トランドラプリラトの多形及び擬似多形、医薬組成物並びに製造及び使用方法
本発明は、結晶トランドラプリラトA形、結晶トランドラプリラトB形、結晶トランドラプリラトC形、結晶トランドラプリラトD形、結晶トランドラプリラトE形、及びその混合物といったトランドラプリラトの新規多形及び擬似多形を提供する。本発明は、トランドラプリラト、トランドラプリラトの医薬的に許容しうる塩、並びにトランドラプリラトの多形及び擬似多形、1種以上の新規トランドラプリラト化合物を含む医薬組成物の新規製造方法、並びに1種以上の新規トランドラプリラト化合物を用いて高血圧及び/又は心不全を治療する方法にも関する。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の背景〕
(発明の分野)
この出願は、2006年4月5日提出の先に係属している米国仮特許出願第60/789,806号から出願され、該出願の利益を主張する非仮特許出願である。米国仮特許出願第60/789,806号は、その全体がこの非仮特許出願に援用される。
本発明は、トランドラプリラトの新規な多形と擬似多形、及びその混合物、並びにトランドラプリラト、1種以上の新規トランドラプリラト化合物を含むトランドラプリラトの医薬的に許容しうる塩、トランドラプリラトの医薬的に許容しうる塩、トランドラプリラトの多形及び擬似多形、1種以上の新規トランドラプリラト化合物を含む医薬組成物の新規製造方法、並びに1種以上の新規トランドラプリラト化合物を用いて高血圧及び/又は心不全を治療する方法に関する。
(背景及び関連技術)
【0002】
トランドラプリラト{(2S,3aR,7aS)-1-[[(2S)-2-[[(1S)-1-カルボキシ-3-フェニルプロピル]アミノ]-プロパノイル]オクタヒドロ-1H-インドール-2-カルボン酸}はトランドラプリルの活性代謝物である。トランドラプリルとトランドラプリラトはそれぞれ以下に示す構造を有し、両方ともアンジオテンシン変換酵素(「ACE酵素」)として知られる酵素のインヒビターである。ACE酵素は、アンジオテンシンIのアンジオテンシンIIへの変換を触媒するペプチジルジペプチダーゼであり、強力な抹消血管収縮薬であり、副腎皮質によるアルドステロンの分泌をも刺激し、かつレニン分泌の負のフィードバックを与える。
【化1】
【0003】
ACEインヒビターであるトランドラプリル及びトランドラプリラトは、ACE活性を阻害し、結果として抗高血圧作用をもたらす。従って、トランドラプリル及びトランドラプリラトを用いて血圧を下げ、かつ心不全及び高血圧に関連する他の医療状態を治療しうる。トランドラプリル及びトランドラプリラトの高血圧における作用は、主に循環及び組織ACE活性の阻害、ひいてはアンジオテンシンII形成の低減、血管収縮の減少、アルドステロン分泌の低下及び血漿レニンの増加に起因すると考えられる。
トランドラプリルは、トランドラプリラトのエチルエステルプロドラッグであり、非スルフヒドリルアンジオテンシン変換酵素(ACE)インヒビターである。トランドラプリルが脱エステルして二酸代謝物、トランドラプリラトになる。トランドラプリラトは、ACE活性のインヒビターとしてトランドラプリルより約8倍強力であると、文献に記載されている。トランドラプリルを錠剤又はカプセル剤などの経口剤形として投与しうるが、公開された米国特許出願2004/0052835及び米国特許第6,303,141号に記載されているジカルボン酸(例えばトランドラプリラト)の形態で、又は治療的に活性な塩として該ACEインヒビターを用いた経皮投与がある。
公開された米国特許出願2004/0052835に記載されているように、経皮パッチにおける特定の不安定なACEインヒビターの使用は、パッチに使用した活性成分の分解という問題をもたらした。このような分解は、製品が分解の許容限界を超えたるとすぐに、短期間の貯蔵時間内で起こった。この文献では、ジカルボン酸と強酸(1:1)又は塩基(1:2)との反応によって形成される、ACEインヒビターの活性代謝物(=ジカルボン酸)の塩は、分解に関して実質的に安定であると記載されている。
非常に不利なことに、トランドラプリルとトランドラプリラト(不安定型)は両方ともその合成及び/又は貯蔵中に起こる分解反応(以下に示すように、対応するジケトピペラジンへの環化)で分解する傾向があることは周知である。
【0004】
【化2】
トランドラプリラトはその合成及び単離中に分解する傾向があり、最終生成物を汚染し、収率の損失をもたらす。
トランドラプリルとトランドラプリラトの安定化のため、特にこれらの化合物の製剤化のため、種々の方法及び成分が開発されている。例えば、米国特許第4,743,450号又は公開された特許出願番号U.S.2004/0137054を参照されたい。
上記問題は、分解する傾向があるACEインヒビターの調製及び安定化のための新しい頑強かつ有効な方法を開発することが要望されていることを示している。上記方法に加え、或いはそれとは別に、他のこのような方法は、該ACEインヒビターの異なる結晶形の研究と評価を包含しうることが判明した。この異なる結晶形が該化合物の安定性に確固とした役割を果たしうるからである。
一般に、化合物は種々の結晶形及び非結晶形で存在しうる。通常、非結晶性固体は「非晶形」と呼ばれ、分子の無秩序配列から成る。同じ化合物の異なる結晶形は、固体状態の分子の異なるパッキングから生じ、異なる結晶対称及び/又は単位セルパラメーターをもたらす。このような結晶形は、「多形」及び/又は「非溶媒和形」と呼ばれ、それらが本質的に残留有機溶媒のないことを意味する。該物質が、結晶構造中に、化学量論又は非化学量論の水を取り入れている場合(水和物)、又はいずれかの他の溶媒を取り入れている場合(溶媒和物)、それらは「擬似多形」と呼ばれる。
【0005】
多くの化合物は、種々の多形、擬似多形又は非晶形で存在することが分かっている。このような異なる固体形は異なる物理的、分光学的及び/又は化学的性質、例えば溶解度及び溶解速度、融点、密度、安定性及び流動特性を有しうる。活性化合物では、溶解度と溶解速度が、その製剤化の際に考慮しなければならないバイオアベイラビリティー、密度及び流動特性に影響を与えうる。さらに、これらの化合物の化学的及び物理的(熱力学的)安定性は、例えば、熱力学的にあまり安定でない(反応速度論的に好ましい)多形相の、より安定な多形相への分解又は変換に関して重要であり、これらの化合物の生物学的活性に影響しうる。
トランドラプリルの合成方法は、例えば、EP 0084164(及びその対応米国特許第4,933,361号)及びWO 2005/051909に開示されている。
トランドラプリルからトランドラプリラトを適切に調製する方法は文献に記載されていない。トランドラプリラトのジアステレオマー異性体の製法は、J. Med. Chem. 30, 992-998 (1987)に記載されているが、該二酸の単離のため、生じた混合物を凍結乾燥し、かつアンバーライトIR-120上のイオン交換クロマトグラフィーによって残留残渣を精製する必要があった。不利なことに、この方法はトランドラプリラトの大規模生産に適さない。
トランドラプリラトのさらなる製法が米国特許第5,101,039号に記載されている。具体的手順が提供されず、言及されている手順はいくつかの欠点に悩む:それは結晶性物質を与えず;真空下での水の除去を必要とし;かつ溶媒としてジ-イソプロピルエーテルの使用に依存する。単離及び精製の点で結晶性物質が明らかに望ましく;真空下での水の除去は時間がかかり;かつジ-イソプロピルエーテルは危険な過酸化物を非常に形成しやすい。従って、この手順は好適な技術的プロセスでない。
上記に鑑み、大規模にトランドラプリラト、及びその塩、多形、擬似多形及び混合物を調製する効率的な信頼できる頑強な方法、並びに合成及び貯蔵中に改良された安定性を有するトランドラプリラトの多形及び擬似多形を提供することが有益だろう。
【0006】
〔発明の概要〕
有利には、本発明は、高い収率と純度で大規模にトランドラプリラト、及びその塩、多形、擬似多形及び混合物を調製する効率的な信頼できる頑強な方法、並びにトランドラプリラトの非溶媒和形に比べて合成及び貯蔵中に改良された安定性(対応するジケトピペラジンへの環化を受ける傾向の低減)を有するトランドラプリラトの異なる多形及び擬似多形を提供する。トランドラプリラトの結晶形は、その安定化で重要な役割を果たすのみならず、トランドラプリルからの効率的な頑強かつ純粋な調製を斟酌することを究明した。
不安定型トランドラプリラトは、特に対応するジケトピペラジン誘導体への環化によって分解するという高い傾向があるので、該二酸の調製と精製(例えば、高温での再結晶)は非常に困難であり、収率の損失をもたらし、多くの場合、許容できない低純度となる。
驚くべきことに、かつ予想外に、トランドラプリルの二酸(トランドラプリラト)がアルコール及び/又は水と異なる擬似多形を形成し、異なる擬似多形がトランドラプリラトの非溶媒和形に比べて(特に対応するジケトピペラジンへの環化について)合成及び/又は貯蔵中に高い安定性を有し、かつ高い収率と純度で調製されうることを究明した。さらに、トランドラプリラトのこれらの擬似多形は、温和な条件下で高い収率と純度で不安定型(非溶媒和)形に変換できることを究明した。
一局面では、本発明は、多形又は擬似多形の結晶トランドラプリラトの調製方法であって、以下の工程を含んでなる方法を提供する:
(a)n-ブタノールと水を含有する溶液中でトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与える工程;及び
(b)前記溶液から、トランドラプリラトの結晶化を誘導するために十分な量の水を除去する工程。
【0007】
別の局面では、本発明は、トランドラプリラトの調製方法であって、以下の工程を含んでなる方法を提供する:
(a)鹸化反応溶媒中、少なくともほとんど完全な鹸化を可能にするために有効な温度で、かつ有効な時間、トランドラプリルを水酸化化合物と反応させる工程(ここで、前記水酸化化合物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、テトラアルキルアンモニウム水酸化物又は置換アルキルアンモニウム水酸化物であり、かつ前記トランドラプリル、水酸化化合物及び鹸化反応溶媒を、それぞれ下記式(3):
【0008】
【化3】
(式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウムイオンであり、かつnは1又は2である)
の塩を含む反応混合物を生成するために有効な量で使用する);
(b)工程(a)の反応混合物を、該混合物のpHをその等電点に到達させ、かつトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与えるために有効な量の酸と、有効な時間、かつ有効な温度で混合する工程;及び
(c)工程(b)から生じた反応混合物から、トランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で単離する工程。
【0009】
さらなる局面では、本発明は、多形又は擬似多形の結晶トランドラプリラトの調製方法であって、以下の工程を含んでなる方法を提供する:
(a)水、C1-C4アルコール及びその混合物から選択される鹸化反応溶媒中、少なくともほとんど完全な鹸化を可能にするために有効な温度で、かつ有効な時間、トランドラプリルを水酸化化合物と反応させる工程(ここで、前記水酸化化合物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、テトラアルキルアンモニウム水酸化物又は置換アルキルアンモニウム水酸化物であり、かつ前記トランドラプリル、水酸化化合物及び鹸化反応溶媒を、それぞれ下記式(3):
【化4】
【0010】
(式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウムイオンであり、かつnは1又は2である)
の塩を含む反応混合物を生成するために有効な量で使用する);
(b)工程(a)で使用する前記鹸化反応溶媒がn-ブタノール以外のアルコールを含む場合、工程(a)の反応混合物から該アルコールを除去する工程;
(c)工程(b)の反応混合物が水溶液でない場合、水溶液を与えるために有効な量の水を前記反応混合物に添加する工程;
(d)工程(c)の生成物を、該混合物のpHをその等電点に到達させ、かつトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与えるために有効な量の酸と、有効な時間、かつ有効な温度で混合する工程;
(e)工程(d)の混合物から、n-ブタノールと水を含有する溶液中でトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与えるために有効な量のn-ブタノールで、有効な温度にてトランドラプリラトを抽出する工程;及び
(f)工程(e)の溶液から、トランドラプリラトの結晶化を誘導し、かつ多形又は擬似多形の結晶トランドラプリラトを与えるために十分な量の水を除去する工程。
【0011】
さらに別の局面では、本発明は、実質的に純粋な結晶形で、又は異なる結晶形の混合物としてトランドラプリラトを生成する方法であって、以下の工程を含んでなる方法を提供する:
(a)水、C1-C4アルコール及びその混合物から選択される鹸化反応溶媒中、少なくともほとんど完全な鹸化を可能にするために有効な温度で、かつ有効な時間、トランドラプリルを水酸化化合物と反応させる工程(ここで、前記水酸化化合物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、テトラアルキルアンモニウム水酸化物又は置換アルキルアンモニウム水酸化物であり、かつ前記トランドラプリル、水酸化化合物及び鹸化反応溶媒を、それぞれ下記式(3):
【化5】
【0012】
(式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウムイオンであり、かつnは1又は2である)
の塩を含む反応混合物を生成するために有効な量で使用し、かつ
前記鹸化反応溶媒がC1-C4アルコールと水の混合物を含む場合、このC1-C4アルコールと水は、少なくともほとんど完全な鹸化を可能にするために有効な比で存在する);
(b)工程(a)で使用する前記鹸化反応溶媒がC4アルコールを含む場合、工程(a)の反応混合物から該C4アルコールを除去する工程;
(c)工程(b)の反応混合物が水溶液でない場合、水溶液を与えるために有効な量の水を前記反応混合物に添加する工程;
(d)工程(c)の生成物を、該混合物のpHをその等電点に到達させ、かつ実質的に純粋な遊離アミノ酸形で、又は少なくとも2種の異なる遊離アミノ酸形の混合物としてトランドラプリラトを与えるために有効な量の酸と、有効な時間、かつ有効な温度で混合する工程;
(e)工程(d)の生成物を上澄みから分離する工程;及び
(f)工程(e)の生成物を乾燥させて、実質的に純粋な結晶形で、又は少なくとも2種の異なる結晶形の混合物としてトランドラプリラトを与える工程。
【0013】
別の局面では、本発明は、実質的に純粋な結晶形で、又は結晶形の混合物としてトランドラプリラトを生成する方法であって、以下の工程を含んでなる方法を提供する:
(a)エタノールと水を約1/1〜約1/1.5の体積比で含む鹸化反応溶媒中、約20℃〜約25℃の範囲の温度で、下記式(3):
【化6】
【0014】
(式中、Mはナトリウムであり、かつnは2である)
の塩を含む反応混合物を生成するために十分な時間、トランドラプリルを少なくとも2.0当量のNaOHと反応させる工程;
(b)工程(a)の生成物のpHを塩酸で約3.6〜約4.0の範囲に調整して、実質的に純粋な遊離アミノ酸形で、又は少なくとも2種の異なる遊離アミノ酸形の混合物としてトランドラプリラトを与える工程;
(c)工程(b)の生成物を上澄みから分離する工程;及び
(d)工程(c)の生成物を乾燥させて、実質的に純粋な結晶形で、又は少なくとも2種の異なる結晶形の混合物としてトランドラプリラトを与える工程。
【0015】
別の局面では、本発明は、下記式(4)の構造を含む結晶形のトランドラプリラトを提供する。
【化7】
(式中、RはH又はC1-C4アルキルであり、nは0〜2の範囲であって、化学量論的又は非化学量論的でよい。)
【0016】
別の局面では、本発明は、トランドラプリラトA形、トランドラプリラトB形、トランドラプリラトC形、トランドラプリラトD形又はトランドラプリラトE形である結晶トランドラプリル、医薬的に有効な量の結晶トランドラプリラトA、B、C、D及び/又はE形を含んでなる医薬組成物、並びにトランドラプリラトA形、トランドラプリラトB形、トランドラプリラトC形、トランドラプリラトD形及びトランドラプリラトE形から成る群より選択少なくとも1種の結晶トランドラプリラトを含んでなるトランドラプリラトA、B、C、D及び/又はE形の医薬組成物を投与することを含む治療方法を提供する。
【0017】
〔好ましい実施形態の詳細な説明〕
本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明、及びその中に含まれる実施例を参照して、本発明をより容易に理解できるだろう。
(定義)
明瞭さの目的のため、この明細書及び添付の特許請求の範囲全体を通して使用する用語とフレーズは、以下に述べる様式で定義される。この明細書又は添付の特許請求の範囲で使用する用語又はフレーズが以下に、又はこの明細書で別の様式で定義されない場合、その用語又はフレーズはその通常の意味が与えられるものとする。
本明細書では、フレーズ「経皮投与」は、皮膚上に(通常、表皮などの皮膚の1以上の露出面又は外面上に)、例えば、手、指又は種々多様なアプリケーター(スプレー、ポンプ、ブラシ、マット、パウダーパフ、コットンボール、キューチップ、パッチ等)を用いて適用することを意味する。例えば、皮膚若しくは毛の中又は上に置く、注ぐ、広げる、噴霧する、振りかける又はマッサージすることによって、或いは他の便利又は適切ないずれの方法によっても適用することができる。
化合物と関係して本明細書で使用する場合、フレーズ「非晶形」は、分子の無秩序な配列から成る非結晶性固体(すなわち、結晶形にない)を意味する。
本明細書では、フレーズ「心不全」は、心筋への不十分な血流を意味し、狭心症を引き起こしうる。
本明細書では、用語「結晶」は、一般的に規則的な原子構造(その原子、イオン又は分子の配列によって形成される特徴的な形状と切断面;一般的に「格子」と呼ばれる一定のパターンを含む)を有する、化合物の凝固によって形成された固体を意味する。
本明細書では、用語「結晶化」は結晶の形成を意味する。
本明細書では、用語「環化」は、新しい結合の形成による鎖からの環又は環化合物の形成を意味する。
本明細書で論じる化合物又は医薬組成物と関係して本明細書で使用する場合、フレーズ「有効な量」は、ヒト等の対象に心臓若しくは他の健康上及び/又は医療上の利益を与え、或いは増強するために有効な量の化合物又は医薬組成物を意味する。本明細書で提供する情報、及び既知の情報を用いて、本技術の当業者は、種々多様な異なる医療状況下のヒト及び種々多様な動物に心臓、健康上及び/又は医療上の利益を与え、或いは増強するために有効であろう、本明細書で論じる1種以上の化合物及び医薬組成物の量を容易に決定することができる。
【0018】
本明細書では、略語「Et」はエチルを意味する。
本明細書では、用語「水和物」は、結晶構造に化学量論量又は非化学量論量の水を取り込む化合物の結晶形を意味する。
本明細書では、表7中などの略語「n.d.」は決定しないことを意味する。
本明細書では、略語「PXRD」は、粉末X線回折を意味する。
本明細書では、フレーズ「医薬的に許容しうる」は、ゾンデ医療判断の範囲内にある、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは混乱なしで、妥当な利益/危険比で釣り合っている、ヒト及び/又は動物の組織と接触して使うために適した当該化合物、材料、組成物及び/又は剤形を意味する。
本明細書では、フレーズ「医薬的に許容しうる担体」は、体の、ある器官、組織又は部分から体の別の器官、組織又は部分に化合物又は医薬を運搬又は輸送するときに関与する医薬的に許容しうる材料、組成物又はビヒクル、例えば固体若しくは液体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒又は封入材料を意味する。医薬的に許容しうる担体として役に立ちうる材料の例として、限定するものではないが、糖類(例えばラクトース、グルコース及びスクロース)、デンプン(例えばコーンスターチ及びジャガイモデンプン)、セルロースとその誘導体、ゼラチン、蝋、油、水、及び医薬製剤で利用される当業者に既知の他の物質が挙げられる。
本明細書では、フレーズ「医薬的に許容しうる塩」は、本発明のトランドラプリラト化合物の無毒塩を指し、通常、遊離塩基を適切な有機若しくは無機酸と反応させるか、又は遊離酸を適切な塩基と反応させることによって調製される。当業者は、トランドラプリラト化合物の医薬的に許容しうる塩を生成するためにどの酸及び/又は塩基が適切であるかを容易に決定しうる。
【0019】
本明細書では、フレーズ「多形(polymorph)」、「多形(polymorphic form)」及び「非溶媒和形」は、該結晶性物質中に、(a)水;及び(b)他の残留及び/又は非残留有機若しくは他の溶媒が本質的にない(すなわち約2%未満)、化合物(特定の結晶対称及び/又は単位セルパラメーターで固体状態に充填されたその分子を有する化合物)の結晶形を指す。
本明細書では、フレーズ「擬似多形(pseudopolymorph)」及び「擬似多形(pseudopolymorphic form)」は、その結晶構造中に、(a)化学量論量若しくは非化学量論量の水(水和物);又は(b)1種以上の他の溶媒を取り込む化合物(特定の結晶対称及び/又は単位セルパラメーターで固体状態に充填されたその分子を有する化合物)の結晶形を指す。
本明細書では、用語「鹸化」は、アルコールと酸の塩を形成するための塩基性条件下におけるエステルの加水分解を意味する。
本明細書では、用語「結晶核を入れる(seeding)」は、小量の材料を用いて結晶化事象を開始又は促進することを意味する。
本明細書では、用語「溶媒和物」は、結晶構造中に、ある量の1種以上の溶媒を取り込む化合物の結晶形を意味する。
本明細書では、フレーズ「直鎖若しくは分岐鎖C1-C4アルコール」として、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール及びt-ブタノールが挙げられる。
本明細書では、用語「対象」はヒト及び動物を包含する。
本明細書で結晶トランドラプリラトの形と関係して使用されるフレーズ「実質的に純粋」は、結晶トランドラプリラトが、トランドラプリラトの1つの結晶形を少なくとも約70%含有し、さらに好ましくはトランドラプリラトの1つの結晶形を少なくとも約90%含有し、最も好ましくはトランドラプリラトの1つの結晶形を少なくとも約95%含有することを意味する。
本明細書では、略語「XRPD」はX線粉末回折を意味する。
【0020】
(一般的説明)
トランドラプリラト(不安定型)はその合成及び単離中に分解する傾向があり、不利なことに最終生成物の汚染及び収率の損失をもたらすので、他のスケーラブル法、例えば、J. Med. Chem. 30, 992-998 (1987)でトランドラプリラトジアステレオマーについて記載されているような、凍結乾燥による化合物の単離及びイオン交換体を使用する精製に関連して存在する困難を回避する、実質的に純粋な形かつ高い収率のトランドラプリラトの調製を可能にする簡単な効率的かつ頑強な方法を見つけることが望ましかった。
好ましくは凍結乾燥、及びイオン交換体による生成物の精製を回避する、大規模に、トランドラプリラト、及びその塩、多形、擬似多形及びその混合物を調製かつ単離する効率的な信頼のできる頑強な方法を開発した。高い収率と純度のトランドラプリラトのスケーラブル合成にこの新規方法を使用できる。
有利なことに、新規な安定結晶形の形成によってトランドラプリラトを安定化する新規方法を発見した。トランドラプリラトのこれらの新規結晶形は、トランドラプリラトの非溶媒和(不安定型)形に比し、合成及び貯蔵中に改良された安定性(対応ジケトピペラジンへの環化を受ける傾向の低減)を有する。
本発明の方法に従って生成できるトランドラプリラトの新規多形及び擬似多形のうち、トランドラプリラトの結晶形A、トランドラプリラトの結晶形B、トランドラプリラトの結晶形C、トランドラプリラトの結晶形D及びトランドラプリラトの結晶形E、並びにその混合物が好ましい。トランドラプリラトのこれらの形の重要な特性、並びにそれらを調製するための手順及び実施例を以下に要約する。「第1手順」及び「第2手順」は、詳細に後述する2つの異なる合成手順に相当する。実施例番号は、後述する実施例セクションにある実施例と関連する。
【0021】
トランドラプリラトA〜E形
【0022】
(トランドラプリラトの精製と単離の手順)
一局面では、本発明は、下記トランドラプリラト(1):
【化8】
【0023】
の精製及び単離の新規方法であって、以下の工程を含んでなる方法を提供する:
(a)下記トランドラプリル(2):
【化9】
【0024】
を、鹸化反応溶媒中、少なくともほとんど完全な鹸化を可能にするために有効な温度で、かつ有効な時間、水酸化化合物と反応させる工程(ここで、前記水酸化化合物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、テトラアルキルアンモニウム水酸化物又は置換アルキルアンモニウム水酸化物であり、かつ前記トランドラプリル、水酸化化合物及び鹸化反応溶媒を、それぞれ下記式(3):
【化10】
【0025】
(式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウムイオンであり、かつnは1又は2である)
の塩を含む反応混合物を生成するために有効な量で使用する);
(b)工程(a)の反応混合物を、該混合物のpHをその等電点に到達させ、かつトランドラプリラトを遊離アミノ酸形で与えるために有効な量の酸と、有効な時間、かつ有効な温度で混合する工程;及び
(c)工程(b)から生じた反応混合物から、トランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で単離する工程。
【0026】
上記方法の工程について以下にさらに詳述する。
工程(a):
(水酸化化合物)
工程(a)で使用する水酸化化合物は、好ましくはアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、テトラアルキルアンモニウム水酸化物又は置換アルキルアンモニウム水酸化物である。使用しうるアルカリ金属水酸化物の例として、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化リチウム(LiOH)等が挙げられる。使用しうるアルカリ土類金属水酸化物の例として、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。使用しうるテトラアルキルアンモニウム水酸化物の例として、該アルキル基がメチル乃至ヘキシルの範囲である当該テトラアルキルアンモニウム水酸化物が挙げられる。水酸化ベンジル(トリメチルアンモニウム)等の置換アルキルアンモニウム水酸化物をも使用しうる。水酸化化合物のうち、アルカリ金属水酸化物、特に水酸化ナトリウムが好ましい。
(鹸化反応溶媒)
工程(a)で使用しうる鹸化反応溶媒として以下のものが挙げられる:(i)直鎖若しくは分岐鎖C1-C4アルコール;(ii)水;及び(iii)(i)及び/又は(ii)のいずれかの混合物、例えばエタノールと水の混合物。工程(a)で使用する鹸化反応溶媒は、好ましくはエタノール、水又はエタノールと水の混合物であり、最も好ましくはエタノールと水の混合物である。
鹸化反応溶媒が、エタノール等のC1-C4アルコールと水の混合物の場合、C1-C4アルコールと水との比は広い範囲を有し、好ましくは体積で約5:1〜約1:5、さらに好ましくは体積で約2:1〜約1:2、なおさらに好ましくは体積で約1.5:1〜約1:1.5であり、最も好ましくは体積で約1/1の比である。
【0027】
(反応物と溶媒の量)
工程(a)で使用するトランドラプリル、水酸化化合物及び鹸化反応溶媒は、上述したように、それぞれ、式(3)の塩を含む反応混合物を生成するために有効な量で使用される。当業者は、このような量を容易に決定することができる。しかし、好ましくは約9〜約14%(質量対容量)の範囲のトランドラプリルである。
このプロセスの好ましい実施形態では、反応混合物に少なくとも2.0当量の水酸化物を与えるために少なくとも十分な量の水酸化化合物を使用する。別の好ましい実施形態では、使用するトランドラプリルの量を超過する量、好ましくは、使用するトランドラプリルの量に対して約3.0当量の量、さらに好ましくは約2.5当量の量、最も好ましくは約2.2当量の量で水酸化化合物を供給する。
(温度)
工程(a)は、好ましくは少なくともほとんど完全な鹸化を可能にする(例えば、約80%以上のトランドラプリルがトランドラプリラトに変換する)、さらに好ましくは実質的に完全な鹸化を可能にするために有効な温度で行われる。当業者に既知の方法、例えば高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)で変換をモニターすることができる。この温度は、通常、約0℃〜約40℃の範囲、好ましくは約15℃〜約25℃の範囲であり、便宜上、室温で行ってよい。より高い温度は、不利なことに高量の不純物の生成となりうる。これは、過剰な水酸化化合物(塩基)の存在下における式(3)の塩のエピマー化によって起こりうる。少なくともほとんど完全な鹸化を可能にするために有効な時間(例えば、12〜20時間)、例えば、20〜25℃で15時間、工程(a)を行ってよい。
(式3の塩)
工程(a)で形成される式(3)の塩中、Mは、上述したように、アルカリ金属、アルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウムイオンでよい。
【0028】
工程(b):
(酸)
工程(b)では、工程(a)の反応混合物を、該混合物のpHをその等電点に到達させ、かつトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与えるために有効な量の酸と混合する。このようなpHは一般的に約3.6〜4.0の範囲である。当業者は、このような酸の量を容易に決定することができる。
工程(a)の反応混合物を等電点まで酸化するために工程(b)で使用しうる酸として、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸又はリン酸が挙げられる。好ましくは、使用する酸は塩酸である。
(温度)
工程(b)において、酸と工程(a)の反応混合物の混合は、好ましくは、混合物のpHをその等電点に到達させ、かつトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で、実質的にトランドラプリラトを分解することなく与えるために有効な温度で起こる。
(時間)
工程(b)において、酸と工程(a)の反応混合物の混合は、好ましくは、混合物のpHをその等電点に到達させ、かつトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与えるために有効な時間、例えば、約0.5時間〜約48時間、好ましくは約0.5時間〜約6時間起こる。
【0029】
工程(c):
工程(c)では、抽出又は沈殿によって、工程(b)の混合物からトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で単離する。このような単離方法については後述するが、当業者は該単離方法を日常的に決定することができる。
(純度と収率)
この方法で生成されるトランドラプリラトは、一般的に少なくとも実質的に純粋であり、好ましくは少なくとも約85%の純度を有し、さらに好ましくは少なくとも約90%の純度を有し、なおさらに好ましくは少なくとも約95%の純度を有する。
【0030】
多形又は擬似多形の結晶トランドラプリラトの調製及び単離の手順−(第1手順):
別の局面では、本発明は、結晶トランドラプリラトA形(トランドラプリラトの擬似多形)といった多形又は擬似多形の結晶トランドラプリラトの調製及び単離の新規方法を提供する。
驚くべきことに、かつ予想外に、遊離アミノ酸形としてのトランドラプリラトは、水で飽和したn-ブタノールに可溶性であり、かつこのn-ブタノール/水混合物を、該反応混合物のpHを等電点に調整後、水層からn-ブタノールでトランドラプリラトを抽出するために使用できることが分かった。
従って、本発明のこの局面は、多形又は擬似多形の結晶トランドラプリラトを調製する方法であって、以下の工程を含んでなる方法である:
(a)下記トランドラプリル(2):
【0031】
【化11】
を、水、C1-C4アルコール及びその混合物から選択される鹸化反応溶媒中、少なくともほとんど完全な鹸化を可能にするために有効な温度で、かつ有効な時間、水酸化化合物と反応させる工程(ここで、前記水酸化化合物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、テトラアルキルアンモニウム水酸化物又は置換アルキルアンモニウム水酸化物であり、かつ前記トランドラプリル、水酸化化合物及び鹸化反応溶媒を、それぞれ下記式(3):
【0032】
【化12】
(式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウムイオンであり、かつnは1又は2である)
の塩を含む反応混合物を生成するために有効な量で使用する);
(b)工程(a)で使用する前記鹸化反応溶媒がn-ブタノール以外のアルコールを含む場合、工程(a)の反応混合物から該アルコールを除去する工程;
(c)工程(b)の反応混合物が水溶液でない場合、水溶液を与えるために有効な量の水を前記反応混合物に添加する工程;
(d)工程(c)の生成物を、該混合物のpHをその等電点に到達させ、かつトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与えるために有効な量の酸と、有効な時間、かつ有効な温度で混合する工程;
(e)工程(d)の混合物から、n-ブタノールと水を含有する溶液中でトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与えるために有効な量のn-ブタノールで、有効な温度にて、トランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で抽出する工程;及び
(f)工程(e)の溶液から、トランドラプリラトの環化を誘導し、かつ多形又は擬似多形の結晶トランドラプリラトを与えるために十分な量の水を除去する工程。
上記方法の工程について以下にさらに詳述する。
【0033】
工程(a):
(水酸化化合物)
工程(a)で使用する水酸化化合物は、好ましくはアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、テトラアルキルアンモニウム水酸化物又は置換アルキルアンモニウム水酸化物である。これらの化合物の例は、トランドラプリラトの調製手順について上述したものと同一である。水酸化化合物は、好ましくはアルカリ金属水酸化物であり、最も好ましくは水酸化ナトリウムである。
(鹸化反応溶媒)
工程(a)で使用しうる鹸化反応溶媒は、トランドラプリラトの調製手順について上述したものと同一の鹸化反応溶媒を包含する。工程(a)で使用する鹸化反応溶媒は、好ましくはエタノール、水又はエタノールと水の混合物であり、最も好ましくはエタノールと水の混合物である。
鹸化反応溶媒が、エタノール等のC1-C4アルコールと水の混合物の場合、C1-C4アルコールと水との比は広い範囲を有し、好ましくは体積で約5:1〜約1:5、さらに好ましくは体積で約2:1〜約1:2、なおさらに好ましくは体積で約1.2:1〜約1:1.2であり、最も好ましくは約1/1の体積比である。
【0034】
(反応物と溶媒の量)
工程(a)で使用するトランドラプリル、水酸化化合物及び鹸化反応溶媒は、上述したように、それぞれ、式(3)の塩を含む反応混合物を生成するために有効な量で使用される。当業者は、このような量を容易に決定することができる。しかし、使用するトランドラプリルの量は、好ましくは約9〜約14%の範囲である。
このプロセスの好ましい実施形態では、反応混合物に少なくとも2.0当量の水酸化物を与えるために少なくとも十分な量の水酸化化合物を使用する。別の好ましい実施形態では、使用するトランドラプリルの量を超過する量、好ましくは、使用するトランドラプリルの量に対して約3.0当量の量、さらに好ましくは約2.5当量の量、最も好ましくは約2.25当量の量で水酸化化合物を与える。
(温度)
工程(a)は、好ましくは少なくともほとんど完全な鹸化を可能にする、さらに好ましくは実質的に完全な鹸化を可能にするために有効な温度で行われる。当業者に既知の方法、例えばHPLCで変換をモニターすることができる。この温度は、通常、約0℃〜約40℃の範囲、好ましくは約15℃〜約25℃の範囲、さらに好ましくは約20℃〜約25℃の範囲である。より高い温度は、不利なことに高量の不純物の生成となりうる。これは、過剰な水酸化化合物(塩基)の存在下における式(3)の塩のエピマー化によって起こりうる。
【0035】
(時間)
工程(a)は、少なくともほとんど完全な鹸化を可能にする、さらに好ましくは実質的に完全な鹸化を可能にするために有効な時間行われる。工程(a)で使用する時間は、典型的に約5〜約30時間の範囲であり、好ましくは約10〜約25時間の範囲である。
(式3の塩)
工程(a)で形成される式(3)の塩中、Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウムイオンでよい。これらの化合物の例は、トランドラプリラトの調製手順について上述したものと同一である。
【0036】
工程(b)及び(c):
工程(a)で使用する選択された鹸化反応溶媒がアルコール、又はアルコールと水の混合物であり、かつ単独又は混合物で使用する該アルコールがn-ブタノール以外のアルコールの場合、このアルコールを除去すべきであり、当業者に既知の方法、例えばエバポレーションを利用して達成することができる。そうでない場合(使用するアルコールがn-ブタノールだけの場合)、該アルコールを除去する必要はない。工程(b)の結果が水溶液でない場合、水溶液を与えるために有効な量の水を反応混合物に添加すべきである。
【0037】
工程(d):
(酸)
工程(d)では、工程(c)の生成物を、該混合物のpHをその等電点に到達させ、かつトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与えるために有効な量の酸と混合する。このようなpHは一般的に約3.6〜4.0の範囲である。当業者は、このような酸の量を容易に決定することができる。
工程(c)の生成物を等電点まで酸化するために工程(d)で使用しうる酸として、例えば、トランドラプリラトの調製手順について上述した当該酸が挙げられる。好ましくは、使用する酸は塩酸であり、かつ塩酸は2Nの塩酸水溶液である。
(温度)
工程(d)において、酸と工程(c)の生成物の混合は、好ましくは、該混合物のpHをその等電点に到達させ、かつトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与えるために有効な温度で起こる。このような温度は、一般的に約20℃〜約80℃の範囲、好ましくは約30℃〜約70℃の範囲、さらに好ましくは約60℃〜約70℃の範囲である。
(時間)
工程(d)では、酸と工程(c)の生成物の混合は、好ましくは該混合物のpHをその等電点に到達させ、かつトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与えるために有効な時間起こる。
【0038】
工程(e):
工程(e)では、工程(d)の混合物から、n-ブタノールと水を含有する溶液又は二相混合物中でトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与えるために有効な量のn-ブタノール、又はn-ブタノールと水の共沸混合物で、トランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で抽出する。
この抽出は、ほぼ室温乃至n-ブタノール/水の共沸混合物のほぼ沸点の範囲の温度、好ましくはほぼ室温〜約70℃、さらに好ましくは約50℃〜約60℃で行われる。
使用すべきn-ブタノール又はn-ブタノールと水の共沸混合物の量は、一般的に約5:1〜約1:5の範囲、好ましくは約2:1〜約1:2の範囲、最も好ましくは約1:1である。
【0039】
工程(f):
工程(f)では、工程(e)の溶液から、トランドラプリラトの環化を誘導し、かつ多形又は擬似多形の結晶トランドラプリラトを与えるために十分な量の水を除去する。トランドラプリラトは、無水n-ブタノールに溶けないので、水を除去することによって、例えば、トランドラプリラトを含有するn-ブタノール/水溶液を共沸蒸留を利用することによって、有機層からのトランドラプリラトの環化を惹起(して結晶トランドラプリラトを与える)ことができる。
所望のトランドラプリラト生成物を得る必要がある場合、工程(f)の生成物を、任意に、擬似多形の結晶トランドラプリラトを与えるために有効な温度と圧力で、かつ有効な時間、乾燥させてよい。
(純度と収率)
この方法で生成されるトランドラプリラトは、通常、少なくとも約92%の収率で実質的に純粋な結晶形として得られる。該トランドラプリラトは、99.5%より高い純度を有して得られた。Luna C18(150×4.6mm、3μm;製造業者:Phenomenex, Torrence, CA, USA)カラム、及びSymmetry C18(2)(150×4.6mm、3.5μm;製造業者:Waters Corporation, Millford, MA, USA)カラムを用い、移動相として移動相A:水中0.03%v/vのトリフルオロ酢酸;移動相B:アセトニトリル中0.025%v/vのトリフルオロ酢酸を用い;カラム温度30℃、流速:1.5ml/分、検出:UV 206nm;以下の溶出液勾配を用いて、HPLCで純度を決定した:
時間[分] Aの% Bの%
0 90 10
20.00 10.0 90.0
25.00 10.0 90.0
この文書全体を通じて議論する種々の他の実験において、同様に、かつ同じ装置を用いて純度を決定した。
【0040】
多形又は擬似多形の結晶トランドラプリラトの調製及び単離の手順−(第2手順):
別の局面では、本発明は、結晶トランドラプリラトB形(トランドラプリラトの擬似多形)、結晶トランドラプリラトC形(トランドラプリラトの擬似多形)及び結晶トランドラプリラトD形(トランドラプリラトの擬似多形)といった、多形又は擬似多形の結晶トランドラプリラトを調製及び単離するため、又は少なくとも2種の異なる形の結晶トランドラプリラトの混合物として調製及び単離するための新規方法を提供する。この方法は、適切な溶媒中、水酸化化合物を用いたトランドラプリルの鹸化で始まる。次に、混合物のpHを等電点に調整後、反応混合物からの結晶化によって、結晶トランドラプリラト化合物、又は結晶トランドラプリラト化合物の混合物を単離する。
本発明のこの局面は、実質的に純粋な結晶形で(多形又は擬似多形として)、又は少なくとも2種の異なる結晶形の混合物として、トランドラプリラトを生成する方法であって、以下の工程を含んでなる方法である:
(a)下記トランドラプリル(2):
【0041】
【化13】
を、水、C1-C4アルコール及びその混合物から選択される鹸化反応溶媒中、少なくともほとんど完全な鹸化を可能にするために有効な温度で、かつ有効な時間、水酸化化合物と反応させる工程(ここで、前記水酸化化合物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、テトラアルキルアンモニウム水酸化物又は置換アルキルアンモニウム水酸化物であり、かつ前記トランドラプリル、水酸化化合物及び鹸化反応溶媒を、それぞれ下記式(3):
【0042】
【化14】
(式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウムイオンであり、かつnは1又は2である)
の塩を含む反応混合物を生成するために有効な量で使用する);
(b)工程(a)で使用する前記鹸化反応溶媒がC4アルコールを含む場合、工程(a)の反応混合物から該C4アルコールを除去する工程;
(c)工程(b)の反応混合物が水溶液でない場合、水溶液を与えるために有効な量の水を前記反応混合物に添加する工程;
(d)工程(c)の生成物を、該混合物のpHをその等電点に到達させ、かつ実質的に純粋な遊離アミノ酸形のトランドラプリラトを与えるために有効な量の酸と、有効な時間、かつ有効な温度で混合する工程;
(e)工程(d)の生成物を上澄みから分離する工程;及び
(f)工程(e)の生成物を乾燥させて、実質的に純粋な結晶形で、又は少なくとも2種の異なる結晶形の混合物としてトランドラプリラトを与える工程。
上記方法の工程について以下にさらに詳述する。
【0043】
工程(a):
(水酸化化合物)
工程(a)で使用する水酸化化合物は、好ましくはアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、テトラアルキルアンモニウム水酸化物又は置換アルキルアンモニウム水酸化物である。これらの化合物の例は、トランドラプリラトの調製手順について上述したものと同一である。水酸化化合物は、好ましくはアルカリ金属水酸化物であり、最も好ましくは水酸化ナトリウムである。
(鹸化反応溶媒)
工程(a)で使用しうる鹸化反応溶媒は、トランドラプリラトの調製手順について上述したものと同一の鹸化反応溶媒を包含する。工程(a)で使用する鹸化反応溶媒は、好ましくはエタノール、水又はエタノールと水の混合物であり、最も好ましくはエタノールと水の混合物である。
鹸化反応溶媒が、メタノール等のC1-C4アルコールと水の混合物の場合、C1-C4アルコールと水との比は広い範囲を有し、好ましくは体積で約5:1〜約1:5、さらに好ましくは体積で約2:1〜約1:2、なおさらに好ましくは体積で約1/1〜約1/1.5であり、最も好ましくは約1/1の体積比である。
【0044】
(反応物と溶媒の量)
工程(a)で使用するトランドラプリル、水酸化化合物及び鹸化反応溶媒は、上述したように、それぞれ、式(3)の塩を含む反応混合物を生成するために有効な量で使用される。当業者は、このような量を容易に決定することができる。しかし、上述したように、好ましくは、トランドラプリルの出発原料は、約9〜約14%の範囲の濃度で反応混合物に利用される。水酸化化合物の量も上述した通りである。
このプロセスの好ましい実施形態では、反応混合物に少なくとも2.0当量の水酸化物を与えるために少なくとも十分な量(使用するトランドラプリルの量に基づいて計算)の水酸化化合物を使用する。別の好ましい実施形態では、使用するトランドラプリルの量を超過する量、好ましくは、使用するトランドラプリルの量に対して約3.0当量の量、さらに好ましくは約2.5当量の量、最も好ましくは約2.2当量の量で水酸化化合物を供給する。
(温度)
工程(a)は、好ましくは少なくともほとんど完全な鹸化を可能にする、さらに好ましくは完全な鹸化を可能にするために有効な温度で行われる。当業者に既知の方法、例えばHPLCで変換をモニターすることができる。この温度は、通常、約0℃〜約40℃の範囲、好ましくは約15℃〜約25℃の範囲、さらに好ましくは約20℃〜約25℃の範囲である。より高い温度は、不利なことに高量の不純物の生成となりうる。これは、過剰な水酸化化合物(塩基)の存在下における式(3)の塩のエピマー化によって起こりうる。
(式3の塩)
工程(a)で形成される式(3)の塩中、Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウムイオンでよい。これらの化合物の例は、トランドラプリラトの調製手順について上述したものと同一である。
【0045】
工程(b):
工程(a)で使用する鹸化反応溶媒がC4アルコールを含む場合、該C4アルコールは、好ましくは工程(b)で、好ましくは蒸留によって、工程(a)の反応混合物から除去される。
工程(c):
工程(b)の反応混合物が水溶液でない場合、好ましくは、トランドラプリラトの水溶液を与えるために有効な量の水を工程(b)の反応混合物に添加する。
【0046】
工程(d):
(酸)
工程(c)の生成物を、該混合物のpHをその等電点(例えば、pH3.6〜4.0)に到達させ、かつ実質的に純粋な遊離アミノ酸形で、又は少なくとも2種の異なる遊離アミノ酸形の混合物としてトランドラプリラトを与えるために有効な量の酸と、有効な時間、かつ有効な温度で混合する。
工程(c)の生成物を等電点まで酸化するために工程(d)で使用しうる酸として、例えば、トランドラプリラトの調製手順について上述した当該酸が挙げられる。好ましくは、使用する酸は塩酸であり、かつ塩酸は2Nの塩酸水溶液である。
(温度)
工程(d)において、酸と工程(c)の生成物の混合は、好ましくは、該混合物のpHをその等電点に到達させ、かつ遊離アミノ酸形で、又は少なくとも2種の異なるアミノ酸形の混合物としてトランドラプリラトを与えるために有効な温度で起こる。このような温度は、一般的に約0℃〜約40℃の範囲、好ましくは約15℃〜約25℃の範囲、さらに好ましくはほぼ室温である。
(時間)
工程(d)において、酸と工程(c)の生成物の混合は、好ましくは、該混合物のpHをその等電点に到達させ、かつ遊離アミノ酸形で、又は少なくとも2種の異なるアミノ酸形の混合物としてトランドラプリラトを与えるために有効な時間起こる。
【0047】
工程(e):
工程(c)の生成物を上澄みから、ろ過、遠心分離又は同様の方法で分離する。
工程(f):
工程(e)の生成物を乾燥させて、実質的に純粋な結晶形で、又は少なくとも2種の異なる結晶形の混合物としてトランドラプリラトを与える。
(温度)
工程(e)は、好ましくは、実質的に純粋な結晶形で、又は少なくとも2種の異なる結晶形の混合物としてトランドラプリラトを与えるために有効な温度で行われる。この温度は一般的に約0℃〜約40℃の範囲、好ましくは約10℃〜約30℃の範囲、さらに好ましくは約20℃〜約25℃の範囲、便宜上、室温で行われる。
(純度と収率)
この方法で生成されるトランドラプリラトは、通常、90%以上の収率で、実質的に純粋な結晶形として、又は少なくとも2種の異なる結晶形の混合物として得られる。少なくとも約92%の収率で実質的に純粋な結晶形として得られる。HPLCで決定した純度が約99%以上の実質的に純粋な結晶形として得ることができる。
この方法に従ってトランドラプリルからトランドラプリラトを調製するための最も好ましい手段では、体積比が約1/1のエタノール/水中、式(3)(式中、M=Na)の塩の約9%〜約14%の溶液を、2Nの塩酸水溶液で酸性にして、約3.6〜約4.0の範囲のpHにする。酸性化中に、結晶核を入れた後、約4.5〜約5.0のpHでトランドラプリラトの結晶化が始まる。
【0048】
先行パラグラフで述べた方法では、エタノールと水の混合物の体積比が重要である。例えば、1/≧2の体積比を有するエタノール/水の混合物中の式(3)(式中、M=Na)の塩の9%の溶液を2Nの塩酸水溶液で約20℃〜約25℃の範囲の温度にて約3.6〜約4.0の範囲のpHに酸性化する場合、最初に樹脂又はゴムが沈殿し、この温度で撹拌中にゆっくり結晶化する。撹拌中にパイロット規模でトランドラプリラトを生成する場合、樹脂又はゴムの形成は問題を引き起こしうる。対照的に、エタノール/水の体積比が≧1/1の場合、無機塩の同時沈殿(酸性化中に形成される)が最終生成物を汚染しうる。
この方法では、式(3)の塩を含有する溶液の濃度も重要である。結晶化をエタノール/水の1/1混合物中、式(3)(式中、M=Na)の塩の高濃度の溶液(>14%)からの酸性化で行うと、濃厚かつ撹拌しにくい懸濁液が生じうる。対照的に、結晶化をエタノール/水の1/1混合物中、式(3)(式中、M=Na)の塩の低濃度の溶液(<9%)からの酸性化で行うと、最終生成物の収率が、(そうでなければ生じるであろうよりも)いくらか損失しうる。
トランドラプリラトを、結晶トランドラプリラトB形、結晶トランドラプリラトC形、結晶トランドラプリラトD形、及びその混合物といった、実質的に純粋な結晶形で、又は結晶形の混合物として生成する別の好ましい方法は以下の工程を含む:
(a)エタノールと水を約1/1〜約1/1.5の体積比で含む鹸化反応溶媒中、下記式(3):
【0049】
【化15】
(式中、Mはナトリウムであり、nは2である)
の塩を含む反応混合物を生成するために十分な時間、約20℃〜約25℃の範囲の温度で、トランドラプリラトを少なくとも2.0当量のNaOHと反応させる工程;
(b)工程(a)の生成物のpHを塩酸で約3.6〜約4.0の範囲に調整し、実質的に純粋な遊離アミノ酸形で、又は少なくとも2種の異なる遊離アミノ酸形の混合物としてトランドラプリラトを与える工程;
(c)工程(b)の生成物を上澄みから分離する工程;及び
(d)工程(c)の生成物を乾燥させて、実質的に純粋な結晶形で、又は少なくとも2種の異なる結晶形の混合物としてトランドラプリラトを与える工程。
第2手順に関して上述したのと同じやり方で上記方法の工程(a)〜(d)を行いうる。
【0050】
(結晶トランドラプリラトE形の調製及び単離の手順)
結晶トランドラプリラトB形(トランドラプリラトの擬似多形)から結晶トランドラプリラトE形(トランドラプリラトの多形)を調製しうる。この方法は、結晶トランドラプリラトB形中にある結晶に結合しているエタノールを除去するために有効な温度と圧力で、かつ有効な時間、結晶トランドラプリラトB形を乾燥させる工程を含む。
結晶トランドラプリラトB形の乾燥前に、例えば粉砕又は研磨することによって、結晶トランドラプリラトB形の粒径を小さくすると有利だろう。
(トランドラプリラトの結晶形)
別の局面では、本発明は、トランドラプリラトの新規結晶形を提供する。
本発明は、下記式(4)の構造を含んでなる結晶形のトランドラプリラトを提供する。
【0051】
【化16】
(式中、RはH又はC1-C4アルキルであり、nは0〜2の範囲であり、かつ化学量論的又は非化学量論的でよい。)
好ましい一実施形態では、式(4)中、RがHであり、nが1又は非化学量論的である。トランドラプリラトのこの結晶形を「水和物」(擬似多形)と称する。
第2の好ましい実施形態では、式(4)中、RがHであり、nが1より大きて、非化学量論的である。
第3の好ましい実施形態では、式(4)中、RがC1-C4アルキル(好ましくはエチル又はブチル)であり、nが2である。トランドラプリラトのこの結晶形を「溶媒和物」(擬似多形)と称する。
第4の好ましい実施形態では、式(4)中、nが0である。トランドラプリラトのこの結晶形を「非溶媒和物」(多形)と称する。
トランドラプリラトの新規結晶形として、上述した結晶トランドラプリラトA形、結晶トランドラプリラトB形、結晶トランドラプリラトC形、結晶トランドラプリラトD形及び結晶トランドラプリラトE形が挙げられる。
【0052】
実験により、驚くべきことに、かつ予想外に、トランドラプリラトは、特にトランドラプリラトが水及び/又はアルコール等のヒドロキシル溶媒から結晶化される場合、多形のみならず種々の異なる擬似多形で生成されうることを発見した。トランドラプリラトは、特にヒドロキシル溶媒から結晶化する場合、種々の結晶擬似多形で生成される高い傾向があるようだ。
例えば、上述した「第1手順」に従って生成される結晶トランドラプリラトは、結晶単位中に2分子のn-ブタノールを含む結晶(擬似多)形(結晶トランドラプリラトA形)で得られ、好ましくは実質的に純粋である。
上述した「第2手順」に従い、水、アルコール又は水とアルコールの混合物などのヒドロキシル溶媒から結晶化される結晶トランドラプリラトは、結晶トランドラプリラトB形、結晶トランドラプリラトC形及び結晶トランドラプリラトD形(これらも好ましくは実質的に純粋である)のような異なる結晶形で、或いは2種以上の結晶形の混合物として得られる。上述したやり方で結晶トランドラプリラトB形から結晶トランドラプリラトE形が得られる。
【0053】
一般的に、純粋なヒドロキシル溶媒から結晶化することによって、実質的に純粋な形の結晶トランドラプリラト(及び低純度の形)を得ることができる。
通常、水とエタノールの混合物のような2種以上のヒドロキシル溶媒の混合物から結晶化することによって、結晶トランドラプリラトの2種以上の異なる形の混合物を得ることができる。このような混合物の生成は、異なるヒドロキシル溶媒で擬似多形として結晶化するトランドラプリラトの高い傾向のため複雑である。これは、結晶トランドラプリラトの擬似多形が多形より少なくとも1大きい分散量を有するので、溶媒系の組成等のさらなるパラメーターをも考慮しなければならないという事実によって説明される。この理由のため、第2手順は、結晶化のために溶媒混合物を使用する場合、実質的に純粋な結晶形のみならず、少なくとも2種の異なるトランドラプリラト結晶形の混合物としてトランドラプリラトを送り出しうる。それぞれのトランドラプリラト結晶形の熱力学的安定性によって、並びに結晶化中の反応速度論的効果によって、有利なトランドラプリラト結晶形が制御される。他言すると、結晶化のために溶媒混合物を使用する場合、最終生成物中の2種以上のトランドラプリラト結晶形の純度と組成は、使用する溶媒の比、及び結晶化速度の変動によって決まる。遅い結晶化は熱力学的に安定なトランドラプリラト結晶形を与え、速い沈殿は、反応速度論的に有利なトランドラプリラト結晶形を与えるだろう。撹拌時間、トランドラプリラトの結晶化又はスラリー化中の温度及び乾燥条件が結晶トランドラプリラトの種々の結晶形の純度と組成にさらなる影響を与えうる。例えば、「第2手順」に従い、種々の比のエタノールと水の混合物からトランドラプリラトを結晶化する場合、単離される結晶トランドラプリラトは、典型的に約0.63%〜約4.2%(後者は一水和形に対応する)の範囲である可変量の水、並びに典型的に0.2%〜19%(後者はエタノールとの二溶媒和形に対応する)の範囲の可変量のエタノールを含みうる。これは、トランドラプリラトの異なる結晶形又はその混合物の形成を示唆している。上述したようなパラメーター、例えば結晶化工程で使用するエタノール/水の比、結晶化速度の変動、結晶化後の懸濁液の撹拌温度と撹拌時間及び乾燥条件(温度、圧力、時間など)等が、トランドラプリラトの結晶形の組成に重要な影響を与える。本明細書で提供する情報、及び本技術の当業者に既知の情報を利用し、これらの条件の1つ以上を変えて、結晶トランドラプリラトの所望の形、又はこれらの結晶形の2種以上の混合物を容易に生成することができる。
本発明の結晶トランドラプリラトの固体形態は、実質的に純粋なトランドラプリラト結晶形としてか又は2種以上のトランドラプリラト結晶形の混合物として存在しうる。各結晶形はそれ自体の(一意の)X線回折に関するX線回折プロフィール特性を示し、かつ各結晶形を該X線回折プロフィール特性によって同定することができる。
【0054】
(結晶トランドラプリラトA形)
結晶トランドラプリラトA形はその結晶構造に結合した2当量のn-ブタノールを含有する、トランドラプリラトの擬似多形である(すなわちn-ブタノールとの二溶媒和物である)。
結晶トランドラプリラトA形は、表1に示されるX線粉末回折データ、表2に示される結晶学的データと構造パラメーター、図1に示されるX線粉末回折パターン及び図2に示される結晶構造(化合物のX線測定から得た)を有する。この文書全体を通じて記載及び/又は示される種々のX線粉末回折ピークの強度は、当業者には分かるように、テクスチャー又は他の作用によって変化しうる。さらに、本技術の当業者は、同一物質の特異的結晶形の粉末パターン内の2θ位が、例えば、使用する特定のX線回折計の測定精度に由来する誤差範囲内で変化しうることを認めるだろう。最後に、全体的なピークプロフィールは、サンプルの調製、充填サンプルの密度の変異などによって、部分的により大きい度合で変化しうる。この文書内にある表に示されるX線粉末回折データは実際の実験結果に基づき、いくつかのカラム内の数を常法で四捨五入して小数点第1位までとし、かつ正当に約±0.2までの変異が予測される。例えば、1つ以上のピークのいずれでも約±0.2度の2θの変異が正当に予測される。Xe-比例検出器(発電設備=30mA、40kV)を備えたPhilips PW1800回折計、及びVANTEC-1検出器を備えたBruker AXS D8 Advance(発電設備=40A、40kV):放射線:CuKα;角度範囲2θ=2°/3°〜40°;刻み幅=0.02°;1秒〜4秒の種々の測定に及ぶスキャンステップ時間を用いて、本明細書に記載及び/又は示されるすべてのX線粉末回折解析を行った。
図3は結晶トランドラプリラトA形(1分子のトランドラプリラトと2分子のn-ブタノールを含む)の非対称単位を示し、図4は結晶トランドラプリラトA形(2つのn-ブタノールとのトランドラプリラト二溶媒和物)の結晶データから計算した粉末プロフィールを示す。
上述した「第1手順」を用い、かつ実施例1に従って、水で飽和したn-ブタノール中(すなわち、溶媒n-ブタノールと水の混合物を用いて)トランドラプリラトの溶液の共沸蒸留(結晶化を惹起する)で結晶トランドラプリラトA形を生成することができる。トランドラプリラトは、一般的に無水n-ブタノールに溶けないので、例えば、共沸蒸留による溶媒混合物からの水の除去がその結晶化を惹起する。結晶構造に2当量のn-ブタノールを含有する実質的に純粋な結晶形で所望生成物を得ることができる。
【0055】
表1
結晶トランドラプリラトA形の粉末X線回折データ
【0056】
(表1続き)
【0057】
表2
結晶トランドラプリラトA形の結晶学的データ及び構造パラメーター
【0058】
(結晶トランドラプリラトB形)
結晶トランドラプリラトB形はその結晶構造に結合した2当量のエタノールを含有する、トランドラプリラトの擬似多形である(すなわち、エタノールとの二溶媒和物である)。結晶トランドラプリラトB形は、表10に示されるX線粉末回折データ、図13に示されるX線粉末回折パターン、図5及び6に示されるX線回折データ結晶構造、表3に示される結晶学的データと構造パラメーター、及び図7に示される計算した粉末プロフィールを有する。
上述した「第2手順」を用い、かつ実施例2及び5に従って、エタノール中のトランドラプリラトの結晶化/スラリー化、並びに希釈エタノール/水混合物からのトランドラプリラトの緩徐な結晶化によって、結晶トランドラプリラトB形を生成することができる。結晶構造に2当量のエタノールを含有する実質的に純粋な結晶形で所望生成物を得ることができる。
【0059】
表10
結晶トランドラプリラトB形の粉末X線回折データ
【0060】
表3
結晶トランドラプリラトB形の結晶学的データ及び構造パラメーター
【0061】
結晶トランドラプリラトE形の議論において、結晶トランドラプリラトB形を(結晶トランドラプリラトA形、C形及び/又はD形から)生成するための別の方法について後述する。
(結晶トランドラプリラトC形)
結晶トランドラプリラトC形はその結晶構造に結合した非化学量論量の水を含有する、トランドラプリラトの擬似多形である。水の量は、一般に約5.4%〜約6.4%の範囲である。結晶トランドラプリラトC形は、表4に示されるX線粉末回折データ、及び図8に示されるX線粉末回折パターンを有する。
上述した「第2手順」を用い、かつ実施例3に従って、水中の式(3)の塩の溶液の約3.6〜約4.0の範囲のpH(等電点)への酸性化後、水からのトランドラプリラトの結晶化によって、結晶トランドラプリラトC形を生成することができる。最初に生じたゴムが、この混合物を通常約20℃〜約25℃の範囲の温度で、結晶トランドラプリラトC形(その結晶構造に結合した非化学量論量の水を含有する)が形成される時間、好ましくは少なくとも16時間撹拌することによって、ゆっくり結晶化する。実質的に純粋な結晶形で結晶トランドラプリラトC形を得ることができる。
【0062】
表4
結晶トランドラプリラトC形の粉末X線回折データ
【0063】
水中の式(3)の塩の溶液の約3.6〜約4.0のpH(等電点)への酸性化後、結晶化によって、トランドラプリラトの結晶形Dを得ることができる。最初に生じたゴムはこの混合物を20℃〜25℃の温度で撹拌することによってゆっくり結晶化する。また、この混合物を20〜25℃で3〜5日間撹拌後に、4.1%〜4.2%(一水和物に対応する)の化学量論的含水量を有するD形を得ることができる。
【0064】
(結晶トランドラプリラトD形)
結晶トランドラプリラトD形はその結晶構造に結合した化学量論量の水(その結晶構造に結合した1当量の水(一水和物))を含有する、トランドラプリラトの擬似多形である。水の量は、一般に約4.1%〜約4.2%の範囲である。結晶トランドラプリラトD形は、表5に示されるX線粉末回折データ、図9に示されるX線粉末回折パターン、及び図10に示されるシンクロトロンプロフィールを有する。
上述した「第2手順」を用い、かつ実施例4に従って、水中の式(3)の塩の溶液の約3.6〜約4.0の範囲のpH(等電点)への酸性化後、水からのトランドラプリラトの結晶化によって、結晶トランドラプリラトD形を生成することができる。最初に生じたゴムが、この混合物を通常約20℃〜約25℃の範囲の温度で、結晶トランドラプリラトD形(その結晶構造に結合した化学量論量の水を含有する)が形成される時間、通常約3〜約5日間撹拌することによって、ゆっくり結晶化する。実質的に純粋な結晶形で結晶トランドラプリラトD形を得ることができる。
【0065】
表5
結晶トランドラプリラトD形の粉末X線回折データ
【0066】
(結晶トランドラプリラトC形の調製及びその結晶トランドラプリラトD形への変換)
「第2手順」から得たトランドラプリラトを実施例4、手順Bに従って水中でスラリーにする。表6は、最初に生じたトランドラプリラト結晶形C(含水量:5.4〜6.4%)の一水和物(結晶トランドラプリラトD形:含水量:4.2%)への変換を示す。変換後、規則的なインプロセスコントロール(スラリーサンプルのろ過)を行い、かつ例えば、真空乾燥による湿潤生成物の乾燥後にサンプルの含水量を決定する。現在、約60℃以下の温度で乾燥させることが好ましい。
【0067】
表6
一水和物の形成
サンプル番号 1 2 3 4
撹拌時間(時間) 22 50 73 97
含水量(%) 5.4-6.4 5.9 4.5 4.2
【0068】
(結晶トランドラプリラトE形)
結晶トランドラプリラトE形はトランドラプリラトの多形の非水和形である。これは表8に示されるX線粉末回折データ及び図11に示されるX線粉末回折パターンを有する。
以下の一定の仕様を満たすトランドラプリラトを生成する必要に応じて、結晶トランドラプリラトE形とその生成方法を開発した:(i)1.0%以下の含水量;(ii)ICH指針(www.ich.orgで得られる)に記載の制限に従う残留溶媒含量;及び(iii)HPLCで測定した場合、1.0%以下の分解不純物「トランドラプリラトジケトピペラジン」の量。結晶トランドラプリラトE形はこれらの各特性を有する。
【0069】
上述したように、トランドラプリラトは、水、アルコール又はその混合物のようなヒドロキシル溶媒から結晶させると、化学量論量若しくは非化学量論量の水又は他の溶媒を含有する異なる擬似多形を形成することが分かった。トランドラプリラト中の最終溶媒量は、(i)溶媒の組成;及び(ii)結晶化のために選択した条件によって決まりうる。
さらに、A形、B形、C形又はD形などの単離された結晶擬似多形のいずれの1つをアルコール若しくは水、又はその混合物などのヒドロキシル溶媒で処理しても、結晶結合溶媒の交換が観察された(1つの擬似多形から別の擬似多形への変換)。例えば、結晶トランドラプリラトA形の結晶結合ブタノール、又は結晶トランドラプリラトD形中の水は、これらの結晶形をエタノール中でスラリーにすると、エタノールによって除去される。この結果は、トランドラプリラトが、アルコール及び/又は水等のヒドロキシル溶媒から結晶化するとき、異なる擬似多形を形成する高い傾向を有することを示し、最終生成物に存在するこれらの溶媒の量が必要な仕様を超えることとなりうる。
しかし、トランドラプリラトの結晶擬似多形から過剰な溶媒又は水を除去するための1つ以上の安定プロセスの発見は、種々の異なる困難をもたらした。上記結晶形のいずれか1つ、又はその混合物として存在するトランドラプリラトをトルエン、MTBE、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、THF等の1種以上の非ヒドロキシル溶媒からスラリー化又は再結晶化すると、不利なことに、トランドラプリラト生成物の不純物(分解生成物)「トランドラプリラトジケトピペラジン」への分解が観察されることが分かった(すなわち粗末な結果が得られた)。分解速度は、(i)使用する温度;及び(ii)使用する溶媒のタイプの両者によって決まることが分かった。例えば、THFに溶かした結晶トランドラプリラトは室温で1時間当たり少なくとも0.2%の分解を示し、この分解生成物の形成は、この溶液を還流温度に加熱すると数時間以内でほとんど完了した。さらに、非ヒドロキシル溶媒からの結晶化及び沈殿は、多くの場合、取り扱いが困難であろう樹脂を与えた。
【0070】
驚くべきことに、かつ予想外に、結晶単位にエタノールを含有するトランドラプリラト二溶媒和物(結晶トランドラプリラトB形−擬似多形)を特有の乾燥条件下で処理すると、穏やかな条件下でトランドラプリラトの非溶媒和形(結晶トランドラプリラトE形−多形)に容易に変換できることを発見した(下表7に示す)。小量の分解生成物トランドラプリラトジケトピペラジンだけが観察され、溶媒(エタノール)がほとんど完全に除去され、上記仕様を満たす生成物をもたらした。変換速度は、(i)結晶トランドラプリラトB形の粒径;(ii)乾燥温度;(iii)真空条件;及び(iv)乾燥時間によって決まることが分かった。好ましくは、約20℃〜約60℃の範囲、好ましくは約40℃〜約60℃の範囲の温度で、任意に真空中で結晶トランドラプリラトB形を乾燥させる。結晶トランドラプリラトB形の粒径の縮小は、例えば粉砕又は研磨による。
さらに、先行パラグラフで述べたように、通常、結晶トランドラプリラトのA形、C形若しくはD形又はその混合物をエタノール中のスラリーによって、実質的に純粋な結晶トランドラプリラトB形に変換してから、エタノールを用いて結晶結合溶媒を除去することができる。スラリーの温度は、一般的に約0℃〜還流温度の範囲、好ましくは約10℃〜約60℃の範囲、最も好ましくは約20℃〜約45℃の範囲である。約20℃〜約45℃の範囲の温度での結晶形の変換では、一般的に約10〜約15時間の範囲の時間で十分である。より低温でより短い撹拌時間は、不利なことに不完全な変換をもたらしうる。対照的に、より高温で長い撹拌時間は、不利なことに、より大量の分解生成物「トランドラプリラトジケトピペラジン」を生じさせうる。得られた結晶トランドラプリラトB形を、上述し、かつ表7に示す様式で乾燥させて結晶トランドラプリラトE形を与えうる。
【0071】
種々の乾燥条件下(エタノール中のスラリーで得た湿潤結晶トランドラプリラトB形を乾燥させるため)で結晶トランドラプリラトB形を結晶トランドラプリラトE形に変換するために行った実験の結果を下表7にまとめる。表7の結果は、一定の乾燥条件では温度が高いか、又は真空が低いほど、結晶トランドラプリラトB形を結晶トランドラプリラトE形(非水和物)に容易に変換し、エタノールがほとんど完全に除去されることを示す。しかし、高温での長い乾燥時間は、分解生成物トランドラプリラトジケトピペラジンの高量の形成をも引き起こしうる。
【0072】
表7
湿潤結晶トランドラプリラトB形を結晶トランドラプリラトE形に変換するための実験で使用した乾燥条件
【0073】
(表7続き)
【0074】
表8
結晶トランドラプリラトE形の粉末X線回折データ
【0075】
図12は、エタノール中の結晶トランドラプリラトB形のスラリーによって得、かつ約40℃で約15時間真空中(約1〜約5mbar)で乾燥後の結晶トランドラプリラトB形と結晶トランドラプリラトE形の混合物のX線粉末回折パターンを示す。
(トランドラプリラトの結晶形の貯蔵安定性)
表9は、トランドラプリラトの種々の結晶形の貯蔵安定性を提供する。この表は、他の形に比べて非溶媒和物(結晶トランドラプリラトE形)としてのトランドラプリラトが、対応する分解生成物トランドラプリラトジケトピペラジンに分解する高い傾向を有するようであり、より高い貯蔵温度に伴ってさらに分解することを示している。結晶トランドラプリラトC形(その結晶構造に結合した非化学量論量の水を含有)及び結晶トランドラプリラトB形(その結晶構造に結合した2当量のエタノールを含有)が対応するトランドラプリラト分解生成物に分解する傾向は有意に低いようであるが、分解をまだ測定できた。対照的に、結晶トランドラプリラトA形(その結晶構造に結合した2当量のn-ブタノールを含有)及び結晶トランドラプリラトD形(その結晶構造に結合した1当量の水を含有)は、トランドラプリラトを劇的に安定化し、室温で4ヶ月の貯蔵後に非常に低量の分解生成物しか観察されない。
【0076】
表9
トランドラプリルのの種々の結晶形の貯蔵安定性
1−実施例2で得た結晶を封止バイアル中で貯蔵した。
【0077】
(医薬組成物)
本発明は、治療的に有効な量の本発明の少なくとも1種のトランドラプリラト化合物(活性成分として)と、1種以上の医薬的に許容しうる担体とを含んでなる医薬組成物をも提供する。任意に、医薬組成物は、1種以上の他の化合物、薬物又はトランドラプリラト化合物及び担体と適合性の物質を含んでよく、当業者はこのような物質を容易に決定することができ、限定するものではないが、着色剤、リリース剤、コーティング剤、甘味料及び/又は調味料、接着剤、香料、保存剤及び/又は抗酸化剤が挙げられる。
好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、結晶トランドラプリラトA形、結晶トランドラプリラトB形、結晶トランドラプリラトC形、結晶トランドラプリラトD形若しくは結晶トランドラプリラトE形、又はそのいずれかの組合せを含む。
別の好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、式(4)の構造を含む結晶形のトランドラプリラト化合物を含み、ここで、(4)式中、RはC1-C4アルキルであり、かつ該医薬組成物中に存在するアルコールの量は約5,000ppmを超えない(但し、RがC1アルキルの場合、該医薬組成物中に存在するアルコールの量は約3,000ppmを超えない)。
さらに別の好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、式(4)の構造を含む結晶形のトランドラプリラト化合物を含み、ここで、(4)式中、n=0、かつ該医薬組成物中に存在する水の量が約1.0%を超えない。
【0078】
本発明の医薬組成物は、例えば、固体若しくは液体形態で経口投与のため、又は経皮投与のために特別に製剤化される。
経口投与に適した本発明の製剤は、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ剤、散剤、顆粒剤の形態、水性液又は非水性液の溶液又は懸濁液として、エマルションとして、エリキシル剤又はシロップ剤等としてでよい。本発明の医薬組成物の固体剤形には、任意に、刻み目を付け、或いは1種以上の腸溶性又は医薬品製造技術で周知の他の被覆剤でコーティングしてよい。
経皮投与に適した本発明の製剤は、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液及びパッチの形態でよい。経皮パッチは、本発明のトランドラプリラト化合物を体に制御送達できるという追加の利点を有しうる。
本発明の医薬組成物の調製方法は、一般的に本発明の1種以上のトランドラプリラト化合物を1種以上の担体材料と会合させ、任意に1種以上の補助成分と会合させてよい工程を含む。
経口剤形の調製では、例えば、1種以上のトランドラプリラト化合物を1種以上の液体又は微細固形担体と均一かつ密接に会合させてから、必要又は望ましい場合、該生成物を成形するか(圧縮、鋳造等で)又はカプセル化することによって、本発明の医薬組成物を調製することができる。ヒト及び/又は動物による経口投与に好適な医薬製剤の製造方法は当業者に周知であり、かつ例えば“Pharmaceutical Capsules” (ISBN 0-85369-568-7, Pharmaceutical Press, 2004)及び“Handbook of Pharmaceutical Manufacturing Formulations” (ISBN 0-84931-7479, CRC Press, 1999)に記載されている。
【0079】
例えば、適切な媒体に1種以上のトランドラプリラト化合物を溶解又は分散させることによって経皮剤形を製造することができる。吸収増強剤を用いて、皮膚を横切る化合物の流動を増やすこともできる。例えば、速度制御膜を与えるか又はポリマーマトリックス若しくはゲルに化合物を分散させることによって、該流動の速度を制御できる。治療用の経皮パッチの製造方法は医薬品業界で周知である。該方法は、例えば、公開された特許出願U.S.2004/0052835号、及び米国特許第5,290,561号及び第6,303,141号、並びにRussell O. Potts and Richard H. Guy, “Mechanisms of Transdermal Drug Delivery, Drugs and Pharmaceutical Sciences: a Series of Textbooks and Monographs” (ISBN 0-8247-9863-5, 1997) and Kenneth A. Walters, “Dermatological and Transdermal Formulations, Drugs and the Pharmaceutical Sciences: a Series of Textbooks and Monographs” (ISBN 0-8247-9889-9, 2002)に記載されている。
【0080】
本発明の医薬組成物は、一般的に、通常の医療、獣医療及び製薬プラクティスと調和する方法によって適宜選択される適切な投与形態と剤形を用いて、医師の指導下で使用されるだろう。
選択される投与経路に関係なく、当業者に既知の常法により、本発明のトランドラプリラト化合物及び医薬組成物を医薬的に許容しうる剤形に製剤化することができる。
本発明の医薬組成物で使用される活性成分の実際の用量レベルは、個々の患者、組成物及び投与態様に望まれる治療応答を該患者に毒でなく達成するために有効な活性成分の量を得るように変化しうる。
選択される用量レベルは、使用する特定のトランドラプリラト化合物、又はその塩の活性、投与の経路、投与の時間、使用する特定のトランドラプリラト化合物の排泄の速度、治療する医療状態の重症度、治療の持続期間、トランドラプリラト化合物と併用する他の薬物、化合物及び/又は材料、治療する患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康及び以前の病歴、並びに医療、獣医療及び医薬品技術で周知の同様の因子などの当業者に既知の種々の因子によって決まるだろう。
本技術の通常のスキルを有する医師又は獣医は、個々の患者の医療問題の治療に必要な本発明の医薬組成物の有効量を容易に決定かつ処方することができる。例えば、医師又は獣医は、所望の治療効果を達成するのに必要な量より少ないレベルにて医薬組成物中で使用する用量の本発明のトランドラプリラト化合物で開始して、所望効果が達成されるまで用量を徐々に増やすことができる。
【0081】
一般に、本発明のトランドラプリラト化合物、又は1種以上のトランドラプリラト化合物を含む医薬組成物の1日の適切な用量は、通常、上述した因子の1つ以上によって決まるであろう所望の治療効果をもたらすために有効な最低用量である、トランドラプリラト化合物の当該量である。このような用量は、ゾンデ医療又は獣医学の範囲内で、主治医又は獣医によって決定されうる。
所望により、活性トランドラプリラト化合物の有効な1日の用量は、1日全体で妥当な間隔で分けて投与される2、3、4、5、6又はそれより多くのサブ用量として投与され、任意に単位剤形で投与してよい。
(治療の方法)
本発明のトランドラプリラト化合物及び医薬組成物は、ヒト及び動物で降圧作用をもたらすのに有用である。従って、本発明は、高血圧、心不全又は高血圧に関連する他の医療状態を治療する方法であって、該治療が必要な対象に、有効量の本発明の医薬組成物を投与することを含んでなる方法をも提供する。本技術の通常のスキルを有する医師又は獣医は、対象が該治療を必要か否かを容易に決定できる。
好ましい実施形態では、本発明の方法で使用する医薬組成物は、結晶トランドラプリラトA形、結晶トランドラプリラトB形、結晶トランドラプリラトC形、結晶トランドラプリラトD形、結晶トランドラプリラトE形、又はこれらのいずれかの組合せを含む。
以下の実施例は、トランドラプリラトの結晶形、及び本発明の範囲内の方法をについて記載かつ実証するが、本発明の単なる例示を意図したものであり、本発明の範囲又は精神を該実施例の範囲又は精神に限定するものではない。当業者は、実施例に記載の手順で使用する特定の条件及び/又は工程の変形を用いてこれらの結晶形を調製できることが容易に分かるだろう。計算したすべての収率をアッセイによって補正した。
【実施例1】
【0082】
(結晶トランドラプリラトA形の調製)
結晶トランドラプリラトA形を上記第1手順に従って調製した。
NaOH(6.5g,153.6mmol;アッセイ=94.52%)、水(157ml)、エタノール(157ml,工業銘柄,約5%の2-プロパノール含有)及びトランドラプリル(31.5g,72.94 mmol;アッセイ=99.7%)の溶液を約20℃〜約25℃の範囲の内部温度で15時間撹拌した。インプロセスコントロールがほとんど完全な鹸化を示した後(HPLCで)、清澄溶液を真空中で167.05gの量まで濃縮し、濃縮生成物にn-ブタノール(160ml)を加えた。この混合物を約60℃〜約70℃の内部温度に加熱し、2Nの塩酸水溶液を加えると(150.4mmol)、pHが12.09から3.66に下がった。有機層を66℃の内部温度で分離し、65℃の内部温度で水層をn-ブタノール(80ml)で再抽出した。混ぜ合わせた有機層を約63℃〜約65℃の範囲の内部温度で水にて2回(各40ml)洗浄した。得られた有機層(総量306.4g)を真空中約50℃〜約60℃の範囲の温度で濃縮し、190gの量への濃縮後、白色固体が沈殿した。この懸濁液をさらに真空中で75.1gの量に濃縮し、80mlのMTBEを加えて沈殿を完了させた。懸濁液を約20℃〜約25℃の範囲の内部温度で3.5時間撹拌した。ろ過後、湿潤生成物をMTBEで2回(各80ml)で洗浄し、真空中40℃で15時間乾燥させてトランドラプリラトをn-ブタノールとの二溶媒和物として得た(収量:36.51g,66.67mmol,91.4%;アッセイ(0.1N HClO4)=73.5%;HPLC純度=100%)。
【実施例2】
【0083】
(反応混合物からのトランドラプリラトの単離及び単結晶としてのB形の結晶化)
上記第2手順に従ってトランドラプリラトを結晶化及び単離した。
NaOH(0.96g,22.68mmol;アッセイ=94.52%)、水(22ml)、エタノール(22ml,工業銘柄,約5%の2-プロパノール含有)及びトランドラプリル(4.5g,10.42mmol;アッセイ=99.7%)の溶液を約20℃〜約25℃の範囲の内部温度で19時間撹拌した。インプロセスコントロールがほとんど完全な鹸化を示した後(HPLCで)、清澄溶液を約20℃〜約25℃の内部温度で2Nの塩酸水溶液で酸性にしてpHを3.8とした(22.8mmol;酸性化中に溶液に結晶核を入れると、pH=4.6で結晶化が開始した)。懸濁液を約20℃〜約25℃の温度で撹拌(pH調整後のこの場合の撹拌時間は47時間であり、2NのNaOH溶液を1滴添加してpHを3.71〜3.82に調整した;通常このpHで最大撹拌時間は5〜6時間で十分である)してからろ別した。湿潤生成物を水(30ml)で洗浄し、真空中(1〜5mbar)で15時間40℃で乾燥させてトランドラプリラトを得た(収量:4.0g,9.06mmol,86.9%;アッセイ=91.15%;含水量:1.02〜1.12%、エタノール含量:7.52〜8.44%、2-プロパノール含量:0.26〜0.29、塩化物含量=検出されず)。
上述したように、最終生成物中の溶媒の含量は、使用条件によって変化しうる。
【0084】
(X線測定用のトランドラプリラト結晶形Bの結晶化)
混ぜ合わせたろ液を12日間約20℃〜約25℃の温度で貯蔵すると、さらにトランドラプリラトがゆっくり結晶化した。結晶を収集して真空中30℃で14.5時間乾燥させた。X線測定は、2当量のエタノールとの純粋なトランドラプリラト二溶媒和物の存在を示した。
備考:一般的な結晶核を入れる手順
約4.5〜約5.0の範囲のpHに到達後、2NのHCl水溶液による混合物の酸性化を停止する。次に、トランドラプリラト結晶形Bを結晶核として混合物に入れ、結晶化を明らかに観察できるまで、約20℃〜約25℃の範囲の温度で撹拌する(約10〜約15分の時間内;撹拌及び結晶化時間中、pHは上昇する)。その後、pHが等電点に達するまで2NのHCl水溶液の添加(1滴ずつ)を続ける。
【実施例3】
【0085】
(結晶トランドラプリラトC形の調製)
上記第2手順に従って結晶トランドラプリラトC形を調製した。
NaOH(1.84g,43.48mmol;アッセイ=94.52%)、水(45ml)、エタノール(45ml,工業銘柄,約5%の2-プロパノール含有)及びトランドラプリル(9.0g,20.78mmol;アッセイ=99.4%)の溶液を約20℃〜約25℃の範囲の内部温度で14時間撹拌した。インプロセスコントロールがほとんど完全な鹸化を示した後(HPLCで)、反応混合物を真空中で64.64gの量まで濃縮してた。
濃縮反応混合物の半分を用い、2Nの塩酸水溶液(21.61mmol)及び数滴の2NのNaOH水溶液を添加してpHを3.8に調整した。酸性化中、最初に6のpHで粘着性の綿状沈殿が観察され、さらに酸性化すると、微細な白色固体を含有する懸濁液が生じた。この懸濁液を約20℃〜約25℃の範囲の温度で16時間撹拌してろ別した。湿潤生成物を水(30ml)とアセトン(30ml)で洗浄し、真空中(1〜5mbar)、40℃で24時間及び室温で24時間乾燥させて結晶トランドラプリラトC形(収量:3.18g,7.45mmol,71.7%(外挿した);アッセイ(0.1N HClO4)=94.35%;HPLC純度=100%;含水量:5.67%、塩化物含量=0.16%)。
【実施例4】
【0086】
(結晶トランドラプリラトD形の調製)
後述するように、2つの異なる方法で結晶トランドラプリラトD形を調製した。
(手順A)
手順Aでは、結晶トランドラプリラトD形を上記第2手順に従って調製した。
NaOH(0.92g,21.74mmol;アッセイ=94.52%)、水(22ml)、エタノール(22ml,工業銘柄,約5%の2-プロパノール含有)及びトランドラプリル(4.5g,10.39mmol;アッセイ=99.4%)の溶液を約20℃〜約25℃の内部温度で19時間撹拌した。インプロセスコントロールがほとんど完全な鹸化を示した後(HPLCで)、反応混合物を真空中で24.42gの量まで濃縮した。この清澄溶液(pH=13)を約20℃〜約25℃の範囲の温度にて1時間以内でゆっくり2Nの塩酸水溶液(25.22mmol)と水(12ml)の混合物に加えた。添加中、粘着性の綿状沈殿が観察された。その後、数滴の2NのNaOH水溶液を添加して混合物のpHを2.74から3.84に調整し、混合物を約20℃〜約25℃の範囲の温度で4日間撹拌した。懸濁液をろ別し、湿潤生成物を水(15ml)で洗浄し、真空中(1〜5mbar)で15時間40℃で乾燥させて結晶形Dのトランドラプリラトを得た(収量:4.07g,9.54mmol,91.8%;アッセイ(0.1N HClO4)=96%;HPLC純度:99.82%;含水量:4.13%,塩化物含量=0.15%)。
(手順B)
NaOH(6.70g,158.3mmol;アッセイ=94.52%)、水(98ml)、エタノール(98ml,工業銘柄,約5%の2-プロパノール含有)及びトランドラプリル(31.5g,72.94mmol;アッセイ=99.7%)の溶液を約20℃〜約25℃の内部温度で21時間撹拌した。インプロセスコントロールがほとんど完全な鹸化を示した後(HPLCで)、2Nの塩酸水溶液で清澄溶液を約20℃〜約25℃の範囲の温度でpH=3.8に調整した(159mmol;2NのHCl水溶液の添加をpH=4.67で止め、溶液に結晶核を入れると、結晶化がゆっくり始まった;約10分後、2NのHCl水溶液の添加を続けた)。約20〜約25℃の範囲の温度で懸濁液を22時間撹拌してからろ別して42.12gの湿潤生成物を得た。
2.7gの湿潤生成物を真空中(1〜5mbar)で15時間40℃で乾燥させてトランドラプリラトを得た(収量:1.84g,4.31mmol,5.9%;アッセイ=94.18%;含水量:1.42〜1.47%,エタノール含量:4.17〜4.26%,2-プロパノール含量:0.19,塩化物含量=検出されず)。
【0087】
水(230ml)中の残留湿潤生成物のスラリーを55℃の内部温度に加熱してから約20℃〜約25℃の内部温度に冷ましてこの温度でトータル4日間撹拌した。定期的間隔でサンプル(インプロセスコントロール)を懸濁液から取って含水量を測定した。
21.5時間後、サンプルを取り、ろ別し、水(10ml)で洗浄し、真空中(1〜5mbar)で15時間40℃で乾燥させてトランドラプリラトを得た(収量:1.2g,2.81mmol,3.86%;アッセイ=94.4%;含水量:5.35〜6.4%,エタノール含量:検出されず,2-プロパノール含量:検出されず,塩化物含量=検出されず)。
さらに28時間後、サンプルを取り、ろ別し、水(10ml)で洗浄し、真空中(1〜5mbar)で15時間40℃で乾燥させてトランドラプリラトを得た(収量:1.04g,2.43mmol,3.33%;含水量:5.92%)。
さらに23時間後、サンプルを取り、ろ別し、水(10ml)で洗浄し、真空中(1〜5mbar)で15時間40℃で乾燥させてトランドラプリラトを得た(収量:1.48g,3.51mmol,4.81%;含水量:4.52%)。
さらに24時間後、残存懸濁液をろ別し、湿潤生成物を水(100ml)で洗浄し、真空中(1〜5mbar)で18時間40℃で乾燥させてトランドラプリラトを得た(収量:21.04g,50.04mmol,68.61%,全体収率:86%;アッセイ(0.1N HClO4)=95.73%;HPLC純度:99.98%;含水量:4.18%,エタノール含量:検出されず,2-プロパノール含量:検出されず,塩化物含量:検出されず)。
【実施例5】
【0088】
(結晶トランドラプリラトBの調製方法及びその結晶形Eへの変換)
鹸化混合物からのトランドラプリル湿潤生成物の結晶化及び単離並びにX線粉末回折(PXRD)研究:
NaOH(10.8g,255mmol;アッセイ= 94.5%)、水(158ml)、エタノール(158ml)及びトランドラプリル(50g,115mmol;アッセイ=99.4%)の溶液を約20℃〜約25℃の範囲の内部温度で16.5時間撹拌した。インプロセスコントロールがほとんど完全な鹸化を示した後(HPLCで)、約20℃〜約25℃の範囲の温度で2Nの塩酸水溶液を添加して清澄溶液のpHを3.8に調整した。(一般的な結晶核を入れる手順(実施例2参照)に従ってpH=4.6で溶液に結晶核を入れた;この場合10分以内で結晶化が始まり、結晶化中にpHが5.55に上昇したとき、pH=3.8に達するまで酸性化を続けた)。pH=3.8で5分撹拌後、分析目的のため懸濁液のサンプルを取った。(ろ過したサンプルを約5mlのEtOH/水(1/1,v/v)で洗浄して1.4gの第1湿潤生成物を得た;このサンプルのX線粉末回折(PXRD)測定は、純粋なトランドラプリル多形Bの存在を示した)。
残存懸濁液を約20℃〜約25℃の範囲の温度で5時間撹拌してからろ別し、湿潤生成物を水(160ml)とエタノール(160ml)で洗浄して、純粋な結晶形Bとしてトランドラプリラトを含有する63.5gの第2湿潤生成物を得た。
【0089】
第2湿潤生成物を用いた研究:
研究例1:
7.6gの第2湿潤生成物を室温(常圧)の結晶皿内及び微気流内で18時間乾燥させ、低量のE形が混入した主に結晶形Bとしてトランドラプリラトを得た(収量:7.4g;アッセイ(0.1N HClO4)=81.91%;HPLC純度:99.96%,トランドラプリラトジケトピペラジン:検出されず;含水量:0.55%,エタノール含量:17.9%)。注:この条件での短い乾燥時間は変換を回避しうるが、同一温度でさらに長い撹拌時間は、変換が完了する時点までE形の量を増やしうる(研究例7をも参照されたい)。
一般的に、B形からE形への変換の速度は、乾燥温度、真空及び粒径によって決まる。変換は、例えば、研究例2及び3又は表7に示されるように、湿潤生成物の粉砕若しくは研磨及び/又は同一若しくはより高い温度での真空乾燥によって加速されうる。利用する乾燥方法及び/又は設備(例えばトレイ乾燥を利用する場合、物質層の厚さ)によっては、大規模での変換時間が延長しうる。
研究例2:
5gの第2湿潤生成物を真空中50℃(1〜5mbar)で15時間乾燥させて結晶形Eとしてトランドラプリラトを得た(収量:3.8g;アッセイ(0.1N HClO4)=99.41%;HPLC純度:99.57%,トランドラプリラトジケトピペラジン:0.40%;含水量:0.34%,エタノール含量:0.10%)。
【0090】
研究例3:
5gの第2湿潤生成物を真空中50℃(<1mbar)で25時間乾燥させて結晶形Eとしてトランドラプリラトを得た(収量:3.7g;アッセイ(0.1N HClO4)=98.9%;HPLC純度:99.48%,トランドラプリラトジケトピペラジン:0.51%;含水量:0.27%,エタノール含量:0.09%)。
研究例4:
エタノール(200ml)中の32.4gの第2湿潤生成物の懸濁液を約40℃の温度で16時間、次に約20℃〜約25℃の範囲の温度で2時間撹拌した。ろ過後、湿潤生成物をエタノール(80ml)で洗浄して31.4gの第3湿潤生成物を純粋な結晶形Bとして得た。
第3湿潤生成物を用いた研究:
研究例5:
第3湿潤生成物の後半を室温(常圧)の結晶皿内及び微気流内で21.5時間乾燥させて結晶形Bとしてトランドラプリラトを得た(収量:13.6 g;アッセイ(0.1N HClO4)=81.57%;HPLC純度:99.97%,トランドラプリラトジケトピペラジン:検出されず;含水量:0.56%,エタノール含量:18.49%)。注:研究例1を参照されたい。
【0091】
研究例6:
第3湿潤生成物のほぼ半分を真空中(<1mbar)50℃で21.5時間乾燥させて結晶形Eとしてトランドラプリラトを得た(収量:11.2g;アッセイ(0.1N HClO4)=99.04%;HPLC純度:99.52%,トランドラプリラトジケトピペラジン:0.45%;含水量:0.30%,エタノール含量:0.06%)。
研究例7:
第3湿潤生成物のサンプルを粉砕してPXRDサンプルホルダーに充填した。室温かつ常圧における純粋なトランドラプリラト結晶形BのE形への変換を逐次PXRD測定で追った(図15参照)。19時間以内で最初の18の測定を行った。同一条件下で35時間貯蔵後に19番目の測定を行った(サンプルを混合して再びサンプルホルダーに充填後、最後の測定を行った。
【実施例6】
【0092】
(結晶トランドラプリラトEの調製のスケールアップ手順)
後述する方法で結晶トランドラプリラトE形を調製した。
NaOH(144.8g,3.42mol;アッセイ=94.5%)、水(2573ml)、エタノール(2187ml)及びトランドラプリル(680g,1.58mol;アッセイ=99.81%)の溶液を約20℃〜約25℃の範囲の内部温度で18時間撹拌した。インプロセスコントロールがほとんど完全な鹸化を示した後(HPLCで)、約20℃〜約25℃の範囲の温度で2Nの塩酸水溶液を添加して清澄溶液のpHを3.8に調整した(一般的な結晶核を入れる手順(実施例2参照)に従って溶液に結晶核を入れた)。懸濁液を約20〜約25℃の範囲の温度で5.5時間撹拌してからろ別し、湿潤生成物を水(2149ml)とエタノール(2198ml)で洗浄した。次に、エタノール(6046ml)中の湿潤生成物の懸濁液を約38℃〜約43℃の温度で14時間、次いで約20℃〜約25℃の範囲の温度で2時間撹拌した。ろ過後、湿潤生成物をエタノール(2224ml)で洗浄し、真空中(<1mbar)40℃で、エタノール含量が0.5%未満になるまで(4日)乾燥させてトランドラプリラトを結晶形Eとして得た(収量:582g,1.44mol,91.3%;アッセイ(NaOH)=99.74%;HPLC純度:99.33%,トランドラプリラトジケトピペラジン:0.52%;含水量:0.54%,エタノール含量:955ppm,塩化物含量=検出されず)。
【0093】
本明細書では、本発明を特異性と共に、かつその特定の好ましい実施形態に関して述べたが、本技術の当業者は、行うことができ、かつ本発明の範囲及び精神内である、述べたものの多くの変更、修飾及び置換を認識するだろう。これらのすべての修飾及び変更は、本明細書で述べかつ請求した通りの本発明の範囲内であり、かつ本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、かつ合理的にできるだけ広く該特許請求の範囲を解釈するものとする。
この文書全体を通じて、種々の書籍、特許、学術論文、ウェブサイト及び他の出版物を引用した。これらの各書籍、特許、学術論文、ウェブサイト及び他の出版物の全体を本明細書で援用する。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】結晶トランドラプリラトA形のX線粉末回折パターンである。
【図2】トランドラプリラトA形のX線測定から得た結晶構造の図である。
【図3】トランドラプリラトの1つの分子と、結晶構造に結合したn-ブタノールの2つの分子とを含む、トランドラプリラトA形の非対称単位の図である。
【図4】トランドラプリラトA形の結晶データから計算した粉末プロフィールを示すグラフである。
【図5】トランドラプリラトB形のX線測定から得た結晶構造の図である。
【図6】トランドラプリラトの1つの分子と、結晶構造に結合したエタノールの2つの分子とを含む、トランドラプリラトB形の非対称単位の図である。
【図7】トランドラプリラトB形の結晶データから計算した粉末プロフィールを示すグラフである。
【図8】結晶トランドラプリラトC形のX線粉末回折パターンである。
【図9】結晶トランドラプリラトD形のX線粉末回折パターンである。
【図10】結晶トランドラプリラトD形のシンクロトロンプロフィールを示すグラフである。
【図11】結晶トランドラプリラトE形のX線粉末回折パターンである(標準物質としてSiを含む)。
【図12】結晶トランドラプリラトB形と結晶トランドラプリラトE形の混合物のX線粉末回折パターンである。
【図13】結晶トランドラプリラトB形のX線粉末回折パターンである。
【図14】実施例1〜6に従って得た種々の形の結晶トランドラプリラトのX線粉末回折プロフィールの概要である。
【図15】逐次X線粉末回折(PXRD)測定で調査した基礎サンプルのトランドラプリラトの結晶形Bから結晶形Eへの変換を示す。
【図16】トランドラプリラトの結晶形Aの調製方法を示す概要である。
【図17】トランドラプリラトの結晶形B〜Eの調製方法を示す概要である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の背景〕
(発明の分野)
この出願は、2006年4月5日提出の先に係属している米国仮特許出願第60/789,806号から出願され、該出願の利益を主張する非仮特許出願である。米国仮特許出願第60/789,806号は、その全体がこの非仮特許出願に援用される。
本発明は、トランドラプリラトの新規な多形と擬似多形、及びその混合物、並びにトランドラプリラト、1種以上の新規トランドラプリラト化合物を含むトランドラプリラトの医薬的に許容しうる塩、トランドラプリラトの医薬的に許容しうる塩、トランドラプリラトの多形及び擬似多形、1種以上の新規トランドラプリラト化合物を含む医薬組成物の新規製造方法、並びに1種以上の新規トランドラプリラト化合物を用いて高血圧及び/又は心不全を治療する方法に関する。
(背景及び関連技術)
【0002】
トランドラプリラト{(2S,3aR,7aS)-1-[[(2S)-2-[[(1S)-1-カルボキシ-3-フェニルプロピル]アミノ]-プロパノイル]オクタヒドロ-1H-インドール-2-カルボン酸}はトランドラプリルの活性代謝物である。トランドラプリルとトランドラプリラトはそれぞれ以下に示す構造を有し、両方ともアンジオテンシン変換酵素(「ACE酵素」)として知られる酵素のインヒビターである。ACE酵素は、アンジオテンシンIのアンジオテンシンIIへの変換を触媒するペプチジルジペプチダーゼであり、強力な抹消血管収縮薬であり、副腎皮質によるアルドステロンの分泌をも刺激し、かつレニン分泌の負のフィードバックを与える。
【化1】
【0003】
ACEインヒビターであるトランドラプリル及びトランドラプリラトは、ACE活性を阻害し、結果として抗高血圧作用をもたらす。従って、トランドラプリル及びトランドラプリラトを用いて血圧を下げ、かつ心不全及び高血圧に関連する他の医療状態を治療しうる。トランドラプリル及びトランドラプリラトの高血圧における作用は、主に循環及び組織ACE活性の阻害、ひいてはアンジオテンシンII形成の低減、血管収縮の減少、アルドステロン分泌の低下及び血漿レニンの増加に起因すると考えられる。
トランドラプリルは、トランドラプリラトのエチルエステルプロドラッグであり、非スルフヒドリルアンジオテンシン変換酵素(ACE)インヒビターである。トランドラプリルが脱エステルして二酸代謝物、トランドラプリラトになる。トランドラプリラトは、ACE活性のインヒビターとしてトランドラプリルより約8倍強力であると、文献に記載されている。トランドラプリルを錠剤又はカプセル剤などの経口剤形として投与しうるが、公開された米国特許出願2004/0052835及び米国特許第6,303,141号に記載されているジカルボン酸(例えばトランドラプリラト)の形態で、又は治療的に活性な塩として該ACEインヒビターを用いた経皮投与がある。
公開された米国特許出願2004/0052835に記載されているように、経皮パッチにおける特定の不安定なACEインヒビターの使用は、パッチに使用した活性成分の分解という問題をもたらした。このような分解は、製品が分解の許容限界を超えたるとすぐに、短期間の貯蔵時間内で起こった。この文献では、ジカルボン酸と強酸(1:1)又は塩基(1:2)との反応によって形成される、ACEインヒビターの活性代謝物(=ジカルボン酸)の塩は、分解に関して実質的に安定であると記載されている。
非常に不利なことに、トランドラプリルとトランドラプリラト(不安定型)は両方ともその合成及び/又は貯蔵中に起こる分解反応(以下に示すように、対応するジケトピペラジンへの環化)で分解する傾向があることは周知である。
【0004】
【化2】
トランドラプリラトはその合成及び単離中に分解する傾向があり、最終生成物を汚染し、収率の損失をもたらす。
トランドラプリルとトランドラプリラトの安定化のため、特にこれらの化合物の製剤化のため、種々の方法及び成分が開発されている。例えば、米国特許第4,743,450号又は公開された特許出願番号U.S.2004/0137054を参照されたい。
上記問題は、分解する傾向があるACEインヒビターの調製及び安定化のための新しい頑強かつ有効な方法を開発することが要望されていることを示している。上記方法に加え、或いはそれとは別に、他のこのような方法は、該ACEインヒビターの異なる結晶形の研究と評価を包含しうることが判明した。この異なる結晶形が該化合物の安定性に確固とした役割を果たしうるからである。
一般に、化合物は種々の結晶形及び非結晶形で存在しうる。通常、非結晶性固体は「非晶形」と呼ばれ、分子の無秩序配列から成る。同じ化合物の異なる結晶形は、固体状態の分子の異なるパッキングから生じ、異なる結晶対称及び/又は単位セルパラメーターをもたらす。このような結晶形は、「多形」及び/又は「非溶媒和形」と呼ばれ、それらが本質的に残留有機溶媒のないことを意味する。該物質が、結晶構造中に、化学量論又は非化学量論の水を取り入れている場合(水和物)、又はいずれかの他の溶媒を取り入れている場合(溶媒和物)、それらは「擬似多形」と呼ばれる。
【0005】
多くの化合物は、種々の多形、擬似多形又は非晶形で存在することが分かっている。このような異なる固体形は異なる物理的、分光学的及び/又は化学的性質、例えば溶解度及び溶解速度、融点、密度、安定性及び流動特性を有しうる。活性化合物では、溶解度と溶解速度が、その製剤化の際に考慮しなければならないバイオアベイラビリティー、密度及び流動特性に影響を与えうる。さらに、これらの化合物の化学的及び物理的(熱力学的)安定性は、例えば、熱力学的にあまり安定でない(反応速度論的に好ましい)多形相の、より安定な多形相への分解又は変換に関して重要であり、これらの化合物の生物学的活性に影響しうる。
トランドラプリルの合成方法は、例えば、EP 0084164(及びその対応米国特許第4,933,361号)及びWO 2005/051909に開示されている。
トランドラプリルからトランドラプリラトを適切に調製する方法は文献に記載されていない。トランドラプリラトのジアステレオマー異性体の製法は、J. Med. Chem. 30, 992-998 (1987)に記載されているが、該二酸の単離のため、生じた混合物を凍結乾燥し、かつアンバーライトIR-120上のイオン交換クロマトグラフィーによって残留残渣を精製する必要があった。不利なことに、この方法はトランドラプリラトの大規模生産に適さない。
トランドラプリラトのさらなる製法が米国特許第5,101,039号に記載されている。具体的手順が提供されず、言及されている手順はいくつかの欠点に悩む:それは結晶性物質を与えず;真空下での水の除去を必要とし;かつ溶媒としてジ-イソプロピルエーテルの使用に依存する。単離及び精製の点で結晶性物質が明らかに望ましく;真空下での水の除去は時間がかかり;かつジ-イソプロピルエーテルは危険な過酸化物を非常に形成しやすい。従って、この手順は好適な技術的プロセスでない。
上記に鑑み、大規模にトランドラプリラト、及びその塩、多形、擬似多形及び混合物を調製する効率的な信頼できる頑強な方法、並びに合成及び貯蔵中に改良された安定性を有するトランドラプリラトの多形及び擬似多形を提供することが有益だろう。
【0006】
〔発明の概要〕
有利には、本発明は、高い収率と純度で大規模にトランドラプリラト、及びその塩、多形、擬似多形及び混合物を調製する効率的な信頼できる頑強な方法、並びにトランドラプリラトの非溶媒和形に比べて合成及び貯蔵中に改良された安定性(対応するジケトピペラジンへの環化を受ける傾向の低減)を有するトランドラプリラトの異なる多形及び擬似多形を提供する。トランドラプリラトの結晶形は、その安定化で重要な役割を果たすのみならず、トランドラプリルからの効率的な頑強かつ純粋な調製を斟酌することを究明した。
不安定型トランドラプリラトは、特に対応するジケトピペラジン誘導体への環化によって分解するという高い傾向があるので、該二酸の調製と精製(例えば、高温での再結晶)は非常に困難であり、収率の損失をもたらし、多くの場合、許容できない低純度となる。
驚くべきことに、かつ予想外に、トランドラプリルの二酸(トランドラプリラト)がアルコール及び/又は水と異なる擬似多形を形成し、異なる擬似多形がトランドラプリラトの非溶媒和形に比べて(特に対応するジケトピペラジンへの環化について)合成及び/又は貯蔵中に高い安定性を有し、かつ高い収率と純度で調製されうることを究明した。さらに、トランドラプリラトのこれらの擬似多形は、温和な条件下で高い収率と純度で不安定型(非溶媒和)形に変換できることを究明した。
一局面では、本発明は、多形又は擬似多形の結晶トランドラプリラトの調製方法であって、以下の工程を含んでなる方法を提供する:
(a)n-ブタノールと水を含有する溶液中でトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与える工程;及び
(b)前記溶液から、トランドラプリラトの結晶化を誘導するために十分な量の水を除去する工程。
【0007】
別の局面では、本発明は、トランドラプリラトの調製方法であって、以下の工程を含んでなる方法を提供する:
(a)鹸化反応溶媒中、少なくともほとんど完全な鹸化を可能にするために有効な温度で、かつ有効な時間、トランドラプリルを水酸化化合物と反応させる工程(ここで、前記水酸化化合物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、テトラアルキルアンモニウム水酸化物又は置換アルキルアンモニウム水酸化物であり、かつ前記トランドラプリル、水酸化化合物及び鹸化反応溶媒を、それぞれ下記式(3):
【0008】
【化3】
(式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウムイオンであり、かつnは1又は2である)
の塩を含む反応混合物を生成するために有効な量で使用する);
(b)工程(a)の反応混合物を、該混合物のpHをその等電点に到達させ、かつトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与えるために有効な量の酸と、有効な時間、かつ有効な温度で混合する工程;及び
(c)工程(b)から生じた反応混合物から、トランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で単離する工程。
【0009】
さらなる局面では、本発明は、多形又は擬似多形の結晶トランドラプリラトの調製方法であって、以下の工程を含んでなる方法を提供する:
(a)水、C1-C4アルコール及びその混合物から選択される鹸化反応溶媒中、少なくともほとんど完全な鹸化を可能にするために有効な温度で、かつ有効な時間、トランドラプリルを水酸化化合物と反応させる工程(ここで、前記水酸化化合物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、テトラアルキルアンモニウム水酸化物又は置換アルキルアンモニウム水酸化物であり、かつ前記トランドラプリル、水酸化化合物及び鹸化反応溶媒を、それぞれ下記式(3):
【化4】
【0010】
(式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウムイオンであり、かつnは1又は2である)
の塩を含む反応混合物を生成するために有効な量で使用する);
(b)工程(a)で使用する前記鹸化反応溶媒がn-ブタノール以外のアルコールを含む場合、工程(a)の反応混合物から該アルコールを除去する工程;
(c)工程(b)の反応混合物が水溶液でない場合、水溶液を与えるために有効な量の水を前記反応混合物に添加する工程;
(d)工程(c)の生成物を、該混合物のpHをその等電点に到達させ、かつトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与えるために有効な量の酸と、有効な時間、かつ有効な温度で混合する工程;
(e)工程(d)の混合物から、n-ブタノールと水を含有する溶液中でトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与えるために有効な量のn-ブタノールで、有効な温度にてトランドラプリラトを抽出する工程;及び
(f)工程(e)の溶液から、トランドラプリラトの結晶化を誘導し、かつ多形又は擬似多形の結晶トランドラプリラトを与えるために十分な量の水を除去する工程。
【0011】
さらに別の局面では、本発明は、実質的に純粋な結晶形で、又は異なる結晶形の混合物としてトランドラプリラトを生成する方法であって、以下の工程を含んでなる方法を提供する:
(a)水、C1-C4アルコール及びその混合物から選択される鹸化反応溶媒中、少なくともほとんど完全な鹸化を可能にするために有効な温度で、かつ有効な時間、トランドラプリルを水酸化化合物と反応させる工程(ここで、前記水酸化化合物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、テトラアルキルアンモニウム水酸化物又は置換アルキルアンモニウム水酸化物であり、かつ前記トランドラプリル、水酸化化合物及び鹸化反応溶媒を、それぞれ下記式(3):
【化5】
【0012】
(式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウムイオンであり、かつnは1又は2である)
の塩を含む反応混合物を生成するために有効な量で使用し、かつ
前記鹸化反応溶媒がC1-C4アルコールと水の混合物を含む場合、このC1-C4アルコールと水は、少なくともほとんど完全な鹸化を可能にするために有効な比で存在する);
(b)工程(a)で使用する前記鹸化反応溶媒がC4アルコールを含む場合、工程(a)の反応混合物から該C4アルコールを除去する工程;
(c)工程(b)の反応混合物が水溶液でない場合、水溶液を与えるために有効な量の水を前記反応混合物に添加する工程;
(d)工程(c)の生成物を、該混合物のpHをその等電点に到達させ、かつ実質的に純粋な遊離アミノ酸形で、又は少なくとも2種の異なる遊離アミノ酸形の混合物としてトランドラプリラトを与えるために有効な量の酸と、有効な時間、かつ有効な温度で混合する工程;
(e)工程(d)の生成物を上澄みから分離する工程;及び
(f)工程(e)の生成物を乾燥させて、実質的に純粋な結晶形で、又は少なくとも2種の異なる結晶形の混合物としてトランドラプリラトを与える工程。
【0013】
別の局面では、本発明は、実質的に純粋な結晶形で、又は結晶形の混合物としてトランドラプリラトを生成する方法であって、以下の工程を含んでなる方法を提供する:
(a)エタノールと水を約1/1〜約1/1.5の体積比で含む鹸化反応溶媒中、約20℃〜約25℃の範囲の温度で、下記式(3):
【化6】
【0014】
(式中、Mはナトリウムであり、かつnは2である)
の塩を含む反応混合物を生成するために十分な時間、トランドラプリルを少なくとも2.0当量のNaOHと反応させる工程;
(b)工程(a)の生成物のpHを塩酸で約3.6〜約4.0の範囲に調整して、実質的に純粋な遊離アミノ酸形で、又は少なくとも2種の異なる遊離アミノ酸形の混合物としてトランドラプリラトを与える工程;
(c)工程(b)の生成物を上澄みから分離する工程;及び
(d)工程(c)の生成物を乾燥させて、実質的に純粋な結晶形で、又は少なくとも2種の異なる結晶形の混合物としてトランドラプリラトを与える工程。
【0015】
別の局面では、本発明は、下記式(4)の構造を含む結晶形のトランドラプリラトを提供する。
【化7】
(式中、RはH又はC1-C4アルキルであり、nは0〜2の範囲であって、化学量論的又は非化学量論的でよい。)
【0016】
別の局面では、本発明は、トランドラプリラトA形、トランドラプリラトB形、トランドラプリラトC形、トランドラプリラトD形又はトランドラプリラトE形である結晶トランドラプリル、医薬的に有効な量の結晶トランドラプリラトA、B、C、D及び/又はE形を含んでなる医薬組成物、並びにトランドラプリラトA形、トランドラプリラトB形、トランドラプリラトC形、トランドラプリラトD形及びトランドラプリラトE形から成る群より選択少なくとも1種の結晶トランドラプリラトを含んでなるトランドラプリラトA、B、C、D及び/又はE形の医薬組成物を投与することを含む治療方法を提供する。
【0017】
〔好ましい実施形態の詳細な説明〕
本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明、及びその中に含まれる実施例を参照して、本発明をより容易に理解できるだろう。
(定義)
明瞭さの目的のため、この明細書及び添付の特許請求の範囲全体を通して使用する用語とフレーズは、以下に述べる様式で定義される。この明細書又は添付の特許請求の範囲で使用する用語又はフレーズが以下に、又はこの明細書で別の様式で定義されない場合、その用語又はフレーズはその通常の意味が与えられるものとする。
本明細書では、フレーズ「経皮投与」は、皮膚上に(通常、表皮などの皮膚の1以上の露出面又は外面上に)、例えば、手、指又は種々多様なアプリケーター(スプレー、ポンプ、ブラシ、マット、パウダーパフ、コットンボール、キューチップ、パッチ等)を用いて適用することを意味する。例えば、皮膚若しくは毛の中又は上に置く、注ぐ、広げる、噴霧する、振りかける又はマッサージすることによって、或いは他の便利又は適切ないずれの方法によっても適用することができる。
化合物と関係して本明細書で使用する場合、フレーズ「非晶形」は、分子の無秩序な配列から成る非結晶性固体(すなわち、結晶形にない)を意味する。
本明細書では、フレーズ「心不全」は、心筋への不十分な血流を意味し、狭心症を引き起こしうる。
本明細書では、用語「結晶」は、一般的に規則的な原子構造(その原子、イオン又は分子の配列によって形成される特徴的な形状と切断面;一般的に「格子」と呼ばれる一定のパターンを含む)を有する、化合物の凝固によって形成された固体を意味する。
本明細書では、用語「結晶化」は結晶の形成を意味する。
本明細書では、用語「環化」は、新しい結合の形成による鎖からの環又は環化合物の形成を意味する。
本明細書で論じる化合物又は医薬組成物と関係して本明細書で使用する場合、フレーズ「有効な量」は、ヒト等の対象に心臓若しくは他の健康上及び/又は医療上の利益を与え、或いは増強するために有効な量の化合物又は医薬組成物を意味する。本明細書で提供する情報、及び既知の情報を用いて、本技術の当業者は、種々多様な異なる医療状況下のヒト及び種々多様な動物に心臓、健康上及び/又は医療上の利益を与え、或いは増強するために有効であろう、本明細書で論じる1種以上の化合物及び医薬組成物の量を容易に決定することができる。
【0018】
本明細書では、略語「Et」はエチルを意味する。
本明細書では、用語「水和物」は、結晶構造に化学量論量又は非化学量論量の水を取り込む化合物の結晶形を意味する。
本明細書では、表7中などの略語「n.d.」は決定しないことを意味する。
本明細書では、略語「PXRD」は、粉末X線回折を意味する。
本明細書では、フレーズ「医薬的に許容しうる」は、ゾンデ医療判断の範囲内にある、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは混乱なしで、妥当な利益/危険比で釣り合っている、ヒト及び/又は動物の組織と接触して使うために適した当該化合物、材料、組成物及び/又は剤形を意味する。
本明細書では、フレーズ「医薬的に許容しうる担体」は、体の、ある器官、組織又は部分から体の別の器官、組織又は部分に化合物又は医薬を運搬又は輸送するときに関与する医薬的に許容しうる材料、組成物又はビヒクル、例えば固体若しくは液体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒又は封入材料を意味する。医薬的に許容しうる担体として役に立ちうる材料の例として、限定するものではないが、糖類(例えばラクトース、グルコース及びスクロース)、デンプン(例えばコーンスターチ及びジャガイモデンプン)、セルロースとその誘導体、ゼラチン、蝋、油、水、及び医薬製剤で利用される当業者に既知の他の物質が挙げられる。
本明細書では、フレーズ「医薬的に許容しうる塩」は、本発明のトランドラプリラト化合物の無毒塩を指し、通常、遊離塩基を適切な有機若しくは無機酸と反応させるか、又は遊離酸を適切な塩基と反応させることによって調製される。当業者は、トランドラプリラト化合物の医薬的に許容しうる塩を生成するためにどの酸及び/又は塩基が適切であるかを容易に決定しうる。
【0019】
本明細書では、フレーズ「多形(polymorph)」、「多形(polymorphic form)」及び「非溶媒和形」は、該結晶性物質中に、(a)水;及び(b)他の残留及び/又は非残留有機若しくは他の溶媒が本質的にない(すなわち約2%未満)、化合物(特定の結晶対称及び/又は単位セルパラメーターで固体状態に充填されたその分子を有する化合物)の結晶形を指す。
本明細書では、フレーズ「擬似多形(pseudopolymorph)」及び「擬似多形(pseudopolymorphic form)」は、その結晶構造中に、(a)化学量論量若しくは非化学量論量の水(水和物);又は(b)1種以上の他の溶媒を取り込む化合物(特定の結晶対称及び/又は単位セルパラメーターで固体状態に充填されたその分子を有する化合物)の結晶形を指す。
本明細書では、用語「鹸化」は、アルコールと酸の塩を形成するための塩基性条件下におけるエステルの加水分解を意味する。
本明細書では、用語「結晶核を入れる(seeding)」は、小量の材料を用いて結晶化事象を開始又は促進することを意味する。
本明細書では、用語「溶媒和物」は、結晶構造中に、ある量の1種以上の溶媒を取り込む化合物の結晶形を意味する。
本明細書では、フレーズ「直鎖若しくは分岐鎖C1-C4アルコール」として、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール及びt-ブタノールが挙げられる。
本明細書では、用語「対象」はヒト及び動物を包含する。
本明細書で結晶トランドラプリラトの形と関係して使用されるフレーズ「実質的に純粋」は、結晶トランドラプリラトが、トランドラプリラトの1つの結晶形を少なくとも約70%含有し、さらに好ましくはトランドラプリラトの1つの結晶形を少なくとも約90%含有し、最も好ましくはトランドラプリラトの1つの結晶形を少なくとも約95%含有することを意味する。
本明細書では、略語「XRPD」はX線粉末回折を意味する。
【0020】
(一般的説明)
トランドラプリラト(不安定型)はその合成及び単離中に分解する傾向があり、不利なことに最終生成物の汚染及び収率の損失をもたらすので、他のスケーラブル法、例えば、J. Med. Chem. 30, 992-998 (1987)でトランドラプリラトジアステレオマーについて記載されているような、凍結乾燥による化合物の単離及びイオン交換体を使用する精製に関連して存在する困難を回避する、実質的に純粋な形かつ高い収率のトランドラプリラトの調製を可能にする簡単な効率的かつ頑強な方法を見つけることが望ましかった。
好ましくは凍結乾燥、及びイオン交換体による生成物の精製を回避する、大規模に、トランドラプリラト、及びその塩、多形、擬似多形及びその混合物を調製かつ単離する効率的な信頼のできる頑強な方法を開発した。高い収率と純度のトランドラプリラトのスケーラブル合成にこの新規方法を使用できる。
有利なことに、新規な安定結晶形の形成によってトランドラプリラトを安定化する新規方法を発見した。トランドラプリラトのこれらの新規結晶形は、トランドラプリラトの非溶媒和(不安定型)形に比し、合成及び貯蔵中に改良された安定性(対応ジケトピペラジンへの環化を受ける傾向の低減)を有する。
本発明の方法に従って生成できるトランドラプリラトの新規多形及び擬似多形のうち、トランドラプリラトの結晶形A、トランドラプリラトの結晶形B、トランドラプリラトの結晶形C、トランドラプリラトの結晶形D及びトランドラプリラトの結晶形E、並びにその混合物が好ましい。トランドラプリラトのこれらの形の重要な特性、並びにそれらを調製するための手順及び実施例を以下に要約する。「第1手順」及び「第2手順」は、詳細に後述する2つの異なる合成手順に相当する。実施例番号は、後述する実施例セクションにある実施例と関連する。
【0021】
トランドラプリラトA〜E形
【0022】
(トランドラプリラトの精製と単離の手順)
一局面では、本発明は、下記トランドラプリラト(1):
【化8】
【0023】
の精製及び単離の新規方法であって、以下の工程を含んでなる方法を提供する:
(a)下記トランドラプリル(2):
【化9】
【0024】
を、鹸化反応溶媒中、少なくともほとんど完全な鹸化を可能にするために有効な温度で、かつ有効な時間、水酸化化合物と反応させる工程(ここで、前記水酸化化合物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、テトラアルキルアンモニウム水酸化物又は置換アルキルアンモニウム水酸化物であり、かつ前記トランドラプリル、水酸化化合物及び鹸化反応溶媒を、それぞれ下記式(3):
【化10】
【0025】
(式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウムイオンであり、かつnは1又は2である)
の塩を含む反応混合物を生成するために有効な量で使用する);
(b)工程(a)の反応混合物を、該混合物のpHをその等電点に到達させ、かつトランドラプリラトを遊離アミノ酸形で与えるために有効な量の酸と、有効な時間、かつ有効な温度で混合する工程;及び
(c)工程(b)から生じた反応混合物から、トランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で単離する工程。
【0026】
上記方法の工程について以下にさらに詳述する。
工程(a):
(水酸化化合物)
工程(a)で使用する水酸化化合物は、好ましくはアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、テトラアルキルアンモニウム水酸化物又は置換アルキルアンモニウム水酸化物である。使用しうるアルカリ金属水酸化物の例として、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化リチウム(LiOH)等が挙げられる。使用しうるアルカリ土類金属水酸化物の例として、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。使用しうるテトラアルキルアンモニウム水酸化物の例として、該アルキル基がメチル乃至ヘキシルの範囲である当該テトラアルキルアンモニウム水酸化物が挙げられる。水酸化ベンジル(トリメチルアンモニウム)等の置換アルキルアンモニウム水酸化物をも使用しうる。水酸化化合物のうち、アルカリ金属水酸化物、特に水酸化ナトリウムが好ましい。
(鹸化反応溶媒)
工程(a)で使用しうる鹸化反応溶媒として以下のものが挙げられる:(i)直鎖若しくは分岐鎖C1-C4アルコール;(ii)水;及び(iii)(i)及び/又は(ii)のいずれかの混合物、例えばエタノールと水の混合物。工程(a)で使用する鹸化反応溶媒は、好ましくはエタノール、水又はエタノールと水の混合物であり、最も好ましくはエタノールと水の混合物である。
鹸化反応溶媒が、エタノール等のC1-C4アルコールと水の混合物の場合、C1-C4アルコールと水との比は広い範囲を有し、好ましくは体積で約5:1〜約1:5、さらに好ましくは体積で約2:1〜約1:2、なおさらに好ましくは体積で約1.5:1〜約1:1.5であり、最も好ましくは体積で約1/1の比である。
【0027】
(反応物と溶媒の量)
工程(a)で使用するトランドラプリル、水酸化化合物及び鹸化反応溶媒は、上述したように、それぞれ、式(3)の塩を含む反応混合物を生成するために有効な量で使用される。当業者は、このような量を容易に決定することができる。しかし、好ましくは約9〜約14%(質量対容量)の範囲のトランドラプリルである。
このプロセスの好ましい実施形態では、反応混合物に少なくとも2.0当量の水酸化物を与えるために少なくとも十分な量の水酸化化合物を使用する。別の好ましい実施形態では、使用するトランドラプリルの量を超過する量、好ましくは、使用するトランドラプリルの量に対して約3.0当量の量、さらに好ましくは約2.5当量の量、最も好ましくは約2.2当量の量で水酸化化合物を供給する。
(温度)
工程(a)は、好ましくは少なくともほとんど完全な鹸化を可能にする(例えば、約80%以上のトランドラプリルがトランドラプリラトに変換する)、さらに好ましくは実質的に完全な鹸化を可能にするために有効な温度で行われる。当業者に既知の方法、例えば高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)で変換をモニターすることができる。この温度は、通常、約0℃〜約40℃の範囲、好ましくは約15℃〜約25℃の範囲であり、便宜上、室温で行ってよい。より高い温度は、不利なことに高量の不純物の生成となりうる。これは、過剰な水酸化化合物(塩基)の存在下における式(3)の塩のエピマー化によって起こりうる。少なくともほとんど完全な鹸化を可能にするために有効な時間(例えば、12〜20時間)、例えば、20〜25℃で15時間、工程(a)を行ってよい。
(式3の塩)
工程(a)で形成される式(3)の塩中、Mは、上述したように、アルカリ金属、アルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウムイオンでよい。
【0028】
工程(b):
(酸)
工程(b)では、工程(a)の反応混合物を、該混合物のpHをその等電点に到達させ、かつトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与えるために有効な量の酸と混合する。このようなpHは一般的に約3.6〜4.0の範囲である。当業者は、このような酸の量を容易に決定することができる。
工程(a)の反応混合物を等電点まで酸化するために工程(b)で使用しうる酸として、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸又はリン酸が挙げられる。好ましくは、使用する酸は塩酸である。
(温度)
工程(b)において、酸と工程(a)の反応混合物の混合は、好ましくは、混合物のpHをその等電点に到達させ、かつトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で、実質的にトランドラプリラトを分解することなく与えるために有効な温度で起こる。
(時間)
工程(b)において、酸と工程(a)の反応混合物の混合は、好ましくは、混合物のpHをその等電点に到達させ、かつトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与えるために有効な時間、例えば、約0.5時間〜約48時間、好ましくは約0.5時間〜約6時間起こる。
【0029】
工程(c):
工程(c)では、抽出又は沈殿によって、工程(b)の混合物からトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で単離する。このような単離方法については後述するが、当業者は該単離方法を日常的に決定することができる。
(純度と収率)
この方法で生成されるトランドラプリラトは、一般的に少なくとも実質的に純粋であり、好ましくは少なくとも約85%の純度を有し、さらに好ましくは少なくとも約90%の純度を有し、なおさらに好ましくは少なくとも約95%の純度を有する。
【0030】
多形又は擬似多形の結晶トランドラプリラトの調製及び単離の手順−(第1手順):
別の局面では、本発明は、結晶トランドラプリラトA形(トランドラプリラトの擬似多形)といった多形又は擬似多形の結晶トランドラプリラトの調製及び単離の新規方法を提供する。
驚くべきことに、かつ予想外に、遊離アミノ酸形としてのトランドラプリラトは、水で飽和したn-ブタノールに可溶性であり、かつこのn-ブタノール/水混合物を、該反応混合物のpHを等電点に調整後、水層からn-ブタノールでトランドラプリラトを抽出するために使用できることが分かった。
従って、本発明のこの局面は、多形又は擬似多形の結晶トランドラプリラトを調製する方法であって、以下の工程を含んでなる方法である:
(a)下記トランドラプリル(2):
【0031】
【化11】
を、水、C1-C4アルコール及びその混合物から選択される鹸化反応溶媒中、少なくともほとんど完全な鹸化を可能にするために有効な温度で、かつ有効な時間、水酸化化合物と反応させる工程(ここで、前記水酸化化合物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、テトラアルキルアンモニウム水酸化物又は置換アルキルアンモニウム水酸化物であり、かつ前記トランドラプリル、水酸化化合物及び鹸化反応溶媒を、それぞれ下記式(3):
【0032】
【化12】
(式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウムイオンであり、かつnは1又は2である)
の塩を含む反応混合物を生成するために有効な量で使用する);
(b)工程(a)で使用する前記鹸化反応溶媒がn-ブタノール以外のアルコールを含む場合、工程(a)の反応混合物から該アルコールを除去する工程;
(c)工程(b)の反応混合物が水溶液でない場合、水溶液を与えるために有効な量の水を前記反応混合物に添加する工程;
(d)工程(c)の生成物を、該混合物のpHをその等電点に到達させ、かつトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与えるために有効な量の酸と、有効な時間、かつ有効な温度で混合する工程;
(e)工程(d)の混合物から、n-ブタノールと水を含有する溶液中でトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与えるために有効な量のn-ブタノールで、有効な温度にて、トランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で抽出する工程;及び
(f)工程(e)の溶液から、トランドラプリラトの環化を誘導し、かつ多形又は擬似多形の結晶トランドラプリラトを与えるために十分な量の水を除去する工程。
上記方法の工程について以下にさらに詳述する。
【0033】
工程(a):
(水酸化化合物)
工程(a)で使用する水酸化化合物は、好ましくはアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、テトラアルキルアンモニウム水酸化物又は置換アルキルアンモニウム水酸化物である。これらの化合物の例は、トランドラプリラトの調製手順について上述したものと同一である。水酸化化合物は、好ましくはアルカリ金属水酸化物であり、最も好ましくは水酸化ナトリウムである。
(鹸化反応溶媒)
工程(a)で使用しうる鹸化反応溶媒は、トランドラプリラトの調製手順について上述したものと同一の鹸化反応溶媒を包含する。工程(a)で使用する鹸化反応溶媒は、好ましくはエタノール、水又はエタノールと水の混合物であり、最も好ましくはエタノールと水の混合物である。
鹸化反応溶媒が、エタノール等のC1-C4アルコールと水の混合物の場合、C1-C4アルコールと水との比は広い範囲を有し、好ましくは体積で約5:1〜約1:5、さらに好ましくは体積で約2:1〜約1:2、なおさらに好ましくは体積で約1.2:1〜約1:1.2であり、最も好ましくは約1/1の体積比である。
【0034】
(反応物と溶媒の量)
工程(a)で使用するトランドラプリル、水酸化化合物及び鹸化反応溶媒は、上述したように、それぞれ、式(3)の塩を含む反応混合物を生成するために有効な量で使用される。当業者は、このような量を容易に決定することができる。しかし、使用するトランドラプリルの量は、好ましくは約9〜約14%の範囲である。
このプロセスの好ましい実施形態では、反応混合物に少なくとも2.0当量の水酸化物を与えるために少なくとも十分な量の水酸化化合物を使用する。別の好ましい実施形態では、使用するトランドラプリルの量を超過する量、好ましくは、使用するトランドラプリルの量に対して約3.0当量の量、さらに好ましくは約2.5当量の量、最も好ましくは約2.25当量の量で水酸化化合物を与える。
(温度)
工程(a)は、好ましくは少なくともほとんど完全な鹸化を可能にする、さらに好ましくは実質的に完全な鹸化を可能にするために有効な温度で行われる。当業者に既知の方法、例えばHPLCで変換をモニターすることができる。この温度は、通常、約0℃〜約40℃の範囲、好ましくは約15℃〜約25℃の範囲、さらに好ましくは約20℃〜約25℃の範囲である。より高い温度は、不利なことに高量の不純物の生成となりうる。これは、過剰な水酸化化合物(塩基)の存在下における式(3)の塩のエピマー化によって起こりうる。
【0035】
(時間)
工程(a)は、少なくともほとんど完全な鹸化を可能にする、さらに好ましくは実質的に完全な鹸化を可能にするために有効な時間行われる。工程(a)で使用する時間は、典型的に約5〜約30時間の範囲であり、好ましくは約10〜約25時間の範囲である。
(式3の塩)
工程(a)で形成される式(3)の塩中、Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウムイオンでよい。これらの化合物の例は、トランドラプリラトの調製手順について上述したものと同一である。
【0036】
工程(b)及び(c):
工程(a)で使用する選択された鹸化反応溶媒がアルコール、又はアルコールと水の混合物であり、かつ単独又は混合物で使用する該アルコールがn-ブタノール以外のアルコールの場合、このアルコールを除去すべきであり、当業者に既知の方法、例えばエバポレーションを利用して達成することができる。そうでない場合(使用するアルコールがn-ブタノールだけの場合)、該アルコールを除去する必要はない。工程(b)の結果が水溶液でない場合、水溶液を与えるために有効な量の水を反応混合物に添加すべきである。
【0037】
工程(d):
(酸)
工程(d)では、工程(c)の生成物を、該混合物のpHをその等電点に到達させ、かつトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与えるために有効な量の酸と混合する。このようなpHは一般的に約3.6〜4.0の範囲である。当業者は、このような酸の量を容易に決定することができる。
工程(c)の生成物を等電点まで酸化するために工程(d)で使用しうる酸として、例えば、トランドラプリラトの調製手順について上述した当該酸が挙げられる。好ましくは、使用する酸は塩酸であり、かつ塩酸は2Nの塩酸水溶液である。
(温度)
工程(d)において、酸と工程(c)の生成物の混合は、好ましくは、該混合物のpHをその等電点に到達させ、かつトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与えるために有効な温度で起こる。このような温度は、一般的に約20℃〜約80℃の範囲、好ましくは約30℃〜約70℃の範囲、さらに好ましくは約60℃〜約70℃の範囲である。
(時間)
工程(d)では、酸と工程(c)の生成物の混合は、好ましくは該混合物のpHをその等電点に到達させ、かつトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与えるために有効な時間起こる。
【0038】
工程(e):
工程(e)では、工程(d)の混合物から、n-ブタノールと水を含有する溶液又は二相混合物中でトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与えるために有効な量のn-ブタノール、又はn-ブタノールと水の共沸混合物で、トランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で抽出する。
この抽出は、ほぼ室温乃至n-ブタノール/水の共沸混合物のほぼ沸点の範囲の温度、好ましくはほぼ室温〜約70℃、さらに好ましくは約50℃〜約60℃で行われる。
使用すべきn-ブタノール又はn-ブタノールと水の共沸混合物の量は、一般的に約5:1〜約1:5の範囲、好ましくは約2:1〜約1:2の範囲、最も好ましくは約1:1である。
【0039】
工程(f):
工程(f)では、工程(e)の溶液から、トランドラプリラトの環化を誘導し、かつ多形又は擬似多形の結晶トランドラプリラトを与えるために十分な量の水を除去する。トランドラプリラトは、無水n-ブタノールに溶けないので、水を除去することによって、例えば、トランドラプリラトを含有するn-ブタノール/水溶液を共沸蒸留を利用することによって、有機層からのトランドラプリラトの環化を惹起(して結晶トランドラプリラトを与える)ことができる。
所望のトランドラプリラト生成物を得る必要がある場合、工程(f)の生成物を、任意に、擬似多形の結晶トランドラプリラトを与えるために有効な温度と圧力で、かつ有効な時間、乾燥させてよい。
(純度と収率)
この方法で生成されるトランドラプリラトは、通常、少なくとも約92%の収率で実質的に純粋な結晶形として得られる。該トランドラプリラトは、99.5%より高い純度を有して得られた。Luna C18(150×4.6mm、3μm;製造業者:Phenomenex, Torrence, CA, USA)カラム、及びSymmetry C18(2)(150×4.6mm、3.5μm;製造業者:Waters Corporation, Millford, MA, USA)カラムを用い、移動相として移動相A:水中0.03%v/vのトリフルオロ酢酸;移動相B:アセトニトリル中0.025%v/vのトリフルオロ酢酸を用い;カラム温度30℃、流速:1.5ml/分、検出:UV 206nm;以下の溶出液勾配を用いて、HPLCで純度を決定した:
時間[分] Aの% Bの%
0 90 10
20.00 10.0 90.0
25.00 10.0 90.0
この文書全体を通じて議論する種々の他の実験において、同様に、かつ同じ装置を用いて純度を決定した。
【0040】
多形又は擬似多形の結晶トランドラプリラトの調製及び単離の手順−(第2手順):
別の局面では、本発明は、結晶トランドラプリラトB形(トランドラプリラトの擬似多形)、結晶トランドラプリラトC形(トランドラプリラトの擬似多形)及び結晶トランドラプリラトD形(トランドラプリラトの擬似多形)といった、多形又は擬似多形の結晶トランドラプリラトを調製及び単離するため、又は少なくとも2種の異なる形の結晶トランドラプリラトの混合物として調製及び単離するための新規方法を提供する。この方法は、適切な溶媒中、水酸化化合物を用いたトランドラプリルの鹸化で始まる。次に、混合物のpHを等電点に調整後、反応混合物からの結晶化によって、結晶トランドラプリラト化合物、又は結晶トランドラプリラト化合物の混合物を単離する。
本発明のこの局面は、実質的に純粋な結晶形で(多形又は擬似多形として)、又は少なくとも2種の異なる結晶形の混合物として、トランドラプリラトを生成する方法であって、以下の工程を含んでなる方法である:
(a)下記トランドラプリル(2):
【0041】
【化13】
を、水、C1-C4アルコール及びその混合物から選択される鹸化反応溶媒中、少なくともほとんど完全な鹸化を可能にするために有効な温度で、かつ有効な時間、水酸化化合物と反応させる工程(ここで、前記水酸化化合物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、テトラアルキルアンモニウム水酸化物又は置換アルキルアンモニウム水酸化物であり、かつ前記トランドラプリル、水酸化化合物及び鹸化反応溶媒を、それぞれ下記式(3):
【0042】
【化14】
(式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウムイオンであり、かつnは1又は2である)
の塩を含む反応混合物を生成するために有効な量で使用する);
(b)工程(a)で使用する前記鹸化反応溶媒がC4アルコールを含む場合、工程(a)の反応混合物から該C4アルコールを除去する工程;
(c)工程(b)の反応混合物が水溶液でない場合、水溶液を与えるために有効な量の水を前記反応混合物に添加する工程;
(d)工程(c)の生成物を、該混合物のpHをその等電点に到達させ、かつ実質的に純粋な遊離アミノ酸形のトランドラプリラトを与えるために有効な量の酸と、有効な時間、かつ有効な温度で混合する工程;
(e)工程(d)の生成物を上澄みから分離する工程;及び
(f)工程(e)の生成物を乾燥させて、実質的に純粋な結晶形で、又は少なくとも2種の異なる結晶形の混合物としてトランドラプリラトを与える工程。
上記方法の工程について以下にさらに詳述する。
【0043】
工程(a):
(水酸化化合物)
工程(a)で使用する水酸化化合物は、好ましくはアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、テトラアルキルアンモニウム水酸化物又は置換アルキルアンモニウム水酸化物である。これらの化合物の例は、トランドラプリラトの調製手順について上述したものと同一である。水酸化化合物は、好ましくはアルカリ金属水酸化物であり、最も好ましくは水酸化ナトリウムである。
(鹸化反応溶媒)
工程(a)で使用しうる鹸化反応溶媒は、トランドラプリラトの調製手順について上述したものと同一の鹸化反応溶媒を包含する。工程(a)で使用する鹸化反応溶媒は、好ましくはエタノール、水又はエタノールと水の混合物であり、最も好ましくはエタノールと水の混合物である。
鹸化反応溶媒が、メタノール等のC1-C4アルコールと水の混合物の場合、C1-C4アルコールと水との比は広い範囲を有し、好ましくは体積で約5:1〜約1:5、さらに好ましくは体積で約2:1〜約1:2、なおさらに好ましくは体積で約1/1〜約1/1.5であり、最も好ましくは約1/1の体積比である。
【0044】
(反応物と溶媒の量)
工程(a)で使用するトランドラプリル、水酸化化合物及び鹸化反応溶媒は、上述したように、それぞれ、式(3)の塩を含む反応混合物を生成するために有効な量で使用される。当業者は、このような量を容易に決定することができる。しかし、上述したように、好ましくは、トランドラプリルの出発原料は、約9〜約14%の範囲の濃度で反応混合物に利用される。水酸化化合物の量も上述した通りである。
このプロセスの好ましい実施形態では、反応混合物に少なくとも2.0当量の水酸化物を与えるために少なくとも十分な量(使用するトランドラプリルの量に基づいて計算)の水酸化化合物を使用する。別の好ましい実施形態では、使用するトランドラプリルの量を超過する量、好ましくは、使用するトランドラプリルの量に対して約3.0当量の量、さらに好ましくは約2.5当量の量、最も好ましくは約2.2当量の量で水酸化化合物を供給する。
(温度)
工程(a)は、好ましくは少なくともほとんど完全な鹸化を可能にする、さらに好ましくは完全な鹸化を可能にするために有効な温度で行われる。当業者に既知の方法、例えばHPLCで変換をモニターすることができる。この温度は、通常、約0℃〜約40℃の範囲、好ましくは約15℃〜約25℃の範囲、さらに好ましくは約20℃〜約25℃の範囲である。より高い温度は、不利なことに高量の不純物の生成となりうる。これは、過剰な水酸化化合物(塩基)の存在下における式(3)の塩のエピマー化によって起こりうる。
(式3の塩)
工程(a)で形成される式(3)の塩中、Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウムイオンでよい。これらの化合物の例は、トランドラプリラトの調製手順について上述したものと同一である。
【0045】
工程(b):
工程(a)で使用する鹸化反応溶媒がC4アルコールを含む場合、該C4アルコールは、好ましくは工程(b)で、好ましくは蒸留によって、工程(a)の反応混合物から除去される。
工程(c):
工程(b)の反応混合物が水溶液でない場合、好ましくは、トランドラプリラトの水溶液を与えるために有効な量の水を工程(b)の反応混合物に添加する。
【0046】
工程(d):
(酸)
工程(c)の生成物を、該混合物のpHをその等電点(例えば、pH3.6〜4.0)に到達させ、かつ実質的に純粋な遊離アミノ酸形で、又は少なくとも2種の異なる遊離アミノ酸形の混合物としてトランドラプリラトを与えるために有効な量の酸と、有効な時間、かつ有効な温度で混合する。
工程(c)の生成物を等電点まで酸化するために工程(d)で使用しうる酸として、例えば、トランドラプリラトの調製手順について上述した当該酸が挙げられる。好ましくは、使用する酸は塩酸であり、かつ塩酸は2Nの塩酸水溶液である。
(温度)
工程(d)において、酸と工程(c)の生成物の混合は、好ましくは、該混合物のpHをその等電点に到達させ、かつ遊離アミノ酸形で、又は少なくとも2種の異なるアミノ酸形の混合物としてトランドラプリラトを与えるために有効な温度で起こる。このような温度は、一般的に約0℃〜約40℃の範囲、好ましくは約15℃〜約25℃の範囲、さらに好ましくはほぼ室温である。
(時間)
工程(d)において、酸と工程(c)の生成物の混合は、好ましくは、該混合物のpHをその等電点に到達させ、かつ遊離アミノ酸形で、又は少なくとも2種の異なるアミノ酸形の混合物としてトランドラプリラトを与えるために有効な時間起こる。
【0047】
工程(e):
工程(c)の生成物を上澄みから、ろ過、遠心分離又は同様の方法で分離する。
工程(f):
工程(e)の生成物を乾燥させて、実質的に純粋な結晶形で、又は少なくとも2種の異なる結晶形の混合物としてトランドラプリラトを与える。
(温度)
工程(e)は、好ましくは、実質的に純粋な結晶形で、又は少なくとも2種の異なる結晶形の混合物としてトランドラプリラトを与えるために有効な温度で行われる。この温度は一般的に約0℃〜約40℃の範囲、好ましくは約10℃〜約30℃の範囲、さらに好ましくは約20℃〜約25℃の範囲、便宜上、室温で行われる。
(純度と収率)
この方法で生成されるトランドラプリラトは、通常、90%以上の収率で、実質的に純粋な結晶形として、又は少なくとも2種の異なる結晶形の混合物として得られる。少なくとも約92%の収率で実質的に純粋な結晶形として得られる。HPLCで決定した純度が約99%以上の実質的に純粋な結晶形として得ることができる。
この方法に従ってトランドラプリルからトランドラプリラトを調製するための最も好ましい手段では、体積比が約1/1のエタノール/水中、式(3)(式中、M=Na)の塩の約9%〜約14%の溶液を、2Nの塩酸水溶液で酸性にして、約3.6〜約4.0の範囲のpHにする。酸性化中に、結晶核を入れた後、約4.5〜約5.0のpHでトランドラプリラトの結晶化が始まる。
【0048】
先行パラグラフで述べた方法では、エタノールと水の混合物の体積比が重要である。例えば、1/≧2の体積比を有するエタノール/水の混合物中の式(3)(式中、M=Na)の塩の9%の溶液を2Nの塩酸水溶液で約20℃〜約25℃の範囲の温度にて約3.6〜約4.0の範囲のpHに酸性化する場合、最初に樹脂又はゴムが沈殿し、この温度で撹拌中にゆっくり結晶化する。撹拌中にパイロット規模でトランドラプリラトを生成する場合、樹脂又はゴムの形成は問題を引き起こしうる。対照的に、エタノール/水の体積比が≧1/1の場合、無機塩の同時沈殿(酸性化中に形成される)が最終生成物を汚染しうる。
この方法では、式(3)の塩を含有する溶液の濃度も重要である。結晶化をエタノール/水の1/1混合物中、式(3)(式中、M=Na)の塩の高濃度の溶液(>14%)からの酸性化で行うと、濃厚かつ撹拌しにくい懸濁液が生じうる。対照的に、結晶化をエタノール/水の1/1混合物中、式(3)(式中、M=Na)の塩の低濃度の溶液(<9%)からの酸性化で行うと、最終生成物の収率が、(そうでなければ生じるであろうよりも)いくらか損失しうる。
トランドラプリラトを、結晶トランドラプリラトB形、結晶トランドラプリラトC形、結晶トランドラプリラトD形、及びその混合物といった、実質的に純粋な結晶形で、又は結晶形の混合物として生成する別の好ましい方法は以下の工程を含む:
(a)エタノールと水を約1/1〜約1/1.5の体積比で含む鹸化反応溶媒中、下記式(3):
【0049】
【化15】
(式中、Mはナトリウムであり、nは2である)
の塩を含む反応混合物を生成するために十分な時間、約20℃〜約25℃の範囲の温度で、トランドラプリラトを少なくとも2.0当量のNaOHと反応させる工程;
(b)工程(a)の生成物のpHを塩酸で約3.6〜約4.0の範囲に調整し、実質的に純粋な遊離アミノ酸形で、又は少なくとも2種の異なる遊離アミノ酸形の混合物としてトランドラプリラトを与える工程;
(c)工程(b)の生成物を上澄みから分離する工程;及び
(d)工程(c)の生成物を乾燥させて、実質的に純粋な結晶形で、又は少なくとも2種の異なる結晶形の混合物としてトランドラプリラトを与える工程。
第2手順に関して上述したのと同じやり方で上記方法の工程(a)〜(d)を行いうる。
【0050】
(結晶トランドラプリラトE形の調製及び単離の手順)
結晶トランドラプリラトB形(トランドラプリラトの擬似多形)から結晶トランドラプリラトE形(トランドラプリラトの多形)を調製しうる。この方法は、結晶トランドラプリラトB形中にある結晶に結合しているエタノールを除去するために有効な温度と圧力で、かつ有効な時間、結晶トランドラプリラトB形を乾燥させる工程を含む。
結晶トランドラプリラトB形の乾燥前に、例えば粉砕又は研磨することによって、結晶トランドラプリラトB形の粒径を小さくすると有利だろう。
(トランドラプリラトの結晶形)
別の局面では、本発明は、トランドラプリラトの新規結晶形を提供する。
本発明は、下記式(4)の構造を含んでなる結晶形のトランドラプリラトを提供する。
【0051】
【化16】
(式中、RはH又はC1-C4アルキルであり、nは0〜2の範囲であり、かつ化学量論的又は非化学量論的でよい。)
好ましい一実施形態では、式(4)中、RがHであり、nが1又は非化学量論的である。トランドラプリラトのこの結晶形を「水和物」(擬似多形)と称する。
第2の好ましい実施形態では、式(4)中、RがHであり、nが1より大きて、非化学量論的である。
第3の好ましい実施形態では、式(4)中、RがC1-C4アルキル(好ましくはエチル又はブチル)であり、nが2である。トランドラプリラトのこの結晶形を「溶媒和物」(擬似多形)と称する。
第4の好ましい実施形態では、式(4)中、nが0である。トランドラプリラトのこの結晶形を「非溶媒和物」(多形)と称する。
トランドラプリラトの新規結晶形として、上述した結晶トランドラプリラトA形、結晶トランドラプリラトB形、結晶トランドラプリラトC形、結晶トランドラプリラトD形及び結晶トランドラプリラトE形が挙げられる。
【0052】
実験により、驚くべきことに、かつ予想外に、トランドラプリラトは、特にトランドラプリラトが水及び/又はアルコール等のヒドロキシル溶媒から結晶化される場合、多形のみならず種々の異なる擬似多形で生成されうることを発見した。トランドラプリラトは、特にヒドロキシル溶媒から結晶化する場合、種々の結晶擬似多形で生成される高い傾向があるようだ。
例えば、上述した「第1手順」に従って生成される結晶トランドラプリラトは、結晶単位中に2分子のn-ブタノールを含む結晶(擬似多)形(結晶トランドラプリラトA形)で得られ、好ましくは実質的に純粋である。
上述した「第2手順」に従い、水、アルコール又は水とアルコールの混合物などのヒドロキシル溶媒から結晶化される結晶トランドラプリラトは、結晶トランドラプリラトB形、結晶トランドラプリラトC形及び結晶トランドラプリラトD形(これらも好ましくは実質的に純粋である)のような異なる結晶形で、或いは2種以上の結晶形の混合物として得られる。上述したやり方で結晶トランドラプリラトB形から結晶トランドラプリラトE形が得られる。
【0053】
一般的に、純粋なヒドロキシル溶媒から結晶化することによって、実質的に純粋な形の結晶トランドラプリラト(及び低純度の形)を得ることができる。
通常、水とエタノールの混合物のような2種以上のヒドロキシル溶媒の混合物から結晶化することによって、結晶トランドラプリラトの2種以上の異なる形の混合物を得ることができる。このような混合物の生成は、異なるヒドロキシル溶媒で擬似多形として結晶化するトランドラプリラトの高い傾向のため複雑である。これは、結晶トランドラプリラトの擬似多形が多形より少なくとも1大きい分散量を有するので、溶媒系の組成等のさらなるパラメーターをも考慮しなければならないという事実によって説明される。この理由のため、第2手順は、結晶化のために溶媒混合物を使用する場合、実質的に純粋な結晶形のみならず、少なくとも2種の異なるトランドラプリラト結晶形の混合物としてトランドラプリラトを送り出しうる。それぞれのトランドラプリラト結晶形の熱力学的安定性によって、並びに結晶化中の反応速度論的効果によって、有利なトランドラプリラト結晶形が制御される。他言すると、結晶化のために溶媒混合物を使用する場合、最終生成物中の2種以上のトランドラプリラト結晶形の純度と組成は、使用する溶媒の比、及び結晶化速度の変動によって決まる。遅い結晶化は熱力学的に安定なトランドラプリラト結晶形を与え、速い沈殿は、反応速度論的に有利なトランドラプリラト結晶形を与えるだろう。撹拌時間、トランドラプリラトの結晶化又はスラリー化中の温度及び乾燥条件が結晶トランドラプリラトの種々の結晶形の純度と組成にさらなる影響を与えうる。例えば、「第2手順」に従い、種々の比のエタノールと水の混合物からトランドラプリラトを結晶化する場合、単離される結晶トランドラプリラトは、典型的に約0.63%〜約4.2%(後者は一水和形に対応する)の範囲である可変量の水、並びに典型的に0.2%〜19%(後者はエタノールとの二溶媒和形に対応する)の範囲の可変量のエタノールを含みうる。これは、トランドラプリラトの異なる結晶形又はその混合物の形成を示唆している。上述したようなパラメーター、例えば結晶化工程で使用するエタノール/水の比、結晶化速度の変動、結晶化後の懸濁液の撹拌温度と撹拌時間及び乾燥条件(温度、圧力、時間など)等が、トランドラプリラトの結晶形の組成に重要な影響を与える。本明細書で提供する情報、及び本技術の当業者に既知の情報を利用し、これらの条件の1つ以上を変えて、結晶トランドラプリラトの所望の形、又はこれらの結晶形の2種以上の混合物を容易に生成することができる。
本発明の結晶トランドラプリラトの固体形態は、実質的に純粋なトランドラプリラト結晶形としてか又は2種以上のトランドラプリラト結晶形の混合物として存在しうる。各結晶形はそれ自体の(一意の)X線回折に関するX線回折プロフィール特性を示し、かつ各結晶形を該X線回折プロフィール特性によって同定することができる。
【0054】
(結晶トランドラプリラトA形)
結晶トランドラプリラトA形はその結晶構造に結合した2当量のn-ブタノールを含有する、トランドラプリラトの擬似多形である(すなわちn-ブタノールとの二溶媒和物である)。
結晶トランドラプリラトA形は、表1に示されるX線粉末回折データ、表2に示される結晶学的データと構造パラメーター、図1に示されるX線粉末回折パターン及び図2に示される結晶構造(化合物のX線測定から得た)を有する。この文書全体を通じて記載及び/又は示される種々のX線粉末回折ピークの強度は、当業者には分かるように、テクスチャー又は他の作用によって変化しうる。さらに、本技術の当業者は、同一物質の特異的結晶形の粉末パターン内の2θ位が、例えば、使用する特定のX線回折計の測定精度に由来する誤差範囲内で変化しうることを認めるだろう。最後に、全体的なピークプロフィールは、サンプルの調製、充填サンプルの密度の変異などによって、部分的により大きい度合で変化しうる。この文書内にある表に示されるX線粉末回折データは実際の実験結果に基づき、いくつかのカラム内の数を常法で四捨五入して小数点第1位までとし、かつ正当に約±0.2までの変異が予測される。例えば、1つ以上のピークのいずれでも約±0.2度の2θの変異が正当に予測される。Xe-比例検出器(発電設備=30mA、40kV)を備えたPhilips PW1800回折計、及びVANTEC-1検出器を備えたBruker AXS D8 Advance(発電設備=40A、40kV):放射線:CuKα;角度範囲2θ=2°/3°〜40°;刻み幅=0.02°;1秒〜4秒の種々の測定に及ぶスキャンステップ時間を用いて、本明細書に記載及び/又は示されるすべてのX線粉末回折解析を行った。
図3は結晶トランドラプリラトA形(1分子のトランドラプリラトと2分子のn-ブタノールを含む)の非対称単位を示し、図4は結晶トランドラプリラトA形(2つのn-ブタノールとのトランドラプリラト二溶媒和物)の結晶データから計算した粉末プロフィールを示す。
上述した「第1手順」を用い、かつ実施例1に従って、水で飽和したn-ブタノール中(すなわち、溶媒n-ブタノールと水の混合物を用いて)トランドラプリラトの溶液の共沸蒸留(結晶化を惹起する)で結晶トランドラプリラトA形を生成することができる。トランドラプリラトは、一般的に無水n-ブタノールに溶けないので、例えば、共沸蒸留による溶媒混合物からの水の除去がその結晶化を惹起する。結晶構造に2当量のn-ブタノールを含有する実質的に純粋な結晶形で所望生成物を得ることができる。
【0055】
表1
結晶トランドラプリラトA形の粉末X線回折データ
【0056】
(表1続き)
【0057】
表2
結晶トランドラプリラトA形の結晶学的データ及び構造パラメーター
【0058】
(結晶トランドラプリラトB形)
結晶トランドラプリラトB形はその結晶構造に結合した2当量のエタノールを含有する、トランドラプリラトの擬似多形である(すなわち、エタノールとの二溶媒和物である)。結晶トランドラプリラトB形は、表10に示されるX線粉末回折データ、図13に示されるX線粉末回折パターン、図5及び6に示されるX線回折データ結晶構造、表3に示される結晶学的データと構造パラメーター、及び図7に示される計算した粉末プロフィールを有する。
上述した「第2手順」を用い、かつ実施例2及び5に従って、エタノール中のトランドラプリラトの結晶化/スラリー化、並びに希釈エタノール/水混合物からのトランドラプリラトの緩徐な結晶化によって、結晶トランドラプリラトB形を生成することができる。結晶構造に2当量のエタノールを含有する実質的に純粋な結晶形で所望生成物を得ることができる。
【0059】
表10
結晶トランドラプリラトB形の粉末X線回折データ
【0060】
表3
結晶トランドラプリラトB形の結晶学的データ及び構造パラメーター
【0061】
結晶トランドラプリラトE形の議論において、結晶トランドラプリラトB形を(結晶トランドラプリラトA形、C形及び/又はD形から)生成するための別の方法について後述する。
(結晶トランドラプリラトC形)
結晶トランドラプリラトC形はその結晶構造に結合した非化学量論量の水を含有する、トランドラプリラトの擬似多形である。水の量は、一般に約5.4%〜約6.4%の範囲である。結晶トランドラプリラトC形は、表4に示されるX線粉末回折データ、及び図8に示されるX線粉末回折パターンを有する。
上述した「第2手順」を用い、かつ実施例3に従って、水中の式(3)の塩の溶液の約3.6〜約4.0の範囲のpH(等電点)への酸性化後、水からのトランドラプリラトの結晶化によって、結晶トランドラプリラトC形を生成することができる。最初に生じたゴムが、この混合物を通常約20℃〜約25℃の範囲の温度で、結晶トランドラプリラトC形(その結晶構造に結合した非化学量論量の水を含有する)が形成される時間、好ましくは少なくとも16時間撹拌することによって、ゆっくり結晶化する。実質的に純粋な結晶形で結晶トランドラプリラトC形を得ることができる。
【0062】
表4
結晶トランドラプリラトC形の粉末X線回折データ
【0063】
水中の式(3)の塩の溶液の約3.6〜約4.0のpH(等電点)への酸性化後、結晶化によって、トランドラプリラトの結晶形Dを得ることができる。最初に生じたゴムはこの混合物を20℃〜25℃の温度で撹拌することによってゆっくり結晶化する。また、この混合物を20〜25℃で3〜5日間撹拌後に、4.1%〜4.2%(一水和物に対応する)の化学量論的含水量を有するD形を得ることができる。
【0064】
(結晶トランドラプリラトD形)
結晶トランドラプリラトD形はその結晶構造に結合した化学量論量の水(その結晶構造に結合した1当量の水(一水和物))を含有する、トランドラプリラトの擬似多形である。水の量は、一般に約4.1%〜約4.2%の範囲である。結晶トランドラプリラトD形は、表5に示されるX線粉末回折データ、図9に示されるX線粉末回折パターン、及び図10に示されるシンクロトロンプロフィールを有する。
上述した「第2手順」を用い、かつ実施例4に従って、水中の式(3)の塩の溶液の約3.6〜約4.0の範囲のpH(等電点)への酸性化後、水からのトランドラプリラトの結晶化によって、結晶トランドラプリラトD形を生成することができる。最初に生じたゴムが、この混合物を通常約20℃〜約25℃の範囲の温度で、結晶トランドラプリラトD形(その結晶構造に結合した化学量論量の水を含有する)が形成される時間、通常約3〜約5日間撹拌することによって、ゆっくり結晶化する。実質的に純粋な結晶形で結晶トランドラプリラトD形を得ることができる。
【0065】
表5
結晶トランドラプリラトD形の粉末X線回折データ
【0066】
(結晶トランドラプリラトC形の調製及びその結晶トランドラプリラトD形への変換)
「第2手順」から得たトランドラプリラトを実施例4、手順Bに従って水中でスラリーにする。表6は、最初に生じたトランドラプリラト結晶形C(含水量:5.4〜6.4%)の一水和物(結晶トランドラプリラトD形:含水量:4.2%)への変換を示す。変換後、規則的なインプロセスコントロール(スラリーサンプルのろ過)を行い、かつ例えば、真空乾燥による湿潤生成物の乾燥後にサンプルの含水量を決定する。現在、約60℃以下の温度で乾燥させることが好ましい。
【0067】
表6
一水和物の形成
サンプル番号 1 2 3 4
撹拌時間(時間) 22 50 73 97
含水量(%) 5.4-6.4 5.9 4.5 4.2
【0068】
(結晶トランドラプリラトE形)
結晶トランドラプリラトE形はトランドラプリラトの多形の非水和形である。これは表8に示されるX線粉末回折データ及び図11に示されるX線粉末回折パターンを有する。
以下の一定の仕様を満たすトランドラプリラトを生成する必要に応じて、結晶トランドラプリラトE形とその生成方法を開発した:(i)1.0%以下の含水量;(ii)ICH指針(www.ich.orgで得られる)に記載の制限に従う残留溶媒含量;及び(iii)HPLCで測定した場合、1.0%以下の分解不純物「トランドラプリラトジケトピペラジン」の量。結晶トランドラプリラトE形はこれらの各特性を有する。
【0069】
上述したように、トランドラプリラトは、水、アルコール又はその混合物のようなヒドロキシル溶媒から結晶させると、化学量論量若しくは非化学量論量の水又は他の溶媒を含有する異なる擬似多形を形成することが分かった。トランドラプリラト中の最終溶媒量は、(i)溶媒の組成;及び(ii)結晶化のために選択した条件によって決まりうる。
さらに、A形、B形、C形又はD形などの単離された結晶擬似多形のいずれの1つをアルコール若しくは水、又はその混合物などのヒドロキシル溶媒で処理しても、結晶結合溶媒の交換が観察された(1つの擬似多形から別の擬似多形への変換)。例えば、結晶トランドラプリラトA形の結晶結合ブタノール、又は結晶トランドラプリラトD形中の水は、これらの結晶形をエタノール中でスラリーにすると、エタノールによって除去される。この結果は、トランドラプリラトが、アルコール及び/又は水等のヒドロキシル溶媒から結晶化するとき、異なる擬似多形を形成する高い傾向を有することを示し、最終生成物に存在するこれらの溶媒の量が必要な仕様を超えることとなりうる。
しかし、トランドラプリラトの結晶擬似多形から過剰な溶媒又は水を除去するための1つ以上の安定プロセスの発見は、種々の異なる困難をもたらした。上記結晶形のいずれか1つ、又はその混合物として存在するトランドラプリラトをトルエン、MTBE、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、THF等の1種以上の非ヒドロキシル溶媒からスラリー化又は再結晶化すると、不利なことに、トランドラプリラト生成物の不純物(分解生成物)「トランドラプリラトジケトピペラジン」への分解が観察されることが分かった(すなわち粗末な結果が得られた)。分解速度は、(i)使用する温度;及び(ii)使用する溶媒のタイプの両者によって決まることが分かった。例えば、THFに溶かした結晶トランドラプリラトは室温で1時間当たり少なくとも0.2%の分解を示し、この分解生成物の形成は、この溶液を還流温度に加熱すると数時間以内でほとんど完了した。さらに、非ヒドロキシル溶媒からの結晶化及び沈殿は、多くの場合、取り扱いが困難であろう樹脂を与えた。
【0070】
驚くべきことに、かつ予想外に、結晶単位にエタノールを含有するトランドラプリラト二溶媒和物(結晶トランドラプリラトB形−擬似多形)を特有の乾燥条件下で処理すると、穏やかな条件下でトランドラプリラトの非溶媒和形(結晶トランドラプリラトE形−多形)に容易に変換できることを発見した(下表7に示す)。小量の分解生成物トランドラプリラトジケトピペラジンだけが観察され、溶媒(エタノール)がほとんど完全に除去され、上記仕様を満たす生成物をもたらした。変換速度は、(i)結晶トランドラプリラトB形の粒径;(ii)乾燥温度;(iii)真空条件;及び(iv)乾燥時間によって決まることが分かった。好ましくは、約20℃〜約60℃の範囲、好ましくは約40℃〜約60℃の範囲の温度で、任意に真空中で結晶トランドラプリラトB形を乾燥させる。結晶トランドラプリラトB形の粒径の縮小は、例えば粉砕又は研磨による。
さらに、先行パラグラフで述べたように、通常、結晶トランドラプリラトのA形、C形若しくはD形又はその混合物をエタノール中のスラリーによって、実質的に純粋な結晶トランドラプリラトB形に変換してから、エタノールを用いて結晶結合溶媒を除去することができる。スラリーの温度は、一般的に約0℃〜還流温度の範囲、好ましくは約10℃〜約60℃の範囲、最も好ましくは約20℃〜約45℃の範囲である。約20℃〜約45℃の範囲の温度での結晶形の変換では、一般的に約10〜約15時間の範囲の時間で十分である。より低温でより短い撹拌時間は、不利なことに不完全な変換をもたらしうる。対照的に、より高温で長い撹拌時間は、不利なことに、より大量の分解生成物「トランドラプリラトジケトピペラジン」を生じさせうる。得られた結晶トランドラプリラトB形を、上述し、かつ表7に示す様式で乾燥させて結晶トランドラプリラトE形を与えうる。
【0071】
種々の乾燥条件下(エタノール中のスラリーで得た湿潤結晶トランドラプリラトB形を乾燥させるため)で結晶トランドラプリラトB形を結晶トランドラプリラトE形に変換するために行った実験の結果を下表7にまとめる。表7の結果は、一定の乾燥条件では温度が高いか、又は真空が低いほど、結晶トランドラプリラトB形を結晶トランドラプリラトE形(非水和物)に容易に変換し、エタノールがほとんど完全に除去されることを示す。しかし、高温での長い乾燥時間は、分解生成物トランドラプリラトジケトピペラジンの高量の形成をも引き起こしうる。
【0072】
表7
湿潤結晶トランドラプリラトB形を結晶トランドラプリラトE形に変換するための実験で使用した乾燥条件
【0073】
(表7続き)
【0074】
表8
結晶トランドラプリラトE形の粉末X線回折データ
【0075】
図12は、エタノール中の結晶トランドラプリラトB形のスラリーによって得、かつ約40℃で約15時間真空中(約1〜約5mbar)で乾燥後の結晶トランドラプリラトB形と結晶トランドラプリラトE形の混合物のX線粉末回折パターンを示す。
(トランドラプリラトの結晶形の貯蔵安定性)
表9は、トランドラプリラトの種々の結晶形の貯蔵安定性を提供する。この表は、他の形に比べて非溶媒和物(結晶トランドラプリラトE形)としてのトランドラプリラトが、対応する分解生成物トランドラプリラトジケトピペラジンに分解する高い傾向を有するようであり、より高い貯蔵温度に伴ってさらに分解することを示している。結晶トランドラプリラトC形(その結晶構造に結合した非化学量論量の水を含有)及び結晶トランドラプリラトB形(その結晶構造に結合した2当量のエタノールを含有)が対応するトランドラプリラト分解生成物に分解する傾向は有意に低いようであるが、分解をまだ測定できた。対照的に、結晶トランドラプリラトA形(その結晶構造に結合した2当量のn-ブタノールを含有)及び結晶トランドラプリラトD形(その結晶構造に結合した1当量の水を含有)は、トランドラプリラトを劇的に安定化し、室温で4ヶ月の貯蔵後に非常に低量の分解生成物しか観察されない。
【0076】
表9
トランドラプリルのの種々の結晶形の貯蔵安定性
1−実施例2で得た結晶を封止バイアル中で貯蔵した。
【0077】
(医薬組成物)
本発明は、治療的に有効な量の本発明の少なくとも1種のトランドラプリラト化合物(活性成分として)と、1種以上の医薬的に許容しうる担体とを含んでなる医薬組成物をも提供する。任意に、医薬組成物は、1種以上の他の化合物、薬物又はトランドラプリラト化合物及び担体と適合性の物質を含んでよく、当業者はこのような物質を容易に決定することができ、限定するものではないが、着色剤、リリース剤、コーティング剤、甘味料及び/又は調味料、接着剤、香料、保存剤及び/又は抗酸化剤が挙げられる。
好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、結晶トランドラプリラトA形、結晶トランドラプリラトB形、結晶トランドラプリラトC形、結晶トランドラプリラトD形若しくは結晶トランドラプリラトE形、又はそのいずれかの組合せを含む。
別の好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、式(4)の構造を含む結晶形のトランドラプリラト化合物を含み、ここで、(4)式中、RはC1-C4アルキルであり、かつ該医薬組成物中に存在するアルコールの量は約5,000ppmを超えない(但し、RがC1アルキルの場合、該医薬組成物中に存在するアルコールの量は約3,000ppmを超えない)。
さらに別の好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、式(4)の構造を含む結晶形のトランドラプリラト化合物を含み、ここで、(4)式中、n=0、かつ該医薬組成物中に存在する水の量が約1.0%を超えない。
【0078】
本発明の医薬組成物は、例えば、固体若しくは液体形態で経口投与のため、又は経皮投与のために特別に製剤化される。
経口投与に適した本発明の製剤は、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ剤、散剤、顆粒剤の形態、水性液又は非水性液の溶液又は懸濁液として、エマルションとして、エリキシル剤又はシロップ剤等としてでよい。本発明の医薬組成物の固体剤形には、任意に、刻み目を付け、或いは1種以上の腸溶性又は医薬品製造技術で周知の他の被覆剤でコーティングしてよい。
経皮投与に適した本発明の製剤は、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液及びパッチの形態でよい。経皮パッチは、本発明のトランドラプリラト化合物を体に制御送達できるという追加の利点を有しうる。
本発明の医薬組成物の調製方法は、一般的に本発明の1種以上のトランドラプリラト化合物を1種以上の担体材料と会合させ、任意に1種以上の補助成分と会合させてよい工程を含む。
経口剤形の調製では、例えば、1種以上のトランドラプリラト化合物を1種以上の液体又は微細固形担体と均一かつ密接に会合させてから、必要又は望ましい場合、該生成物を成形するか(圧縮、鋳造等で)又はカプセル化することによって、本発明の医薬組成物を調製することができる。ヒト及び/又は動物による経口投与に好適な医薬製剤の製造方法は当業者に周知であり、かつ例えば“Pharmaceutical Capsules” (ISBN 0-85369-568-7, Pharmaceutical Press, 2004)及び“Handbook of Pharmaceutical Manufacturing Formulations” (ISBN 0-84931-7479, CRC Press, 1999)に記載されている。
【0079】
例えば、適切な媒体に1種以上のトランドラプリラト化合物を溶解又は分散させることによって経皮剤形を製造することができる。吸収増強剤を用いて、皮膚を横切る化合物の流動を増やすこともできる。例えば、速度制御膜を与えるか又はポリマーマトリックス若しくはゲルに化合物を分散させることによって、該流動の速度を制御できる。治療用の経皮パッチの製造方法は医薬品業界で周知である。該方法は、例えば、公開された特許出願U.S.2004/0052835号、及び米国特許第5,290,561号及び第6,303,141号、並びにRussell O. Potts and Richard H. Guy, “Mechanisms of Transdermal Drug Delivery, Drugs and Pharmaceutical Sciences: a Series of Textbooks and Monographs” (ISBN 0-8247-9863-5, 1997) and Kenneth A. Walters, “Dermatological and Transdermal Formulations, Drugs and the Pharmaceutical Sciences: a Series of Textbooks and Monographs” (ISBN 0-8247-9889-9, 2002)に記載されている。
【0080】
本発明の医薬組成物は、一般的に、通常の医療、獣医療及び製薬プラクティスと調和する方法によって適宜選択される適切な投与形態と剤形を用いて、医師の指導下で使用されるだろう。
選択される投与経路に関係なく、当業者に既知の常法により、本発明のトランドラプリラト化合物及び医薬組成物を医薬的に許容しうる剤形に製剤化することができる。
本発明の医薬組成物で使用される活性成分の実際の用量レベルは、個々の患者、組成物及び投与態様に望まれる治療応答を該患者に毒でなく達成するために有効な活性成分の量を得るように変化しうる。
選択される用量レベルは、使用する特定のトランドラプリラト化合物、又はその塩の活性、投与の経路、投与の時間、使用する特定のトランドラプリラト化合物の排泄の速度、治療する医療状態の重症度、治療の持続期間、トランドラプリラト化合物と併用する他の薬物、化合物及び/又は材料、治療する患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康及び以前の病歴、並びに医療、獣医療及び医薬品技術で周知の同様の因子などの当業者に既知の種々の因子によって決まるだろう。
本技術の通常のスキルを有する医師又は獣医は、個々の患者の医療問題の治療に必要な本発明の医薬組成物の有効量を容易に決定かつ処方することができる。例えば、医師又は獣医は、所望の治療効果を達成するのに必要な量より少ないレベルにて医薬組成物中で使用する用量の本発明のトランドラプリラト化合物で開始して、所望効果が達成されるまで用量を徐々に増やすことができる。
【0081】
一般に、本発明のトランドラプリラト化合物、又は1種以上のトランドラプリラト化合物を含む医薬組成物の1日の適切な用量は、通常、上述した因子の1つ以上によって決まるであろう所望の治療効果をもたらすために有効な最低用量である、トランドラプリラト化合物の当該量である。このような用量は、ゾンデ医療又は獣医学の範囲内で、主治医又は獣医によって決定されうる。
所望により、活性トランドラプリラト化合物の有効な1日の用量は、1日全体で妥当な間隔で分けて投与される2、3、4、5、6又はそれより多くのサブ用量として投与され、任意に単位剤形で投与してよい。
(治療の方法)
本発明のトランドラプリラト化合物及び医薬組成物は、ヒト及び動物で降圧作用をもたらすのに有用である。従って、本発明は、高血圧、心不全又は高血圧に関連する他の医療状態を治療する方法であって、該治療が必要な対象に、有効量の本発明の医薬組成物を投与することを含んでなる方法をも提供する。本技術の通常のスキルを有する医師又は獣医は、対象が該治療を必要か否かを容易に決定できる。
好ましい実施形態では、本発明の方法で使用する医薬組成物は、結晶トランドラプリラトA形、結晶トランドラプリラトB形、結晶トランドラプリラトC形、結晶トランドラプリラトD形、結晶トランドラプリラトE形、又はこれらのいずれかの組合せを含む。
以下の実施例は、トランドラプリラトの結晶形、及び本発明の範囲内の方法をについて記載かつ実証するが、本発明の単なる例示を意図したものであり、本発明の範囲又は精神を該実施例の範囲又は精神に限定するものではない。当業者は、実施例に記載の手順で使用する特定の条件及び/又は工程の変形を用いてこれらの結晶形を調製できることが容易に分かるだろう。計算したすべての収率をアッセイによって補正した。
【実施例1】
【0082】
(結晶トランドラプリラトA形の調製)
結晶トランドラプリラトA形を上記第1手順に従って調製した。
NaOH(6.5g,153.6mmol;アッセイ=94.52%)、水(157ml)、エタノール(157ml,工業銘柄,約5%の2-プロパノール含有)及びトランドラプリル(31.5g,72.94 mmol;アッセイ=99.7%)の溶液を約20℃〜約25℃の範囲の内部温度で15時間撹拌した。インプロセスコントロールがほとんど完全な鹸化を示した後(HPLCで)、清澄溶液を真空中で167.05gの量まで濃縮し、濃縮生成物にn-ブタノール(160ml)を加えた。この混合物を約60℃〜約70℃の内部温度に加熱し、2Nの塩酸水溶液を加えると(150.4mmol)、pHが12.09から3.66に下がった。有機層を66℃の内部温度で分離し、65℃の内部温度で水層をn-ブタノール(80ml)で再抽出した。混ぜ合わせた有機層を約63℃〜約65℃の範囲の内部温度で水にて2回(各40ml)洗浄した。得られた有機層(総量306.4g)を真空中約50℃〜約60℃の範囲の温度で濃縮し、190gの量への濃縮後、白色固体が沈殿した。この懸濁液をさらに真空中で75.1gの量に濃縮し、80mlのMTBEを加えて沈殿を完了させた。懸濁液を約20℃〜約25℃の範囲の内部温度で3.5時間撹拌した。ろ過後、湿潤生成物をMTBEで2回(各80ml)で洗浄し、真空中40℃で15時間乾燥させてトランドラプリラトをn-ブタノールとの二溶媒和物として得た(収量:36.51g,66.67mmol,91.4%;アッセイ(0.1N HClO4)=73.5%;HPLC純度=100%)。
【実施例2】
【0083】
(反応混合物からのトランドラプリラトの単離及び単結晶としてのB形の結晶化)
上記第2手順に従ってトランドラプリラトを結晶化及び単離した。
NaOH(0.96g,22.68mmol;アッセイ=94.52%)、水(22ml)、エタノール(22ml,工業銘柄,約5%の2-プロパノール含有)及びトランドラプリル(4.5g,10.42mmol;アッセイ=99.7%)の溶液を約20℃〜約25℃の範囲の内部温度で19時間撹拌した。インプロセスコントロールがほとんど完全な鹸化を示した後(HPLCで)、清澄溶液を約20℃〜約25℃の内部温度で2Nの塩酸水溶液で酸性にしてpHを3.8とした(22.8mmol;酸性化中に溶液に結晶核を入れると、pH=4.6で結晶化が開始した)。懸濁液を約20℃〜約25℃の温度で撹拌(pH調整後のこの場合の撹拌時間は47時間であり、2NのNaOH溶液を1滴添加してpHを3.71〜3.82に調整した;通常このpHで最大撹拌時間は5〜6時間で十分である)してからろ別した。湿潤生成物を水(30ml)で洗浄し、真空中(1〜5mbar)で15時間40℃で乾燥させてトランドラプリラトを得た(収量:4.0g,9.06mmol,86.9%;アッセイ=91.15%;含水量:1.02〜1.12%、エタノール含量:7.52〜8.44%、2-プロパノール含量:0.26〜0.29、塩化物含量=検出されず)。
上述したように、最終生成物中の溶媒の含量は、使用条件によって変化しうる。
【0084】
(X線測定用のトランドラプリラト結晶形Bの結晶化)
混ぜ合わせたろ液を12日間約20℃〜約25℃の温度で貯蔵すると、さらにトランドラプリラトがゆっくり結晶化した。結晶を収集して真空中30℃で14.5時間乾燥させた。X線測定は、2当量のエタノールとの純粋なトランドラプリラト二溶媒和物の存在を示した。
備考:一般的な結晶核を入れる手順
約4.5〜約5.0の範囲のpHに到達後、2NのHCl水溶液による混合物の酸性化を停止する。次に、トランドラプリラト結晶形Bを結晶核として混合物に入れ、結晶化を明らかに観察できるまで、約20℃〜約25℃の範囲の温度で撹拌する(約10〜約15分の時間内;撹拌及び結晶化時間中、pHは上昇する)。その後、pHが等電点に達するまで2NのHCl水溶液の添加(1滴ずつ)を続ける。
【実施例3】
【0085】
(結晶トランドラプリラトC形の調製)
上記第2手順に従って結晶トランドラプリラトC形を調製した。
NaOH(1.84g,43.48mmol;アッセイ=94.52%)、水(45ml)、エタノール(45ml,工業銘柄,約5%の2-プロパノール含有)及びトランドラプリル(9.0g,20.78mmol;アッセイ=99.4%)の溶液を約20℃〜約25℃の範囲の内部温度で14時間撹拌した。インプロセスコントロールがほとんど完全な鹸化を示した後(HPLCで)、反応混合物を真空中で64.64gの量まで濃縮してた。
濃縮反応混合物の半分を用い、2Nの塩酸水溶液(21.61mmol)及び数滴の2NのNaOH水溶液を添加してpHを3.8に調整した。酸性化中、最初に6のpHで粘着性の綿状沈殿が観察され、さらに酸性化すると、微細な白色固体を含有する懸濁液が生じた。この懸濁液を約20℃〜約25℃の範囲の温度で16時間撹拌してろ別した。湿潤生成物を水(30ml)とアセトン(30ml)で洗浄し、真空中(1〜5mbar)、40℃で24時間及び室温で24時間乾燥させて結晶トランドラプリラトC形(収量:3.18g,7.45mmol,71.7%(外挿した);アッセイ(0.1N HClO4)=94.35%;HPLC純度=100%;含水量:5.67%、塩化物含量=0.16%)。
【実施例4】
【0086】
(結晶トランドラプリラトD形の調製)
後述するように、2つの異なる方法で結晶トランドラプリラトD形を調製した。
(手順A)
手順Aでは、結晶トランドラプリラトD形を上記第2手順に従って調製した。
NaOH(0.92g,21.74mmol;アッセイ=94.52%)、水(22ml)、エタノール(22ml,工業銘柄,約5%の2-プロパノール含有)及びトランドラプリル(4.5g,10.39mmol;アッセイ=99.4%)の溶液を約20℃〜約25℃の内部温度で19時間撹拌した。インプロセスコントロールがほとんど完全な鹸化を示した後(HPLCで)、反応混合物を真空中で24.42gの量まで濃縮した。この清澄溶液(pH=13)を約20℃〜約25℃の範囲の温度にて1時間以内でゆっくり2Nの塩酸水溶液(25.22mmol)と水(12ml)の混合物に加えた。添加中、粘着性の綿状沈殿が観察された。その後、数滴の2NのNaOH水溶液を添加して混合物のpHを2.74から3.84に調整し、混合物を約20℃〜約25℃の範囲の温度で4日間撹拌した。懸濁液をろ別し、湿潤生成物を水(15ml)で洗浄し、真空中(1〜5mbar)で15時間40℃で乾燥させて結晶形Dのトランドラプリラトを得た(収量:4.07g,9.54mmol,91.8%;アッセイ(0.1N HClO4)=96%;HPLC純度:99.82%;含水量:4.13%,塩化物含量=0.15%)。
(手順B)
NaOH(6.70g,158.3mmol;アッセイ=94.52%)、水(98ml)、エタノール(98ml,工業銘柄,約5%の2-プロパノール含有)及びトランドラプリル(31.5g,72.94mmol;アッセイ=99.7%)の溶液を約20℃〜約25℃の内部温度で21時間撹拌した。インプロセスコントロールがほとんど完全な鹸化を示した後(HPLCで)、2Nの塩酸水溶液で清澄溶液を約20℃〜約25℃の範囲の温度でpH=3.8に調整した(159mmol;2NのHCl水溶液の添加をpH=4.67で止め、溶液に結晶核を入れると、結晶化がゆっくり始まった;約10分後、2NのHCl水溶液の添加を続けた)。約20〜約25℃の範囲の温度で懸濁液を22時間撹拌してからろ別して42.12gの湿潤生成物を得た。
2.7gの湿潤生成物を真空中(1〜5mbar)で15時間40℃で乾燥させてトランドラプリラトを得た(収量:1.84g,4.31mmol,5.9%;アッセイ=94.18%;含水量:1.42〜1.47%,エタノール含量:4.17〜4.26%,2-プロパノール含量:0.19,塩化物含量=検出されず)。
【0087】
水(230ml)中の残留湿潤生成物のスラリーを55℃の内部温度に加熱してから約20℃〜約25℃の内部温度に冷ましてこの温度でトータル4日間撹拌した。定期的間隔でサンプル(インプロセスコントロール)を懸濁液から取って含水量を測定した。
21.5時間後、サンプルを取り、ろ別し、水(10ml)で洗浄し、真空中(1〜5mbar)で15時間40℃で乾燥させてトランドラプリラトを得た(収量:1.2g,2.81mmol,3.86%;アッセイ=94.4%;含水量:5.35〜6.4%,エタノール含量:検出されず,2-プロパノール含量:検出されず,塩化物含量=検出されず)。
さらに28時間後、サンプルを取り、ろ別し、水(10ml)で洗浄し、真空中(1〜5mbar)で15時間40℃で乾燥させてトランドラプリラトを得た(収量:1.04g,2.43mmol,3.33%;含水量:5.92%)。
さらに23時間後、サンプルを取り、ろ別し、水(10ml)で洗浄し、真空中(1〜5mbar)で15時間40℃で乾燥させてトランドラプリラトを得た(収量:1.48g,3.51mmol,4.81%;含水量:4.52%)。
さらに24時間後、残存懸濁液をろ別し、湿潤生成物を水(100ml)で洗浄し、真空中(1〜5mbar)で18時間40℃で乾燥させてトランドラプリラトを得た(収量:21.04g,50.04mmol,68.61%,全体収率:86%;アッセイ(0.1N HClO4)=95.73%;HPLC純度:99.98%;含水量:4.18%,エタノール含量:検出されず,2-プロパノール含量:検出されず,塩化物含量:検出されず)。
【実施例5】
【0088】
(結晶トランドラプリラトBの調製方法及びその結晶形Eへの変換)
鹸化混合物からのトランドラプリル湿潤生成物の結晶化及び単離並びにX線粉末回折(PXRD)研究:
NaOH(10.8g,255mmol;アッセイ= 94.5%)、水(158ml)、エタノール(158ml)及びトランドラプリル(50g,115mmol;アッセイ=99.4%)の溶液を約20℃〜約25℃の範囲の内部温度で16.5時間撹拌した。インプロセスコントロールがほとんど完全な鹸化を示した後(HPLCで)、約20℃〜約25℃の範囲の温度で2Nの塩酸水溶液を添加して清澄溶液のpHを3.8に調整した。(一般的な結晶核を入れる手順(実施例2参照)に従ってpH=4.6で溶液に結晶核を入れた;この場合10分以内で結晶化が始まり、結晶化中にpHが5.55に上昇したとき、pH=3.8に達するまで酸性化を続けた)。pH=3.8で5分撹拌後、分析目的のため懸濁液のサンプルを取った。(ろ過したサンプルを約5mlのEtOH/水(1/1,v/v)で洗浄して1.4gの第1湿潤生成物を得た;このサンプルのX線粉末回折(PXRD)測定は、純粋なトランドラプリル多形Bの存在を示した)。
残存懸濁液を約20℃〜約25℃の範囲の温度で5時間撹拌してからろ別し、湿潤生成物を水(160ml)とエタノール(160ml)で洗浄して、純粋な結晶形Bとしてトランドラプリラトを含有する63.5gの第2湿潤生成物を得た。
【0089】
第2湿潤生成物を用いた研究:
研究例1:
7.6gの第2湿潤生成物を室温(常圧)の結晶皿内及び微気流内で18時間乾燥させ、低量のE形が混入した主に結晶形Bとしてトランドラプリラトを得た(収量:7.4g;アッセイ(0.1N HClO4)=81.91%;HPLC純度:99.96%,トランドラプリラトジケトピペラジン:検出されず;含水量:0.55%,エタノール含量:17.9%)。注:この条件での短い乾燥時間は変換を回避しうるが、同一温度でさらに長い撹拌時間は、変換が完了する時点までE形の量を増やしうる(研究例7をも参照されたい)。
一般的に、B形からE形への変換の速度は、乾燥温度、真空及び粒径によって決まる。変換は、例えば、研究例2及び3又は表7に示されるように、湿潤生成物の粉砕若しくは研磨及び/又は同一若しくはより高い温度での真空乾燥によって加速されうる。利用する乾燥方法及び/又は設備(例えばトレイ乾燥を利用する場合、物質層の厚さ)によっては、大規模での変換時間が延長しうる。
研究例2:
5gの第2湿潤生成物を真空中50℃(1〜5mbar)で15時間乾燥させて結晶形Eとしてトランドラプリラトを得た(収量:3.8g;アッセイ(0.1N HClO4)=99.41%;HPLC純度:99.57%,トランドラプリラトジケトピペラジン:0.40%;含水量:0.34%,エタノール含量:0.10%)。
【0090】
研究例3:
5gの第2湿潤生成物を真空中50℃(<1mbar)で25時間乾燥させて結晶形Eとしてトランドラプリラトを得た(収量:3.7g;アッセイ(0.1N HClO4)=98.9%;HPLC純度:99.48%,トランドラプリラトジケトピペラジン:0.51%;含水量:0.27%,エタノール含量:0.09%)。
研究例4:
エタノール(200ml)中の32.4gの第2湿潤生成物の懸濁液を約40℃の温度で16時間、次に約20℃〜約25℃の範囲の温度で2時間撹拌した。ろ過後、湿潤生成物をエタノール(80ml)で洗浄して31.4gの第3湿潤生成物を純粋な結晶形Bとして得た。
第3湿潤生成物を用いた研究:
研究例5:
第3湿潤生成物の後半を室温(常圧)の結晶皿内及び微気流内で21.5時間乾燥させて結晶形Bとしてトランドラプリラトを得た(収量:13.6 g;アッセイ(0.1N HClO4)=81.57%;HPLC純度:99.97%,トランドラプリラトジケトピペラジン:検出されず;含水量:0.56%,エタノール含量:18.49%)。注:研究例1を参照されたい。
【0091】
研究例6:
第3湿潤生成物のほぼ半分を真空中(<1mbar)50℃で21.5時間乾燥させて結晶形Eとしてトランドラプリラトを得た(収量:11.2g;アッセイ(0.1N HClO4)=99.04%;HPLC純度:99.52%,トランドラプリラトジケトピペラジン:0.45%;含水量:0.30%,エタノール含量:0.06%)。
研究例7:
第3湿潤生成物のサンプルを粉砕してPXRDサンプルホルダーに充填した。室温かつ常圧における純粋なトランドラプリラト結晶形BのE形への変換を逐次PXRD測定で追った(図15参照)。19時間以内で最初の18の測定を行った。同一条件下で35時間貯蔵後に19番目の測定を行った(サンプルを混合して再びサンプルホルダーに充填後、最後の測定を行った。
【実施例6】
【0092】
(結晶トランドラプリラトEの調製のスケールアップ手順)
後述する方法で結晶トランドラプリラトE形を調製した。
NaOH(144.8g,3.42mol;アッセイ=94.5%)、水(2573ml)、エタノール(2187ml)及びトランドラプリル(680g,1.58mol;アッセイ=99.81%)の溶液を約20℃〜約25℃の範囲の内部温度で18時間撹拌した。インプロセスコントロールがほとんど完全な鹸化を示した後(HPLCで)、約20℃〜約25℃の範囲の温度で2Nの塩酸水溶液を添加して清澄溶液のpHを3.8に調整した(一般的な結晶核を入れる手順(実施例2参照)に従って溶液に結晶核を入れた)。懸濁液を約20〜約25℃の範囲の温度で5.5時間撹拌してからろ別し、湿潤生成物を水(2149ml)とエタノール(2198ml)で洗浄した。次に、エタノール(6046ml)中の湿潤生成物の懸濁液を約38℃〜約43℃の温度で14時間、次いで約20℃〜約25℃の範囲の温度で2時間撹拌した。ろ過後、湿潤生成物をエタノール(2224ml)で洗浄し、真空中(<1mbar)40℃で、エタノール含量が0.5%未満になるまで(4日)乾燥させてトランドラプリラトを結晶形Eとして得た(収量:582g,1.44mol,91.3%;アッセイ(NaOH)=99.74%;HPLC純度:99.33%,トランドラプリラトジケトピペラジン:0.52%;含水量:0.54%,エタノール含量:955ppm,塩化物含量=検出されず)。
【0093】
本明細書では、本発明を特異性と共に、かつその特定の好ましい実施形態に関して述べたが、本技術の当業者は、行うことができ、かつ本発明の範囲及び精神内である、述べたものの多くの変更、修飾及び置換を認識するだろう。これらのすべての修飾及び変更は、本明細書で述べかつ請求した通りの本発明の範囲内であり、かつ本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、かつ合理的にできるだけ広く該特許請求の範囲を解釈するものとする。
この文書全体を通じて、種々の書籍、特許、学術論文、ウェブサイト及び他の出版物を引用した。これらの各書籍、特許、学術論文、ウェブサイト及び他の出版物の全体を本明細書で援用する。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】結晶トランドラプリラトA形のX線粉末回折パターンである。
【図2】トランドラプリラトA形のX線測定から得た結晶構造の図である。
【図3】トランドラプリラトの1つの分子と、結晶構造に結合したn-ブタノールの2つの分子とを含む、トランドラプリラトA形の非対称単位の図である。
【図4】トランドラプリラトA形の結晶データから計算した粉末プロフィールを示すグラフである。
【図5】トランドラプリラトB形のX線測定から得た結晶構造の図である。
【図6】トランドラプリラトの1つの分子と、結晶構造に結合したエタノールの2つの分子とを含む、トランドラプリラトB形の非対称単位の図である。
【図7】トランドラプリラトB形の結晶データから計算した粉末プロフィールを示すグラフである。
【図8】結晶トランドラプリラトC形のX線粉末回折パターンである。
【図9】結晶トランドラプリラトD形のX線粉末回折パターンである。
【図10】結晶トランドラプリラトD形のシンクロトロンプロフィールを示すグラフである。
【図11】結晶トランドラプリラトE形のX線粉末回折パターンである(標準物質としてSiを含む)。
【図12】結晶トランドラプリラトB形と結晶トランドラプリラトE形の混合物のX線粉末回折パターンである。
【図13】結晶トランドラプリラトB形のX線粉末回折パターンである。
【図14】実施例1〜6に従って得た種々の形の結晶トランドラプリラトのX線粉末回折プロフィールの概要である。
【図15】逐次X線粉末回折(PXRD)測定で調査した基礎サンプルのトランドラプリラトの結晶形Bから結晶形Eへの変換を示す。
【図16】トランドラプリラトの結晶形Aの調製方法を示す概要である。
【図17】トランドラプリラトの結晶形B〜Eの調製方法を示す概要である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランドラプリラトの調製方法であって、以下の工程を含んでなる方法:
(a)鹸化反応溶媒中、少なくともほとんど完全な鹸化を可能にするために有効な温度で、かつ有効な時間、トランドラプリルを水酸化化合物と反応させる工程、ここで、前記水酸化化合物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、テトラアルキルアンモニウム水酸化物又は置換アルキルアンモニウム水酸化物であり、かつ前記トランドラプリル、水酸化化合物及び鹸化反応溶媒を、それぞれ下記式(3):
【化1】
(式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウムイオンであり、かつnは1又は2である)
の塩を含む反応混合物を生成するために有効な量で使用する;
(b)工程(a)の反応混合物を、該混合物のpHをその等電点に到達させ、かつトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与えるために有効な量の酸と、有効な時間、かつ有効な温度で混合する工程;及び
(c)工程(b)から生じた反応混合物から、トランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で単離する工程。
【請求項2】
前記水酸化化合物が、工程(a)の反応混合物中で少なくとも2.0当量の水酸化物を与えるために十分な量で存在する、請求項1の方法。
【請求項3】
前記鹸化反応溶媒がC1-C4アルコール若しくは水、又はそのいずれかの混合物である、請求項1の方法。
【請求項4】
前記鹸化反応溶媒がエタノールと水の混合物である、請求項3の方法。
【請求項5】
工程(a)の反応温度が約0℃〜約40℃の範囲である、請求項1の方法。
【請求項6】
工程(b)の反応混合物のpHが約3.6〜約4.0の範囲である、請求項1の方法。
【請求項7】
工程(b)で使用する前記酸が塩酸、臭化水素酸、硫酸、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸又はリン酸である、請求項1の方法。
【請求項8】
工程(b)で使用する前記酸が塩酸である、請求項7の方法。
【請求項9】
多形又は擬似多形の結晶トランドラプリラトの調製方法であって、以下の工程を含んでなる方法:
(a)水、C1-C4アルコール及びその混合物から選択される鹸化反応溶媒中、少なくともほとんど完全な鹸化を可能にするために有効な温度で、かつ有効な時間、トランドラプリルを水酸化化合物と反応させる工程、ここで、前記水酸化化合物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、テトラアルキルアンモニウム水酸化物又は置換アルキルアンモニウム水酸化物であり、かつ前記トランドラプリル、水酸化化合物及び鹸化反応溶媒を、それぞれ下記式(3):
【化2】
(式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウムイオンであり、かつnは1又は2である)
の塩を含む反応混合物を生成するために有効な量で使用する;
(b)工程(a)で使用する前記鹸化反応溶媒がn-ブタノール以外のアルコールを含む場合、工程(a)の反応混合物から該アルコールを除去する工程;
(c)工程(b)の反応混合物が水溶液でない場合、水溶液を与えるために有効な量の水を前記反応混合物に添加する工程;
(d)工程(c)の生成物を、該混合物のpHをその等電点に到達させ、かつトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与えるために有効な量の酸と、有効な時間、かつ有効な温度で混合する工程;
(e)工程(d)の混合物から、n-ブタノールと水を含有する溶液中でトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与えるために有効な量のn-ブタノールで、有効な温度にてトランドラプリラトを抽出する工程;及び
(f)工程(e)の溶液から、トランドラプリラトの結晶化を誘導し、かつ多形又は擬似多形の結晶トランドラプリラトを与えるために十分な量の水を除去する工程。
【請求項10】
前記水酸化化合物がアルカリ金属水酸化物である、請求項9の方法。
【請求項11】
前記アルカリ金属水酸化物が水酸化リチウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである、請求項10の方法。
【請求項12】
前記水酸化化合物が、工程(a)の反応混合物中で少なくとも2.0当量の水酸化物を与えるために十分な量で存在する、請求項11の方法。
【請求項13】
前記鹸化反応溶媒がC1-C4アルコール若しくは水、又はそのいずれかの混合物である、請求項9の方法。
【請求項14】
前記鹸化反応溶媒がエタノールと水の混合物である、請求項13の方法。
【請求項15】
工程(a)で使用する反応温度が約0℃〜約40℃の範囲である、請求項9の方法。
【請求項16】
工程(d)の反応混合物のpHが約3.6〜約4.0の範囲である、請求項9の方法。
【請求項17】
工程(d)で使用する前記酸が塩酸、臭化水素酸、硫酸、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸又はリン酸である、請求項9の方法。
【請求項18】
工程(d)で使用する前記酸が塩酸である、請求項17の方法。
【請求項19】
工程(e)で使用する温度が、ほぼ室温乃至n-ブタノールと水の共沸混合物のほぼ沸点の範囲である、請求項9の方法。
【請求項20】
工程(e)で使用する温度が、ほぼ室温〜約70℃の範囲である、請求項19の方法。
【請求項21】
与えられる結晶トランドラプリラトが実質的に純粋である、請求項9の方法。
【請求項22】
与えられる結晶トランドラプリラトが結晶トランドラプリラトA形である、請求項21の方法。
【請求項23】
実質的に純粋な結晶形で、又は異なる結晶形の混合物としてトランドラプリラトを生成する方法であって、以下の工程を含んでなる方法:
(a)水、C1-C4アルコール及びその混合物から選択される鹸化反応溶媒中、少なくともほとんど完全な鹸化を可能にするために有効な温度で、かつ有効な時間、トランドラプリルを水酸化化合物と反応させる工程、ここで、前記水酸化化合物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、テトラアルキルアンモニウム水酸化物又は置換アルキルアンモニウム水酸化物であり、かつ前記トランドラプリル、水酸化化合物及び鹸化反応溶媒を、それぞれ下記式(3):
【化3】
(式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウムイオンであり、かつnは1又は2である)
の塩を含む反応混合物を生成するために有効な量で使用し、かつ
前記鹸化反応溶媒がC1-C4アルコールと水の混合物を含む場合、このC1-C4アルコールと水は、少なくともほとんど完全な鹸化を可能にするために有効な比で存在する;
(b)工程(a)で使用する前記鹸化反応溶媒がC4アルコールを含む場合、工程(a)の反応混合物から該C4アルコールを除去する工程;
(c)工程(b)の反応混合物が水溶液でない場合、水溶液を与えるために有効な量の水を前記反応混合物に添加する工程;
(d)工程(c)の生成物を、該混合物のpHをその等電点に到達させ、かつ実質的に純粋な遊離アミノ酸形で、又は少なくとも2種の異なる遊離アミノ酸形の混合物としてトランドラプリラトを与えるために有効な量の酸と、有効な時間、かつ有効な温度で混合する工程;
(e)工程(d)の生成物を上澄みから分離する工程;及び
(f)工程(e)の生成物を乾燥させて、実質的に純粋な結晶形で、又は少なくとも2種の異なる結晶形の混合物としてトランドラプリラトを与える工程。
【請求項24】
前記水酸化化合物がアルカリ金属水酸化物である、請求項23の方法。
【請求項25】
前記アルカリ金属水酸化物が水酸化リチウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである、請求項24の方法。
【請求項26】
前記水酸化化合物が、工程(a)の反応混合物中で少なくとも2.0当量の水酸化物を与えるために十分な量で存在する、請求項25の方法。
【請求項27】
工程(a)で使用する反応温度が約0℃〜約40℃の範囲である、請求項23の方法。
【請求項28】
工程(d)で使用する反応温度が約20℃〜約25℃の範囲である、請求項23の方法。
【請求項29】
工程(d)の反応混合物のpHが約3.6〜約4.0の範囲である、請求項23の方法。
【請求項30】
工程(d)で使用する前記酸が塩酸、臭化水素酸、硫酸、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸又はリン酸である、請求項23の方法。
【請求項31】
前記酸が塩酸である、請求項30の方法。
【請求項32】
前記鹸化反応溶媒がエタノールと水の混合物である、請求項23の方法。
【請求項33】
工程(d)の水性混合物を、化学量論量又は非化学量論量の水を結晶構造中に有するトランドラプリラトの調製に有効な時間、かつ有効な温度でスラリーにする工程を含んでなる請求項23に記載の方法。
【請求項34】
工程(d)で使用する温度が約20℃〜約25℃の範囲である、請求項33の方法。
【請求項35】
実質的に純粋な結晶形で、又は結晶形の混合物としてトランドラプリラトを生成する方法であって、以下の工程を含んでなる方法:
(a)エタノールと水を約1/1〜約1/1.5の体積比で含む鹸化反応溶媒中、約20℃〜約25℃の範囲の温度で、下記式(3):
【化4】
(式中、Mはナトリウムであり、かつnは2である)
の塩を含む反応混合物を生成するために十分な時間、トランドラプリルを少なくとも2.0当量のNaOHと反応させる工程;
(b)工程(a)の生成物のpHを塩酸で約3.6〜約4.0の範囲に調整して、実質的に純粋な遊離アミノ酸形で、又は少なくとも2種の異なる遊離アミノ酸形の混合物としてトランドラプリラトを与える工程;
(c)工程(b)の生成物を上澄みから分離する工程;及び
(d)工程(c)の生成物を乾燥させて、実質的に純粋な結晶形で、又は少なくとも2種の異なる結晶形の混合物としてトランドラプリラトを与える工程。
【請求項36】
トランドラプリラトが実質的に純粋な結晶形で生成される、請求項35の方法。
【請求項37】
生成されるトランドラプリラトが結晶トランドラプリラトB形である請求項35の方法。
【請求項38】
生成されるトランドラプリラトが結晶トランドラプリラトC形である請求項35の方法。
【請求項39】
生成されるトランドラプリラトが結晶トランドラプリラトD形である請求項35の方法。
【請求項40】
結晶トランドラプリラトE形の生成方法であって、結晶トランドラプリラトB形中に存在する結晶に結合しているエタノールを除去するために有効な温度、圧力及び乾燥時間で前記結晶トランドラプリラトB形を乾燥させる工程を含んでなる方法。
【請求項41】
下記式(4):
【化5】
(式中、RはH又はC1-C4アルキルであり、かつnは0〜2の範囲であって、化学量論的又は非化学量論的でよい)
の構造を含んでなる結晶形のトランドラプリラト。
【請求項42】
RがHであり、かつnが1である、請求項41のトランドラプリラト。
【請求項43】
RがHであり、かつnが1より大きく、非化学量論的である、請求項41のトランドラプリラト。
【請求項44】
RがC1-C4アルキルであり、かつnが2である、請求項41のトランドラプリラト。
【請求項45】
RがC2アルキルである、請求項44のトランドラプリラト。
【請求項46】
Rがn-ブチルである、請求項44のトランドラプリラト。
【請求項47】
nが0である、請求項41のトランドラプリラト。
【請求項48】
結晶トランドラプリラトA形を含んでなるトランドラプリラトの擬似多形。
【請求項49】
実質的に表1及び図1に示される通りのX線回折プロフィールを有する、請求項48のトランドラプリラトの擬似多形。
【請求項50】
実質的に純粋である、請求項48のトランドラプリラトの擬似多形。
【請求項51】
結晶トランドラプリラトB形を含んでなるトランドラプリラトの擬似多形。
【請求項52】
実質的に図13に示される通りのX線粉末回折ピークを有する、請求項51のトランドラプリラトの擬似多形。
【請求項53】
以下の2θ度:8.1、9.6、13.8、17.4、18.1、18.4、19.3、20.5及び22.9にX線粉末回折ピークを有する、請求項51のトランドラプリラトの擬似多形。
【請求項54】
実質的に純粋である、請求項51のトランドラプリラトの擬似多形。
【請求項55】
結晶トランドラプリラトC形を含んでなるトランドラプリラトの擬似多形。
【請求項56】
実質的に表4及び図8に示される通りのX線回折プロフィールを有する、請求項55のトランドラプリラトの擬似多形。
【請求項57】
実質的に純粋である、請求項55のトランドラプリラトの擬似多形。
【請求項58】
結晶トランドラプリラトD形を含んでなるトランドラプリラトの擬似多形。
【請求項59】
実質的に表5及び図9に示される通りのX線回折プロフィールを有する、請求項58のトランドラプリラトの擬似多形。
【請求項60】
実質的に純粋である、請求項58のトランドラプリラトの擬似多形。
【請求項61】
結晶トランドラプリラトE形を含んでなるトランドラプリラトの多形。
【請求項62】
実質的に表8及び図11に示される通りのX線回折プロフィールを有する、請求項61のトランドラプリラトの多形。
【請求項63】
実質的に純粋である、請求項61のトランドラプリラトの多形。
【請求項64】
前記トランドラプリラトが約1%を超える量の水を含まない、請求項61のトランドラプリラトの多形。
【請求項65】
前記トランドラプリラトが、現在医薬品に許容可能な限界を超える合計量の1種以上の残留溶媒を含まない、請求項61のトランドラプリラトの多形。
【請求項66】
治療的に有効な量の請求項41の少なくとも1種の化合物と、医薬的に許容しうる担体とを含んでなる医薬組成物。
【請求項67】
治療的に有効な量の少なくとも1種のトランドラプリラト化合物と、医薬的に許容しうる担体とを含んでなる医薬組成物であって、前記トランドラプリラト化合物が、結晶トランドラプリラトA形、結晶トランドラプリラトB形、結晶トランドラプリラトC形、結晶と多トランドラプリラトD形、結晶トランドラプリラトE形、又はそのいずれかの組合せである、前記医薬組成物。
【請求項68】
前記医薬組成物が経口剤形又は経皮投与しうる剤形である、請求項67の医薬組成物。
【請求項69】
前記医薬組成物が錠剤若しくはカプセル剤の形態、又は経皮パッチの形態である、請求項68の医薬組成物。
【請求項70】
高血圧又は心不全の治療方法であって、該治療が必要な対象に、有効な量の請求項67の医薬組成物を投与することを含んでなる方法。
【請求項71】
多形又は擬似多形の結晶トランドラプリラトの調製方法であって、以下の工程を含んでなる方法:
(a)n-ブタノールと水を含有する溶液中でトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与える工程;及び
(b)前記溶液から、トランドラプリラトの結晶化を誘導するために十分な量の水を除去する工程。
【請求項72】
トランドラプリラトが以下の工程を含む方法で与えられる、請求項9に記載の方法:
(a)水、C1-C4アルコール及びその混合物から成る群より選択される鹸化反応溶媒中、少なくともほとんど完全な鹸化を達成するために有効な温度で、かつ有効な時間、トランドラプリルを水酸化化合物と反応させる工程、ここで、前記水酸化化合物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、テトラアルキルアンモニウム水酸化物又は置換アルキルアンモニウム水酸化物であり、かつ前記トランドラプリル、水酸化化合物及び鹸化反応溶媒を、それぞれ式(3):
(式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウムイオンであり、かつnは1又は2である)
の塩を含む反応混合物を生成するために有効な量で使用する;
(b)工程(a)で使用する前記鹸化反応溶媒がn-ブタノール以外のアルコールを含む場合、工程(a)の反応混合物から該アルコールを除去する工程;
(c)工程(b)の反応混合物が水溶液でない場合、水溶液を与えるために有効な量の水を前記反応混合物に添加する工程;
(d)工程(c)の生成物を、トランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与えるために有効な量の酸と、有効な時間、かつ有効な温度で混合する工程;
(e)工程(d)の混合物から、遊離アミノ酸形のトランドラプリラトのn-ブタノール/水含有溶液を与えるために有効な量のn-ブタノールで、有効な温度にてトランドラプリラトを抽出する工程;及び
(f)工程(e)の溶液から、トランドラプリラトの結晶化を誘導するために十分な量の水を除去する工程。
【請求項73】
実質的に純粋な結晶形で、又は異なる結晶形の混合物としてトランドラプリラトを生成する方法であって、以下の工程を含んでなる方法:
(a)水、C1-C4アルコール及びその混合物から選択される鹸化反応溶媒中、少なくともほとんど完全な鹸化を可能にするために有効な温度で、かつ有効な時間、トランドラプリルを水酸化化合物と反応させる工程、ここで、前記水酸化化合物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、テトラアルキルアンモニウム水酸化物又は置換アルキルアンモニウム水酸化物であり、かつ前記トランドラプリル、水酸化化合物及び鹸化反応溶媒を、それぞれ下記式(3):
【化6】
(式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウムイオンであり、かつnは1又は2である)
の塩を含む反応混合物を生成するために有効な量で使用する;
(b)前記反応溶媒がC4アルコールを含む場合、該C4アルコールを除去し、かつ
必要な場合、十分な量の水を添加して式(3)の化合物の均一溶液を与える工程;
(c)工程(b)の生成物を、トランドラプリラトを沈殿させるために有効な量の酸と、有効な時間、かつ有効な温度で混合する工程;
(d)工程(c)の沈殿したトランドラプリラトを分離する工程:
【請求項74】
さらに以下の工程を含んでなる請求項73の方法:
(e)工程(d)の沈殿したトランドラプリラトを乾燥させる工程
【請求項75】
結晶構造中に化学量論量又は非化学量論量の水を有する結晶トランドラプリラトを与えるために有効な時間、かつ有効な温度で、工程(c)の沈殿したトランドラプリラトを水中でスラリーにする工程をさらに含んでなる請求項73に記載の方法。
【請求項76】
実質的に純粋な結晶形で、又は結晶形の混合物としてトランドラプリラトを生成する方法であって、以下の工程を含んでなる方法:
(a)約1/1〜約1/1.5の体積比を有するエタノール/水反応溶媒中、20℃〜25℃の範囲の温度で、下記式(3):
【化7】
(式中、Mはナトリウムであり、かつnは2である)
の塩を含む反応混合物を生成するために十分な時間、トランドラプリルを少なくとも2.0当量のNaOHと反応させる工程;
(b)工程(a)の生成物のpHを塩酸で調整して、遊離アミノ酸形のトランドラプリラトを与える工程;及び
(c)工程(b)の沈殿したトランドラプリラトを反応混合物から分離する工程。
【請求項77】
工程(c)の沈殿したトランドラプリラトを乾燥させて、結晶トランドラプリラトを与える工程をさらに含んでなる請求項76の方法。
【請求項78】
結晶トランドラプリラトB形中に存在する結晶に結合しているエタノールを除去するために有効な温度、圧力及び乾燥時間で前記結晶トランドラプリラトB形を乾燥させる工程を含んでなる結晶トランドラプリラトE形の生成方法。
【請求項79】
下記式(4)の構造を有する結晶トランドラプリラト:
【化8】
(式中、ROHは化学量論的又は非化学量論的であり;nは0〜約2の範囲であり;かつRはH又はC1-C4アルキルである。)
【請求項80】
RがHであり、かつnが1である、請求項41の結晶トランドラプリラト。
【請求項81】
RがHであり、かつnが1より大きく、非化学量論的である、請求項41の結晶トランドラプリラト。
【請求項82】
RがC1-C4アルキルであり、かつnが2である、請求項41の結晶トランドラプリラト。
【請求項83】
Rがエチルである、請求項44の結晶トランドラプリラト。
【請求項84】
Rがn-ブチルである、請求項44の結晶トランドラプリラト。
【請求項85】
Rがnが0である、請求項41の結晶トランドラプリラト。
【請求項86】
銅Kαスケールで実質的に以下の2θ度:7.7、18.6、18.9、19.8、20.6及び22.0にX線粉末回折ピークを有する、結晶トランドラプリラトA形。
【請求項87】
実質的に図1に示される通りのX線回折プロフィールを有する、請求項48に記載の結晶トランドラプリラトA形。
【請求項88】
実質的に純粋である、請求項48に記載の結晶トランドラプリラトA形。
【請求項89】
銅Kαスケールで得た実質的に以下の2θ度:8.1、9.6、13.8、17.4、18.1、18.4、19.3、20.5及び22.9にX線粉末回折ピークを有する、結晶トランドラプリラトB形。
【請求項90】
実質的に図13に示される通りのX線粉末回折プロフィールを有する、請求項51に記載の結晶トランドラプリラトB形。
【請求項91】
実質的に純粋である、請求項51に記載の結晶トランドラプリラトB形。
【請求項92】
銅Kαスケールで得た実質的に以下の2θ度:6.2、14.0、15.7、18.8及び20.8にX線粉末回折ピークを有する、結晶トランドラプリラトC形。
【請求項93】
実質的に図8に示される通りのX線粉末回折プロフィールを有する、請求項55に記載の結晶トランドラプリラトC形。
【請求項94】
実質的に純粋である、請求項55に記載の結晶トランドラプリラトC形。
【請求項95】
銅Kαスケールで得た実質的に以下の2θ度:14.4、16.4、17.2、19.2、19.9、22.2、25.2及び27.5にX線粉末回折ピークを有する、結晶トランドラプリラトD形。
【請求項96】
実質的に図9に示される通りのX線粉末回折プロフィールを有する、請求項55に記載の結晶トランドラプリラトD形。
【請求項97】
実質的に純粋である、請求項55に記載の結晶トランドラプリラトD形。
【請求項98】
銅Kαスケールで得た実質的に以下の2θ度:9.4、9.8、17.4、17.7、21.0及び28.4にX線粉末回折ピークを有する、結晶トランドラプリラトE形。
【請求項99】
実質的に図11に示される通りのX線粉末回折プロフィールを有する、請求項55に記載の結晶トランドラプリラトE形。
【請求項100】
実質的に純粋である、請求項55に記載の結晶トランドラプリラトE形。
【請求項101】
含水量が約1%以下である、請求項61に記載の結晶トランドラプリラトE形。
【請求項102】
残留溶媒の量が約3%以下である、請求項61に記載の結晶トランドラプリラトE形。
【請求項103】
トランドラプリラトA形、トランドラプリラトB形、トランドラプリラトC形、トランドラプリラトD形及びトランドラプリラトE形から成る群より選択される少なくとも1つの結晶トランドラプリラトを含んでなる医薬組成物。
【請求項104】
前記医薬組成物が、経口剤形及び経皮剤形の群から選択される剤形である、請求項66の医薬組成物。
【請求項105】
前記医薬組成物が、錠剤、カプセル剤又は経皮パッチの形態である、請求項67の医薬組成物。
【請求項106】
高血圧又は心不全の治療方法であって、該治療が必要な対象に、有効量の請求項66の医薬組成物を投与することを含んでなる方法。
【請求項1】
トランドラプリラトの調製方法であって、以下の工程を含んでなる方法:
(a)鹸化反応溶媒中、少なくともほとんど完全な鹸化を可能にするために有効な温度で、かつ有効な時間、トランドラプリルを水酸化化合物と反応させる工程、ここで、前記水酸化化合物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、テトラアルキルアンモニウム水酸化物又は置換アルキルアンモニウム水酸化物であり、かつ前記トランドラプリル、水酸化化合物及び鹸化反応溶媒を、それぞれ下記式(3):
【化1】
(式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウムイオンであり、かつnは1又は2である)
の塩を含む反応混合物を生成するために有効な量で使用する;
(b)工程(a)の反応混合物を、該混合物のpHをその等電点に到達させ、かつトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与えるために有効な量の酸と、有効な時間、かつ有効な温度で混合する工程;及び
(c)工程(b)から生じた反応混合物から、トランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で単離する工程。
【請求項2】
前記水酸化化合物が、工程(a)の反応混合物中で少なくとも2.0当量の水酸化物を与えるために十分な量で存在する、請求項1の方法。
【請求項3】
前記鹸化反応溶媒がC1-C4アルコール若しくは水、又はそのいずれかの混合物である、請求項1の方法。
【請求項4】
前記鹸化反応溶媒がエタノールと水の混合物である、請求項3の方法。
【請求項5】
工程(a)の反応温度が約0℃〜約40℃の範囲である、請求項1の方法。
【請求項6】
工程(b)の反応混合物のpHが約3.6〜約4.0の範囲である、請求項1の方法。
【請求項7】
工程(b)で使用する前記酸が塩酸、臭化水素酸、硫酸、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸又はリン酸である、請求項1の方法。
【請求項8】
工程(b)で使用する前記酸が塩酸である、請求項7の方法。
【請求項9】
多形又は擬似多形の結晶トランドラプリラトの調製方法であって、以下の工程を含んでなる方法:
(a)水、C1-C4アルコール及びその混合物から選択される鹸化反応溶媒中、少なくともほとんど完全な鹸化を可能にするために有効な温度で、かつ有効な時間、トランドラプリルを水酸化化合物と反応させる工程、ここで、前記水酸化化合物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、テトラアルキルアンモニウム水酸化物又は置換アルキルアンモニウム水酸化物であり、かつ前記トランドラプリル、水酸化化合物及び鹸化反応溶媒を、それぞれ下記式(3):
【化2】
(式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウムイオンであり、かつnは1又は2である)
の塩を含む反応混合物を生成するために有効な量で使用する;
(b)工程(a)で使用する前記鹸化反応溶媒がn-ブタノール以外のアルコールを含む場合、工程(a)の反応混合物から該アルコールを除去する工程;
(c)工程(b)の反応混合物が水溶液でない場合、水溶液を与えるために有効な量の水を前記反応混合物に添加する工程;
(d)工程(c)の生成物を、該混合物のpHをその等電点に到達させ、かつトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与えるために有効な量の酸と、有効な時間、かつ有効な温度で混合する工程;
(e)工程(d)の混合物から、n-ブタノールと水を含有する溶液中でトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与えるために有効な量のn-ブタノールで、有効な温度にてトランドラプリラトを抽出する工程;及び
(f)工程(e)の溶液から、トランドラプリラトの結晶化を誘導し、かつ多形又は擬似多形の結晶トランドラプリラトを与えるために十分な量の水を除去する工程。
【請求項10】
前記水酸化化合物がアルカリ金属水酸化物である、請求項9の方法。
【請求項11】
前記アルカリ金属水酸化物が水酸化リチウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである、請求項10の方法。
【請求項12】
前記水酸化化合物が、工程(a)の反応混合物中で少なくとも2.0当量の水酸化物を与えるために十分な量で存在する、請求項11の方法。
【請求項13】
前記鹸化反応溶媒がC1-C4アルコール若しくは水、又はそのいずれかの混合物である、請求項9の方法。
【請求項14】
前記鹸化反応溶媒がエタノールと水の混合物である、請求項13の方法。
【請求項15】
工程(a)で使用する反応温度が約0℃〜約40℃の範囲である、請求項9の方法。
【請求項16】
工程(d)の反応混合物のpHが約3.6〜約4.0の範囲である、請求項9の方法。
【請求項17】
工程(d)で使用する前記酸が塩酸、臭化水素酸、硫酸、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸又はリン酸である、請求項9の方法。
【請求項18】
工程(d)で使用する前記酸が塩酸である、請求項17の方法。
【請求項19】
工程(e)で使用する温度が、ほぼ室温乃至n-ブタノールと水の共沸混合物のほぼ沸点の範囲である、請求項9の方法。
【請求項20】
工程(e)で使用する温度が、ほぼ室温〜約70℃の範囲である、請求項19の方法。
【請求項21】
与えられる結晶トランドラプリラトが実質的に純粋である、請求項9の方法。
【請求項22】
与えられる結晶トランドラプリラトが結晶トランドラプリラトA形である、請求項21の方法。
【請求項23】
実質的に純粋な結晶形で、又は異なる結晶形の混合物としてトランドラプリラトを生成する方法であって、以下の工程を含んでなる方法:
(a)水、C1-C4アルコール及びその混合物から選択される鹸化反応溶媒中、少なくともほとんど完全な鹸化を可能にするために有効な温度で、かつ有効な時間、トランドラプリルを水酸化化合物と反応させる工程、ここで、前記水酸化化合物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、テトラアルキルアンモニウム水酸化物又は置換アルキルアンモニウム水酸化物であり、かつ前記トランドラプリル、水酸化化合物及び鹸化反応溶媒を、それぞれ下記式(3):
【化3】
(式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウムイオンであり、かつnは1又は2である)
の塩を含む反応混合物を生成するために有効な量で使用し、かつ
前記鹸化反応溶媒がC1-C4アルコールと水の混合物を含む場合、このC1-C4アルコールと水は、少なくともほとんど完全な鹸化を可能にするために有効な比で存在する;
(b)工程(a)で使用する前記鹸化反応溶媒がC4アルコールを含む場合、工程(a)の反応混合物から該C4アルコールを除去する工程;
(c)工程(b)の反応混合物が水溶液でない場合、水溶液を与えるために有効な量の水を前記反応混合物に添加する工程;
(d)工程(c)の生成物を、該混合物のpHをその等電点に到達させ、かつ実質的に純粋な遊離アミノ酸形で、又は少なくとも2種の異なる遊離アミノ酸形の混合物としてトランドラプリラトを与えるために有効な量の酸と、有効な時間、かつ有効な温度で混合する工程;
(e)工程(d)の生成物を上澄みから分離する工程;及び
(f)工程(e)の生成物を乾燥させて、実質的に純粋な結晶形で、又は少なくとも2種の異なる結晶形の混合物としてトランドラプリラトを与える工程。
【請求項24】
前記水酸化化合物がアルカリ金属水酸化物である、請求項23の方法。
【請求項25】
前記アルカリ金属水酸化物が水酸化リチウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである、請求項24の方法。
【請求項26】
前記水酸化化合物が、工程(a)の反応混合物中で少なくとも2.0当量の水酸化物を与えるために十分な量で存在する、請求項25の方法。
【請求項27】
工程(a)で使用する反応温度が約0℃〜約40℃の範囲である、請求項23の方法。
【請求項28】
工程(d)で使用する反応温度が約20℃〜約25℃の範囲である、請求項23の方法。
【請求項29】
工程(d)の反応混合物のpHが約3.6〜約4.0の範囲である、請求項23の方法。
【請求項30】
工程(d)で使用する前記酸が塩酸、臭化水素酸、硫酸、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸又はリン酸である、請求項23の方法。
【請求項31】
前記酸が塩酸である、請求項30の方法。
【請求項32】
前記鹸化反応溶媒がエタノールと水の混合物である、請求項23の方法。
【請求項33】
工程(d)の水性混合物を、化学量論量又は非化学量論量の水を結晶構造中に有するトランドラプリラトの調製に有効な時間、かつ有効な温度でスラリーにする工程を含んでなる請求項23に記載の方法。
【請求項34】
工程(d)で使用する温度が約20℃〜約25℃の範囲である、請求項33の方法。
【請求項35】
実質的に純粋な結晶形で、又は結晶形の混合物としてトランドラプリラトを生成する方法であって、以下の工程を含んでなる方法:
(a)エタノールと水を約1/1〜約1/1.5の体積比で含む鹸化反応溶媒中、約20℃〜約25℃の範囲の温度で、下記式(3):
【化4】
(式中、Mはナトリウムであり、かつnは2である)
の塩を含む反応混合物を生成するために十分な時間、トランドラプリルを少なくとも2.0当量のNaOHと反応させる工程;
(b)工程(a)の生成物のpHを塩酸で約3.6〜約4.0の範囲に調整して、実質的に純粋な遊離アミノ酸形で、又は少なくとも2種の異なる遊離アミノ酸形の混合物としてトランドラプリラトを与える工程;
(c)工程(b)の生成物を上澄みから分離する工程;及び
(d)工程(c)の生成物を乾燥させて、実質的に純粋な結晶形で、又は少なくとも2種の異なる結晶形の混合物としてトランドラプリラトを与える工程。
【請求項36】
トランドラプリラトが実質的に純粋な結晶形で生成される、請求項35の方法。
【請求項37】
生成されるトランドラプリラトが結晶トランドラプリラトB形である請求項35の方法。
【請求項38】
生成されるトランドラプリラトが結晶トランドラプリラトC形である請求項35の方法。
【請求項39】
生成されるトランドラプリラトが結晶トランドラプリラトD形である請求項35の方法。
【請求項40】
結晶トランドラプリラトE形の生成方法であって、結晶トランドラプリラトB形中に存在する結晶に結合しているエタノールを除去するために有効な温度、圧力及び乾燥時間で前記結晶トランドラプリラトB形を乾燥させる工程を含んでなる方法。
【請求項41】
下記式(4):
【化5】
(式中、RはH又はC1-C4アルキルであり、かつnは0〜2の範囲であって、化学量論的又は非化学量論的でよい)
の構造を含んでなる結晶形のトランドラプリラト。
【請求項42】
RがHであり、かつnが1である、請求項41のトランドラプリラト。
【請求項43】
RがHであり、かつnが1より大きく、非化学量論的である、請求項41のトランドラプリラト。
【請求項44】
RがC1-C4アルキルであり、かつnが2である、請求項41のトランドラプリラト。
【請求項45】
RがC2アルキルである、請求項44のトランドラプリラト。
【請求項46】
Rがn-ブチルである、請求項44のトランドラプリラト。
【請求項47】
nが0である、請求項41のトランドラプリラト。
【請求項48】
結晶トランドラプリラトA形を含んでなるトランドラプリラトの擬似多形。
【請求項49】
実質的に表1及び図1に示される通りのX線回折プロフィールを有する、請求項48のトランドラプリラトの擬似多形。
【請求項50】
実質的に純粋である、請求項48のトランドラプリラトの擬似多形。
【請求項51】
結晶トランドラプリラトB形を含んでなるトランドラプリラトの擬似多形。
【請求項52】
実質的に図13に示される通りのX線粉末回折ピークを有する、請求項51のトランドラプリラトの擬似多形。
【請求項53】
以下の2θ度:8.1、9.6、13.8、17.4、18.1、18.4、19.3、20.5及び22.9にX線粉末回折ピークを有する、請求項51のトランドラプリラトの擬似多形。
【請求項54】
実質的に純粋である、請求項51のトランドラプリラトの擬似多形。
【請求項55】
結晶トランドラプリラトC形を含んでなるトランドラプリラトの擬似多形。
【請求項56】
実質的に表4及び図8に示される通りのX線回折プロフィールを有する、請求項55のトランドラプリラトの擬似多形。
【請求項57】
実質的に純粋である、請求項55のトランドラプリラトの擬似多形。
【請求項58】
結晶トランドラプリラトD形を含んでなるトランドラプリラトの擬似多形。
【請求項59】
実質的に表5及び図9に示される通りのX線回折プロフィールを有する、請求項58のトランドラプリラトの擬似多形。
【請求項60】
実質的に純粋である、請求項58のトランドラプリラトの擬似多形。
【請求項61】
結晶トランドラプリラトE形を含んでなるトランドラプリラトの多形。
【請求項62】
実質的に表8及び図11に示される通りのX線回折プロフィールを有する、請求項61のトランドラプリラトの多形。
【請求項63】
実質的に純粋である、請求項61のトランドラプリラトの多形。
【請求項64】
前記トランドラプリラトが約1%を超える量の水を含まない、請求項61のトランドラプリラトの多形。
【請求項65】
前記トランドラプリラトが、現在医薬品に許容可能な限界を超える合計量の1種以上の残留溶媒を含まない、請求項61のトランドラプリラトの多形。
【請求項66】
治療的に有効な量の請求項41の少なくとも1種の化合物と、医薬的に許容しうる担体とを含んでなる医薬組成物。
【請求項67】
治療的に有効な量の少なくとも1種のトランドラプリラト化合物と、医薬的に許容しうる担体とを含んでなる医薬組成物であって、前記トランドラプリラト化合物が、結晶トランドラプリラトA形、結晶トランドラプリラトB形、結晶トランドラプリラトC形、結晶と多トランドラプリラトD形、結晶トランドラプリラトE形、又はそのいずれかの組合せである、前記医薬組成物。
【請求項68】
前記医薬組成物が経口剤形又は経皮投与しうる剤形である、請求項67の医薬組成物。
【請求項69】
前記医薬組成物が錠剤若しくはカプセル剤の形態、又は経皮パッチの形態である、請求項68の医薬組成物。
【請求項70】
高血圧又は心不全の治療方法であって、該治療が必要な対象に、有効な量の請求項67の医薬組成物を投与することを含んでなる方法。
【請求項71】
多形又は擬似多形の結晶トランドラプリラトの調製方法であって、以下の工程を含んでなる方法:
(a)n-ブタノールと水を含有する溶液中でトランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与える工程;及び
(b)前記溶液から、トランドラプリラトの結晶化を誘導するために十分な量の水を除去する工程。
【請求項72】
トランドラプリラトが以下の工程を含む方法で与えられる、請求項9に記載の方法:
(a)水、C1-C4アルコール及びその混合物から成る群より選択される鹸化反応溶媒中、少なくともほとんど完全な鹸化を達成するために有効な温度で、かつ有効な時間、トランドラプリルを水酸化化合物と反応させる工程、ここで、前記水酸化化合物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、テトラアルキルアンモニウム水酸化物又は置換アルキルアンモニウム水酸化物であり、かつ前記トランドラプリル、水酸化化合物及び鹸化反応溶媒を、それぞれ式(3):
(式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウムイオンであり、かつnは1又は2である)
の塩を含む反応混合物を生成するために有効な量で使用する;
(b)工程(a)で使用する前記鹸化反応溶媒がn-ブタノール以外のアルコールを含む場合、工程(a)の反応混合物から該アルコールを除去する工程;
(c)工程(b)の反応混合物が水溶液でない場合、水溶液を与えるために有効な量の水を前記反応混合物に添加する工程;
(d)工程(c)の生成物を、トランドラプリラトをその遊離アミノ酸形で与えるために有効な量の酸と、有効な時間、かつ有効な温度で混合する工程;
(e)工程(d)の混合物から、遊離アミノ酸形のトランドラプリラトのn-ブタノール/水含有溶液を与えるために有効な量のn-ブタノールで、有効な温度にてトランドラプリラトを抽出する工程;及び
(f)工程(e)の溶液から、トランドラプリラトの結晶化を誘導するために十分な量の水を除去する工程。
【請求項73】
実質的に純粋な結晶形で、又は異なる結晶形の混合物としてトランドラプリラトを生成する方法であって、以下の工程を含んでなる方法:
(a)水、C1-C4アルコール及びその混合物から選択される鹸化反応溶媒中、少なくともほとんど完全な鹸化を可能にするために有効な温度で、かつ有効な時間、トランドラプリルを水酸化化合物と反応させる工程、ここで、前記水酸化化合物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、テトラアルキルアンモニウム水酸化物又は置換アルキルアンモニウム水酸化物であり、かつ前記トランドラプリル、水酸化化合物及び鹸化反応溶媒を、それぞれ下記式(3):
【化6】
(式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウムイオンであり、かつnは1又は2である)
の塩を含む反応混合物を生成するために有効な量で使用する;
(b)前記反応溶媒がC4アルコールを含む場合、該C4アルコールを除去し、かつ
必要な場合、十分な量の水を添加して式(3)の化合物の均一溶液を与える工程;
(c)工程(b)の生成物を、トランドラプリラトを沈殿させるために有効な量の酸と、有効な時間、かつ有効な温度で混合する工程;
(d)工程(c)の沈殿したトランドラプリラトを分離する工程:
【請求項74】
さらに以下の工程を含んでなる請求項73の方法:
(e)工程(d)の沈殿したトランドラプリラトを乾燥させる工程
【請求項75】
結晶構造中に化学量論量又は非化学量論量の水を有する結晶トランドラプリラトを与えるために有効な時間、かつ有効な温度で、工程(c)の沈殿したトランドラプリラトを水中でスラリーにする工程をさらに含んでなる請求項73に記載の方法。
【請求項76】
実質的に純粋な結晶形で、又は結晶形の混合物としてトランドラプリラトを生成する方法であって、以下の工程を含んでなる方法:
(a)約1/1〜約1/1.5の体積比を有するエタノール/水反応溶媒中、20℃〜25℃の範囲の温度で、下記式(3):
【化7】
(式中、Mはナトリウムであり、かつnは2である)
の塩を含む反応混合物を生成するために十分な時間、トランドラプリルを少なくとも2.0当量のNaOHと反応させる工程;
(b)工程(a)の生成物のpHを塩酸で調整して、遊離アミノ酸形のトランドラプリラトを与える工程;及び
(c)工程(b)の沈殿したトランドラプリラトを反応混合物から分離する工程。
【請求項77】
工程(c)の沈殿したトランドラプリラトを乾燥させて、結晶トランドラプリラトを与える工程をさらに含んでなる請求項76の方法。
【請求項78】
結晶トランドラプリラトB形中に存在する結晶に結合しているエタノールを除去するために有効な温度、圧力及び乾燥時間で前記結晶トランドラプリラトB形を乾燥させる工程を含んでなる結晶トランドラプリラトE形の生成方法。
【請求項79】
下記式(4)の構造を有する結晶トランドラプリラト:
【化8】
(式中、ROHは化学量論的又は非化学量論的であり;nは0〜約2の範囲であり;かつRはH又はC1-C4アルキルである。)
【請求項80】
RがHであり、かつnが1である、請求項41の結晶トランドラプリラト。
【請求項81】
RがHであり、かつnが1より大きく、非化学量論的である、請求項41の結晶トランドラプリラト。
【請求項82】
RがC1-C4アルキルであり、かつnが2である、請求項41の結晶トランドラプリラト。
【請求項83】
Rがエチルである、請求項44の結晶トランドラプリラト。
【請求項84】
Rがn-ブチルである、請求項44の結晶トランドラプリラト。
【請求項85】
Rがnが0である、請求項41の結晶トランドラプリラト。
【請求項86】
銅Kαスケールで実質的に以下の2θ度:7.7、18.6、18.9、19.8、20.6及び22.0にX線粉末回折ピークを有する、結晶トランドラプリラトA形。
【請求項87】
実質的に図1に示される通りのX線回折プロフィールを有する、請求項48に記載の結晶トランドラプリラトA形。
【請求項88】
実質的に純粋である、請求項48に記載の結晶トランドラプリラトA形。
【請求項89】
銅Kαスケールで得た実質的に以下の2θ度:8.1、9.6、13.8、17.4、18.1、18.4、19.3、20.5及び22.9にX線粉末回折ピークを有する、結晶トランドラプリラトB形。
【請求項90】
実質的に図13に示される通りのX線粉末回折プロフィールを有する、請求項51に記載の結晶トランドラプリラトB形。
【請求項91】
実質的に純粋である、請求項51に記載の結晶トランドラプリラトB形。
【請求項92】
銅Kαスケールで得た実質的に以下の2θ度:6.2、14.0、15.7、18.8及び20.8にX線粉末回折ピークを有する、結晶トランドラプリラトC形。
【請求項93】
実質的に図8に示される通りのX線粉末回折プロフィールを有する、請求項55に記載の結晶トランドラプリラトC形。
【請求項94】
実質的に純粋である、請求項55に記載の結晶トランドラプリラトC形。
【請求項95】
銅Kαスケールで得た実質的に以下の2θ度:14.4、16.4、17.2、19.2、19.9、22.2、25.2及び27.5にX線粉末回折ピークを有する、結晶トランドラプリラトD形。
【請求項96】
実質的に図9に示される通りのX線粉末回折プロフィールを有する、請求項55に記載の結晶トランドラプリラトD形。
【請求項97】
実質的に純粋である、請求項55に記載の結晶トランドラプリラトD形。
【請求項98】
銅Kαスケールで得た実質的に以下の2θ度:9.4、9.8、17.4、17.7、21.0及び28.4にX線粉末回折ピークを有する、結晶トランドラプリラトE形。
【請求項99】
実質的に図11に示される通りのX線粉末回折プロフィールを有する、請求項55に記載の結晶トランドラプリラトE形。
【請求項100】
実質的に純粋である、請求項55に記載の結晶トランドラプリラトE形。
【請求項101】
含水量が約1%以下である、請求項61に記載の結晶トランドラプリラトE形。
【請求項102】
残留溶媒の量が約3%以下である、請求項61に記載の結晶トランドラプリラトE形。
【請求項103】
トランドラプリラトA形、トランドラプリラトB形、トランドラプリラトC形、トランドラプリラトD形及びトランドラプリラトE形から成る群より選択される少なくとも1つの結晶トランドラプリラトを含んでなる医薬組成物。
【請求項104】
前記医薬組成物が、経口剤形及び経皮剤形の群から選択される剤形である、請求項66の医薬組成物。
【請求項105】
前記医薬組成物が、錠剤、カプセル剤又は経皮パッチの形態である、請求項67の医薬組成物。
【請求項106】
高血圧又は心不全の治療方法であって、該治療が必要な対象に、有効量の請求項66の医薬組成物を投与することを含んでなる方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2009−532455(P2009−532455A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503685(P2009−503685)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【国際出願番号】PCT/IB2007/001027
【国際公開番号】WO2007/113680
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(508290172)アツァート ファーマシューティカル イングリーディエンツ アクチェンゲゼルシャフト (2)
【出願人】(508290633)ユニヴァーシテト チューリッヒ (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【国際出願番号】PCT/IB2007/001027
【国際公開番号】WO2007/113680
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(508290172)アツァート ファーマシューティカル イングリーディエンツ アクチェンゲゼルシャフト (2)
【出願人】(508290633)ユニヴァーシテト チューリッヒ (3)
【Fターム(参考)】
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