説明

トンカツの調理方法

【課題】 従来にない非常においしいトンカツを簡単に効率良く揚げることができる極めて実用性に秀れたトンカツの調理方法を提供するものである。
【解決手段】 トンカツ用の肉1を肉中温度63℃以上70℃以下に加熱して所定時間保持し、続いて、該肉1を一旦冷やし、続いて、該肉1に衣を付け、続いて、該肉1を油2で揚げてトンカツ3を得るものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、トンカツの調理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】トンカツを油で揚げる場合、通常は豚肉の切り身に衣を付けて180℃程度の油で揚げる方法が採用されている(以下、1度揚げ方法という)。
【0003】しかし、この1度揚げ方法では、注意をしないと豚肉が90℃以上の高温になってしまう為、油で揚げている最中に豚肉から肉汁が多量に失われてしまう。従って、豚肉が縮んで(100gの豚肉が70g程度にまで縮んでしまう。)トンカツが小さくなってしまうという問題点や、豚肉が硬くなり、しかも、豚肉のジューシー感がなくなり、トンカツがおしくなくなってしまうという問題点がある。
【0004】尚、早く油から上げてしまうと半生の調理となってしまい、食中毒の原因になってしまう。
【0005】よって、老舗のトンカツ店等では、おいしいトンカツを揚げる為に2度揚げを行っている(以下、2度揚げ方法という。)。
【0006】この2度揚げ方法は、先ず、豚肉の切り身に衣を付けたものを150℃程度の低温の油でゆっくりと揚げることで豚肉をふっくらと柔らかくし、続いて、180℃程度の高温の油でさっと揚げて衣の表面をパリっとさせるものである。
【0007】しかし、この2度揚げ方法では、肉を低温の油でゆっくりと揚げた後、該肉を油から出すタイミングが難しく、職人技が必要となる。
【0008】本発明は、簡単に効率良く、しかも更においしいトンカツ揚げる為の最適の条件を鋭意研究により発見して成された極めて実用性に秀れたトンカツの調理方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨を図面に基づいて説明する。
【0010】トンカツの調理方法であって、トンカツ用の肉1を肉中温度63℃以上70℃以下に加熱して所定時間保持し、続いて、該肉1を一旦冷やし、続いて、該肉1に衣を付け、続いて、該肉1を油2で揚げてトンカツ3を得ることを特徴とするトンカツの調理方法に係るものである。
【0011】また、トンカツの調理方法であって、トンカツ用の肉1に衣を付けた後、該肉1を肉中温度63℃以上70℃以下に加熱して所定時間保持し、続いて、該肉1を一旦冷やし、続いて、該肉1を油2で揚げてトンカツ3を得ることを特徴とするトンカツの調理方法に係るものである。
【0012】また、請求項1記載のトンカツの調理方法において、トンカツ用の肉1をオーブン4で加熱して肉中温度63℃以上70℃以下にすることを特徴とするトンカツの調理方法に係るものである。
【0013】また、請求項1,3いずれか1項に記載のトンカツの調理方法において、トンカツ用の肉1をブロック状のまま加熱して肉中温度63℃以上70℃以下とし、続いて、該肉1を一旦冷やし、続いて、該肉1をスライスしてから衣を付けることことを特徴とするトンカツの調理方法に係るものである。
【0014】また、請求項1,3,4いずれか1項に記載のトンカツの調理方法において、トンカツ用の肉1を肉中温度63℃以上70℃以下に加熱して30分間若しくは30分間以上保持することを特徴とするトンカツの調理方法に係るものであるまた、請求項1,3〜5いずれか1項に記載のトンカツの調理方法において、トンカツ用の肉1を肉中温度63℃以上70℃以下に加熱して所定時間保持した後、該肉1を急冷することを特徴とするトンカツの調理方法に係るものであるまた、請求項1,3〜6いずれか1項に記載のトンカツの調理方法において、肉1を油2で揚げる際の肉中温度を60℃以上70℃以下に設定することを特徴とするトンカツの調理方法に係るものである。
【0015】
【発明の作用及び効果】本発明は繰り返した実験の結果得られた作用効果を請求項としてまとめたものである。
【0016】2度揚げによってトンカツ3を揚げる場合、最初に行う低温での加熱の際の温度が低いと、肉1のおいしさのもとである肉汁の損失を可及的に阻止することができ、肉1が縮んだり硬くなったりせず、しかも、肉1内に肉汁が保持されたままとなるのでジューシー感が高くおいしくなる。
【0017】しかし、低温での加熱の際に温度が低く過ぎると肉1内に生息している細菌の殺菌ができなくなる為、トンカツ3の揚げ方の本では低温での加熱の際の肉中温度を72℃となるようする方法が最適であるとされている。
【0018】しかし、本発明者が繰り返して行った実験によれば、低温での加熱を肉中温度63℃以上70℃以下となるように設定しても肉1内に生息している細菌を良好に殺菌できることが確認された。
【0019】しかも、肉中温度を63℃以上70℃以下とする方法によれば、前記肉中温度を72℃とする方法に比し、更に柔らかくジューシー感の高いおいしいトンカツ3が得られることが確認された。
【0020】尚、以上の調理をブロック状の肉1で、オーブン4でローストポークの調理を行っても同じ効果が得られる。
【0021】本発明は上述のようにするから、おいしいトンカツを簡単に効率良く揚げることができる極めて実用性に秀れたトンカツの調理方法となる。
【0022】
【発明の実施の形態】図面は本発明の一実施例を図示したものであり、以下に説明する。
【0023】トンカツ用の肉1として豚ローストンカツ用肉(USパッカー社、CCロイン)を用意し、この肉1を所定サイズにカットしてブロック状としたもの(2kg)を使用した。
【0024】続いて、このブロック状の肉1をオーブン4(設定温度120℃)でロースト加熱して肉中温度が63℃以上65℃以下となるようにし、該温度で30分間保持した(図1参照)。尚、保持時間が30分間以上でも良い。肉中温度について63℃以上65℃以下が最適であるが、63℃以上70℃以下であっても略同様である。
【0025】この状態において、肉1の重さを測定したところ1.8kgであった。
【0026】続いて、肉1を急速冷蔵し、凍結した。これは、肉1を急速冷蔵することによって、該肉1中においしさを封じ込める為,肉汁が可及的に失われないようにする為,及びバクテリアによる食中毒防止等の安全対策の為である。。
【0027】この冷蔵されたブロック状の肉1は、油2で揚げてトンカツ3とする前に、所定の大きさ、例えば、小型のトンカツ3であれば90g程度、大型のトンカツ3であれば140g程度にスライスした。
【0028】このスライスされた肉1に衣(打ち粉,卵,生パン粉等)を付け、油2を入れたフライヤー5に所定時間入れてトンカツ3を揚げた。
【0029】図2はフライヤー5を図示したものであり、符号6はトンカツ3を移動するコンベア、符号7は揚がってきたトンカツ3の浮上を阻止する網等の阻止体、符号8は小型のトンカツ3を揚げる際に油2内に肉1を投入する位置、符号9は大型のトンカツ3を揚げる際に油2内に肉1を投入する位置である。
【0030】油2の温度は180℃に設定し、肉1の調理後の肉中温度が60℃以上70℃以下となるように設定した。肉中温度が60℃以下であると、食した際の肉1のおいしさが劣ってしまう。また、肉中温度が70℃以上であると、前記オーブン4での加熱の際と同様に肉汁の流出の問題が発生してしまう。この肉中温度の条件を達成する為には、前記90g程度の肉1であれば約2分間、前記140g程度の肉1であれば約3分間、油2で揚げると良い。本実施例の場合、フライヤー5への肉1の投入位置8・9により調節した。尚、肉中温度が65℃以下であれば、より一層好適となる。
【0031】尚、フライヤー5でトンカツ3を揚げる際、例えば、肉中温度が10℃までしか上昇しなくとも、該肉1は前記オーブン4での加熱の際に既に食することができる状態となっている為(ローストポークと同様である)、食中毒等の衛生的な問題は発生しない。
【0032】以上の工程により、トンカツ3を得た。
【0033】このトンカツ3と従来の2度揚げ方法で得たトンカツ3とをパネラー20人に食して比較してもらったところ、全員が本実施例によるトンカツ3の方がおいしいという結果を得た。
【0034】また、おいしさの理由としては、肉汁が多くてジューシーであること、肉1が柔らかくて歯ごたえが良好であること、風味が良いこと、衣がパリっとしていることを挙げるパネラーが多かった。
【0035】また、このトンカツ3をカットしてからカツ丼を作成し、該カツ丼と従来の2度揚げ方法で得たトンカツを使用したカツ丼とをパネラー20人に食して比較してもらったところ、このカツ丼についても全員が本実施例によるカツ丼の方がおいしいという結果を得た。
【0036】本実施例は上述のようにするから、従来にないおいしいトンカツを簡単に揚げることができる極めて実用性に秀れたトンカツの調理方法となる。
【0037】また、肉汁の損失が可及的に阻止されるから、肉1が縮まず、原材料となる肉1から多くのトンカツ3を揚げることができ(本実施例では原材料の90%以上、従来の2度揚げ方法では70%程度の重量となる。)、しかも、残存する肉汁がジューシー感を高めて極めておいしいトンカツ3を得ることができる実用性,生産効率に秀れたトンカツの調理方法となる。
【0038】また、肉1をブロック状のままオーブン4で加熱するから、肉汁の損失を更に可及的に阻止することができるより一層実用性,生産効率に秀れたトンカツの調理方法となる。
【0039】また、オーブン4で加熱した肉1を急速冷蔵するから、肉1が急速凍結されて保管,物流が容易となり、しかも、肉汁の損失を更に可及的に阻止することができるより一層実用性,生産効率に秀れたトンカツの調理方法となる。
【0040】また、トンカツ3を揚げる際にも肉1の肉中温度が60℃以上65℃以下となるように設定するから、肉汁の損失を更に可及的に阻止することができるより一層実用性,生産効率に秀れたトンカツの調理方法となる。
【0041】尚、本実施例は、オーブン4での加熱の際には肉1に衣を付けず、フライヤー5での加熱の前に肉1に衣を付ける方法を採用したが、予め肉1に衣を付けてオーブン4で加熱したり、肉1を切り身としてからオーブン4で加熱したり、或いは、オーブン4でのロースト加熱以外の方法で加熱したりしても同様である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例のオーブン4での加熱の説明図である。
【図2】本実施例のフライヤー5での加熱の説明図である。
【図3】本実施例の説明図である。
【符号の説明】
1 肉
2 油
3 トンカツ
4 オーブン

【特許請求の範囲】
【請求項1】 トンカツの調理方法であって、トンカツ用の肉を肉中温度63℃以上70℃以下に加熱して所定時間保持し、続いて、該肉を一旦冷やし、続いて、該肉に衣を付け、続いて、該肉を油で揚げてトンカツを得ることを特徴とするトンカツの調理方法。
【請求項2】 トンカツの調理方法であって、トンカツ用の肉に衣を付けた後、該肉を肉中温度63℃以上70℃以下に加熱して所定時間保持し、続いて、該肉を一旦冷やし、続いて、該肉を油で揚げてトンカツを得ることを特徴とするトンカツの調理方法。
【請求項3】 請求項1記載のトンカツの調理方法において、トンカツ用の肉をオーブンで加熱して肉中温度63℃以上70℃以下にすることを特徴とするトンカツの調理方法。
【請求項4】 請求項1,3いずれか1項に記載のトンカツの調理方法において、トンカツ用の肉をブロック状のまま加熱して肉中温度63℃以上70℃以下とし、続いて、該肉を一旦冷やし、続いて、該肉をスライスしてから衣を付けることことを特徴とするトンカツの調理方法。
【請求項5】 請求項1,3,4いずれか1項に記載のトンカツの調理方法において、トンカツ用の肉を肉中温度63℃以上70℃以下に加熱して30分間若しくは30分間以上保持することを特徴とするトンカツの調理方法。
【請求項6】 請求項1,3〜5いずれか1項に記載のトンカツの調理方法において、トンカツ用の肉を肉中温度63℃以上70℃以下に加熱して所定時間保持した後、該肉を急冷することを特徴とするトンカツの調理方法。
【請求項7】 請求項1,3〜6いずれか1項に記載のトンカツの調理方法において、肉を油で揚げる際の肉中温度を60℃以上70℃以下に設定することを特徴とするトンカツの調理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2000−270814(P2000−270814A)
【公開日】平成12年10月3日(2000.10.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−77574
【出願日】平成11年3月23日(1999.3.23)
【出願人】(599039201)株式会社 フーズデザイン (1)
【出願人】(399003112)アークランドサービス 株式会社 (1)
【Fターム(参考)】