説明

ドアラッチ装置

【課題】小型化が可能な保持機構付きのドアラッチ装置を提供する。また、保持機構を具備させないドアラッチ装置との部品の共用性を高める。
【解決手段】ラッチ位置からハーフラッチ位置を経てオープン位置へ回転可能なフォーク20、フォーク20に係合した係合位置から非係合位置へ回転可能なクロー25、フォーク20およびクロー25を支持するベース部材12を有するラッチ機構と、非作動位置からクロー25を非係合位置に回転させた作動位置へ回転可能なオープンレバー39、オープンレバー39を回転駆動する電動モータ44、オープンレバー39および電動モータ44を収納するケース29を有するアクチュエータと、オープンレバー39を介してクロー25を非係合位置に保持し、フォーク20の回転に連動して解除する解放状態保持機構とを備え、解放状態保持機構をアクチュエータ内に収納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のトランクドアやハッチバックドアなどを閉塞状態で係止するドアラッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドアラッチ装置は、車体側に設けたストライカと噛合して保持するラッチ位置と、ストライカを保持しないオープン位置との間を回転可能なフォークを備えている。このフォークは、ラッチ位置に回転した状態でクローが係合することにより、フォークがラッチ位置に維持される。一方、ラッチ状態で解放操作されると、クローが回転することによりフォークとの係合が解除され、フォークがオープン位置へ回転する。
【0003】
特許文献1には、使用者がドアに設けた開スイッチを操作すると、制御部がモータの駆動力によってクローを非係合位置へ移動させ、フォークとクローとの係合を解除することで、ドアを開放可能とする電動式のドアラッチ装置が記載されている。
【0004】
しかし、特許文献1のドアラッチ装置は、開スイッチを操作すると、使用者が所定位置までドアを開放して、フォークがストライカを解放可能なオープン位置まで回転されるまでモータがOFFにならない構成である。よって、使用者が開スイッチを操作した後、ドアをすぐに開放しないと、モータが過負荷状態で通電され続けるため、モータが焼損する恐れがある。
【0005】
この問題を解消するには、モータヘの通電時間をタイマー制御する方法が考えられる。しかし、モータヘの通電時間は、長く設定した場合には、やはり焼損の恐れがあり、短く設定した場合には、ドアの開放操作が遅れるとタイマーによるモータヘの通電が遮断され、クローがフォークに係合可能な位置に戻り、再びドアがロックまたはハーフロックされてしまう。そして、再ロックされた状態でドアを開放する場合には、再び開スイッチを操作する必要があるため、使用者の操作性が悪いものとなる。
【0006】
これらの問題を解消するために、特許文献2では、オープンレバーを操作すると、フォークがオープン位置に移動するまでオープンレバーを介してクローを非係合位置に機械的に保持する保持機構を設けたドアラッチ装置を提供している。このドアラッチ装置では、オープンレバーを電動アクチュエータで作動させる場合、オープンレバーによってクローを非係合位置に移動させるまでの短い時間だけ、電動アクチュエータに通電(駆動)させればよい。そして、クローは、ドアが開放されるまで非係合位置に確実に保持されるため、ドアの開放が遅れた場合でも、再び開スイッチを操作する必要がないので、使用者の操作性を向上することができる。
【0007】
しかしながら、特許文献2のドアラッチ装置は、保持機構の一部(連動レバー)をラッチ機構内(フォークおよびクローを配設したベース部材)に配設しているため、ドアの端面の開口部から外部に露出するラッチ機構が大型化してしまい、外観が悪いものとなっていた。また、ラッチ機構内に保持機構の一部を配設する構成では、保持機構を搭載するドアラッチ装置と、保持機構を搭載しないドアラッチ装置を製造する場合に、ラッチ機構を共有化できないため、全体として製造コストが高いものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−091852号公報
【特許文献2】特開2010−112122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ラッチ機構の小型化が可能な保持機構付きのドアラッチ装置を提供することを第1の課題とする。また、本発明は、保持機構を具備させないドアラッチ装置との部品の共用性を高めることを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明のドアラッチ装置は、ストライカに対してドアが全閉状態で噛合するラッチ位置から前記ストライカに対して前記ドアの半閉状態で噛合するハーフラッチ位置を経て前記ストライカに対する噛合を解除するオープン位置へ回転可能に付勢されたフォーク、前記ラッチ位置または前記ハーフラッチ位置に回転した前記フォークに係合して保持可能な係合位置から係合保持不可能な非係合位置へ回転可能なクロー、前記フォークおよび前記クローを回転可能に支持するベース部材、を有するラッチ機構と、前記係合位置に回転した前記クローを前記非係合位置へ向けて回転可能な非作動位置から前記クローを前記非係合位置に回転させた作動位置へ回転可能なオープンレバー、このオープンレバーを前記非作動位置から前記作動位置へ回転駆動する電動モータ、前記オープンレバーおよび前記電動モータを収納するケース、を有するアクチュエータと、前記作動位置に移動された前記オープンレバーに係合して、このオープンレバーを介して前記クローを前記非係合位置に保持するとともに、前記ドアの開放によって前記フォークが前記ラッチ位置から前記ハーフラッチ位置を越えて回転する動作に連動して前記オープンレバーとの係合を解除する解放状態保持機構と、を備え、前記解放状態保持機構を前記アクチュエータ内に収納した構成としている。
【0011】
本発明のドアラッチ装置は、アクチュエータの電動モータを駆動してオープンレバーを非作動位置から作動位置へ移動させると、ラッチ機構のクローが係合位置から非係合位置へ回転される。これにより、ラッチ機構は、フォークがオープン位置へ回転可能となり、アクチュエータは、オープンレバーが解放状態保持機構によって作動位置に保持される。その結果、ラッチ機構のクローをフォークに再ロックさせることなく、ドアを開放可能な状態に維持できる。そして、使用者がドアを開放操作することにより、フォークがハーフラッチ位置を越えてオープン位置側へ回転すると、解放状態保持機構によるアクチュエータのオープンレバーの保持が解除される。これにより、オープンレバーが作動位置から非作動位置に移動し、ラッチ機構のクローに対する規制が解除され、クローが係合位置に回転する。その結果、ドアの閉塞によりラッチ機構のフォークがラッチ位置へ回転すると、クローで係止保持することができる。
【0012】
このように、解放状態保持機構によってオープンレバーを介してクローを非係合位置に機械的に保持するため、電動モータは、オープンレバーを非作動位置から作動位置に移動させるまでの短い時間だけ通電すればよい。よって、電動モータの焼損の問題を確実に防止できる。また、クローは、ドアが開放されるまで非係合位置に確実に保持されるため、ドアの開放が遅れた場合でも、再びドアの開放操作を行う必要がないので、使用者の操作性を向上することができる。そして、本発明のドアラッチ装置では、解放状態保持機構をアクチュエータ内に収納するため、ラッチ機構を小型化することができる。また、ラッチ機構には解放状態保持機構を配設しないため、このラッチ機構だけは、解放状態保持機構を具備させないドアラッチ装置にも共用することが可能になる。
【0013】
このドアラッチ装置では、前記解放状態保持機構は、前記作動位置に回転した前記オープンレバーに係合可能な保持位置から係合不可能な非保持位置へ移動可能な保持レバーと、前記フォークの回転に連動して回転し、前記フォークが前記ラッチ位置から前記ハーフラッチ位置を越えて回転すると、前記保持レバーを前記保持位置から非保持位置へ移動させて前記オープンレバーと前記保持レバーとの係合を解除する連動レバーと、を有し、前記保持レバーと前記連動レバーは、それぞれの回転軸が平行に位置するように前記アクチュエータのケース内に軸支されていることが好ましい。このようにすれば、ドア内に配置されるアクチュエータを薄く構成することが可能となり、ドア内の他の部品との干渉を回避でき、ドアの薄型化が可能となる。
【0014】
この場合、前記保持レバーを前記連動レバーに対して前記ケースの開口側に配置することが好ましい。このようにすれば、解放状態保持機構を具備させない構成のアクチュエータに対して、保持レバーを後から挿入することで、解放状態保持機構を具備させたアクチュエータを簡単に組み立てることができる。即ち、解放状態保持機構の有無が異なるアクチュエータを組み立てる場合に、両方の組み立て手順を途中まで同じにできるため、組立作業性を向上できる。
【0015】
また、前記連動レバーに、前記フォークの回転位置を検出するドア開閉検出スイッチを配設することが好ましい。このようにすれば、2つの機能を1つの部品に集約できるため、部品点数を削減できるとともに、アクチュエータの小型化が可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のドアラッチ装置では、解放状態保持機構によってオープンレバーを介してクローを非係合位置に機械的に保持するため、電動モータを焼損させることはない。また、ドアの開放操作が遅れた場合でも、再びドアの開放操作を行う必要がないので、使用者の操作性を向上することができる。そして、解放状態保持機構をアクチュエータ内に収納するため、ラッチ機構を小型化できるとともに、ラッチ機構だけは解放状態保持機構の有無が違うドアラッチ装置でも共用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る実施形態のドアラッチ装置を車両のハッチバックドアに組み付けた状態を示す概略図である。
【図2】ドアラッチ装置の斜視図である。
【図3】ドアラッチ装置のラッチ機構ユニットとアクチュエータユニットを分解した状態を示す斜視図である。
【図4】図2のラッチ機構ユニットを切断した状態を示す断面図である。
【図5】ドアを閉塞した状態でのドアラッチ装置の状態を示す正面図である。
【図6】半ドア状態でのドアラッチ装置の状態を示す正面図である。
【図7】ドアを開放した状態でのドアラッチ装置の状態を示す正面図である。
【図8】開作動させた状態でのドアラッチ装置の状態を示す正面図である。
【図9】ドアを開放操作した状態でのドアラッチ装置の状態を示す正面図である。
【図10A】ドアを開放した状態でのドア開閉検出スイッチの状態を示す正面図である。
【図10B】ドアを閉塞した状態でのドア開閉検出スイッチの状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0019】
図1および図2は、本発明の実施形態に係るドアラッチ装置10を示す。このドアラッチ装置10は、トランクドアや図1のハッチバックドア1などの開閉体および車体2のうち一方に装着され、他方に配設されたストライカ3に噛合することにより、開閉体を閉塞状態に維持するものである。本実施形態では、ドア1にドアラッチ装置10を配設し、車体2にストライカ3を配設した構成としている。
【0020】
本発明のドアラッチ装置10は、大略、ストライカ3を噛合するラッチ機構と、このラッチ機構を解放駆動するアクチュエータと、ラッチ機構を解放状態に維持する解放状態保持機構(以下「保持機構」と略する。)を備えている。そして、本実施形態では、ラッチ機構を第1ユニット11に組み付け、アクチュエータおよび保持機構を第2ユニット28に組み付け、これらを図2および図3に示すように一体的に組み付けることにより側面視略L字形状に構成している。
【0021】
第1ユニット11内に配設するラッチ機構は、ストライカ3に噛合するフォーク20と、このフォーク20に係合するクロー25とを備え、これらを第1ユニット11の外装体を構成するベース部材12の内部に配設したものである。
【0022】
ベース部材12は、ドア1の回転軸を中心として径方向外側に位置するベースプレート13と、このベースプレート13の径方向内側に配設するカバープレート14とを備えている。これらには、ドア1に固定するためのブラケット15が設けられている。また、図4に示すように、ベースプレート13とカバープレート14の間には、フォーク20とクロー25の回転を規制するためのフェンスブロック16が配設されている。ベースプレート13とフェンスブロック16には、ストライカ3を挿通する挿通溝17が設けられている。このベース部材12内には、挿通溝17の両側に位置するように、フォーク20とクロー25を回転可能に支持する支持軸18A,18Bが配設されている。これら支持軸18A,18Bは、フォーク20とクロー25に挿通した状態で両端をベースプレート13とカバープレート14に加締めて固定される。これにより、ベースプレート13とカバープレート14とを一体的に固定している。また、ベース部材12は、挿通溝17の開口端と逆側が第2ユニット28との連結用開口部19とされている。
【0023】
フォーク20は、ストライカ3を係脱可能に挿通する係合溝21を備えている。このフォーク20は、ラッチ位置からハーフラッチ位置を経てオープン位置にかけて回転するように、図4中、挿通溝17の左側に位置する支持軸18Aによって支持されている。ラッチ位置は、ドア1の全閉状態でストライカ3が係合溝21に係合した回転位置であり、図5に示すように、挿通溝17に対して係合溝21が略直交方向に延びた状態をなす。ハーフラッチ位置は、ドア1の半閉(半ドア)状態でストライカ3が係合溝21に係合した回転位置であり、図6に示すように、挿通溝17に対して係合溝21が斜めに交差するように傾斜して延びた状態をなす。オープン位置は、ドア1の開放状態でストライカ3が係合溝21に係脱可能な回転位置であり、図7に示すように、係合溝21の先端開口部が挿通溝17に一致するように傾斜して延びた状態をなす。フォーク20は、図示しない付勢スプリングによって、ラッチ位置からオープン位置に向けて時計回りに付勢されている。また、フォーク20には、係合溝21に対して付勢スプリングによる付勢(回転)方向後側に位置するようにラッチ係合段部22が設けられている。さらに、ラッチ係合段部22の更に回転方向後側に位置するようにハーフラッチ係合段部23が設けられている。そして、ハーフラッチ係合段部23の更に回転方向後側に位置するように連動用突部24が設けられている。この連動用突部24は、フォーク20がラッチ位置からハーフラッチ位置の回転範囲に位置すると、後述する連動レバー54と干渉できるように、連結用開口部19内に位置するものである。
【0024】
クロー25は、図4に示すように、フォーク20のラッチ係合段部22およびハーフラッチ係合段部23に係合可能な係合突部26を備えている。このクロー25は、係合突部26がフォーク20に係合保持可能な係合位置から、係合保持不可能な非係合位置にかけて回転するように、図4中、挿通溝17の右側に位置する支持軸18Bによって支持されている。そして、このクロー25は、図示しない付勢スプリングによって、非係合位置(図8参照)から係合位置(図5参照)に向けて反時計回りに付勢されている。また、クロー25には、係合突部26に対して付勢スプリングによる付勢(回転)方向後側に位置するように作動受部27が突設されている。この作動受部27は、後述するオープンレバー39と干渉できるように、連結用開口部19に位置するように延びるものである。
【0025】
第2ユニット28内に配設するアクチュエータは、クロー25によるフォーク20の係合を解除するためのオープンレバー39と、このオープンレバー39を回転駆動するための電動モータ44および伝動部材を備え、これらを第2ユニット28の外装体を構成するケース29の内部に配設したものである。また、第2ユニット28内に配設する保持機構は、オープンレバー39を介してクロー25を非係合位置に保持する保持レバー49と、保持レバー49による保持を解除する連動レバー54とを備え、これらをケース29の内部に配設したものである。
【0026】
図1から図3に示すように、ケース29は、車内側に位置するロアケース30と、車外側に位置するアッパーケース31とを備えている。これらケース30,31は、互いに対向する端部が開口され、その開口端を嵌合することにより閉塞されている。これらの内部には、図5に示すように、クロー25の上側に位置するようにオープンレバー39が回転可能に配設され、フォーク20の上側に位置するように連動レバー54が回転可能に配設される。また、オープンレバー39の上側に位置するように電動モータ44と伝動部材とが配設される。そして、オープンレバー39と連動レバー54の間に位置するように、保持レバー49が配設される。
【0027】
そのうち、ロアケース30は、図10Aに示すように、オープンレバー39を回転可能に配設するため軸受部が貫通孔32により構成されている。同様に、連動レバー54を回転可能に配設するため軸受部が貫通孔33により構成されている。これら貫通孔32,33の間には、保持レバー49を回転可能に配設するための軸受穴34が設けられている。また、ロアケース30には、電動モータ44を駆動させるための電力供給、および、ドア1の開閉状態を出力するためのコネクタ部35が設けられている。そして、ロアケース30には、コネクタ部35からモータ配設部36にかけて延びるように、薄い金属板からなる電力供給用のモータ駆動配線37A,37Bがインサート成型により設けられている。また、コネクタ部35から貫通孔33の周囲にかけて延びるように、開閉検出用配線38A,38Bがインサート成型により設けられている。開閉検出用配線38A,38Bは、一方が常時通電状態で他方が常時非通電状態であり、後述する可動接点59による両者の短絡または絶縁により、ドア1の開閉状態を出力(検出)するものである。
【0028】
オープンレバー39は、図5に示すように、係合位置に回転したクロー25を非係合位置に向けて回転可能な非作動位置から、図8に示すように、クロー25を非係合位置に回転させた作動位置にかけて回転できるように、貫通孔32に装着支持されている。このオープンレバー39は、貫通孔32に位置する軸部40の上側に、ウォームホイール46に向けて延びる扇形状のギア部41を備えている。軸部40の下端には、貫通孔32を通してケース29内から外部に配置される作動部42が設けられている。この作動部42は、ギア部41に対して逆向きに延びるように設けられ、第1および第2ユニット11,28の組み付けにより、図4に示すように、連結用開口部19内において、クロー25の作動受部27の非係合位置へ向けた回転方向後側に位置する。また、軸部40には、ケース29内に位置する端部に、保持レバー49が係合する係合受部43が設けられている。
【0029】
電動モータ44は、図5に示すように、通電により一方向に回転可能な周知のものである。この電動モータ44には、オープンレバー39を非作動位置から作動位置に向けて回転駆動させる伝動部材が連結されている。本実施形態の伝動部材は、電動モータ44の出力軸に配設したウォームギア45と、ウォームギア45の上部に配設したウォームホイール46とで構成される。ウォームホイール46には、外周部にウォームギア45に噛み合う大径ギア部47が設けられている。また、ウォームホイール46には、軸芯に沿って上側に突出し、オープンレバー39のギア部41に噛み合う小径ギア部48が設けられている。
【0030】
このアクチュエータは、電動モータ44、ウォームギア45およびウォームホイール46をロアケース30に配設した後に、オープンレバー39を配設することにより、オープンレバー39がロアケース30の開口側に位置するように配置される。また、ウォームホイール46は、図示しないリターンスプリングにより、オープンレバー39が作動前の非作動位置に回転するように付勢されている。
【0031】
保持レバー49は、作動位置に回転したオープンレバー39に係合することにより、オープンレバー39を介してクロー25を非係合位置に保持するものである。この保持レバー49は、貫通孔32,33の間の軸受穴34に配設されることにより、作動位置に回転したオープンレバー39に係合可能な保持位置(図8参照)から、係合不可能な非保持位置(図7参照)にかけて回転可能に構成される。具体的には、保持レバー49には、軸受穴34に支持される回転軸50からオープンレバー39の係合受部43に係合可能な係合部51が突設されている。そして、この保持レバー49は、付勢スプリング52によって、係合部51がオープンレバー39の軸部40に近づく方向である反時計回りに付勢されている。また、保持レバー49には、連動レバー54の回転に連動して回転し、係合受部43と係合部51との係合を解除するための連動アーム部53が設けられている。
【0032】
連動レバー54は、ドア1の開放操作に連動するフォーク20の回転に連動して回転し、フォーク20がラッチ位置からハーフラッチ位置を越えて回転すると、保持レバー49とオープンレバー39との係合を解除するものである。この連動レバー54は、貫通孔33に回転可能に配設され、保持レバー49の回転軸50に対して平行に位置する回転軸55を備えている。この回転軸55の下端には、貫通孔33を通してケース29内から外部に配置される検出アーム部56が設けられている。この検出アーム部56は、第1および第2ユニット11,28の組み付けにより、図4に示すように、連結用開口部19内において、フォーク20の連動用突部24のオープン位置に向けた回転方向後側に位置する。また、回転軸55には、ケース29内に位置する端部に、保持レバー49の連動アーム部53に当接する連動ピン57が突設されている。そして、この連動レバー54は、スプリング58によって検出アーム部56が連動用突部24に近づく方向である反時計回りに付勢されている。このスプリング58による連動レバー54の付勢力F1は、付勢スプリング52による保持レバー49の付勢力F2より大きく(F1>F2)している。
【0033】
この保持機構は、連動レバー54をロアケース30に配設した後に、保持レバー49を配設することにより、保持レバー49がロアケース30の開口側に位置するように配設される。ここで、保持機構は、フォーク20がラッチ位置からオープン位置へ向けて回転すると、連動レバー54がスプリング58の付勢力によって反時計回りに回転する。連動レバー54が反時計回りに回転すると、連動ピン57が連動アーム部53を押圧することにより、保持レバー49が時計回りに回転する。これにより、保持レバー49が付勢スプリング52の付勢力に抗して保持位置から非保持位置に向けて回転する。そして、フォーク20がハーフラッチ位置を越えてオープン位置側へ回転すると、保持レバー49の係合部51とオープンレバー39の係合受部43との係合が完全に解除されるように、係合部51および係合受部43の係合代を設定している。
【0034】
また、図5に示すように、連動レバー54には、ロアケース30の開閉検出用配線38A,38Bと対向する下面に、フォーク20の回転位置を検出するための可動接点59が配設されている。これら開閉検出用配線38A,38Bおよび可動接点59は、フォーク20の回転位置を検出することにより、ドア1の開閉状態を検出するドア開閉検出スイッチを構成する。この可動接点59は、開閉検出用配線38A,38Bに摺接する接点部を備えている。そして、図10Aに示すように、各接点部が開閉検出用配線38A,38B上に位置し、開閉検出用配線38A,38Bが短絡することにより、ドア1の開放状態を出力する。また、図10Bに示すように、一方の接点部が開閉検出用配線38Bから離間し、開閉検出用配線38A,38Bが絶縁されることにより、ドア1の閉塞状態を出力する。即ち、コネクタ部35に接続された車両のメインマイコン(ECU)は、開閉検出用配線38Bからの通電の有無により、ドア1の開放状態および閉塞状態を検出(判断)する。
【0035】
次に、本発明のドアラッチ装置10の動作について説明する。
【0036】
(ドア閉塞状態)
図5に示すように、ドア1を完全に閉塞した状態では、ストライカ3が挿通溝17内に侵入し、ドア1の回転によりフォーク20がラッチ位置に回転している。そして、フォーク20にクロー25が係合することにより、フォーク20をラッチ位置に維持している。また、この状態では、連動用突部24によって検出アーム部56が押圧されることにより、連動レバー54がスプリング58の付勢力に抗してドア閉塞検出位置に回転している。さらに、オープンレバー39は、リターンスプリングによるウォームホイール46の回転により、非作動位置に回転している。その結果、保持レバー49は、係合部51がオープンレバー39の軸部40の外周部に当接し、非保持位置に回転した状態をなす。
【0037】
(ドア開放作動)
使用者が車内スイッチ等の操作によってドア1の開放作動を行うと、ECUがアクチュエータの電動モータ44を駆動する。これにより、ドアラッチ装置10は、図5に示す状態から図8に示す状態に変移する。
【0038】
具体的には、電動モータ44が駆動されると、ウォームギア45、ウォームホイール46を介してオープンレバー39が非作動位置から作動位置へ回転する。その結果、作動部42がクロー25の作動受部27を押圧することにより、クロー25が係合位置から非係合位置に回転する。また、オープンレバー39の回転により、係合受部43に保持レバー49の係合部51が係合可能となり、付勢スプリング52の付勢力で保持レバー49が非保持位置から保持位置に回転する。なお、電動モータ44は、オープンレバー39が非作動位置から作動位置に移動する予め設定した時間だけ通電される。
【0039】
このドア開放作動状態では、フォーク20はオープン位置に向けて付勢されているが、ドア1の荷重によりラッチ位置から殆ど回転することはない。また、オープンレバー39は、電動モータ44による作動位置へ向けた回転駆動力が無くなっているが、保持レバー49の係合により作動位置に保持されている。その結果、ウォームホイール46もリターンスプリングの付勢力に抗して回転した状態に維持される。この状態では、ラッチ機構のクロー25をフォーク20に再ロックさせることなく、ドア1を開放可能な状態に維持できる。また、ECUは、開閉検出用配線38Bが絶縁状態となっているため、ドア1は閉塞状態であると判断する。
【0040】
(ドア開放操作)
使用者がドア1の開放作動を行った後に、実際にドア1の開放操作を行うと、図8に示す状態から図9に示す状態を経て図7に示す状態に変移する。なお、図9は、フォーク20がラッチ位置からハーフラッチ位置を越えてオープン位置側に少し回転した状態である。
【0041】
具体的には、ドア1が開放操作されると、その回転に連動してストライカ3が挿通溝17の開口端側に移動する。その結果、フォーク20がラッチ位置からオープン位置に向けて回転する。そうすると、フォーク20の回転に連動して連動レバー54が反時計回りに回転し、連動ピン57が連動アーム部53を押圧する。その結果、保持レバー49が保持位置から非保持位置に向けて回転することにより、保持レバー49の係合部51とオープンレバー39の係合受部43との係合代が少なくなる。そして、フォーク20が図9に示すハーフラッチ位置を越えてオープン位置側へ回転すると、係合部51と係合受部43との係合が解除されることにより、保持レバー49によるオープンレバー39の保持が解除される。
【0042】
そうすると、図7に示すように、オープンレバー39は、リターンスプリングによって付勢されたウォームホイール46の回転により、作動位置から非作動位置に回転される。その結果、クロー25は規制が解除されるため、付勢スプリングの付勢力によって非係合位置から係合位置に回転する。なお、この状態では、フォーク20がハーフラッチ位置を越えてオープン位置側に回転しているため、クロー25がフォーク20に係合することはない。この状態では、連動レバー54の回転により開閉検出用配線38Bが短絡状態となっているため、ECUはドア1が開放状態であると判断する。
【0043】
(ドア閉塞操作)
使用者が開放されたドア1の閉塞操作を行うと、図7に示す状態から図6に示す状態を経て図5に示す状態に変移する。
【0044】
具体的には、ドア1が閉塞操作されると、その回転に連動してストライカ3が挿通溝17内に進入し、ついでフォーク20の係合溝21内に進入する。そして、ドア1の押圧によってフォーク20がオープン位置からラッチ位置に向けて回転する。この際、フォーク20の連動用突部24にクロー25が干渉するが、クロー25が付勢スプリングの付勢力に抗して非係合位置の側に回転することにより、フォーク20の回転に影響を及ぼすことはない。そして、フォーク20がハーフラッチ位置まで回転すると、図6に示すように、ハーフラッチ係合段部23にクロー25の係合突部26が係合する。この状態では、フォーク20の連動用突部24は連動レバー54の検出アーム部56には干渉しない。よって、開閉検出用配線38Bは短絡状態を維持し、ECUはドア1が開放状態であると判断する。
【0045】
ハーフラッチ位置を越えてラッチ位置までフォーク20が回転すると、図5に示すように、ラッチ係合段部22にクロー25の係合突部26が係合する。また、フォーク20の連動用突部24が連動レバー54の検出アーム部56を押圧し、連動レバー54をドア閉塞検出位置に回転させる。その結果、開閉検出用配線38Bは絶縁状態になり、ECUはドア1が閉塞状態であると判断する。
【0046】
このように、本発明のドアラッチ装置10では、保持レバー49によってオープンレバー39を介してクロー25を非係合位置に機械的に保持するため、電動モータ44は、オープンレバー39を非作動位置から作動位置に移動させるまでの短い時間だけ通電される。よって、電動モータ44の焼損の問題を確実に防止できる。そして、クロー25は、ドア1が開放されるまで非係合位置に確実に保持されるため、ドア1の開放が遅れた場合でも、再びドア1の開放操作を行う必要がないので、使用者の操作性を向上することができる。
【0047】
また、本実施形態では、保持機構を構成する保持レバー49と連動レバー54とを、アクチュエータの外装体を構成する第2ユニット28のケース29内に収納するため、第1ユニット11はラッチ機構だけであるため、第1ユニット11を小型化できる。しかも、第1ユニット11だけは、保持機構を具備させないドアラッチ装置10にも共用することが可能になる。そのため、保持機構を搭載するドアラッチ装置10と、保持機構を搭載しないドアラッチ装置10を製造する場合に、部品の共有化によりコストダウンを図ることができる。
【0048】
さらに、保持機構の保持レバー49と連動レバー54は、互いの回転軸50,55が平行に位置するようにケース29内に配設するため、ドア1内に配置する第2ユニット28を薄く構成することが可能となる。よって、ドア1内の他の部品との干渉を回避でき、ドア1の薄型化が可能となる。しかも、連動レバー54に対して保持レバー49をロアケース30の開口側に配置するため、保持機構を具備させないアクチュエータに対して、保持レバー49を後から挿入配置することで、保持機構を具備させたアクチュエータを簡単に組み立てることができる。即ち、保持機構の有無が異なるアクチュエータを組み立てる場合に、両方の組み立て手順を途中まで同じにできるため、組立作業性を向上できる。また、連動レバー54に、ドア開閉検出スイッチを構成する可動接点59を配設しているため、部品点数を削減できるとともに、アクチュエータの小型化が可能となる。
【0049】
なお、本発明のドアラッチ装置10は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0050】
例えば、前記実施形態では、電動モータ44によってオープンレバー39を作動させる構成のみを説明したが、ドア1に配設したハンドル操作によってオープンレバー39を作動させる構成を付設することも可能である。また、保持機構は、保持レバー49と連動レバー54により構成したが、作動位置に移動されたオープンレバー39を確実に保持し、フォーク20がハーフラッチ位置を越えてオープン位置側へ回転する動作に連動してオープンレバー39の保持を解除できる構成であればよい。
【符号の説明】
【0051】
3…ストライカ
10…ドアラッチ装置
12…ベース部材
17…挿通溝
20…フォーク(ラッチ機構)
21…係合溝
25…クロー(ラッチ機構)
29…ケース
38A,38B…開閉検出用配線(ドア開閉検出スイッチ)
39…オープンレバー(アクチュエータ)
44…電動モータ(アクチュエータ)
49…保持レバー(解放状態保持機構)
50…回転軸
54…連動レバー(解放状態保持機構)
55…回転軸
59…可動接点(ドア開閉検出スイッチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストライカに対してドアが全閉状態で噛合するラッチ位置から前記ストライカに対して前記ドアの半閉状態で噛合するハーフラッチ位置を経て前記ストライカに対する噛合を解除するオープン位置へ回転可能に付勢されたフォーク、前記ラッチ位置または前記ハーフラッチ位置に回転した前記フォークに係合して保持可能な係合位置から係合保持不可能な非係合位置へ回転可能なクロー、前記フォークおよび前記クローを回転可能に支持するベース部材、を有するラッチ機構と、
前記係合位置に回転した前記クローを前記非係合位置へ向けて回転可能な非作動位置から前記クローを前記非係合位置に回転させた作動位置へ回転可能なオープンレバー、このオープンレバーを前記非作動位置から前記作動位置へ回転駆動する電動モータ、前記オープンレバーおよび前記電動モータを収納するケース、を有するアクチュエータと、
前記作動位置に移動された前記オープンレバーに係合して、このオープンレバーを介して前記クローを前記非係合位置に保持するとともに、前記ドアの開放によって前記フォークが前記ラッチ位置から前記ハーフラッチ位置を越えて回転する動作に連動して前記オープンレバーとの係合を解除する解放状態保持機構と、
を備え、前記解放状態保持機構を前記アクチュエータ内に収納したことを特徴とするドアラッチ装置。
【請求項2】
前記解放状態保持機構は、
前記作動位置に回転した前記オープンレバーに係合可能な保持位置から係合不可能な非保持位置へ移動可能な保持レバーと、
前記フォークの回転に連動して回転し、前記フォークが前記ラッチ位置から前記ハーフラッチ位置を越えて回転すると、前記保持レバーを前記保持位置から非保持位置へ移動させて前記オープンレバーと前記保持レバーとの係合を解除する連動レバーと、
を有し、前記保持レバーと前記連動レバーは、それぞれの回転軸が平行に位置するように前記アクチュエータのケース内に軸支されていることを特徴とする請求項1に記載のドアラッチ装置。
【請求項3】
前記保持レバーを前記連動レバーに対して前記ケースの開口側に配置したことを特徴とする請求項2に記載のドアラッチ装置。
【請求項4】
前記連動レバーに、前記フォークの回転位置を検出するドア開閉検出スイッチを配設したことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のドアラッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【公開番号】特開2013−108307(P2013−108307A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255268(P2011−255268)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)
【Fターム(参考)】