説明

トルク配分装置およびトルク配分方法

【課題】駆動輪のスリップ状態を考慮したトルク配分がおこなえること。
【解決手段】トルク配分装置100は、入力された全トルク指令値を取得する全トルク指令値取得部101と、搭載モータのモータ効率マップ104を取得する効率マップ取得部105と、車両の車体速度を検出する車体速度検出部102aと、駆動輪回転速度を検出する駆動輪回転速度検出部102bと、車体速度及び駆動輪回転速度に基づいて、駆動輪におけるスリップ率を算出するスリップ率算出部103と、スリップ率に基づいて、駆動輪回転速度とトルクの関係を示す動作線上の効率値を示す効率変化式を作成し、動作線上の効率変化式の最適効率トルク値を算出する算出部106と、全トルク指令値と最適効率トルク値に基づいて、各々のモータに対するトルク配分値を算出する配分部107と、算出したトルク配分値に基づいて、各々のモータへトルク配分制御する制御部108と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動体の複数の駆動輪を駆動する際のトルクを配分するトルク配分装置およびトルク配分方法に関する。ただし、この発明の利用は、上述したトルク配分装置およびトルク配分方法には限られない。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体である電気自動車(EV)に複数のモータを設け、複数の駆動輪(車輪)を駆動するトルクを配分するトルク配分として、下記の各技術が開示されている。
【0003】
一つめの技術は、モータトルクの各組み合わせについて電力消費を演算によって求め、横軸に駆動力配分をとったグラフを得て、トルク配分する構成である。この構成では、出力可能電力Pout[kW]と、トルク制限値の範囲内で過渡要求駆動力を実現するモータトルクの組み合わせを実現した場合の電力消費の最小値(以下、最小電力消費)との大小関係を比較する。出力可能電力Pout[kW]が最小電力消費以上であると判断した場合には、最小電力消費となる前後輪のモータトルクをそのままトルク指令値としている(下記特許文献1参照。)。
【0004】
二つめの技術は、合計トルクを複数のモータに配分する構成であり、前部の駆動輪2個同士と、後部の駆動輪2個同士とは互いに等しいトルク配分として、システム効率が最大となるトルク配分比を示すシステム効率マップを作成して用いる構成である(下記特許文献2参照。)。
【0005】
三つめの技術は、要求駆動パワーおよび車速に基づいて燃料消費量、蓄電装置の充放電電力および前後輪の駆動力配分の関係を示したマップを検索する。この後に、抽出されたマップの中で蓄電装置の充放電電力に対する燃料消費量が最小になる駆動力配分を抽出することにより、燃費向上前後駆動力配分マップを得る構成である(下記特許文献3参照。)。
【0006】
四つめの技術は、駆動力配分決定部が、モータ要求駆動力に対応するモータ要求駆動トルクおよび車両速度と、モータジェネレータの各々のトルクおよび車両速度に対する効率特性とに基づいて、モータジェネレータの間での駆動トルク配分を決定する。この際、低出力域での駆動トルク配分と、高出力域での駆動トルク配分とを異なるパターンを用いて制御し、モータジェネレータ全体の効率を最も高くする構成である(下記特許文献4参照。)。
【0007】
五つめの技術は、左右前車輪に要求される駆動トルクの総和と、モータジェネレータの回転速度とに基づいて、モータジェネレータ全体の駆動効率が最大となるように、右前車輪と、左前車輪との駆動トルク配分を決定する。そして、旋回方向に応じてモータジェネレータのいずれか一方のみを駆動するように右前車輪と、左前車輪との駆動トルク配分を決定する構成である(下記特許文献5参照。)。
【0008】
六つめの技術は、エネルギー効率に基づいて車輪のトルク配分をおこなう制御(エネルギー効率の制御)と、各車輪の荷重配分に基づいて車輪のトルク配分をおこなう制御(荷重配分の制御)とが選択可能な構成である(下記特許文献6参照。)。
【0009】
このような、4輪駆動車の前輪および後輪を、電動モータにより駆動するにあたり、要求トルクおよびエネルギー効率をパラメータとして用い、エネルギー効率が相対的に高くなるようにする制御は、たとえば、特許文献2等に開示されているように、既に知られている技術である。また、前輪および後輪における荷重の配分比は、たとえば、4輪駆動車の重心の高さ、重心から前輪までの距離、重心から後輪までの距離、前輪の車軸と後輪の車軸との間の距離(ホイールベース)、左右輪の幅(トレッド)、車両の旋回加速度(横加速度)、車両の前後方向の加速度などにより求められ、前輪と後輪との間における荷重の配分比と一致させるように、前輪および後輪におけるトルクの配分比を決定するようになっている。このパラメータを用いて、前輪および後輪の荷重配分比を求め、その荷重の配分比に応じてトルクの配分比を決定する制御については、たとえば、下記特許文献7等により既に知られている技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−180657号公報
【特許文献2】特開2006−345677号公報
【特許文献3】特開2007−37217号公報
【特許文献4】特開2007−313982号公報
【特許文献5】国際公開第2007/064025号パンフレット
【特許文献6】特開2009−159682号公報
【特許文献7】特開2006−213130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記の特許文献1〜7に記載の技術は、モータの高効率を目的としてモータトルクを配分するという技術思想であり、モータの効率マップを活用してこのモータ効率マップ上の最適効率トルク値に基づいてトルク配分するものではない。
【0012】
また、特許文献1〜3に記載の技術は、いずれも駆動輪を前部と後部の2個ずつに配分する構成であり、各駆動輪を独立して制御することを想定していない。また、特許文献4に記載の技術は、ハイブリッド車に適用され、左右後車輪だけが独立したインホイールモータに適用する構成であり、全駆動輪を独立して制御することを想定していない。このような構成では、たとえば4つの駆動輪を独立して制御することができず、複数の駆動輪に対して最適なトルク配分がおこなえない。
【0013】
さらに、上記の特許文献1〜7では、いずれも駆動輪(車輪)のスリップ状態を考慮していないため、高効率化できない不十分なトルク配分制御であった。路面に対する駆動輪のスリップ状態は、移動体の速度、さらに詳細には駆動輪の回転速度等の要因によって変化する。このため、駆動輪のスリップ状態を考慮しておかないと、各駆動輪に対するトルク配分を効率化できず、駆動輪を実際に駆動したときに最適なトルク配分がおこなえず、駆動系全体の効率を最大限とする最適化ができない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかるトルク配分装置は、駆動輪に接続された複数個のモータの各々に対して、入力された全トルク指令値を配分するトルク配分装置であって、前記入力された全トルク指令値を取得する全トルク指令値取得手段と、前記モータに対応するモータ効率マップを取得する効率マップ取得手段と、前記モータを搭載する車両の車体速度を検出する車体速度検出手段と、前記駆動輪における駆動輪回転速度を検出する駆動輪回転速度検出手段と、前記車体速度及び前記駆動輪回転速度に基づいて、前記駆動輪におけるスリップ率を検出するスリップ率検出手段と、前記スリップ率に基づいて、前記駆動輪回転速度とトルクの関係を示す動作線式を作成し、前記動作線式に基づいて、前記駆動輪回転速度毎に前記トルクと前記モータ効率マップの効率値を示す効率変化式を作成し、前記効率変化式の最適効率トルク値を算出する算出手段と、前記スリップ率、前記全トルク指令値、および、前記最適効率トルク値に基づいて、総合効率ηtotal =Σ((Tn/T)×ηdn×ηλn)(ただし、T:全トルク指令値、Tn:各モータのトルク配分値、ηdn:各モータの駆動系効率、ηλn:各駆動輪の走行系効率)が最大となるように、各々の前記モータに対するトルク配分値を算出する配分手段と、算出した前記トルク配分値に基づいて、各々の前記モータへトルク配分制御する制御手段と、を備え、前記配分手段は、複数個のモータのうち、いずれか一部のモータのトルク配分値のみに前記最適効率トルク値を配分、あるいは全部または一部のモータに対して、それぞれのトルク配分値が最も前記最適効率トルク値に近づくように前記全トルク指令値を均等配分することを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかるトルク配分方法は、駆動輪に接続された複数個のモータの各々に対して、入力された全トルク指令値を配分するトルク配分方法であって、前記入力された全トルク指令値を取得する全トルク指令値取得工程と、前記モータに対応するモータ効率マップを取得する効率マップ取得工程と、前記モータを搭載する車両の車体速度を検出する車体速度検出工程と、前記駆動輪における駆動輪回転速度を検出する駆動輪回転速度検出工程と、前記車体速度及び前記駆動輪回転速度に基づいて、前記駆動輪におけるスリップ率を検出するスリップ率検出工程と、前記スリップ率に基づいて、前記駆動輪回転速度とトルクの関係を示す動作線式を作成し、前記動作線式に基づいて、前記駆動輪回転速度毎に前記トルクと前記モータ効率マップの効率値を示す効率変化式を作成し、前記効率変化式の最適効率トルク値を算出する算出工程と、前記スリップ率、前記全トルク指令値、および、前記最適効率トルク値に基づいて、総合効率ηtotal =Σ((Tn/T)×ηdn×ηλn)(ただし、T:全トルク指令値、Tn:各モータのトルク配分値、ηdn:各モータの駆動系効率、ηλn:各駆動輪の走行系効率)が最大となるように、各々の前記モータに対するトルク配分値を算出する配分工程と、算出した前記トルク配分値に基づいて、各々の前記モータへトルク配分制御する制御工程と、を含み、前記配分工程は、複数個のモータのうち、いずれか一部のモータのトルク配分値のみに前記最適効率トルク値を配分、あるいは全部または一部のモータに対して、それぞれのトルク配分値が最も前記最適効率トルク値に近づくように前記全トルク指令値を均等配分することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態にかかるトルク配分装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図2】トルク配分装置によるトルク配分処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】移動体の構成を示す概要図である。
【図4】トルク配分装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図5】モータ効率マップの一例を示す図である。
【図6】スリップ率と摩擦係数の関係を示す図である。
【図7】スリップ率を考慮した回転速度とトルクの関係を示す図である。
【図8】図7に示す変化曲線をモータ効率マップに重ねた状態を示す図である。
【図9−1】車体速度毎に異なるトルクと効率との関係を示す図である(その1)。
【図9−2】車体速度毎に異なるトルクと効率との関係を示す図である(その2)。
【図10】トルクと効率との関係を示す図である。
【図11−1】モータに固有のトルク−効率特性を示す図である(その1)。
【図11−2】モータに固有のトルク−効率特性を示す図である(その2)。
【図11−3】モータに固有のトルク−効率特性を示す図である(その3)。
【図12−1】逆U型のトルク−効率特性における各輪の特性を示す図である(その1)。
【図12−2】逆U型のトルク−効率特性における各輪の特性を示す図である(その2)。
【図12−3】逆U型のトルク−効率特性における各輪の特性を示す図である(その3)。
【図12−4】逆U型のトルク−効率特性における各輪の特性を示す図である(その4)。
【図12−5】逆U型のトルク−効率特性における各輪の特性を示す図である(その5)。
【図12−6】逆U型のトルク−効率特性における各輪の特性を示す図である(その6)。
【図13−1】△型のトルク−効率特性における各輪の特性を示す図である(その1)。
【図13−2】△型のトルク−効率特性における各輪の特性を示す図である(その2)。
【図13−3】△型のトルク−効率特性における各輪の特性を示す図である(その3)。
【図13−4】△型のトルク−効率特性における各輪の特性を示す図である(その4)。
【図13−5】△型のトルク−効率特性における各輪の特性を示す図である(その5)。
【図13−6】△型のトルク−効率特性における各輪の特性を示す図である(その6)。
【図14−1】人型のトルク−効率特性における各輪の特性を示す図である(その1)。
【図14−2】人型のトルク−効率特性における各輪の特性を示す図である(その2)。
【図14−3】人型のトルク−効率特性における各輪の特性を示す図である(その3)。
【図14−4】人型のトルク−効率特性における各輪の特性を示す図である(その4)。
【図14−5】人型のトルク−効率特性における各輪の特性を示す図である(その5)。
【図14−6】人型のトルク−効率特性における各輪の特性を示す図である(その6)。
【図15−1】駆動輪が4つの場合におけるトルク配分を説明するための図である(その1)。
【図15−2】駆動輪が4つの場合におけるトルク配分を説明するための図である(その2)。
【図15−3】駆動輪が4つの場合におけるトルク配分を説明するための図である(その3)。
【図15−4】駆動輪が4つの場合におけるトルク配分を説明するための図である(その4)。
【図15−5】駆動輪が4つの場合におけるトルク配分を説明するための図である(その5)。
【図16−1】トルク−効率の特性における変化率の違いを説明する図である。
【図16−2】トルク−効率の特性における最適効率トルク値からの離れ量を説明する図である。
【図17】走行パターンに応じた動的トルク配分を説明する図である。
【図18】回転速度−全トルク指令値に基づく最適駆動輪数の設定データを示す図表である。
【図19】総合効率を説明するための図である。
【図20】垂直抗力を一定としたときのトルク−走行効率の関係を示す図である。
【図21】駆動輪別の垂直抗力が異なる状態を説明する図である。
【図22】垂直抗力別のトルク−走行効率を示す図表である。
【図23】移動体全体の総合効率を説明するための図である。
【図24】実施例2にかかるトルク配分装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図25−1】総合効率の計算例を示す図である(その1)。
【図25−2】総合効率の計算例を示す図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかるトルク配分装置およびトルク配分方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。以下の説明において、「回転速度」とは「駆動輪回転速度」であることとして説明する。
【0018】
(実施の形態)
(トルク配分装置の構成)
図1は、実施の形態にかかるトルク配分装置の機能的構成を示すブロック図である。実施の形態にかかるトルク配分装置100は、モータ効率マップを用い、このモータ効率マップ上の最適効率トルク値に基づいて複数の駆動輪に対するトルク配分を制御する。
【0019】
このトルク配分装置100は、全トルク指令値取得部101と、車体速度検出部102aと、駆動輪速度検出部102bと、スリップ率算出部103と、モータ効率マップ104と、効率マップ取得部105と、算出部106と、配分部107と、制御部108とによって構成される。
【0020】
全トルク指令値取得部101は、移動体を駆動するための全トルク指令値を取得する。すなわち、駆動輪にそれぞれ設けられた複数個nのモータM(M1,M2,…Mn)を駆動するために入力された全トルク指令値を取得する。なお、この実施形態において、複数個のモータMは、同じ種類のモータを使用することを前提として説明する。
【0021】
車体速度検出部102aは、移動体の速度を検出する。駆動輪速度検出部102bは、移動体に設けられた駆動輪速度を検出する。駆動輪速度vwは、タイヤの半径r×駆動輪回転速度ωより算出される(vw=r×ω)。
【0022】
スリップ率算出部103は、車体速度検出部102aにより検出された移動体の速度と、駆動輪速度検出部102bにより検出された駆動輪速度(駆動輪回転速度、およびタイヤ半径)に基づき、後述のように各駆動輪におけるスリップ率を算出する。モータ効率マップ104は、後述する図5のように各モータMにおける速度と、トルクとの関係を示すマップであり、このマップ上にはトルクと速度とに基づいて、略直線状の動作線を引くことができる。効率マップ取得部105は、モータMに対応するモータ効率マップ104を取得する。
【0023】
モータ効率マップの取得は、1.モータメーカーあるいは車メーカーがあらかじめ用意したモータ効率マップをメモリ等に保持しておく、2.移動体を走行させながらモータ効率マップを作成する、等が考えられる。
【0024】
算出部106は、スリップ率算出部103により算出されたスリップ率に基づいて、回転速度とトルクの関係を示す動作線上の効率値を示す効率変化式を作成して、前記動作線上の効率変化式における最適効率トルク値を算出する。
【0025】
配分部107は、後述のように全トルク指令値取得部101により取得した全トルク指令値と、算出部106により算出した最適効率トルク値に基づいて、各々のモータMに対するトルク配分値を算出する。制御部108は、配分部107により算出したトルク配分値に基づいて、各々のモータMへのトルク配分を制御する。
【0026】
(トルク配分処理について)
図2は、トルク配分装置によるトルク配分処理の手順を示すフローチャートである。はじめに、全トルク指令値取得部101により、駆動輪にそれぞれ設けられた複数個のモータM(M1,M2,…Mn)を駆動するためにアクセルペダルから入力された全トルク指令値Tを取得する(ステップS201)。次に、車体速度検出部102aにより、移動体の車体速度を検出し(ステップS202)、駆動輪速度検出部102bにより、駆動輪における車輪速度を検出する(ステップS203)。そして、スリップ率算出部103により、移動体速度、駆動輪速度(駆動輪回転速度とタイヤ半径)を用いて駆動輪におけるスリップ率を算出する(ステップS204)。
【0027】
次に、効率マップ取得部105により、モータMに対応するモータ効率マップ104を取得する(ステップS205)。次に、算出部106により、駆動輪速度検出部102bにより検出された車輪速度と、スリップ率算出部103によって算出されたスリップ率に基づいて、回転速度とトルクの関係を示す動作線上の効率値を示す効率変化式を作成して、前記動作線上の効率変化式における最適効率トルク値Toを算出する(ステップS206)。次に、配分部107により、全トルク指令値取得部101により取得した全トルク指令値Tと、算出部106により算出した最適効率トルク値Toに基づいて、各々のモータMに対するトルク配分値を算出する(ステップS207)。そして、制御部108により、配分部107が算出したトルク配分値に基づいて、各々のモータMへのトルク配分を制御する(ステップS208)。
【0028】
一般にモータ効率マップ上の動作線は直線状とされているが、実際には、トルク配分を変更すると駆動輪のトルクが変化し、それに応じて駆動輪の回転速度が変化することになる。したがって、車体速度が一定の条件下では、モータ効率マップ上における動作線は直線状ではなく、後述する図5のように傾斜(厳密には所定の曲線)となる。この動作線上のトルク値に対する効率値は、トルク−効率の特性として表すことができる。このトルク−効率の特性は後述する図10のように曲線であるから、最も効率が高くなるトルクが現れることになる。この最も効率が高くなるときのトルクを最適効率トルク値Toと称する。そして、この最適効率トルク値Toを基準として、全トルク指令値Tを複数個nのモータMに対して所定のトルク配分で配分する。
【0029】
上記の配分部107によるn個のモータMへのトルク配分例について説明する。配分部107は、複数個nのモータのうち、いずれか一部のモータMのトルク配分値のみに最適効率トルク値Toの全てを配分、あるいは全部または一部のモータMに対して、それぞれのトルク配分値が最も最適効率トルク値Toに近づくように全トルク指令値Tを均等配分する。
【0030】
ここで、車輪速度およびスリップ率と、回転速度とトルクの関係を示す動作線上の効率地を示す効率変化式は下記の手順によって求められる。
1.現在の車体速度の検出
2.現在の駆動輪速度の検出
3.スリップ率の算出
4.モータ駆動電流から現在のトルクを検出
5.動作線式を算出(後述する式(8)を用いる)
6.動作線を効率マップ上に引いて、動作線に沿って、トルク値と効率値の組合せを複数ポイント取得
7.複数ポイントのトルク値と効率値より効率変化式を作成
この時、ポイント数が多いほど、効率変化式の近似式の精度を上げることができる。
【0031】
トルクTdは、μ・N・r(μ:路面とタイヤの摩擦係数、N:垂直抗力、r:タイヤ半径)であるため(後述する式(5))、トルクTdが変化すると摩擦係数μが変化する。摩擦係数μが変化するとスリップ率λが変化する(図6に記載)。加速や減速が大きくない場合は、回転速度vの変化が小さいので、スリップ率λが変化すると、回転速度ωが変化する。つまり、駆動輪に与えるトルク値に応じて、その駆動輪の回転速度が変化することになる。その関係は後述する式(8)および図7で表される。この式(8)を使用するためには、スリップ率と摩擦係数との関係(後述する式(6))を用いる。この関係については、移動体外部のサーバ等から走行路面の式(6)を取得するか、あるいは自車で作成するかいずれかとなる。
【0032】
自車でスリップ率と摩擦係数との関係の式(6)を作成するには、下記の手順となる。
1.現在の車体速度と駆動輪回転速度を検出し、スリップ率λを求める。
2.現在のモータ駆動電流からトルク値を求め、Td=μ・N・rからμ値を算出する。
3.走行しながら複数ポイントのλとμ値を求めて、図6のμ-λ特性を作成し、式(6)を生成する。
なお、トルク値は、予め判っているトルク定数に駆動電流を乗じて求められる。また、この場合、通常はタイヤを空転させずに走行するため、μのピーク部を超えない範囲のλ値とμ値(図6ではλが0.2以下)が検出可能である。μのピーク部を超える範囲(図6ではλが0.2以上)のポイントは検出できないが、本発明において必要とする領域はμのピーク部を超えない範囲であるため、その領域のμ−λ特性を作成して式(6)が生成できれば問題ない。
【0033】
以上説明した実施の形態にかかるトルク配分装置100は、モータ効率マップ104上における最適効率トルク値Toを算出する際に、算出されたスリップ率を考慮している。路面に対する駆動輪のスリップ状態は、移動体の速度、さらに詳細には駆動輪の回転速度等の要因によって変化するが、駆動輪のスリップ状態を考慮することにより、各駆動輪に対するトルク配分を効率化できるようになり、駆動輪を実際に駆動したときに最適なトルク配分をおこない、かつ、モータ効率が高い領域で駆動できるようになるため、駆動系の効率が最大となる最適化ができるようになる。この駆動系とは、モータおよびインバータからなる移動体の駆動に関わる構成を指す。
【実施例】
【0034】
(実施例1)
以下に、本発明の実施例1について説明する。本実施例1では、4つの駆動輪にそれぞれ組み込まれ、独立して駆動されるインホイール型のモータを搭載した車両等の移動体にトルク配分装置を適用した場合の一例について説明する。この場合、モータMの個数は、M1〜M4の4個を用いる。モータMとしては、三相交流モータやDCモータを用いることができる。以下の実施例では4つの駆動輪に同一のモータを用いる。なお、後述のように、駆動輪は、4つに限られず、2つ、3つ、或いは5つ以上にも本発明を適用することが可能である。
【0035】
(移動体の構成)
図3は、移動体の構成を示す概要図である。移動体300は、左右の前駆動輪FL,FRと、左右の後駆動輪RL,RRを有する4輪駆動車である。これら4つの各駆動輪FL,FR,RL,RRには、それぞれインホイール型のモータM1〜M4が設けられ、独立に駆動される。
【0036】
これらモータM1〜M4には、それぞれモータ駆動用のインバータINVが設けられ、各インバータINVはコントローラ(ECU)301の制御に基づき、モータM1〜M4を駆動する。このコントローラ301には各種情報が入力され、トルク配分された結果、各モータM1〜M4を駆動する。
【0037】
コントローラ301に対する入力としては、以下がある。ハンドル302からは操舵角が入力される。アクセルペダル303からは、全トルク指令値が入力される。ブレーキペダル304からはブレーキ量が入力される。サイドブレーキ305からはサイドブレーキ量が入力される。ギヤ306からはR,N,D等のシフトポジションが入力される。
【0038】
また、各駆動輪FL,FR,RL,RRには、それぞれ回転速度Vを検出するセンサ307a〜307dが設けられ、各駆動輪FL,FR,RL,RRの回転速度Vfl,Vfr,Vrl,Vrrがコントローラ301に入力される。また、各駆動輪FL,FR,RL,RRには、それぞれタイヤが地面から受ける垂直抗力Nを検出するセンサ308a〜308dが設けられ、各駆動輪FL,FR,RL,RRの垂直抗力Nfl、Nfr,Nrl,Nrrがコントローラ301に入力される。
【0039】
また、移動体300には、加速度センサ309が設けられ、検出した加速度がコントローラ301に入力される。また、移動体300には、ヨーレートセンサ310が設けられ、検出したヨーレートがコントローラ301に入力される。
【0040】
コントローラ301は、上記の入力に基づき、各駆動輪FL,FR,RL,RRを駆動する。駆動のための制御信号は、各駆動輪FL,FR,RL,RR毎に適切にトルク配分され、インバータINVを介して各モータM1〜M4に供給される。
【0041】
バッテリ312は、移動体300全体に対して電源供給する。特に、インバータINVを介して各駆動輪FL,FR,RL,RRのモータM1〜M4を駆動するための駆動源となる。このバッテリ312としては、ニッケル水素、リチウムイオン等の二次電池や燃料電池などが適用される。
【0042】
上記のインバータINVは、移動体300の回生時に、モータM1〜M4が発電した交流電圧を直流電圧に変換し、その変換した直流電圧をバッテリ312へ供給することができる。この回生とは、移動体300を運転するドライバーによるブレーキペダル304の操作による発電や、走行中にアクセルペダル303の踏み込みを緩和することによる発電を示す。
【0043】
ところで、駆動効率η=モータM出力/バッテリ312から供給する電力=(T×ω)/(V×I)で表される。
【0044】
(トルク配分装置のハードウェア構成)
次に、トルク配分装置400のハードウェア構成について説明する。図4は、トルク配分装置のハードウェア構成を示すブロック図である。図4において、トルク配分装置400は、CPU401、ROM402、RAM403、通信I/F415、GPSユニット416、各種センサ417を備えている。各構成部401〜417は、バス420によってそれぞれ接続されている。
【0045】
CPU401は、トルク配分装置400の全体の制御を司る。ROM402は、ブートプログラム、トルク配分プログラムなどのプログラムが記録され、また、モータ効率マップなどを保持することができる。RAM403は、CPU401のワークエリアとして使用される。すなわち、CPU401は、RAM403をワークエリアとして使用しながら、ROM402に記録されたプログラムを実行することによって、トルク配分装置400の全体の制御を司る。
【0046】
通信I/F415は、無線を介してネットワークに接続され、トルク配分装置400およびCPU401のインターフェースとして機能する。ネットワークとして機能する通信網には、公衆回線網や携帯電話網、DSRC(Dedicated Short Range Communication)、LAN、WANなどがある。通信I/F415は、たとえば、公衆回線用接続モジュールやETCユニット、FMチューナー、VICS(Vehicle Information and Communication System(登録商標))/ビーコンレシーバなどである。
【0047】
GPSユニット416は、GPS衛星からの電波を受信し、移動体の現在位置を示す情報を出力する。GPSユニット416の出力情報は、後述する各種センサ417の出力値とともに、CPU401による移動体の現在位置の算出に際して利用される。現在位置を示す情報は、たとえば、緯度・経度、高度などの、地図データ上の1点を特定する情報である。
【0048】
ここで、走行路面のスリップ率と摩擦係数(μ-λ)特性を移動体外部のサーバから取得する場合は、通信I/F415とGPSユニット416とを用いる。各種センサ417については、車体速度と垂直抗力の検出に用いる。車体速度は、例えば以下の方法により検出する。
1.加速度センサの出力を積分
2.非駆動輪の回転速度から算出
3.GPSやその他の位置センサの時間あたりの移動距離から算出
【0049】
また、垂直抗力を検出するためには、各タイヤにそれぞれ設けた荷重センサを用いるか、あるいは以下の方法により検出する。
1.加速度センサ出力から重心位置のずれを求めて、前輪と後輪の荷重バランスを算出
2.ヨーレートセンサ出力から重心位置のずれを求めて、右輪と左輪の荷重バランスを算出
3.傾斜センサ(ジャイロ)出力から重心位置のずれを求めて、前輪と後輪および右輪と左輪の荷重バランスを算出
【0050】
図1に示したトルク配分装置100の算出部106、配分部107、制御部108は、上述したトルク配分装置400におけるROM402、RAM403、などに記録されたプログラムやデータを用いて、CPU401が所定のプログラムを実行し、トルク配分装置400における各部を制御することによってその機能を実現する。
【0051】
(トルク配分装置によるトルク配分制御)
本実施例のトルク配分装置400は、駆動系効率が最大となる最適化をおこなう。各駆動輪に与えるトルクをT1,T2,T3,T4とし、効率をη1,η2,η3,η4とすると、4輪分の全体の効率ηは、下記式(1)で示される。
【0052】
η=(T1・η1+T2・η2+T3・η3+T4・η4)/T …(1)
(全駆動トルクT=T1+T2+T3+T4)
【0053】
図5は、モータ効率マップの一例を示す図である。横軸は回転速度、縦軸はトルクである。図5に示す、車体がある一定速度のときの直線状の動作線C上で得られる効率を用いて以下のような駆動輪選択を考える。
(1)4輪で等トルク駆動
(2)2輪で等トルク駆動
(3)1輪のみで駆動
【0054】
(1)4輪で等トルク駆動の場合(4輪に1/4(0.25)ずつトルク配分)
η1=0.25・0.77+0.25・0.77+0.25・0.77+0.25・0.77=0.77
(2)2輪で等トルク駆動の場合(2輪に1/2(0.5)ずつトルク配分)
η2=0.5・0.83+0.5・0.83+0+0=0.83
(3)1輪のみで駆動の場合(1輪だけに全て(1)のトルク配分)
η3=1・0.72+0+0+0=0.72
上記によれば、効率の高い領域でのトルクを多くするようなトルク配分をおこなうことにより、トータルの効率はよくなることがわかる。
【0055】
ここでトルクと回転速度との関係について説明する。
各駆動輪の運動方程式と、駆動輪の駆動力は下記式(2),(3),(4)に示される。
【0056】
【数1】

【0057】
(Tm:モータへのトルク指令値、Td:駆動輪の駆動トルク、Fd:駆動力、Jw:駆動輪の慣性モーメント、μ:路面とタイヤの摩擦係数、N:垂直抗力、r:タイヤ半径)
ここで、駆動輪の駆動トルクとは、駆動輪に搭載しているモータのトルクを意味している。
急加速や急減速をおこなわない場合は、速度の変化が緩やかであるため、回転速度の変化が少ないので、下記式(5)のようになる。
dω/dt≒0 …(5)
ゆえに、モータへのトルク指令値Tmと駆動輪の駆動トルクTdがほぼ等しくなり、
∴Tm≒Td=Fd・r=μ・N・r
以下、車両の速度の変化が緩やかであり、モータへのトルク指令値Tmと駆動輪の駆動トルクTdがほぼ等しい状態であるものとして説明を進める。
【0058】
図6は、スリップ率と摩擦係数の関係を示す図である。横軸はスリップ率λ、縦軸は摩擦係数μである。スリップ率λと摩擦係数μは図6に示す関係にあり、下記式(6)で近似できる。図6に示す特性図において、スリップ率λが0.2において最も摩擦係数μが高い。スリップ率λが1のときには駆動輪が空転している状態に相当する。そして、スリップ率λが0〜0.2の範囲内で収まる制御をおこなうことにより、駆動輪が空転せずに走行できる。なお、図6で示した特性は、μの最大値やμが最大となるλの値がタイヤや路面状態によって変化する。その場合でも、下記式(6)のパラメータB、C、D、Eの値を変更することで近似できる。ただし、一般的に、タイヤやアスファルト路面は、その物理特性が急激に変化することは少ないため、走行中のμ−λ特性の変化は緩やかなものである。
【0059】
【数2】

【0060】
また、λ=(r・ω−v)/(r・ω)=1−v/(r・ω) …(7)
であるから、Tdは、下記式(8)となる。
【0061】
Td=Fd・r=μ・N・r …(8)
【0062】
急加速や急減速をおこなわない場合は、速度の変化が緩やかであるため、車体速度vがほぼ一定と見なせ、Tdとωとの関係は上記式(8)により求めることができる。
【0063】
図7は、スリップ率を考慮した回転速度とトルクの関係を示す図である。上記式に基づきトルクと回転速度を計算した状態を示す。ここで、垂直抗力N:400[kg]×9.8[m/s2]、タイヤ半径r:0.3[m]、車体速度v=25,50,75,100[km/h]とした。
【0064】
したがって、トルク配分を変更することにより、駆動輪のトルクが変化すると、対応して回転速度が変化することになる。図7に示す各車体速度別の特性線は、直線状ではなく、いずれもトルクが高くなるにつれて傾きが緩やかになり、最大トルクの状態で飽和する変化曲線となる。
【0065】
図8は、図7に示す変化曲線をモータ効率マップに重ねた状態を示す図である。横軸は回転速度ω、縦軸はトルクTdである。この実施例では、モータ効率マップは、モータMだけの特性ではなく、駆動系に含まれるインバータINVの特性(効率)も含んだ特性を示すものとしている。
【0066】
図8に示すように、ある速度(たとえば75[km/h])の動作線Cにおいて、一つの駆動輪のトルクが点aにあったときに、その駆動輪のトルクをトルク配分の変更により、大きく変化させたときには、動作線C上で他のb点やc点に移動する。その際、動作線Cが傾いているから回転速度ωの値も増加していることになる。したがって、回転速度ωの変化を考慮せずに、トルク配分をおこなうと、正確な動作点がわからないため、効率の値に誤差を生じることになる。したがって、図8に示すように、モータ効率マップ上には、車体速度毎の動作線を引き、トルク−効率の関係を求めておくことにより、トルク配分を変化させた場合でも効率を正確に算出できるようになる。
【0067】
図9−1および図9−2は、車体速度毎に異なるトルクと効率との関係を示す図である。図9−1は、50[km/h]のときの動作線におけるトルク−効率特性であり、図9−2は、75[km/h]のときの動作線における、トルク−効率特性である。
【0068】
また、図9−1に対応する動作線を6次で近似した効率ηは、
η = -1.7088E-14Td6 + 1.8521E-11Td5 - 7.9786E-09Td4 + 1.7336E-06Td3 - 2.0447E-04Td2 + 1.1782E-02Td + 4.4673E-01 …(9)
また、図9−2に対応する動作線を6次で近似した効率ηは、
η = 1.1253E-14Td6 - 1.0197E-11Td5 + 3.2448E-09Td4 - 3.5952E-07Td3 - 2.6286E-05Td2 + 7.8911E-03Td + 4.9954E-01 …(10)
となる。
【0069】
上記の近似式のトルクTdに値を代入すれば、効率ηを得ることができる。上記式(1)によれば、4輪駆動の場合、T1+T2+T3+T4=T(全トルク指令値)の条件範囲で、T1・η1+T2・η2+T3・η3+T4・η4が最大となるのが最適効率となる。
【0070】
次に、上述したスリップ率の算出方法について説明する。スリップ率λは下記式(11)で定義される。
【0071】
【数3】

【0072】
ここで、(v:移動体速度、vw:駆動輪速度、ω:駆動輪回転速度、r:タイヤ半径)なお、vとvwの大きい方が分母となるため、加速時には分母が上記のようにvwとなり、減速時には、分母がvとなる。移動体速度、駆動輪速度、および駆動輪回転速度の違いについて補足説明する。タイヤの回転速度にタイヤの半径を乗ずると、タイヤの移動速度になる。モータを駆動して走行しているときは、タイヤの速度は自動車の速度よりも速くなる。一方、モータを制動させて走行している場合は、タイヤの速度は自動車の速度よりも遅くなる。タイヤの速度と自動車の速度の関係を示したものがスリップ率であり、下記式(12)となる。
【0073】
スリップ率=(車輪速度−車体速度)/車体速度と車輪速度の大きい方
λ=(vw−v)/Max(vw,v) …(12)
なお、駆動も制動もしないモータの車輪は、スリップ率がほぼゼロとなるため、この車輪の速度は車体速度とほぼ等しくなる(vw≒v)。
【0074】
駆動輪の回転速度は、モータMのレゾルバや、エンコーダ、ホール素子等のパルス出力信号を用いて算出できる。移動体の速度は、1.非駆動輪のスリップ率がほぼゼロであるため、非駆動輪の速度を車体速度として検出する、2.加速度センサの出力を積分して車体速度を求める、3.車体位置をセンサで検出し時間あたりの移動距離速度を求める、等が考えられる。
【0075】
(トルク配分例について)
図10は、トルクと効率との関係を示す図である。図9−1、図9−2と同様に横軸がトルク、縦軸が効率である。この図10に示すように、動作線上で効率ηが最も高い点を最適効率トルク値Toとする。また、動作線上で最適効率トルク値Toの2倍のトルクに対応した効率を2Toと表記する。
【0076】
(モータ効率マップ上での動作線の特性について)
ここで、モータ毎に固有のトルク−効率特性に対するトルク配分について説明する。上述した図9−1、図9−2等のトルク−効率特性は、モータM毎に固有の特性線を有している。図11−1〜図11−3は、それぞれモータに固有のトルク−効率特性を示す図であり、図11−1は逆U型、図11−2は△型、図11−3は人型と略称する。単純化のために、駆動輪が2輪である場合のトルク配分で考える。全トルク指令値Tを2輪で配分するときの効率ηは、上記式(1)に基づき、
η=(T1・η1+T2・η2)/T …(13)
(駆動輪1のトルク:T1,そのときの効率:η1、駆動輪2のトルク:T2,そのときの効率:η2)
となる。
【0077】
たとえば、全トルク指令値Tが160[Nm]の場合は、(T1,T2)=(100,60)や(80,80)等、多数の組み合わせがあるが、それぞれのトルク値を上記式(13)に代入することで、効率を算出することができる。よって、効率が最大となるトルク値の組み合わせを選択できればよいことになる。具体例を下記に説明する。
【0078】
図12−1〜図12−6は、それぞれ逆U型のトルク−効率特性における各輪の特性を示す図である。図12−1は、全トルク指令値Tが100[Nm]であり、(T1,T2)=(0,100)、(100,0)のときに効率ηが最大となる。なお、トータル効率は、上記式(13)に代入して得た特性である。図12−2は、全トルク指令値Tが120[Nm]であり、(T1,T2)=(0,120),(120,0)のときに効率ηが最大となる。図12−3は、全トルク指令値Tが140[Nm]であり、(T1,T2)=(0,140),(140,0)のときに効率ηが最大となる。図12−4は、全トルク指令値Tが160[Nm]であり、(T1,T2)=(80,80)のときに効率ηが最大となる。図12−5は、全トルク指令値Tが180[Nm]であり、(T1,T2)=(90,90)のときに効率ηが最大となる。図12−6は、全トルク指令値Tが200[Nm]であり、(T1,T2)=(100,100)のときに効率ηが最大となる。
【0079】
図13−1〜図13−6は、それぞれ△型のトルク−効率特性における各輪の特性を示す図である。図13−1は、全トルク指令値Tが100[Nm]であり、(T1,T2)=(0,100)、(100,0)のときに効率ηが最大となる。図13−2は、全トルク指令値Tが120[Nm]であり、(T1,T2)=(0,120)、(120,0)のときに効率ηが最大となる。図13−3は、全トルク指令値Tが140[Nm]であり、(T1,T2)=(40,100)、(100,40)のときに効率ηが最大となる。図13−4は、全トルク指令値Tが160[Nm]であり、(T1,T2)=(60,100)、(100,60)のときに効率ηが最大となる。図13−5は、全トルク指令値Tが180[Nm]であり、(T1,T2)=(80,100)、(100,80)のときに効率ηが最大となる。図13−6は、全トルク指令値Tが200[Nm]であり、(T1,T2)=(100,100)のときに効率ηが最大となる。
【0080】
図14−1〜図14−6は、それぞれ人型のトルク−効率特性における各輪の特性を示す図である。図14−1は、全トルク指令値Tが100[Nm]であり、(T1,T2)=(0,100)、(100,0)のときに効率ηが最大となる。図14−2は、全トルク指令値Tが120[Nm]であり、(T1,T2)=(20,100)、(100,20)のときに効率ηが最大となる。図14−3は、全トルク指令値Tが140[Nm]であり、(T1,T2)=(40,100)、(100,40)のときに効率ηが最大となる。図14−4は、全トルク指令値Tが160[Nm]であり、(T1,T2)=(60,100)、(100,60)のときに効率ηが最大となる。図14−5は、全トルク指令値Tが180[Nm]であり、(T1,T2)=(80,100)、(100,80)のときに効率ηが最大となる。図14−6は、全トルク指令値Tが200[Nm]であり、(T1,T2)=(100,100)のときに効率ηが最大となる。
【0081】
以上のことから、効率ηが最大となる組み合わせは、以下のいずれかとなる。
(T1,T2)=(0,T)、(T,0)、(To,T−To)、(T−To,To)、(T/2,T/2) …(14)
(To:最適効率トルク値)
ゆえに、トルク−効率特性の曲線形状が図11−1〜図11−3のいずれのタイプであったとしても、上記(14)の組合せの中に、効率ηが最大となる組合せが存在することに着目した。
【0082】
つまり、トルク−効率特性の曲線形状が明確でない場合でも、上記(14)に示す組み合わせを計算した結果が最大となる組み合わせが、効率ηを最大にするトルク配分の組み合わせとなる。トルク−効率特性が複雑な曲線形状である場合は、上記(14)の組み合わせ以外が最大効率になることも考えられるが、変極点の多い複雑な特性以外であれば上記(14)に示した組み合わせ中に最大効率をとるものがある。すなわち、トルク配分の組み合わせは無数に存在するが、上記(14)に示した組み合わせを計算するだけで、最適なトルク配分値を求めることが可能となる。なお、上記例では2輪に対するトルク配分を例に説明したが、4輪等の複数の駆動輪に対するトルク配分についても同様である。
【0083】
これにより、以下に説明する図15−1〜図15−5に示す配分の中にηが最大になる組合せがある。また、逆U型のトルク−効率特性を示すモータ効率マップが多いため、後述する図16−1と図16−2で説明するトルク配分の簡略化が可能となる。
【0084】
モータMの個数をn個(nは自然数)とすると、配分部107は、
(1)全トルク指令値Tが最適効率トルク値To未満の場合には、一のモータMのトルク配分値に全トルク指令値Tを配分する。
【0085】
(2)全トルク指令値Tが、最適効率トルク値To以上、かつ、最適効率トルク値Toのn倍未満の場合には、下記(a)〜(c)のいずれかでトルク配分する。この際、(a)〜(c)のいずれかのうち、最適な駆動系効率を有するものを選択する。
(a)一部のモータMのそれぞれのトルク配分値に最適効率トルク値Toを配分し、さらに全トルク指令値Tを最適効率トルク値Toで割った余りを1個、あるいはn個のモータMのいずれかに均等に割って配分する。
(b)一部のモータMのそれぞれのトルク配分値に最適効率トルク値Toを配分し、さらに他のモータMのそれぞれのトルク配分値に一部のモータMに配分した残りを均等に割って配分する。
(c)全てのモータMのそれぞれに全トルク指令値Tを均等に割って配分する。
【0086】
(3)全トルク指令値Tが最適効率トルク値Toのn倍以上の場合には、n個のモータMのそれぞれのトルク配分値に最適効率トルク値Toを配分し、さらに全トルク指令値Tを最適効率トルク値Toで割った余りを1個、あるいはn個のモータMのいずれかに均等に割って配分したうち、最適な駆動系効率を有する組み合わせを選択する。
【0087】
図15−1〜図15−5は、それぞれ駆動輪が4つの場合におけるトルク配分を説明するための図である。配分部107により、n=4の各モータMに配分する配分例を説明する。
【0088】
(T<Toのとき)
図15−1に示すように、全トルク指令値Tが最適効率トルク値To未満の場合には、一のモータのトルク配分値に前記全トルク指令値Tを配分する。
【0089】
(To≦T<2Toのとき)
また、図15−2に示すように、全トルク指令値Tが最適効率トルク値To以上、かつ最適効率トルク値Toの2倍未満の場合には、(a)〜(c)のいずれかのうち、最適な駆動系効率を有する組み合わせを選択する。
(a)いずれか一のモータのトルク配分値に全トルク指令値Tを配分する。
(b)いずれか一のモータのトルク配分値に最適効率トルク値Toを配分し、別の一のモータのトルク配分値に残りのトルク値を配分する。
(c)いずれか2個のモータのそれぞれのトルク配分値に前記全トルク指令値Tの1/2を配分する。
【0090】
(2To≦T<3Toのとき)
また、図15−3に示すように、全トルク指令値Tが最適効率トルク値Toの2倍以上、かつ最適効率トルク値Toの3倍未満の場合には、(a)〜(e)のいずれかのうち、最適な駆動系効率を有する組み合わせを選択する。
(a)いずれか一のモータのトルク配分値に最適効率トルク値Toを配分し、別の一のモータのトルク配分値に残りのトルク値を配分する。
(b)いずれか2個のモータのそれぞれのトルク配分値に全トルク指令値Tの1/2を配分する。
(c)いずれか2個のモータのそれぞれのトルク配分値に最適効率トルク値Toを配分し、別の一のモータのトルク配分値に残りのトルク値を配分する。
(d)いずれか一のモータのトルク配分値に最適効率トルク値Toを配分し、残りの2個のモータのそれぞれのトルク配分値に残りのトルク値の1/2を配分する。
(e)いずれか3個のモータのそれぞれのトルク配分値に全トルク指令値Tの1/3を配分する。
【0091】
(3To≦T<4Toのとき)
また、図15−4に示すように、全トルク指令値Tが最適効率トルク値Toの3倍以上、かつ最適効率トルク値Toの4倍未満の場合には、(a)〜(g)のいずれかのうち、最適な駆動系効率を有する組み合わせを選択する。
(a)いずれか2個のモータのそれぞれのトルク配分値に最適効率トルク値Toを配分し、残りのうち一のモータのトルク配分値に残りのトルク値を配分する。
(b)いずれか一のモータのトルク配分値に最適効率トルク値Toを配分し、残りの2個のモータのそれぞれのトルク配分値に残りのトルク値の1/2を配分する。
(c)いずれか3個のモータのそれぞれのトルク配分値に、全トルク指令値Tの1/3を配分する。
(d)いずれか3個のモータのそれぞれのトルク配分値に最適効率トルク値Toを配分し、残りのモータのトルク配分値に残りのトルク値を配分する。
(e)いずれか2個のモータのトルク配分値に最適効率トルク値Toを配分し、残りの2個のモータのそれぞれのトルク配分値に残りのトルク値の1/2を配分する。
(f)いずれか一のモータのトルク配分値に最適効率トルク値Toを配分し、残りの3個のモータのそれぞれのトルク配分値に残りのトルク値の1/3を配分する。
(g)4個のモータのそれぞれのトルク配分値に、全トルク指令値Tの1/4を配分する。
【0092】
(4To≦Tのとき)
また、図15−5に示すように、全トルク指令値Tが最適効率トルク値Toのn(4)倍以上の場合には、(a)〜(d)のうち、最適な駆動系効率を有する組み合わせを選択する。
(a)いずれか3個のモータのそれぞれのトルク配分値に最適効率トルク値Toを配分し、残りの一のモータのトルク配分値に残りのトルク値を配分する。
(b)いずれか2個のモータのトルク配分値に最適効率トルク値Toを配分し、残りの2個のモータのそれぞれのトルク配分値に残りのトルク値の1/2を配分する。
(c)いずれか一のモータのトルク配分値に最適効率トルク値Toを配分し、残りの3個のモータのそれぞれのトルク配分値に残りのトルク値の1/3を配分する。
(d)4個のモータのそれぞれのトルク配分値に、全トルク指令値Tの1/4を配分する。
【0093】
上記の各配分例を数式で示すと下記のようになる。
(T<Toのとき)
T1=T,T2=T3=T4=0
【0094】
(To≦T<2Toのとき)
以下の(a)〜(c)の3通りで効率を計算し、最適な効率となる組み合わせを選択する。
(a)T1=To+(T−To),T2=T3=T4=0
(b)T1=To,T2=To−(2To−T),T3=T4=0
(c)T1=T2=To−(2To−T)/2,T3=T4=0
【0095】
(2To≦T<3Toのとき)
以下の(a)〜(e)の5通りで効率を計算し、最適な効率となる組み合わせを選択する。
(a)T1=To+(T−2To),T2=To,T3=T4=0
(b)T1=T2=To+(T−2To)/2,T3=T4=0
(c)T1=T2=To,T3=To−(3To−T),T4=0
(d)T1=To,T2=T3=To−(3To−T)/2,T4=0
(e)T1=T2=T3=To−(3To−T)/3,T4=0
【0096】
(3To≦T<4Toのとき)
以下の(a)〜(g)の7通りで効率を計算し、最適な効率となる組み合わせを選択する。
(a)T1=To+(T−3To),T2=T3=To,T4=0
(b)T1=T2=To+(T−3To)/2,T3=To,T4=0
(c)T1=T2=T3=To+(T−3To)/3,T4=0
(d)T1=T2=T3=To,T4=To−(4To−T)
(e)T1=T2=To,T3=T4=To−(4To−T)/2
(f)T1=To,T2=T3=T4=To−(4To−T)/3
(g)T1=T2=T3=T4=To−(4To−T)/4
【0097】
(4To≦Tのとき)
以下の(a)〜(d)の4通りで効率を計算し、最適な効率となる組み合わせを選択する。
(a)T1=To+(T−4To),T2=T3=T4=To
(b)T1=T2=To+(T−4To)/2,T3=T4=To
(c)T1=T2=T3=To+(T−4To)/3,T4=To
(d)T1=T2=T3=T4=To+(T−4To)/4
【0098】
次に、n個のモータMを用いた駆動時におけるトルク配分の一般式を示す。
(T<k・Toのとき(k=1))
T1=T,T2=T3=…=Tn=0
【0099】
((k−1)・To≦T<k・Toのとき、以下の(2k−1)通りで効率を計算し、最適な効率となる組み合わせを選択する(k=2〜n))
T1=To+(T−(k−1)・To)/1,T2=T3=…=Tk-1=To,Tk=Tk+1=…=Tn=0
T1=T2=To+(T−(k−1)・To)/2,T3=T4=…=Tk-1=To,Tk=Tk+1=…=Tn=0

T1=T2=…=Tk-2=To+(T−(k−1)・To)/(k−2),Tk-1=To,Tk=Tk+1=…=Tn=0
T1=T2=…=Tk-1=To+(T−(k−1)・To)/(k−1),Tk=Tk+1=…=Tn=0
以上でk−1通り。
【0100】
T1=T2=…=Tk-1=To,Tk=To−(k・To−T)/1,Tk+1=…=Tn=0
T1=T2=…=Tk-2=To,Tk-1=Tk=To−(k・To−T)/2,Tk+1=…=Tn=0

T1=To,T2=…=Tk-1=Tk=To−(k・To−T)/(k−1),Tk+1=…=Tn=0
T1=T2=…=Tk-1=Tk=To−(k・To−T)/k,Tk+1=…=Tn=0
以上でk通り。
上記のk−1通りと合わせて2k−1通りとなる。
【0101】
(n・To≦Tのとき、以下のn通りで効率を計算し、最適な効率となる組み合わせを選択する)
T1=To+(T−n・To)/1,T2=T3=…=Tn-1=Tn=To
T1=T2=To+(T−n・To)/2,T3=T4=…=Tn-1=Tn=To

T1=T2=…=Tn-1=To+(T−n・To)/(n−1),Tn=To
T1=T2=…=Tn-1=Tn=To+(T−n・To)/n
以上でn通り。
【0102】
上記によれば、4輪駆動に限らず、6輪駆動や8輪駆動などの移動体におけるトルク配分に適用することができる。
【0103】
(4輪駆動におけるトルク配分の簡易化)
一般的に、図11−1のような逆U型のトルク−効率特性を示すモータ効率マップが多いため、トルク配分の簡略化が可能となる。ある速度におけるトルクに対する効率の関係は、最適効率を得るトルク値Toより離れるほど、効率の劣化が大きい。よって、各駆動輪のトルクが最適効率トルク値Toに近くなるように等配分する。トルク−効率の特性図における効率曲線が最適効率トルク値Toを中心として、非対称の場合があるため、最適効率トルク値Toよりトルクが小さい側の効率変化と、最適効率トルク値Toよりトルクが大きい側の効率変化に違いがある。よって、最適効率トルク値Toより低トルク側と、最適効率トルク値Toより高トルク側の効率変化率の比を用いて、指令された全トルク指令値Tと最適効率トルク値Toとの関係により、簡易的トルク配分をおこなうことができる。
【0104】
図16−1は、トルク−効率の特性における変化率の違いを説明する図である。図に示す最適効率トルク値Toを中心として高トルク側の変化率に対して、低トルク側の変化率は2倍である。このような場合、駆動輪が4輪である場合における簡易的トルク配分は下記(1)〜(4)のようにおこなう。なお、図16−1において、150[Nm]と75[Nm]は同じ効率、128.6[Nm]と85.7[Nm]は同じ効率、120[Nm]と90[Nm]は同じ効率である。
【0105】
(1)T<To+2To/4のとき(図16−1に示す例ではT<150[Nm]のとき)
T1=T,T2=T3=T4=0
(2)2(To−To/4)≦T<2(To+2To/7)のとき(図16−1に示す例では75[Nm]・2≦T<128.6[Nm]・2のとき)
T1=T2=T/2,T3=T4=0
(3)3(To−To/7)≦T<3(To+2To/10)のとき(図16−1に示す例では85.7[Nm]・3≦T<120[Nm]・3のとき)
T1=T2=T3=T/3,T4=0
(4)4(To−To/10)≦のとき(図16−1に示す例では90[Nm]・4≦Tのとき)
T1=T2=T3=T4=T/4
なお、図16−1のトルク−効率特性は、逆U型のトルク−効率特性のトルク配分を説明した図11−1と同じ特性を用いている。上記の場合分けの式のTに100〜200[Nm]の値を代入してみると、T<150[Nm]のときは、(T1,T2)=(T,0)が最適効率配分であり、150[Nm]≦T<257.2[Nm]のときは、(T1,T2)=(T/2,T/2)が最適効率配分となるため、逆U型のトルク−効率特性のトルク配分を説明した図12−1〜図12−6の結果と一致することが確認できる。
ゆえに、トルク−効率特性が逆U型であることがわかっていれば、このような簡易的なトルク配分によって最適トルク配分が可能となる。
【0106】
(n輪駆動の場合の一般系でみたトルク配分の簡易化)
図16−2は、トルク−効率の特性における最適効率トルク値からの離れ量を説明する図である。ここで、k:駆動輪数、X:低トルク側の最適効率トルク値Toからの離れ量、Y:高トルク側の最適効率トルク値Toからの離れ量、a:(高トルク側の変化率)/(低トルク側の変化率)とすると、トルク配分の場合分けは、下記の(1)〜(3)となる。
(1)T<k・(To+(a・To)/(a・k+k+1))のとき、(k=1)
T1=T,T2=…=Tn=0
(2)k・(To−(To)/(a・(k−1)+(k−1)+1))≦T<k・(To+(a・To)/(a・k+k+1))のとき、(k=2〜n−1)
T1=T2=…=Tk=T/k,Tk+1=…=Tn=0
(3)n・(To−(To)/(a・(n−1)+(n−1)+1))≦Tのとき、(k=n)
T1=T2=…=Tn-1=Tn=T/n
となる。
【0107】
なお、k輪で駆動した場合と、k+1輪で駆動した場合で同じ効率となるトルク値が上記(1)〜(3)の場合分けの境界値となる。これを式で表すと、
(k+1)・(To−X)=k・(To+Y) …(15)
Y=a・X …(16)
となる。上記式(15)、(16)を解いてX,Yを求めると以下となる。
X=To/(a・k+k+1) …(17)
Y=(a・To)/(a・k+k+1) …(18)
これらの式(17)、(18)を用いてn輪駆動時における場合分けが可能となる。
【0108】
(動的トルク配分について)
次に、移動体(駆動輪)の速度によって最適効率トルク値Toが異なるため、速度の変化に応じて動的なトルク配分をおこなう例について説明する。図17は、走行パターンに応じた動的トルク配分を説明する図である。横軸が回転速度、縦軸がトルクのモータ効率マップ上に移動体の走行パターンを記載してある。
【0109】
図17の走行パターンのときには、加速してA点に至るまでの間は、T1=T,T2=T3=T4=0のトルク配分とする。また、A点〜B点の間では、T1=T2=T/2,T3=T4=0とする。B点〜C点の間では、T1=T2=T3=T/3,T4=0とする。C点〜D点の間では、T1=T2=T/2,T3=T4=0とする。D点以降では、T1=T,T2=T3=T4=0とする。このように、時々刻々と変化する速度や負荷トルクに対して、常に最適トルク配分をおこなうため、広帯域な制御による動的なトルク配分をおこなうことができる。
【0110】
図18は、回転速度−全トルク指令値に基づく最適駆動輪数の設定データを示す図表である。移動体(駆動輪)の速度と全トルク指令値Tに応じて、総合的な効率が最もよくなる駆動輪数を求めるための表、あるいは算出式を作成しておくことにより、走行中にリアルタイムに最適トルク配分をおこなうことができる。
【0111】
たとえば、図18に示す走行パターンの場合の動的トルク配分について説明する。A点に至るまでの間は、T1=T,T2=T3=T4=0のトルク配分であり、1輪駆動となる。また、A点〜B点の間では、T1=T2=T/2,T3=T4=0であり、2輪駆動となる。B点〜C点の間では、T1=T2=T3=T/3,T4=0であり、3輪駆動となる。C点〜D点の間では、T1=T2=T3=T4=T/4であり、4輪駆動となる。D点〜E点の間では、T1=T2=T3=T/3,T4=0であり、3輪駆動となる。E点以降では、T1=T2=T/2,T3=T4=0であり、2輪駆動となる。
【0112】
上記説明したトルク配分のアルゴリズムの結果、すなわち、モータ効率マップをメモリに保持せず、入力が速度およびトルクのときにおける出力である駆動輪数および各駆動輪のトルク値を、図18に示す表、あるいは算出式としてメモリに保持しておけばよい。
【0113】
以上説明した実施例1によれば、モータ効率マップ上でスリップ率を考慮した傾きのある動作線を引くことにより、回転速度とトルクの動作点を正確に検出することができる。これにより、トルク配分による効率計算を精度よくおこなうことができるようになる。また、各駆動輪に対して最適なトルク配分をおこなえるようになる。なお、左側駆動輪の合計トルクと右側駆動輪の合計トルクが異なるトルク値で走行している際、ハンドル302の角度とヨーレートセンサ310による車体の角度を検出し、その差異が大きいと判断した場合は、左右のトルク差を少なくするようにトルク配分量を調節して走行安定性を確保すればよい。
【0114】
(実施例2)
(総合効率の向上のための構成)
実施例2では、総合効率の向上のための構成について説明する。図19は、総合効率を説明するための図である。移動体は、バッテリ312から供給された電源によりモータMを駆動して走行する。このモータMは、コイルの抵抗分による銅損や、渦電流や磁気ヒステリシスによる鉄損等によるロスが発生する。電源からモータM出力までの効率は、駆動系の効率である。このモータMの駆動力により走行する移動体1900は、実際には、モータMの出力を受けてタイヤの回転駆動により走行する走行系1901を有する。この走行系1901においても、タイヤと路面間のスリップによるロスが発生する。モータMの出力から走行パワーとして出力されるまでの効率が走行系の効率である。移動体の総合効率は、これら駆動系の効率×走行系の効率で示される。
【0115】
駆動効率ηd=モータM出力/バッテリ312から供給する電力=(T×ω)/(V×I)で表される。
【0116】
上述した実施例1で説明したトルク配分は、駆動効率に関与するものである。実施例2では、走行系の効率を向上させることにより、全体の総合効率を最大にする構成について説明する。
【0117】
駆動輪あたりの駆動力Fdは次式で示される。
Fd=μ・N …(19)
(μ:摩擦係数、N:垂直抗力)
よって、Td=Fd・r=μ・N・r …(20)
(r:タイヤ半径)
【0118】
走行系の効率ηλは、
ηλ=走行パワー/モータ出力=(Fd・v)/(Td・ω)=(Fd・v)/(Fd・r・ω)=v/(r・ω)=v/vw …(21)
(v:車体速度[m/s]、vw:車輪速度[m/s])
また、スリップ率λは、上記式(11)で示される。したがって、走行系の効率ηλは、スリップ率λを用いて表すことができる。
∴ηλ=1−λ …(22)
【0119】
上述した図6のスリップ率と摩擦係数の特性より、スリップ率λを摩擦係数μの関数とみなし、λ=f(μ)と表すと、走行系の効率ηλは、以下のように表せる。
ηλ=1−λ=1−f(μ)=1−f(Td/(N・r)) …(23)
∵μ=Td/(N・r) …(24)
【0120】
式(20)より、Nが一定のときは、Tdが大きくなるとμが大きくなる。図6の関係より、λが0.2以下の領域では、μが大きくなるとλが大きくなる。ゆえに、1−λが小さくなる。
【0121】
図20は、垂直抗力を一定としたときのトルク−走行効率の関係を示す図である。この場合、図示のように、トルクTdが大きくなると、走行効率ηλは低下し、その低下度合いは、トルクTdが大きくなるほど大きく現れる。すなわち、駆動輪のトルクTdを大きくすると、走行効率ηλが低下し、駆動輪のトルクTdを小さくすると、走行効率ηλが増加する。このように、実施例1で説明したトルク配分をおこなう際に、総合効率を向上させるためには、駆動効率だけでなく走行効率も考慮する必要がある。走行効率ηλは、上述したように、あらかじめ作成したスリップ率λ−摩擦係数μの特性マップをメモリ等に保持して用いる構成とするに限らない。他の構成としては、たとえば、移動体を走行させながら、その際の車体速度をセンサ(あるいは推定算出)で検出し、また、駆動輪の速度をセンサで検出してスリップ率λを近似計算し、走行効率ηλのパラメータとして用いることも考えられる。
【0122】
(荷重変化による走行効率の変化について)
トルクを示す上記式(20)を変形すると、下記式となる。
μ=Td/(N・r) …(25)
【0123】
図21は、駆動輪別の垂直抗力が異なる状態を説明する図である。上記式(25)により、ある駆動輪に一定のトルク指令値が与えられている場合、そのタイヤへの路面からの垂直抗力Nの変化に応じて摩擦係数μが変化する。図21に示すように、移動体が登坂、傾斜、加速、カーブを走行する場合等には、移動体の荷重バランスが変わり、ある駆動輪の垂直抗力Nが減少すると、摩擦係数μが大きくなり、スリップ率λも大きくなる。結果として、上記式(22)に示す1−λが小さくなり、走行系の効率ηλが低下することになる。
【0124】
図22は、垂直抗力別のトルク−走行効率を示す図表である。上記式(23)により、垂直抗力Nが大きいほど走行系の効率ηλは大きく、トルクTdの増加に伴う走行系の効率ηλの低下度合いも緩くなる。よって、各駆動輪の垂直抗力Nが変化した場合、垂直抗力Nの大きい駆動輪は、走行系の効率ηλが増加し、垂直抗力Nの小さい駆動輪は走行系の効率ηλが低下する。これにより、荷重の大きい駆動輪のトルクを増やし、荷重の小さい駆動輪のトルクを少なくすることにより、走行効率を向上させることができるようになる。
【0125】
(総合効率について)
図23は、移動体全体の総合効率を説明するための図である。移動体300の各駆動輪FL,FR,RL,RRに全トルク指令値TをT1,T2,T3,T4で分配する。そして、移動体300の総合効率は、各駆動輪FL,FR,RL,RRのトルク分配比×駆動効率ηd×走行効率ηλの総和により得ることができる。
【0126】
図23の駆動輪FLを例に説明すると、モータ効率マップ2301を用いて、駆動輪FLに配分されたトルクT1と、回転速度ω1に基づき、駆動効率ηd1を得る。また、トルク−走行効率特性2302に基づいて、駆動輪FLに配分されたトルクT1から走行効率ηλ1を得る。同様に、他の駆動輪FR,RL,RRについても、それぞれ駆動効率ηd2,ηd3,ηd4と、走行効率ηλ2,ηλ3,ηλ4を得る。
【0127】
総合効率ηtotalは、下記式により得られる。
ηtotal=(T1/T)・ηd1・ηλ1+(T2/T)・ηd2・ηλ2+(T3/T)・ηd3・ηλ3+(T4/T)・ηd4・ηλ4 …(26)
【0128】
そして、各駆動輪FL,FR,RL,RRの垂直抗力を検出、あるいは推定し、この垂直抗力に応じて上記式(26)の値が最大になるようにトルク配分をおこなうことにより、走行効率を向上させることができる。
【0129】
図24は、実施例2にかかるトルク配分装置の機能的構成を示すブロック図である。図1と同様の構成部には同一の符号を付してある。そして、配分部107には、各駆動輪FL,FR,RL,RRの垂直抗力Nfl、Nfr,Nrl,Nrrがセンサ308a〜308d(図3参照)から入力され、配分部107は、各駆動輪の垂直抗力に基づき、垂直抗力N(荷重)が大きい駆動輪に対するトルク配分比を大きくし、垂直抗力N(荷重)が小さい駆動輪に対するトルク配分比を小さくする。
【0130】
(総合効率の計算例)
図25−1、図25−2は、それぞれ総合効率の計算例を示す図である。いずれも移動体300の車体重量は、1600[kg]、全トルク指令値Tが800[Nm]であり、登坂あるいは加速によって荷重バランスが後方に移動し、前輪荷重が各300[kg]、後輪荷重が各500[kg]であるとする。
【0131】
図25−1に示す例では、各駆動輪のトルク配分を200[Nm]で4輪駆動した場合である。モータ効率マップ2501を用いて、前輪FL,FRに配分されたトルクTd=200[Nm]と、回転速度ω=80[rad/s]に基づき、駆動効率ηd=0.82を得る。また、トルク−走行効率特性2502に基づいて、駆動輪FLに配分されたトルクTd=200[Nm]から走行効率ηλ=0.976を得る。同様に、後輪RL,RRについては、駆動効率ηd=0.82と、走行効率ηλ=0.986を得る。この結果、総合効率ηtotalは、上記式(26)に基づき、
ηtotal=((200/800)・0.82・0.976)・2+((200/800)・0.82・0.986)・2=0.80442
となる。
【0132】
図25−2に示す例では、後輪のトルク配分を400[Nm]で2輪駆動した場合である。モータ効率マップ2501を用いて、前輪FL,FRに配分されたトルクTd=0[Nm]と、回転速度ω=80[rad/s]に基づき、駆動効率ηd=0.69を得る。また、トルク−走行効率特性2502に基づいて、駆動輪FLに配分されたトルクTd=400[Nm]から走行効率ηλ=1を得る。同様に、後輪RL,RRについては、駆動効率ηd=0.93と、走行効率ηλ=0.971を得る。この結果、総合効率ηtotalは、上記式(26)に基づき、
ηtotal=((0/800)・0.69・1)・2+((400/800)・0.93・0.971)・2=0.90303
となる。
【0133】
上記計算例に限らず、駆動輪に対する垂直抗力が各々異なる場合であっても、各駆動輪毎に駆動効率と走行効率を算出することができるため、これら駆動効率と走行効率に基づいて総合効率を算出することができる。なお、実施例1のトルク配分アルゴリズムが最適な駆動系効率を有する組み合わせを選択するのに対して、実施例2のトルク配分アルゴリズムは、最適な総合効率を有する組み合わせを選択している。
【0134】
以上説明した実施例2によれば、上述した実施例1同様に、モータ効率マップ上でスリップ率を考慮した傾きのある動作線を引くことにより、回転速度とトルクの動作点を正確に検出することができる。これにより、トルク配分による効率計算を精度よくおこなうことができるようになる。また、各駆動輪に対して最適なトルク配分をおこなえるようになる。加えて、実施例2では、各駆動輪に対する垂直抗力(荷重)を考慮しているから、走行系の効率を正確に検出でき、総合効率を向上できるようになる。また、各駆動輪に対して総合効率を向上させる最適なトルク配分をおこなえるようになる。なお、上述した実施例1同様に、左側駆動輪の合計トルクと右側駆動輪の合計トルクが異なるトルク値で走行している際、ハンドル302の角度とヨーレートセンサ310による車体の角度を検出し、その差異が大きいと判断した場合は、左右のトルク差を少なくするようにトルク配分量を調節して走行安定性を確保すればよい。
【0135】
なお、本実施の形態で説明したトルクの配分にかかる方法は、あらかじめ用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することにより実現することができる。このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。またこのプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することが可能な伝送媒体であってもよい。
【符号の説明】
【0136】
100,400 トルク配分装置
101 全トルク指令値取得部
102a 車体速度検出部
102b 駆動輪速度検出部
103 スリップ率算出部
104 モータ効率マップ
105 効率マップ取得部
106 算出部
107 配分部
108 制御部
300 移動体
301 コントローラ
307a〜307d (回転速度)センサ
308a〜308d (垂直抗力)センサ
309 加速度センサ
310 ヨーレートセンサ
312 バッテリ
FL,FR,RL,RR 駆動輪
M(M1〜M4) モータ
INV インバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪に接続された複数個のモータの各々に対して、入力された全トルク指令値を配分するトルク配分装置であって、
前記入力された全トルク指令値を取得する全トルク指令値取得手段と、
前記モータに対応するモータ効率マップを取得する効率マップ取得手段と、
前記モータを搭載する車両の車体速度を検出する車体速度検出手段と、
前記駆動輪における駆動輪回転速度を検出する駆動輪回転速度検出手段と、
前記車体速度及び前記駆動輪回転速度に基づいて、前記駆動輪におけるスリップ率を検出するスリップ率検出手段と、
前記スリップ率に基づいて、前記駆動輪回転速度とトルクの関係を示す動作線式を作成し、前記動作線式に基づいて、前記駆動輪回転速度毎に前記トルクと前記モータ効率マップの効率値を示す効率変化式を作成し、前記効率変化式の最適効率トルク値を算出する算出手段と、
前記スリップ率、前記全トルク指令値、および、前記最適効率トルク値に基づいて、
総合効率ηtotal =Σ((Tn/T)×ηdn×ηλn)(ただし、T:全トルク指令値、Tn:各モータのトルク配分値、ηdn:各モータの駆動系効率、ηλn:各駆動輪の走行系効率)が最大となるように、各々の前記モータに対するトルク配分値を算出する配分手段と、
算出した前記トルク配分値に基づいて、各々の前記モータへトルク配分制御する制御手段と、
を備え、
前記配分手段は、
複数個のモータのうち、いずれか一部のモータのトルク配分値のみに前記最適効率トルク値を配分、あるいは全部または一部のモータに対して、それぞれのトルク配分値が最も前記最適効率トルク値に近づくように前記全トルク指令値を均等配分すること
を特徴とするトルク配分装置。
【請求項2】
前記全トルク指令値をT、前記最適効率トルク値をTo、駆動輪数をk、(高トルク側の変化率)/(低トルク側の変化率)をaとすると、前記配分手段は、
(1)T<k・(To+(a・To)/(a・k+k+1))のとき、(k=1)
T1=T,T2=…=Tn=0
(2)k・(To−(To)/(a・(k−1)+(k−1)+1))≦T<k・(To+(a・To)/(a・k+k+1))のとき、(k=2〜n−1)
T1=T2=…=Tk=T/k,Tk+1=…=Tn=0
(3)n・(To−(To)/(a・(n−1)+(n−1)+1))≦Tのとき、(k=n)
T1=T2=…=Tn−1=Tn=T/n
のトルク配分値を算出することを特徴とする請求項1に記載のトルク配分装置。
【請求項3】
駆動輪に接続された複数個のモータの各々に対して、入力された全トルク指令値を配分するトルク配分方法であって、
前記入力された全トルク指令値を取得する全トルク指令値取得工程と、
前記モータに対応するモータ効率マップを取得する効率マップ取得工程と、
前記モータを搭載する車両の車体速度を検出する車体速度検出工程と、
前記駆動輪における駆動輪回転速度を検出する駆動輪回転速度検出工程と、
前記車体速度及び前記駆動輪回転速度に基づいて、前記駆動輪におけるスリップ率を検出するスリップ率検出工程と、
前記スリップ率に基づいて、前記駆動輪回転速度とトルクの関係を示す動作線式を作成し、前記動作線式に基づいて、前記駆動輪回転速度毎に前記トルクと前記モータ効率マップの効率値を示す効率変化式を作成し、前記効率変化式の最適効率トルク値を算出する算出工程と、
前記スリップ率、前記全トルク指令値、および、前記最適効率トルク値に基づいて、
総合効率ηtotal =Σ((Tn/T)×ηdn×ηλn)(ただし、T:全トルク指令値、Tn:各モータのトルク配分値、ηdn:各モータの駆動系効率、ηλn:各駆動輪の走行系効率)が最大となるように、各々の前記モータに対するトルク配分値を算出する配分工程と、
算出した前記トルク配分値に基づいて、各々の前記モータへトルク配分制御する制御工程と、
を含み、
前記配分工程は、
複数個のモータのうち、いずれか一部のモータのトルク配分値のみに前記最適効率トルク値を配分、あるいは全部または一部のモータに対して、それぞれのトルク配分値が最も前記最適効率トルク値に近づくように前記全トルク指令値を均等配分すること
を特徴とするトルク配分方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図11−3】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図12−3】
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【図12−4】
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【図12−5】
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【図12−6】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図13−3】
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【図13−4】
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【図13−5】
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【図13−6】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図14−3】
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【図14−4】
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【図14−5】
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【図14−6】
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【図15−1】
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【図15−2】
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【図15−3】
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【図15−4】
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【図15−5】
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【図16−1】
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【図16−2】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25−1】
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【図25−2】
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【公開番号】特開2012−171616(P2012−171616A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−31103(P2012−31103)
【出願日】平成24年2月15日(2012.2.15)
【分割の表示】特願2012−502050(P2012−502050)の分割
【原出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】