説明

トリオール型ロスバスタチン

ロスバスタチントリオール、及びロスバスタチンの解析のためのリファレンスマーカーとしてのその使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスリファレンス
本願は、2007年3月13日に出願された米国仮出願番号60/906,914号及び2007年3月15日に出願された米国仮出願番号60/918,466号の利益を主張するものであり、これらの開示内容はそれらの全体が本明細書で援用される。
【0002】
本発明の分野
本発明は、ロスバスタチントリオール、及びロスバスタチンの分析のためのリファレンス・スタンダードとしてのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
スタチンは、現在、循環器疾患のリスクにおける患者の血流中の低密度リポタンパク質(LDL)の粒子濃度を低下させるための、最も治療的に有効な薬物である。従って、スタチンは、高コレステロール血症、高リポ蛋白血症、及び粥状動脈硬化の治療において使用される。血流中の高レベルのLDLは、血液の流れを妨げ、血栓症を破裂させ、そして促進しうる、冠動脈病変の形成に結び付けられてきた。Goodman 及び Gilman, The Pharmacological Basis of Therapeutics, 879頁(9th Ed. 1996)。
【0004】
スタチンは、競合的に、3−ヒトロキシ−3−メチル−グルタリル−補酵素A(「HMG−CoA」)レダクターゼ酵素を阻害することにより、ヒトにおけるコレステロール生合成を阻害する。HMG−CoAレダクターゼは、HMGのメバロン酸への変換を触媒し、これはコレステロールの生合成における律速段階である。コレステロールの減少した産生は、LDLレセプターの数の増加、及び血流中のLDL粒子の濃度に対応する低下を生じる。血流中のLDLレベルの低下は、冠動脈疾患のリスクを減少させる。J. A. M. A. 1984, 251, 351-74。
【0005】
現在入手可能なスタチンには、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、セリバスタチン、及びアトルバスタチンがある。ロバスタチン(米国特許第4,231,938号に開示されている)、及びシムバスタチン(米国特許第4,444,784号に開示されている)は、ラクトン形態において投与される。吸収後、ラクトン環は、化学的又は酵素的加水分解により肝臓中で開環し、そして活性ヒドロキシ酸が産生する。
【0006】
プラバスタチン(米国特許第4,346,227号に開示されている)は、ナトリウム塩として投与される。フルバスタチン(米国特許第4,739,073号に開示されている)、及びセリバスタチン(米国特許第5,006,530号及び第5,177,080号に開示されている)もまた、ナトリウム塩として投与され、ヘキサヒドロナフタレン環を含む当該クラスの殺真菌誘導体と一部が構造的に異なる、全合成化合物である。アトルバスタチン並びに2つの新規な「スーパースタチン」としてのロスバスタチン及びピタバスタチン、はカルシウム塩として投与される。
【0007】
ロスバスタチンカルシウム(モノカルシウム ビス(+)7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチル−N−メチルスルホニルアミノピリミジン)−5−イル]−(3R,5S)−ジヒドロキシ−(E)−6−ヘプテノアート)は、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤であり、抗高脂血症の1日1回の経口処置のために、Shionogi により開発された(Ann Rep, Shionogi, 1996; Direct communications, Shionogi, 8 Feb 1999 & 25 Feb 2000)。ロスバスタチン カルシウムは、以下の化学式を有する:
【0008】
【化1】

【0009】
ロスバスタチンカルシウムは、哺乳類、例えば、ヒトの治療のためにCRESTOR(登録商標)の名称で市販されている。CRESTOR(登録商標)の製造者によれば、それは、約5mg〜約40mgの一日量において投与される。低い攻撃性のLDL−Cの低下を必要とする患者、又は筋疾患のための前処理因子を有する患者のために、5mgの投与量が推奨されるが、平均的な患者には10mgの投与量、顕著な高コレステロール血症及び攻撃的な脂質標的(>190mg/dL)を伴う患者には20mgの投与量、及び低用量に応答性でない患者には40mgの投与量が推奨される。
【0010】
米国特許第5,260,440号は、ロスバスタチン、そのカルシウム塩(2:1)、及びそのラクトン形態を開示し、特許請求している。’440特許のプロセスは、還流温度下においてアセトニトリル中で、4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチル−N−メチルスルホニルアミノ)−5−ピリミジンカルバルデヒドとメチル(3R)−3−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−5−オキソ−6−トリフェニルホスホラニリデンヘキサナートを反応させることによりロスバスタチンを調製する。それからロスバスタチンのメチルエステルを得るために、当該シリル基を、THF中フッ化水素で開裂し、続いてNaBH4とジエチルメトキシボランで還元する。
【0011】
続いて、上記エステルを、水酸化ナトリウムで室温においてエタノール中で加水分解し、続いてエタノールを除去し、そしてエーテルを添加し、ロスバスタチンのナトリウム塩を得る。当該ナトリウム塩を水に溶解し、そして窒素雰囲気下に維持する。それから塩化カルシウムを当該溶液に添加し、ロスバスタチン カルシウム(2:1)の沈殿が生じる。当該中間体の調製プロセスは、引例により本明細書に組み入れられている’440特許に開示されている。
【0012】
反応生成物の混合物は、医薬標準に十分合致した純粋な単一の化合物であることはほとんどない。多くの場合、当該反応の副生成物及び副産物、並びに反応において使用した補助試薬が存在するであろう。かかる生成物の混合物に含まれるロスバスタチンの活性医薬成分(「API」)へのプロセスにおける一定の段階において、当該ロスバスタチンは、医薬製品における使用のための連続的なプロセス又は最終的に適当であるかを決定するために、典型的にはHPLC又はGC分析により純度を分析しなければならない。当該ロスバスタチン は完全に純粋である必要はない。完全な純度は、理論的には理想であるが、達成することはできない。むしろ、不純物の存在により臨床的な使用についてのAPIの安全性が損なわれないことを保障するために純度スタンダードが存在している。米国において、食品医薬品局ガイドラインは、いくつかの不純物を0.1%未満に制限することを奨励している。
【0013】
一般的に、副生成物、副産物、及び付加的な試薬(集合的に「不純物」)は、分光学的に、及び他の物理的方法により同定され、それから当該不純物は、クロマトグラム(又はTCLプレート上のスポット)中のピーク位置に関係する(Strobel p. 953) (Strobel, H. A.; Heineman, W. R., Chemical Instrumentation: A Systematic Approach, 3rd dd. (Wiley & Sons: New York 1989)) 。その後、当該不純物はクロマトグラム中の位置により同定され、これは「保持時間」として知られる、カラムにおける試料の注入と検出器を通る特定の成分の溶出時間として慣習的に測定される。当該時間は、機器の状態及び多くの他の要因に基づき毎日変化する。不純物の正確な同定においてこのような変化が有する影響を軽減するために、実施者は不純物を同定するための「相対保持時間」(「RRT」)を使用する(Strobel p. 922)。不純物のRRTはいくつかのリファレンス・マーカーの保持時間により分けられたその保持時間である。理論上は、ロスバスタチン自体がリファレンス・マーカーとして使用することができるが、実際的な問題として、それは非常に圧倒的な割合で存在するために、カラムを飽和する傾向があり、これは保持時間を再現不可能なものとする。即ち、ロスバスタチンに対応するピークの最大値が不明となる傾向にある(Strobel Fig. 24.8 (b) p. 879, は、カラムがオーバーロードすると、観察される非対称のピークの選別の説明を含む) 。従って、検出可能であるために十分量であり、且つカラムが飽和しないように十分少ない量において混合物に添加され又は存在する他の化合物を選択すること、及びリファレンス・マーカーとしてその化合物を使用することが、しばしば所望される。
【0014】
比較的純粋な状態における化合物は、既知の混合物中の化合物の量を定量化するために「リファレンス・スタンダード」(「リファレンス・マーカー」は、リファレンス・スタンダードと類似するが、定性分析に使用される)として使用できる。当該化合物が「外部スタンダード」として使用される場合、既知の濃度の化合物の溶液は、既知の混合物として同技術により分析される。(Strobel p. 924, Snyder p. 549) (Snyder, L. R.; Kirkland, J. J. Introduction to Modern Liquid Chromatography, 2nd ed. (John Wiley & Sons: New York 1979) )。当該混合物中の化合物の量は、検出器の応答の大きさを比較することにより測定することができる。引用として本明細書に組み入れられている、USP6,333,198号もまた参照のこと。
【0015】
また、リファレンス・スタンダード化合物は、2つの化合物に対する検出器の感度における相違を代償する「応答因子」があらかじめ測定されている場合、混合物中の他の化合物の量を定量化するために使用することができる。(Strobel p. 894)。当該目的のために、当該リファレンス・スタンダード化合物は、当該混合物に直接添加することができ、かかる場合には「内部スタンダード」と称される。(Strobel p. 925, Snyder p. 552)。
【0016】
リファレンス・スタンダード化合物は、既知の混合物がいくつかのリファレンス・スタンダード化合物を含む場合、「標準添加」と称される技術を使用することにより、内部スタンダードとしても使用することができる。ここで少なくとも2つの試料が、既知で異なる量の内部スタンダードを添加することにより調製される(Strobel pp. 391-393, Snyder pp. 571,572)。混合物中に最初から存在するリファレンス・スタンダードによる検出器応答の割合は、各試料に添加されるリファレンス・スタンダード化合物の量に対する検出器応答のプロットをゼロに外挿することより測定することができる(例えば、Strobel, Fig.11.4 p.392)。
【0017】
本発明は、ロスバスタチンバッチに存在するロスバスタチン及び不純物の定量及び同定のためのリファレンス・スタンダード及びリファレンス・マーカーとして使用することができる化合物を提供する。
【発明の開示】
【0018】
発明の概要
1つの態様において、本発明は、以下の構造:
【化2】

(ここで、Xは水素、C1−C4アルキル基、又はアルカリ金属陽イオン若しくはアルカリ土類金属陽イオンであり、但し、Xがアルカリ土類金属である場合、1分子の当該金属陽イオンに対し2分子のロスバスタチンが存在する)
を有するロスバスタチントリオールを提供する。
【0019】
別の態様において、本発明は、以下の構造:
【化3】

を有する酸型のロスバスタチントリオールを提供する。
【0020】
更に別の態様において、本発明は、以下の構造:
【化4】

(ここで、RはC1−C4アルキルエステルである)
を有するエステル型のロスバスタチントリオールを提供する。
【0021】
1つの態様において、本発明は、以下の構造:
【化5】

(ここで、Mは、アルカリ金属陽イオン又はアルカリ土類金属陽イオンであり、但し、Xがアルカリ土類金属である場合、1分子の当該金属陽イオンに対し2分子のロスバスタチンが存在する)
を有する塩型のロスバスタチントリオールを提供する。
【0022】
1つの態様において、本発明は、以下の構造:
【化6】

を有するラクトン型のロスバスタチントリオールを提供する。
【0023】
別の態様において、本発明は、実質的に相当のロスバスタチンジオール型を含まない、単離され、又は精製された形態のトリオールの上記型の各々を提供する。
【0024】
更に別の態様において、本発明は、ロスバスタチントリオールC1−C4エステルを調製する方法であって、ロスバスタチンC1−C4エステルと、適当な有機溶媒におけるボランジメチルスルフィド錯体の溶液とを混合して反応混合物を得て、生じた当該反応混合物と、水酸化ナトリウム水溶液とを混合し、過酸化水素(H22)を添加し、そして前記トリオールエステルを回収すること、を含んで成る方法、を提供する。
【0025】
別の態様において、本発明は、ロスバスタチントリオールC1−C4エステルを調製する方法であって、ロスバスタチンジオールC1−C4エステルを酸化して、7位にヒドロキシル基を有するロスバスタチントリオールエステルを得ること、を含んで成る方法を提供する。
【0026】
別の態様において、本発明は、ロスバスタチンC1−C4エステルと、有機溶媒におけるボランの溶液とを混合し、生じた反応混合物と無機塩基の水溶液とを混合し、そして過酸化物を添加し、そして前記トリオールエステルを回収すること、を含んで成る方法、を提供する。
【0027】
1つの態様において、本発明は、ロスバスタチンカルシウムのバッチ中のロスバスタチンカルシウムの量を測定し、所望のレベルの前記トリオールを有するロスバスタチンカルシウムバッチを選択し、そして選択されたロスバスタチンカルシウムバッチを用いて医薬組成物を調製することにより、ロスバスタチンカルシウムに存在する不純物の量を減少させる方法、を提供する。
【0028】
別の態様において、本発明は、ロスバスタチンジオールカルシウム及びロスバスタチントリオールカルシウムを含んで成る混合物中に存在するロスバスタチントリオールカルシウムの量を減少させる方法であって、ロスバスタチンジオールC1−C4エステルのバッチにおけるロスバスタチントリオールC1−C4エステルの量を測定し、前記トリオールC1−C4エステルを有するロスバスタチンジオールC1−C4エステルバッチを選択し、そして選択されたロスバスタチンジオールC1−C4エステルバッチを用いてロスバスタチンジオールカルシウムの医薬組成物を調製すること、を含んで成る方法、を提供する。
【0029】
別の態様において、本発明は、ロスバスタチンエステル(好ましくはt−ブチル)の試料中の不純物の量を決定する方法であって、GC又はHPLCにより、既知の量のロスバスタチントリオールエステル(好ましくはt−ブチル)を含んで成るリファレンス・スタンダードにおけるロスバスタチントリオールエステルに相当するピーク下面積を測定し;GC又はHPLCにより、ロスバスタチントリオールエステル及びロスバスタチンジオールエステル(好ましくはt−ブチル)を含んで成る試料中のロスバスタチントリオールエステルに相当するピーク下面積を測定し;そして前記試料中のロスバスタチントリオールエステルの量を、リファレンス・スタンダードの面積と試験試料のものとを比較することで決定すること、を含んで成る方法、を提供する。
【0030】
更に別の態様において、本発明は、ロスバスタチンカルシウムの試料中の不純物の量を決定する方法であって、GC又はHPLCにより、既知の量のロスバスタチントリオールカルシウムを含んで成るリファレンス・スタンダードにおけるロスバスタチントリオールカルシウムに相当するピーク下面積を測定し;GC又はHPLCにより、ロスバスタチントリオールカルシウム塩及びロスバスタチンジオールカルシウム塩を含んで成る試料中のロスバスタチントリオールカルシウムに相当するピーク下面積を測定し;そして前記試料中のロスバスタチントリオールカルシウムの量を、リファレンス・スタンダードの面積と試験試料のものとを比較することで決定すること、を含んで成る方法、を提供する。
【0031】
1つの態様において、本発明は、ロスバスタチンジオールエステル(好ましくはt−ブチル)の試料中の不純物の相対保持時間(RRT)を同定する方法であって、GC又はHPLCにより、リファレンス・マーカー試料中のロスバスタチントリオールエステルに相当する相対保持時間(RRT)を測定し;ロスバスタチンジオールエステル及びロスバスタチントリオールエステルを含んで成る試料でGC又はHPLCを実施して、保持時間を有するGC又はHPLCクロマトグラムを得て;そして、前記リファレンス・マーカーの相対保持時間(RRT)と試験試料の相対保持時間(RRT)とを比較することで、前記試料中の前記トリオールエステルの相対保持時間(RRT)を決定すること、を含んで成る方法、を提供する。
【0032】
別の態様において、本発明は、ロスバスタチンジオールカルシウムの試料中の不純物の相対保持時間(RRT)を同定する方法であって、GC又はHPLCにより、リファレンス・マーカー試料中のロスバスタチントリオールカルシウムに相当する相対保持時間(RRT)を測定し;ロスバスタチンジオールカルシウム塩及びロスバスタチントリオールカルシウム塩を含んで成る試料でGC又はHPLCを実施して、保持時間を有するGC又はHPLCクロマトグラムを得て;そして、前記リファレンス・マーカーの相対保持時間(RRT)と試験試料の相対保持時間(RRT)とを比較することで、前記試料中の前記トリオールカルシウムの相対保持時間(RRT)を決定すること、を含んで成る方法、を提供する。
【0033】
1つの態様において、本発明は、以下の構造:
【化7】

を含んで成るロスバスタチントリオール酸を調製する方法であって、
以下の構造:
【化8】

(ここで、RはC1−C4基である)
のエステルを加水分解し、そしてこの加水分解エステルを酸で変換すること、
を含んで成る方法を提供する。
【0034】
1つの態様において、本発明は、以下の構造:
【化9】

を含んで成るロスバスタチントリオールラクトンを調製する方法であって、
以下の構造:
【化10】

(ここで、RはC1−C4エステルである)
のエステルを加水分解し、そしてこの加水分解エステルをラクトンに変換すること、
を含んで成る、方法を提供する。
【0035】
1つの態様において、本発明は、以下の構造:
【化11】

を有するロスバスタチントリオール酸を調製する方法であって、
以下の構造:
【化12】

を有するラクトンを加水分解し、そしてこの加水分解ラクトンをその塩に変換することを含んで成り、前記式中Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、但し、前記金属の陽イオンがアルカリ土類金属である場合、各陽イオンにつき2モルのロスバスタチンが存在している、方法を提供する。
【0036】
1つの態様において、本発明は、以下の構造:
【化13】

を有するロスバスタチントリオール塩を調製する方法であって、
以下の構造:
【化14】

を有する酸と塩基とを接触させること、を含んで成り、但し、前記金属の陽イオンがアルカリ土類金属である場合、各陽イオンにつき2モルのロスバスタチンが存在している、方法を提供する。
【0037】
本発明の詳細な説明
本明細書で使用する場合、用語「ジオール」とは、ロスバスタチン上に存在する2つのヒドロキシル基を指す。ジオールロスバスタチンは、本明細書では、ロスバスタチンの同義語として使用される。
【0038】
本明細書で使用する場合、用語「実質的に含まない」とは、HPLC面積のパーセンテージに基づき、約30%未満、より好ましくは約20%未満、より更に好ましくは10%未満、そして最も好ましくは約5%未満の相当の化合物(例えばジオール又はジアステレオ異性体)を有していること、を指す。
【0039】
本明細書で使用する場合、用語「トリオールラクトン」とは、ロスバスタチントリオールのラクトンを指す。
【0040】
本明細書で使用する場合、用語「リファレンス・スタンダード」の語は、活性な医薬成分の定量及び定性分析の両方に使用され得る化合物を指す。例えば、HPLCにおける前記化合物の保持時間は、相対保持時間を設定することを可能にし、それにより定性分析を可能にする。HPLCカラムへの注入前の溶液中の前記化合物の濃度は、HPLCクロマトグラム中のピークにおける面積の比較を可能にし、それにより定量分析を可能にする。
【0041】
「リファレンス・マーカー」は、混合物の成分を、これらの位置、例えば、クロマトグラム、又は薄層クロマトグラフィー(TLC)プレートにおけるに位置に基づき同定するために定性分析において使用される(Strobel pp. 921,922, 953)。このような目的のために、混合物中に存在している場合には、前記化合物を必ずしも当該混合物に添加しなければならないわけではない。「リファレンス・マーカー」は、定性分析のためだけに使用され、一方リファレンス・スタンダードは、定量若しくは定性分析、又はその両方に使用することができる。それ故、リファレンス・マーカーはリファレンス・スタンダードの下位概念であり、リファレンス・スタンダードの定義中に含まれる。
【0042】
リファレンス・スタンダードに関して当業者の知識の一部は、現在までに一般的に記述されているが、当業者はまた、検出器応答が、例えば、UV又は屈折率検出により、HPLCシステムの溶出から、あるいは、例えば、水素炎イオン化検出、又は熱伝導度検出、ガスクロマトグラフから、あるいは他の検出器応答、例えば、蛍光TCLプレートのUV吸収から得られたクロマトグラムのピークの高さ又は積分されたピーク面積であってよいことを理解する。リファレンス・スタンダードの当該位置は、ロスバスタチン及び他の不純物の相対保持時間を計算するために使用してもよい。
【0043】
本発明は、以下の構造:
【化15】

(ここで、Xは水素、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属又はC1−C4アルキル基である)
を有するロスバスタチントリオールを提供する。好ましくは、Xは水素(すなわち、ロスバスタチントリオール酸)、カルシウム(Ca2+(すなわち、ロスバスタチントリオールカルシウム)又はtert−ブチル(すなわち、ロスバスタチントリオールtert−ブチルエステル(「TBRE」))である。本願発明は、以下の構造:
【化16】

(ここで、Xは水素、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属又はC1−C4アルキル基である)
を有するロスバスタチントリオールを提供する。好ましくは、Xは水素(すなわち、ロスバスタチントリオール酸)、カルシウム(Ca2+(すなわち、ロスバスタチントリオールカルシウム)又はtert−ブチル(すなわち、ロスバスタチントリオールtert−ブチルエステル(「TBRE」))であって、単離された形態のものである。
【0044】
本発明は、以下の構造:
【化17】

を有する酸のロスバスタチントリオールを提供する。
【0045】
本発明は、以下の構造:
【化18】

(ここで、RはC1−C4アルキル基である)
を有するエステル形態のロスバスタチントリオールを提供する。好ましくは、Rはt−ブチル又はメチル基である。更に好ましくは、Rはt−ブチルである。
【0046】
本発明は、以下の構造:
【化19】

(ここで、Mがアルカリ金属又はアルカリ土類金属の陽イオンである)
を有する塩の形態のロスバスタチントリオールを提供する。好ましくは、Mはカルシウムである。当業者であれば、Mがアルカリ土類金属の陽イオン、例えばカルシウムである場合、当該塩はヘミカルシウム塩(2:1の比率)であろうことを理解するであろう。
【化20】

【0047】
本発明は更に、以下の構造:
【化21】

を有するラクトン形態のロスバスタチントリオールを提供する。
【0048】
本発明はまた、相当のロスバスタチンジオール形態を実質的に含まないのロスバスタチントリオールの上記形態のうちのそれぞれを提供する。従って、本発明は以下のものを提供する:
a)ロスバスタチンジオールC1−C4エステルを実質的に含まないロスバスタチントリオールC1−C4エステル。また、ロスバスタチンジオールt−ブチルエステルを実質的に含まないロスバスタチントリオールt−ブチルエステルも提供される;
b)ロスバスタチンジオール酸を実質的に含まないロスバスタチントリオール酸;
c)ロスバスタチンジオール塩(好ましくはカルシウム塩)を実質的に含まないロスバスタチントリオール塩(好ましくはカルシウム塩);及び
d)ロスバスタチンジオールラクトンを実質的に含まないロスバスタチントリオールラクトン。
【0049】
本発明はまた、ラセミ化合物である(7S)及び(7R)配置の前記ロスバスタチントリオールの上記形態のそれぞれを提供する。当該(7S)及び(7R)配置はジアステレオ異性体である。
【0050】
具体的には、本発明は以下のものを提供する:
a)ロスバスタチントリオールC1−C4エステル、好ましくはt−ブチルエステルであって、ラセミ体化合物の(7S)体及び(7R)体のもの。1つの態様において、(7S)体は実質的に(7R)体を含まない。1つの態様において、(7R)体は実質的に(7S)体を含まない。
b)ラセミ化合物である、(7S)及び(7R)体のロスバスタチントリオール酸。1つの態様において、(7S)体は実質的に(7R)体を含まない。1つの態様において、(7R)体は実質的に(7S)体を含まない。
c)ラセミ化合物である、(7S)及び(7R)体のロスバスタチントリオール塩(例えばカルシウム塩)。1つの態様において、(7S)体は実質的に(7R)体を含まない。1つの態様において、(7R)体は実質的に(7S)体を含まない。
d)ラセミ化合物である、(7S)及び(7R)体のロスバスタチントリオールラクトン。1つの態様において、(7S)体は実質的に(7R)体を含まない。1つの態様において、(7R)体は実質的に(7S)体を含まない。
【0051】
本発明はまた、ロスバスタチントリオールエステルを調製するための方法を提供する。当該トリオールエステルは、ロスバスタチンC1−C4エステル、特にt−ブチルエステルを酸化することで調製することができる。当該エステルの酸化は、ロスバスタチンC1−C4エステル、特にt−ブチルエステルとボラン(例えばBH3、B26)とを混合することで実施することができる。種々のモノアルキル(C1−C8)−及びジアルキル(C1−C8)−ボランと同様にボランの錯体を使用してもよい。好ましくは、ボランジメチルスルフィド錯体の適当な有機溶媒溶液が前記エステルと混合される。この反応混合物は攪拌されうる。無機塩基、好ましくはNaOHの水溶液が続いて当該反応混合物と混合され、これに続き、H22(好ましくは約30%/水)が添加される。H22は好ましくは一滴ずつ添加される。H22を添加する間の温度は、好ましくは約50℃未満に維持される。
【0052】
22に加え、他の酸化剤を使用することもできる。例えば、それ以外の過酸化物、例えばtert−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)及びモノペルオキシフタル酸マグネシウム六水和物(MMPP)を使用することもできる。
【0053】
前記無機塩基は、好ましくはアルカリ金属塩基、より好ましくは水酸化塩基、例えばNaOH、KOH及びLiOHである。使用可能な別の塩基にはNH4OHがある。
【0054】
有機相は分離して、水及び/又は塩水で洗浄し、水混和性副生成物、例えばボランの副生成物(例えばH3BO3)を除去することもできる。これを更に亜硫酸ナトリウムで洗浄して過剰な過酸化水素を除去することもできる。有機相を続いて濃縮し、残渣を得ることができる。濃縮は、圧力を1気圧未満、例えば100mmHgに低下させることで実施することができる。
【0055】
反応後、所望により、沈殿剤、例えば塩化アンモニウム又は別の塩を添加して不純物を反応混合物から析出させることもできる。塩化アンモニウムを使用することで、反応副生成物であるH3BO3が除去される。塩化アンモニウムを使用する代わりに、酸、例えば酢酸又はHClを使用して塩基性混合物を中和することもできる。H3BO3は、水で洗浄することで除去することができる。
【0056】
ロスバスタチントリオールエステルは、続いて、クロマトグラフィーにより精製し、そして相当のロスバスタチンジオールエステルから単離することができる。
【0057】
本発明は、ロスバスタチントリオールエステルを単離された形態で提供する。
【0058】
当該トリオールエステルは、続いて、相当の酸、塩又はラクトンに変換することができる。
【0059】
前記トリオールエステルは、当該エステルを加水分解し、そして適当なイオン源を添加することで、そのトリオール塩に変換することができる。カルシウム塩を得るためには、水酸化ナトリウムと塩化カルシウムの組み合わせを使用するか、あるいは水酸化カルシウムを使用することもできる。
【0060】
ロスバスタチンエステルは、有機溶媒と水の混合物中で当該エステルを懸濁することでその塩に変換し、そして塩基、例えば水酸化ナトリウムと混合することで溶液が得られる。当該有機溶媒はC1−C4アルコール、好ましくはエタノールであってもよい。当該有機溶媒は、続いて減圧下で蒸発され、その後塩化カルシウムが添加されることで、トリオールのカルシウム塩の沈殿が生じる。当該沈殿は、濾過のような常用の技術で除去することができる。
【0061】
本発明は、ロスバスタチントリオール塩を単離された形態で提供する。
【0062】
ロスバスタチントリオール酸を得るために、前記塩は酸、例えば塩酸又は硫酸と混合される。1つの態様において、ロスバスタチントリオールカルシウムは、有機溶媒、例えばジクロロメタン中で懸濁され、これに対し、塩酸が添加される。その後、ロスバスタチントリオール酸は、例えば有機相の分離により、続いて有機溶媒の除去、例えば減圧下での蒸発により反応混合物から単離される。
【0063】
前記酸は、前記エステルの加水分解の後、塩化カルシウムを添加する代わりに反応混合物を酸化することで得ることができる。無機酸、例えばHCl及びH2SO4を使用することもできる。
【0064】
本発明は、ロスバスタチントリオール酸を単離した形態で提供する。
【0065】
続いて、ロスバスタチンラクトンは、ラクトン化に有利な条件下で前記酸から得ることができる。1つの態様において、ロスバスタチントリオールカルシウムは、アセトニトリルのような有機溶媒に溶解され、これに対し、塩酸が添加される。反応混合物は続いて攪拌してもよい。続いて、有機溶媒及び水は、例えば減圧下で蒸発することで除去することができ、これによりラクトンが得られる。
【0066】
上述のとおり、これらの化合物、すなわちロスバスタチントリオールの酸、塩、ラクトン及びエステルは、リファレンスマーカー/スタンダードとして使用することができる。図2は、本発明の化合物が、ロスバスタチンの組成物に存在する不純物の量を定量し、且つ同定するためのリファレンススタンダードとして使用することができることを示すものである。ロスバスタチントリオールカルシウムは、カラム上でロスバスタチンジオールカルシウムに近接しているが、ロスバスタチンのピークと重複しない。重複していないということは、容易に定量ができるということであるので理想的である。
【0067】
本発明は、ロスバスタチントリオールラクトンを単離した形態で提供する。
【0068】
本発明は、ロスバスタチンカルシウム及びロスバスタチントリオールカルシウムを含んで成る混合物に存在するロスバスタチントリオールカルシウムの量を減少するための方法であって、ロスバスタチンジオールカルシウムのバッチ中のロスバスタチンカルシウムトリオールの量を測定し、所望のレベルのトリオールを有するロスバスタチンジオールを選択し、選択したロスバスタチンジオールバッチを用いて医薬組成物を調製すること、を含んで成る方法を提供する。本発明は、一般にカルシウム以外の塩もこの方法で使用することができる。
【0069】
本発明は、ロスバスタチンジオールカルシウム及びロスバスタチントリオールカルシウムを含んで成る混合物中に存在するロスバスタチントリオールカルシウムの量を減少するための方法であって、ロスバスタチンジオールC1−C4エステルのバッチ中のロスバスタチントリオールC1−C4エステルの量を測定し、トリオールC1−C4エステルを有するロスバスタチンジオールC1−C4エステルのバッチを選択し、そして選択したロスバスタチンジオールC1−C4エステルバッチを用いてロスバスタチンジオールカルシウムの医薬組成物を調製すること、を含んで成る方法、を提供する。前記エステルは好ましくはt−ブチルである。
【0070】
本発明は、ロスバスタチンジオールカルシウム及びロスバスタチントリオールカルシウムを含んで成る混合物中に存在するロスバスタチントリオールカルシウムの量を減少させる方法であって、ロスバスタチンジオールラクトンのバッチ中のロスバスタチントリオールラクトンの量を測定し、所望のレベルのトリオールラクトンを有するロスバスタチンジオールラクトンのバッチを選択し、そして選択したロスバスタチンジオールラクトンバッチを用いてロスバスタチンジオールカルシウムの医薬組成物を調製すること、を含んで成る方法、を提供する。
【0071】
本発明は、ロスバスタチンジオールカルシウム及びロスバスタチントリオールカルシウムを含んで成る混合物中に存在するロスバスタチントリオールカルシウムの量を減少させる方法であって、ロスバスタチンジオール酸のバッチ中のロスバスタチントリオール酸の量を測定し、所望のレベルのトリオール酸を有するロスバスタチンジオール酸のバッチを選択し、そして選択したロスバスタチンジオール酸バッチを用いてロスバスタチンジオールカルシウムの医薬組成物を調製すること、を含んで成る方法、を提供する。
【0072】
本発明は、ロスバスタチンジオールエステル(好ましくはt−ブチルエステル)の試料中の不純物の量を決定する方法であって、既知の量のロスバスタチントリオールエステル(好ましくはt−ブチル)を含んで成るリファレンススタンダード中のロスバスタチントリオールエステルに相当するピーク下面積をGC又はHPLCにより測定し;ロスバスタチントリオールエステル及びロスバスタチンジオールエステルを含んで成る試験試料中のロスバスタチントリオールエステル(好ましくはt−ブチル)に相当するピーク下面積をGC又はHPLCにより測定し;そして試料中のトリオールエステルの量を、リファレンススタンダードの面積と試験試料の面積とを比較することで決定すること、を含んで成る方法を提供する。
【0073】
本発明は、ロスバスタチンカルシウムの試料中の不純物の量を決定する方法であって、既知の量のロスバスタチントリオールカルシウムを含んで成るリファレンススタンダード中のロスバスタチントリオールカルシウムに相当するピーク下面積をGC又はHPLCにより測定し;ロスバスタチントリオールカルシウム塩及びロスバスタチンジオールカルシウム塩を含んで成る試験試料中のロスバスタチントリオールカルシウムに相当するピーク下面積をGC又はHPLCにより測定し;そして試料中のトリオールカルシウムの量を、リファレンススタンダードの面積と試験試料の面積とを比較することで決定すること、を含んで成る方法を提供する。通常、カルシウム以外の塩も本方法で使用することができる。
【0074】
本発明は、ロスバスタチン酸の試料中の不純物の量を決定する方法であって、既知の量のロスバスタチントリオール酸を含んで成るリファレンススタンダード中のロスバスタチントリオール酸に相当するピーク下面積をGC又はHPLCで測定し;ロスバスタチン酸及びロスバスタチンジオール酸を含んで成る試験試料中のロスバスタチントリオール酸に相当するピーク下面積をGC又はHPLCで測定し;そして前記試料中のトリオール酸の量を、リファレンススタンダードの面積と試験試料のものとを比較することで決定すること、を含んで成る方法、を提供する。
【0075】
本発明は、ロスバスタチンラクトンの試料中の不純物の量を決定する方法であって、既知の量のロスバスタチントリオールラクトンを含んで成るリファレンススタンダード中のロスバスタチントリオールラクトンに相当するピーク下面積を、GC又はHPLCにより測定し;ロスバスタチントリオールラクトン及びロスバスタチンジオールラクトンを含んで成る試験試料中のロスバスタチントリオールラクトンに相当するピーク下面積を、GC又はHPLCにより測定し;そして前記試料中のトリオールラクトンの量を、リファレンススタンダードの面積と当該試験試料のものとを比較することで決定すること、を含んで成る方法を提供する。
【0076】
本発明は、ロスバスタチンジオールエステル(好ましくはt−ブチル)の試料中の不純物の相対保持時間(RRT)を同定する方法であって、リファレンスマーカー試料中のロスバスタチントリオールエステルに相当する相対保持時間(RRT)を、GC又はHPLCにより測定し;ロスバスタチンエステル及びロスバスタチントリオールエステルを含んで成る試験試料を用いてGC又はHPLCを実施することで、保持時間を有するHPLC又はGCクロマトグラムを得て;そして、リファレンスマーカーの相対保持時間と前記試験試料の相対保持時間(RRT)とを比較することで前記試料中のトリオールエステルの相対保持時間(RRT)を決定すること、を含んで成る方法を提供する。好ましくは、ロスバスタチンジオール及びロスバスタチントリオールエステルはtert−ブチルエステルである。
【0077】
従って、別の態様において、本発明は、ロスバスタチンジオールカルシウムの試料中の不純物の相対保持時間(RRT)を決定する方法であって、リファレンスマーカー試料中のロスバスタチントリオールカルシウムに相当する相対保持時間(RRT)を、GC又はHPLCにより測定し;ロスバスタチンジオール及びロスバスタチントリオールカルシウム塩を含んで成る試験試料を用いてGC又はHPLCを実施することで、保持時間を有するHPLCクロマトグラムを得て;そして、リファレンスマーカーの相対保持時間(RRT)と試験試料の相対保持時間(RRT)とを比較することで、前記試料中のトリオールカルシウムの相対保持時間(RRT)を決定すること、を含んで成る方法を提供する。通常、カルシウム以外も本方法で使用することができる。
【0078】
従って、別の態様において、本発明は、ロスバスタチンジオール酸の試料中の不純物の相対保持時間(RRT)を同定する方法であって、リファレンスマーカー試料中のロスバスタチントリオール酸に相当する相対保持時間(RRT)を、GC又はHPLCにより測定し;ロスバスタチンジオール酸及びロスバスタチントリオール酸を含んで成る試験試料を用いてGC又はHPLCを実施し、保持時間を有するHPLCクロマトグラムを得て;そしてリファレンスマーカーの相対保持時間(RRT)と前記試験試料の相対保持時間(RRT)とを比較することで、前記試料中のトリオール酸の相対保持時間(RRT)を決定すること、を含んで成る方法を提供する。
【0079】
従って、別の態様において、本発明は、ロスバスタチンジオールラクトンの試料中の不純物の相対保持時間(RRT)を同定する方法であって、リファレンスマーカー試料中のロスバスタチントリオールラクトンに相当する相対保持時間(RRT)を、GC又はHPLCにより測定し;ロスバスタチンジオール酸及びロスバスタチントリオール酸を含んで成る試験試料を用いてGC又はHPLCを実施し、保持時間を有するHPLCクロマトグラムを得て;そしてリファレンスマーカーの相対保持時間(RRT)と前記試験試料の相対保持時間(RRT)とを比較することで、前記試料中のトリオール酸の相対保持時間(RRT)を決定すること、を含んで成る方法を提供する。
【0080】
幾つかの好ましい態様を参照して本発明を説明してきたが、他の態様も本願明細書を考慮することで当業者にとっては自明であろう。本発明は、本発明の組成物の調製及び使用方法を詳細に説明する以下の実施例を参照して更に規定される。材料及び方法の両方に対し、多数の変更が本発明の精神を逸脱することなく実施されうることは当業者にとって自明であろう。
【実施例】
【0081】
実施例1:トリオールエステルの合成
【化22】

【0082】
TBRE(10g)を、THF(56ml)中1Mのボランジメチルスルフィド錯体の溶液と不活性雰囲気と混合した。当該混合物を20℃で3時間攪拌した。NaOH(74g)/水(5ml)の溶液をゆっくり添加した。H22(30%/水、15ml)を一滴ずつ添加し、それにより混合物の温度を50℃未満に維持した。当該混合物を0.5時間攪拌した。塩化アンモニウム(150ml)の濃縮溶液を添加し、そして沈殿を濾過した。相を分離し、そして有機相を最初に亜硫酸ナトリウムの濃縮液(40ml)で洗浄し、続いて、水(100ml)と塩水(100ml)の混合物で洗浄し、そして最後に塩水(150ml)で洗浄した。続いて、有機溶媒を減圧下で除去することで、トリオール、未反応TBRE及び幾つかの不純物を含む半固体残渣が得られた。
【0083】
トリオールは、2つのクロマトグラフィーによる分離によって単離した。最初の分離は、RP−18カラム(RediSep(登録商標)C−18逆相カラム)上で、40%〜50%のエタノール/水のグラジエントを用いて実施した。第二の分離は、通常のシリカカラム(RediSep(登録商標)正常相使い捨てカラム)上で、溶出剤として0%〜1%のエタノール/CH2Cl2のグラジエントを用いて実施した。純度93%。MS(ES+):M+H=556 M+Na+=578
RediSep(登録商標)は、Teledyne Isco,Inc(ネブラスカ州)の製品である。
【0084】
実施例2:Rosu−Ca−トリオールの合成
【化23】

【0085】
TBRE及び2.85%のトリオールエステル(3.7ミリモルのカルボン酸基)から成る2gの材料を、エタノール(10mL)/水(6mL)混合物中で懸濁した。飽和NaOH溶液(0.35g、4.1ミリモル)を一滴ずつ室温で添加し、そして混合物を2時間攪拌した。溶液を真空下で濃縮してエタノールを除去した。カルシウム塩は、CaCl2(0.41g、3.7ミリモル)を40℃で攪拌しながら添加することで水溶液から沈殿させた。攪拌は室温で1時間続け、そして沈殿を濾過し、水で洗浄し、そして乾燥させた。前記材料は、2.82%のRosu−Ca−トリオール及び95%のRosu−Caを含んでいた。
【0086】
実施例3:ロスバスタチントリオール酸の合成
RosuトリオールCa(0.5g)をジクロロメタン(5mL)中で懸濁し、そしてHCl(1Nの水溶液、1mL)を添加する。15分攪拌後に相を分離し、そして有機相を真空で濃縮することで、主に生成物を含む残渣が得られる。これを更にカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶出剤としてのジクロロメタン−メタノール混合物)で精製してもよく、これにより純粋なRosuトリオール酸が得られる。
【0087】
実施例4:ロスバスタチントリオールラクトン
RosuトリオールCa(4g)をアセトニトリル(40mL)中に溶解し、そしてHCl(1Nの水溶液、40mL)を添加する。混合物を室温で一晩攪拌する。アセトニトリル及び水を減圧下で蒸留することで除去する。生成物を含む残渣は、更にフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、溶出剤としてのヘキサン−酢酸エチル混合物)により精製してもよく、これにより純粋なrosuトリオールラクトンが得られる。
【0088】
実施例5.ロスバスタチントリオールカルシウムの合成
2gの純粋なトリオール−エステル(3.7ミリモル)をエタノール(10mL)/水(6mL)の混合物中で懸濁する。飽和NaOH溶液(0.35g、4.1ミリモル)を室温で一滴ずつ添加し、そして混合物を2時間攪拌する。この溶液を真空下で濃縮してエタノールを除去する。カルシウム塩は、CaCl(0.41g、3.7ミリモル)を40℃で攪拌しながら添加することで水溶液から沈殿させる。攪拌は室温で1時間続け、そして沈殿を濾過し、水で洗浄し、そして乾燥させることで、Rosu−Ca−トリオールが生成する。
【0089】
MS条件
装置: Bruker Esquir 6000
イオン源: ポジティブ/ネガティブスイッチングESI
標的質量: 556Da
化合物の安定性: 50%
トラップドライブ: 100%
八重極RF: 195.3Vpp
キャピラリー出口: 111.8V
乾燥ガス流速: 10L/分
ネブライザー: 60psig
乾燥ガス温度: 365℃
Vキャップ: 4000V
【0090】
TBREの不純物プロファイルについてのHPLC法
カラム:C18
移動相: 溶出剤A及び溶出剤Bのグラジエント
【表1】

【0091】
溶出剤A:60% 0.005Mの酢酸アンモニウム 40%のアセトニトリル:エタノール=2:3
溶出剤B:100%アセトニトリル:エタノール=1:4
UV検出:243nm
実行時間:55分
流速:0.6mL/分
インジェクション量:5μL
カラム温度:5℃
切捨ての限界値:0.02%未満
試料調製:0.5mg/mL
TBREのRT:約24.5分
トリオール−TBREの不純物のRRTは、TBREのメインピークに相当する0.6である。
【0092】
Rosuの不純物プロファイルについてのHPLC法
カラム:C18
移動相: 溶出剤A、溶出剤B及び溶出剤Cのグラジエント
【表2】

【0093】
溶出剤A:60% 0.05%の氷酢酸(pH3.5)と水酸化アンモニウム、35%のアセトニトリル、5%のエタノール
溶出剤B:55% 0.05%の氷酢酸(pH3.5)と水酸化アンモニウム、45%のアセトニトリル
溶出剤C:100%エタノール
UV検出:243nm
実行時間:45分
流速:0.5mL/分
インジェクション量:10μL
カラム温度:20℃
切捨ての限界値:0.02%未満
試料調製:0.2mg/mL
ROSUのRT:約19分
トリオール−ROSUの不純物のRRTは、ROSUのメインピークに相当する0.7である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図1は、TBRE(t−ブチルロスバスタチンエステル)トリオールのNMRである。
【図2】図2は、リファレンス・スタンダード(リファレンスマーカー含む)としてロスバスタチントリオールカルシウムの使用を示すHPLCクロマトグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造:
【化1】

(ここで、Xは水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属、あるいはC1−C4アルキル基である)
を有するロスバスタチントリオール。
【請求項2】
単離されている、請求項1に記載のロスバスタチントリオール。
【請求項3】
相当のロスバスタチンジオールを実質的に含まない、請求項1又は2に記載のロスバスタチントリオール。
【請求項4】
以下の構造:
【化2】

を有する酸型の請求項1に記載のロスバスタチントリオール。
【請求項5】
単離されている、請求項4に記載のロスバスタチントリオール。
【請求項6】
相当のロスバスタチンジオールを実質的に含まない、請求項4又は5に記載のロスバスタチントリオール。
【請求項7】
以下の構造:
【化3】

(ここで、RはC1−C4アルキルを表す)
を有するエステル型の請求項1に記載のロスバスタチントリオール。
【請求項8】
ロスバスタチントリオールエステルが単離されている、請求項7に記載のロスバスタチントリオール。
【請求項9】
ロスバスタチントリオールエステルが相当のロスバスタチンジオールエステルを実質的に含まない、請求項7又は8に記載のロスバスタチントリオール。
【請求項10】
前記エステルがtert−ブチルエステルである、請求項7、8又は9に記載のロスバスタチントリオール。
【請求項11】
以下の構造:
【化4】

(ここで、Mは、アルカリ金属陽イオン又はアルカリ土類金属陽イオンである)
を有する塩型の、請求項1に記載のロスバスタチントリオール。
【請求項12】
前記金属陽イオンがアルカリ土類金属であり、各陽イオンにつき2分子のロスバスタチンが存在している、請求項11に記載のロスバスタチントリオール。
【請求項13】
前記金属陽イオンがCa2+である、請求項12に記載のロスバスタチントリオール。
【請求項14】
単離されている、請求項11、12、又は13に記載のロスバスタチントリオール。
【請求項15】
相当のロスバスタチンジオールを実質的に含まない、請求項11、12、13又は14に記載のロスバスタチントリオール。
【請求項16】
以下の構造:
【化5】

を有するラクトン型の、請求項1に記載のロスバスタチントリオール。
【請求項17】
ロスバスタチントリオールラクトンが単離されている、請求項16に記載のロスバスタチントリオール。
【請求項18】
ロスバスタチントリオールラクトンが相当のロスバスタチンジオールを実質的に含まない、請求項16又は17に記載のロスバスタチントリオール。
【請求項19】
(7S)体のロスバスタチントリオール;(7R)体のロスバスタチントリオール;及びラセミ化合物のロスバスタチントリオール、から成る群から選択される、請求項1〜18のいずれか1項に記載のロスバスタチントリオール。
【請求項20】
ロスバスタチンジオールC1−C4エステルを酸化して7位にヒドロキシル基を有するロスバスタチントリオールエステルを得ること、を含んで成る、請求項7〜10又は18〜19のいずれか1項に記載のトリオールの調製方法。
【請求項21】
ロスバスタチンC1−C4エステルとボランの有機溶媒溶液とを混合して反応混合物を得て、生じた反応混合物と無機塩基の水溶液とを混合し、そして過酸化物を添加し、そしてトリオールエステルを回収すること、を含んで成る、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ボランがボランジメチルスルフィド錯体である、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記ボランがモノアルキル−又はジアルキル−ボランである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記過酸化物がH22である、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項25】
前記過酸化物がtert−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)又はモノペルオキシフタル酸マグネシウム六水和物(MMPP)である、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項26】
前記塩基が無機塩基である、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記無機塩基がアルカリ金属の塩基である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記塩基が水酸化物の塩基である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記水酸化物塩基がNaOH、KOH又はLiOHである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記塩基がNH4OHである、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
前記有機溶媒がC3−C8エーテルである、請求項21〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記有機溶媒がテトラヒドロフランである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
以下の式:
【化6】

(ここで、RはC1−C4エステルである)
のトリオールエステルを、水と有機溶媒の混合物中で懸濁し、そして当該懸濁液を塩基及びイオン源と混合すること、を含んで成る、請求項11に記載のトリオール塩を調製するための方法。
【請求項34】
前記有機溶媒がC1−C4アルコールである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記有機溶媒がエタノールである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記イオン源が塩化カルシウムである、請求項33、34又は35に記載の方法。
【請求項37】
以下の式:
【化7】

(ここで、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属である)
のロスバスタチントリオール塩と酸とを接触させること、を含んで成る、請求項4に記載のトリオール酸を調製するための方法。
【請求項38】
前記酸が塩酸又は硫酸である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
ロスバスタチントリオール塩が有機溶媒と混合される、請求項37又は38に記載の方法。
【請求項40】
前記有機溶媒がジクロロメタンである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
以下の式:
【化8】

(ここで、RはC1−C4エステルである)
のエステルを酸で加水分解すること、を含んで成る、請求項4に記載のロスバスタチントリオール酸を調製するための方法。
【請求項42】
前記酸がHCl又はH2SO4である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
以下の式:
【化9】

(ここで、RはC1−C4エステルである)
のトリオールエステルを加水分解し、そして加水分解したエステルをラクトンに変換すること、を含んで成る、請求項16〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
以下の構造:
【化10】

(ここで、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属である)
を有する請求項11〜15又は18〜19のいずれか1項に記載のロスバスタチントリオール塩を調製するための方法であって、以下の構造:
【化11】

を有するラクトンを加水分解し、そして加水分解したラクトンを塩に変換すること、を含んで成る方法。
【請求項45】
以下の構造:
【化12】

を有する請求項16〜20のいずれか1項に記載のロスバスタチントリオール塩を調製する方法であって、以下の構造
【化13】

を有する酸と塩基とを接触させることを含んで成る、方法。
【請求項46】
ロスバスタチンカルシウムの医薬組成物中に存在する不純物の量を減少させるための方法であって、ロスバスタチンジオールカルシウムのバッチ中のロスバスタチントリオールカルシウムの量を測定し、所望のレベルのロスバスタチントリオールカルシウムを有するロスバスタチンジオールカルシウムのバッチを選択し、そして選択したロスバスタチンジオールバッチを用いて医薬組成物を調製すること、を含んで成る方法。
【請求項47】
ロスバスタチンジオールエステル及びロスバスタチントリオールエステルを含んで成る混合物中に存在するロスバスタチントリオールエステルの量を減少させるための方法であって、ロスバスタチンジオールC1−C4エステルのバッチ中のロスバスタチントリオールC1−C4エステルの量を測定し、トリオールC1−C4エステルを有するロスバスタチンジオールC1−C4エステルのバッチを選択し、そして選択したロスバスタチンジオールC1−C4エステルバッチを用いてロスバスタチンジオールカルシウムの医薬組成物を調製すること、を含んで成る方法。
【請求項48】
ロスバスタチンジオールエステルの試料中の不純物の量を決定する方法であって、GC又はHPLCにより、既知の量のロスバスタチントリオールエステルを含んで成るリファレンス・スタンダードにおけるロスバスタチントリオールエステルに相当するピーク下面積を測定し;HPLC又はGCにより、ロスバスタチントリオール及びロスバスタチンジオールエステルを含んで成る試料中のロスバスタチントリオールエステルに相当するピーク下面積を測定し;そして前記試料中のトリオールエステルの量を、リファレンス・スタンダードの面積と試験試料のものとを比較することで決定すること、を含んで成る方法。
【請求項49】
トリオールエステルがt−ブチルエステルである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
ロスバスタチンカルシウムの試料中の不純物の量を決定する方法であって、GC又はHPLCにより、既知の量のロスバスタチントリオールカルシウムを含んで成るリファレンス・スタンダードにおけるロスバスタチントリオールエステルに相当するピーク下面積を測定し;GC又はHPLCにより、ロスバスタチントリオール及びロスバスタチンジオールカルシウム塩を含んで成る試料中のロスバスタチントリオールカルシウムに相当するピーク下面積を測定し;そして前記試料中のトリオールカルシウムの量を、リファレンス・スタンダードの面積と試験試料のものとを比較することで決定すること、を含んで成る方法。
【請求項51】
ロスバスタチンジオールエステルの試料中の不純物の相対保持時間(RRT)を同定する方法であって、GC又はHPLCにより、リファレンス・マーカー試料中のロスバスタチントリオールエステルに相当する相対保持時間(RRT)を測定し;ロスバスタチンジオールエステル及びロスバスタチントリオールエステルを含んで成る試料でGC又はHPLCを実施して、保持時間を有するGC又はHPLCクロマトグラムを得て;そして、前記リファレンス・マーカーの相対保持時間(RRT)と試験試料の相対保持時間(RRT)とを比較することで、前記試料中の前記トリオールエステルの相対保持時間(RRT)を同定すること、を含んで成る方法。
【請求項52】
前記トリオールエステルがt−ブチルエステルである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
ロスバスタチンジオールカルシウムの試料中の不純物の相対保持時間(RRT)を同定する方法であって、GC又はHPLCにより、リファレンス・マーカー試料中のロスバスタチントリオールカルシウムに相当する相対保持時間(RRT)を測定し;ロスバスタチンジオールカルシウム塩及びロスバスタチントリオールカルシウム塩を含んで成る試料でGC又はHPLCを実施して、保持時間を有するHPLCクロマトグラムを得て;そして、前記リファレンス・マーカーの相対保持時間(RRT)と試験試料の相対保持時間(RRT)とを比較することで、前記試料中の前記トリオールカルシウムの相対保持時間(RRT)を同定すること、を含んで成る方法。
【請求項54】
ロスバスタチン酸、ロスバスタチンエステル、ロスバスタチン塩(好ましくはカルシウム塩)、及びロスバスタチンラクトンの純度を決定するためのリファレンススタンダード又はリファレンスマーカーとしての請求項1〜19のいずれか1項に記載の化合物の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−519353(P2009−519353A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504512(P2009−504512)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/003470
【国際公開番号】WO2008/112317
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(501079705)テバ ファーマシューティカル インダストリーズ リミティド (283)
【Fターム(参考)】