説明

トリム、ウエザストリップ及びそれらの製造方法

【課題】トリム部内側への突出による不具合をより確実に抑制し、インサートへの悪影響を防止することのできるトリム、ウエザストリップ、及びそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】ウエザストリップ4は、トリム部5及びシール部6を備える。トリム部5は、車内側側壁11、車外側側壁12及び連結部13を備え、その内部には金属製のインサート14が埋設されている。インサート14は骨片部14aと各骨片部14a同士を連結するセンターボンド部14bとを備える。連結部13のうち、フランジ23側の面に、センターボンド部14bに対応する区間において複数の条溝41が形成されている。当該条溝41は、押出工程に際し、ダイス31の成形孔32に形成された凸条42を通過することで形成される。通過の際に、未加硫ゴムがセンターボンド部14bに圧着させられ、内側部分の気化成分や気泡が、脱気されたり別の部位へ押しやられたりする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリム、ウエザストリップ及びそれらの製造方法に係り、特に、トリム又はトリム部内にインサートが埋設されてなるものに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車等の車両のドア開口周縁のフランジにはトリム又はトリム部を有したウエザストリップが設けられる。以下、ウエザストリップを例にとり説明する。ウエザストリップは、ドア開口周縁のフランジに対し嵌め込まれることによって保持されるトリム部と、前記トリム部から突出して設けられた中空状のシール部とを備えている。トリム部は、車内側側壁、車外側側壁及び両側壁を連結する連結部を備え、断面略U字形をなす。なお、トリム部の側壁の内面には、内側に向かって延びる保持リップ部が一体形成されている。
【0003】
また、トリム部の内部には、例えば金属製のインサートが埋設されている。図8に示すように、インサート14は、互いに略平行に配設された複数の短冊状の骨片部14aと、前記連結部内に位置し、前記各骨片部14a同士を連結するセンターボンド部14bとを備える。
【0004】
ウエザストリップの取付に際しては、トリム部がフランジに嵌め込まれ、基本的には前記保持リップ部による弾性力、或いは、前記インサートの緊縛力等に基づいて取付状態が維持されるようになっている。そして、ドア閉時には、ドアの縁部が前記シール部と当接し、前記シール部が潰れ変形することによって、ドアとボディとの間がシールされる。かかるウエザストリップのうち、長手方向の多くの部分、或いは、全部が、所謂押出成形法によって成形される。
【0005】
ところで、ウエザストリップの本体がゴム材料で構成される場合、押出後に加硫工程を経ることとなるのであるが、当該押出時又は加硫の際に、前記インサートとゴム材料との間に気泡が介在することがある。かかる気泡が脱気されないままだと、図9に示すように、インサート14のセンターボンド部14bと、トリム部の内側の連結部(肉部)130との間に空隙131が形成され、肉部が内側に突出してしまうおそれがある。また、このような空隙131の形成は、加硫後、トリム部の曲げ加工が施される際に起こることもある。そして、このように空隙130が形成されてしまい、内側に突出してしまうと、フランジへの取付に支障が生じたりするといった不具合が起こるおそれがある。尚、かかる不具合はゴム材料以外の場合であっても起こりうる。
【0006】
これに対し、連結部の内側から、インサートに達する細孔を所定間隔毎に列設する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この技術によれば、細孔を介してガスの外部への抜けが許容されることとなる。
【特許文献1】特許第3579835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一旦はガスが抜けたとしても、ボンド部と連結部との間には隙間があるため、曲げ加工時等に再度空気が入り込むおそれがある。すなわち、細孔が形成されていたとしても、依然として突出による不具合が懸念される。また、細孔を介して、水分等がインサートにまで浸入するおそれがあり、この場合にはインサートが腐食してしまうという不具合が生じるおそれがある。さらに、細孔は、所定間隔毎に形成されるものであるため、必ずしも突出している部分に対応して細孔が形成されないケースもある。つまり、上記技術では必ずしも突出による不具合を解消できるとはいえない。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、空隙等によるトリム部内側への突出による不具合をより確実に抑制することができ、かつ、インサートへの悪影響を防止することのできるトリム、ウエザストリップ及びそれらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0010】
手段1.車両のドア開口周縁のフランジに保持され、車内側側壁、車外側側壁及び両側壁を連結する連結部を備える断面略U字形のトリム部と、前記トリム部から突出して設けられ、ドア閉時にドアの周縁が押付けられる中空状のシール部とを有し、前記トリム部には、その長手方向に沿ってインサートが埋設され、当該インサートは、互いに略平行に配設された複数の短冊状の骨片部と、前記連結部内に位置し、前記各骨片部同士を連結するボンド部とを備えたウエザストリップであって、
前記連結部のうち、前記フランジ側の面に、前記ボンド部に対応するようにして凹部又は複数の条溝を設けたことを特徴とするウエザストリップ。
【0011】
上記手段1によれば、ウエザストリップのトリム部の連結部のうち、フランジ側の面に、インサートのボンド部に対応するようにして凹部又は複数の条溝が設けられている。このため、トリム部が断面略U字形に形成される際(例えば曲げ加工が施される際)に、凹部又は複数の条溝が形成されている部位は薄肉となっているため、つまり、従来存在していた肉部が、凹部又は条溝の形成されている分だけ存在していないため、凹部又は条溝の存在しない厚肉部が曲げの妨げとなりにくく、ボンド部よりもフランジ側の連結部(肉部)のフランジ側(内側)への突出を起こりにくくすることができる。また、「前記ウエザストリップがゴム材料により構成され、しかも、凹部又は複数の条溝が前記ゴム材料の未加硫段階で設けられている」場合には、未加硫段階で、凹部又は複数の条溝に相当する部位がいわばしごかれることとなるため、ボンド部よりも内側部分の未加硫ゴム中の気化成分や気泡が、脱気されたり、別の部位へ押しやられたりしやすい。また、ボンド部に対し比較的強く圧着させられやすい。そのため、上記フランジ側の連結部(肉部)のフランジ側(内側)への突出をより一層起こりにくくすることができる。その結果、内側への突出による不具合をより確実に抑制することができる。また、連結部に孔等が形成される訳ではないので、インサートの腐食等の悪影響を防止することもできる。
【0012】
手段2.車両のドア開口周縁のフランジに保持され、車内側側壁、車外側側壁及び両側壁を連結する連結部を備える断面略U字形のトリム部と、前記トリム部から突出して設けられ、ドア閉時にドアの周縁が押付けられる中空状のシール部とを有し、前記トリム部には、その長手方向に沿ってインサートが埋設され、当該インサートは、互いに略平行に配設された複数の短冊状の骨片部と、前記連結部内に位置し、前記各骨片部同士を連結するボンド部とを備えるウエザストリップを製造するためのウエザストリップの製造方法であって、
前記インサートを供給しつつ、押出用ダイスの開口部から高分子材料を押出す押出工程と、押出された高分子材料を固化させる固化工程とを具備し、前記押出工程に際し、前記連結部に相当する部分のうち、前記フランジ側の面に、前記ボンド部に対応するようにして凹部又は複数の条溝を形成するようにしたことを特徴とするウエザストリップの製造方法。
【0013】
手段2によれば、押出工程に際し、連結部に相当する部分のうち、フランジ側の面に、ボンド部に対応するようにして凹部又は複数の条溝が形成される。従って、上記手段1で述べた作用効果と同様の作用効果が奏される。特に、押出工程に際し、凹部又は複数の条溝に相当する部位がいわばしごかれることとなるため、ボンド部よりも内側部分の高分子材料中の気化成分や気泡が、脱気されたり、別の部位へ押しやられたりしやすく、また、ボンド部に対し比較的強く圧着させられやすい。そのため、上記フランジ側の連結部(肉部)のフランジ側(内側)への突出をより一層起こりにくくすることができ、しかもインサートの腐食等の悪影響を防止することもできる。
【0014】
手段3.前記高分子材料がゴム材料の場合には、前記固化工程は、未加硫ゴム材料を加硫する加硫工程であり、
前記高分子材料がオレフィン系熱可塑性エラストマーの場合には、前記固化工程は可塑化状態にあるオレフィン系熱可塑性エラストマーを冷却する冷却工程であることを特徴とする手段2に記載のウエザストリップの製造方法。
【0015】
高分子材料がゴム材料であるかオレフィン系熱可塑性エラストマーであるかによって固化工程が相違する。手段3によれば、高分子材料がゴム材料の場合には、前記固化工程は、未加硫ゴム材料を加硫する加硫工程となり、前記高分子材料がオレフィン系熱可塑性エラストマーの場合には、前記固化工程は可塑化状態にあるオレフィン系熱可塑性エラストマーを冷却する冷却工程となる。
【0016】
手段4.車両のドア開口周縁のフランジに保持され、車内側側壁、車外側側壁及び両側壁を連結する連結部を備える断面略U字形のトリム部と、前記トリム部から突出して設けられ、ドア閉時にドアの周縁が押付けられる中空状のシール部とを有し、前記トリム部には、その長手方向に沿ってインサートが埋設され、当該インサートは、互いに略平行に配設された複数の短冊状の骨片部と、前記連結部内に位置し、前記各骨片部同士を連結するボンド部とを備えるウエザストリップを製造するためのウエザストリップの製造方法であって、
前記トリム部に相当する部位の両先端部分を拡開させた状態で、前記インサートを供給しつつ、押出用ダイスの開口部から未加硫ゴム材料を押出す押出工程と、
押出された未加硫ゴム材料を加硫する加硫工程と、
前記トリム部に相当する部位の両先端部分を窄めるようにして曲げることで、断面略U字状に形成する曲げ工程とを具備し、
前記押出工程に際し、前記連結部に相当する部分のうち、前記フランジ側の面に、前記ボンド部に対応するようにして凹部又は複数の条溝を形成するようにしたことを特徴とするウエザストリップの製造方法。
【0017】
手段4においても、上記手段1,2等と同様の作用効果が奏される。特に、手段3では、押出の際には拡開されていたトリム部に相当する部位の両先端部分が、窄められるようにして曲げられることで、断面略U字状に形成される。当該曲げに際し、凹部又は複数の条溝が形成されている部位が薄肉となっているため、凹部又は条溝の存在しない厚肉部が曲げの妨げとなりにくく、ボンド部よりもフランジ側の連結部(肉部)のフランジ側(内側)への突出を一層起こりにくくすることができる。
【0018】
手段5.前記押出用ダイスの開口部に凸部又は複数の凸条を形成しておくことで、押出に伴い、前記凹部又は複数の条溝を形成するようにしたことを特徴とする手段2乃至4のいずれかに記載のウエザストリップの製造方法。
【0019】
手段5によれば、押出用ダイスの開口部に形成された凸部又は複数の凸条を未加硫ゴム材料が通過することで、押出に伴い、前記凹部又は複数の条溝が形成される。このため、上述したしごかれることによる作用効果がより確実に奏されることとなる。しかも、単にダイスの開口部に凸部等を形成すればよく、別途の機構を設ける必要がなく、コスト面、設備面でも有利である。
【0020】
手段6.前記押出用ダイスの開口部に隣接又は近接した位置に、凹部又は複数の条溝形成用の治具を配設し、当該治具を押出される未加硫ゴムに押し当てることで、前記凹部又は複数の条溝を形成するようにしたことを特徴とする手段2乃至4のいずれかに記載のウエザストリップの製造方法。
【0021】
手段6によれば、押出用ダイスの開口部に隣接又は近接した位置に配設された治具が、押出される未加硫ゴムに押し当てられることで、前記凹部又は複数の条溝が形成される。このため、上述したしごかれることによる作用効果がより確実に奏されることとなる。しかも、既存の押出用ダイスを用いればよいため、別途加工等の必要がない。
【0022】
手段7.前記治具は、回転可能に支持されたローラであることを特徴とする手段6に記載のウエザストリップの製造方法。
【0023】
手段7によれば、ローラの回転により、削ったりする場合に比べて無理なく凹部又は複数の条溝を形成することができる。
【0024】
手段8.車両のドア開口周縁のフランジに保持され、車内側側壁、車外側側壁及び両側壁を連結する連結部を備える断面略U字形のトリムであって、
該トリムには、その長手方向に沿ってインサートが埋設され、当該インサートは、互いに略平行に配設された複数の短冊状の骨片部と、前記連結部内に位置し、前記各骨片部同士を連結するボンド部とを備え、
前記連結部のうち、前記フランジ側の面に、前記ボンド部に対応するようにして凹部又は複数の条溝を設けたことを特徴とするトリム。
【0025】
手段8によれば、トリムに関し、上記手段1と同様の作用効果が奏される。
【0026】
手段9.車両のドア開口周縁のフランジに保持され、車内側側壁、車外側側壁及び両側壁を連結する連結部を備える断面略U字形のトリムであって、その内部には、その長手方向に沿ってインサートが埋設され、当該インサートは、互いに略平行に配設された複数の短冊状の骨片部と、前記連結部内に位置し、前記各骨片部同士を連結するボンド部とを備えるトリムの製造方法であって、
前記トリムの略U字形の両先端部分を拡開させた状態で、前記インサートを供給しつつ、押出用ダイスの開口部から高分子材料を押出す押出工程と、
押出された高分子材料を固化させる固化工程と、
前記両先端部分を窄めるようにして曲げることで、断面略U字状に形成する曲げ工程とを具備し、
前記押出工程に際し、前記連結部に相当する部分のうち、前記フランジ側の面に、前記ボンド部に対応するようにして凹部又は複数の条溝を形成するようにしたことを特徴とするトリムの製造方法。
【0027】
手段9によれば、トリムの製造に関して、上述した手段4等と同様の作用効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図2に示すように、自動車1の側方のドア2に対応するボディ側のドア開口3周縁には、ウエザストリップ4が設けられる。本実施形態のウエザストリップ4は、ドア開口3のうち、下部を除く周縁にわたって取付けられ、全て押出成形法によって成形されている。
【0030】
図1に示すように、ウエザストリップ4は、トリム部5及びシール部6を備えている。トリム部5は、車内側側壁11、車外側側壁12及び両側壁11,12を連結する断面湾曲形状をなす連結部13を備えており、全体として略U字形をなしている。トリム部5は、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合)ソリッドゴムによって構成されており、その内部には、金属製のインサート14が埋設されている。
【0031】
車外側側壁12の内面には、トリム部5の内側(車両幅方向車内側)に向かって延びる複数の保持リップ部15が一体形成されている。また、車内側側壁11の内面には、トリム部5の内側(車両幅方向車外側)に向かって延びる保持リップ部16が一体形成されている。さらに、前記連結部13には図示しないガーニッシュ等の内装品の端部を覆うためのカバーリップ17が一体形成されている。
【0032】
さらに、前記シール部6は、車外側側壁12に対し車外側に突出して設けられており、中空状をなしている。該シール部6は、EPDMスポンジゴムによって構成されている。尚、シール部6は、EPDMスポンジゴムを主体として構成されその表層側にEPDMソリッドゴムの被膜が形成されるようにして構成されていてもよい。そして、ドア2閉時には、シール部6が潰れ変形することで、ドア2と自動車1のボディとの間がシールされるようになっている。
【0033】
上記ウエザストリップ4は、トリム部5がボディ側のドア開口3周縁(図2参照)に嵌め込まれることによって取付けられる。より詳しく説明すると、図1に示すように、ボディは、インナパネル21及びアウタパネル22を備えており、基本的にはこれら両パネル21,22の周縁部分が接合されることにより、フランジ23が形成されている(勿論、強度を高めるべく板状のリーンフォースが両パネル21,22間に設けられていてもよい)。そして、前記トリム部5がフランジ23に嵌め込まれ、基本的には前記保持リップ部15,16による弾性力、或いは、前記インサート14の緊縛力等に基づいて取付状態が維持されるようになっている。
【0034】
本実施形態におけるインサート14としては、図8に示すようなセンターボンドタイプが用いられる。すなわち、インサート14は、互いに略平行に配設された複数の短冊状の骨片部14aと、前記各骨片部14a同士を連結するセンターボンド部14bとを備える。そして、当該インサート14のうち、骨片部14aは、トリム部5の長手方向に沿って所定間隔毎に埋設され、後述する曲げ工程においてトリム部5ともども略U字状に曲げられる。一方、センターボンド部14bは、トリム部5の長手方向に沿って連続して前記連結部13内のほぼ中央に位置するようにして埋設される。
【0035】
また、図5(c)に示すように、本実施形態のウエザストリップ4にあっては、連結部13のうち、前記フランジ23側の面(内側面)に、センターボンド部14bに対応する区間において複数の条溝41が形成されている。そして、当該条溝41が形成された部位は、他の部位に比べて薄肉となっている。
【0036】
さて、図3は、上述したウエザストリップ4を製造するための工程を説明する製造工程図である。同図に示すように、本実施形態のウエザストリップ4は、押出工程、加硫工程、曲げ工程及び裁断工程を経ることで製造される。
【0037】
図4は、押出工程において用いられる押出装置を構成する押出用のダイス31を模式的に示す図である。ダイス31は、前記ウエザストリップ4を成形するための開口部としての成形孔32を有しており、この成形孔32から、インサート14が連続的に供給されつつ、未加硫のゴム材料(以下、単に「未加硫ゴム」という)が押し出されるようになっている。また、押出に際しては、前記トリム部5に相当する部位が、同図に示すように、当初その両先端部分を拡開させた状態で押し出されるよう、前記成形孔32も扁平形状となっている。さらに、前記ダイス31の成形孔32には、前記条溝41を形成するための複数の凸条42が形成されている(図5(a)参照)。
【0038】
次に、上述したウエザストリップ4の製造方法について、製造に伴って奏される作用とともに説明する。上記のとおり、押出工程においては、押出装置を構成するダイス31の成形孔32から、インサート14が連続的に供給されつつ、未加硫ゴムが押し出される。このとき、図5(b)に示すように、前記トリム部5に相当する部位が、その両先端部分が拡開させられた状態で押し出される。また、未加硫ゴムが、前記凸条42を通過する際に、他の部位(凸条42の存在しない部位)に比べて、いわば「しごかれる」こととなり、当該「しごき」によって、センターボンド部14bよりも内側(図5(b)では上側)部分の未加硫ゴム中の気化成分や気泡が、脱気されたり、別の部位へ押しやられたりすることとなる。また、これとともに、未加硫ゴムが、前記凸条42を通過する際にセンターボンド部14bに対し比較的強く圧着させられる。
【0039】
続いて、押出された未加硫ゴムが、図示しない加硫装置(加熱ゾーン)中へ連続的に案内され、当該加硫装置において加硫が施される。
【0040】
さらに、加硫の施されたウエザストリップ4前駆体が、図示しない曲げ加工装置へ案内され、トリム部5に相当する部位の両先端部分を窄めるようにして曲げ加工が施される。これにより、断面略U字状のトリム部5が形成される。このとき、上述したように、センターボンド部14bよりも内側部分の気化成分等が、脱気されたり、別の部位へ押しやられたりしているため、従来技術で説明したような空隙が形成されにくい。そればかりか、ゴム成分が、前記凸条42を通過する際にセンターボンド部14bに比較的強く圧着させられている。従って、たとえ曲げ加工が施されたとしても、内側への突出を起こりにくくすることができる。その上、条溝41が形成されている部位は薄肉となっているため(つまり、従来存在していた肉部が、条溝41の形成されている分だけ存在していないため)、条溝41の存在しない厚肉部が曲げの妨げとなりにくく、曲げ加工が比較的行いやすく、しかも突出がより一層起こりにくい。
【0041】
その後、図示しない裁断装置において、所定長に裁断されることで、上述したウエザストリップ4が得られる。
【0042】
以上詳述したように、本実施形態によれば、ウエザストリップ4のトリム部5の連結部13のうち、フランジ23側の面に、インサート14のセンターボンド部14bに対応するようにして複数の条溝41が設けられる。このため、加硫後、曲げ加工によりトリム部5が断面略U字形に形成される際に、条溝41が形成されている部位は薄肉となっているため、比較的容易に曲げることができ、しかも、センターボンド部14bよりもフランジ23側の連結部13(肉部)のフランジ23側(内側)への突出を起こりにくくすることができる。
【0043】
また、本実施形態では、押出工程に際し、未加硫ゴムが凸条42を通過する際に「しごかれる」ことにより、センターボンド部14bよりも内側部分の気化成分や気泡が、脱気されたり、別の部位へ押しやられたりするとともに、未加硫ゴムがセンターボンド部14bに対し比較的強く圧着させられる。そのため、上記フランジ23側の連結部13(肉部)のフランジ23側(内側)への突出をより一層起こりにくくすることができる。結果として、内側への突出による不具合をより確実に抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態では、連結部13に孔等が形成される訳ではないので、インサート14に水等が浸入して腐食等が起こるという不具合を防止することもできる。
【0045】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0046】
(a)上記実施形態では、ダイス31の成形孔32に凸条42を形成することで、条溝41を形成することとしたが、これ以外にも押出工程に際し、条溝41等を形成することとしてもよい。例えば、図6に示すように、ダイス51の成形孔52に隣接又は近接した位置に、条溝形成用の治具(例えば、周面に複数の凸条53を有し、回転可能に支持されたローラ54)を配設し、当該ローラ54の凸条53を押出される未加硫ゴムに押し当てることで、複数の条溝を形成するようにしてもよい。
【0047】
(b)また、上記実施形態では、複数の条溝41を形成することとしたが、これに代えて、センターボンド部14bに対応する単一の凹部61を形成することとしてもよい。当該凹部61を形成することによっても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0048】
(c)上記実施形態における条溝41や、上記(b)の凹部61の幅は、特に限定されるものではないが、突出をより一層確実に防止するという観点からは、センターボンド部14bの幅と同程度の幅を有しているのが望ましい。
【0049】
(d)上記実施形態では、(サイドフロント)ドア2に対応するボディ側のドア開口3周縁に設けられるウエザストリップ4及びその製造方法について具体化しているが、リヤドア、バックドア、ラッゲージドア(トランクリッド)、ルーフドア(スライディングルーフパネル)等の他のドアの開口周縁に設けられるトリム又はウエザストリップ、それらの製造方法について適用することも可能である。尚、トリムとは、ウエザストリップの中空状のシール部のない、いわばトリム部のみからなるものを指す。
【0050】
(e)上記実施形態では、トリム部5をソリッドゴムにより構成し、シール部6をスポンジゴムにより構成することとしているが、両者を同一材料により構成することとしてもよい。また、トリム部5を微発泡ゴム等により構成してもよい。トリム部5に発泡剤が混入されていると、加硫時により気泡が生じやすいが、その場合であっても、上記の構成を採用することで、内側への突出を効果的に抑制することができる。さらに、ゴム材料としてEPDMを例示しているが、IR(イソプレンゴム)、CR(クロロプレンゴム)等の他のゴム材料を用いてもよい。さらにまた、高分子材料としては、ゴム材料の他に、オレフィン系等の熱可塑性エラストマーや軟質PVC等の樹脂材料を用いることができる。
【0051】
(f)上記実施形態では、ウエザストリップ4が、ドア開口3の周縁の下部を除くほぼ全周にわたって取付けられることとしているが、完全に全周にわたって取付けられることとしてもよい。また、必ずしも全周或いはほぼ全周でなくてもよく、例えば部分的に取付けられるトリム又はウエザストリップであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】一実施形態におけるウエザストリップを示す断面図である。
【図2】自動車を示す斜視図である。
【図3】ウエザストリップを製造するための工程を説明する製造工程図である。
【図4】ウエザストリップの押出成形に際し用いられるダイスを模式的に示す図である。
【図5】(a)はダイスの成形孔を示す拡大図であり、(b)は押出直後の断面図であり、(c)は曲げ加工後のウエザストリップの断面図である。
【図6】別の実施形態におけるダイス及びローラを模式的に示す図である。
【図7】別の実施形態におけるウエザストリップを示す断面図である。
【図8】曲げ加工前のインサートを示す部分平面図である。
【図9】従来の不具合を説明するためのウエザストリップの断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1…車両としての自動車、2…ドア、3…ドア開口、4…ウエザストリップ、5…トリム部、6…シール部、11…車内側側壁、12…車外側側壁、13…連結部、23…フランジ、31,51…ダイス、32,52…成形孔、41…条溝、42…凸条、61…凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドア開口周縁のフランジに保持され、車内側側壁、車外側側壁及び両側壁を連結する連結部を備える断面略U字形のトリム部と、
前記トリム部から突出して設けられ、ドア閉時にドアの周縁が押付けられる中空状のシール部とを有し、
前記トリム部には、その長手方向に沿ってインサートが埋設され、当該インサートは、互いに略平行に配設された複数の短冊状の骨片部と、前記連結部内に位置し、前記各骨片部同士を連結するボンド部とを備えたウエザストリップであって、
前記連結部のうち、前記フランジ側の面に、前記ボンド部に対応するようにして凹部又は複数の条溝を設けたことを特徴とするウエザストリップ。
【請求項2】
車両のドア開口周縁のフランジに保持され、車内側側壁、車外側側壁及び両側壁を連結する連結部を備える断面略U字形のトリム部と、
前記トリム部から突出して設けられ、ドア閉時にドアの周縁が押付けられる中空状のシール部とを有し、
前記トリム部には、その長手方向に沿ってインサートが埋設され、当該インサートは、互いに略平行に配設された複数の短冊状の骨片部と、前記連結部内に位置し、前記各骨片部同士を連結するボンド部とを備えるウエザストリップを製造するためのウエザストリップの製造方法であって、
前記インサートを供給しつつ、押出用ダイスの開口部から高分子材料を押出す押出工程と、
押出された高分子材料を固化させる固化工程とを具備し、
前記押出工程に際し、前記連結部に相当する部分のうち、前記フランジ側の面に、前記ボンド部に対応するようにして凹部又は複数の条溝を形成するようにしたことを特徴とするウエザストリップの製造方法。
【請求項3】
前記高分子材料がゴム材料の場合には、前記固化工程は、未加硫ゴム材料を加硫する加硫工程であり、
前記高分子材料がオレフィン系熱可塑性エラストマーの場合には、前記固化工程は可塑化状態にあるオレフィン系熱可塑性エラストマーを冷却する冷却工程であることを特徴とする請求項2に記載のウエザストリップの製造方法。
【請求項4】
車両のドア開口周縁のフランジに保持され、車内側側壁、車外側側壁及び両側壁を連結する連結部を備える断面略U字形のトリム部と、
前記トリム部から突出して設けられ、ドア閉時にドアの周縁が押付けられる中空状のシール部とを有し、
前記トリム部には、その長手方向に沿ってインサートが埋設され、当該インサートは、互いに略平行に配設された複数の短冊状の骨片部と、前記連結部内に位置し、前記各骨片部同士を連結するボンド部とを備えるウエザストリップを製造するためのウエザストリップの製造方法であって、
前記トリム部に相当する部位の両先端部分を拡開させた状態で、前記インサートを供給しつつ、押出用ダイスの開口部から未加硫ゴム材料を押出す押出工程と、
押出された未加硫ゴム材料を加硫する加硫工程と、
前記トリム部に相当する部位の両先端部分を窄めるようにして曲げることで、断面略U字状に形成する曲げ工程とを具備し、
前記押出工程に際し、前記連結部に相当する部分のうち、前記フランジ側の面に、前記ボンド部に対応するようにして凹部又は複数の条溝を形成するようにしたことを特徴とするウエザストリップの製造方法。
【請求項5】
前記押出用ダイスの開口部に凸部又は複数の凸条を形成しておくことで、押出に伴い、前記凹部又は複数の条溝を形成するようにしたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載のウエザストリップの製造方法。
【請求項6】
前記押出用ダイスの開口部に隣接又は近接した位置に、凹部又は複数の条溝形成用の治具を配設し、当該治具を押出される未加硫ゴムに押し当てることで、前記凹部又は複数の条溝を形成するようにしたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載のウエザストリップの製造方法。
【請求項7】
前記治具は、回転可能に支持されたローラであることを特徴とする請求項6に記載のウエザストリップの製造方法。
【請求項8】
車両のドア開口周縁のフランジに保持され、車内側側壁、車外側側壁及び両側壁を連結する連結部を備える断面略U字形のトリムであって、
該トリムには、その長手方向に沿ってインサートが埋設され、当該インサートは、互いに略平行に配設された複数の短冊状の骨片部と、前記連結部内に位置し、前記各骨片部同士を連結するボンド部とを備え、
前記連結部のうち、前記フランジ側の面に、前記ボンド部に対応するようにして凹部又は複数の条溝を設けたことを特徴とするトリム。
【請求項9】
車両のドア開口周縁のフランジに保持され、車内側側壁、車外側側壁及び両側壁を連結する連結部を備える断面略U字形のトリムであって、
その内部には、その長手方向に沿ってインサートが埋設され、当該インサートは、互いに略平行に配設された複数の短冊状の骨片部と、前記連結部内に位置し、前記各骨片部同士を連結するボンド部とを備えるトリムの製造方法であって、
前記トリムの略U字形の両先端部分を拡開させた状態で、前記インサートを供給しつつ、押出用ダイスの開口部から高分子材料を押出す押出工程と、
押出された高分子材料を固化させる固化工程と、
前記両先端部分を窄めるようにして曲げることで、断面略U字状に形成する曲げ工程とを具備し、
前記押出工程に際し、前記連結部に相当する部分のうち、前記フランジ側の面に、前記ボンド部に対応するようにして凹部又は複数の条溝を形成するようにしたことを特徴とするトリムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−335090(P2006−335090A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−158670(P2005−158670)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】