説明

トーションビーム式サスペンション

【課題】トーションビームとスプリングシートとの結合部分に発生する応力を緩和する。
【解決手段】トーションビーム式サスペンション10において、スプリングシート16は、コイルスプリングの下端部を支持するスプリング受け部16aを有する。スプリングシート16は、車体本体に付勢力を与えるコイルスプリングの下端部を支持できるよう、トーションビーム12とトレーリングアーム14の双方に結合される。スプリング受け部16aは、支持すべきコイルスプリングの下端を囲うよう形成されたフランジ16cを有する。第1結合部16dは、トーションビーム12の側面に結合される。第2結合部16eは、トーションビーム12の下面に結合される。スプリングシート16は、トーションビーム12にそれぞれ結合される第1結合部16dおよび第2結合部16eを有する。第1結合部16dと第2結合部16eとの間には切り欠き部16hが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トーションビーム式サスペンションに関し、特に、車体本体に付勢力を与えるコイルスプリングの下端部を支持するスプリングシートを有するトーションビーム式サスペンションに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、多くの車両にトーションビーム式サスペンションが採用されている。トーションビーム式サスペンションは、一般的にトーションビームおよびトレーリングアームを有する。一方、このトーションビーム式サスペンションには、車両本体に上方への付勢力を与えるコイルスプリングを支持するためのスプリングシートが設けられる場合がある。ここで、トーションビームにスプリングシートを固定したときのトーションビームへの応力集中を緩和するトーションビーム式リヤサスペンションが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−281972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に記載される技術では、スプリングシートは、車幅方向内側部分を上方に折り曲げて形成された縦フランジを有し、この縦フランジを除く部位が、フランジ無しで且つトーションビームに対し非固定とされている。しかしながら、スプリングシートをこのように形成した場合においても、縦フランジを介してトレーリングアームとトーションビームとを接続することになるため、縦フランジとトーションビームとの接続部分に依然として応力が集中する可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、トーションビームとスプリングシートとの結合部分に発生する応力を緩和することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のトーションビーム式サスペンションは、左右に並設された車輪の各々にねじれによる反力を与えるトーションビームと、前記トーションビームの両端に連結され、車両前後方向に延在するトレーリングアームと、車体本体に付勢力を与えるコイルスプリングの下端部を支持できるよう、前記トーションビームと前記トレーリングアームの双方に結合されたスプリングシートと、を備える。前記スプリングシートは、前記トーションビームにそれぞれ結合される第1結合部および第2結合部を有し、第1結合部と第2結合部との間には切り欠き部が設けられている。
【0007】
この態様によれば、トーションビームとスプリングシートとの結合部に発生する応力を、この切り欠き部を設けることにより緩和することができる。このため、応力集中の影響を抑制するためのさらなる補強などの必要性を低減でき、強度要求を満足しつつトーションビーム式サスペンションの構成を簡素なものとすることができる。
【0008】
前記スプリングシートは、コイルスプリングの下端部を支持するスプリング受け部を有してもよい。前記スプリング受け部は、支持すべきコイルスプリングの下端を囲うよう形成されたフランジを有してもよい。
【0009】
この態様によれば、切り欠き部を設けることによるスプリングシート自体の強度の低下を簡易に抑制することができる。このため、コイルスプリングの安定した支持と、トーションビームとスプリングシートとの結合部における応力集中の緩和とを両立させることができる。
【0010】
前記第1結合部は、前記トーションビームの側面に結合され、前記第2結合部は、前記トーションビームの下面に結合されてもよい。
【0011】
この態様によれば、スプリングシートをトーションビームに安定して固定することができる。このため、この態様によってもコイルスプリングの安定した支持と、トーションビームとスプリングシートとの結合部における応力集中の緩和とを両立させることができる。
【0012】
本発明の別の態様もまた、トーションビーム式サスペンションである。このトーションビーム式サスペンションは、左右に並設された車輪の各々にねじれによる反力を与えるトーションビームと、前記トーションビームの両端に連結され、車両前後方向に延在するトレーリングアームと、車体本体に付勢力を与えるコイルスプリングを支持できるよう、前記トーションビームと前記トレーリングアームの双方に結合されたスプリングシートと、を備える。前記スプリングシートは、コイルスプリングの下端部を支持する受け面を有する。前記受け面は、前記トーションビームと前記トレーリングアームとの連結部から前記スプリングシートが設けられた方向に開口する切り欠き部を有する。
【0013】
スプリングシートがトーションビームおよびトレーリングアームの双方に結合されると、例えば一方の車輪が段差に乗り上げるなどして他方の車輪に対し上下方向の変位が生じたときに、トーションビームとトレーリングアームとの間に上下方向の振れ変形が発生する。この振れ変形により、スプリングシートには、トーションビームおよびトレーリングアームの双方への突っ張り力が生じる。この突っ張り力は、トーションビームとスプリングシートとの結合部における応力の集中に繋がり得る。この態様によれば、トーションビームとスプリングシートとの結合部に発生する応力を、このように切り欠き部を設けることによっても緩和することができる。このためこれによっても、強度要求を満足しつつトーションビーム式サスペンションの構成を簡素なものとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、トーションビームとスプリングシートとの結合部分に発生する応力を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態に係るトーションビーム式サスペンションの構成を示す斜視図である。
【図2】図1の視点Pからトーションビーム式サスペンションを見た図である。
【図3】図1の視点Qからトーションビーム式サスペンションを見た図である。
【図4】第2の実施形態に係るトーションビーム式サスペンションの構成を示す図である。
【図5】第3の実施形態に係るトーションビーム式サスペンションの構成を示す図である。
【図6】第4の実施形態に係るトーションビーム式サスペンションの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という。)について詳細に説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るトーションビーム式サスペンション10の構成を示す斜視図である。図2は、図1の視点Pからトーションビーム式サスペンション10を見た図である。以下、図1および図2に関連して、第1の実施形態に係るトーションビーム式サスペンション10の構成について詳細に説明する。
【0018】
第1の実施例に係るトーションビーム式サスペンション10は、段差に乗り上げるなどして後輪に衝撃が与えられた場合に、車両本体に伝達する衝撃を緩和する、リヤサスペンションとして機能する。なお、トーションビーム式サスペンション10が後輪以外の車輪からの衝撃緩和に用いられてもよい。
【0019】
トーションビーム式サスペンション10は、トーションビーム12、2本のトレーリングアーム14、および2つのスプリングシート16を有する。なお、図1および図2は、トーションビーム式サスペンション10の右後輪近傍の一部を示しており、このためトレーリングアーム14とスプリングシート16は一つずつ図示されている。トーションビーム式サスペンション10は、概ね左右対象に構成されるため、以下、トーションビーム式サスペンション10の右後輪近傍の構成について説明することで、トーションビーム式サスペンション10の左後輪近傍の構成の説明は省略する。
【0020】
トーションビーム12は、車両左右方向に延在するよう配置される。2本のトレーリングアーム14は、それぞれ略中央にてトーションビーム12の両端に連結され、車両左側および車両右側の各々において、車両前後方向に延在するよう配置される。トレーリングアーム14は、一端が車両に回動可能に連結され、他端近傍において後輪を支持する。こうして左右の後輪が相互に異なる高さに位置したとき、トーションビーム12がねじれ、左右の後輪の各々にねじれによる反力を与える。
【0021】
スプリングシート16は、車体本体に付勢力を与えるコイルスプリングの下端部を支持できるよう、トーションビーム12とトレーリングアーム14の双方に結合されている。スプリングシート16は、板金をプレス加工することにより形成される。スプリングシート16は、コイルスプリングの下端部を支持するスプリング受け部16aを有する。スプリング受け部16aは、受け面16bおよびフランジ16cによって構成される。
【0022】
受け面16bは円形に形成され、この受け面16bの上面にコイルスプリング(図示せず)の下端が当接する。コイルスプリングの上端には車両本体が支持される。こうしてコイルスプリングは、路面から車両客室に伝達される振動や衝撃を緩和する。フランジ16cは、支持すべきコイルスプリングの下端を囲うよう形成されている。これにより、例えば一方の後輪が段差に乗り上げるなどしてコイルスプリングが収縮し、受け面16bに大きな力が与えられた場合においても、受け面16bの変形を抑制することができ、スプリングシート16によってコイルスプリングを適切に支持することができる。
【0023】
スプリングシート16は、トーションビーム12にそれぞれ結合される第1結合部16dおよび第2結合部16eを有する。第1結合部16dは、上下方向に延在する状態を保ったままフランジ16cからトーションビーム12の側面12aに向かって延在するよう形成される。第1結合部16dは、側面12aに沿って鉛直に伸びる端縁を有し、この端縁がトーションビーム12の側面12aに溶接部18によって結合される。第2結合部16eは、フランジ16cから曲げられ、トーションビーム12の下面12bの下方まで略水平に延在するよう形成される。第2結合部16eは、トーションビーム12の延在方向と平行に延在する端縁を有し、この端縁がトーションビーム12の下面12bに溶接部18によって結合される。
【0024】
また、スプリングシート16は、トレーリングアーム14にそれぞれ結合される第3結合部16fおよび第4結合部16gを有する。第3結合部16fは、上下方向に延在する状態を保ったままフランジ16cからトレーリングアーム14の側面14aに向かって延在するよう形成される。第3結合部16fは、側面14aに沿って鉛直に伸びる端縁を有し、この端縁がトレーリングアーム14の側面14aに溶接部18によって結合される。第4結合部16gは、フランジ16cから曲げられ、トレーリングアーム14の下面14bの下方まで略水平に延在するよう形成される。第4結合部16gは、トレーリングアーム14の延在方向と平行に延在する端縁を有し、この端縁がトレーリングアーム14の下面14bに溶接部18によって結合される。
【0025】
上述のように、スプリングシート16は、下方向への力が与えられた場合においてもコイルスプリングを適切に支持すべく、高い剛性が求められる。一方、このスプリングシート16をトーションビーム12とトレーリングアーム14の双方に結合させた場合、一方の後輪が段差などに乗り上げることなどにより生じるトランピング入力時、すなわち左右輪に上下方向の逆相荷重が負荷される場合に、トーションビーム12とトレーリングアーム14の間にねじれが生じる。このとき、スプリングシート16の剛性があまりに高いと、第1結合部16dに応力が集中して疲労強度が低下する可能性がある。このような応力集中による疲労強度の低下を回避すべく、例えば第1結合部16dの両側から溶接部18により側面12aと結合させるなどして結合強度を高めると、コスト増加や生産性の低下などに繋がり得る。
【0026】
図3は、図1の視点Qからトーションビーム式サスペンション10を見た図である。上記のような課題を解決すべく、第1の実施形態では、第1結合部16dと第2結合部16eとの間には切り欠き部16hが設けられている。切り欠き部16hは、第1結合部16dの下縁部および第2結合部16eの側縁部がトーションビーム12から離れる方向に延在した後互いに接続することによって、トーションビーム12から離れる方向に凹むよう形成されている。このように第1結合部16dと第2結合部16eとの間に切り欠き部16hを設けることにより、第1結合部16dにおける応力の集中を緩和させることができ、疲労強度の低下を回避することができる。
【0027】
なお、第1の実施形態では、第3結合部16fと第4結合部16gとの間にも切り欠き部16iが設けられている。切り欠き部16iは、第3結合部16fの下縁部および第4結合部16gの側縁部がトレーリングアーム14から離れる方向に延在した後互いに接続することによって、トーションビーム12から離れる方向に凹むよう形成されている。このように第3結合部16fと第4結合部16gとの間に切り欠き部16iを設けることにより、第3結合部16fにおける応力の集中も緩和させることができ、疲労強度の低下を回避することができる。
【0028】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係るトーションビーム式サスペンション50の構成を示す図である。図4は、トーションビーム12を軸方向と垂直な面で切断した断面図を示している。以下、上述の実施形態と同様の箇所は同一の符号を付して説明を省略する。
【0029】
トーションビーム式サスペンション50は、トーションビーム12、トレーリングアーム(図示せず)、およびスプリングシート52を有する。図4は、トーションビーム式サスペンション50の右後輪近傍の一部を示す図であり、このためトレーリングアームとスプリングシート52はトーションビーム式サスペンション50に2つずつ設けられているが、図4では一つのみが図示されている。
【0030】
スプリングシート52は、板金を曲げ加工または絞り加工によって加工して形成される。スプリングシート52は、車両本体に付勢力を与えるコイルスプリングを支持する受け面52aを有する。なお、第2の実施形態においても、受け面52aを囲うようにフランジが設けられてもよい。
【0031】
第2の実施形態においても、スプリングシート52は、トーションビーム12にそれぞれ結合される第1結合部52bおよび第2結合部52cを有する。第1結合部52bは、受け面52aから鉛直上方に折り曲げられ、上下方向に延在する状態を保ったままトーションビーム12の側面12aに向かって延在するよう形成される。第1結合部52bは、側面12aに沿って鉛直に伸びる端縁を有し、この端縁がトーションビーム12の側面12aに溶接部18によって結合される。
【0032】
第2結合部52cは、第1結合部52bと同じ折り曲げ部から上下方向に延在する状態を保ったまま下面12bの下方まで延在するよう形成される。第2結合部52cは、下面12bに沿って水平に伸びる端縁を有し、この端縁がトーションビーム12の下面12bに溶接部18によって結合される。
【0033】
このように、スプリングシート52は、第1結合部52bおよび第2結合部52cでトーションビーム12をくわえ込むように形成され、第1結合部52bおよび第2結合部52cの各々が、溶接部18によってトーションビーム12の側面12aおよび下面12bにそれぞれ結合される。スプリングシート52は、トーションビーム12への結合形態と同様の形態でトレーリングアーム14にも結合される。このためトレーリングアーム14への結合方法についての詳細な説明は省略する。
【0034】
第2の実施形態では、第1結合部52bと第2結合部52cとの間に切り欠き部を設ける代わりに、第1結合部52bをトーションビーム12の側面12aに結合する溶接部18と第2結合部52cをトーションビーム12の下面12bに結合する溶接部18との間に非溶接領域54が設けられている。
【0035】
このように非溶接領域54を設けることで、第1結合部52bから第2結合部52cへと延在する単一の溶接部18によってスプリングシート52をトーションビーム12に結合する場合に比べ、第1結合部52bとトーションビーム12との結合部に生じる応力の集中を緩和することができる。このため、第1結合部52bの両側に溶接部18を設けるなどの対策を講じることなく簡易に応力集中を回避することができ、コストおよび製造工数を削減することができる。なお、非溶接領域は、スプリングシート52とトーションビーム12との結合、およびスプリングシート52とトレーリングアームとの結合のいずれかに設けられてもよい。
【0036】
(第3の実施形態)
図5は、第3の実施形態に係るトーションビーム式サスペンション70の構成を示す図である。図5は、トーションビーム12を軸方向と垂直な面で切断した断面図を示している。以下、上述の実施形態と同様の箇所は同一の符号を付して説明を省略する。
【0037】
トーションビーム式サスペンション70は、トーションビーム12、トレーリングアーム(図示せず)、およびスプリングシート72を有する。スプリングシート72は、車両本体に付勢力を与えるコイルスプリングを支持する受け面72aを有する。スプリングシート72は、第2結合部72cの板厚が第1結合部72bより薄い以外は、第2の実施形態に係るスプリングシート52と同様に形成される。
【0038】
したがって、スプリングシート72は、トーションビーム12をくわえ込むように形成された第1結合部72bおよび第2結合部72cを有し、第1結合部72bおよび第2結合部72cの各々が、溶接部18によってトーションビーム12の側面12aおよび下面12bにそれぞれ結合される。このとき、第1結合部72bをトーションビーム12の側面12aに結合する溶接部18と第2結合部72cをトーションビーム12の下面12bに結合する溶接部18との間に非溶接領域74が設けられている。また、スプリングシート72は、トーションビーム12への結合形態と同様の形態でトレーリングアーム14にも結合される。
【0039】
第2結合部72cは、第1結合部72bよりも薄い板金を第1結合部72bの下方に結合してもよく、第2結合部72cを押し潰すように加工して板厚を薄くしてもよい。このように第2結合部72cの板厚を薄くすることにより、第2結合部72cの剛性を適度に低下させて第1結合部72bなどへの応力集中を抑制することができる。
【0040】
なお、第2結合部72cの板厚を薄くする代わりに、第2結合部72cを第1結合部72bよりも剛性の低い材料によって形成してもよい。また、たとえば第2結合部72cに孔を1つ以上設けることにより、第1結合部72bよりも剛性を低くしてもよい。また、トレーリングアームとスプリングシート72との結合において、トレーリングアームの下面に溶接により結合される第3結合部が、トレーリングアームの側面に溶接により結合される第4結合部よりも、例えば板厚が薄いなど剛性が低くなるよう形成されていてもよい。さらに、トーションビーム12またはトレーリングアームの剪断中心から最も遠い位置の溶接部でスプリングシートのフランジの曲げ剛性を低減できるよう、スプリングシートのうちトーションビーム12またはトレーリングアームの剪断中心から最も遠い部分が、スプリングシートの本体よりも例えば板厚が薄いなど剛性が低くなるよう形成されていてもよい。
【0041】
(第4の実施形態)
図6は、第4の実施形態に係るトーションビーム式サスペンション100の構成を示す斜視図である。以下、上述の実施形態と同様の箇所は同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
トーションビーム式サスペンション100は、トーションビーム12、2本のトレーリングアーム14、および2つのスプリングシート102を有する。図6は、トーションビーム式サスペンション100の左後輪近傍の一部を示す図であり、このためトレーリングアーム14とスプリングシート102はトーションビーム式サスペンション100に2つずつ設けられているが、図6では一つずつ図示されている。
【0043】
スプリングシート102は、第1の実施形態に係るスプリングシート16と同様に、受け面102bおよびフランジ102cが形成されたスプリング受け部102aを有する。また、スプリングシート102は、トーションビーム12にそれぞれ結合される第1結合部102dおよび第2結合部102e、およびトレーリングアーム14にそれぞれ結合される第3結合部102fおよび第4結合部102gを有する。第1結合部102d、第2結合部102e、第3結合部102f、および第4結合部102gの各々の形状および結合方法は、第1の実施形態に係る第1結合部16d、第2結合部16e、第3結合部16f、および第4結合部16gと同様である。
【0044】
例えば後輪の一方が段差に乗り上げるなどして左右の後輪に上下方向の相対的な変位が生まれた場合、トレーリングアーム14に対してトーションビーム12に振れ変形D1が発生する。このとき、このようにスプリングシート102がトーションビーム12およびトレーリングアーム14の双方に結合されていると、スプリングシート102に突っ張り力F1が発生する。この突っ張り力F1は、第1結合部102dおよび第3結合部102fにおける応力の集中に繋がり得る。この応力集中による影響を回避するため、例えばトーションビーム12やトレーリングアーム14の板厚を増加させると、車両質量の増加に繋がる。また、溶接を均一な品質に保つため部品の寸法管理を厳格にすると、管理工数や管理コストが増大する虞がある。
【0045】
このため第4の実施形態に係るスプリングシート102は、受け面102bに切り欠き部102hが形成されている。切り欠き部102hは、トーションビーム12とトレーリングアーム14との連結部P1からスプリングシート102が設けられた方向に開口するよう形成される。具体的には、例えば図6に示す、左後輪近傍に設けられたスプリングシート102は、トーションビーム12よりも車両後方且つトレーリングアーム14よりも車両内部方向に配置される。したがって、スプリングシート102は、トーションビーム12とトレーリングアーム14との連結部から、車両後方且つ内部方向に配置されている。
【0046】
図6に示す、左後輪近傍に設けられたスプリングシート102の切り欠き部102hは、トーションビーム12とトレーリングアーム14との連結部から、車両後方且つ内部方向に開口するよう形成される。このとき、この切り欠き部102hは、トーションビーム12とトレーリングアーム14との連結部P1から、受け面102bに当接するコイルスプリング104の中心P2に向かう方向に開口するよう形成される。なお、切り欠き部102hの開口方向がこれに限られないことは勿論である。
【0047】
このように切り欠き部102hを設けることにより、トーションビーム12とトレーリングアーム14との間の相対的な振れ変形D1により生じる突っ張り力F1を抑制することができる。このため、第1結合部102dおよび第3結合部102fにおける応力の集中を抑制することが可能となる。
【0048】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本実施形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を本実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0049】
10 トーションビーム式サスペンション、 12 トーションビーム、 12a 側面、 12b 下面、 14 トレーリングアーム、 14a 側面、 14b 下面、 16 スプリングシート、 16a スプリング受け部、 16b 受け面、 16c フランジ、 16d 第1結合部、 16e 第2結合部、 16f 第3結合部、 16g 第4結合部、 16h,16i 切り欠き部、 18 溶接部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に並設された車輪の各々にねじれによる反力を与えるトーションビームと、
前記トーションビームの両端に連結され、車両前後方向に延在するトレーリングアームと、
車体本体に付勢力を与えるコイルスプリングの下端部を支持できるよう、前記トーションビームと前記トレーリングアームの双方に結合されたスプリングシートと、
を備え、
前記スプリングシートは、前記トーションビームにそれぞれ結合される第1結合部および第2結合部を有し、第1結合部と第2結合部との間には切り欠き部が設けられていることを特徴とするトーションビーム式サスペンション。
【請求項2】
前記スプリングシートは、コイルスプリングの下端部を支持するスプリング受け部を有し、
前記スプリング受け部は、支持すべきコイルスプリングの下端を囲うよう形成されたフランジを有することを特徴とする請求項1に記載のトーションビーム式サスペンション。
【請求項3】
前記第1結合部は、前記トーションビームの側面に結合され、
前記第2結合部は、前記トーションビームの下面に結合されることを特徴とする請求項1に記載のトーションビーム式サスペンション。
【請求項4】
左右に並設された車輪の各々にねじれによる反力を与えるトーションビームと、
前記トーションビームの両端に連結され、車両前後方向に延在するトレーリングアームと、
車体本体に付勢力を与えるコイルスプリングを支持できるよう、前記トーションビームと前記トレーリングアームの双方に結合されたスプリングシートと、
を備え、
前記スプリングシートは、コイルスプリングの下端部を支持する受け面を有し、
前記受け面は、前記トーションビームと前記トレーリングアームとの連結部から前記スプリングシートが設けられた方向に開口する切り欠き部を有することを特徴とするトーションビーム式サスペンション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−86734(P2012−86734A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236451(P2010−236451)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】