかる組成物における式:RCOOCHで表される少なくとも1種の脂肪酸メチルエステル(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数15〜19、より好ましくは炭素数17のモノ不飽和オレフィン基である)の含有量が、少なくとも45重量%、好ましくは少なくとも50重量%である。
【0090】
[ポリメタクリレート系化合物(PMA)と軽質ポリαオレフィン]
本発明にかかる組成物には、十分量の不飽和脂肪酸メチルエステル基剤が配合されてもよい(例えば、C12〜C24の不飽和脂肪酸メチルエステルが、基剤の重量に対して50%以上または潤滑剤の総重量に対して約35%以上、好ましくはC16〜C24の不飽和脂肪酸メチルエステルが、基剤の重量に対して60%以上または潤滑剤の総重量に対して約45%以上、より好ましくはC18の不飽和脂肪酸メチルエステルが、基剤の重量に対して70%以上または潤滑剤の総重量に対して約50%以上配合されてもよい)。
【0091】
その場合、この組成物には、エラストマーガスケット、特に、アクリレート系のエラストマーガスケットやフルオロエラストマー系のガスケットとの相性が芳しくないという短所が生じる。
【0092】
そのような場合の短所を改善するための本発明の一変形例では、使用されるエステル系基剤の含有量の一部が、潤滑剤に任意で配合される増ちょう剤として当該技術分野において周知である1種以上のポリメタクリレート系化合物(PMA)に置き換えられる。
【0093】
好ましくは、本発明にかかるポリメタクリレート系化合物(PMA)は、ASTM D445規格に従い測定される100℃での動粘度が500mm/s未満、より好ましくは
250mm/s未満、さらに好ましくは約200mm/sである。
【0094】
好ましくは、ポリメタクリレート系化合物(PMA)の含有量は、本発明にかかる潤滑剤において脂肪酸メチルエステルとポリメタクリレート系化合物(PMA)との混合物が少なくとも60質量%を占めるように選択される。
【0095】
好ましくは、ポリメタクリレート系化合物(PMA)の質量%は、脂肪酸メチルエステルの質量%とほぼ同一になるように、すなわち、ポリメタクリレート系化合物の質量%と脂肪酸エステルの質量%との比が0.8〜1.2になるように設定される。
【0096】
これらポリメタクリレート系化合物(PMA)の添加(混合)は、本発明にかかる組成物の粘度指数VIに対して特に悪影響をもたらさない。
【0097】
商用のポリメタクリレート系化合物(PMA)は、潤滑剤組成物への混合作業が容易に進むように、予備希釈用基油によって予め希釈された形態のポリマーで構成された化合物として上市されている。よって、前記ポリメタクリレート系化合物(PMA)は、前記予備希釈用基油によって希釈された前記ポリマー(活性物質)の30〜60%、典型的には50%を占める。
【0098】
本明細書においてポリメタクリレート系化合物(PMA)の質量%または重量%とは、前記ポリマー(活性物質)と予備希釈用基油とで構成される化合物の質量%または重量%を指すものとする。
【0099】
本発明にかかる組成物に用いられるポリメタクリレート系化合物(PMA)は、30,000未満の低い重量平均分子量を有する。ただし、ポリメタクリレート系化合物(PMA)の混合には共溶媒が必要であり、それによって、本発明にかかる潤滑剤について、100℃でのターゲット粘度5.5〜7mm/sを得ることができると同時に、エラストマーに対する相性も改善することができる。
【0100】
前記共溶媒には、組成物の粘度指数VIに悪影響をもたらさないものが望ましい。
【0101】
したがって、ポリメタクリレート系化合物(PMA)を備える本発明の変形例では、ポリメタクリレート系化合物(PMA)の共溶媒として、軽質ポリαオレフィンを用いるのが望ましい。
【0102】
上記ポリメタクリレート系化合物(PMA)は、高温粘度、低温粘度などを向上させる役割を有する、当該技術分野において周知の増ちょう剤である。
【0103】
本発明の別の一変形例として、ポリメタクリレート系化合物(PMA)の代わりに、当該技術分野において知られた他の少なくとも1種の増ちょう剤が、前述した共溶媒の軽質ポリαオレフィンとの組合せで使用されてもよい。これらのような他種の増ちょう剤は、ポリメタクリレート系化合物(PMA)の場合と全く同じ条件下で、単独でまたは複数の種類の混合物として使用されてもよく、任意で、ポリメタクリレート系化合物(PMA)との混合物として使用されてもよい。
【0104】
これら他種の増ちょう剤は、高い粘度指数VI(200を超える粘度指数VI、好ましくは、250、280、または300を超える粘度指数VI、より好ましくは約320以上の粘度指数VI)を有し且つギアボックス用の潤滑剤としての用途に適したせん断抵抗を有するものが選択される。
【0105】
したがって、本発明にかかる組成物に用いられるエステル系基剤の含有量の一部は、ポリαオレフィン(PAO)/エチレンコポリマー(例えば、LUCANT(登録商標)(Mitsui社製)など)、エチレン−プロピレンダイマー(EPDM)(例えば、TRILENE CP 80(LYON Copolymers社製)など)、スチレン−アクリレートコポリマー、これらの誘導体、またはポリメタクリレート系化合物(PMA)との共重合体によって置き換えられてもよい。ポリイソブテン(PIB)では、満足のいく粘度指数VIをもたらさず、また、オレフィンコポリマー(OCP)やスターポリマー(Starpolymer)では、せん断性が安定でない。
【0106】
これらの化合物の一部、例えばEDPMなどは、ほぼ全体が活性ポリマー物質で構成された液状化合物として上市されている(すなわち、一例のTrileneは、ほぼ全体がEDPMで構成されている)。
【0107】
その他は、予備希釈用基油によって予め希釈された形態のポリマー(活性物質)で構成された化合物として上市されている。例えば、ポリαオレフィン(PAO)/エチレンコポリマーの場合、予備希釈用油に対しポリマー(活性物質)が30〜60重量%、一般的には50重量%の割合で予め希釈された形態である。
【0108】
このとき、本明細書において増ちょう剤の質量%または重量%とは、ポリマー混合物(活性物質)と予備希釈用基油とで構成された化合物の質量%または重量%を指すものとする。
【0109】
好ましくは、単一の種類の増ちょう剤、または複数の種類の増ちょう剤混合物(任意で、前述のポリメタクリレート系化合物(PMA)を含む)は、脂肪酸メチルエステルと増ちょう剤と任意で含まれるポリメタクリレート系化合物(PMA)との混合物が、本発明にかかる潤滑剤の少なくとも60重量%を占めるように選択される。
【0110】
好ましくは、増ちょう剤、または増ちょう剤とポリメタクリレート系化合物(PMA)との混合物の質量%は、脂肪酸メチルエステルの質量%とほぼ同一になるように設定される。
【0111】
すなわち、少なくとも1種の脂肪酸エステルの質量%と増ちょう剤の質量%との比、または少なくとも1種の脂肪酸エステルの質量%と増ちょう剤−ポリメタクリレート系化合物(PMA)混合物の質量%との比は、0.8〜1.2である。
【0112】
[軽質ポリαオレフィン]
重質ポリαオレフィンの場合と同様に、軽質ポリαオレフィンは、例えば、オクテン、デセン、ドデセン、テトラデセン、ヘキサデセンなどの単量体単独か、または他種のオレフィンとの混合物から得ることができる。本発明にかかる組成物において、軽質ポリαオレフィンは、単独または複数の種類の混合物として用いられてもよい。
【0113】
いわゆる軽質ポリαオレフィン(軽質PAO)は、ASTM D445規格に従い測定される100℃での動粘度が1.5〜6mm/s、好ましくは3mm/s未満、より好ましくは約2mm/sであり、ASTM D445規格に従い測定される40℃での動粘度が4〜32mm/s、好ましくは6mm/s未満、より好ましくは約5mm/sであり、かつ、重量平均分子量(ガスクロマトグラフィーによって測定)が500ダルトン未満、好ましくは300ダルトン未満、一般的には約285ダルトン付近または約290ダルトン付近である。
【0114】
好ましくは、軽質ポリαオレフィンは、本発明にかかるギアボックス用の潤滑剤において少なくとも10重量%を占める。好ましくは、潤滑剤における軽質ポリαオレフィンの含有量は、添加剤の可溶性を制限しないように30重量%未満である。言い換えれば、軽質ポリαオレフィンの含有量は、所望の粘度の組成物を得るのに必要な量のポリメタクリレート系化合物(PMA)(および/または前述した他種の増ちょう剤)の可溶性が確保できる質量%とされると同時に、添加剤の可溶性の問題が生じない所定範囲内の質量%に設定されるのが望ましい。一般的に、本発明にかかる組成物における軽質ポリαオレフィンの含有量は、10〜25重量%、好ましくは15〜25重量%とされる。
【0115】
好ましくは、本発明にかかるギアボックス用の潤滑剤組成物における軽質ポリαオレフィン(軽質PAO)の含有量は少なくとも10質量%であり、かつ、ポリメタクリレート系化合物(PMA)(および/または前述のその他の増ちょう剤)の含有量は、脂肪酸メチルエステルとポリメタクリレート系化合物(PMA)(および/または前述のその他の増ちょう剤)の混合物が少なくとも60重量%を占めるような質量%に設定される。
【0116】
より好ましくは、ポリメタクリレート系化合物(PMA)、またはポリメタクリレート系化合物(PMA)と前述のその他の増ちょう剤との混合物の質量%は、脂肪酸メチルエステルの質量%とほぼ同一になるように設定される。すなわち、ポリメタクリレート系化合物(PMA)の質量%と脂肪酸エステルの質量%との比は、0.8〜1.2となるように設定される。
【0117】
このようにして脂肪酸メチルエステル系基剤、ポリメタクリレート系化合物(PMA)、および軽質ポリαオレフィン(軽質PAO)が配合された本発明にかかる組成物は、メチルエステルおよび重質ポリαオレフィン(重質PAO)を備える変形例の組成物に比べて、様々なグレード(等級)のガスケットに対する動的実験の際の侵食性が低い。具体的には、フルオロエラストマー系のガスケットの体積変化および機械特性の劣化が、メチルエステルおよび重質ポリαオレフィン(重質PAO)を備える変形例の組成物よりも小さい。
【0118】
また、GFCT−021−A−90に基づく160℃での酸化試験を実施したところ、ポリメタクリレート系化合物(PMA)と軽質ポリαオレフィンとを含む本発明にかかるオイルでは、試験後に不溶性物質がほぼ存在せず、これは他の変形例に比べて大きな利点である。
【0119】
GFCT−021−A−90の条件において、空気バブリングを窒素バブリングに置き換えて160℃で熱劣化試験を実施すると、恐らくポリメタクリレート系化合物(PMA)とメチルエステルとの間のエステル交換反応が原因と思われる増ちょう現象が最初に見受けられるものの、その後は製品の安定性を確認することができる。
【0120】
(他の種類の基油)
本発明にかかる潤滑剤組成物では、潤滑剤基剤として、前述の脂肪酸メチルエステルに加えて重質ポリαオレフィン(重質PAO)との組合せ、または軽質ポリαオレフィン(軽質PAO)とポリメタクリレート系化合物との組合せのほかに、他の潤滑剤基剤を含んでもよい。このような潤滑剤基剤は、潤滑剤組成物の粘度指数VIが250を超え、好ましくは280を超え、より好ましくは300を超え、さらに好ましくは約320以上となり、かつ、潤滑剤組成物の100℃での動粘度が5.5〜7mm/sとなるのであれば、どのような種類の潤滑剤基剤であってもよい。また、このような潤滑剤基剤は、鉱物由来であっても、合成由来であっても、天然由来であってもよい。
【0121】
鉱物由来の基油には、原油を常圧蒸留や減圧蒸留で処理した後、精製工程(溶剤抽出、脱アスファルト、溶剤脱ろう、水添処理、水素化分解・水素化異性化、水素化仕上げなど)にかけることによって得られる、あらゆる種類の基油が含まれてもよい。
【0122】
合成由来の基油には、ポリαオレフィン、ポリ(内部オレフィン)、アルキル芳香族化合物、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、エステル類、ジエステル類、多価アルコールエステル(例えば、ペンタエリスリトールエステル)、αオレフィンオリゴマー、エステルオリゴマー、ポリアルキレングリコールなども含め、API(米国石油協会)分類のグループ4、グループ5またはグループ6に属する油またはオイルが含まれる。
【0123】
なお、前述の脂肪酸メチルエステル系基剤以外の脂肪酸エステル含有基剤は、できる限り使用しないのが好ましい。
【0124】
(本発明にかかるオイルの粘度および粘度指数VI)
本発明にかかるオイル(潤滑剤組成物)は、極めて高い粘度指数VIを特徴とする。ASTM 2270規格に従い測定されるその粘度指数VIは、250を超えており、好ましくは280を超え、好ましくは300を超え、さらに好ましくは約320以上である。
【0125】
本発明にかかるオイルは、さらに、動作温度(使用温度値)での低い粘度(使用温度での粘度値)を特徴とし、ASTM D445規格に従い測定される100℃での動粘度(KV100)は、5.5〜7mm/sであり、好ましくは6〜6.5mm/sである。
【0126】
潤滑剤の粘度挙動は、それに配合される基剤、増ちょう剤、粘度指数VI向上剤などによって決まる。
【0127】
特に、本発明にかかるオイルの粘度指数VIを極めて高い数値に設定したい場合、極めて高い粘度指数VIを有する少なくとも1種のモノ不飽和脂肪酸メチルエステルを使用するのが好ましい。
【0128】
不飽和脂肪酸メチルエステルの粘度指数VIは、不純物、特に、メタノール以外のアルコール(例えば、エタノール)と不飽和脂肪酸とのエステルの存在によって大きく左右される。そのため、上市されている脂肪酸メチルエステルの粘度指数VIは、極めて広範囲に分布している。これは、Unichema社のカタログから抜粋した商用オレイン酸エステルの粘度指数VIを示した以下の表からも明らかである。
【0129】
【表1】

【0130】
(耐摩耗剤および/または極圧剤)
本発明にかかる潤滑剤組成物は、リン含有、硫黄含有、またはリン−硫黄含有の、少なくとも1種の耐摩耗剤および/または極圧剤を含んでおり、好ましくは、潤滑剤の総重量に対して0.01〜12%、より好ましくは0.01〜5%含む。
【0131】
好ましくは、本発明にかかる組成物は、硫黄元素とリン元素の両方を含んでいる。好ましくは、本発明にかかる組成物は、少なくとも1種のリン含有の添加剤と少なくとも1種の硫黄含有の添加剤との組合せ、または少なくとも1種のリン−硫黄含有の添加剤を含む。
【0132】
一般的に、硫黄元素の含有量は、(処方物および目的に応じて)約1〜約3重量%であり、リン元素の含有量は、(処方物および目的に応じて)約500〜約3,000ppmである。
【0133】
[リン−硫黄含有の耐摩耗剤および極圧剤]
本発明に使用されるリン−硫黄含有の耐摩耗剤および極圧剤として、例えば、チオリン酸類、チオ亜リン酸類、これらの酸のエステル、これらの酸の塩、ジチオリン酸エステル、ジチオリン酸塩、特に、ジチオリン酸亜鉛などが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0134】
リン−硫黄含有の耐摩耗剤および極圧剤の例には、1〜3個の硫黄原子を含むものが含まれ、例えば、モノブチルチオリン酸のエステルおよび塩、モノオクチルチオリン酸のエステルおよび塩、モノラウリルチオリン酸のエステルおよび塩、ジブチルチオリン酸のエステルおよび塩、ジラウリルチオリン酸のエステルおよび塩、トリブチルチオリン酸のエステルおよび塩、トリオクチルチオリン酸のエステルおよび塩、トリフェニルチオリン酸のエステルおよび塩、トリラウリルチオリン酸のエステルおよび塩、モノブチルチオ亜リン酸のエステルおよび塩、モノオクチルチオ亜リン酸のエステルおよび塩、モノラウリルチオ亜リン酸のエステルおよび塩、ジブチルチオ亜リン酸のエステルおよび塩、ジラウリルチオ亜リン酸のエステルおよび塩、トリブチルチオ亜リン酸のエステルおよび塩、トリオクチルチオ亜リン酸のエステルおよび塩、トリフェニルチオ亜リン酸のエステルおよび塩、トリラウリルチオ亜リン酸のエステルおよび塩などが挙げられる。
【0135】
チオ亜リン酸またはチオリン酸のエステル塩として、例えば、アンモニア類やアミン類などの窒素含有化合物との反応によって得られるものや、酸化亜鉛や塩化亜鉛が挙げられる。
【0136】
[リン含有の耐摩耗剤および極圧剤]
本発明にかかる潤滑剤組成物は、リン含有の耐摩耗剤および極圧剤を含んでいてもよい。リン含有の耐摩耗剤および極圧剤として、例えば、リン酸アルキル、ホスホン酸アルキル、リン酸類、亜リン酸類、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、リン酸トリエステル、亜リン酸モノエステル、亜リン酸ジエステル、亜リン酸トリエステル、これらの塩などが挙げられる。
【0137】
[硫黄含有の耐摩耗剤および極圧剤]
硫黄含有の耐摩耗剤および極圧剤として、例えば、ジチオカルバン酸の塩、ジチオカルバン酸のエステル、チアジアゾール、ベンゾチアジアゾール、硫黄含有オレフィン類などが挙げられる。
【0138】
最も一般的な硫黄含有オレフィンに、《硫化イソブチレン》(SIB)と称される化合物がある。硫黄含有オレフィンは、一般的に、硫黄、硫化水素、硫化アルカリ金属類(例えば、硫化ナトリウム)とオレフィン類との硫化反応によって得られる。
【0139】
一部の特定の硫黄含有オレフィンは、触媒法によって得られ、例えば、触媒の存在下での硫化水素とイソブチレンとの反応によって得られる。触媒法であれば、一般的に用いられる硫化イソブチレン(SIB)よりも、より高純度で、より正確な構造を有し、硫黄分(ASTM D2622規格に従い測定)が高く且つ活性硫黄分(ASTM D1662規格に従い測定)が一般的に低い生成物を得ることができる。
【0140】
(S/P比)
一般的に、トランスミッション用の潤滑剤組成物では、単一種または複数種の基油の硫黄分、ならびにリン−硫黄含有、リン含有および硫黄含有の耐摩耗剤および/または極圧剤の含有量(特に、硫黄含有オレフィンの含有量)は、ASTM D2622規格によって測定される硫黄元素の含有量と、ASTM D5185規格によって測定されるリン元素の含有量との比、すなわち、潤滑剤のS/P比が、3〜60となるように選択される。
【0141】
一般的に、S/P比が30を超えるトランスミッション用の潤滑剤は、添加剤処理のレベルが極めて低く、リン分も少ない《エコ》型の製品である。
【0142】
ギアボックス用の混合物製品や車軸用の混合物製品のS/P比の数値は、一般的に20〜30であり、好ましくは20近傍である。これにより、硫黄の含有量を抑えることができ、シンクロメッシュとの相性が向上する。
【0143】
S/P比が20未満である製品は、車軸用の製品よりは、むしろギアボックス用の製品として向いている。
【0144】
本発明にかかる潤滑剤組成物の上記S/P比は、3〜60または5〜60、好ましくは30未満、より好ましくは20未満、さらに好ましくは15未満または10未満である。
【0145】
(他の種類の添加剤)
本発明にかかる潤滑剤組成物は、トランスミッション用のオイル処方物への用途に適していることが当該技術分野において知られている、あらゆる種類の添加剤を含んでいてもよく、例えば、摩擦調整剤、酸化防止剤(例えば、アミン系酸化防止剤など)、腐食防止剤など単独または組み合わせて、当該用途に必要とされる一般的なレベルで含有していてもよい。
【0146】
[摩擦調整剤]
摩擦調整剤は、境界摩擦条件下または混合摩擦条件下において、金属表面に吸着単層(monolayers adsorbed)を形成することによって摩擦を制限する。本発明にかかる潤滑剤では、基剤として使用される脂肪酸メチルエステルがこの役割を担う。なお、潤滑剤組成物において摩擦調整剤として使用される分の脂肪酸メチルエステルの含有量は、潤滑剤組成物の総重量に対して10%未満、一般的に0.01〜5%である。
【0147】
本発明にかかる潤滑剤は、他にも摩擦調整剤として、脂肪アルコール類、脂肪アミン類、エトキシ化脂肪酸、脂肪酸類、脂肪酸とアミンとから得られたアミド、脂肪族コハク酸化合物と第一級アミン類との反応で生成されたスクシンイミド、イミダゾール、第三級アミン、脂肪族ホスホン酸化合物(脂肪族ホスホン酸のエステルおよび塩)、リン酸のエステルおよび塩、チオホスホン酸のエステルおよび塩、脂肪族チオリン酸化合物(脂肪族チオリン酸のエステルおよび塩)、モリブデンの有機誘導体などを含んでいてもよい。
【0148】
一般的に、これらの化合物の脂肪族基の鎖の炭素数は少なくとも8である。
【0149】
他の摩擦調整剤には、窒素原子に炭素数約14から約20の脂肪族基が置換基として結合するジヒドロキシアルキルアミンを組み合わせてもよく、または任意で、少なくとも1つの窒素原子に脂肪族基が置換基として結合するトリメチレンジアミンとの組合せ、または窒素原子に脂肪族ヒドロキシアルキル基が置換基として結合するイミダゾールを組み合わせてもよい。
【0150】
好ましくは、これらの化合物は、本発明にかかる潤滑剤において0.01重量%から10重量%のレベルで含まれる。
【0151】
[流動点降下剤]
本発明にかかる組成物は、少なくとも1種の流動点降下剤を含んでいてもよい。流動点降下剤として、例えば、ポリアクリレート、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレンコポリマー、ナフタレンの縮合誘導体などが挙げられる。
【0152】
一般的に、流動点降下剤は、0.1〜2重量%含まれていてもよい。
【0153】
[腐食防止剤および銅不活性化剤]
腐食防止剤および/または銅不活性化剤として、例えば、ポリイソブテンコハク酸無水物、スルホン酸のエステルおよび塩、チアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾールなどが挙げられる。一般的に、腐食防止剤および/または銅不活性化剤は、本発明にかかる潤滑剤組成物において0.01〜1重量%のレベルで含まれている。
【0154】
本発明にかかるオイルは、当該オイルへの用途に適したあらゆる種類の添加剤を含んでいてもよく、特に:
・ 清浄剤;例えば、スルホン酸やサリチル酸のカルシウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩などであり、0〜5重量%のレベルで当該オイルに含まれていてもよい。
・ 分散剤;例えば、ポリイソブチレンコハク酸無水物の誘導体などであり、0〜5重量%のレベルで当該オイルに含まれていてもよい。
・ 酸化防止剤;例えば、アミン系酸化防止剤(オクタジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミンなど)、フェノール系酸化防止剤(BHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)およびその誘導体など)、硫黄含有酸化防止剤(硫化フェネート(硫化フェノラート)など)などが挙げられる。
【0155】
本発明は、さらに、前述のギアボックス用の潤滑剤組成物の使用であって、各国の特定大気汚染物の上限排出量の設定したDirective EEC90/C81/01に準拠したNEDC試験(「欧州における軽量自動車の認可のための排出量試験サイクル」Brussels, 2001)の規格条件下で測定される自動車の省燃費率が1%を超え、好ましくは2.5%を超える、使用に関する。
【0156】
本発明にかかる組成物は、軽量自動車両、ディーゼル車両、またはハイブリッド電気モータを装備した車両において省燃費性を得るのに極めて好適である。
【0157】
事実、ハイブリッドモータの動作は、ブレーキ時に運動エネルギーを回収し、当該エネルギーを後で取り出すために蓄積する。つまり、減速フェーズにおいてもギアボックスは作動するので、ギアボックス用のオイルは、なおいっそう車両の省燃費性を大きく左右することになる。
【0158】
本発明の他の構成は、前述の脂肪酸メチルエステル系基剤の潤滑剤基剤としての使用であって、各国の特定大気汚染物の上限排出量の設定したDirective EEC90/C81/01に準拠したNEDC試験(「欧州における軽量自動車の認可のための排出量試験サイクル」Brussels, 2001)の規格条件下で1%を超える省燃費率、好ましくは2.5%を超える省燃費率を達成可能なギアボックス用のオイルを配合するうえでの使用に関する。好ましくは、この基剤は、潤滑剤の最終製品に対して少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも35重量%使用される。なお、この基剤は、潤滑剤の総重量に対して、少なくとも最大約50%、少なくとも最大約60%、少なくとも最大約70%、さらには、少なくとも最大約80%含まれていてもよい。
【0159】
言うまでもなく、本発明は、実施例や説明・図示した実施形態に限定されず、当業者が想定可能な多数の変形や変更を包含するものとする。
【実施例】
【0160】
(実施例1:潤滑剤組成物の調製)
本発明にかかる潤滑剤組成物として、不飽和脂肪酸メチルエステルを主成分とする潤滑剤基剤をそれぞれ少なくとも35重量%含む、オイルAおよびオイルBを調製する。以下の表1に、オイルAおよびオイルBに含まれる脂肪酸メチルエステルの性質についてまとめた。表1の数字は潤滑剤の総重量に対する質量%を示す。
【0161】
【表2】

【0162】
オイルAには、重質ポリαオレフィン(重質PAO)として、100℃での動粘度が1,000mm/sである商品名Spectracyn 1000(ExxonMobil Chemicals社製)を使用する。
【0163】
オイルBには、軽質ポリαオレフィン(軽質PAO)として、100℃での動粘度が1.8mm/sである商品名SHF−23(ExxonMobil Chemicals社製)を使用する。
【0164】
オイルAとオイルBの両方に、ポリメタクリレート系化合物として、PAS 501(Sanyo Chemical社製)を使用する。
【0165】
これら本発明にかかる調製組成物の添加剤配合は、ギアボックス用の潤滑剤に対する標準的な添加剤配合と同じ内容である。これらの組成物(オイルAおよびオイルB)には、商品名OS 215497(Lubrizol社製)のギア用パッケージ添加剤を9.5質量%含有させる。このギア用パッケージ添加剤は、以下のものを含む:
−リン含有の耐摩耗剤、
−硫黄含有の極圧剤、
−ジメルカプタンベンゾチアゾール系の腐食防止剤、および
−アミン系酸化防止剤。
【0166】
以下の表2は、本発明にかかるオイルAおよびオイルBの性質についてまとめたものである。表の%数値は、潤滑剤の総重量に対する質量%を指す。
【0167】
【表3】

【0168】
(実施例2:NEDC試験)
運転オイルの温度上昇量および燃費量を、各国の特定大気汚染物の上限排出量の設定したDirective EEC90/C81/01に準拠したNEDC(新欧州ドライビングサイクル)のモデルサイクル(ECE/EUDCサイクルとも称される)(「欧州における軽量自動車の認可のための排出量試験サイクル」Brussels, 2001)に、ベンチテスト用のエンジンまたは実際の車両のエンジンをかけることによって測定する。このエンジンサイクルは、ECE 15(市街地)サイクルとEUDC(郊外)サイクルとに分けることができ、図1にそれらのサイクルの性質(規定の速度(km/時)対時間(秒))をそれぞれ示す。
【0169】
NEDCサイクルは、4つのECEサイクルと1つのEUDCサイクルとの合計に対応する:NEDC=4×ECE15+EUDC
【0170】
以下の表3は、欧州での平均的な日常走行を表したNEDCサイクルの全体的な特徴をまとめたものである。
【0171】
【表4】

【0172】
上記NEDCサイクルを、出力88kWのガソリンエンジン、マニュアルギアボックス、およびギア切替用のClemessy社製ロボットを備えたベンチエンジンに対して実施する。
【0173】
参考オイル(REF)として、グループ1の標準的なパラフィン系基剤(ほぼ全体がSolvent Neutral 150系の基剤)が配合され、100℃での動粘度が8mm/sであり、粘度指数VIが約150である、グレード(等級)75W80の、軽量自家用車両のマニュアルギアボックス用の商用オイルを用いる。
【0174】
(実施例3:運転時のオイルの温度上昇量の測定)
試験前のオイルの温度は22℃である。試験終了時のギアボックス用のオイルの最終的な温度は、以下の表4に示すとおりである。
【0175】
それぞれ少なくとも35%の脂肪酸メチルエステル系基剤が配合されたオイルAおよびオイルB(本発明にかかるオイル)は、商用の参考オイルに比べて温度上昇量が遥かに少ないことが読み取れる。さらに、平均的な日常走行を表したショートトリップ駆動を模擬(シミュレート)した当該試験から、そのような走行でのギアボックス用のオイルの動作温度が40〜50℃に達することが分かる。
【0176】
【表5】

【0177】
(実施例4:省燃費率の測定)
燃料消費量を、各国の特定大気汚染物の上限排出量の設定したDirective EEC90/C81/01(「欧州における軽量自動車の認可のための排出量試験サイクル」Brussels, 2001)に従い算出した。排出される排気ガスの量を測定し、この測定値から燃料消費量を導き出した。
【0178】
以下の表5に結果をまとめる。
【0179】
【表6】




【0180】
オイルAおよびオイルB(本発明にかかるオイル)は、大幅な省燃費率を達成可能であることが読み取れる。さらに、これらのオイルは、温度上昇量も少ない(参考オイルに比べて5〜6℃少ない)。
【0181】
また、前述のNEDC試験をオートマチックギアボックスを装備した高出力のハイブリッド車両に実施したところ、オイルAおよびオイルBの省燃費率は約3%であった。
【0182】
使用したハイブリッド車両には、最適なハイブリッド活用に特化した切替方式を行うオートマチックギアボックスが搭載されていた。
【0183】
なお、オートマチックギアボックスの場合、マニュアルギアボックスとは異なり、Directive EEC90/C81/01に基づく変速点に対する規制が設けられていない。また、オートマチックギアボックスの場合、変速点はコンピュータで最適管理される。したがって、この試験結果と前述の試験結果とを比較するのは困難である。
【0184】
しかしながら、ハイブリッドエンジンの動作は、ブレーキ時に、エネルギーの回収を伴いながら減速する。したがって、ハイブリッドエンジンを搭載した車両の省燃費率に対するギアボックス用のオイルの影響は、その分なおいっそう大きいと考えて申し分ない。
【0185】
(実施例5:省燃費率と40℃での動粘度との相関性)
動作温度条件を考慮したうえで、上述の実施例4における条件下での省燃費率を、様々なギアボックス用のオイルで測定し、これらの省燃費率と40℃での動粘度との相関性を調べた。
【0186】
以下の表6に結果をまとめた:
【0187】
【表7】

【0188】
オイルAとオイルBは、本発明にかかるオイルであり、その性質については表2で既に述べた。参考オイル(REF)は、燃料消費量を求める基準となるオイルであり、既に説明したとおりである。
【0189】
オイルCは、オイルAおよびオイルBとほぼ同一の添加剤配合内容のギアボックス用のオイルであるが、粘度指数VIが160の、グループ1およびグループ3の鉱物由来の基剤が配合されている点で異なる。
【0190】
オイルGは、粘度指数VIが約150であってKV100が8,000mm/sの、グループ1の基剤が配合されたギアボックス用のオイルである。
【0191】
オイルHは、オイルCとほぼ同一であるが、粘度指数VIが200である点で異なる。
【0192】
上記の表6から、40℃での動粘度が低いほど省燃費率が大きいことが読み取れる。したがって、省燃費率と40℃での動粘度との間には、略線形的な相関性が存在する。
【0193】
(実施例6:本発明にかかるオイルに含まれる不溶性物質のレベル)
酸化試験を、GFCT−021−A−90規格に従い、本発明にかかるオイルに対して140℃で実施した。オイルAとオイルBの性質については、上記の表2に示したとおりである。以下の表7に結果をまとめた。
【0194】
【表8】

【0195】
予想したとおり、本発明にかかるオイルの、高温酸化条件に対する耐性は芳しくなく、動粘度に大幅な上昇が見受けられる。しかしながら、不溶性物質のレベルは低い。特に、脂肪酸メチルエステルに加えて、ポリメタクリレート系化合物(PMA)と軽質ポリαオレフィン(軽質PAO)との組合せが配合されたオイルBのほうは、不溶性物質のレベルが格別に低くなる。
【0196】
(実施例7:本発明にかかるオイルの熱安定性)
オイルAとオイルB(本発明にかかるオイル)に対し、熱劣化試験を実施した。この試験は、GFCT−021−A−90の規格試験の条件において空気バブリングを窒素バブリングに置き換えることによって非酸化条件としたうえで、160℃で実施される。空気中の酸素を窒素で置き換えることにより、運転時にギアボックス用のオイルが曝される密閉空間を模倣することができる。以下の表8に、試験時のオイルAとオイルB(本発明にかかるオイル)のKV100(100℃での動粘度)の時間依存的変化をまとめた:
【0197】
【表9】

【0198】
オイルAは温度変化に対して極めて安定していることが読み取れる。オイルBのほうは、試験後直ぐに粘度の大幅な上昇が見られたものの、それ以降の時間は極めて安定している。オイルAおよびオイルBのいずれも、不溶性物質のレベルは低く、試験開始200時間後の時点でそれぞれ0.01と0.065である。
【0199】
つまり、オイルBは、熱劣化試験の開始直後の粘度上昇を有するとともに、酸化試験後の不溶性物質のレベルが格別に低いという利点がある。
【0200】
オイルAは、酸化試験時の不溶性物質のレベルが極めて高いものの、熱的に極めて安定している。
【0201】
オイルAの酸価は3.5から6.5に変化した。これは、脂肪酸メチルエステル系基剤の劣化が極めて緩やかに生じることを示している。
【0202】
オイルBの酸価は3.7から2.1に変化した。これは、試験直後の粘度上昇現象が脂肪酸メチルエステルとポリメタクリレート系化合物(PMA)のアルコール部分とのエステル交換反応に起因することを考慮すれば特に驚くべきことではない。
【0203】
(実施例8:本発明にかかるオイルの動作寿命の測定)
走行車両:Peugeot 307のマニュアルギアボックスをオイルBで潤滑したうえで、実際に試験を行った。
【0204】
オイルの劣化を表すオイルの粘度変化、機械部品の摩耗を表す特定の金属元素のレベル、および特定の元素(特に、Ca、Zn,P、Mg、Mo,B、Na)のレベルを測定した。これらの存在を測定することにより、オイルの添加剤が劣化しているか否かを確認することができる。
【0205】
以下の表9に結果をまとめた。
【0206】
具体的には、40℃での動粘度および100℃での動粘度のいずれも、測定誤差の範囲内で一定であった。
【0207】
KV100(100℃での動粘度)には若干の上昇が見られた。これは運転時のせん断に由来する現象である。
【0208】
具体的に述べると、オイルの酸化問題による粘度上昇は全く見受けられない。粘度指数VIは、燃料エコ効果が得られる数値範囲内に収まる。
【0209】
以上の優れた結果には、運転時のオイルの温度上昇が僅かであることと、ギアボックスの密封空間によって空気中の酸素との接触が妨げられることとが関係していると推測される。
【0210】
誘導結合プラズマ分析装置(ICP)によって測定される、ギアボックス用の主な添加剤に含まれる元素(P、Ca、Zn)の含有量は、測定誤差の範囲内に収まる。
【0211】
これら元素の含有量には若干の《増加》が見受けられる。これは、蒸発による可能性も考えられるが、恐らく、モニタリング条件下の誘導結合プラズマ分析装置(ICP)が《固有》的に有する測定不確実性と、サンプリングの代表性の質とに起因すると思われる。
【0212】
観測される摩耗レベルは小さく、潤滑剤によるギアボックス構成品の保護に関し、異常も検出されない。
【0213】
車両試験の30,000km走行後のオイルの酸価の測定値は低い。したがって、潤滑剤基剤としてのエステルは、全く劣化していないと結論付けることができる。
【0214】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ASTM D445規格に従い測定される100℃での動粘度が5.5〜7mm/sである、ギアボックス用の潤滑剤組成物であって、
−リン含有、硫黄含有、またはリン−硫黄含有の、少なくとも1種の耐摩耗剤および/または極圧剤と、
−式:RCOOCHで表される少なくとも1種の脂肪酸メチルエステル(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数13〜19のパラフィン基またはオレフィン基である)を少なくとも30重量%と、
を含み、さらに、
(i)ASTM D445規格に従い測定される100℃での動粘度が90〜3,000mm/sであり、かつ、重量平均分子量が2,500ダルトンを超える重質ポリαオレフィンの群から選択される少なくとも1種の化合物、または
(ii)ASTM D445規格に従い測定される100℃での動粘度が1.5〜6mm/sであり、ASTM D445規格に従い測定される40℃での動粘度が4〜30mm/sであり、かつ、重量平均分子量が500ダルトン未満である軽質ポリαオレフィンの群から選択される少なくとも1種の化合物と、重量平均分子量が30,000ダルトン未満である少なくとも1種のポリメタクリレート系化合物との組合せ、
を含む、ギアボックス用の潤滑剤組成物。
【請求項2】
請求項1において、式:RCOOCHで表される少なくとも1種の脂肪酸メチルエステル(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数15〜19、より好ましくは炭素数17のモノ、ジまたはトリ不飽和オレフィン基である)を少なくとも20重量%含む、ギアボックス用の潤滑剤組成物。
【請求項3】
請求項1または2において、式:RCOOCHで表される少なくとも1種の脂肪酸メチルエステル(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数15〜19、より好ましくは炭素数17のモノ不飽和オレフィン基である)を少なくとも20重量%含む、ギアボックス用の潤滑剤組成物。
【請求項4】
請求項2または3において、オレフィン基Rおよび/またはRの不飽和結合がシス配置である、ギアボックス用の潤滑剤組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項において、重質ポリαオレフィンの含有量が少なくとも10質量%であり、脂肪酸メチルエステルの含有量が少なくとも60質量%である、ギアボックス用の潤滑剤組成物。
【請求項6】
請求項5において、式:RCOOCHで表される少なくとも1種の脂肪酸メチルエステル(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数15〜19、より好ましくは炭素数17のモノ、ジまたはトリ不飽和オレフィン基である)を少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも55重量%含む、ギアボックス用の潤滑剤組成物。
【請求項7】
請求項5または6において、式:RCOOCHで表される少なくとも1種の脂肪酸メチルエステル(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数15〜19、より好ましくは炭素数17のモノ不飽和オレフィン基である)を少なくとも45重量%、好ましくは少なくとも50重量%含む、ギアボックス用の潤滑剤組成物。
【請求項8】
請求項1から4のいずれか一項において、軽質ポリαオレフィンの含有量が少なくとも10質量%であり、脂肪酸メチルエステルと少なくとも1種のポリメタクリレート系化合物との混合物の含有量が少なくとも60質量%である、ギアボックス用の潤滑剤組成物。
【請求項9】
請求項8において、ポリメタクリレート系化合物の質量%と脂肪酸エステルの質量%との比が0.8〜1.2である、ギアボックス用の潤滑剤組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項において、式:RCOOCHで表される少なくとも1種の脂肪酸メチルエステル(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数13〜19のパラフィン基またはオレフィン基である)を、当該潤滑剤組成物に含まれる脂肪酸エステルの全重量に対して少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%含む、ギアボックス用の潤滑剤組成物。
【請求項11】
請求項10において、式:RCOOCHで表される少なくとも1種の脂肪酸メチルエステル(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数15〜19、より好ましくは炭素数17のモノ、ジまたはトリ不飽和オレフィン基である)を、当該潤滑剤組成物に含まれる脂肪酸エステルの全重量に対して少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%含む、ギアボックス用の潤滑剤組成物。
【請求項12】
請求項10または11において、式:RCOOCHで表される少なくとも1種の脂肪酸メチルエステル(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数15〜19、より好ましくは炭素数17のモノ不飽和オレフィン基である)を、当該潤滑剤組成物に含まれる脂肪酸エステルの全重量に対して少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%含む、ギアボックス用の潤滑剤組成物。
【請求項13】
請求項11または12において、オレフィン基Rおよび/またはRの不飽和結合がシス配置である、ギアボックス用の潤滑剤組成物。
【請求項14】
請求項10から13のいずれか一項において、飽和脂肪酸エステルを、当該潤滑剤組成物に含まれる脂肪酸エステルの全重量に対して最大15%、好ましくは最大10%含む、ギアボックス用の潤滑剤組成物。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項において、組成物中、ASTM D2622規格に従い測定される硫黄元素の含有質量と、ASTM D5185規格に従い測定されるリン元素の含有量との比S/Pが3〜60、好ましくは30未満、より好ましくは20未満、さらに好ましくは10未満、なおいっそう好ましくは5〜10であることを特徴とする、ギアボックス用の潤滑剤組成物。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項において、ASTM D2270規格に従い測定される粘度指数VIが250を超え、好ましくは280を超え、より好ましくは300を超えることを特徴とする、ギアボックス用の潤滑剤組成物。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載のギアボックス用の潤滑剤組成物の使用であって、Directive EEC90/C81/01に準拠したNEDC試験の規格条件下で測定される自動車の省燃費率が1%を超え、好ましくは2.5%を超える、使用。
【請求項18】
請求項17において、省燃費率が、軽量自動車両のエンジン、好ましくはハイブリッド車両のエンジンの省燃費率である、使用。
【請求項19】
請求項17または18において、車両に、マニュアルギアボックス、オートマチックギアボックス、またはセミオートマチックギアボックスが装備されている、使用。
【請求項20】
ASTM D2270規格に従い測定される粘度指数VIが250を超え、かつ、ASTM D445規格に従い測定される100℃での動粘度が7mm/s未満である、式:RCOOCHで表される脂肪酸メチルエステル(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数13〜19のパラフィン基またはオレフィン基である)を少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%含む脂肪酸メチルエステル系基剤の使用であって、
Directive EEC90/C81/01に準拠したNEDC試験の規格条件下で、1%を超える省燃費率、好ましくは2.5%を超える省燃費率を達成可能なギアボックス用のオイルを配合するうえでの潤滑剤基剤としての使用。
【請求項21】
請求項20において、前記潤滑剤基剤が、式:RCOOCHで表される少なくとも1種の脂肪酸メチルエステル(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数15〜19、より好ましくは炭素数17のモノ不飽和オレフィン基、ジ不飽和オレフィン基、またはトリ不飽和オレフィン基である)を少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも80%含む、使用。
【請求項22】
請求項21において、前記潤滑剤基剤が、式:RCOOCHで表される少なくとも1種の脂肪酸メチルエステル(式中、Rは炭素数11〜23、好ましくは炭素数15〜19、より好ましくは炭素数17のモノ不飽和オレフィン基である)を少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%含む、使用。
【請求項23】
請求項20または21において、オレフィン基Rおよび/またはRの不飽和結合がシス配置である、使用。

【図1】
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【公表番号】特表2012−504677(P2012−504677A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529648(P2011−529648)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【国際出願番号】PCT/IB2009/007026
【国際公開番号】WO2010/038147
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(505036674)トータル・ラフィナージュ・マーケティング (39)
【Fターム(参考)】