説明

ドアの排水構造

【課題】 簡単な構成にしてドアと車体との間の水密性能の向上を図ったドアの排水構造を提供する。
【解決手段】 ウェザストリップ(10)に、断面C字状のホルダ(6)の端部での当該ホルダとウェザストリップ(10)の係止部(12)との密着度合いを強化する突起(20)と、当該突起と連続し且つドアサッシュの前縁または後縁に沿い車体から離反しつつ下方に延びるよう形成され、ホルダの端部にまで浸入した水分をドアサッシュの前縁側または後縁側に導く堰(22)とを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアの排水構造に係り、詳しくは、ドアと車体との間をウェザストリップにより確実に密閉させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアの周縁には、車両のドアと車体間の閉扉時における水密状態を確保すべくウェザストリップが配設されている。
ウェザストリップは、ラバー材からなり、一体に形成した複数のリップがドアや車体と当接し、これにより雨水等の車室内への浸入が防止されるよう構成されている。
ところで、一般に、ウェザストリップは、ドアの周縁に設けられた断面C字状のホルダに挟持され、或いは、クリップによってドアの周縁に取り付けられている。
【0003】
しかしながら、ウェザストリップの背面、即ちウェザストリップとドアとの間に関しては水密状態が十分に確保されていない場合が多く、当該ウェザストリップとドアとの間を介して雨水等の水分が車室内に浸入し易いという問題がある。
このようなことから、ウェザストリップをドアの周縁に設けられた断面C字状のホルダに挟持するとともに、ウェザストリップとドアとの間に浸入する水分をウェザストリップ内部の中空部に導き、当該中空部を介して車外に排出する技術が開発されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−30769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1に開示の技術のように構成しても、ウェザストリップとドアとの間に浸入する水分を完全に中空部に導けるとは限らず、例えば、サッシュタイプのドアにあっては、サッシュの角部ぎりぎりまでホルダを配設することがホルダ取り付け性能等の理由により困難であることから、上記構成によっても、当該角部ではウェザストリップとドアとの間を介して雨水等の水分が車室内に浸入し易いという問題がある。
【0005】
また、上記特許文献1に開示の技術では、ウェザストリップに水分を導く孔を形成したりウェザストリップ内部を水路として利用可能な構造に仕上げる必要があり、構造が複雑となりウェザストリップの製造に手間がかかるという問題がある。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、簡単な構成にしてドアと車体との間の水密性能の向上を図ったドアの排水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、請求項1のドアの排水構造では、車両のドアの周縁に配設され、ドアと車体との間を水密状態に密閉するウェザストリップと、ドアサッシュの上縁に沿い設けられ、該ドアサッシュの上縁に沿うよう形成された前記ウェザストリップの係止部を挟持する断面C字状のホルダと、前記ホルダの端部に対応する前記ウェザストリップの係止部の前記車体側の部分に形成され、前記ホルダの端部での前記ホルダと前記ウェザストリップの係止部との密着度合いを高める突起と、前記ホルダに挟持されない前記ドアサッシュの上縁から前縁または後縁にかけての前記ウェザストリップの前記ドアサッシュとの当接面に前記突起と連続し且つ前記ドアサッシュの前縁または後縁に沿い前記車体から離反しつつ下方に延びるよう形成され、前記ホルダの端部にまで浸入した水分を前記ドアサッシュの前縁側または後縁側に導く堰とを備えたことを特徴とする。
【0007】
即ち、ドアサッシュの角部では断面C字状のホルダを配設し難く、当該ホルダの存在しない部分では雨水等の水分がウェザストリップとドアとの間を介して車室内やホルダ内に浸入し易いのであるが、ホルダの端部に対応するウェザストリップの係止部の車体側の部分に突起を形成し、ホルダとウェザストリップの係止部との密着度合いを高めたことにより、水分がホルダ内に浸入したとしても当該水分の車室内への浸入が防止される。そして、当該突起と連続し且つドアサッシュの前縁または後縁に沿い車体から離反しつつ下方に延びるような堰をウェザストリップのドアサッシュとの当接面に形成したことにより、ホルダの端部にまで浸入した水分は、車室内への浸入が防止されつつドアサッシュの前縁側または後縁側に良好に導かれ、ドアサッシュの前縁または後縁を伝って外部に排出される。
【発明の効果】
【0008】
請求項1のドアの排水構造によれば、ホルダの端部に対応するウェザストリップの係止部の車体側の部分に突起を形成し、ホルダとウェザストリップの係止部との密着度合いを高めるようにしたので、雨水等の水分がホルダ内に浸入したとしても当該水分の車室内への浸入を防止でき、さらに、当該突起と連続し且つドアサッシュの前縁または後縁に沿い車体から離反しつつ下方に延びるような堰をウェザストリップのドアサッシュとの当接面に形成するようにしたので、水分の車室内への浸入を防止しつつホルダの端部にまで浸入した水分をドアサッシュの前縁側または後縁側に導き、ドアサッシュの前縁または後縁を伝って外部に良好に排出させることができる。
【0009】
これにより、簡単な構成にしてドアと車体との間の水密性能の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1を参照すると、本発明に係る車両用ドアの概略構成図が示されており、図2を参照すると、本発明に係るドアの排水構造が適用される後側のサッシュコーナ部分Xの拡大図が示されている。
なお、ここでは、一例として車両の左側のフロントドアについて説明するが、本発明は右側のフロントドアの同一部分についても適用でき、また、左右のリヤドアの前側のサッシュコーナ部分についても適用できる。
【0011】
図1に示すように、ドア1は所謂サッシュタイプのドアであり、ドアパネル2とサッシュ4とから構成されている。そして、ドアパネル2とサッシュ4の各周縁フランジ部の車室側の面には、ドア1の全周に亘り、ドア1と車体(図示せず)のドア開口縁との間を水密状態に密閉すべく無端状のウェザストリップ10が配設されている。
ウェザストリップ10は、ラバー材を中空に成形したものであって複数のリップを有し、ドア1を閉扉すると、これら複数のリップが車体のドア開口縁と当接し、これによりドア1と車体のドア開口縁との間の水密が確保され、雨水等の車室内への浸入が防止される。
【0012】
詳しくは、サッシュ4の周縁フランジ部のうち前端から延びる上縁部4aには、断面C字状のホルダ6が腹部において周縁フランジ部に接合され上方に開口するようにして延設されており、一方、ウェザストリップ10のホルダ6に対応する範囲には、当該ホルダ6に嵌合される係止部12が形成されており、ウェザストリップ10は、当該上縁部4aでは、当該係止部12がホルダ6に嵌合され挟持されることでサッシュ4に固定されている。つまり、サッシュ4の上縁部4aは雨水等が特に車室内に浸入し易いことから、ホルダ6に係止部12を嵌合させることで水密性能の向上を図っている。
【0013】
また、サッシュ4の周縁フランジ部のうち後縁部4b及びドアパネル2の周縁フランジ部には、間隔を有して複数のクリップ孔3が形成されており、一方、ウェザストリップ10の各クリップ孔3に対応する位置には、それぞれクリップ14が設けられており、ウェザストリップ10は、当該後縁部4b及びドアパネル2の周縁フランジ部では、各クリップ14がそれぞれクリップ孔3に嵌合されることでサッシュ4及びドアパネル2に固定されている。つまり、サッシュ4の後縁部4bやドアパネル2の周縁フランジ部のように雨水等が周縁フランジ部に沿い下方に排水され易い範囲では、クリップ14を用いてコスト削減及び取り付け作業性の向上を図っている。
【0014】
ところで、サッシュ4は上縁部4aと後縁部4bとが略直角をなしていることから、当該サッシュコーナ部分におけるウェザストリップ10の取り付け性能、取り付け作業性の向上等の種々の理由より、上縁部4aと後縁部4bとが交わるぎりぎりの位置まではホルダ6を延設しないようにしている。
即ち、サッシュ4の上縁部4aのうち後側のサッシュコーナ部分では、ウェザストリップ10はホルダ6に挟持されず、何ら拘束されることなくサッシュ4の周縁フランジ部と当接している。
【0015】
このように、ウェザストリップ10が何ら拘束されることなくサッシュ4の周縁フランジ部と当接していると、上述したように、サッシュ4とウェザストリップ10との間を通って雨水が車室内に浸入し易くなる。
そこで、本発明に係るドアの排水構造では、このようなサッシュ4とウェザストリップ10間における雨水等の浸入を防ぐように図っている。
【0016】
図3を参照すると、図2の矢視A方向から見たウェザストリップ10の詳細図が示されており、図4、図5を参照すると、それぞれ図2のB−B線に沿う断面図、C−C線に沿う断面図が示されており、以下、これら図3乃至図5に基づき本発明に係るドアの排水構造の詳細について説明する。
図3に示すように、ウェザストリップ10のうちホルダ6の端部に対応する位置には、係止部12の車体側の端縁が部分的に隆起して突起20が形成されている。
【0017】
そして、当該突起20からは当該突起20と略同一の高さ(例えば、1.5mm程度)を維持しつつ堰22が連続して形成されている。
詳しくは、堰22は、サッシュ4の上縁部4aと後縁部4bとが交わる位置に対応する変曲部11まではサッシュ4の上縁部4aに沿って延び、当該変曲部11からは、サッシュ4の後縁部4bに沿って車体から離反しつつ下方に延びるよう形成されている。つまり、ウェザストリップ10が何ら拘束されることなくサッシュ4の周縁フランジ部と当接している後側のサッシュコーナ部分に対応して、ウェザストリップ10と一体に堰22が形成されている。そして、堰22は、後縁部4bに沿い延びるリップ16に連続しており、これより、ウェザストリップ10にはリップ16に沿い溝24が形成されている。
【0018】
このように、ホルダ6の端部に対応する位置に突起20が形成されていると、図4に示すように、当該ホルダ6の端部の車体側の部分においてはウェザストリップ10の係止部12とホルダ6との密着度合いが特に強化されることになる。これにより、当該ホルダ6の端部に雨水等が浸入したとしても、当該ホルダ6の端部において雨水等が車室内に浸入することが良好に防止される。
【0019】
また、突起20と連続するように堰22が形成されていると、ホルダ6の存在しない変曲部11周辺において、サッシュ4とウェザストリップ10との間を通って雨水が車室内に浸入することが防止される。
さらに、堰22はサッシュ4の後縁部4bに沿って車体から離反しつつ下方に延びるよう形成されているので、突起20及び上縁部4aに沿う堰22によって堰き止められた雨水等の水分が堰22に沿ってサッシュ4の後縁部4bに導かれる。そして、サッシュ4の後縁部4bに導かれた水分は、図5に示すように溝24を通って外部に排水される。
【0020】
即ち、後側のサッシュコーナ部分では、雨水等は、図2に矢線で示すように、突起20及び堰22によって車室内への浸入が防止されるとともに、堰22を伝ってサッシュ4の後縁部4b側に導かれ、溝24を通って良好に外部に排水される。
このように、本発明に係るドアの排水構造によれば、突起20及び堰22をウェザストリップ10に一体に形成するという簡単な構成でありながら、後側のサッシュコーナ部分におけるドア1と車体との間の水密性能の向上を図ることができる。
【0021】
以上で本発明に係るドアの排水構造の実施形態の説明を終えるが、実施形態は上記に限られるものではない。
例えば、上記実施形態では、サッシュタイプのドアを例に説明したが、これに限られるものではなく、本発明はサッシュ部分がドアパネルと一体成形されたドアにおいても同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る車両用ドアの概略構成図である。
【図2】本発明に係るドアの排水構造が適用される後側のサッシュコーナ部分Xの拡大図である。
【図3】図2の矢視A方向から見たウェザストリップの詳細図である。
【図4】図2のB−B線に沿う断面図である。
【図5】図2のC−C線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 ドア
4 サッシュ
4a 上縁部
4b 後縁部
6 ホルダ
10 ウェザストリップ
12 係止部
20 突起
22 堰
24 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアの周縁に配設され、ドアと車体との間を水密状態に密閉するウェザストリップと、
ドアサッシュの上縁に沿い設けられ、該ドアサッシュの上縁に沿うよう形成された前記ウェザストリップの係止部を挟持する断面C字状のホルダと、
前記ホルダの端部に対応する前記ウェザストリップの係止部の前記車体側の部分に形成され、前記ホルダの端部での前記ホルダと前記ウェザストリップの係止部との密着度合いを高める突起と、
前記ホルダに挟持されない前記ドアサッシュの上縁から前縁または後縁にかけての前記ウェザストリップの前記ドアサッシュとの当接面に前記突起と連続し且つ前記ドアサッシュの前縁または後縁に沿い前記車体から離反しつつ下方に延びるよう形成され、前記ホルダの端部にまで浸入した水分を前記ドアサッシュの前縁側または後縁側に導く堰と、
を備えたことを特徴とするドアの排水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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