説明

トリガー式エアゾール容器の内容物排出装置

【課題】エアゾール製品の廃棄時に、エアゾール容器内の内容物の全量排出を確実に行う事を可能とし、爆発事故等を防止可能とする。また、この内容物排出装置を簡易な構成で廉価に形成する。また、誤作動の発生を防止する。
【解決手段】エアゾール容器1に固定した固定カバー5の内壁6間に、ステム3に接続した押釦7を配置する。この押釦7のノズル10とはステム接続部11を介した端部を固定カバー5の内壁6に軸支する。この軸支部12とはステム接続部11を介したノズル10側にトリガー13を突出する。このトリガー13を引きステム3を押圧したエアゾール内容物の噴射可能状態で、押釦7の上面に介在物14を配置固定するための挿通孔15を固定カバー5の内壁6に形成し、介在物14によって押釦7の継続的押圧を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール製品を廃棄する際に、内容物を全量排出するためのトリガー式エアゾール容器の内容物排出装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エアゾール容器内に充填された内容物の使用後にエアゾール製品を廃棄する際に、エアゾール容器内に内容物を残留したまま廃棄すると、噴射ガスの膨張による爆発事故を引き起こす等の問題を生じる虞があった。そのため、特許文献1〜14に示す如く、エアゾール容器内に残留する内容物を全量排出するための内容物排出装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、ステムを押圧する押釦の外周に係合突起を突設し、この係合突起を係合可能な係合受部を、エアゾール容器に接続した固定カバーの内周に形成している。そして、エアゾール製品の使用時は、係合突起が係合受部に係合しない程度の押し下げ量で、押釦を押し下げて内容物の噴射を行う。そして、内容物の使用が終わり、エアゾール容器を廃棄する際には、押釦を大きく押し下げる事により、係合突起を係合受部に係合して、押釦の押圧状態を維持し、バルブを開放状態として内容物を全量排出する事を可能としていた。
【0004】
また、特許文献2、5、6、8に於いても、押釦及び固定カバーに係合突起とその係合受部を形成しているが、通常の使用時には係合突起と係合受部とを非係合位置に配置し、押釦の押圧や押圧解除による復元が何等阻止される事はない。そして、エアゾール容器の廃棄の際は、押釦を押圧した状態で当該押釦を円周方向に回動する事により、係合突起と係合受部とが係合するものである。この係合により、押釦の押圧状態が維持され、内容物の全量排出を可能とするものであった。
【0005】
また、特許文献3、4、7では、押釦に係合突起又は係合溝を設け、ヒンジ部や弾性変形力により折曲して前記係合突起に係合又は係合溝に挿入係合可能な係合部材を、固定カバーに設けている。そして、エアゾール容器の廃棄時に、押釦を押圧した後に、前記係合部材を折り曲げ又は弾性変形させて、係合部材を押釦の係合突起に係合又は係合溝に挿入係合する事により、押釦を固定して押圧状態を維持して内容物の全量排出を可能とするものであった。
【0006】
また、特許文献9では、押釦に設けた回動レバーを回動する事により、押釦の押圧状態で回動レバーの係合突起を固定カバーの係合受部に係合する事により、押釦の押圧状態を維持している。一方、特許文献10では、押釦を被覆するヘッドカバー内面に板状の押圧部材を突設し、押釦の上面にこの押圧部材により押圧可能な係合段部を形成している。そして、常時は押圧部材と係合段部とを非係合位置に配置し、廃棄時には、ヘッドカバーを回動して、押圧部材にて係合段部を押圧する事により、押釦を押し下げるとともにその押圧状態を維持して、エアゾール容器内の内容物を全量排出するものであった。
【0007】
また、特許文献11、12では、押釦の押圧状態を保つための釘状の押杆部材を製作し、この押杆部材をエアゾール容器に接続するキャップに装着する。そして、エアゾール容器の廃棄時は、キャップを一旦外し、キャップ内部の貫通孔又は挿通溝に、前記押杆部材を挿通し、再びキャップをエアゾール容器に装着する。この装着により、押杆部材が押釦を押圧してバルブ機構を開放するとともに、押釦の押圧状態を維持する事により、エアゾール容器内の内容物の全量排出を可能とするものであった。
【0008】
また、特許文献13、14に於いても、押釦の押圧部材を別個に形成して、廃棄時には、キャップに押圧部材を適宜取り付け、この押圧部材にて押釦を押圧するとともにこの押圧状態を維持して、内容物の全量排出を可能とするものであった。
【特許文献1】特開平8−133360号公報
【特許文献2】特開平11−321943号公報
【特許文献3】特開2000−80077号公報
【特許文献4】特開2002−255266号公報
【特許文献5】特開2002−282746号公報
【特許文献6】特開2002−302175号公報
【特許文献7】特開2002−326681号公報
【特許文献8】特開2003−12058号公報
【特許文献9】特開2003−12061号公報
【特許文献10】特開2003−165588号公報
【特許文献11】特開昭49−121214号公報
【特許文献12】特開昭49−129218号公報
【特許文献13】特開2001−55284号公報
【特許文献14】特開2001−146281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1では、係合突起により押釦の押し下げ量が制限され、押釦の大きな押し下げができず、内容物の大量噴射を行うのが困難であるし、逆に押釦の過剰な押し下げにより係合突部と係合受部とを誤って係合してしまう虞もあった。また、特許文献2、5、6、8では、押釦を押し下げながら円周方向に回動するのは、大きな力を必要とし、位置合わせの微調整が困難である。また、特許文献3、4、7では、固定カバーから係合部材が突出して邪魔となったり、内容物の噴射圧及び係合部材の弾性復元力が相俟って、係合部材と押釦との係合が解除される虞もあった。
【0010】
また、特許文献9では、回動レバーの構造が複雑でコスト高となったり、回動レバーの脱落による紛失等の心配もあった。また、特許文献10では、押釦の押圧を維持するためにヘッドカバーを頑丈に形成する必要があり、やはりコスト高となったり、エアゾール装置が嵩張ってしまう可能性があった。
【0011】
また、特許文献11,12は押釦を被覆するキャップの内部に細長の押杆を配置し、この押杆をキャップの被覆時に押釦に押圧するものであるから、押圧状態が不安定なものとなるし、押圧に強い力を必要とし、この押釦の不安定な押圧を行いながら、キャップをエアゾール容器に確実に嵌合するのは困難なものである。また、トリガー式エアゾール容器の如く、噴射ノズルやトリガー部等の部材がエアゾール容器の直径よりも外方に突出し、キャップによる被覆が困難なものには適用できないものである。
【0012】
また、特許文献13、14でも、押圧部材を別個に形成する必要があってコスト高となるとともに、押圧部材を取り付けたキャップの内部を確認しにくく、押圧部材と押釦との位置合わせを正確に行うのが困難であった。
【0013】
本願発明は上述のごとき課題を解決しようとするものであって、内容物の使用が終了したトリガー式エアゾール製品を廃棄する際に、トリガー式エアゾール容器に残留する内容物の全量を確実に排出する事を可能とするとともに、その排出操作に強い力や微調整等を必要とせず、使用者が容易に操作する事を可能とするものである。また、この内容物排出装置をエアゾール装置に複雑な構成を付加することなく、身近に存在する物品を付加して使用することにより、簡易な構成で廉価な製品を得る事を可能とするものである。そして、内容物の全量排出により、トリガー式エアゾール容器の爆発事故を防止するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、エアゾール容器の上部に固定した固定カバーの対向する内壁間に、エアゾール容器のステムに接続した押釦を配置し、この押釦のノズルとはステム接続部を介した端部を固定カバーの内壁に軸支し、この軸支部とはステム接続部を介したノズル側にトリガーを突出してステムの押圧を可能としたものに於いて、トリガーを引きステムを押圧したエアゾール内容物の噴射可能状態で、押釦の上面に介在物を配置固定するための挿通孔を固定カバーの内壁に形成し、介在物によって押釦の継続的押圧を可能として成るものである。
【0015】
また、介在物は、爪楊枝であっても良い。
【0016】
また、介在物は、硬質材製の棒状物であっても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上述の如く構成したものであるから、トリガーを引きステムを押圧したエアゾール内容物の噴射可能状態で、固定カバーの内壁に形成した挿通孔に爪楊枝等の介在物を挿通すれば、この介在物がトリガーの復元を阻止し、押釦の継続的押圧を行いエアゾール内容物の全量排出を可能とする。
【0018】
また、押釦の継続的押圧は、トリガーを引きステムを押圧したエアゾール内容物の噴射可能状態で、挿通孔に爪楊枝等の介在物を挿通して押釦の上面に介在物を配置固定するものであるから、押釦の継続的押圧作業に大きな力を必要としないし、作業も簡易に行うことが可能なものとなる。
【0019】
また、挿通孔に爪楊枝等の介在物を挿通するのみの簡易な構成によりエアゾール内容物の全量排出が可能となる。また、介在物は、エアゾール容器の使用者の身近に存在する爪楊枝や、硬質材製の棒状物を用いることが可能で、廉価で確実な全量排出機構を得ることが出来る。
【0020】
また、この介在物を使用しない限りエアゾール内容物の全量排出を行うことは出来ないから、全量排出機構を予め備えているエアゾール装置に比較し、誤作動による不測の全量排出事故を生じることが無く、安全な使用を可能とすることが出来るものである。
【実施例1】
【0021】
以下本発明の第1実施例を図1〜図6に於いて説明すれば、(1)はエアゾール容器で、内部にヘアスプレー、制汗剤、芳香剤等の適宜の内容物を充填するとともに上端にマウテンカップ(2)を固定している。このマウテンカップ(2)は内面にバルブ機構(図示せず)を接続し、このバルブ機構のステム(3)を、マウンテンカップ(2)から外部に突出している。このステム(3)をエアゾール容器(1)方向に押圧する事によりバルブ機構を開弁し、内容物の噴射を可能としている。
【0022】
また、マウテンカップ(2)の肩部(4)には固定カバー(5)の下端を固定し、この固定カバー(5)に設けた対向する内壁(6)間に、エアゾール容器(1)のステム(3)に接続した押釦(7)を配置する。この押釦(7)はトリガー式であって、この押釦(7)はステム(3)と連通路(8)を介して接続するノズル(10)を一端に形成している。このノズル(10)とはステム接続部(11)を介した押釦(7)の端部を固定カバー(5)の内壁(6)に回動可能に軸支している。また、この軸支部(12)とはステム接続部(11)を介したノズル(10)側の下面にトリガー(13)を突出している。このトリガー(13)を引くことにより、軸支部(12)を支点として押釦(7)がステム(3)を押圧する方向に回動し、ステム(3)の押し下げを可能としている。
【0023】
また、トリガー(13)を引きステム(3)を押圧したエアゾール内容物の噴射状態で、押釦(7)の上面に対応する位置の固定カバー(5)の内壁(6)に、介在物(14)を配置固定するための挿通孔(15)を貫通形成している。
【0024】
上述の如きエアゾール装置に於いて、エアゾール容器(1)内の内容物の通常の噴射使用時には、エアゾール容器(1)を片手で保持してトリガー(13)を引くことにより、軸支部(12)を支点として押釦(7)がステム(3)を押圧する方向に回動し、バルブ機構(図示せず)を開弁することによりノズル(10)からの噴射を可能とする。このエアゾール内容物の噴射に於いては、通常の内容物噴射と全く同様に行うことができ、トリガー(13)の引き具合による押釦(7)の押し下げ量に注意する等の、不測の連続排出状態を発生させない為の注意は一切不要で、安全で手軽なエアゾール装置の使用が可能となる。
【0025】
次に、エアゾール内容物の使用を完了しエアゾール装置を廃棄する場合には、通常時の使用と同様にトリガー(13)を引いてエアゾール内容物を噴射状態とした後、図1、図3、に示す如く、挿通孔(15)に爪楊枝等の介在物(14)を挿通する。この介在物(14)の挿通によりトリガー(13)の復元は阻止され、エアゾール内容物の噴射は継続し、エアゾール内容物の全量噴射が可能となり、エアゾール装置の安全な廃棄が可能となる。
【0026】
また、本発明のエアゾール容器の内容物排出装置は、頭髪用品、化粧品、消臭・制汗剤、その他の人体用品、殺虫剤、コーティング剤、クリーナー、その他の家庭用品、工業用品、自動車用品、食品等のエアゾール製品に用いる事ができる。そして、頭髪用品として、ヘアースプレー、ヘアートリートメント、ヘアースタイリングフォーム、ヘアーシャンプー・リンス、酸性染毛剤、酸化型2剤タイプ永久染毛剤、カラースプレー・脱色剤、パーマ剤、育毛剤、ヘアートニック、寝癖直しスプレー、髪用フレグランス等に用いる事ができる。
【0027】
また、化粧品として、シェービングフォーム、アフターシェーブローション、香水・オーデコロン、洗顔料、日焼け止め、ファンデーション、脱毛・脱色剤、浴用剤等に用いる事ができる。
【0028】
また、消臭・制汗剤としては、制汗剤、消臭剤、ボディシャンプー等に用いる事ができる。また、その他の人体用品としては、筋肉消炎剤、皮膚疾患予防剤、皮膚疾患治療剤、水虫薬、害虫忌避剤、清拭剤、口腔清涼剤、口腔歯磨き剤、傷薬、やけど治療剤等に用いる事ができる。
【0029】
また、殺虫剤としては、空間殺虫剤、ゴキブリ殺虫剤、園芸用殺虫剤、殺ダニ剤、不快害虫剤等に用いる事ができる。また、コーティング剤としては、家庭用塗料、自動車用塗料、アンダーコーテング等に用いる事ができる。
【0030】
また、クリーナーとしては、ガラスクリーナー、硬質表面洗浄剤、浴用クリーナー、床・家具艶だしクリーナー、靴・皮革クリーナー、ワックス艶だし剤等に用いる事ができる。また、その他の家庭用品としては、室内消臭剤、トイレ用消臭剤、防水剤、洗濯糊、除草剤、衣類用防虫剤、防炎剤、除菌剤等に用いる事ができる。
【0031】
また、工業用としては、潤滑防錆剤、接着剤、金属探傷剤、離型剤、コーキング剤等に用いる事ができる。また、自動車用としては、防曇剤、解氷剤、エンジンクリーナー等に用いる事ができる。その他、動物用品、趣味娯楽用品、食品、例えばコーヒー、ジュース、クリーム、チーズ等に用いる事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】内容物の全量排出状態の断面図。
【図2】内容物の排出を行わない通常保存状態の断面図。
【図3】図1の平面図。
【符号の説明】
【0033】
1 エアゾール容器
3 ステム
5 固定カバー
6 内壁
7 押釦
10 ノズル
11 ステム接続部
12 軸支部
13 トリガー
14 介在物
15 挿通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器の上部に固定した固定カバーの対向する内壁間に、エアゾール容器のステムに接続した押釦を配置し、この押釦のノズルとはステム接続部を介した端部を固定カバーの内壁に軸支し、この軸支部とはステム接続部を介したノズル側にトリガーを突出してステムの押圧を可能としたものに於いて、トリガーを引きステムを押圧したエアゾール内容物の噴射可能状態で、押釦の上面に介在物を配置固定するための挿通孔を固定カバーの内壁に形成し、介在物によって押釦の継続的押圧を可能としたことを特徴とするトリガー式エアゾール容器の内容物排出装置。
【請求項2】
介在物は、爪楊枝であることを特徴とする請求項1記載のトリガー式エアゾール容器の内容物排出装置。
【請求項3】
介在物は、硬質材製の棒状物であることを特徴とする請求項1記載のトリガー式エアゾール容器の内容物排出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−89091(P2006−89091A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−277387(P2004−277387)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000222129)東洋エアゾール工業株式会社 (77)
【Fターム(参考)】