説明

トレハロース含有貼付剤

【課題】本発明は、膏体に含まれる水分の気化熱により冷却作用を示す皮膚冷却用貼付剤において、含水率を高めたり冷却刺激剤を添加することなく、皮膚への適用直後の水分揮散率を高めた貼付剤を開発することを目的とする。
【解決手段】本発明は、トレハロースを皮膚冷却用貼付剤に配合することによって、皮膚への適用直後の水分揮散速度を高めることを可能とするものである。すなわち、本発明は、透湿性支持体に設けた粘着剤層中にトレハロース及び水を含有する皮膚冷却用貼付剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含水粘着剤層中にトレハロースを配合することにより水分揮散率を向上させた皮膚冷却用貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚冷却用貼付剤は、膏体に含まれる水分の気化により患部を冷却し、冷却による即時の炎症抑制を図るとともに、消炎鎮痛剤などの有効成分を患部に効果的に吸収させて、打撲、捻挫、関節痛、発熱などの局部疾患の治癒を促す製剤である。また、近年では、風邪等に起因する頭部の発熱を冷却する目的で、或いは勤務中や日常生活において清涼感を与える目的で、冷却作用に重点をおいた皮膚冷却用貼付剤、いわゆる冷熱シートが開発されている。この冷熱シートは、透湿性支持体に、水、又は水及び清涼感を与える薬物もしくは解熱剤等を含有する粘着剤層を塗布したものであり、人体の適用部位を冷却(解熱)したり、使用者に清涼感や快適感を与えるものである。また、粘着剤層の粘着力により補助具なしで使用部位に貼り付けることが可能であるため、簡便で使用性に優れている。
これらの皮膚冷却用貼付剤の冷却力及び持続力は、貼付剤中の含水率、水分放出性および膏体の水分保持時間等が重要な因子となる。そのため、貼付剤中の含水率、水分保持時間を高める目的で、保水剤としてD−ソルビトールを配合し、水分含量を60〜85%とした皮膚冷却用貼付剤が開発されている(特許文献1)。
【0003】
一方、本発明で使用するトレハロースは、2分子のD−グルコースが1,1結合した形の非還元性二糖類の一種であり、保湿作用、保存作用等を持つことから、食品や医薬品などの新しい添加物として最近注目されている。例えば、トレハロース含有のクリーム、ローション、軟膏又は乳剤が皮膚モイスチャライジングとして皮膚乾燥を抑制するとの開示がなされている(特許文献2)。また、トレハロースを含有することにより保湿効果に優れベタツキの少ない毛髪化粧料が開示されている(特許文献3)。トレハロースの保湿作用以外の効果としては、澱粉の老化防止効果、食品・医薬品・化粧品の腐敗防止効果、そして、香料等の揮散防止効果が開示されている(特許文献4)。また、経皮投与剤にトレハロースを使用したものとしては、トレハロース又はトレハロース誘導体を配合することにより、皮膚における汗等の水分及び脂質を吸収し、カブレを減少させた経皮投与テープ製剤が開示されている(特許文献5)。
【0004】
【特許文献1】特開平10−211227
【特許文献2】特開昭61−100512
【特許文献3】特開平6−122614
【特許文献4】特開2004−105191
【特許文献5】特開平8−208459
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
皮膚冷却用貼付剤は、膏体に含まれる水分が気化する際にその気化熱により冷却作用を示すものであり、短時間により多くの水分を放出する程、高い冷却効果が得られる。しかし、貼付剤中の含水量をあまり高めると、上記特許文献1に記載のようにダレ等が起こりやすく、粘着性等にも問題があり、それを防止するために架橋剤等を増やすと水分の放出性が悪くなる等の問題が生じる。また、打撲、急激な炎症等においては貼付剤適用初期に高い皮膚冷却効果が得られることが好ましい。そのためできればあまり水含量を増やすことなく、貼付剤適用初期に高い皮膚冷却効果が得られるよう初期段階において高い水分放出性を有し、かつ少なくとも適用から7〜8時間は十分な水分放出性を有する皮膚冷却用貼付剤の開発が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、保湿剤として知られるトレハロースを含水皮膚冷却型貼付剤に配合すると意外にも貼付剤適用初期段階における貼付剤からの水分揮散率が高まり、しかも適用から7〜8時間は十分な水分放出性が維持されることを見出し、本発明の貼付剤を開発するに至った。
すなわち、本発明は、
(1) 透湿性支持体に設けた粘着剤層中にトレハロース及び水を含有する皮膚冷却用貼付剤、
(2)トレハロースを0.1〜10%(質量:以下特に断らない限り同じ)含有する上記(1)に記載の皮膚冷却用貼付剤、
(3)水を30〜90%含有する、上記(1)又は(2)に記載の皮膚冷却用貼付剤、
(4)透湿性支持体が織布、編布、不織布より選択される1種である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の皮膚冷却用貼付剤、
(5)180分後における水分揮散率が15%以上である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の皮膚冷却用貼付剤、但し、水分揮散率とは、25℃、相対湿度60%の条件下に試験貼付剤を、その粘着剤表面を覆う剥離フィルムの付着した状態で、透湿性支持体を上にして、静置し、一定時間放置後(本請求項では180分後)の水分の減少率を意味し、下記の計算式で求めた値とする(以下同じ)。
水分揮散率 (%)={(X0−X)/X0}×100
(式中X0は試験貼付剤の初期質量、Xは計測時における試験貼付剤の質量を示す。)
(6)300分後における水分揮散率が25%以上である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の皮膚冷却用貼付剤、
(7)下記式
水分揮散向上率%=(上記(1)に記載のトレハロース含有貼付剤Aの水分揮散率/トレハロース非含有貼付剤Bの水分揮散率)×100
(式中トレハロース非含有貼付剤Bとはトレハロース含有貼付剤Aの粘着剤層中のトレハロースを除いた以外の他の組成は実質的にトレハロース含有貼付剤Aと同じ製剤を意味する)
で示される水分揮散向上率が、30分後における水分揮散率において、110%以上である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の皮膚冷却用貼付剤、
(8)非ステロイド系消炎鎮痛剤を含有するものである上記(1)〜(7)のいずれかに記載の皮膚冷却用貼付剤、
に関するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、トレハロースを皮膚冷却用貼付剤に配合することによって、貼付剤の貼付初期段階の水分揮散率を高め、貼付初期段階に優れた冷却効果を発揮することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明の皮膚冷却用貼付剤は、例えばトレハロースを含む水含有粘着剤組成物を粘着剤層として透湿性支持体に塗布又は積層することにより製造される。
本発明に用いるトレハロースは、2分子のD−グルコースが1,1結合した形の非還元性二糖の一種であり、グリコシド結合がα、α−結合であるもの(ミコース、α-D-glucopyranosyl α-D-glucopyranoside)、α、β−結合であるもの(ネオトレハロース、β-D-glucopyranosyl α-D-glucopyranoside)及びβ、β−結合であるもの(イソトレハロース、β-D-glucopyranosyl β-D-glucopyranoside)の3種類の異性体を含めたトレハロースを意味するものである。これらのトレハロースの異性体を単独で用いてもよく、混合物の状態にて使用してもよいが、グリコシド結合がα、α−結合であるトレハロースを用いることが好ましい。尚、グリコシド結合がα、α−結合であるトレハロースが最も安価に入手可能である。また、本発明のトレハロースは無水のトレハロースを用いても、含水のトレハロースを使用してもよいが、無水のトレハロースを用いることが好ましい。
トレハロースは無臭であることから、冷感剤として貼付剤に用いられるメントール類のような臭いを気にすることなく増量することが可能である。トレハロースの粘着層への配合量は、貼付剤適用初期における水分揮散率を向上させることができる量であれば特に制限はない。例えば水含有粘着剤組成物全量に対して0.1質量%(以下%は特に断りのない限り質量%を表わす)〜20%程度でもよいが、通常1〜15%、好ましくは2〜10%、より好ましくは3〜8%程度である。
【0009】
本発明の皮膚冷却用貼付剤に用いる水は、精製水や滅菌水、天然水等が使用できる。粘着剤層に対する水含量の割合は、冷却用貼付剤として効果を発揮できる含量であれば特に制限はなく、通常水含有粘着剤組成物全量に対して20〜90%、好ましくは30〜80%、更に好ましくは40〜75%程度の範囲である。適用初期の冷却効果及び持続的な冷却感を考慮すると50〜70重量%程度が最適と思われる。粘着性に優れた皮膚冷却用貼付剤とする場合には、水分含量を65%以下とすることがより好ましい場合もある。
【0010】
本発明の皮膚冷却用貼付剤における粘着剤層(水含有粘着剤組成物)は、水及びトレハロース以外に粘着性及び/又は増粘性など賦与する基剤(以下増粘粘着基剤ともいう)成分及び保湿性を維持するための保湿剤を含有する。増粘粘着基剤成分としては、水溶性又は水膨潤性高分子化合物が好ましく、ゼラチン、ペクチン、アガロース、アルギン酸塩、キサンタンガム、デキストリン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、無水マレイン酸共重合体、ポリアクリル酸及びその塩又はそれらの架橋体等の天然高分子若しくはその変性物又は合成高分子若しくはその架橋体等が挙げられる。これらの高分子は単独で用いることも可能であるが、複数の高分子を組み合わせて粘着性・親水性等を調整することが好ましい。
これらの増粘粘着基剤成分の粘着剤層全体に対する含量は粘着剤層に適度な粘着性及び増粘性を賦与できる限り特に制限はないが、通常、粘着剤層全体の2〜30%、好ましくは4〜20%程度である。
【0011】
上記で列挙した増粘粘着基剤成分の中で、ポリアクリル酸,ポリアクリル酸塩及びそれらの架橋体などの水溶性又は水膨潤性のアクリル酸系高分子は該基剤成分として好ましい。このポリアクリル酸系高分子を含む粘着剤層は、比較的高含水率おいても保型性と粘着性に優れているため、本発明の皮膚冷却用貼付剤の粘着剤層として適したものである。
該ポリアクリル酸系高分子としては、特に限定されることなく公知のものを使用し得るが、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、それらを主成分とする他のモノマーとの共重合体及びそれらの架橋体などを挙げることができる。
ポリアクリル酸及びポリアクリル酸塩としては、通常、分子量1万〜1000万程度(重量平均分子量;以下同じ)のものが使用される。好ましくはポリアクリル酸は分子量10万〜500万程度、より好ましくは40万〜200万程度である。また、ポリアクリル酸塩は、好ましくは200万〜900万程度であり、より好ましくは300万〜700万程度である。必要に応じて平均分子量が異なる2種以上のものを組み合わせて用いてもよい。
【0012】
ポリアクリル酸塩としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム等のポリアクリル酸の一価の金属塩、ポリアクリル酸モノエタノールアミン、ポリアクリル酸ジエタノールアミン、ポリアクリル酸トリエタノールアミン等のポリアクリル酸のアミン塩が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。通常ポリアクリル酸ナトリウムが最も好ましい。
該アクリル酸系高分子として、ポリアクリル酸とポリアクリル酸塩とを併用するのは本発明の好ましい態様の一つである。両者を併用する場合の両者の配合比は、ポリアクリル酸1部(質量:特に断らない限り部は以下同じ)に対して、通常ポリアクリル酸塩を0.1〜10部程度、好ましくは0.2〜6部程度、より好ましくは0.3〜4部程度である。
【0013】
該増粘粘着基剤成分としてポリアクリル酸系高分子を使用した場合、粘着性及び増粘性等を適度に調整するために、上記した他の水溶性又は水膨潤性高分子化合物を併用するのが好ましい。併用する好ましい化合物としてはポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、アガロース、ゼラチン、ペクチン、カゼイン、アルギン酸塩、キサンタンガム、デキストリン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルエーテル等が挙げられる。これらのうち、ポリビニルアルコールを併用することが、高い含水率でも優れた粘着性を発揮する粘着剤層を得るために好ましい。
これらの高分子の配合量は、通常、ポリアクリル酸系高分子10部に対して、0〜30部、好ましくは0〜20部程度である。
【0014】
本発明の皮膚冷却用貼付剤における粘着剤層は更に該増粘粘着基剤成分をゲル化させるために架橋剤を含むのが好ましい。該架橋剤としては例えば多価金属化合物、ポリカチオン性高分子又はその塩などが挙げられるが、多価金属化合物を使用することが好ましい。
多価金属化合物としては、皮膚に対する安全性の点からマグネシウム化合物、アルミニウム化合物、カルシウム化合物が好ましく、具体的には、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、合成ヒドロタルサイト、カリミョウバン、アンモニウムミョウバン、鉄ミョウバン、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミニウムグリシネート、酢酸アルミニウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、酸化カルシウム、リン酸カルシウムが挙げられる。
これら架橋剤の含量は前記増粘粘着基剤成分をゲル化できる量であれば特に制限はないが、通常前記増粘粘着基剤成分の総量100部に対して、0.5部〜20部、好ましくは1部〜5部程度である。
【0015】
本発明の皮膚冷却用貼付剤における粘着剤層に含まれる保湿剤としては、該作用を有するものであれば何れも使用しうる。これらの成分としては多価アルコール類を、必要に応じて他の保湿成分と組み合わせて用いるのが好ましい。保湿剤の粘着剤層全体量に対する配合量は5〜50%、好ましくは10〜40%、より好ましくは15ないし35%程度である。
多価アルコール類としては、1分子中2〜3個の水酸基を持つC2〜C6、好ましくはC2〜C4多価アルコール又はポリC2〜C4アルキレングリコール、好ましくはポリC2〜C3アルキレングリコール等が挙げられる。より具体的にはグリセリン、プロピレングリコール及び1,3−ブチレングリコールが好適に使用でき、これらの1種もしくは2種以上を組み合わせて用いることもできる。ポリアルキレングリコール類としてはアルキレングリコール単位の繰り返し数が2〜100、好ましくは3〜50、より好ましくは3〜20程度のものを挙げることができる。これらのアルキレングリコールとしては平均分子量が200〜600のポリエチレングリコール又は平均分子量が500〜3000のポリプロピレングリコールが好ましく、これらの1種もしくは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
その他、保湿剤として、ヒアルロン酸、コラーゲン、ムコ多糖類、コンドロイチン硫酸等を挙げることができる。
以上の保湿剤の中でグリセリンは最も好ましい。
【0016】
本発明の皮膚冷却用貼付剤に用いる透湿性支持体としては、膏体に含まれる水分の気化を妨げるようなものでなければ特に限定されず、織布、編布、不織布、不織紙、多孔性合成樹脂フィルムなど通常シート状のものが挙げられる。これらのうち、織布、編布又、不織布が、透湿性に優れ、粘着剤との接着性にも優れているため好ましいものである。
織布及び編布とは繊維を製糸し、これを機械的に製布したものであり、不織布とは短繊維を熱融着、圧着もしくはバインダー接着等によりシート状としたものである。これらの繊維の材料としては、綿、大麻、黄麻、マニラ麻、羊毛、羽毛繊維、レーヨン、キュプラ、セルロース繊維、プロミックス繊維、ナイロンアラミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリウレタン繊維、ポリオキシメチレン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンズビスチアゾール繊維、ポリイミド繊維等が挙げられる。
【0017】
本発明の皮膚冷却用貼付剤には、各種の薬効成分を配合することができるが、消炎鎮痛剤、副腎皮質ホルモン剤、鎮痒剤、局所麻酔剤、抗ヒスタミン剤、抗真菌剤、抗生物質、抗菌剤等の各種薬効成分、殺菌成分、血行促進成分、美肌成分および生薬抽出成分等が好適に使用できる。皮膚の冷却による薬効の向上が期待できるという観点から、非ステロイド系の消炎鎮痛剤が特に好ましいものである。
非ステロイド系消炎鎮痛剤としては、ケトプロフェン、ロキソプロフェン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、チアプロフェン、インドメタシン、アセメタシン、ジクロフェナク、フェルビナク、スリンダク、エトドラク、トルメチン、ピロキシカム、メロキシカム、アンピロキシカム、ナプロキセン、アザプロパゾン、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、バルデコキシブ、セレコキシブ、ロフェコキシブ、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、アセトアミノフェン、アスピリン、スルピリン、塩酸ブプレノルフィンが挙げられる。
【0018】
ステロイド系副腎皮質ホルモン剤としては、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、フルオシノニド、フルオロメトロン、プロピオン酸クロベタゾール、吉草酸ベタメタゾン、アムシノニド、吉草酸酢酸プレドニゾロン、吉草酸ジフルコルトロン、吉草酸ベタメタゾン、酢酸ジフロラゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ジフルプレドナート、ジプロピオン酸ベタメタゾンが挙げられる。
鎮痒剤としては、クロタミトンが挙げられる。
局所麻酔剤としては、塩酸リドカイン、塩酸ジブカイン、アミノ安息香酸エチル、塩酸プロカイン、リドカイン、塩酸オキシブプロカイン、シュウ酸ブチルスコポラミンが挙げられる。
抗ヒスタミン剤としては、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、塩酸トリプロピリジン、塩酸プロメタジン、種石酸アリメマジン、ヒベンズ酸プロメタジン、メキタジン、メチレンジサリチル酸プロメタジン、テオクル酸ジフェニルピラリン、塩酸シプロヘプタジン、塩酸ホモクロルシクリジン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸イソチペンジル、アンモニア水が挙げられる。
【0019】
抗真菌剤としては、ビホナゾール、クロトリマゾール、ミコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、フルシトシン、アムホテリシン、ピマリシン、ミカファンギンナトリウム、グリセオフルビン、エキサラミド、シクロピロクスオラミン、硝酸エコナゾール、硝酸オキシコナゾール、硝酸ミコナゾール、チオコナゾール、トルナフタート、ロールニトリンが挙げられる。
抗生物質としては、ベンジルペニシリンカリウム、アモキシシリン、アンピシリン、ピペラシリンナトリウム、セファクロル、カナマイシン、ペニシリン、ホスホマイシンカルシウム、エリスロマイシン、アセチルスピラマイシン、キタサマイシン、ジョサマイシン、ミデカマイシン、クロラムフェニコール、塩酸テトラサイクリンが挙げられる。
抗菌剤としては、エノキサシン、塩酸シプロフロキサシン、ナリジクス、ノルフロキサシン、フレロキサシン、オフロキサシンが挙げられる。
殺菌成分としては、イソプロピルメチルフェノール、塩酸クロルヘキシジン、塩酸ベンザルコニウム、フェノール、チモールが挙げられる。
血行促進成分としては、トウガラシ、ニコチン酸ベンジルエステル、酢酸トコフェロールが挙げられる。
【0020】
美肌成分としては、アラントイン、水溶性プラセンタエキス、コウジ酸、レシチン、アミノ酸類、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE及びその誘導体が挙げられる。
生薬抽出成分としては、オウバク、カッコン、カミツレ、カンゾウ、キキョウ、シコン、ソウジュツ、ソウハクヒ、チョウジ、チンピ、セイヨウトチノキ、トウキ、ビャクジツ、マオウの各種生薬からのエキス/粉末等、トウガラシエキス、ハッカ油、ユーカリ油、カンフル、サンシシエキス、セイヨウトチノミエキス等が挙げられる。
これらの各種の薬効成分の2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0021】
本発明の皮膚冷却用貼付剤には、さらに充填剤、界面活性剤、安定剤、pH調整剤、防腐剤、溶解補助剤、清涼化剤等の膏体に通常使用される各種成分を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
充填剤としては、酸化チタン、タルク、酸化亜鉛、含水シリカ、炭酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、無水ケイ酸等の無機充填剤や、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等のケイ酸塩からなる粘土鉱物が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
界面活性剤としては、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールトリデシルエーテル、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミネート、ソルビタンセスキオレエート、ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート、モノステアリン酸グリセロール、ポリエチレングリコールオクタデシルアミン等の非イオン界面活性剤、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルサルフェート塩、2−エチルヘキシルアルキル硫酸エステルナトリウム塩、ノルマルドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ポリオキシエチレンドデシルモノメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤が挙げられる。
【0022】
安定剤としては、EDTAおよびその塩、ニトリロ三酢酸(NTA)およびその塩、シクロヘキサンジアミン四酢酸およびその塩、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、亜硫酸ナトリウム、グリシンクエン酸およびその塩、乳酸およびその塩、リンゴ酸およびその塩などの錯塩形成能を有する有機酸およびその塩などが挙げられる。
pH調整剤としては、酢酸、蟻酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、安息香酸、グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸、塩酸、硝酸、硫酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、モノメタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン等が挙げられる。
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル(例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン)、1,2−ペンタンジオール、安息香酸、安息香酸塩、サリチル酸塩、ソルビン酸、ソルビン酸塩、デヒドロ酢酸塩、4−イソプロピル−3−メチルフェノール、2−イソプロピル−5−メチルフェノール、フェノール、ヒノキチオール、クレゾール、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル、3,4,4’−トリクロロカルバニド、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0023】
溶解補助剤としては、ベンジルアルコール、ピロチオデカン、ハッカ油、ミリスチン酸イソプロピル、クロタミトン等が挙げられる。
清涼化剤としては、リモネン、テルピノレン、メンタン、テルピネンなどのp−メンタン及びそれらから誘導される単環式モノテルペン系炭化水素化合物等のテルペン系炭化水素化合物、l−メントール、イソプレゴール,3,1−メントキシプロパン−1,2−ジオール等のメントール類縁化合物、カンフル、チモールなどが挙げられる。
【0024】
本発明の皮膚冷却用貼付剤の製造に使用する水含有粘着剤組成物は、トレハロース、水、増粘粘着基剤成分、保湿剤、及び必要に応じて、その他膏体に通常使用される成分(架橋剤、充填剤、界面活性剤、安定剤、pH調整剤、防腐剤、溶解補助剤、清涼化剤、薬効成分等)を、必要に応じて加熱下に、混合して均一な溶液若しくは混合物とすることにより得ることができる。得られた該組成物を、架橋剤を含む場合には、架橋が進行しないうちに、透湿性支持体上に展延等の方法で塗布又は積層させ、該粘着面を必要に応じて剥離フィルムでシールすることにより本発明の皮膚冷却用貼付剤とすることができる。該貼付剤を、水分の揮散を防ぐために実質的に非通気性の袋内に密封して製品とすることができる。
本発明の皮膚冷却用貼付剤は、その貼付初期段階における高い水分揮散率により優れた冷却作用が期待されることから、湿布用貼付剤として極めて有用である。例えば発熱、打撲、捻挫、関節痛、腰痛、肩こり、筋肉痛等における冷感湿布剤として、また、薬効成分として消炎鎮痛剤を含有する場合には、本貼付剤による冷却作用と薬効成分による消炎鎮痛作用により、優れた消炎鎮痛作用を奏する冷感湿布として有用である。また、清涼剤などを配合して勤務中や日常生活において清涼感を与える目的で使用する冷熱シートとすることもできる。
【0025】
本発明の皮膚冷却用貼付剤は、トレハロースを配合することにより水分揮散率が高まり、適用初期に優れた冷却作用を期待できる。本明細書における「水分揮散率」は、25℃、相対湿度60%の条件下に試験貼付剤を、その粘着剤表面を覆う剥離フィルムの付着した状態で、透湿性支持体を上にして、静置し、一定時間放置後の水分の減少率を意味し、下記の計算式で求めることができる。
水分揮散率 (%)={(X0−X)/X0}×100
(式中X0は試験貼付剤の初期質量、Xは計測時における試験貼付剤の質量を示す)
本発明の皮膚冷却用貼付剤の水分揮散率は、水分揮散試験の開始から180分後における値が15%以上であることが好ましい。また、該試験開始から300分後における水分揮散率は25%以上であることが望ましい。
本発明の皮膚冷却用貼付剤はトレハロースを含有しない場合に比して、初期の水分揮散率の向上が大きいことを特徴であり、該水分揮散向上率(%)は下記式
水分揮散向上率%={上記(1)に記載のトレハロース含有貼付剤Aの水分揮散率/トレハロース非含有貼付剤Bの水分揮散率}×100
(式中トレハロース非含有貼付剤Bとはトレハロース含有貼付剤Aの粘着剤層中のトレハロースを取り除いた以外はトレハロース含有貼付剤Aと実質的に同じ組成を持つ製剤を意味する。)
で求めることができる。なお、実質的に同じ組成とはトレハロース含有貼付剤Aからトレハロースを取り除いた貼付剤の他、比較するため粘着力を同等にするなどの多少の製剤組成に差異があっても、水分揮散率が実質的に変化しない程度の差異の組成でもよいことを意味する。該水分揮散向上率が、上記の水分揮散試験において、開始から30分後の水分揮散率において、110%以上、好ましくは120%以上、より好ましくは125%以上である本発明の皮膚冷却用貼付剤が好ましい。また更には、開始から60分後及び180分後においても、同様な水分揮散向上率が達成される本発明の皮膚冷却用貼付剤がより好ましい。また、トレハロースを含有しない貼付剤の水分揮散率にもよるが、あまり水分揮散向上率が上がりすぎると、冷却持続時間が短くなりすぎるおそれがあることから、通常冷却持続時間が7〜8時間程度に調整するのが好ましく、通常30分後の水分揮散率で、水分揮散向上率が150%以下、より好ましくは140%以下程度が好ましい。
【0026】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
アガロース 0.3部
ポリソルベート80(日光ケミカル製、商品名TO-10M) 0.3部
酸化チタン 0.5部
合成ケイ酸アルミニウム 1.0部
EDTA 0.1部
トレハロース 5.0部
ポリビニルアルコール 4.0部
グリセリン 30.0部
クエン酸 0.1部
ポリアクリル酸ナトリウム 3.0部
ケイ酸アルミン酸マグネシウム 0.1部
精製水 55.6部
まず、練合機に精製水を取り、トレハロース5.0部、グリセリン30.0部、ポリソルベート80 0.3部、クエン酸0.1部、EDTA0.1部を溶解させた。
次いで、酸化チタン0.5部、合成ケイ酸アルミニウム1.0部を分散させた。
さらに、水溶性高分子(アガロース0.3部、ポリビニルアルコール4.0部、ポリアクリル酸ナトリウム0.1部)およびケイ酸アルミン酸マグネシウム0.1部を順次溶解させた。水溶性高分子が完全に溶解し、均一な状態となるまで練合して膏体を得た。
得られた膏体を、架橋が進行する前にポリエステル製不織布支持体に均一な厚さとなるように塗布し、剥離フィルムで膏体表面を覆い本発明の皮膚冷却用貼付剤を得た。
【0028】
比較例1及び2
下記表1の処方に従い、トレハロースを配合しない以外は、実施例1と同様にして比較例1の貼付剤を得た。同様に、トレハロースに替えて還元オリゴ糖を配合した比較例2の貼付剤を得た。なお、比較例1及び2では、基剤の配合量を調整することにより、実施例1と付着性がほぼ同等となるようにした。
【0029】
表1 各サンプルの処方
【表1】

【0030】
試験例 水分揮散率の測定
次に、実施例1、比較例1及び比較例2の各貼付剤について、下記のようにして水分揮散率の測定を行った。
各試験貼付剤の初期質量(X0)を測定した後、25℃、相対湿度60%の条件下に、各試験貼付剤を、その粘着剤表面を覆う剥離フィルムの付着した状態で、透湿性支持体を上にして、静置し、一定時間放置後、各試験貼付剤の質量(X)を測定した。その値から下記の計算式により、水分揮散率を算出した。その結果を表2に示した。
水分揮散率 (%)={(X0−X)/X0}×100
(式中X0は試験貼付剤の初期質量、Xは計測時における試験貼付剤の質量を示す)
【0031】
表2 各サンプルの水分揮発率の経時的変化
【表2】

【0032】
上表から明らかなように、トレハロースを含有する本件発明の皮膚冷却用貼付剤(実施例1)は、トレハロースを含有しない皮膚冷却用貼付剤(比較例1)に比して、各時間における水分揮散率が高く、水分揮散率が明らかに向上していることが判る。特に試験開始から180分までの水分揮散向上率を計算すると、30分までは130%を越えており、180分の時点においても125%を越えており、トレハロースを含有する本件発明の皮膚冷却用貼付剤ではトレハロースを含有しない場合に比して貼付剤適用の初期段階における水分揮散率の向上が著しいことが判る。また、トレハロースに代えて還元オリゴ糖(商品名:PO−20)を使用した皮膚冷却用貼付剤(比較例2)ではその水分揮散率が比較例1より更に低くなっており、トレハロースを含有する本件発明の皮膚冷却用貼付剤はこの比較例2との比較では、比較例1との比較の場合よりも更に水分揮散率の向上が著しい。
以上の結果から、本発明の皮膚冷却用貼付剤は、トレハロースを含有しない皮膚冷却用貼付剤(比較例1)及びトレハロースに代えて還元オリゴ糖を使用した皮膚冷却用貼付剤(比較例2)に比べて、適用初期の水分揮散率が顕著に高く、皮膚への適用初期段階における多量の気化熱により、強い皮膚冷却作用が期待される。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のトレハロースを配合した皮膚冷却用貼付剤は、皮膚への適用直後に優れた冷却作用を奏することから、打撲、捻挫、関節痛又は発熱等の疾患の治療用製剤として有用であり、また、冷熱シートや各種薬剤の経皮吸収製剤としても有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透湿性支持体に設けた粘着剤層中にトレハロース及び水を含有する皮膚冷却用貼付剤。
【請求項2】
トレハロースを0.1〜10%(質量:以下同じ)含有する、請求項1に記載の皮膚冷却用貼付剤。
【請求項3】
水を30〜90%含有する、請求項1又は2に記載の皮膚冷却用貼付剤。
【請求項4】
透湿性支持体が、織布、編布、不織布より選択される1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の皮膚冷却用貼付剤。
【請求項5】
180分後における水分揮散率が15%以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の皮膚冷却用貼付剤。但し、水分揮散率とは、25℃、相対湿度60%の条件下に試験貼付剤を、その粘着剤表面を覆う剥離フィルムの付着した状態で、透湿性支持体を上にして、静置し、一定時間放置後(本請求項では180分後)の水分の減少率を意味し、下記の計算式で求めた値とする(以下同じ)。
水分揮散率 (%)={(X0−X)/X0}×100
(式中X0は試験貼付剤の初期質量、Xは計測時における試験貼付剤の質量を示す。)
【請求項6】
300分後における水分揮散率が25%以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の皮膚冷却用貼付剤。
【請求項7】
下記式
水分揮散向上率%=(請求項1に記載のトレハロース含有貼付剤Aの水分揮散率/トレハロース非含有貼付剤Bの水分揮散率)×100
(式中トレハロース非含有貼付剤Bとはトレハロース含有貼付剤Aの粘着剤層中のトレハロースを除いた以外の他の組成は実質的にトレハロース含有貼付剤Aと同じ製剤を意味する)
で示される水分揮散向上率が、30分後の水分揮散率において、110%以上である請求項1〜6のいずれかに記載の皮膚冷却用貼付剤。
【請求項8】
非ステロイド系消炎鎮痛剤を含有するものである、請求項1〜7のいずれかに記載の皮膚冷却用貼付剤。


【公開番号】特開2006−87656(P2006−87656A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−276493(P2004−276493)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000160522)久光製薬株式会社 (121)
【Fターム(参考)】