説明

ドアユニット

【課題】汚圧力変動が発生してしまうことを抑制することができるバイオハザード対策室や再生医療設備などの部屋において出入口を形成する壁パネル間に設けられたエアタイト又はセミエアタイトなドアユニットを提供する。
【解決手段】ドア閉時におけるドア端面16aとドア枠18との隙間の幅dを壁パネル12bの厚みD以上になるようする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオクリーンルーム、再生医療設備、動物実験飼育設備などの部屋の室圧制御を行っているエアタイト又はセミエアタイトなドアユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
バイオクリーンルーム、再生医療設備、動物実験飼育設備などでは、隣接する部屋間に圧力差をつけ、隣接する部屋からの微生物の進入を防止したり、部屋内の病原体が隣接する部屋に流出しないようにしている。
【0003】
そこで、特許文献1では、部屋内の圧力を設定圧力に維持するために、圧力センサ、室圧コントローラ、ダンパを備えた部屋のドアに開閉を検知するセンサを設けることが開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、細胞調製室内の空気を物理的に封じ込めるために、細胞調製室のエアーロック前室とエアーロック後室を備えて、それぞれの室内に圧力差をつけることが開示されている。
【0005】
これらの部屋のドアには、ドアの隙間からの空気の漏洩が少ないエアタイトドアやセミエアタイトドアと呼ばれるものが利用される。
【0006】
図5は、バイオクリーンルーム、再生医療設備、動物実験飼育設備などの室圧制御を行っているエアタイト又はセミエアタイトな部屋1を示したものである。部屋1のドア2は、壁パネル4の側縁に取り付けたヒンジ3を介して回動することで開閉する。そして、ドア枠5が、ヒンジが取り付けられていない側の壁パネル4に設けられている。
【0007】
ドア2の開閉に伴い、部屋1内はドア2により空気の押し込み6と、ドア2と壁パネル4との隙間からの空気の流出7が発生する。ここで、ドア2による空気の押し込み量と、ドア2と壁パネル4との隙間からの空気の流出量とが釣り合えば、部屋の圧力は一定である。しかしながら、ドア2の開度が小さい領域では、ドア2と壁パネル4との隙間を空気が流出する際の流動抵抗が大きく、ドア2による押し込み量よりも隙間からの流出量は小さくなり、部屋1の圧力は上昇する。ここで、図4は、ドア2を押して開ける場合を示しているが、引いて開ける場合では逆に圧力が低下する。
【0008】
図6は、ドアの開度とドアの隙間を通過する空気7の抵抗係数との関係を示したものである。尚、ドアの開度は、ドアの回転角(deg)で示している。図6のグラフは、抵抗係数の変化に注目して、ドアの開度によって3つの領域A,B,Cに分けることができる。領域Aはドアの開度が0〜0.5°の範囲で、ドア2がドア枠5に接触している状況から離れるまでの間である。抵抗係数はドア枠5とドアとの隙間によって決まる。領域Bはドアの開度が0.5〜3°の範囲で、ドア枠5内でドア端面2aが動いている場合である。ドア枠5とドア端面2aの隙間で抵抗係数が決まる領域であり、この領域での抵抗係数は概ね一定に保たれている。領域Cはドアの開度が3°以上の範囲で、ドア端面2aがドア枠5外にあり、ドアの開度に応じてドアの開口面積が広がる領域である。この領域では、ドアの開口面積が広いため、ドアの抵抗係数は非常に小さく、ドアを動かしても部屋の圧力は殆ど変動しない。
【特許文献1】特開昭63−247542号公報
【特許文献2】特開2006−223207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、図5に示したドアをエアタイトドアやセミエアタイトドアとして用いると、ドア開閉時には上述の通りドアの流動抵抗があるため、瞬間的に大きな圧力変動が発生してしまうという問題があった。この圧力変動は、部屋の大きさやドアの開閉速度にも依存するが、小さい部屋では50Pa以上の圧力変動となる。このような圧力変動は、再生医療設備、動物実験飼育設備などの重圧制御を行っている部屋のコンタミネーションの発生を増大するものであり、低減が求められている。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、圧力変動が発生してしまうことを抑制することができるバイオハザード対策室や再生医療設備などのエアタイト又はセミエアタイトなドアユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、前記目的を達成するために、壁パネル間に設けられたドアユニットであって、第1壁パネルの側縁に取り付けたヒンジを介して回動することで出入口を開閉するドアと、前記ヒンジが取り付けられていない第2壁パネルの側縁に設けられ、前記ドアの閉時に該ドアが押し当る部位があるドア枠と、から成り、前記ドア閉時における前記ドア端面と前記第2壁パネルの側縁との隙間の幅が、該第2壁パネルの厚み以上に形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項1によれば、ドア端面と第2壁パネルの側縁との隙間の幅が、壁パネルの厚みよりも大きく形成されていることで、圧力変動が発生してしまうことを抑制することができる。尚、ここで言う「ドア端面と第2壁パネルの側縁との隙間の幅」とは、ドア枠が第2壁パネルの側縁に設けている場合には、ドア端面とドア枠の第2壁パネル側縁部分との隙間の幅を指す。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記押し当る部位には、前記ドア閉時における前記ドアと該ドア枠との密閉性を確保するためのパッキンが設けられていることを特徴とする。
【0014】
ドア枠にパッキンが設けられていることで、部屋の密閉性を確保することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、圧力変動が発生してしまうことを防止することができるバイオハザード対策室や再生医療設備などのエアタイト又はセミエアタイトなドアユニットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面に従って本発明に係るエアタイト又はセミエアタイトなドアユニットの好ましい実施の形態について詳説する。
【0017】
図1は、本発明のドアユニット10の概要図である。本発明のドアユニット10は、バイオハザード対策室や再生医療設備などの部屋において出入口を形成する壁パネル12a、12b間に設けられている。
【0018】
ドアユニット10は、主に、ドア16とドア枠18とからなる。ドア16は、壁パネル12aの側縁に取り付けたヒンジ14を介して回動することで出入口を開閉する。ドア枠18は、壁パネル12bの側縁に設けられており、ドア16の閉時にドアが押し当る部位18aが形成されている。そして、本発明では、ドア閉時におけるドア端面16aと壁パネルの側縁との隙間の幅が、壁パネル12bの厚みDよりも大きくなるようにした。尚、「ドア端面と壁パネルの側縁との隙間の幅」とは、図1のようにドア枠18が壁パネル12bの側縁に設けられている場合には、ドア端面16aとドア枠18との隙間の幅dを指す。また、ドア枠18のドアが押し当る部位18aには、図1のように、ドア閉時においてドア16とドア枠18との密閉性を確保するためのパッキン20が設けられていることが好ましい。
【0019】
図2は、従来のドアユニットと本発明のドアユニットとを示した概要図である。図2(A)は従来のドアユニットを、図2(B)は本発明のドアユニットを示しており、それぞれの上段はドアが閉まっているとき、下段はドアの開度が3〜5°程度の開閉が行われているときを示している。
【0020】
図2(A)から分かるように、ドア2端面と壁パネル4の側縁との隙間の幅が狭い従来のドアユニットでは、出入口を通過できる空気が少ない。一方、図2(B)から分かるように、ドア16端面と壁パネル12bの側縁との隙間の幅が壁パネルの厚みよりも大きい本発明のドアユニットでは、出入口を通過できる空気が多い
図3は、図2に示したドアユニットのドアの開度とドアの隙間を通過する空気の抵抗係数との関係を示したグラフである。
【0021】
従来のドアユニットでは、ドアの開度が概ね0.5〜3°の範囲で、抵抗係数は比較的高い値で一定に保たれてしまう。一方、ドア端面と壁パネルの側縁との隙間の幅が壁パネルの厚みよりも大きい本発明のドアユニットでは、ドアの開度が0.5〜3°の範囲で抵抗係数は低下し、従来よりも低い値となっている。従って、本発明のドアユニットでは、圧力の急激な変化が抑制されていることが分かる。
【0022】
図4は、図5の部屋に従来のドアユニットと本発明のドアユニットとを設けてドアの開閉を行った際の圧力変動を示すグラフである。図4(A)は従来のドアユニットを、図4(B)は本発明のドアユニットを示しており、ドアを8秒の時点で開き、19秒の時点で閉じた。また、ドアは、5秒の間でドアの回転角を0°から30°まで開き、1秒置いて、5秒の間でドアの回転角を30°から0°まで閉めた。
【0023】
図4から分かるように、本発明のドアユニットは、従来のドアユニットと比べて最大圧力が低下している。
【0024】
以上より、従来のドアユニットではドアの開閉の際に室圧の急激な変動が発生し、コンタミネーションの危険性があるが、本発明のドアユニットであれば、圧力変動が発生してしまうことを抑制することができるので、コンタミネーションの危険性が少ない。
【0025】
従って、壁パネルの側縁に取り付けたヒンジを介して回動することで出入口を開閉するドアと、ヒンジが取り付けられていない壁パネルの側縁に設けられたドアの閉時に該ドアが押し当る部位があるドア枠と、から成るドアユニットにおいて、ドア閉時におけるドア端面と壁パネルの側縁との隙間の幅が壁パネルの厚みよりも大きく形成されていることで、部屋内の圧力変動が発生してしまうことを抑制することができることが分かる。
【0026】
尚、本発明において、ドア端面16aとドア枠18との隙間の幅dと、壁パネル12bの厚みDと、で表される(d/D)が、d/D>1を満たせば良いが、好ましくは2≧(d/D)>1であり、より好ましくは1.5≧(d/D)≧1.1である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のドアユニットを示す概要図
【図2】従来のドアユニットと本発明のドアユニットとを示す概要図
【図3】ドアの開度とドアの隙間を通過する空気の抵抗係数との関係を示した図
【図4】ドアの開閉を行った際の圧力変動を示す図
【図5】エアタイト又はセミエアタイトな部屋を示す概要図
【図6】従来のドアユニットにおいて、ドアの開度とドアの隙間を通過する空気の抵抗係数との関係を示した図
【符号の説明】
【0028】
1…部屋、2…ドア、2a…ドア端面、3…ヒンジ、4…壁パネル、5…ドア枠、6…空気の押し込み、7…空気(の流出)、10…ドアユニット、12a…(第1)壁パネル、12b…(第2)壁パネル、14…ヒンジ、16…ドア、16a…ドア端面、18…ドア枠、18a…押し当る部位、20…パッキン、22…空気、D…(第2)壁パネルの厚み、d…ドア端面とドア枠との隙間の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁パネル間に設けられたドアユニットであって、
第1壁パネルの側縁に取り付けたヒンジを介して回動することで出入口を開閉するドアと、
前記ヒンジが取り付けられていない第2壁パネルの側縁に設けられ、前記ドアの閉時に該ドアが押し当る部位があるドア枠と、から成り、
前記ドア閉時における前記ドア端面と前記第2壁パネルの側縁との隙間の幅が、該第2壁パネルの厚み以上に形成されていることを特徴とするドアユニット。
【請求項2】
前記押し当る部位には、前記ドア閉時における前記ドアと該ドア枠との密閉性を確保するためのパッキンが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のドアユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−70981(P2010−70981A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239949(P2008−239949)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】