説明

トルク発生装置

【課題】 軸線方向の長さを短くでき、かつ複数の部品を簡素な構造の単一ユニットとして構成できるトルク発生装置を得、トルク発生装置のコンパクト化及び組付け性の向上を同時に図る。
【解決手段】 外方端19と内方端21に鉤状の係止部23,25を有したぜんまいばね11と、ぜんまいばね11の渦中心空間41に挿通され内方端21の係止部25に係止するスリット39を有した巻芯13と、巻芯13を略同軸に配置させてぜんまいばね11を内部空間49に収容するとともに、周壁53の一部分を半径方向外方へ膨出させ膨出部55を形成し、ぜんまいばね11の外方端19の係止部23を係止する係止片57を膨出部55の内側に形成した円筒状のケース15と、を具備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発生させた回転力を他の機構へ付与可能とするトルク発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転動作する他の機構へ、回転力を助勢動として付与する補機に、トルク発生装置がある。トルク発生装置により回転力が付与される他の機構としては、例えば引き出された電線コードを自動で巻き取るコードリール装置や、巻き取り可能な構造の開閉体を、回転自在に支持された巻取りケージに巻き取る開閉装置等がある。
【0003】
例えば後者の開閉装置では、支持軸の軸線方向の一部分に、上記の巻取りケージが回転自在に外挿され、巻取りケージが外挿される以外の部分の支持軸には、トルク発生装置が設けられる。従来のトルク発生装置は、その主要部材がねじりコイルばねからなる。ねじりコイルばねは、支持軸に外挿され、一端が巻取りケージに固定され、他端が支持軸に固定される。したがって、開閉体が引出されて巻取りケージが回転すると、ねじりコイルばねが捩られ、その復元力が回転力となって蓄積される。このようにしてトルク発生装置に蓄積された回転力は、引出された開閉体の重量によって増大する巻取り負荷を、軽減する方向に作用し、開閉体の小さな力での巻取りを実現させていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のトルク発生装置は、その要部にねじりコイルばねを用いていたため、支持軸上に他の機構部材と並べて配設しなければならず、軸線方向の組付け長さが長くなり、その分の配設スペースを多くとる必要があった。例えば開閉装置の場合は、支持軸上に、巻取りケージ、ねじりコイルばね、及び駆動用モータを配設しなければならない場合もあり、このような構造では、軸線方向の組付けスペースが大きくなり、軸線方向の短いいわゆる幅の狭い開閉装置を製作することが難しかった。さらに、従来のトルク発生装置は、ねじりコイルばねの両端を、直接巻取りケージや支持軸に固定するため、組付け作業が煩雑となり、手間が掛かっていた。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、軸線方向の長さを短くでき、かつ複数の部品を簡素な構造の単一ユニットとして構成できるトルク発生装置を提供し、もって、トルク発生装置のコンパクト化及び組付け性の向上を同時に図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載のトルク発生装置300は、外方端19と内方端21に鉤状の係止部23,25を有したぜんまいばね11と、
該ぜんまいばね11の渦中心空間41に挿通され前記内方端21の係止部25に係止する切欠39を有した巻芯13と、
該巻芯13を略同軸に配置させて前記ぜんまいばね11を内部空間49に収容するとともに、前記ぜんまいばね11の外方端19の前記係止部23を係止する係止穴73を周壁53に穿設した円筒状のケース71と、
を具備したことを特徴とする。
【0007】
このトルク発生装置300では、例えば、巻芯13にねじりコイルばねを外挿した従来構造に比べ、軸線方向の長さが短くなる。また、トルク発生源となるぜんまいばね11がケース71に収容され、このケース71と巻芯13とがトルクの取出し部材として機能する。さらに、ケース側に係止部23を係止する係止構造が係止穴73のみによって形成される。そして、このトルク発生装置300によれば、簡素な構造の単一ユニットとして構成することができる。
【0008】
請求項2記載のトルク発生装置は、外方端19と内方端21に鉤状の係止部23,25を有したぜんまいばね11と、
該ぜんまいばね11の渦中心空間41に挿通され前記内方端21の係止部25に係止する切欠39を有した巻芯13と、
該巻芯13を略同軸に配置させて前記ぜんまいばね11を内部空間49に収容するとともに、周壁53の一部に前記ぜんまいばね11の外方端19の前記係止部23を係止する切り起こし穴63を形成した円筒状のケース53と、
を具備したことを特徴とする。
【0009】
このトルク発生装置では、例えば、巻芯にねじりコイルばねを外挿した従来構造に比べ、軸線方向の長さが短くなる。また、トルク発生源となるぜんまいばね11がケース61に収容され、このケース61と巻芯13とがトルクの取出し部材として機能する。さらに、切り起こし片65が残り、この切り起こし片65が切り起こし穴63の補強材として作用する。そして、このトルク発生装置によれば、簡素な構造の単一ユニットとして構成することができる。
【0010】
請求項3記載のトルク発生装置100は、外方端19と内方端21に鉤状の係止部23,25を有したぜんまいばね11と、
該ぜんまいばね11の渦中心空間41に挿通され前記内方端21の係止部25に係止する切欠39を有した巻芯13と、
該巻芯13を略同軸に配置させて前記ぜんまいばね11を内部空間49に収容するとともに、周壁53の一部分を半径方向外方へ膨出させ膨出部55を形成し、前記ぜんまいばね11の前記外方端19の係止部23を係止する係止片57を前記膨出部55の内側に形成した円筒状のケース15と、
を具備したことを特徴とする。
【0011】
このトルク発生装置100では、例えば、巻芯13にねじりコイルばねを外挿した従来構造に比べ、軸線方向の長さが短くなる。また、トルク発生源となるぜんまいばね11がケース15に収容され、このケース15と巻芯13とがトルクの取出し部材として機能する。さらに、係止片57が残り、この係止片57が補強材として作用するとともに、ぜんまいばね11の外方端19の係止部23が膨出部55の内側に進入し、ケース15に干渉しなくなる。そして、このトルク発生装置100によれば、簡素な構造の単一ユニットとして構成することができる。
【0012】
請求項4記載のトルク発生装置は、外方端と内方端に切欠およびまたは係止穴を有したぜんまいばねと、
該ぜんまいばねの渦中心空間に挿通され前記内方端の切欠およびまたは係止穴に係止する突起を有した巻芯と、
該巻芯を略同軸に配置させて前記ぜんまいばねを内部空間に収容するとともに、前記ぜんまいばねの前記外方端の切欠およびまたは係止穴に係止する突起を周壁に設けた円筒状のケースと、
を具備したことを特徴とする。
【0013】
このトルク発生装置では、例えば、巻芯にねじりコイルばねを外挿した従来構造に比べ、軸線方向の長さが短くなる。また、トルク発生源となるぜんまいばねがケースに収容され、このケースと巻芯とがトルクの取出し部材として機能する。さらに、ケース側及び巻芯に突起が形成され、ぜんまいばねに切欠およびまたは係止穴を設けて、これら突起に係止する係止構造で構成される。この係止構造によれば、例えば、ケースの突起を内方に突出させ、巻芯の突起を外方に突出させる構成とすることで、ぜんまいばねの外方端と内方端は、ぜんまいばねの最外周の外方と最内周の内方に突出することなく、互いが係止する構造を得られる。そして、このトルク発生装置によれば、簡素な構造の単一ユニットとして構成することができる。
【0014】
請求項5記載のトルク発生装置100は、請求項1,2,3,4のいずれか1つに記載のトルク発生装置において、前記ケース15の軸線方向の少なくとも一端に、前記ぜんまいばね11を挿入する開口部43が設けられたことを特徴とする。
【0015】
このトルク発生装置100では、巻回状態のぜんまいばね11が、ケース15の開口部43を介して内部空間49へ軸線方向に挿入可能となる。
【0016】
請求項6記載のトルク発生装置100は、請求項1,2,3,4,5のいずれか1つに記載のトルク発生装置において、前記巻芯13は、中空パイプ形状に形成され、その中空部に被取付軸27が挿通して取り付けられるとともに、前記巻芯13には該巻芯13を前記被取付軸27に取り付けるための固定具用固定穴29が径方向に貫通して穿設され、かつ該固定具用固定穴29が前記巻芯13の中心に対し前記ぜんまいばね11のばね材厚み分偏芯して穿設されていることを特徴とする。
【0017】
このトルク発生装置100では、巻芯13がパイプ形状となることで、被取付軸27へ外挿可能となり、特別な取付構造を必要とせずに被取付軸27への取り付けが可能となる。また、このトルク発生装置100では、巻芯13の中心がぜんまいばね材17の厚み分、巻芯13の中心からずれるが、その分固定具用固定穴29がずれて巻芯13に配設されているため、巻芯13が被取付軸27に取り付けられると、ぜんまいばね11の中心が被取付軸27の中心に略一致する。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る請求項1記載のトルク発生装置によれば、外方端と内方端に鉤状の係止部を有したぜんまいばねと、このぜんまいばねの渦中心空間に挿通され内方端の係止部に係止する切欠を有した巻芯と、この巻芯を同軸に配置させてぜんまいばねを内部空間に収容するとともに、ぜんまいばねの外方端の係止部を係止する係止穴を周壁に穿設した円筒状のケースとを備えたので、例えば、巻芯にねじりコイルばねを外挿した従来構造に比べ、軸線方向の長さを短くすることができ、装置をコンパクトに構成することができる。そして、このトルク発生装置によれば、簡素な構造の単一ユニットとして構成することができる。
【0019】
また、トルク発生源となるぜんまいばねがケースに収容され、このケースと巻芯とがトルクの取出し部材として機能するので、他の機構への付設を容易にし、組付け性を良好にすることができるとともに、メンテナンス時等の交換も容易にすることができる。
さらに、ケース側に係止部を係止する係止構造が係止穴のみからなるので、ケースを容易に製造することができる。
【0020】
請求項2記載のトルク発生装置によれば、上記請求項1の効果と同様に、例えば、巻芯にねじりコイルばねを外挿した従来構造に比べ、軸線方向の長さを短くすることができ、装置をコンパクトに構成することができる。そして、このトルク発生装置によれば、簡素な構造の単一ユニットとして構成することができる。
また、トルク発生源となるぜんまいばねがケースに収容され、このケースと巻芯とがトルクの取出し部材として機能するので、他の機構への付設を容易にし、組付け性を良好にすることができるとともに、メンテナンス時等の交換も容易にすることができる。
さらに、周壁の一部に、ぜんまいばねの外方端の係止部を係止する切り起こし穴を形成したので、係止穴のみを穿設する場合に比べ、切り起こし片が残る分ケース強度の低下を防止することができる。
【0021】
請求項3記載のトルク発生装置によれば、上記同様に、例えば、巻芯にねじりコイルばねを外挿した従来構造に比べ、軸線方向の長さを短くすることができ、装置をコンパクトに構成することができる。そして、このトルク発生装置によれば、簡素な構造の単一ユニットとして構成することができる。
また、トルク発生源となるぜんまいばねがケースに収容され、このケースと巻芯とがトルクの取出し部材として機能するので、他の機構への付設を容易にし、組付け性を良好にすることができるとともに、メンテナンス時等の交換も容易にすることができる。
さらに、周壁の一部分を半径方向外方へ膨出させ、膨出部を形成するとともに、この膨出部の内側にぜんまいばねの外方端の係止部を係止する係止片を形成したので、ケース強度の低下を防止することができるとともに、ぜんまいばねの外方端の係止部を、ケースに干渉させずに内部空間へ挿入でき、かつ同時に係止片に係止部を係止することができる。これにより、煩雑なぜんまいばねの組付け作業性を向上させることができる。
【0022】
請求項4記載のトルク発生装置によれば、例えば、巻芯にねじりコイルばねを外挿した従来構造に比べ、軸線方向の長さが短くなる。また、トルク発生源となるぜんまいばねがケースに収容され、このケースと巻芯とがトルクの取出し部材として機能する。さらに、ケース側及び巻芯に突起が形成され、ぜんまいばねに切欠およびまたは係止穴を設けて、これら突起に係止する係止構造で構成される。この係止構造によれば、例えば、ケースの突起を内方に突出させ、巻芯の突起を外方に突出させる構成とすることで、ぜんまいばねの外方端と内方端は、ぜんまいばねの最外周の外方と最内周の内方に突出することなく、互いが係止する構造を得られる。そして、このトルク発生装置によれば、簡素な構造の単一ユニットとして構成することができる。
【0023】
請求項5記載のトルク発生装置によれば、ケースの軸線方向の少なくとも一端に、ぜんまいばねを挿入する開口部を設けたので、巻回状態のぜんまいばねを、軸線方向に挿入する容易な挿入組付け作業を可能にすることができる。
【0024】
請求項6記載のトルク発生装置によれば、巻芯が中空パイプ形状に形成されているので、被取付軸へ外挿することによる取り付けが可能となり、他の機構への取り付けを容易にすることができる。また、このトルク発生装置によれば、巻芯に穿設された固定具用固定穴がぜんまいばねのばね材厚み分偏芯しているので、ぜんまいばねの中心を、他の機構における被取付軸の中心に略一致させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係るトルク発生装置の好適な実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係るトルク発生装置の第一の実施の形態の分解斜視図、図2は図1に示したトルク発生装置の断面図、図3は被取付軸に取り付けられた状態のトルク発生装置の断面図、図4は巻芯の断面図、図5は第一の実施の形態の変形例を表すケースの斜視図である。
【0026】
第一の実施の形態によるトルク発生装置100は、ぜんまいばね11と、巻芯13と、ケース15とを主要な部材として備えている。ぜんまいばね11は、帯板状のばね材17を渦巻き状に巻いて形成される。素材としては、帯板のほか、線材が用いられてもよい。ぜんまいばね11は、渦巻きの外周側の端部である外方端19と、内周側の端部である内方端21とのそれぞれに係止部23,25を有している。係止部23,25は、先端を折り返した鉤状のフック形に形成されている。
【0027】
巻芯13は、例えば両端の開口した中空パイプ形状に形成される。巻芯13は、中空パイプ形状となることで、他の機構の被取付体、例えば図3に示す被取付軸27へ外挿可能となり、特別な取付構造を必要とせずに被取付軸27への取り付けが可能となる。これにより、トルク発生装置100は、他の機構への取り付けが容易に行えるようになっている。巻芯13には、ボルトやビス、リベット等の固定具用固定穴29が穿設されている。巻芯13は、被取付軸27に外挿され、被取付軸27の固定具用貫通穴31に固定具用固定穴29が一致され、これら両穴に貫通されたボルト33の先端にナット35が螺合されることで、被取付軸27に固定される。
【0028】
巻芯13には、一端側から軸線37に沿う方向で切り込まれた切欠としてのスリット39が形成されている。巻芯13は、ぜんまいばね11の渦中心空間41に挿入することで、スリット39の端部開口から係止部25を差し入れ可能にしている。スリット39に差し入れられた係止部25は、ぜんまいばね11の内方端21を巻芯13に巻きつけ可能にスリット39に係止する。
【0029】
ケース15は、軸線37方向の一端が開口部43となる略有底円筒状に形成される。このように、ケース15は、軸線方向の少なくとも一端に、ぜんまいばね11を挿入する開口部43を設けたので、巻回状態のぜんまいばね11を、軸線方向に挿入する容易な挿入組付け作業を可能にすることができる。
【0030】
底板45には、巻芯13を貫通させる穴47が略中央に穿設される。ケース15は、内部空間49に、巻芯13に巻回されたぜんまいばね11を収容可能としている。ぜんまいばね11と共に収容された巻芯13は、図2に示すように、ケース15と同軸に配置され、少なくとも一端が開口部43から突出される。なお、ケース15の底板45には、図3に示すように、穴47位置における回転時の接触防止のためのワッシャー51が設けられてもよい。
【0031】
ケース15の周壁53の一部分には、半径方向外方へ膨出させた膨出部55が形成されている。本実施の形態では、膨出部55は断面円弧状に湾曲して略蒲鉾状に膨出されている。この膨出部55の内側には係止片57が形成されている。係止片57は、周壁53をコ字状に切断し、その切断線に囲まれた凸部を内方へ折り曲げることで形成される。この係止片57には、ぜんまいばね11の外方端19の係止部23が係止するようになっている。なお、この係止片57が、底板45に達しないように形成してあることで、ぜんまいばね11が底板45に接触することを防止している。
【0032】
ぜんまいばね11は、外方端19の係止部23を係止片57に係止することで、ケース15の内部空間49に収容される。
【0033】
ところで、上記した巻芯13に設けられる固定具用固定穴29は、巻芯13の中心に対し、ぜんまいばね11のばね材17の厚み分偏芯して穿設されている。すなわち、図4に示すように、巻芯13を貫通する固定具用固定穴29の中心29Cと、巻芯13の中心13Cとは一致せずに切欠39の形成される位置に対応して偏芯している。したがって、巻芯13は、ばね材17の厚み分中心がずれるが、その分固定具用固定穴29がずれて巻芯13に配設されているため、巻芯13が被取付軸27に取り付けられると、ぜんまいばね11の中心が被取付軸27の中心に略一致するようになる。これにより、ぜんまいばね11の中心を、他の機構における被取付軸27の中心に略一致させることができるようになっている。
【0034】
このように構成されるトルク発生装置100は、次のようにして製造される。すなわち、先ず、ばね材17が所定幅の帯板に形成される。この状態では、ばね材17は略平滑なままである。次いで、その長手方向両端に、係止部23,25が形成される。その後、必要に応じて所定の熱処理が施される。次いで、ばね材17を図示しない仮芯の外周に巻きつける。すなわち一方の端部を内方端21とし、その内方端21に形成した係止部25を仮芯に係止して、巻きつける。
【0035】
巻回されたばね材17はぜんまいばね11となり、この仮芯に巻回したぜんまいばね11を、仮芯ごとケース15の内部空間49へ挿入する。この際、外方端19の係止部23が膨出部55に一致するように配置する。これにより、外方端19の係止部23と周壁53との干渉が回避されて、外周から係止部23を突出させたぜんまいばね11が、そのままケース15へ挿入可能となる。そして、膨出部55の内側へ挿入された係止部23は、同時に係止片57に係止されることになる。
【0036】
次いで、仮芯を抜き取る。仮芯を抜きとった後のぜんまいばね11の渦中心空間41に、巻芯13を挿入する。巻芯13は、スリット39に、内方端21の係止部25が差し入れられるようにして挿入する。これにより、ぜんまいばね11の外方端19の係止部23を係止片57に係止するとともに、内方端21の係止部25を巻芯13のスリット39に係止して、トルク発生装置100の製造が完了する。
【0037】
なお、トルク発生装置100は、仮芯にぜんまいばね11を巻回した状態で、外周を針金等によって仮り止めし、ぜんまいばね11の拡径を規制してもよい。この仮止め用の針金は、ケース15へのぜんまいばね11の挿入に伴ってぜんまいばね11の外周から取外すようにすればよい。
【0038】
したがって、このトルク発生装置100によれば、例えば、巻芯13にねじりコイルばねを外挿した従来構造に比べ、軸線方向の長さを短くすることができ、装置をコンパクトに構成することができる。また、トルク発生源となるぜんまいばね11がケース15に収容され、このケース15と巻芯13とがトルクの取出し部材として機能するので、他の機構への付設を容易にし、組付け性を良好にすることができるとともに、メンテナンス時等の交換も容易にすることができる。
【0039】
さらに、周壁53の一部分を半径方向外方へ膨出させ膨出部55を形成し、この膨出部55をコ字状に切断して切断線に囲まれた凸部を内方へ折り曲げることで、膨出部55の内側にぜんまいばね11の外方端19の係止部23を係止する係止片57を形成したので、ケース強度の低下を防止することができるとともに、ぜんまいばね11の外方端19の係止部23を、ケース15に干渉させずに内部空間49へ挿入でき、かつ同時に係止片57に係止部23を係止することができる。これにより、煩雑なぜんまいばねの組付け作業性を向上させることができる。
【0040】
なお、上記の実施の形態では、膨出部55が湾曲形状で形成される場合を例に説明したが、本発明に係るトルク発生装置は、図5に示すように、直角曲げにより形成した直方体形状の膨出部55Aを設けたケース15Aを用いてもよい。このような膨出部55Aによれば、膨出部55Aの内側空間を大きくして、係止部23とより干渉し難くできる。
【0041】
次に、本発明に係るトルク発生装置の第二の実施の形態を説明する。
図6は第二の実施の形態に係るケースを(a)、その変形例を(b)に表した構成図である。なお、以下の各実施の形態、変形例において、図1〜図5に示した部材と同一の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略するものとする。
【0042】
この実施の形態によるトルク発生装置は、ケース61に特徴を有する。他の構成は、上記第一の実施の形態のトルク発生装置100と同様となっている。図6(a)に示すように、ケース61は、周壁53の一部をコ字状に切断し、この切断線に囲まれた凸部を外方へ折り曲げることで、ぜんまいばね11の外方端19の係止部23を係止する切り起こし穴63を周壁53に形成している。
【0043】
このケース61では、切り起こし片65が残り、この切り起こし片65が切り起こし穴63の補強材として作用する。
したがって、このトルク発生装置によれば、周壁53をコ字状に切断して、ぜんまいばね11の外方端19の係止部23を係止する切り起こし穴63を形成したので、係止穴のみを穿設する場合に比べ、切り起こし片65が残る分ケース強度の低下を防止することができる。
【0044】
なお、本実施の形態において、切り起こし穴63は周壁53のみに形成したが、本発明に係るトルク発生装置は、図6(b)に示すように、底板45に到達するように切り起こし穴63Aを長く形成したケース61Aを用いてもよい。このようなケース61Aを用いれば、切り起こし穴63Aの延在長が長く確保できるので、より幅の広いぜんまいばね11の係止が可能となる。
【0045】
次に、本発明に係るトルク発生装置の第三の実施の形態を説明する。
図7は本発明に係るトルク発生装置の第三の実施の形態の分解斜視図、図8は図7に示した巻芯の変形例の斜視図である。
この実施の形態によるトルク発生装置300は、ケース71に特徴を有する。他の構成は、上記第一の実施の形態のトルク発生装置100と同様となっている。図7に示すように、ケース71は、ぜんまいばね11の外方端19の係止部23を係止する係止穴73を周壁53に穿設している。すなわち、係止部23を係止する係止構造がこの係止穴73のみによって形成されている。
したがって、ケース71側に係止部23を係止する係止構造が係止穴73のみからなるので、ケース71を容易に製造することができる。
【0046】
なお、巻芯13は、図8に示すように、上記のスリット39に代えて周壁53を分断する溝39Aの形成された巻芯13Aとしてもよい。このような巻芯13Aによれば、平板素材からの形成が可能となり、スリット39(溝39A)の後加工が不要となる。また、両方向からの係止部25の差し入れを可能とすることができ、ぜんまいばね11の巻き方向が異なるような、すなわち左右勝手がある場合に対応できる。
【0047】
次に、上記の実施の形態によるトルク発生装置を用いて構成した第四の実施の形態に係る機構を説明する。
図9はトルク発生装置がコードリール装置に用いられた場合の第四の実施の形態の構成図である。なお、以下の機構には第一の実施の形態に係るトルク発生装置100が用いられる場合を例に説明するが、以下の機構は上記第一,第二,第三の実施の形態によるいずれのトルク発生装置が用いられてもよい。
他の機構であるコードリール装置400は、巻取パイプ81の軸線方向両端に、平行な一対のフランジ部83,85を形成した巻取リール87を有している。巻取リール87の巻取パイプ81には電線コード89が、フランジ部83,85によって規制されながら巻回される。
【0048】
巻取リール87は、トルク発生装置100のケース15に、一方のフランジ部85が一体に固定される。つまり、この実施の形態では、図9に示すように、ケース15の底板45の外側にフランジ部85が固定されケース15と略一体となっている。これらケース15の底板45とフランジ部85との固定構造としては、リベットによる固定や、ボルト・ナット、ネジ、或いは溶接などで互いが固定され、互いが板状に形成される部分であることから、組付け易いこととなる。また、巻芯13は、図示しないコードリール装置400の固定軸等に固定される。
【0049】
このコードリール装置400によれば、電線コード89が引出されて巻取リール87とケース15とが回転すると、ぜんまいばね11が巻き締められ、その復元力が回転力となって蓄積される。そして、蓄積された回転力が、引出された電線コード89を巻取る際の巻取力として利用されることで、電線コード89を自動で巻き取ることができる。
【0050】
また、このトルク装置100には、蓋部材91が取り付けられる構成としてもよい。すなわち、図9に示すように、ケース15に蓋部材91が取り付けられ、このケース15の開口部43を閉塞しており、内部空間49が外部と遮断される構成となる。なお、ケース15に取り付けられる蓋部材91は、好ましくは内部に位置するぜんまいばね11に対して接触せずに配設される。
【0051】
この蓋部材91が設けられたトルク発生装置100によれば、外部からケース15内への異物や塵埃の侵入を防止することができる。また、ケース15内のぜんまいばね11のズレを防止することが可能となる。
【0052】
この他、本発明に係るトルク発生装置は、回転動作する機構、例えば、シャッターの巻取り機構、上吊ドアのワイヤ巻取り機構、障害物感知装置のワイヤや配線巻取り機構、健康器具のワイヤ巻取り機構等の種々の機構において、発生させた回転力を付与可能とする補機として適用可能であり、その場合においても、上記と同様の効果を奏するものである。
【0053】
また、上述した各実施の形態では、ぜんまいばね11の外方端19に形成される係止部23と係止されるケース側の構成、すなわち第一の実施の形態ではケース15の係止片57、第二の実施の形態ではケース61,61Aの切り起こし穴63,63A、第三の実施の形態ではケース71の係止穴73、とが、ぜんまいばね11の幅長に対応して互いが係止される構造、別言すると、ぜんまいばね11の係止部23の全幅が、係止片57や切り起こし穴63,63A或いは係止穴73の略全幅に係止しあう構造となっているが、係止部の形状を略フォーク状に、すなわち二股や三股の形状としてぜんまいばねの幅方向中途部分に切欠溝を1つ或いは2つ以上形成されるような構成とし、これに対応する係止片や切り起こし穴、係止穴の幅方向の中途部分に、凸部や枠状部分を設けて、この凸部や枠状部分と切欠溝とを互いに係止させるとともに、係止部と係止片、係止部と切り起こし穴、係止部と係止穴、とを互いに係止し、ぜんまいばねとケースとを組付ける構成としてもよい。このような構成とすることで、ケース側の係止片や切り起こし穴や係止穴に対して、ぜんまいばねが、凸部や枠状部分と切欠溝との係止によってその幅方向にずれることなく係止状態を保つことができ、ケースに対するぜんまいばねの組付け状態が略常時保たれることとなる。また、このような構成とすることで、ぜんまいばねの幅長とケースの幅長(開口部43から底板45までの距離)とが異なる場合、すなわちケースの幅長に対してぜんまいばねの幅長が小さく、その幅方向に大きなクリアランスが生じてしまうような組合せの場合に、ケースの幅方向略中央等に、ぜんまいばねの略中央が略一致して配置される構成とすることができる。さらに、このような構成とすることが可能であることから、ばね定数の異なる複数種のぜんまいばねを予め用意しておき、必要なトルクを選定してぜんまいばねを選択することで、所望のトルクを発生することのできるトルク発生装置を得る、すなわち適切なぜんまいばねを選択可能となる汎用性のあるトルク発生装置を得ることが可能となる。
【0054】
さらに、上述した各実施の形態では、1つのケース15(61,61A,71)に対して1つのぜんまいばね11を設ける構成として説明したが、ぜんまいばねを2つ以上の複数で構成し、例えば2つのぜんまいばねを並列させ、それぞれの外方端をケースに係止し、それぞれの内方端を巻芯に掛止する構成としてもよい。この場合、例えばばね定数の異なるぜんまいばねを複数種予め用意しておき、その複数種のなかから2つのぜんまいばねを選択し組み合わせることで、所望のトルクを発生させることが可能なトルク発生装置を得ることができる。また複数のぜんまいばねを備える構成とすることで、例えば2つのぜんまいばねを備えた構成とされた場合に、一方のぜんまいばねが破断するようなことがあっても、トルク発生装置としての破損を免れることとなる。そして、このトルク発生装置によれば、簡素な構造の単一ユニット化として構成することができる。
【0055】
また、このような1つのケースに対して複数のぜんまいばねを組付けることが可能な構成とされることで、例えば、ケース内に2つのぜんまいばねを並列状態で設けるとともに、これらぜんまいばねの各内方端に、略同軸となるように直列配置される2つの同じまたは異なる径の巻芯にそれぞれ係止するような構成とすることが可能となる。この構成によれば、ケースの両側に、それぞれ別体で作用可能な巻芯が備えられる構成となり、各巻芯ごとにトルクを発生させることの可能なトルク発生装置を得ることができる。さらに、このような2つのぜんまいばねの各ばね定数をそれぞれ異なる構成とすれば、各巻芯で異なるトルクを発生することの可能なトルク発生装置を得られる。そして、このトルク発生装置によれば、簡素な構造の単一ユニット化として構成することができる。
【0056】
さらに、上記したような1つのケースに対し2つのぜんまいばねを備え、各ぜんまいばねにそれぞれ巻芯を備える構成とするとともに、各ぜんまいばねのケースに対する係止方向を逆方向とすれば、各巻芯は、それぞれ逆向きのトルクを発生することが可能となるトルク発生装置を得ることができる。そして、このトルク発生装置によれば、簡素な構造の単一ユニット化として構成することができる。
【0057】
また、上述した各実施の形態では、ケース周壁にスリット状の穴を形成することで、第一の実施の形態では係止片57を、第二の実施の形態では切り起こし穴63,63Aを、第三の実施の形態では係止穴73を、それぞれ設ける構成とし、すなわち上記各実施の形態では、ケース15,61,61A,71の周壁53を、内方(内部空間49)から外方に貫通するように、ぜんまいばね11の外方端19の、先端を折り返した鉤状のフック形に形成された係止部23が係止され、また、巻芯13にはスリット状の切欠39が形成されて、この切欠39に対して巻芯13の内側(中空部分)に向けてぜんまいばね11の内方端21の先端を折り返した鉤状のフック形に形成された係止部25が係止される構成とされている例であるが、ぜんまいばねの外方端と内方端に、切欠およびまたは係止穴をそれぞれ設け、このぜんまいばねの内方端の切欠およびまたは係止穴に係止する突起を備えた巻芯と、この巻芯を略同軸に配置させてぜんまいばねを内部空間に収容するとともに、ぜんまいばねの外方端の切欠およびまたは係止穴に係止する突起を周壁に設けたケースとで構成するトルク発生装置としてもよい。
【0058】
このようなトルク発生装置によれば、上述した各実施の形態と同様に、例えば、巻芯にねじりコイルばねを外挿した従来構造に比べ、軸線方向の長さが短くなる。また、トルク発生源となるぜんまいばねがケースに収容され、このケースと巻芯とがトルクの取出し部材として機能する。さらに、ケース側及び巻芯に突起が形成され、ぜんまいばねに切欠およびまたは係止穴を設けて、これら突起に係止する係止構造で構成される。この係止構造によれば、例えば、ケースの突起を内方に突出させ、巻芯の突起を外方に突出させる構成とすることで、ぜんまいばねの外方端と内方端は、ぜんまいばねの最外周の外方と最内周の内方に突出することなく、すなわち、ケースの周壁の外面にぜんまいばねの外方端を突出させることなく、また、中空パイプ形状とした巻芯の中空部分内に内方端を突出させることがなく、互いが係止する構造を得られる。そして、このトルク発生装置によれば、簡素な構造の単一ユニットとして構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係るトルク発生装置の第一の実施の形態の分解斜視図である。
【図2】図1に示したトルク発生装置の断面図である。
【図3】被取付軸に取り付けられた状態のトルク発生装置の断面図である。
【図4】巻芯の断面図である。
【図5】第一の実施の形態の変形例を表すケースの斜視図である。
【図6】第二の実施の形態に係るケースを(a)、その変形例を(b)に表した構成図である。
【図7】本発明に係るトルク発生装置の第三の実施の形態の分解斜視図である。
【図8】図7に示した巻芯の変形例の斜視図である。
【図9】トルク発生装置がコードリール装置に用いられた場合の第四の実施の形態の構成図である。
【符号の説明】
【0060】
11…ぜんまいばね
13…巻芯
15,61,71…ケース
19…外方端
17…ばね材
21…内方端
23,25…係止部
27…被取付軸
29…固定具用固定穴
39…切欠(スリット)
41…渦中心空間
43…開口部
49…内部空間
53…周壁
57…係止片
63…切り起こし穴
73…係止穴
91…蓋部材
100,300…トルク発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外方端と内方端に鉤状の係止部を有したぜんまいばねと、
該ぜんまいばねの渦中心空間に挿通され前記内方端の係止部に係止する切欠を有した巻芯と、
該巻芯を略同軸に配置させて前記ぜんまいばねを内部空間に収容するとともに、前記ぜんまいばねの前記外方端の係止部を係止する係止穴を周壁に穿設した円筒状のケースと、
を具備したことを特徴とするトルク発生装置。
【請求項2】
外方端と内方端に鉤状の係止部を有したぜんまいばねと、
該ぜんまいばねの渦中心空間に挿通され前記内方端の係止部に係止する切欠を有した巻芯と、
該巻芯を略同軸に配置させて前記ぜんまいばねを内部空間に収容するとともに、周壁の一部に前記ぜんまいばねの前記外方端の係止部を係止する切り起こし穴を形成した円筒状のケースと、
を具備したことを特徴とするトルク発生装置。
【請求項3】
外方端と内方端に鉤状の係止部を有したぜんまいばねと、
該ぜんまいばねの渦中心空間に挿通され前記内方端の係止部に係止する切欠を有した巻芯と、
該巻芯を略同軸に配置させて前記ぜんまいばねを内部空間に収容するとともに、周壁の一部分を半径方向外方へ膨出させ膨出部を形成し、前記ぜんまいばねの前記外方端の係止部を係止する係止片を前記膨出部の内側に形成した円筒状のケースと、
を具備したことを特徴とするトルク発生装置。
【請求項4】
外方端と内方端に切欠およびまたは係止穴を有したぜんまいばねと、
該ぜんまいばねの渦中心空間に挿通され前記内方端の切欠およびまたは係止穴に係止する突起を有した巻芯と、
該巻芯を略同軸に配置させて前記ぜんまいばねを内部空間に収容するとともに、前記ぜんまいばねの前記外方端の切欠およびまたは係止穴に係止する突起を周壁に設けた円筒状のケースと、
を具備したことを特徴とするトルク発生装置。
【請求項5】
前記ケースの軸線方向の少なくとも一端に、前記ぜんまいばねを挿入する開口部が設けられたことを特徴とする請求項1,2,3,4のいずれか1つに記載のトルク発生装置。
【請求項6】
前記巻芯は、中空パイプ形状に形成され、その中空部に被取付軸が挿通して取り付けられるとともに、前記巻芯には該巻芯を前記被取付軸に取り付けるための固定具用固定穴が径方向に貫通して穿設され、かつ該固定具用固定穴が前記巻芯の中心に対し前記ぜんまいばねのばね材厚み分偏芯して穿設されていることを特徴とする請求項1,2,3,4,5のいずれか1つに記載のトルク発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−9999(P2006−9999A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189946(P2004−189946)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000239714)文化シヤッター株式会社 (657)
【出願人】(591006531)村田発條株式会社 (8)
【Fターム(参考)】