説明

トレー

【課題】熱風乾燥・消毒時に有機溶剤や樹脂モノマーが放出されることがなく、また、大量に取り扱う際にも当たった時に互いが欠けるようなことがない、軽量かつ強度及び耐衝撃性に優れるトレーを提供すること。
【解決手段】繊維強化熱可塑性複合材料からなる基材層と熱可塑性樹脂フィルムからなる表面層とが一体化された複合成形体からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱風乾燥・消毒時に変形したり、トレー内部に内包されているモノマーや有機溶剤が放出されることがなく、学校、病院、寮、老人介護施設、ファーストフード店等での配膳用または、セルフサービス用トレー等として好適に用いられるトレーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、学校、病院、寮、老人介護施設、ファーストフード店等での配膳用またはセルフサービス用等のトレーには、繊維強化熱硬化性複合材料や鉱物充填材粒子含有熱硬化性樹脂が用いられている(例えば特許文献1参照)が、十分洗浄しても雑菌が繁殖する等の問題があり、また、保管中に病原菌やウィルスが付着するという危険性があるため、熱風乾燥・消毒が行われるようになってきた。ところが、繊維強化熱硬化性複合材料からなるトレーは、熱風乾燥・消毒を行うことにより、成形時にわずかに残留するモノマー(特に、スチレンモノマー)や有機溶剤等の揮発成分が高温のために放出され、保管庫内に充満する。その保管庫を作業員が開いた時に、熱気と共に充満した上記揮発成分が一度に噴出して、気分が悪くなったり、めまいを起こしたりといった大きなダメージを作業員に与えるという問題がある。
【0003】
さらに、配膳用またはセルフサービス用等のトレーは、同時に大量に使用することから、相互に当たったり、床に落としてしまったりして、欠けたり割れたりすることがあり、使用者に切り傷を負わせる等、安全上の問題もあった。前者の問題点の解決法としては、製造直後にトレーを熱処理しておくことにより、使用現場での臭気が無いようにしようとしているが、ある程度の改善は見られるものの、未だ使用現場の要求を満足させるに至っていないのが現状である。また、後者の問題点の解決法としては、取り扱いを慎重にさせることぐらいしか対策が無く、徹底させることが難しいのが現状である。
【0004】
一方、強化繊維を含まない熱可塑性樹脂を成形したトレーは、高温での熱風乾燥・消毒中に変形するという問題があり、実用的でなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2888982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み、熱風乾燥・消毒時にモノマーや有機溶剤が放出されることがなく、また、大量に取り扱う時や落下させた時にも割れたり、欠けるようなことがない、軽量かつ、強度および耐衝撃性に優れるトレーを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明のトレーは、繊維強化熱可塑性複合材料からなる基材層と熱可塑性樹脂フィルムからなる表面層を有することを特徴とする。
【0008】
この場合において、トレーを構成する前記基材層と前記表面層とが、一体化されていることが好ましい。
【0009】
また、基材を構成する繊維強化熱可塑性複合材料の強化繊維の体積含有率が、20〜50%であることが好ましい。
【0010】
また、繊維強化熱可塑性複合材料を構成する強化繊維が、ガラス繊維および/または炭素繊維であることが好ましい。
【0011】
また、表面層を構成する熱可塑性樹脂フィルムが、少なくとも延伸熱可塑性樹脂フィルム層/印刷インキ層/無延伸熱可塑性樹脂フィルム層からなる積層体であることが好ましい。
【0012】
また、表面層を構成する熱可塑性樹脂フィルムがポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂よりなる群から選ばれた一種以上の熱可塑性樹脂からなるフィルムであることが好ましい。
【0013】
さらにまた、基材層を構成する繊維強化熱可塑性複合材料が、テープ状プリプレグを所定の長さに切断した短冊状物を無作為に分散・堆積させ、該分散・堆積させたものを加圧下で加熱・溶融した後、冷却・固化することにより、短冊状物を一体化したシート状材料であって、該基材層が該シート状材料を成形したものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のトレーによれば、熱風乾燥・消毒時にも樹脂モノマーや有機溶剤等人体に有害な揮発性物質が放出されることがなく作業環境が良好で、大量に取り扱う時や誤って落下させた場合にも割れたり、欠けたりするようなことがなく、軽量かつ、強度および耐衝撃性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のトレーの構成の一例
【発明を実施するための形態】
【0016】
熱風乾燥・消毒時にも樹脂モノマーや有機溶剤が放出されることがなく作業環境が良好で、大量に取り扱う際に、当たった時に互いが欠けたり、誤って落下させた場合にも割れたり、欠けたりするようなことがなく、軽量で高強度かつ耐衝撃性を有する材料として、本発明のトレーには強化繊維と熱可塑性樹脂からなる繊維強化熱可塑性複合材料を使用する。一般に、トレーの材料としてよく用いられる繊維強化熱硬化性複合材料は、成形性が良い反面、耐衝撃性に劣り、大量に取り扱う際には、当たった時に互いが欠けたり、誤って落下させた場合に割れたり、欠けたりすることがあるため、長期に渡り使用するには問題がある。また、熱風乾燥・消毒時に樹脂モノマーや有機溶剤が放出されることがあり、保管庫を開いたときに熱気と共に充満した上記揮発成分が一度に噴出して、気分が悪くなったり、めまいを起こしたりといった大きなダメージを作業員に与えるという問題がある。
【0017】
本発明のトレーに用いる繊維強化熱可塑性複合材料を構成する強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維、アラミド繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維等の高強力有機繊維等が挙げられる。中でもガラス繊維は表面処理剤の最適化が容易であり、樹脂との接着性が良好で安価であることから最も好ましい。ガラス繊維にはEガラス(電気用)、Cガラス(耐食用)、Sガラス、Tガラス(高強度・高弾性率)等があるが、Eガラスが機械的特性とコストのバランスに優れており好適に使用することができる。強化繊維表面には樹脂との接着性を良好にするためにカップリング剤や、集束性を向上させるためのサイジング剤(集束剤)が塗布されていることが望ましく、樹脂の種類によって最適な成分を選択することが好ましい。また、ガラス繊維のモノフィラメントの径としては10〜25μmが経済的に好ましく、より好ましくは12〜20μmである。
【0018】
本発明のトレーに用いる基材層を構成する繊維強化熱可塑性複合材料の強化繊維の体積含有率は20〜50%、好ましくは30〜40%である。体積含有率が20%未満になると補強効果が少なくなり、トレーとしての剛性が低くなり、食事を載せて運ぶ際に変形し、食事が落下したり、高温での熱風乾燥・消毒中に変形するという問題が発生する。また、強化繊維の体積含有率が50%よりも大きくなると、強化繊維のモノフィラメント間への熱可塑性樹脂の含浸が困難になり、ボイドが発生しやすくなり、その結果、補強効果が逆に低下すると共に、繊維強化熱可塑性複合材料を製造する工程でも操業性が悪化するという問題が発生する。
【0019】
また、本発明のトレーに用いる繊維強化熱可塑性複合材料を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン46等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。熱可塑性樹脂の中でも、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂は、耐衝撃性、耐溶剤性、耐摩耗性、耐油性等に優れ、コスト的にも他の熱可塑性樹脂に比べて有利であるため、特に好ましい。ポリオレフィン系樹脂の代表であるポリプロピレンは、成形性にも優れており、非常に扱いやすい樹脂であるが、その反面、強化繊維との接着性に乏しいことが欠点として挙げられていたが、酸変性することにより接着性を改良することが可能である。そのため、本発明の繊維強化熱可塑性複合材料を構成する樹脂にポリプロピレンを用いる場合は、このような酸変性がなされていることが好ましい。また、使用する樹脂の特性に応じて、加水分解防止剤、酸化劣化防止剤、熱劣化防止剤等の添加剤を目的に応じて添加することが好ましい。
【0020】
本発明のトレーに用いる繊維強化熱可塑性複合材料の形態としては、テープ状プリプレグを所定の長さに切断した短冊状物を無作為に分散・堆積させ、該分散・堆積させたものを加圧下で加熱・溶融した後、冷却・固化することにより一体化したシート状の形態が好ましい。このテープ状プリプレグは、好ましくは、実質的に無撚の強化繊維に熱可塑性樹脂を、強化繊維の体積含有率が20〜50%となる範囲で含浸させることにより製造することができる。テープ状プリプレグはその製造工程で強化繊維を薄い層に開繊するため、強化繊維の含有率を飛躍的に高めることができると共に、樹脂の含浸も容易になるため、ボイドの少ない良好な繊維強化熱可塑性複合材料を得ることができる。また、従来の繊維強化熱可塑性複合材料では、強化繊維がストランド形態でかたまって存在するのに比べて、テープ状プリプレグでは強化繊維が開繊されているので、シート状にした際にシート面内の強化繊維の含有量が均一であるため、強度や耐衝撃性のバラツキが少なく、性能の安定したトレーを得ることができる。
【0021】
テープ状プリプレグを所定の長さに切断した短冊状物を無作為に分散・堆積させ、加圧下で加熱・溶融した後、冷却・固化することにより一体化したシート状材料を使用する場合、その短冊状物の長さ(すなわち、強化繊維の長さ)は、10〜50mmであることが好ましい。10mm未満では射出成形品とあまり変わらない程度の耐衝撃性となり、誤って落下させた場合などに欠けたり、割れたりしてしまう。短冊状物の長さが50mmより長くなると無作為(すなわち、強化繊維の方向性がランダム)に分散することが困難になり、強化繊維が配向しやすくなるため好ましくない。この短冊状物の長さ、すなわち強化繊維の長さの選択は、トレーの形状、大きさにより吟味される必要があるが、より好ましくは20〜35mmである。
【0022】
本発明のトレーの表面層に用いる熱可塑性樹脂フィルムの樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂等の単一又は混合物が挙げられる。これらの材料をフィルム化する方法には特に制限はなく、溶融押出成形、流延法等により作られ、必要に応じてステンター法、ロール延伸法、ブロー延伸法、圧延法等により一軸又は2軸に配向を与えることができる。なお、熱可塑性樹脂フィルム中には滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、難燃剤、UV吸収剤等の添加剤を含んでもよい。
【0023】
本発明に用いる熱可塑性樹脂フィルムが積層体である場合は、一方の熱可塑性樹脂フィルムに他の熱可塑性樹脂フィルムを積層するが、延伸熱可塑性樹脂フィルムと無延伸熱可塑性樹脂フィルムを形成する樹脂が同種の熱可塑性樹脂で、一方が無延伸、他方が1軸延伸又は2軸延伸フィルムを用いることができる。積層方法としては、一方の熱可塑性樹脂フィルム上に熱可塑性樹脂を溶融押し出しして積層する押出しラミネート法、予め製造した熱可塑性樹脂フィルムを各種ラミネート法で積層するドライラミネート法、熱可塑性樹脂フィルム上に熱可塑性樹脂溶液を塗布する方法など特に限定されるものではない。また、積層する前に一方又は両方の熱可塑性樹脂フィルムに印刷層および/または、接着性改良層を形成しておくことにより、より優れた積層体とすることができる。さらに、本発明に用いる熱可塑性樹脂フィルムが積層体である場合は、延伸熱可塑性樹脂フィルムと無延伸熱可塑性樹脂フィルムの積層体であることが好ましく、さらに、積層体を構成する熱可塑性樹脂フィルムが同種の熱可塑性樹脂であるのが、収縮率の違いに基づくカールや接着強度などの性能安定性の観点から好ましい。
【0024】
本発明のトレーの成形方法としては、プレス成形機による圧縮成形法、特にスタンピング成形を好適に用いることができる。金型は雄型及び雌型で構成され、その嵌合部(シアエッジ)で、成形時に流動したシート状材料の流出を食い止めることができる。繊維強化熱可塑性複合材料を構成する熱可塑性樹脂は、まず、成形品であるトレーと同体積、同重量のシート状材料を遠赤外線ヒーター等の加熱手段によって、熱可塑性樹脂の融点以上の温度にまで加熱し、溶融状態になったシート状材料を速やかに下金型に投入し、一方、上金型にはあらかじめトレーの表面層を構成する熱可塑性樹脂フィルムをセットして、プレス成形機によるスタンピング成形を行うことにより、表面層の熱可塑性樹脂フィルムと一体成形することができる。
【0025】
さらに詳しくは、溶融状態のシート状材料を金型内で流動させると同時に冷却することによって固化させ、成形品であるトレーが得られる。シート状材料の加熱温度は使用する繊維強化熱可塑性複合材料を構成する熱可塑性樹脂の融点より、数十度高い温度にまで加熱する。例えば、ポリプロピレンの融点は約170℃であるので、200℃〜230℃程度に加熱する。最適な加熱温度は、熱可塑性樹脂の種類によって異なる。また、この場合の金型温度は繊維強化熱可塑性複合材料を構成する熱可塑性樹脂の融点より、かなり低い温度に保たれるのが一般的である。例えば、ポリプロピレンの場合は、50〜120℃程度の温度に保たれる。金型温度が低いほど、成形サイクルは短くできるが、シート状材料の流動性が悪くなるので、成形品形状の複雑さと成形サイクルを考慮して最適な金型温度を選択する。トレーの表面層に熱可塑性樹脂フィルムを一体成形する場合は、表面層を構成する熱可塑性樹脂フィルムと繊維強化熱可塑性複合材料からなる基材層との間にボイドを残さないようにするため、金型を真空に引ける構造であることが好ましい。さらには、上型と下型が勘合した瞬間に金型内を真空にすることが好ましく、真空タンクを装備した真空引き設備を付帯していることが、製品の歩留まり向上の観点からも好ましい形態である。
【0026】
繊維強化熱可塑性複合材料は、金型の外でシート状材料を加熱・溶融し、成形時は材料を流動させながら冷却・固化させるので、繊維強化熱硬化性複合材料の場合に比べて、極めて短い時間で成形できることが特徴である。但し、シート状材料を溶融状態にまで加熱するのに時間を要するため、プレス成形のサイクルタイムに合わせて、コンベア方式の遠赤外線加熱炉によって連続的に加熱・溶融できるような加熱装置を用いることが好ましい。
【0027】
このようにして得られた本発明のトレーは、熱風乾燥・消毒時にも樹脂モノマーが放出されることがなく保管時の作業環境が良好で、大量に取り扱う際に相互に当たったり、誤って床に落下したりして、欠けたり割れたりするようなことがなく、軽量、かつ、強度、耐衝撃性が優れている。
【0028】
本発明のトレーの特性としては、そのアイゾット衝撃強度(ノッチ付き)が、1000J/m以上であるものが好ましい。さらに好ましくは、1500J/m以上であることが好ましい。なお、アイゾット衝撃強度が低いと、トレーの十分な耐衝撃性が得られず、誤って落下させた場合に欠けたり、割れたりすることが多くなる。
【0029】
また、本発明のトレーの静的曲げ強度は、150MPa以上であることが好ましい。さらに好ましくは、200MPa以上である。なお、静的曲げ強度が低いと、欠けたり、割れたりすることが多くなる。
【0030】
次に、本発明のトレーを図面により説明するが、これに限定されるものではない。
(図1)は、トレーの正面図および、上面図の一例である。正面図の左半分はトレーの断面形状を、右半分は外形形状を現している。トレー裏側の4隅には、トレーを置いた時に安定性を保つための突起物が設けられている。また、トレーを重ねた時にトレー同士が密着しないような工夫もなされている。トレーの形状は、通常、正方形および長方形がよく用いられるが、温冷車用等、特殊なものも要求に応じて設計することができる。図1の長方形の場合、横400〜430mm、縦300〜330mm、厚さ2〜2.5mm程度のサイズのものが、好ましく用いられる。
【0031】
このような本発明のトレーの基材層は、前記のごとく、テープ状プリプレグを所定の長さに切断し、短冊状物を無作為に分散・堆積させ、この分散・堆積させたものを加圧下で加熱・溶融した後、冷却・固化することにより、短冊状物を一体化して繊維強化熱可塑性複合材料のシート状材料とし、該シート状材料をトレーの形状にスタンピング成形して得ることができる。表面層の熱可塑性樹脂フィルムは、少なくともトレーの上面側には必ず積層するが、下面(底面)側には積層しても、しなくてもよい。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、特性値の評価は、下記の方法により行った。
【0033】
(1)曲げ強度(MPa)
作製したトレーの平面部から、JIS K 7055に準拠して曲げ試験片を切り出し、インストロン型万能試験機(オリエンテック社製)にて測定した繊維強化熱可塑性複合材料の曲げ強度をいう。
【0034】
(2)アイゾット衝撃強度(J/m)
作製したシート状の繊維強化熱可塑性樹脂複合材料から、ASTM D 256のTest Method A(Izod type)に準拠して測定した繊維強化熱可塑性複合材料のエッジワイズ衝撃強度(ノッチ付き)をいう。
【0035】
(3)消毒保管性
熱風循環式オーブン(ヤマト科学社製)を使用して、温度100℃で、40分の乾燥・消毒処理を行った後、熱風循環式オーブンの扉を開けた際の臭いを定性的に評価した。
[実施例1]
トレーの基材層を構成する材料として、Eガラスロービング(日本電気硝子社製、PP用ダイレクトロービング)にポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製)を含浸させたテープ状プリプレグ(強化繊維の体積含有率40%)を長さ25mmに切断した短冊状物を作製し、□430mmの金型に無作為に分散・堆積させ、金型温度220℃で加熱・溶融した後、100℃まで冷却することにより、厚さ3.0mmのシート状材料を得た。このシート状材料から、215×420mmのサイズにシート状材料を切断し、遠赤外線ヒーターによって220℃まで加熱した後、速やかにトレー用の金型の下金型にチャージした。
一方、トレーの表層部を形成するため、片面に印刷を施した2軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚み30μm)(東洋紡績社製)の印刷面に無延伸ポリプロピレンフィルム(厚み70μm)(東洋紡績社製)をラミネートした積層体を得た。この積層ポリプロピレンフィルムをトレー成形用金型の上金型にセットして、プレス成形機によるスタンピング成形を行い、トレーを得た。トレー成形用金型の温度は120℃、プレス成形の圧力は、25MPa、保圧時間は30秒で成形を行った。また、得られたトレーの重量は430gであった。
【0036】
得られたトレーから、JIS K 7055に準拠して曲げ試験片を切り出し、インストロン型万能試験機にて曲げ試験を行った。破壊に至る最大曲げ荷重を測定し、10本の平均の曲げ強度は、230MPaであった。
【0037】
一方、上記のシート状材料から、アイゾット衝撃強度測定用試験片を切り出し、試験を行った結果、アイゾット衝撃強度は1660J/mであった。
【0038】
得られたトレーを温度100℃に調整した熱風循環式オーブンにて、40分の乾燥・消毒処理を行った。その後、熱風循環式オーブンの扉を開けたところ、有機溶剤やスチレンモノマー等、気分が悪くなる臭いは無かった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のトレーは、熱風乾燥・消毒時にも樹脂モノマー等人体に不快な気体が放出されることがなく作業環境が良好で、大量に取り扱う際にも当たった時に互いが欠けるようなことがなく、軽量かつ強度及び衝撃性に優れるという特性を有していることから、学校給食や病院の配食時に盛りつけた食事をのせるという用途に好適に用いることができる他、例えば、航空機内等で低温の食材入り容器をトレーにのせたままで加熱するという配食用途にも用いることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 成形された繊維強化熱可塑性複合材料製のトレー
2 突起物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化熱可塑性複合材料からなる基材層と熱可塑性樹脂フィルムからなる表面層から構成されてなることを特徴とするトレー。
【請求項2】
前記トレーを構成する前記基材層と前記表面層とが一体化されていることを特徴とする請求項1記載のトレー。
【請求項3】
前記基材層を構成する繊維強化熱可塑性複合材料の強化繊維の体積含有率が、20〜50%であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のトレー。
【請求項4】
前記繊維強化熱可塑性複合材料を構成する強化繊維が、ガラス繊維および/または炭素繊維であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のトレー。
【請求項5】
前記表面層を構成する熱可塑性樹脂フィルムが、少なくとも延伸熱可塑性樹脂フィルム層/印刷インキ層/無延伸熱可塑性樹脂フィルム層からなる積層体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のトレー。
【請求項6】
前記表面層を構成する熱可塑性樹脂フィルムがポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂よりなる群から選ばれた一種以上の熱可塑性樹脂からなるフィルムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のトレー。
【請求項7】
前記基材層を構成する繊維強化熱可塑性複合材料が、テープ状プリプレグを所定の長さに切断した短冊状物を無作為に分散・堆積させ、該分散・堆積させたものを加圧下で加熱・溶融した後、冷却・固化することにより、短冊状物を一体化したシート状材料であって、該基材層が該シート状材料を成形したものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のトレー。

【図1】
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【公開番号】特開2011−168327(P2011−168327A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35785(P2010−35785)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】