説明

トンネル壁面変位の表示方法およびそのプログラム

【課題】トンネル壁面の変位量を二次元的かつ経時的に把握できるようにするとともに、日常的な施工管理のためのA計測を兼ねることによって、施工コストの削減、施工効率の向上等を図り、かつトンネル内の作業者の安全を確保する。
【解決手段】トンネル坑内に設置されたトータルステーション5により、複数の内空断面形状計測箇所を経時的に繰り返して計測を行い、この内空断面測定結果について、初期の内空断面測定値と、その後の内空断面計測値との差分から各計測時における変位量を算出し、モニタ上に、変位量を任意に設定した等量線毎に区分するとともに、各等量線の範囲毎に色分けした展開図によって表示するとともに、該展開図を同一モニタ上において経時的順序で切り換えて表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に山岳トンネルにおける掘削において、トンネルの壁面変位を表示する方法に係り、詳しくはトンネルの壁面変位の経時的変化状況を二次元的に把握できるようにした表示方法およびそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、NATM工法に代表される山岳工事では、発破による掘進後、掘削壁面に対する吹付け工事を行った後、この吹付け壁面に対して最終的なコンクリート覆工を行う。この際、掘進から最終的な覆工が完了するまでの発破に伴う圧力や、また覆工後においても地山の圧力によって、壁面にある程度の変位が生ずる。したがって、掘削壁面に対する吹付けおよび吹付け壁面に対する覆工を出来るだけ均一または平滑な仕上がり面となるようにするには、これらの作業に併行して吹付け前後や覆工前後における壁面の変位を管理できることが望ましい。
【0003】
かかる内空断面の管理方法としては、図7に示されるように、トンネル31の天端や底盤に設置された光波測距儀32により内空断面33の形状を測定した後、この測定結果をコンピューターに入力し、図8に示されるように、モニタ34上において、各測定断面毎に、設計断面35を表示するとともに、この設計断面35を基準にどの程度変位が生じているかを折れ線図によって表示していた。この場合、前記設計断面35と折れ線との距離が大きいほど変位が多く生じていることを意味するものである。
【0004】
しかしながら、前記従来例に係る方法では、山岳トンネルの各断面毎の概ねの変位量は画面から容易に把握できるけれども、具体的にどの箇所にどの程度の変位が生じているかを平面的(二次元的)に把握することができなかった。その結果、迅速かつ正確に施工に反映させることが困難となり、吹付け厚や覆工厚にムラが生じ、均一または平滑な仕上がり面を得ることができなかったり、補強対策工を行う場合においても、ある一定以上の変位量が発生している箇所について、明確に把握できないために、不経済な必要以上の対策工を講じる結果となっていた。
【0005】
そこで本出願人は、下記特許文献1において、測定されたトンネル内空断面測定結果を展開図によって表示するとともに、該展開図において、掘削断面変位、吹付け厚、吹付け壁面変位、覆工厚、覆工壁面変位のいずれかの項目又はこれらの組合せを対象として、その量を図形、記号又はマークの大きさで表示する断面測定結果の表示方法、及び測定されたトンネル内空断面測定結果を展開図によって表示するとともに、該展開図において、掘削断面変位、吹付け厚、吹付け壁面変位、覆工厚、覆工壁面変位のいずれかの項目またはこれらの組合せを対象として、変位量又は基準値に対する偏倚量を等量線により表示するとともに、各等量線の範囲毎に色分け表示することを特徴とする断面測定結果の表示方法を提案した。
【特許文献1】特開2005−83893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に係る表示方法は、測定時点における内空断面の変位量を二次元的に把握できる点では非常に有効ではあるが、経時的な変化状況についてまでは把握することができなかった。すなわち、上記表示方法では、変位がどのように変化しているかを時間軸で把握することができなかった。
【0007】
そこで本発明の主たる課題は、トンネル壁面の変位量を二次元的かつ経時的にどのように変位が進行しているかまでも把握できるようにしたトンネル壁面変位の表示方法およびそのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、トンネル坑内に設置された測距及び測角が可能な測量機器により、複数の内空断面形状計測箇所を経時的に繰り返して計測を行い、この内空断面測定結果について、初期の内空断面測定値と、その後の内空断面計測値との差分から各計測時における変位量を算出し、モニタ上に、変位量を任意に設定した等量線毎に区分するとともに、各等量線の範囲毎に色分けした展開図によって表示するとともに、該展開図を同一モニタ上において経時的順序で切り換えて表示するようにしたことを特徴とするトンネル壁面変位の表示方法が提供される。
【0009】
ここで、本発明において「等量線」とは、基準値に対する偏倚量を高低差として捉え、ほぼ等しい高低差を有する偏倚量の範囲を「等高線」のように括った線をいう。また、コンピューターソフトの処理で前記等量線を明確にせず、グラデーション処理を行ってもよい。このグラデーション処理も前記等量線の概念に包括されるものである。
【0010】
上記請求項1に係る発明では、トンネル坑内に設置された測距及び測角が可能な測量機器により、複数の内空断面形状計測箇所を経時的に繰り返して計測を行い、この内空断面測定結果について、初期の内空断面測定値と、その後の内空断面計測値との差分から各計測時における変位量を算出して、トンネル壁面の変位量を定量的に把握するものである。
【0011】
本発明においては、モニタ上に、この算出した変位量を等量線毎に区分するとともに、各等量線の範囲毎に色分けした展開図によって表示するとともに、該展開図を同一モニタ上において経時的順序で切り換えて表示するようにしているため、トンネル壁面のどの箇所がどのように、変位が進行しているかまでも容易に把握することが可能となる。
【0012】
さらに、トンネル坑内に設置された測距及び測角が可能な測量機器により、複数の内空断面形状計測箇所を経時的に繰り返して計測を行っているため、日常的な施工管理のためのA計測を兼ねることができ、施工コストの削減、施工効率の向上等が図れ、かつトンネル内の作業者の安全を確保することができるようになる。
【0013】
請求項2に係る本発明として、トンネル坑内に設置された測距及び測角が可能な測量機器により、複数の内空断面形状計測箇所を経時的に繰り返して計測を行い、この内空断面測定結果について、初期の内空断面測定値と、その後の内空断面測定値との差分から各測定時における変位量を算出し、モニタ上に、変位量を図形、記号又はマークの大きさで表した展開図によって表示するとともに、該展開図を同一モニタ上において経時的順序で切り換えて表示するようにしたことを特徴とするトンネル壁面変位の表示方法が提供される。
【0014】
上記請求項2に係る発明は、各断面毎の測定点における変位量を図形、記号又はマークの大きさで表した展開図によって表示するとともに、該展開図を同一モニタ上において経時的順序で切り換えて表示するようにしたものである。
【0015】
請求項3に係る本発明として、前記展開図を同一モニタ上で、手動により切り換え表示するか及び/又はスライドショー機能により所定時間毎に自動的に切り換え表示する請求項1〜2いずれかに記載のトンネル壁面変位の表示方法が提供される。
【0016】
上記請求項3に係る発明においては、上記請求項1、2で測定した展開図を、同一モニタ上で、手動により切り換え表示するか及び/又はスライドショー機能により所定時間毎に自動的に切り換え表示することによって、トンネル壁面の経時的変化が一目で把握できるようになる。
【0017】
請求項4に係る本発明として、前記展開図の縦軸は前記トンネル中心線を基準として展開したトンネル周方向の距離とし、横軸は掘進方向の距離としてある請求項1〜3いずれかに記載のトンネル壁面変位の表示方法が提供される。
【0018】
請求項5に係る本発明として、前記測距及び測角が可能な測量機器に代えて、3次元スキャナーを用いて前記内空断面測定を行う請求項1〜4いずれかに記載のトンネル壁面変位の表示方法が提供される。
【0019】
請求項6に係る本発明として、前記測距及び測角が可能な測量機器に代えて、デジタルカメラを用いた精密写真測量により前記内空断面測定を行う請求項1〜4いずれかに記載のトンネル壁面変位の表示方法が提供される。
【0020】
請求項7に係る本発明として、コンピューターにおいて、内空断面測定結果について、初期の内空断面測定値と、その後の内空断面計測値との差分から各計測時における変位量を算出し、モニタ上に、変位量を任意に設定した等量線毎に区分するとともに、各等量線の範囲毎に色分けした展開図によって表示するとともに、該展開図を同一モニタ上において経時的順序で切り換えて表示するように実行させるためのトンネル壁面変位の表示用プログラムが提供される。
【0021】
請求項8に係る本発明として、コンピューターにおいて、内空断面測定結果について、初期の内空断面測定値と、その後の内空断面測定値との差分から各測定時における変位量を算出し、モニタ上に、変位量を図形、記号又はマークの大きさで表した展開図で表示するとともに、該展開図を同一モニタ上において経時的順序で切り換えて表示するように実行させるためのトンネル壁面変位の表示用プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0022】
以上詳説のとおり本発明によれば、トンネル壁面の変位量が二次元的かつ経時的に把握できるようになる。また、日常的な施工管理のためのA計測を兼ねることができ、施工コストの削減、施工効率の向上等を図り、かつトンネル内の作業者の安全が確保される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0024】
本トンネル内空断面測定システムでは、図1に示されるように、現場事務所H内に管理用コンピュータ1が設備されるとともに、トンネル坑内に無線通信基地局2を固定配置し、前記管理用コンピュータ1と無線通信基地局2とが情報伝送可能なように通信ケーブル3により接続されている。
【0025】
一方、切羽付近で掘削作業を行っている坑内作業員等が携帯情報通信端末4を常時携帯し、前記無線通信基地局2と双方向に無線通信可能となっており、前記情報通信端末4から発信された情報が前記無線通信基地局2を経由して前記管理コンピュータ1に伝送されるようになっているとともに、切羽後方にはトータルステーション5が固定配置され、コントローラ6を介して前記無線通信基地局2と接続されている。なお、本例では前記管理コンピュータ1と無線通信基地局2との間の通信を有線通信、無線通信基地局2と携帯情報通信端末4との間の通信を無線通信としたが、各間の通信は無線または有線のいずれであってもよい。
【0026】
前記トータルステーション5は、図1に示す例ではトンネルの上部側に配設され、トンネル掘進に合わせて順次盛替えるようにしているが、三脚方式により測定時に仮設するようにしてもよい。また、前記トータルステーション5による内空断面の測定は、適宜行うことができるが、所定の時間間隔で定期的に行うようにすることが好ましい。
【0027】
切羽S近傍では、ホイールジャンボ7、吹付け機8、ホイールローダなどのトンネル施工用重機が配置され、例えば図示される例では、上半及び下半の一括の併行作業により掘削を行うミニベンチ工法により、上半及び下半のそれぞれにおいてロックボルト削孔および装薬孔・装薬を併行して行った後、上半および下半を一気に切り崩し、その後ズリ出し→当り取り→一次吹付け→支保建込み→二次吹付け→ロックボルト打設の手順にて掘削作業が1サイクル毎に行われる。
【0028】
前記掘削作業を終え、掘削断面を計測する手順は、先ず、図2(A)に示されるように、予め座標が既知とされる少なくとも2点の基準点A,Bをトータルステーション5により視準し、三角測量の原理を応用した後方交会法によりトータルステーション5の設置座標を算出する。このトータルステーション5の設置座標の特定作業は、設置点が変化している場合もあるため、各種測量が行われる毎に繰り返し行うようにするのが望ましい。なお、同図に示されるように、算出した座標を確認するためのチェック点を設けてもよい。
【0029】
その後、同図(B)に示されるように、所定時間毎に、又は現場事務所H内に設置された管理用コンピュータ1により若しくは坑内作業員等が携帯する携帯情報通信端末4により、計測開始の指令が出されると、コントローラー6による制御によりトータルステーション5が自動的に複数の、図示例では3つの内空断面形状計測箇所についてトンネル壁面の形状計測を行う。
【0030】
前記内空断面形状の計測箇所は、坑口から切羽Sにかけて、その数及び間隔などを任意に選定することができる。また、計測箇所の断面数は、計測期間中、固定的なものではなく、掘進に伴って順次断面を追加するようにする。また、坑口側の計測が不要になった断面については順次計測対象から外すようにする。計測対象となる断面については、変位の推移を把握するために、所定の時間間隔で経時的に複数回繰り返して計測が行われる。
【0031】
前記計測データは、前記通信システムによって管理コンピュータ1内に自動的に取り込まれるようになっている(同図(C))。なお、計測データは、坑内作業員等が携帯する携帯情報端末4に取り込まれるようにしてもよい。この場合、後述する測定結果の表示形式は、携帯情報端末4に表示されるようにしてもよい。
【0032】
管理コンピュータ1に取り込まれた測定結果は、本発明に従って、所定の表示形式で、管理用コンピュータ1のモニタに表示されるようになっている。以下、第1形態例と第2形態例とに分けて説明する。
【0033】
〔第1形態例〕
第1形態例に係る表示形式は、内空断面測定結果について、初期の内空断面測定値と、その後の内空断面計測値との差分から各計測時における変位量を算出し、モニタ上に、変位量を任意に設定した等量線毎に区分するとともに、各等量線の範囲毎に色分けした展開図によって表示するとともに、該展開図を同一モニタ上において、図3から図5の順で示すように、経時的順序で切り換えて表示するようにしたものである。
【0034】
図3〜図5に示されるモニタ表示画面10A〜10Cでは、縦軸に前記内空断面の中心線CLを基準として展開した周方向距離を取り、横軸に掘進距離TD(括弧内に掘削サイクル番号)を取った展開図として表示され、初期の内空断面測定値と、その後の内空断面計測値との差分から算出した各計測時における変位量が等量線により表示されるとともに、各等量線の範囲毎に各種の色により色分けされている。
【0035】
具体的には、凡例に示されるように、変位量を4mm毎にA〜Tの20段階に区分し、等量線により表示するようにし、かつA〜Tの各等量線の区分毎にその範囲を色分けするようにする。前記A〜Tの区分の内、マイナス区分のA〜Jがトンネル空間内方向への増減を示し、プラス区分のK〜Tがトンネル空間外方向への増減を示している。また、図面上に着色表示できないため、都合上アルファベット表示をするに止めているが、実際は区分Aから区分Tに行くに従って、赤→橙→黄→緑→青→群青色のように徐々に色変化させることによって、赤色及び橙色部分、すなわちトンネル空間内方向への変位増大がどの位置にどのような範囲で分布しているかがその量と共に一目で分かるようになっているとともに、青系色部分、すなわちトンネル空間外方向への変位増大がどの位置にどのような範囲で分布しているかがその量と共に一目で分かるようになっている。
【0036】
前記モニタ表示画面10Aは、右上に表示される日付ボックス15により選択指定された各測定日時の変位量コンター図16が表示されるようになっているともに、前記横軸のTDは、上端付近に表示されているTD選択リストボックス11a、11bにより選択指定されたTD区間のものが表示されるようになっている。
【0037】
モニタ表示の右上には、変位推移ボタン12が設けられているとともに、その下側にはスライドショーボタン13が設けられている。
【0038】
前記変位推移ボタン12をマウスでクリックすると、変位量コンター図16が経時的順序で切り換えられて表示されるようになっている。図4は、前記変位推移ボタン12をクリックして、経時的に次の変位量コンター図16を表示したモニタ画面である。さらに、図5は前記変位推移ボタン12を更にもう一度マウスでクリックして、経時的に次の変位量コンター図16を表示したモニタ画面である。このように、時間的な経過順で変位量コンター図16を順に切り換えて表示することにより、トンネル壁面の変位量を二次元的にかつ経時的にどのように変位が進行しているかまでも容易に把握できるようになる。
【0039】
また、前記スライドショーボタン13をマウスでクリックした場合には、所定の時間間隔で、図3〜図5の順で自動的に切り換えて表示することができる。
【0040】
前記モニタ表示画面10A〜10Cの右下端には、印刷ボタン17が設けられ、前記印刷ボタン17をマウスで選択すれば、変位量コンター図16が印刷できるようになっている。
【0041】
〔第2形態例〕
前記モニタ表示画面10A〜10Cの上部には、表示切換えボタン14が設けられており、このボタンをマウスでクリックすると、画面が図6に示される表示形式に切り替わるようになっている。
【0042】
本第2形態例に係る表示形式は、内空断面測定結果について、初期の内空断面測定値と、その後の内空断面測定値の差分から各測定時における変位量を算出し、モニタ上に、変位量を図形、記号又はマークの大きさで表した展開図によって表示するとともに、該展開図を同一モニタ上において経時的順序で切り換えて表示するようにしたものである。
【0043】
図6に示される前記モニタ表示画面18では、左側に前記掘削内空断面の展開図19が表示されているとともに、右側に測定対象の内空断面の断面図20が表示され、かつ下側に各掘削内空断面の測定結果の一覧表21が表示されるようになっている。各測定結果は、日付ボックス15により選択指定された各測定日時のものが任意に切り換えて表示されるようになっているともに、前記横軸のTDは、前記コンピューター画面1Aの上端付近に表示されているTD選択リストボックス11a、11bにより選択指定されたTD区間のものが表示されるようになっている。。
【0044】
前記展開図19は、縦軸に前記内空断面の中心線CLを基準として展開した周方向距離を取り、横軸に掘進距離TD(Total Distance)とStation番号による距離程STAを取った図として表示され、上部側には掘削サイクル数と支保工パターン記号(P−B−H(曲))が夫々表示されている。
【0045】
前記展開図19では、マウスにより指定された日付の各断面毎の各測定点における変位量が、円の大きさによって表示されるようになっているとともに、基準断面に対する余掘とアタリとが円内に付した着色によって表示されるようになっている。具体的に図中では、余掘は○(白丸)、アタリは●(赤丸)で表示されるようになっている。なお、前記変位量の表示位置が前記断面位置24,24…に沿って一列に並んで表示されていないものがあるが、これは、トータルステーション5を切羽後方に設置し、斜め方向からの視準によって計測しているため、変位量による凹凸によって計測位置が若干ずれるためである。なお、前記変位量の表示は、前記円以外に、任意の図形、記号またはマークとすることができ、余掘又はアタリの区別の着色は赤色以外に任意の有彩色とすることができる。
【0046】
一方、前記断面図20では、マウスにより指定した日付及びTD位置の内空断面形状が表示されるようになっている。内空断面形状は、初期の内空断面22を基準に変位量が折れ線23によって表示されるようになっている。前記断面図20の右側上端部にはアタリ表示倍率欄が表示され、指定された任意の倍率により、折れ線23のアタリ部分のみが誇張的に表現されるようになっている。
【0047】
他方、前記一覧表21には、各内空断面測定結果について左から順に、測定日時、ナンバー、設計上のTD(実TD)、実測によるTD(計測TD)、相対X座標、相対Y座標、相対Z座標、鉛直角、中心からの設計距離、中心からの計測距離、実測アタリ量、修正アタリ量、アタリ区分、変位量が夫々表示されるようになっている。
【0048】
この表示形式においても、前記変位推移ボタン12をマウスでクリックすると、前記展開図19、断面図20、一覧表21が順次、経時的順序で切り換えられて表示されるようになっている。また、前記スライドショーボタン13をマウスでクリックした場合には、所定の時間間隔で自動的に切り換えて表示されるようになっている。
【0049】
〔他の形態例〕
(1)前記トータルステーション5に代えて、3次元スキャナーを用いて内空断面測定を行うこともできる。前記トータルステーションは従来から存在する測定機器であるが、近年はセンサー技術の発達により3次元スキャナーが実用化レベルにあり、前記トータルステーション5に代えて3次元スキャナーを用いて面的に内空断面の凹凸計測を行うことができる。前記3次元スキャナーとしては、例えばパルステック社製のTDSシリーズなどを好適に使用することができる。測量誤差はスキャンエリア567×498mmの場合(TDS-1500)で、0.23〜0.83mm(Z方向)の精度が得られる。
(2)更に、前記トータルステーション5に代えて、近年のコンピュータ処理技術の発達に伴って実用化されている精密写真測量によって内空断面測定を行うことができる。前記精密写真測量は、撮影位置を変えて撮影した複数枚のデジタル写真画像の視差の違いから、対象物の3次元座標をパソコンを使い画像処理によって算出するもので、測量誤差は概ね、撮影距離100mで数mmという高い精度が得られている。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】トンネル内空断面計測の要領図である。
【図2】(A)〜(C)はトンネル内空断面計測の要領図である。
【図3】変位量コンター図16を示すモニタ表示画面10A(その1)である。
【図4】変位量コンター図16を示すモニタ表示画面10B(その2)である。
【図5】変位量コンター図16を示すモニタ表示画面10C(その3)である。
【図6】展開図19、断面図20及び一覧表21を示すモニタ表示画面18である。
【図7】トンネル内空断面測定要領図である。
【図8】従来例に係る壁面変位の表示形式を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1…管理コンピュータ、10A〜10B…モニタ表示画面、2…無線通信基地局、3…通信ケーブル、4…携帯情報通信端末、5…トータルステーション、6…コントローラ、7…ホイールジャンボ、8…吹付け機、11a・11b…TD選択リストボックス、12…変位推移ボタン、13…スライドショーボタン、14…表示切換ボタン、15…日付ボックス、16…変位量コンター図、19…展開図、20…断面図、21…一覧表

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル坑内に設置された測距及び測角が可能な測量機器により、複数の内空断面形状計測箇所を経時的に繰り返して計測を行い、この内空断面測定結果について、初期の内空断面測定値と、その後の内空断面計測値との差分から各計測時における変位量を算出し、モニタ上に、変位量を任意に設定した等量線毎に区分するとともに、各等量線の範囲毎に色分けした展開図によって表示するとともに、該展開図を同一モニタ上において経時的順序で切り換えて表示するようにしたことを特徴とするトンネル壁面変位の表示方法。
【請求項2】
トンネル坑内に設置された測距及び測角が可能な測量機器により、複数の内空断面形状計測箇所を経時的に繰り返して計測を行い、この内空断面測定結果について、初期の内空断面測定値と、その後の内空断面測定値との差分から各測定時における変位量を算出し、モニタ上に、変位量を図形、記号又はマークの大きさで表した展開図によって表示するとともに、該展開図を同一モニタ上において経時的順序で切り換えて表示するようにしたことを特徴とするトンネル壁面変位の表示方法。
【請求項3】
前記展開図を同一モニタ上で、手動により切り換え表示するか及び/又はスライドショー機能により所定時間毎に自動的に切り換え表示する請求項1〜2いずれかに記載のトンネル壁面変位の表示方法。
【請求項4】
前記展開図の縦軸は前記トンネル中心線を基準として展開したトンネル周方向の距離とし、横軸は掘進方向の距離としてある請求項1〜3いずれかに記載のトンネル壁面変位の表示方法。
【請求項5】
前記測距及び測角が可能な測量機器に代えて、3次元スキャナーを用いて前記内空断面測定を行う請求項1〜4いずれかに記載のトンネル壁面変位の表示方法。
【請求項6】
前記測距及び測角が可能な測量機器に代えて、デジタルカメラを用いた精密写真測量により前記内空断面測定を行う請求項1〜4いずれかに記載のトンネル壁面変位の表示方法。
【請求項7】
コンピューターにおいて、内空断面測定結果について、初期の内空断面測定値と、その後の内空断面計測値との差分から各計測時における変位量を算出し、モニタ上に、変位量を任意に設定した等量線毎に区分するとともに、各等量線の範囲毎に色分けした展開図によって表示するとともに、該展開図を同一モニタ上において経時的順序で切り換えて表示するように実行させるためのトンネル壁面変位の表示用プログラム。
【請求項8】
コンピューターにおいて、内空断面測定結果について、初期の内空断面測定値と、その後の内空断面測定値との差分から各測定時における変位量を算出し、モニタ上に、変位量を図形、記号又はマークの大きさで表した展開図で表示するとともに、該展開図を同一モニタ上において経時的順序で切り換えて表示するように実行させるためのトンネル壁面変位の表示用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−298432(P2008−298432A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141324(P2007−141324)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(591284601)株式会社演算工房 (22)
【Fターム(参考)】