トロイダル型無段変速機
【課題】部品製作、部品管理、組立作業が何れも容易になり、コスト低廉化を図り易く、しかも変速動作を安定させられる構造を実現する。
【解決手段】各トラニオン7b毎に1対ずつの段差面26a、26a同士の間隔を、各支持梁部23を中心とする各外輪16bの揺動方向に関して漸次変化させる。この間隔の大きさを、押圧装置が押圧力を発生せず、前記各外輪16bが中立位置に存在する状態でこれら各外輪16bの外周面と対向する部分で、これら各外輪16bが前記各支持梁部23の軸方向に変位する事を実質的に阻止する大きさの中立値とする。更に、前記押圧装置が押圧力を発生し、前記各支持梁部23を中心として前記各外輪16bが揺動変位した状態でこれら各外輪16bの外周面と対向する部分で、前記中立値よりも大きくする。
【解決手段】各トラニオン7b毎に1対ずつの段差面26a、26a同士の間隔を、各支持梁部23を中心とする各外輪16bの揺動方向に関して漸次変化させる。この間隔の大きさを、押圧装置が押圧力を発生せず、前記各外輪16bが中立位置に存在する状態でこれら各外輪16bの外周面と対向する部分で、これら各外輪16bが前記各支持梁部23の軸方向に変位する事を実質的に阻止する大きさの中立値とする。更に、前記押圧装置が押圧力を発生し、前記各支持梁部23を中心として前記各外輪16bが揺動変位した状態でこれら各外輪16bの外周面と対向する部分で、前記中立値よりも大きくする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば車両(自動車)用の自動変速機、建設機械(建機)用の自動変速機、航空機(固定翼機、回転翼機、飛行船等)等で使用されるジェネレータ(発電機)用の自動変速機、ポンプ等の各種産業機械の運転速度を調節する為の自動変速機として利用する、ハーフトロイダル型のトロイダル型無段変速機の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用変速装置としてハーフトロイダル型のトロイダル型無段変速機を使用する事が、特許文献1〜4等の多くの刊行物に記載されると共に一部で実施されていて周知である。又、トロイダル型無段変速機と遊星歯車機構とを組み合わせて変速比の調整幅を広くする構造も、特許文献5等、やはり多くの刊行物に記載されて、従来から広く知られている。図11〜12は、これら各特許文献に記載されて従来から広く知られているトロイダル型無段変速機の第1例を示している。この従来構造の第1例の場合、入力回転軸1の両端寄り部分の周囲に1対の入力ディスク2、2を、それぞれがトロイド曲面である内側面同士を互いに対向させた状態で、前記入力回転軸1と同期した回転を自在に支持している。又、この入力回転軸1の中間部周囲に出力筒3を、この入力回転軸1に対する回転を自在に支持している。又、この出力筒3の外周面には、軸方向中央部に出力歯車4を固設すると共に、軸方向両端部に1対の出力ディスク5、5を、スプライン係合により、前記出力筒3と同期した回転を自在に支持している。又、この状態で、それぞれがトロイド曲面である、前記両出力ディスク5、5の内側面を、前記両入力ディスク2、2の内側面に対向させている。
【0003】
又、前記両入力ディスク2、2と前記両出力ディスク5、5との間に、それぞれの周面を球状凸面とした複数個のパワーローラ6、6を挟持している。これら各パワーローラ6、6は、それぞれトラニオン7、7に回転自在に支持されており、これら各トラニオン7、7は、それぞれ前記各ディスク2、5の中心軸に対し捩れの位置にある傾転軸8、8を中心とする揺動変位自在に支持されている。即ち、前記各トラニオン7、7は、それぞれの軸方向両端部に互いに同心に設けられた1対の傾転軸8、8と、これら各傾転軸8、8同士の間に存在する支持梁部9、9とを備えており、これら各傾転軸8、8が、支持板10、10に対し、ラジアルニードル軸受11、11を介して枢支されている。
【0004】
又、前記各パワーローラ6、6は、前記各トラニオン7、7を構成する支持梁部9、9の内側面に、基半部と先半部とが互いに偏心した支持軸12、12と、複数の転がり軸受とを介して、これら各支持軸12、12の先半部回りの回転、及び、これら各支持軸12、12の基半部を中心とする若干の揺動変位自在に支持されている。この様な各パワーローラ6、6の外側面と、前記各トラニオン7、7を構成する支持梁部9、9の内側面との間には、それぞれが前記複数の転がり軸受の一部である、スラスト玉軸受13、13と、スラストニードル軸受14、14とを、前記各パワーローラ6、6の側から順番に設けている。このうちのスラスト玉軸受13、13は、これら各パワーローラ6、6に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ6、6の回転を許容するものである。前記各スラスト玉軸受13、13は、これら各パワーローラ6、6の外側面に形成された内輪軌道15と、外輪16の内側面に形成された外輪軌道17との間に複数個の玉18、18を、転動自在に設けて成る。又、前記各スラストニードル軸受14、14は、前記各パワーローラ6、6から前記各スラスト玉軸受13、13を構成する外輪16、16に加わるスラスト荷重を支承しつつ、これら各外輪16、16及び前記各支持軸12、12の先半部が、これら各支持軸12、12の基半部を中心に揺動する事を許容するものである。
【0005】
上述の様なトロイダル型無段変速機の運転時には、駆動軸19により一方(図11の左方)の入力ディスク2を、押圧装置20を介して回転駆動する。この結果、前記入力回転軸1の両端部に支持された1対の入力ディスク2、2が、互いに近づく方向に押圧されつつ同期して回転する。そして、この回転が、前記各パワーローラ6、6を介して前記両出力ディスク5、5に伝わり、前記出力歯車4から取り出される。前記入力回転軸1と前記出力歯車4との間の変速比を変える場合は、油圧式のアクチュエータ21、21により前記各トラニオン7、7を前記各傾転軸8、8の軸方向に変位させる。この結果、前記各パワーローラ6、6の周面と前記各ディスク2、5の内側面との転がり接触部(トラクション部)に作用する、接線方向の力の向きが変化する(転がり接触部にサイドスリップが発生する)。そして、この力の向きの変化に伴って前記各トラニオン7、7が、自身の傾転軸8、8を中心に揺動し、前記各パワーローラ6、6の周面と前記各ディスク2、5の内側面との接触位置が変化する。これら各パワーローラ6、6の周面を、前記両入力ディスク2、2の内側面の径方向外寄り部分と、前記両出力ディスク5、5の内側面の径方向内寄り部分とに転がり接触させれば、前記入力回転軸1と前記出力歯車4との間の変速比が増速側になる。これに対して、前記各パワーローラ6、6の周面を、前記両入力ディスク2、2の内側面の径方向内寄り部分と、前記両出力ディスク5、5の内側面の径方向外寄り部分とに転がり接触させれば、前記入力回転軸1と前記出力歯車4との間の変速比が減速側になる。
【0006】
上述の様なトロイダル型無段変速機の運転時には、動力の伝達に供される各部材、即ち、前記入力、出力各ディスク2、5と前記各パワーローラ6、6とが、前記押圧装置20が発生する押圧力に基づいて弾性変形する。そして、この弾性変形に伴って、前記入力、出力各ディスク2、5が軸方向に変位する。又、前記押圧装置20が発生する押圧力は、前記トロイダル型無段変速機により伝達するトルクが大きくなる程大きくなり、それに伴って前記各部材2、5、6の弾性変形量も多くなる。従って、前記トルクの変動に拘らず、前記入力、出力各ディスク2、5の内側面と前記各パワーローラ6、6の周面との接触状態を適正に維持する為に、前記各トラニオン7、7に対してこれら各パワーローラ6、6を、前記各ディスク2、5の軸方向に変位させる機構が必要になる。上述した従来構造の第1例の場合には、前記各パワーローラ6、6を支持した前記各支持軸12、12の先半部を、同じく基半部を中心として揺動変位させる事により、前記各パワーローラ6、6を前記軸方向に変位させる様にしている。
【0007】
上述の様な従来構造の第1例の場合、前記各パワーローラ6、6を前記軸方向に変位させる為の構造が複雑で、部品製作、部品管理、組立作業が何れも面倒になり、コストが嵩む事が避けられない。この様な問題を解決する為の技術として前記特許文献3には、図13〜18に示す様な構造が記載されている。本発明は、この図13〜18に示した従来構造の第2例を改良するものであるから、次に、この従来構造の第2例に就いて説明する。この従来構造の第2例の特徴は、トラニオン7aに対してパワーローラ6aを、入力、出力各ディスク2、5(図11参照)の軸方向の変位を可能に支持する部分の構造にあり、トロイダル型無段変速機全体としての構造及び作用は、前述の図11〜12に示した従来構造の第1例と同様である。
【0008】
前記従来構造の第2例を構成するトラニオン7aは、両端部に互いに同心に設けられた1対の傾転軸8a、8bと、これら両傾転軸8a、8b同士の間に存在し、少なくとも入力、出力各ディスク2、5(図11参照)の径方向(図14、16〜18の上下方向)に関する内側(図14、17〜18の上側)の側面を円筒状凸面22とした、支持梁部23とを備える。前記両傾転軸8a、8bは、それぞれラジアルニードル軸受11a、11aを介して、支持板10、10(図12参照)に、揺動を可能に支持する。
【0009】
又、前記円筒状凸面22の中心軸イは、図14、17〜18に示す様に、前記両傾転軸8a、8bの中心軸ロと平行で、これら両傾転軸8a、8bの中心軸ロよりも、前記各ディスク2、5の径方向に関して外側(図14、17〜18の下側)に存在する。又、前記支持梁部23とパワーローラ6aの外側面との間に設けるスラスト玉軸受13aを構成する外輪16aの外側面に、部分円筒面状の凹部24を、この外側面を径方向に横切る状態で設けている。そして、この凹部24と、前記支持梁部23の円筒状凸面22とを係合させ、前記トラニオン7aに対して前記外輪16aを、前記各ディスク2、5の軸方向に関する揺動変位を可能に支持している。
【0010】
又、前記外輪16aの内側面中央部に支持軸12aを、この外輪16aと一体に固設して、前記パワーローラ6aをこの支持軸12aの周囲に、ラジアルニードル軸受25を介して、回転自在に支持している。更に、前記トラニオン7aの内側面のうち、前記支持梁部23の両端部と1対の傾転軸8a、8bとの連続部に、互いに対向する1対の段差面26、26を設けている。そして、これら両段差面26、26と、前記スラスト玉軸受13aを構成する外輪16aの外周面とを、当接若しくは近接対向させて、前記パワーローラ6aからこの外輪16aに加わるトラクション力を、何れかの段差面26、26で支承可能としている。
【0011】
上述の様に構成する従来構造の第2例のトロイダル型無段変速機によれば、前記パワーローラ6aを前記各ディスク2、5の軸方向に変位させて、構成各部材の弾性変形量の変化に拘らず、このパワーローラ6aの周面と前記各ディスク2、5との接触状態を適正に維持できる構造を、簡単で低コストに構成できる。
即ち、トロイダル型無段変速機の運転時に、入力、出力各ディスク2、5、各パワーローラ6a等の弾性変形に基づき、これら各パワーローラ6aをこれら各ディスク2、5の軸方向に変位させる必要が生じると、これら各パワーローラ6aを回転自在に支持している前記スラスト玉軸受13aの外輪16aが、外側面に設けた部分円筒面状の凹部24と支持梁部23の円筒状凸面22との当接面を滑らせつつ、この円筒状凸面22の中心軸イを中心として揺動変位する。この揺動変位に基づき、前記各パワーローラ6aの周面のうちで、前記各ディスク2、5の軸方向片側面と転がり接触する部分が、これら各ディスク2、5の軸方向に変位し、前記接触状態を適正に維持する。
【0012】
前述した通り、前記円筒状凸面22の中心軸イは、変速動作の際に各トラニオン7aの揺動中心となる傾転軸8a、8bの中心軸ロよりも、前記各ディスク2、5の径方向に関して外側に存在する。従って、前記円筒状凸面22の中心軸イを中心とする揺動変位の半径は、前記変速動作の際の揺動半径よりも大きく、前記両入力ディスク2、2と前記両出力ディスク5、5との間の変速比の変動に及ぼす影響は少ない(無視できるか、容易に修正できる範囲に留まる)。
【0013】
図13〜18に示した従来構造の第2例の場合、図11〜12に示した同第1例に比べて、部品製作、部品管理、組立作業が何れも容易になり、コスト低廉化を図り易いが、変速動作を安定させる面からは、改良の余地がある。この理由は、前記各支持梁部23を中心とする前記各外輪16aの揺動変位を円滑に行わせる為、これら各支持梁部23の両端部分に1対ずつ設けた、前記各段差面26、26同士の間隔Dを、前記各外輪16aの外径dよりも少し大きく(D>d)する為である。これら各外輪16a、及び、これら各外輪16aと同心に支持された前記各パワーローラ6aは、前記間隔Dと前記外径dとの差(D−d)分だけ、前記各支持梁部23の軸方向に変位可能になる。
【0014】
一方、トロイダル型無段変速機を搭載した車両の運転時、前記各パワーローラ6aには前記各ディスク2、5から、加速時と減速時(エンジンブレーキの作動時)とで逆方向の力(トロイダル型無段変速機の技術分野で周知の「2Ft」)が加わる。そして、この力2Ftにより、前記各パワーローラ6aが、前記各外輪16aと共に、前記各支持梁部23の軸方向に変位する。この変位の方向は、前述した各アクチュエータ21、21による各トラニオン7、7(図12参照)の変位方向と同じであり、変位量が0.1mm程度であっても、変速動作が開始される可能性を生じる。そして、この様な原因で変速動作が開始された場合には、運転動作とは直接関連しない変速動作となり、何れ修正されるにしても、運転者に違和感を与える。特に、トロイダル型無段変速機が伝達するトルクが低い状態で、上述の様な、運転者が意図しない変速が行われると、運転者に与える違和感が大きくなり易い。
【0015】
上述の様にして生じる、運転動作とは直接関連しない変速動作の発生を抑える為には、前記間隔Dと前記外径dとの差(D−d)を僅少に(例えば数十μm程度に)抑える事が考えられる。但し、ハーフトロイダル型のトロイダル型無段変速機の運転時には、トラクション部から前記各パワーローラ6a、前記各外輪16aを介して前記各支持梁部23に加わるスラスト荷重により、前記各トラニオン7aが、図19に誇張して示す様に、前記各外輪16aを設置した側が凹となる方向に弾性変形する。そして、この弾性変形の結果、前記各トラニオン7a毎に1対ずつ設けた段差面26、26同士の間隔が縮まる。この様な状態でも、これら各段差面26、26同士の間隔Dが前記各外輪16aの外径d以下にならない様にする為には、通常状態(前記各トラニオン7aが弾性変形していない状態)での、前記間隔Dと前記外径dとの差を或る程度確保する必要がある。この結果、特に違和感が大きくなり易い、低トルクでの運転時に、上述の様な、運転動作とは直接関連しない変速動作が発生し易くなる。
【0016】
一方、前記特許文献3には、支持梁部側に設けた円筒状凸面の一部に係止したアンカ駒と、外輪側の凹部の内面に形成したアンカ溝とを係合させる事により、前記力2Ftを支承する構造が記載されている。又、円筒状凸面と凹部との互いに整合する部分に形成された、それぞれが断面円弧形である転動溝同士の間に複数個の玉を掛け渡して、前記力2Ftを支承する構造も記載されている。但し、前者の構造の場合には、前記アンカ駒を前記支持梁部に、前記力2Ftを支承できる程度の強度及び剛性を確保して支持固定する事が難しく、低コスト化と十分な信頼性確保とを図りにくい。又、後者の場合には、前記力2Ftが大きくなり、前記各玉の転動面と前記各転動溝との転がり接触部の面圧が上昇すると、これら各転動溝の内面に圧痕が形成され、各トラニオンに対して各外輪が揺動変位する際に振動が発生する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2003−214516号公報
【特許文献2】特開2007−315595号公報
【特許文献3】特開2008−25821号公報
【特許文献4】特開2008−275088号公報
【特許文献5】特開2004−169719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上述の様な事情に鑑み、部品製作、部品管理、組立作業が何れも容易になり、コスト低廉化を図り易く、しかも変速動作を安定させられる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明のトロイダル型無段変速機は、少なくとも1対のディスクと、複数のトラニオンと、これら各トラニオンと同数のパワーローラと、同じく同数のスラスト転がり軸受と、押圧装置とを備える。
特に、本発明のトロイダル型無段変速機に於いては、前記各トラニオン毎に1対ずつの段差面同士の間隔を、各支持梁部を中心とする各外輪の揺動方向に関して漸次変化させている。
又、前記間隔の大きさは、前記押圧装置が押圧力を発生せず、前記各外輪が中立位置に存在する状態でこれら各外輪の外周面と対向する部分で、これら各外輪が前記各支持梁部の軸方向に変位する事を実質的に阻止する大きさである、中立値としている。
更に、前記押圧装置が押圧力を発生し、前記各ディスク及び前記各パワーローラの弾性変形に伴って前記各支持梁部を中心として前記各外輪が揺動変位した状態でこれら各外輪の外周面と対向する部分で、前記中立値よりも大きくしている。
尚、軸方向に関する変位を実質的に阻止するとは、前記各外輪に支持されたパワーローラが前記各支持梁部の軸方向に、変速動作を開始する程変化する事がない状態を言う。この変速動作は、前記各パワーローラが前記軸方向に0.1mm程度変位した場合でも開始される可能性がある。そこで、前記中立値は、前記各外輪のうちで前記各段差面に挟まれる部分の直径以上であるが、この直径よりも0.1mm大きな値未満とする。
【0020】
上述の様な本発明を実施する場合に、例えば請求項2に記載した発明の様に、前記各トラニオン毎に1対ずつの段差面同士の間隔を、前記各外輪の揺動方向に一致する、これら各段差面の幅方向中央部で最も狭くする。そして、この最も狭くなった部分の間隔の大きさを、前記中立値とする。
【0021】
或いは、請求項3に記載した発明の様に、前記各トラニオン毎に1対ずつの段差面同士の間隔を、前記各外輪の揺動方向に一致する、これら各段差面の幅方向に関して、一端から他端に向けて変化させる。そして、これら各段差面の幅方向中間部の間隔の大きさを、前記中立値とする。且つ、前記押圧装置による押圧力の作用方向を、この押圧力に基づいて前記各外輪を、前記各段差面の間隔が大きい方向に変位させる方向とする。
【発明の効果】
【0022】
上述の様に構成する本発明のトロイダル型無段変速機によれば、部品製作、部品管理、組立作業が何れも容易になり、コスト低廉化を図り易く、しかも変速動作を安定させられる構造を実現できる。
このうちのコスト低廉化は、前述の図13〜18に示した従来構造の第2例と同様の理由により、図り易い。
【0023】
又、変速動作の安定化は、各トラニオン毎に1対ずつ設けた段差面同士の間隔を、これら各トラニオンの支持梁部の軸方向に関する外輪の変位を実質的に阻止し、且つ、この間隔の大きさを、これら各支持梁部を中心とするこれら各外輪の揺動変位の方向に対応して漸次変化させている事により図れる。
先ず、前記各外輪が中立位置に存在する場合には、前記間隔の大きさが、これら各外輪の軸方向変位を実質的に阻止する中立値である事で、変速動作の安定化を図れる。
これに対して、トロイダル型無段変速機が伝達するトルクが大きくなり、押圧装置が発生する押圧力が大きくなる結果、前記各外輪が前記各支持梁部を中心として揺動変位すると、これら各外輪が前記間隔が大きくなっている部分に変位すると同時に、前記各支持梁部の弾性変形に伴ってこの間隔が小さくなる。
【0024】
そこで、前記各支持梁部の剛性と前記間隔が変化する程度とを適切に規制すれば、前記トルクの変化に拘らず、前記各外輪が前記各支持梁部の軸方向に変位する事を、常に実質的に阻止でき、しかも、これら各支持梁部を中心とする前記各外輪の揺動変位を円滑に行わせる事ができる。この結果、前記変速動作の安定化を図れる。
尚、前記各支持梁部の剛性と前記間隔が変化する程度とを規制する事は、前記各トラニオンを構成する金属材料の物性、これら各トラニオンの形状及び寸法、前記伝達するトルクの大きさ等を考慮して、従来から知られた弾性理論等に基づき、コンピュータシミュレーションにより求める他、実験により求める事もできる。これらコンピュータシミュレーションと実験とを併用すれば、前記各段差面が前記各外輪を強く挟み込む事を防止し、且つ、これら各外輪が前記各支持梁部の軸方向に変位する事を十分に阻止できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す、トラニオンと外輪とを取り出して、各ディスクの径方向内側から見た斜視図。
【図2】同じく径方向内方から見た正投影図。
【図3】図2のa部拡大図。
【図4】本発明の実施の形態の第2例を示す、図2と同様の図。
【図5】同第3例を示す、図1と同様の図。
【図6】同じく径方向内方から見た正投影図。
【図7】図6のb部拡大図。
【図8】同じく、トラニオン及びパワーローラと押圧装置との配置状態を説明する為の模式図。
【図9】同じく、トロイダル型無段変速機の運転時に、トラニオンの段差面と外輪の外周面との当接部に働く力の方向を説明する為の模式図。
【図10】本発明の実施の形態の第4〜5例を示す、図6と同様の図。
【図11】従来構造の第1例を示す断面図。
【図12】図11のc−c断面図。
【図13】従来構造の第2例を示す、スラスト玉軸受を介してパワーローラを支持したトラニオンを、各ディスクの径方向外側から見た斜視図。
【図14】同じく、ディスクの周方向から見た状態で示す正面図。
【図15】図14の上方から見た平面図。
【図16】図14の右方から見た側面図。
【図17】図15のd−d断面図。
【図18】図14のe−e断面図。
【図19】パワーローラから加わるスラスト荷重に基づいてトラニオンが弾性変形した状態を誇張して示す、図17と同方向から見た断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[実施の形態の第1例]
図1〜3は、請求項1、2に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例の特徴は、変速動作を安定させるべく、各トラニオン7bの支持梁部23に対し、スラスト玉軸受13a(図13〜18参照)を構成する外輪16bを、これら各支持梁部23に対する揺動変位を可能に支持しつつ、これら各支持梁部23の軸方向に変位しない様にする為の構造にある。その他の部分の構造及び作用は、前述の図13〜18に示した従来構造の第2例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は、省略
若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
【0027】
本例の構造の場合、前記各トラニオン7b毎に1対ずつの段差面26a、26a同士の間隔を、前記各支持梁部23を中心とする前記各外輪16bの揺動方向に関して漸次変化させている。具体的には、前記各段差面26a、26aを、部分円筒面状の凸曲面としている。そして、これら各段差面26a、26aは、入力、出力各ディスク2、5(図11参照)の回転方向に一致する、これら各段差面26a、26aの幅方向(前記外輪16bの揺動方向、図2の左右方向)に関する中央部で最も突出しており、この中央部を境として対称形状である。従って、前記各トラニオン7b毎に1対ずつの段差面26a、26a同士の間隔は、これら各段差面26a、26aの幅方向中央部で最も狭くなっている。
【0028】
トロイダル型無段変速機に組み込んだ押圧装置20(図11参照)が押圧力を発生しない状態では、前記各ディスク2、5及び各パワーローラ6a(図13〜18)が弾性変形せず、これら各パワーローラ6aがこれら各ディスク2、5の軸方向に変位しない。従って、前記各外輪16bが中立位置に存在する。そして、この状態では、これら各外輪16bが、前記各段差面26a、26aの間部分のうち、最も間隔が狭くなった部分に位置する。本例の場合には、この最も狭くなった部分の間隔Dを、前記各外輪16bの外径dよりも僅かに小さくしている。具体的には、これら各外輪16bを、前記各トラニオン7b毎に1対ずつの段差面26a、26a同士の間に配置した状態で、前記各外輪16bが前記各支持梁部23を中心として揺動変位する事は許容するが、これら各支持梁部23の軸方向に変位する事を実質的に阻止する大きさとしている。
【0029】
より具体的には、前記間隔Dを、前記外径d以上で、この外径dよりも0.1mm大きな値未満{d≦D<(d+0.1mm)}としている。尚、前記間隔Dと前記外径dとの大小関係は、同じになる事はあっても逆転しない(前記1対ずつの段差面26a、26a同士の間で前記各外輪16bを、締り嵌めで挟持しない)様に、好ましくは、「外径d」<「間隔D」の状態を確保する。この間隔Dの値を上述の範囲に設定される中立値に規制する事により、前記各外輪16bを前記各支持梁部23に対して揺動変位可能に、且つ、軸方向の変位を実質的に阻止した(軸方向の変位を0.1mm未満に抑えた)状態で支持できる。前記間隔Dの中立値を上述の範囲に規制しているのに対して、この中立値以外で前記1対ずつの段差面26a、26a同士の間隔は、これら各段差面26a、26aの幅方向両端部に向かうに従って漸次大きくなる。この大きくなる程度は、前記押圧装置20が発生する押圧力に基づく、前記各外輪16bの揺動角度と、前記各支持梁部23の弾性変形に基づく前記各段差面26a、26a同士の間隔の収縮量との関係で規制する。具体的には、前記押圧力に基づいて、前記揺動角度とこの間隔とが変化した状態でも、この間隔と前記外径dとの関係が上述した範囲内(「間隔」−「外径d」=0〜0.1mm)に収まる様にしている。
【0030】
上述の様に構成する本例のトロイダル型無段変速機によれば、前述の図13〜18に示した従来構造の第2例と同様の理由により、部品製作、部品管理、組立作業が何れも容易になり、コスト低廉化を図り易くできる。
特に本例のトロイダル型無段変速機の場合には、前記各トラニオン7b毎に1対ずつ設けた段差面26a、26a同士の間隔を上述の様に規制しているので、変速動作の安定化を図れる。
【0031】
先ず、前記押圧装置20が発生している押圧力が零若しくは僅少の場合には、前記入力、出力各ディスク2、5及び前記各パワーローラ6aの弾性変形量も、前記支持梁部23の弾性変形量も、何れも零若しくは僅少であり、前記各外輪16bが、前記各段差面26a、26aの幅方向中央部である中立位置に存在する。この状態では、前記間隔Dと前記外径dとの差が0.1mm未満であるから、前記各支持梁部23の軸方向に関する前記各外輪16bの変位が実質的に阻止されて、変速動作の安定化を図れる。
【0032】
これに対して、トロイダル型無段変速機が伝達するトルクが大きくなり、前記押圧装置20が発生する押圧力が大きくなると、前記入力、出力各ディスク2、5及び前記各パワーローラ6aの弾性変形量が増大して、これら各パワーローラ6aがこれら各ディスク2、5の軸方向に変位する。そして、この軸方向変位に伴って、前記各外輪16bが前記各支持梁部23を中心として揺動変位し、これら各外輪16bの位置が、前記中立位置から外れる。具体的には、これら各外輪16bは、前記1対ずつの段差面26a、26a同士の間隔が大きい部分に向けて変位する。同時に、前記各パワーローラ6aに加わるスラスト荷重が大きくなり、このスラスト荷重を支承する、前記各支持梁部23の弾性変形量も増大する。そして、前記1対ずつの段差面26a、26a同士の間隔が縮まる傾向になる。
【0033】
要するに、前記伝達トルクが大きくなると、前記各外輪16bが前記1対ずつの段差面26a、26a同士の間隔が大きい部分に変位すると同時に、この間隔が縮まる。この様に、前記各外輪16bの間隔が変化する傾向が互いに逆になり(相殺され)、前記1対ずつの段差面26a、26aのうちで前記各外輪16bを挟持している部分の間隔が、この外輪16bの外径dよりも僅かに(0.1mm未満だけ)小さい状態となる。この結果、前記伝達トルクの変化に拘らず、前記各外輪16bが前記各支持梁部23の軸方向に変位する事を、常に実質的に阻止でき、しかも、これら各支持梁部23を中心とする前記各外輪16bの揺動変位を円滑に行わせて、前記トロイダル型無段変速機の変速動作の安定化を図れる。
尚、本例の場合には、前記各段差面26a、26aの形状を、これら各段差面26a、26aの幅方向中央部を境に対称としているので、トロイダル型無段変速機に組み込む複数の(例えば図12で左右両側の)トラニオン7bとして、同形状のものを使用できる。
【0034】
[実施の形態の第2例]
図4も、請求項1、2に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、各トラニオン7c毎に1対ずつ設けた段差面26b、26bの形状を、それぞれ1対ずつの平坦面を組み合わせた形状としている。即ち、これら各段差面26b、26bを前記各トラニオン7cの内側面側から見た形状を、頂角が180度よりも少し小さいだけの二等辺三角状を構成する、1対の斜辺状としている。その他の部分の構成及び作用は、上述した実施の形態の第1例と同様であるから、重複する説明は省略する。
【0035】
[実施の形態の第3例]
図5〜9は、請求項1、3に対応する、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合には、各トラニオン7d毎に1対ずつの段差面26c、26c同士の間隔を、各外輪16bの揺動方向に一致するこれら各段差面26c、26cの幅方向に関して、一端から他端に向けて変化させている。即ち、これら各段差面26c、26cを、入力、出力各ディスク2、5(図11参照)の回転方向に関して、互いに逆方向に傾斜させて、前記1対ずつの段差面26c、26c同士の間隔が、図5の左上から右下に向かう程、図6の左から右に向かう程、広くなる様にしている。そして、前記1対ずつの段差面26c、26cの幅方向中間部の間隔Dの大きさを中立値、即ち、前記各外輪16bの外径dと同じかこれよりも僅かに(0.1mm未満だけ)大きな値としている。
【0036】
上述の様な本例の構造の場合も、トロイダル型無段変速機の伝達トルクが小さい場合には、前記中立値Dと前記各外輪16bの外径dとの差が僅少である事により、変速動作を安定させられる。又、前記伝達トルクが大きくなると、前記各外輪16bが前記1対ずつの段差面26c、26c同士の間隔が大きい部分に変位すると同時に、この間隔が縮まる。従って、前記伝達トルクの変化に拘らず、前記各外輪16bが前記各支持梁部23の軸方向に変位する事を、常に実質的に阻止できる。しかも、これら各支持梁部23を中心とする前記各外輪16bの揺動変位を円滑に行わせて、前記トロイダル型無段変速機の変速動作の安定化を図れる。
【0037】
但し、本例の構造の場合には、前記各段差面26c、26cの形状が、前記各ディスク2、5の回転方向に関して非対称であるから、前記各トラニオン7dの設置方向と押圧装置20の設置位置とを適切に規制する必要がある。具体的には、図8に示す様に、この押圧装置20による押圧力の作用方向を、この押圧力に基づいて前記各外輪16bを、前記1対ずつの段差面26c、26c同士の間隔が大きい方向に変位させる方向とする。例えば、図11に示す様な、ダブルキャビティ型で押圧装置20を端部に設置するトロイダル型無段変速機の場合には、前記1対ずつの段差面26c、26c同士の間隔が、中央部に向かうに従って広くなる様に配置する。これに対して、押圧装置を中央部に配置する構造の場合には、前記1対ずつの段差面26c、26c同士の間隔が、端部に向かうに従って広くなる様に配置する。
【0038】
上述の様な本例の構造の場合には、トロイダル型無段変速機に組み込む複数のトラニオン7dとして、前記各段差面26c、26cの傾斜方向が異なる、少なくとも2種類のものを用意する必要がある。その代わりに本例の構造の場合には、前記各段差面26c、26cの加工が容易である事に加えて、前記押圧装置20が押圧力を発生する初期段階から、前記各外輪16bを前記間隔が広い側に、より変位させ易くできる。この点に就いて、図9を参照しつつ説明する。トロイダル型無段変速機の運転時に前記各外輪16bには、パワーローラ6a(図13〜18参照)から、前記2Ftなる力が、前記各ディスク2、5の回転方向に加わり、前記各外輪16bの外周面の一部が、何れかの段差面26cに押し付けられる。この押し付けの結果、これら各外輪16bをこの段差面26cの傾斜方向に移動させる方向の分力fが発生するが、この分力fの方向は、前記各ディスク2、5等の弾性変形により、前記各外輪16bが揺動変位する方向と一致する。この為、この揺動変位を、より円滑に行わせる事ができる。その他の部分の構成及び作用は、前述した実施の形態の第1例と同様であるから、重複する説明は省略する。
【0039】
[実施の形態の第4〜5例]
図10も、請求項1、3に対応する、本発明の実施の形態の第4〜5例を示している。これら両例の場合には、それぞれ段差面26d、26eの形状を、部分円筒面状の凸曲面{図10の(A)の段差面26d、26d}又は凹曲面{図10の(B)の段差面26e、26e}としている。これら各段差面26d、26eを構成する曲面の曲率半径や傾斜角度等は、伝達トルクの増大に伴う、外輪16bの揺動変位量や支持梁部23の弾性変形量等に応じて設計的に(コンピュータシミュレーションや実験等に応じて)決定する。その他の部分の構成及び作用は、上述した実施の形態の第3例と同様であるから、重複する説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、トロイダル型無段変速機単独で実施できる他、特許文献5に記載されている様な、遊星歯車機構と組み合わせた無段変速装置として実施する事もできる。又、押圧装置は、図11に示す様な、機械式のローディングカム装置に限らず、油圧式のものであっても良い。
【符号の説明】
【0041】
1 入力回転軸
2 入力ディスク
3 出力筒
4 出力歯車
5 出力ディスク
6、6a パワーローラ
7、7a、7b、7c、7d トラニオン
8、8a、8b 傾転軸
9 支持梁部
10 支持板
11、11a ラジアルニードル軸受
12、12a 支持軸
13、13a スラスト玉軸受
14 スラストニードル軸受
15 内輪軌道
16、16a、16b 外輪
17 外輪軌道
18 玉
19 駆動軸
20 押圧装置
21 アクチュエータ
22 円筒状凸面
23 支持梁部
24 凹部
25 ラジアルニードル軸受
26、26a〜26e 段差面
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば車両(自動車)用の自動変速機、建設機械(建機)用の自動変速機、航空機(固定翼機、回転翼機、飛行船等)等で使用されるジェネレータ(発電機)用の自動変速機、ポンプ等の各種産業機械の運転速度を調節する為の自動変速機として利用する、ハーフトロイダル型のトロイダル型無段変速機の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用変速装置としてハーフトロイダル型のトロイダル型無段変速機を使用する事が、特許文献1〜4等の多くの刊行物に記載されると共に一部で実施されていて周知である。又、トロイダル型無段変速機と遊星歯車機構とを組み合わせて変速比の調整幅を広くする構造も、特許文献5等、やはり多くの刊行物に記載されて、従来から広く知られている。図11〜12は、これら各特許文献に記載されて従来から広く知られているトロイダル型無段変速機の第1例を示している。この従来構造の第1例の場合、入力回転軸1の両端寄り部分の周囲に1対の入力ディスク2、2を、それぞれがトロイド曲面である内側面同士を互いに対向させた状態で、前記入力回転軸1と同期した回転を自在に支持している。又、この入力回転軸1の中間部周囲に出力筒3を、この入力回転軸1に対する回転を自在に支持している。又、この出力筒3の外周面には、軸方向中央部に出力歯車4を固設すると共に、軸方向両端部に1対の出力ディスク5、5を、スプライン係合により、前記出力筒3と同期した回転を自在に支持している。又、この状態で、それぞれがトロイド曲面である、前記両出力ディスク5、5の内側面を、前記両入力ディスク2、2の内側面に対向させている。
【0003】
又、前記両入力ディスク2、2と前記両出力ディスク5、5との間に、それぞれの周面を球状凸面とした複数個のパワーローラ6、6を挟持している。これら各パワーローラ6、6は、それぞれトラニオン7、7に回転自在に支持されており、これら各トラニオン7、7は、それぞれ前記各ディスク2、5の中心軸に対し捩れの位置にある傾転軸8、8を中心とする揺動変位自在に支持されている。即ち、前記各トラニオン7、7は、それぞれの軸方向両端部に互いに同心に設けられた1対の傾転軸8、8と、これら各傾転軸8、8同士の間に存在する支持梁部9、9とを備えており、これら各傾転軸8、8が、支持板10、10に対し、ラジアルニードル軸受11、11を介して枢支されている。
【0004】
又、前記各パワーローラ6、6は、前記各トラニオン7、7を構成する支持梁部9、9の内側面に、基半部と先半部とが互いに偏心した支持軸12、12と、複数の転がり軸受とを介して、これら各支持軸12、12の先半部回りの回転、及び、これら各支持軸12、12の基半部を中心とする若干の揺動変位自在に支持されている。この様な各パワーローラ6、6の外側面と、前記各トラニオン7、7を構成する支持梁部9、9の内側面との間には、それぞれが前記複数の転がり軸受の一部である、スラスト玉軸受13、13と、スラストニードル軸受14、14とを、前記各パワーローラ6、6の側から順番に設けている。このうちのスラスト玉軸受13、13は、これら各パワーローラ6、6に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ6、6の回転を許容するものである。前記各スラスト玉軸受13、13は、これら各パワーローラ6、6の外側面に形成された内輪軌道15と、外輪16の内側面に形成された外輪軌道17との間に複数個の玉18、18を、転動自在に設けて成る。又、前記各スラストニードル軸受14、14は、前記各パワーローラ6、6から前記各スラスト玉軸受13、13を構成する外輪16、16に加わるスラスト荷重を支承しつつ、これら各外輪16、16及び前記各支持軸12、12の先半部が、これら各支持軸12、12の基半部を中心に揺動する事を許容するものである。
【0005】
上述の様なトロイダル型無段変速機の運転時には、駆動軸19により一方(図11の左方)の入力ディスク2を、押圧装置20を介して回転駆動する。この結果、前記入力回転軸1の両端部に支持された1対の入力ディスク2、2が、互いに近づく方向に押圧されつつ同期して回転する。そして、この回転が、前記各パワーローラ6、6を介して前記両出力ディスク5、5に伝わり、前記出力歯車4から取り出される。前記入力回転軸1と前記出力歯車4との間の変速比を変える場合は、油圧式のアクチュエータ21、21により前記各トラニオン7、7を前記各傾転軸8、8の軸方向に変位させる。この結果、前記各パワーローラ6、6の周面と前記各ディスク2、5の内側面との転がり接触部(トラクション部)に作用する、接線方向の力の向きが変化する(転がり接触部にサイドスリップが発生する)。そして、この力の向きの変化に伴って前記各トラニオン7、7が、自身の傾転軸8、8を中心に揺動し、前記各パワーローラ6、6の周面と前記各ディスク2、5の内側面との接触位置が変化する。これら各パワーローラ6、6の周面を、前記両入力ディスク2、2の内側面の径方向外寄り部分と、前記両出力ディスク5、5の内側面の径方向内寄り部分とに転がり接触させれば、前記入力回転軸1と前記出力歯車4との間の変速比が増速側になる。これに対して、前記各パワーローラ6、6の周面を、前記両入力ディスク2、2の内側面の径方向内寄り部分と、前記両出力ディスク5、5の内側面の径方向外寄り部分とに転がり接触させれば、前記入力回転軸1と前記出力歯車4との間の変速比が減速側になる。
【0006】
上述の様なトロイダル型無段変速機の運転時には、動力の伝達に供される各部材、即ち、前記入力、出力各ディスク2、5と前記各パワーローラ6、6とが、前記押圧装置20が発生する押圧力に基づいて弾性変形する。そして、この弾性変形に伴って、前記入力、出力各ディスク2、5が軸方向に変位する。又、前記押圧装置20が発生する押圧力は、前記トロイダル型無段変速機により伝達するトルクが大きくなる程大きくなり、それに伴って前記各部材2、5、6の弾性変形量も多くなる。従って、前記トルクの変動に拘らず、前記入力、出力各ディスク2、5の内側面と前記各パワーローラ6、6の周面との接触状態を適正に維持する為に、前記各トラニオン7、7に対してこれら各パワーローラ6、6を、前記各ディスク2、5の軸方向に変位させる機構が必要になる。上述した従来構造の第1例の場合には、前記各パワーローラ6、6を支持した前記各支持軸12、12の先半部を、同じく基半部を中心として揺動変位させる事により、前記各パワーローラ6、6を前記軸方向に変位させる様にしている。
【0007】
上述の様な従来構造の第1例の場合、前記各パワーローラ6、6を前記軸方向に変位させる為の構造が複雑で、部品製作、部品管理、組立作業が何れも面倒になり、コストが嵩む事が避けられない。この様な問題を解決する為の技術として前記特許文献3には、図13〜18に示す様な構造が記載されている。本発明は、この図13〜18に示した従来構造の第2例を改良するものであるから、次に、この従来構造の第2例に就いて説明する。この従来構造の第2例の特徴は、トラニオン7aに対してパワーローラ6aを、入力、出力各ディスク2、5(図11参照)の軸方向の変位を可能に支持する部分の構造にあり、トロイダル型無段変速機全体としての構造及び作用は、前述の図11〜12に示した従来構造の第1例と同様である。
【0008】
前記従来構造の第2例を構成するトラニオン7aは、両端部に互いに同心に設けられた1対の傾転軸8a、8bと、これら両傾転軸8a、8b同士の間に存在し、少なくとも入力、出力各ディスク2、5(図11参照)の径方向(図14、16〜18の上下方向)に関する内側(図14、17〜18の上側)の側面を円筒状凸面22とした、支持梁部23とを備える。前記両傾転軸8a、8bは、それぞれラジアルニードル軸受11a、11aを介して、支持板10、10(図12参照)に、揺動を可能に支持する。
【0009】
又、前記円筒状凸面22の中心軸イは、図14、17〜18に示す様に、前記両傾転軸8a、8bの中心軸ロと平行で、これら両傾転軸8a、8bの中心軸ロよりも、前記各ディスク2、5の径方向に関して外側(図14、17〜18の下側)に存在する。又、前記支持梁部23とパワーローラ6aの外側面との間に設けるスラスト玉軸受13aを構成する外輪16aの外側面に、部分円筒面状の凹部24を、この外側面を径方向に横切る状態で設けている。そして、この凹部24と、前記支持梁部23の円筒状凸面22とを係合させ、前記トラニオン7aに対して前記外輪16aを、前記各ディスク2、5の軸方向に関する揺動変位を可能に支持している。
【0010】
又、前記外輪16aの内側面中央部に支持軸12aを、この外輪16aと一体に固設して、前記パワーローラ6aをこの支持軸12aの周囲に、ラジアルニードル軸受25を介して、回転自在に支持している。更に、前記トラニオン7aの内側面のうち、前記支持梁部23の両端部と1対の傾転軸8a、8bとの連続部に、互いに対向する1対の段差面26、26を設けている。そして、これら両段差面26、26と、前記スラスト玉軸受13aを構成する外輪16aの外周面とを、当接若しくは近接対向させて、前記パワーローラ6aからこの外輪16aに加わるトラクション力を、何れかの段差面26、26で支承可能としている。
【0011】
上述の様に構成する従来構造の第2例のトロイダル型無段変速機によれば、前記パワーローラ6aを前記各ディスク2、5の軸方向に変位させて、構成各部材の弾性変形量の変化に拘らず、このパワーローラ6aの周面と前記各ディスク2、5との接触状態を適正に維持できる構造を、簡単で低コストに構成できる。
即ち、トロイダル型無段変速機の運転時に、入力、出力各ディスク2、5、各パワーローラ6a等の弾性変形に基づき、これら各パワーローラ6aをこれら各ディスク2、5の軸方向に変位させる必要が生じると、これら各パワーローラ6aを回転自在に支持している前記スラスト玉軸受13aの外輪16aが、外側面に設けた部分円筒面状の凹部24と支持梁部23の円筒状凸面22との当接面を滑らせつつ、この円筒状凸面22の中心軸イを中心として揺動変位する。この揺動変位に基づき、前記各パワーローラ6aの周面のうちで、前記各ディスク2、5の軸方向片側面と転がり接触する部分が、これら各ディスク2、5の軸方向に変位し、前記接触状態を適正に維持する。
【0012】
前述した通り、前記円筒状凸面22の中心軸イは、変速動作の際に各トラニオン7aの揺動中心となる傾転軸8a、8bの中心軸ロよりも、前記各ディスク2、5の径方向に関して外側に存在する。従って、前記円筒状凸面22の中心軸イを中心とする揺動変位の半径は、前記変速動作の際の揺動半径よりも大きく、前記両入力ディスク2、2と前記両出力ディスク5、5との間の変速比の変動に及ぼす影響は少ない(無視できるか、容易に修正できる範囲に留まる)。
【0013】
図13〜18に示した従来構造の第2例の場合、図11〜12に示した同第1例に比べて、部品製作、部品管理、組立作業が何れも容易になり、コスト低廉化を図り易いが、変速動作を安定させる面からは、改良の余地がある。この理由は、前記各支持梁部23を中心とする前記各外輪16aの揺動変位を円滑に行わせる為、これら各支持梁部23の両端部分に1対ずつ設けた、前記各段差面26、26同士の間隔Dを、前記各外輪16aの外径dよりも少し大きく(D>d)する為である。これら各外輪16a、及び、これら各外輪16aと同心に支持された前記各パワーローラ6aは、前記間隔Dと前記外径dとの差(D−d)分だけ、前記各支持梁部23の軸方向に変位可能になる。
【0014】
一方、トロイダル型無段変速機を搭載した車両の運転時、前記各パワーローラ6aには前記各ディスク2、5から、加速時と減速時(エンジンブレーキの作動時)とで逆方向の力(トロイダル型無段変速機の技術分野で周知の「2Ft」)が加わる。そして、この力2Ftにより、前記各パワーローラ6aが、前記各外輪16aと共に、前記各支持梁部23の軸方向に変位する。この変位の方向は、前述した各アクチュエータ21、21による各トラニオン7、7(図12参照)の変位方向と同じであり、変位量が0.1mm程度であっても、変速動作が開始される可能性を生じる。そして、この様な原因で変速動作が開始された場合には、運転動作とは直接関連しない変速動作となり、何れ修正されるにしても、運転者に違和感を与える。特に、トロイダル型無段変速機が伝達するトルクが低い状態で、上述の様な、運転者が意図しない変速が行われると、運転者に与える違和感が大きくなり易い。
【0015】
上述の様にして生じる、運転動作とは直接関連しない変速動作の発生を抑える為には、前記間隔Dと前記外径dとの差(D−d)を僅少に(例えば数十μm程度に)抑える事が考えられる。但し、ハーフトロイダル型のトロイダル型無段変速機の運転時には、トラクション部から前記各パワーローラ6a、前記各外輪16aを介して前記各支持梁部23に加わるスラスト荷重により、前記各トラニオン7aが、図19に誇張して示す様に、前記各外輪16aを設置した側が凹となる方向に弾性変形する。そして、この弾性変形の結果、前記各トラニオン7a毎に1対ずつ設けた段差面26、26同士の間隔が縮まる。この様な状態でも、これら各段差面26、26同士の間隔Dが前記各外輪16aの外径d以下にならない様にする為には、通常状態(前記各トラニオン7aが弾性変形していない状態)での、前記間隔Dと前記外径dとの差を或る程度確保する必要がある。この結果、特に違和感が大きくなり易い、低トルクでの運転時に、上述の様な、運転動作とは直接関連しない変速動作が発生し易くなる。
【0016】
一方、前記特許文献3には、支持梁部側に設けた円筒状凸面の一部に係止したアンカ駒と、外輪側の凹部の内面に形成したアンカ溝とを係合させる事により、前記力2Ftを支承する構造が記載されている。又、円筒状凸面と凹部との互いに整合する部分に形成された、それぞれが断面円弧形である転動溝同士の間に複数個の玉を掛け渡して、前記力2Ftを支承する構造も記載されている。但し、前者の構造の場合には、前記アンカ駒を前記支持梁部に、前記力2Ftを支承できる程度の強度及び剛性を確保して支持固定する事が難しく、低コスト化と十分な信頼性確保とを図りにくい。又、後者の場合には、前記力2Ftが大きくなり、前記各玉の転動面と前記各転動溝との転がり接触部の面圧が上昇すると、これら各転動溝の内面に圧痕が形成され、各トラニオンに対して各外輪が揺動変位する際に振動が発生する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2003−214516号公報
【特許文献2】特開2007−315595号公報
【特許文献3】特開2008−25821号公報
【特許文献4】特開2008−275088号公報
【特許文献5】特開2004−169719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上述の様な事情に鑑み、部品製作、部品管理、組立作業が何れも容易になり、コスト低廉化を図り易く、しかも変速動作を安定させられる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明のトロイダル型無段変速機は、少なくとも1対のディスクと、複数のトラニオンと、これら各トラニオンと同数のパワーローラと、同じく同数のスラスト転がり軸受と、押圧装置とを備える。
特に、本発明のトロイダル型無段変速機に於いては、前記各トラニオン毎に1対ずつの段差面同士の間隔を、各支持梁部を中心とする各外輪の揺動方向に関して漸次変化させている。
又、前記間隔の大きさは、前記押圧装置が押圧力を発生せず、前記各外輪が中立位置に存在する状態でこれら各外輪の外周面と対向する部分で、これら各外輪が前記各支持梁部の軸方向に変位する事を実質的に阻止する大きさである、中立値としている。
更に、前記押圧装置が押圧力を発生し、前記各ディスク及び前記各パワーローラの弾性変形に伴って前記各支持梁部を中心として前記各外輪が揺動変位した状態でこれら各外輪の外周面と対向する部分で、前記中立値よりも大きくしている。
尚、軸方向に関する変位を実質的に阻止するとは、前記各外輪に支持されたパワーローラが前記各支持梁部の軸方向に、変速動作を開始する程変化する事がない状態を言う。この変速動作は、前記各パワーローラが前記軸方向に0.1mm程度変位した場合でも開始される可能性がある。そこで、前記中立値は、前記各外輪のうちで前記各段差面に挟まれる部分の直径以上であるが、この直径よりも0.1mm大きな値未満とする。
【0020】
上述の様な本発明を実施する場合に、例えば請求項2に記載した発明の様に、前記各トラニオン毎に1対ずつの段差面同士の間隔を、前記各外輪の揺動方向に一致する、これら各段差面の幅方向中央部で最も狭くする。そして、この最も狭くなった部分の間隔の大きさを、前記中立値とする。
【0021】
或いは、請求項3に記載した発明の様に、前記各トラニオン毎に1対ずつの段差面同士の間隔を、前記各外輪の揺動方向に一致する、これら各段差面の幅方向に関して、一端から他端に向けて変化させる。そして、これら各段差面の幅方向中間部の間隔の大きさを、前記中立値とする。且つ、前記押圧装置による押圧力の作用方向を、この押圧力に基づいて前記各外輪を、前記各段差面の間隔が大きい方向に変位させる方向とする。
【発明の効果】
【0022】
上述の様に構成する本発明のトロイダル型無段変速機によれば、部品製作、部品管理、組立作業が何れも容易になり、コスト低廉化を図り易く、しかも変速動作を安定させられる構造を実現できる。
このうちのコスト低廉化は、前述の図13〜18に示した従来構造の第2例と同様の理由により、図り易い。
【0023】
又、変速動作の安定化は、各トラニオン毎に1対ずつ設けた段差面同士の間隔を、これら各トラニオンの支持梁部の軸方向に関する外輪の変位を実質的に阻止し、且つ、この間隔の大きさを、これら各支持梁部を中心とするこれら各外輪の揺動変位の方向に対応して漸次変化させている事により図れる。
先ず、前記各外輪が中立位置に存在する場合には、前記間隔の大きさが、これら各外輪の軸方向変位を実質的に阻止する中立値である事で、変速動作の安定化を図れる。
これに対して、トロイダル型無段変速機が伝達するトルクが大きくなり、押圧装置が発生する押圧力が大きくなる結果、前記各外輪が前記各支持梁部を中心として揺動変位すると、これら各外輪が前記間隔が大きくなっている部分に変位すると同時に、前記各支持梁部の弾性変形に伴ってこの間隔が小さくなる。
【0024】
そこで、前記各支持梁部の剛性と前記間隔が変化する程度とを適切に規制すれば、前記トルクの変化に拘らず、前記各外輪が前記各支持梁部の軸方向に変位する事を、常に実質的に阻止でき、しかも、これら各支持梁部を中心とする前記各外輪の揺動変位を円滑に行わせる事ができる。この結果、前記変速動作の安定化を図れる。
尚、前記各支持梁部の剛性と前記間隔が変化する程度とを規制する事は、前記各トラニオンを構成する金属材料の物性、これら各トラニオンの形状及び寸法、前記伝達するトルクの大きさ等を考慮して、従来から知られた弾性理論等に基づき、コンピュータシミュレーションにより求める他、実験により求める事もできる。これらコンピュータシミュレーションと実験とを併用すれば、前記各段差面が前記各外輪を強く挟み込む事を防止し、且つ、これら各外輪が前記各支持梁部の軸方向に変位する事を十分に阻止できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す、トラニオンと外輪とを取り出して、各ディスクの径方向内側から見た斜視図。
【図2】同じく径方向内方から見た正投影図。
【図3】図2のa部拡大図。
【図4】本発明の実施の形態の第2例を示す、図2と同様の図。
【図5】同第3例を示す、図1と同様の図。
【図6】同じく径方向内方から見た正投影図。
【図7】図6のb部拡大図。
【図8】同じく、トラニオン及びパワーローラと押圧装置との配置状態を説明する為の模式図。
【図9】同じく、トロイダル型無段変速機の運転時に、トラニオンの段差面と外輪の外周面との当接部に働く力の方向を説明する為の模式図。
【図10】本発明の実施の形態の第4〜5例を示す、図6と同様の図。
【図11】従来構造の第1例を示す断面図。
【図12】図11のc−c断面図。
【図13】従来構造の第2例を示す、スラスト玉軸受を介してパワーローラを支持したトラニオンを、各ディスクの径方向外側から見た斜視図。
【図14】同じく、ディスクの周方向から見た状態で示す正面図。
【図15】図14の上方から見た平面図。
【図16】図14の右方から見た側面図。
【図17】図15のd−d断面図。
【図18】図14のe−e断面図。
【図19】パワーローラから加わるスラスト荷重に基づいてトラニオンが弾性変形した状態を誇張して示す、図17と同方向から見た断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[実施の形態の第1例]
図1〜3は、請求項1、2に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例の特徴は、変速動作を安定させるべく、各トラニオン7bの支持梁部23に対し、スラスト玉軸受13a(図13〜18参照)を構成する外輪16bを、これら各支持梁部23に対する揺動変位を可能に支持しつつ、これら各支持梁部23の軸方向に変位しない様にする為の構造にある。その他の部分の構造及び作用は、前述の図13〜18に示した従来構造の第2例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は、省略
若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
【0027】
本例の構造の場合、前記各トラニオン7b毎に1対ずつの段差面26a、26a同士の間隔を、前記各支持梁部23を中心とする前記各外輪16bの揺動方向に関して漸次変化させている。具体的には、前記各段差面26a、26aを、部分円筒面状の凸曲面としている。そして、これら各段差面26a、26aは、入力、出力各ディスク2、5(図11参照)の回転方向に一致する、これら各段差面26a、26aの幅方向(前記外輪16bの揺動方向、図2の左右方向)に関する中央部で最も突出しており、この中央部を境として対称形状である。従って、前記各トラニオン7b毎に1対ずつの段差面26a、26a同士の間隔は、これら各段差面26a、26aの幅方向中央部で最も狭くなっている。
【0028】
トロイダル型無段変速機に組み込んだ押圧装置20(図11参照)が押圧力を発生しない状態では、前記各ディスク2、5及び各パワーローラ6a(図13〜18)が弾性変形せず、これら各パワーローラ6aがこれら各ディスク2、5の軸方向に変位しない。従って、前記各外輪16bが中立位置に存在する。そして、この状態では、これら各外輪16bが、前記各段差面26a、26aの間部分のうち、最も間隔が狭くなった部分に位置する。本例の場合には、この最も狭くなった部分の間隔Dを、前記各外輪16bの外径dよりも僅かに小さくしている。具体的には、これら各外輪16bを、前記各トラニオン7b毎に1対ずつの段差面26a、26a同士の間に配置した状態で、前記各外輪16bが前記各支持梁部23を中心として揺動変位する事は許容するが、これら各支持梁部23の軸方向に変位する事を実質的に阻止する大きさとしている。
【0029】
より具体的には、前記間隔Dを、前記外径d以上で、この外径dよりも0.1mm大きな値未満{d≦D<(d+0.1mm)}としている。尚、前記間隔Dと前記外径dとの大小関係は、同じになる事はあっても逆転しない(前記1対ずつの段差面26a、26a同士の間で前記各外輪16bを、締り嵌めで挟持しない)様に、好ましくは、「外径d」<「間隔D」の状態を確保する。この間隔Dの値を上述の範囲に設定される中立値に規制する事により、前記各外輪16bを前記各支持梁部23に対して揺動変位可能に、且つ、軸方向の変位を実質的に阻止した(軸方向の変位を0.1mm未満に抑えた)状態で支持できる。前記間隔Dの中立値を上述の範囲に規制しているのに対して、この中立値以外で前記1対ずつの段差面26a、26a同士の間隔は、これら各段差面26a、26aの幅方向両端部に向かうに従って漸次大きくなる。この大きくなる程度は、前記押圧装置20が発生する押圧力に基づく、前記各外輪16bの揺動角度と、前記各支持梁部23の弾性変形に基づく前記各段差面26a、26a同士の間隔の収縮量との関係で規制する。具体的には、前記押圧力に基づいて、前記揺動角度とこの間隔とが変化した状態でも、この間隔と前記外径dとの関係が上述した範囲内(「間隔」−「外径d」=0〜0.1mm)に収まる様にしている。
【0030】
上述の様に構成する本例のトロイダル型無段変速機によれば、前述の図13〜18に示した従来構造の第2例と同様の理由により、部品製作、部品管理、組立作業が何れも容易になり、コスト低廉化を図り易くできる。
特に本例のトロイダル型無段変速機の場合には、前記各トラニオン7b毎に1対ずつ設けた段差面26a、26a同士の間隔を上述の様に規制しているので、変速動作の安定化を図れる。
【0031】
先ず、前記押圧装置20が発生している押圧力が零若しくは僅少の場合には、前記入力、出力各ディスク2、5及び前記各パワーローラ6aの弾性変形量も、前記支持梁部23の弾性変形量も、何れも零若しくは僅少であり、前記各外輪16bが、前記各段差面26a、26aの幅方向中央部である中立位置に存在する。この状態では、前記間隔Dと前記外径dとの差が0.1mm未満であるから、前記各支持梁部23の軸方向に関する前記各外輪16bの変位が実質的に阻止されて、変速動作の安定化を図れる。
【0032】
これに対して、トロイダル型無段変速機が伝達するトルクが大きくなり、前記押圧装置20が発生する押圧力が大きくなると、前記入力、出力各ディスク2、5及び前記各パワーローラ6aの弾性変形量が増大して、これら各パワーローラ6aがこれら各ディスク2、5の軸方向に変位する。そして、この軸方向変位に伴って、前記各外輪16bが前記各支持梁部23を中心として揺動変位し、これら各外輪16bの位置が、前記中立位置から外れる。具体的には、これら各外輪16bは、前記1対ずつの段差面26a、26a同士の間隔が大きい部分に向けて変位する。同時に、前記各パワーローラ6aに加わるスラスト荷重が大きくなり、このスラスト荷重を支承する、前記各支持梁部23の弾性変形量も増大する。そして、前記1対ずつの段差面26a、26a同士の間隔が縮まる傾向になる。
【0033】
要するに、前記伝達トルクが大きくなると、前記各外輪16bが前記1対ずつの段差面26a、26a同士の間隔が大きい部分に変位すると同時に、この間隔が縮まる。この様に、前記各外輪16bの間隔が変化する傾向が互いに逆になり(相殺され)、前記1対ずつの段差面26a、26aのうちで前記各外輪16bを挟持している部分の間隔が、この外輪16bの外径dよりも僅かに(0.1mm未満だけ)小さい状態となる。この結果、前記伝達トルクの変化に拘らず、前記各外輪16bが前記各支持梁部23の軸方向に変位する事を、常に実質的に阻止でき、しかも、これら各支持梁部23を中心とする前記各外輪16bの揺動変位を円滑に行わせて、前記トロイダル型無段変速機の変速動作の安定化を図れる。
尚、本例の場合には、前記各段差面26a、26aの形状を、これら各段差面26a、26aの幅方向中央部を境に対称としているので、トロイダル型無段変速機に組み込む複数の(例えば図12で左右両側の)トラニオン7bとして、同形状のものを使用できる。
【0034】
[実施の形態の第2例]
図4も、請求項1、2に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、各トラニオン7c毎に1対ずつ設けた段差面26b、26bの形状を、それぞれ1対ずつの平坦面を組み合わせた形状としている。即ち、これら各段差面26b、26bを前記各トラニオン7cの内側面側から見た形状を、頂角が180度よりも少し小さいだけの二等辺三角状を構成する、1対の斜辺状としている。その他の部分の構成及び作用は、上述した実施の形態の第1例と同様であるから、重複する説明は省略する。
【0035】
[実施の形態の第3例]
図5〜9は、請求項1、3に対応する、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合には、各トラニオン7d毎に1対ずつの段差面26c、26c同士の間隔を、各外輪16bの揺動方向に一致するこれら各段差面26c、26cの幅方向に関して、一端から他端に向けて変化させている。即ち、これら各段差面26c、26cを、入力、出力各ディスク2、5(図11参照)の回転方向に関して、互いに逆方向に傾斜させて、前記1対ずつの段差面26c、26c同士の間隔が、図5の左上から右下に向かう程、図6の左から右に向かう程、広くなる様にしている。そして、前記1対ずつの段差面26c、26cの幅方向中間部の間隔Dの大きさを中立値、即ち、前記各外輪16bの外径dと同じかこれよりも僅かに(0.1mm未満だけ)大きな値としている。
【0036】
上述の様な本例の構造の場合も、トロイダル型無段変速機の伝達トルクが小さい場合には、前記中立値Dと前記各外輪16bの外径dとの差が僅少である事により、変速動作を安定させられる。又、前記伝達トルクが大きくなると、前記各外輪16bが前記1対ずつの段差面26c、26c同士の間隔が大きい部分に変位すると同時に、この間隔が縮まる。従って、前記伝達トルクの変化に拘らず、前記各外輪16bが前記各支持梁部23の軸方向に変位する事を、常に実質的に阻止できる。しかも、これら各支持梁部23を中心とする前記各外輪16bの揺動変位を円滑に行わせて、前記トロイダル型無段変速機の変速動作の安定化を図れる。
【0037】
但し、本例の構造の場合には、前記各段差面26c、26cの形状が、前記各ディスク2、5の回転方向に関して非対称であるから、前記各トラニオン7dの設置方向と押圧装置20の設置位置とを適切に規制する必要がある。具体的には、図8に示す様に、この押圧装置20による押圧力の作用方向を、この押圧力に基づいて前記各外輪16bを、前記1対ずつの段差面26c、26c同士の間隔が大きい方向に変位させる方向とする。例えば、図11に示す様な、ダブルキャビティ型で押圧装置20を端部に設置するトロイダル型無段変速機の場合には、前記1対ずつの段差面26c、26c同士の間隔が、中央部に向かうに従って広くなる様に配置する。これに対して、押圧装置を中央部に配置する構造の場合には、前記1対ずつの段差面26c、26c同士の間隔が、端部に向かうに従って広くなる様に配置する。
【0038】
上述の様な本例の構造の場合には、トロイダル型無段変速機に組み込む複数のトラニオン7dとして、前記各段差面26c、26cの傾斜方向が異なる、少なくとも2種類のものを用意する必要がある。その代わりに本例の構造の場合には、前記各段差面26c、26cの加工が容易である事に加えて、前記押圧装置20が押圧力を発生する初期段階から、前記各外輪16bを前記間隔が広い側に、より変位させ易くできる。この点に就いて、図9を参照しつつ説明する。トロイダル型無段変速機の運転時に前記各外輪16bには、パワーローラ6a(図13〜18参照)から、前記2Ftなる力が、前記各ディスク2、5の回転方向に加わり、前記各外輪16bの外周面の一部が、何れかの段差面26cに押し付けられる。この押し付けの結果、これら各外輪16bをこの段差面26cの傾斜方向に移動させる方向の分力fが発生するが、この分力fの方向は、前記各ディスク2、5等の弾性変形により、前記各外輪16bが揺動変位する方向と一致する。この為、この揺動変位を、より円滑に行わせる事ができる。その他の部分の構成及び作用は、前述した実施の形態の第1例と同様であるから、重複する説明は省略する。
【0039】
[実施の形態の第4〜5例]
図10も、請求項1、3に対応する、本発明の実施の形態の第4〜5例を示している。これら両例の場合には、それぞれ段差面26d、26eの形状を、部分円筒面状の凸曲面{図10の(A)の段差面26d、26d}又は凹曲面{図10の(B)の段差面26e、26e}としている。これら各段差面26d、26eを構成する曲面の曲率半径や傾斜角度等は、伝達トルクの増大に伴う、外輪16bの揺動変位量や支持梁部23の弾性変形量等に応じて設計的に(コンピュータシミュレーションや実験等に応じて)決定する。その他の部分の構成及び作用は、上述した実施の形態の第3例と同様であるから、重複する説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、トロイダル型無段変速機単独で実施できる他、特許文献5に記載されている様な、遊星歯車機構と組み合わせた無段変速装置として実施する事もできる。又、押圧装置は、図11に示す様な、機械式のローディングカム装置に限らず、油圧式のものであっても良い。
【符号の説明】
【0041】
1 入力回転軸
2 入力ディスク
3 出力筒
4 出力歯車
5 出力ディスク
6、6a パワーローラ
7、7a、7b、7c、7d トラニオン
8、8a、8b 傾転軸
9 支持梁部
10 支持板
11、11a ラジアルニードル軸受
12、12a 支持軸
13、13a スラスト玉軸受
14 スラストニードル軸受
15 内輪軌道
16、16a、16b 外輪
17 外輪軌道
18 玉
19 駆動軸
20 押圧装置
21 アクチュエータ
22 円筒状凸面
23 支持梁部
24 凹部
25 ラジアルニードル軸受
26、26a〜26e 段差面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1対のディスクと、複数のトラニオンと、これら各トラニオンと同数のパワーローラと、同じく同数のスラスト転がり軸受と、押圧装置とを備え、
このうちの各ディスクは、それぞれが断面円弧形のトロイド曲面である互いの軸方向片側面同士を対向させた状態で、互いに同心に、相対回転を自在に支持されたものであり、
前記各トラニオンは、それぞれの両端部に互いに同心に設けられた1対の傾転軸と、これら両傾転軸同士の間に存在し、少なくとも前記各ディスクの径方向に関する内側の側面を、これら両傾転軸の中心軸と平行でこの中心軸よりも前記各ディスクの径方向に関して外側に存在する中心軸を有する、円筒状凸面とした支持梁部と、この支持梁部の両端部に互いに対向する状態で設けられた、前記各トラニオン毎に1対ずつの段差面とを備えたもので、軸方向に関して前記各ディスクの軸方向側面同士の間位置の周方向に関して複数箇所に、これら各ディスクの中心軸に対し捩れの位置にある前記両傾転軸を中心とする揺動変位を自在に設けられており、
前記各パワーローラは、前記各トラニオンの内側面に、それぞれスラスト転がり軸受を介して回転自在に支持され、球状凸面としたそれぞれの周面を、前記各ディスクの軸方向片側面にそれぞれ当接させており、
前記各スラスト転がり軸受は、前記各トラニオンの支持梁部と前記各パワーローラの外側面との間に設けられたもので、これら各支持梁部側に設けられた外輪と、これら各外輪の内側面に設けられた外輪軌道と前記各パワーローラの外側面に設けられた内輪軌道との間に転動自在に、それぞれ複数個ずつ設けられた転動体とを備えたものであり、
前記各スラスト転がり軸受の外輪は、これら各外輪の外側面に設けられた凹部と前記各支持梁部の円筒状凸面とを係合させると共に、これら各支持梁部の両端部に設けられた前記各トラニオン毎に1対ずつの段差面同士の間に配置する事により、これら各トラニオンに対し、前記各支持梁部の軸方向の変位を規制した状態で、前記各ディスクの軸方向に関する揺動変位を可能に支持されており、
前記押圧装置は、前記各パワーローラを挟んだ状態で互いに対向する前記各ディスク同士を、互いに近づく方向に押圧するものであるトロイダル型無段変速機に於いて、
前記各トラニオン毎に1対ずつの段差面同士の間隔が、前記各支持梁部を中心とする前記各外輪の揺動方向に関して漸次変化しており、この間隔の大きさは、前記押圧装置が押圧力を発生せず、前記各外輪が中立位置に存在する状態でこれら各外輪の外周面と対向する部分で、これら各外輪が前記各支持梁部の軸方向に変位する事を実質的に阻止する大きさの中立値であり、前記押圧装置が押圧力を発生し、前記各ディスク及び前記各パワーローラの弾性変形に伴って前記各支持梁部を中心として前記各外輪が揺動変位した状態でこれら各外輪の外周面と対向する部分で、前記中立値よりも大きい事を特徴とするトロイダル型無段変速機。
【請求項2】
前記各トラニオン毎に1対ずつの段差面同士の間隔が、前記各外輪の揺動方向に一致する、これら各段差面の幅方向中央部で最も狭くなって、この最も狭くなった部分の間隔の大きさが前記中立値である、請求項1に記載したトロイダル型無段変速機。
【請求項3】
前記各トラニオン毎に1対ずつの段差面同士の間隔が、前記各外輪の揺動方向に一致する、これら各段差面の幅方向に関して、一端から他端に向けて変化しており、これら各段差面の幅方向中間部の間隔の大きさが前記中立値であり、且つ、前記押圧装置による押圧力の作用方向が、この押圧力に基づいて前記各外輪を、前記各段差面の間隔が大きい方向に変位させる方向である、請求項1に記載したトロイダル型無段変速機。
【請求項1】
少なくとも1対のディスクと、複数のトラニオンと、これら各トラニオンと同数のパワーローラと、同じく同数のスラスト転がり軸受と、押圧装置とを備え、
このうちの各ディスクは、それぞれが断面円弧形のトロイド曲面である互いの軸方向片側面同士を対向させた状態で、互いに同心に、相対回転を自在に支持されたものであり、
前記各トラニオンは、それぞれの両端部に互いに同心に設けられた1対の傾転軸と、これら両傾転軸同士の間に存在し、少なくとも前記各ディスクの径方向に関する内側の側面を、これら両傾転軸の中心軸と平行でこの中心軸よりも前記各ディスクの径方向に関して外側に存在する中心軸を有する、円筒状凸面とした支持梁部と、この支持梁部の両端部に互いに対向する状態で設けられた、前記各トラニオン毎に1対ずつの段差面とを備えたもので、軸方向に関して前記各ディスクの軸方向側面同士の間位置の周方向に関して複数箇所に、これら各ディスクの中心軸に対し捩れの位置にある前記両傾転軸を中心とする揺動変位を自在に設けられており、
前記各パワーローラは、前記各トラニオンの内側面に、それぞれスラスト転がり軸受を介して回転自在に支持され、球状凸面としたそれぞれの周面を、前記各ディスクの軸方向片側面にそれぞれ当接させており、
前記各スラスト転がり軸受は、前記各トラニオンの支持梁部と前記各パワーローラの外側面との間に設けられたもので、これら各支持梁部側に設けられた外輪と、これら各外輪の内側面に設けられた外輪軌道と前記各パワーローラの外側面に設けられた内輪軌道との間に転動自在に、それぞれ複数個ずつ設けられた転動体とを備えたものであり、
前記各スラスト転がり軸受の外輪は、これら各外輪の外側面に設けられた凹部と前記各支持梁部の円筒状凸面とを係合させると共に、これら各支持梁部の両端部に設けられた前記各トラニオン毎に1対ずつの段差面同士の間に配置する事により、これら各トラニオンに対し、前記各支持梁部の軸方向の変位を規制した状態で、前記各ディスクの軸方向に関する揺動変位を可能に支持されており、
前記押圧装置は、前記各パワーローラを挟んだ状態で互いに対向する前記各ディスク同士を、互いに近づく方向に押圧するものであるトロイダル型無段変速機に於いて、
前記各トラニオン毎に1対ずつの段差面同士の間隔が、前記各支持梁部を中心とする前記各外輪の揺動方向に関して漸次変化しており、この間隔の大きさは、前記押圧装置が押圧力を発生せず、前記各外輪が中立位置に存在する状態でこれら各外輪の外周面と対向する部分で、これら各外輪が前記各支持梁部の軸方向に変位する事を実質的に阻止する大きさの中立値であり、前記押圧装置が押圧力を発生し、前記各ディスク及び前記各パワーローラの弾性変形に伴って前記各支持梁部を中心として前記各外輪が揺動変位した状態でこれら各外輪の外周面と対向する部分で、前記中立値よりも大きい事を特徴とするトロイダル型無段変速機。
【請求項2】
前記各トラニオン毎に1対ずつの段差面同士の間隔が、前記各外輪の揺動方向に一致する、これら各段差面の幅方向中央部で最も狭くなって、この最も狭くなった部分の間隔の大きさが前記中立値である、請求項1に記載したトロイダル型無段変速機。
【請求項3】
前記各トラニオン毎に1対ずつの段差面同士の間隔が、前記各外輪の揺動方向に一致する、これら各段差面の幅方向に関して、一端から他端に向けて変化しており、これら各段差面の幅方向中間部の間隔の大きさが前記中立値であり、且つ、前記押圧装置による押圧力の作用方向が、この押圧力に基づいて前記各外輪を、前記各段差面の間隔が大きい方向に変位させる方向である、請求項1に記載したトロイダル型無段変速機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−24322(P2013−24322A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159300(P2011−159300)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
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