説明

トンネル内装板取付金具

【課題】 作業効率の向上とコスト低減化が可能なトンネル内装板取付金具の提供。
【解決手段】 トンネル内装板1をトンネル内壁面2に沿って一定隙間W開けた状態で互いに隣接するトンネル内装板1、1の端部同士を同時にトンネル内壁面2に取付固定する取付金具であって、トンネル内壁面2に直付け状態に取付固定される基板5(7)と、ンネル内壁面2に取り付けたカットアンカー3(8)に基板5(7)とともにその横方向中央部をボルト4(9)で友締めすることにより基板5(7)との間に互いに隣接する両トンネル内装板1、1の端部を同時に挟持状態で固定する挟持板6(10)とで構成され、基板5(7)はその左右両端部にトンネル内壁面2側へ向けて所定高さ突出する支持脚部51(71)が略L字状に折曲形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内に高い視認性や視線誘導効果を向上させるためにトンネル内壁面に沿って設置されるトンネル内装板の取付金具に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル内装板1は薄いパネル状であるから、トンネル内壁面2への設置は、図7、8 に示すように、トンネル内壁面1に上段、中段、下段などに分けて横胴縁101,102,103を配置し、トンネル内装板1の上水平端縁部を上段の横胴縁101に沿って、また下側水平端縁部は下段の横胴縁103に沿ってそれぞれ補修部材104,105で覆うようにして固定している。
また、トンネル内装板1の中ほどは、その隣接するトンネル内装板1,1との間に設けられた隙間106から露出した中段配置の横胴縁102に対し、両トンネル内装板1の縦縁部同士を押えた押え金具107で固定することにより、取付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−158391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この従来金具による工法では、トンネル内壁面1に上段、中段、下段などに分けて横胴縁101,102,103を配置し、トンネル内装板1の上水平端縁部を上段の横胴縁101に沿って、また下側水平端縁部は下段の横胴縁103に沿ってそれぞれ補修部材104,105で覆うようにして固定する作業が必要であるため、多く手間と時間がかかり、作業効率が悪いとともに、材料コストが高く付くという問題点があった。
【0005】
本発明の解決しようとする課題は、作業効率の向上とコスト低減化が可能なトンネル内装板取付金具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、
トンネル内装板をトンネル内壁面に沿って一定隙間開けた状態で互いに隣接するトンネル内装板の端部同士を同時にトンネル内壁面に取付固定する取付金具であって、
前記トンネル内壁面に直付け状態で取付固定される基板と、前記トンネル内壁面に取り付けたカットアンカーに前記基板とともにその横方向中央部をボルトで友締めすることにより基板との間に互いに隣接する両トンネル内装板の端部を同時に挟持状態で固定する挟持板とで構成され、
前記基板はその左右両端部にトンネル内壁面側へ向けて所定高さ突出する支持脚部が略L字状に折曲形成されていることを特徴とする手段とした。
【0007】
また、請求項2記載の発明は、
請求項1記載のトンネル内装板取付金具において、
前記基板と挟持板はその上側又は下側の中央部を前記トンネル内壁面に取り付けたカットアンカーに対しボルトで友締め固定するように構成され、
前記基板の裏面側に固定されたナットにボルトを螺合して基板と挟持板を友締めすることにより、前記基板と挟持板の下側又は上側両端部分で互いに隣接するトンネル内装板の上端側コーナー部又は下端側コーナー部を挟持した状態で固定するように構成されていることを特徴とする手段とした。
【0008】
また、請求項3記載の発明は、
請求項1記載のトンネル内装板取付金具において、
前記基板の中央部の上下両端部には係合用切欠部が形成され、
前記挟持板はその中央部の上下両端部に前記基板の上下両係合用切欠部に係合して位置決めする係合片が折曲形成されていること特徴とする手段とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、上述のように、基板と挟持板の2部材のみで互いに隣接するトンネル内装板の端部同士を同時にトンネル内壁面に取付固定するものであるため、上段、中段、下段などに分けて長く配置される横胴縁と下側水平端縁部は下段の横胴縁に沿ってそれぞれ取り付けられる補修部材を用いる従来工法に比べ、金具の材料コストが安く付き、コストの低減化が可能になるとともに、取り付ける手間も少なくなるため、作業効率の向上が可能になる。
また、基板の左右両端部にトンネル内壁面側へ向けて所定高さ突出する支持脚部が略L字状に折曲形成されているため、トンネル内壁面に凹凸があっても、トンネル内壁面に対し基板を安定良く強固に固定することができる。
【0010】
また、本発明では、上述のように、基板の中央部の上下両端部には係合用切欠部が形成され、挟持板はその中央部の上下両端部に基板の上下両係合用切欠部に係合して位置決めする係合片が折曲形成されている構成としたことで、トンネル内壁面に取り付けたカットアンカーに基板と挟持板をボルトで友締めする作業を容易に行えるようになり、作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明実施例1のトンネル内装板取付金具Aを示す背面からの分解斜視図である。
【図2】本発明実施例1のトンネル内装板取付金具Bを示す背面からの分解斜視図である。
【図3】本発明実施例1のトンネル内装板取付金具A、Bによるトンネル内装板の取付状態を示す正面図である。
【図4】図3のS4−S4線における拡大縦断面図である。
【図5】図3のS5−S5線における拡大横断面図である。
【図6】図3のS6−S6線における拡大縦断面図である。
【図7】従来のトンネル内装板取付金具による取り付け状態を示す正面図である。
【図8】従来のトンネル内装板取付金具によるトンネル内装板の取付状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下にこの発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
まず、この実施例1のトンネル内装板取付金具を図面に基づいて説明する。
この実施例1のトンネル内装板取付金具は、内装板取付金具Aと、内装板取付金具Bの2種類がある。
【0014】
まず、内装板取付金具Aの構成を図1、3、4に基づいて説明する。
この内装板取付金具Aは、図3に示すように、トンネル内装板1をトンネル内壁面2に沿って一定隙間W開けた状態で互いに隣接するトンネル内装板1、1の上端部及び下端部のコーナー部同士を同時にトンネル内壁面2に取付固定する取付金具であって、図1、4に示すように、トンネル内壁面2にその上側中央部をトンネル内壁面2に取り付けたカットアンカー3に対しボルト4で取付固定する基板5と、該基板5に対しその下側中央部をボルト締めすることにより、基板5との間に互いに隣接する両トンネル内装板1、1の上端部及び下端部のコーナー部を同時に挟持状態で固定する挟持板6とで構成されている。
【0015】
さらに詳述すると、基板5は、図1、4に示すように、ステンレスで横長長方形に形成され、その左右両端部にトンネル内壁面2側へ向けて所定高さ突出する支持脚部51が略L字状に折曲形成されている。
また、基板5の横方向中央部の上側と下側にはボルト挿通孔52、53がそれぞれ形成され、下側のボルト挿通孔53のトンネル内壁面2側にはナット54が固定されている。
【0016】
また、挟持板6は、ステンレスで、基板5の両支持脚部51、51を除く部分とほぼ同サイズの横長長方形に形成され、下側部分62が上側部分61よりトンネル内壁面2とは反対側へ所定寸法オフセットするように上下方向中央部で折曲されている。尚、このオフセット量は、トンネル内装板1の厚みより少し小さく形成されている。
また、基板5に形成されたボルト挿通孔52、53と対向する挟持板6には、ボルト挿通孔63、64が形成されている。
【0017】
なお、この内装板取付金具Aは、図1、4では、互いに隣接するトンネル内装板1、1の上端部のコーナー部同士を同時にトンネル内壁面2に取付固定する場合を示したが、互いに隣接するトンネル内装板1、1の下端部のコーナー部同士を同時にトンネル内壁面2に取付固定する場合は上下方向を逆にした状態で用いられる。
【0018】
次に、内装板取付金具Bの構成を図2、3、5に基づいて説明する。
この内装板取付金具Bは、図3に示すように、トンネル内装板1をトンネル内壁面2に沿って一定隙間開けた状態で互いに隣接するトンネル内装板1、1の中間部の端部同士を同時にトンネル内壁面2に取付固定する取付金具であって、図図2、6に示すように、トンネル内壁面2に直接取付固定される基板7と、トンネル内壁面2に取り付けたカットアンカー8に基板7とともにその中央部をボルト9で友締めすることにより基板7との間に互いに隣接する両トンネル内装板1、1の中間部の端部を同時に挟持状態で固定する挟持板10とで構成されている。
【0019】
さらに詳述すると、基板7は、その左右両端部にトンネル内壁面2側へ向けて所定高さ突出する支持脚部71が略L字状に折曲形成されている。
また、基板7の中央部の上下両端部には係合用切欠部72、73がそれぞれ形成され、また、基板7の中央部にはボルト挿通孔74が形成されている。
また、挟持板10は、その中央部の上下両端部に基板7の上下両係合用切欠部72、73に係合して位置決めする係合片11、12が折曲形成されている。
また、挟持板10は、その両端部分13が中央部分14よりトンネル内壁面2とは反対側へ所定寸法オフセットするように折曲形成されている。尚、このオフセット量は、トンネル内装板1の厚みより少し小さく形成されている。
【0020】
尚、図3において、Cはトンネル内装板1の上下両端中央部の浮き上がりを防止する中間押さえ金具であり、図6に示すように、カットアンカー15にボルト18を螺合して締め付けることにより、トンネル内壁面2に固定される基板部16とトンネル内装板1の上下両端中央部を押さえるL字状係合部17からなる断面略クランク状に形成されている。
【0021】
次に、上述の内装板取付金具Aと、内装板取付金具Bを用いてトンネル内装板1をトンネル内壁面2に沿って一定隙間開けた状態で取付固定するには、まず、図4、5に示すように、内装板取付金具Aと内装板取付金具Bが取り付けられるトンネル内壁面2の所定位置、すなわち、トンネル内装板1、1間の形成される隙間W位置にカットアンカー3、8を取り付ける。
【0022】
次に、隣接するトンネル内装板1、1の上端部及び下端部のコーナー部同士を同時にトンネル内壁面2に取付固定する内装板取付金具Aの基板5と挟持板6をボルト4でカットアンカー3に対し仮止めする一方、トンネル内装板1、1の中間部の端部同士を同時にトンネル内壁面2に取付固定する内装板取付金具Bの基板7と挟持板10をボルト9でカットアンカー8に対し仮止めする。
【0023】
次に、隣接するトンネル内装板1の上端部及び下端部のコーナー部を内装板取付金具Aと、内装板取付金具Aにおける基板5と挟持板6との間に挿入するとともに、隣接するトンネル内装板1、1の中間部の端部を内装板取付金具Bにおける基板7と挟持板10との間に挿入した状態で、ボルト55をナット54に螺合させることにより、内装板取付金具Aの基板5と挟持板6との間にトンネル内装板1の上端部及び下端部のコーナー部を挟持した状態で締め付け固定する一方、ボルト9をカットアンカー8に螺合させることにより、内装板取付金具Bの基板7と挟持板10との間にトンネル内装板1、1の中間部の端部を挟持した状態で締め付け固定する。
【0024】
これにより、図3に示すように、隣接するトンネル内装板1、1の上端部と下端部のコーナー部、及び中間部の端部を内装板取付金具Aと内装板取付金具Bのみを用いトンネル内壁面2に直付け状態で取り付けることができる。
【0025】
なお、図6に示すように、カットアンカー15に対し中間部押さえ金具Cの基板部16をボルト18で取り付け固定し、L字係合部17で各トンネル内装板1の上下両端中央部をトンネル内壁面2方向に押さえた状態とすることにより、トンネル内装板1の横幅が広い場合でも、中間部の膨らみを防止することができる。
【0026】
次に、この実施例1の効果を説明する。
【0027】
この実施例1のトンネル内装板では、上述のように、基板5と挟持板6の2部材からなる内装板取付金具A、及び基板7と挟持板10の2部材からなる内装板取付金具Bのみで互いに隣接するトンネル内装板1、1の端部(上端部と下端部のコーナー部、中間部の端部)同士を同時にトンネル内壁面2に取付固定するものであるため、上段、中段、下段などに分けて長く配置される横胴縁と下側水平端縁部は下段の横胴縁に沿ってそれぞれ取り付けられる補修部材を用いる従来工法に比べ、金具の材料コストが安く付き、コストの低減化が可能になるとともに、取り付ける手間も少なくなるため、作業効率の向上が可能になる。
【0028】
また、基板5、7の左右両端部にトンネル内壁面2側へ向けて所定高さ突出する支持脚部51、71が略L字状に折曲形成されているため、トンネル内壁面2に凹凸があっても、トンネル内壁面2に対し基板5、7を安定良く強固に固定することができる。
【0029】
また、内装板取付金具Bの基板7の中央部の上下両端部には係合用切欠部72、73が形成され、挟持板10はその中央部の上下両端部に基板7の上下両係合用切欠部72、73に係合して位置決めする係合片11、12が折曲形成されている構成としたことで、トンネル内壁面2に取り付けたカットアンカー8に基板7と挟持板10をボルト9で友締めする作業を容易に行えるようになり、作業性を高めることができる。
また、中間部押さえ金具Cを用いることで、トンネル内装板1の横幅が広い場合でも、中間部の膨らみを防止することができる。
【0030】
以上本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【0031】
例えば、実施例では、内装板取付金具Aにおいて、基板5の裏側にナット54を固定し、ボルト55をナット54に螺合させることにより、内装板取付金具Aの基板5と挟持板6との間にトンネル内装板1の上端部及び下端部のコーナー部を挟持した状態で締め付け固定するようにしたが、ボルト4をカットアンカー3に螺合することのみで基板5と挟持板6との間にトンネル内装板1の上端部及び下端部のコーナー部を挟持した状態で締め付け固定するようにしてもよい。
また、トンネル内装板1の横幅が狭い場合は、中間押さえ金具Cを必要としない場合もある。
【符号の説明】
【0032】
1 トンネル内装板
2 トンネル内壁面
3 カットアンカー
4 ボルト
5 基板
51 支持脚部
52 ボルト挿通孔
53 ボルト挿通孔
54 ナット
55 ボルト
6 挟持板
61 上側部分
62 下側部分
63 ボルト挿通孔
64 ボルト挿通孔
7 基板
71 支持脚部
72 係合用切欠部
73 係合用切欠部
74 ボルト挿通孔
8 カットアンカー
9 ボルト
10 挟持板
11 係合片
12 係合片
13 両端部分
14 中央部分
15 カットアンカー
16 基板部
17 L字状係合部
18 ボルト
A 内装板取付金具
B 内装板取付金具
C 中間部押さえ金具
W 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内装板をトンネル内壁面に沿って一定隙間開けた状態で互いに隣接するトンネル内装板の端部同士を同時にトンネル内壁面に取付固定する取付金具であって、
前記トンネル内壁面に直付け状態で取付固定される基板と、前記トンネル内壁面に取り付けたカットアンカーに前記基板とともにその横方向中央部をボルトで友締めすることにより基板との間に互いに隣接する両トンネル内装板の端部を同時に挟持状態で固定する挟持板とで構成され、
前記基板はその左右両端部にトンネル内壁面側へ向けて所定高さ突出する支持脚部が略L字状に折曲形成されていることを特徴とするトンネル内装板取付金具。
【請求項2】
請求項1記載のトンネル内装板取付金具において、
前記基板と挟持板はその上側又は下側中央部を前記トンネル内壁面に取り付けたカットアンカーに対しボルトで友締め固定するように構成され、
前記基板の裏面側に固定されたナットにボルトを螺合して基板と挟持板を友締めすることにより、前記基板と挟持板の下側又は上側両端部分で互いに隣接するトンネル内装板の上端側コーナー部又は下端側コーナー部を挟持した状態で固定するように構成されていることを特徴とするトンネル内装板取付金具。
【請求項3】
請求項1記載のトンネル内装板取付金具において、
前記基板の中央部の上下両端部には係合用切欠部が形成され、
前記挟持板はその中央部の上下両端部に前記基板の上下両係合用切欠部に係合して位置決めする係合片が折曲形成されていること特徴とするトンネル内装板取付金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−180666(P2012−180666A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43700(P2011−43700)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(508001431)西日本高速道路メンテナンス九州株式会社 (7)
【出願人】(506192803)大東金属株式会社 (5)
【出願人】(511054466)日創プロニティ株式会社 (3)
【出願人】(591060544)ヒノマル株式会社 (6)
【Fターム(参考)】