説明

ドア構造

【課題】車両の側面衝突時の乗員の側方における車室スペースの減少を抑制することを目的とする。
【解決手段】フロントサイドドア22の内部に、ドア前後方向に延在するインパクトビーム38と、一部をループ状に湾曲されたパイプ材であり、一端側をインパクトビーム38のドア後側に固定され、他端側を一端側のドア前側においてインパクトビーム38に固定され、両端側から中央側へかけてドア上側へ延びる補強部材44と、を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
サイドドアの内部に、ドア前後方向に延びる横インパクトビーム(インパクトバー)と、ドア上下方向に延びる縦インパクトビームとが配設されたドア構造が考案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このドア構造では、縦インパクトビームが、ドア上下方向に延びるのみであるので、車両の側面衝突時、サイドドアの変位が大きくなり、サイドドアの側方における車室スペースが大きく減少する可能性がある。
【特許文献1】特開平4−129829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、車両の側面衝突時のドアの側方における車室スペースの減少を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載のドア構造は、車両のドアにおいてドア前後方向に延びるインパクトビームと、前記インパクトビームと交差し、ドア上下方向に延びる一端側と他端側との中間が曲げられて一端側と他端側とが前記インパクトビームのドア上側において連結された補強部材と、を有することを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載のドア構造では、車両のドアにおいて、インパクトビームがドア前後方向に延びている。また、補強部材が、インパクトビームと交差している。この補強部材は、ドア上下方向に延びる一端側と他端側との中間が曲げられて一端側と他端側とがインパクトビームのドア上側において連結された構成になっている。
【0007】
これによって、車両の側面衝突時に発生するドアの水平断面及び垂直断面での車幅内側への変形を、ドア上下方向及びドア前後方向の広範囲に渡って抑制することが可能となるので、ドアの側方における車室スペースの減少を抑制することが可能となる。
【0008】
請求項2に記載のドア構造は、請求項1に記載のドア構造であって、前記補強部材の一端側よりドア前側の他端側は、前記インパクトビームのドア下側まで延びており、前記補強部材に入力された荷重を前記補強部材の他端側から車体側に伝達する荷重伝達手段を、車体側に設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載のドア構造では、補強部材の他端側(ドア前側)がインパクトビームのドア下側まで延びており、車両の側面衝突時、車体側に設けられた荷重伝達手段が、補強部材の他端側から車体側へ、補強部材に入力された荷重を伝達して分散させる。これによって、ドアの水平断面及び垂直断面での車幅内側への変形を効果的に抑制することが可能となる。
【0010】
請求項3に記載のドア構造は、請求項1又は請求項2に記載のドア構造であって、前記補強部材の他端側よりドア後側の一端側を、車幅方向に見て車体側と重なるように配置したことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載のドア構造では、車両の側面衝突時に、補強部材のドア後側が車幅内側へ倒れ込むことを抑制することが可能となり、補強部材に入力された荷重が、補強部材の一端側(ドア後側)から車体側に伝達されて分散される。これによって、ドアの水平断面及び垂直断面での車幅内側への変形を効果的に抑制することが可能となる。
【0012】
請求項4に記載のドア構造は、車両のドアにおいてドア前後方向に延びるインパクトビームと、前記インパクトビームと交差し、一端側が前記インパクトビームのドア上側において車体側と車幅方向に重なり、他端側が前記インパクトビームのドア下側において車体側と車幅方向に重なる補強部材と、を有することを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載のドア構造では、車両のドアにおいて、インパクトビームがドア前後方向に延びている。また、補強部材が、インパクトビームと交差している。この補強部材の一端側は、インパクトビームのドア上側において車体側と車幅方向に重なり、補強部材の他端側は、インパクトビームのドア下側において車体側と車幅方向に重なっている。
【0014】
これによって、車両の側面衝突時に発生するドアの水平断面及び垂直断面での車幅内側への変形を、ドア上下方向及びドア前後方向の広範囲に渡って抑制することが可能となるので、ドアの側方における車室スペースの減少を抑制することが可能となる。
【0015】
請求項5に記載のドア構造は、請求項4に記載のドア構造であって、前記補強部材に入力された荷重を前記補強部材の他端側から車体側に伝達する荷重伝達手段を、車体側に設けたことを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載のドア構造では、車両の側面衝突時、車体側に設けられた荷重伝達手段が、補強部材の他端側から車体側へ、補強部材に入力された荷重を伝達して分散させる。これによって、ドアの水平断面及び垂直断面での車幅内側への変形を効果的に抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、車両の側面衝突時のドアの側方における車室スペースの減少を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明のドア構造の一実施形態を図1乃至図6に従って説明する。
なお、図中矢印FRは車体前方方向及びドア前方方向を、矢印UPは車体上方方向及びドア上方方向を、矢印INは車幅内側方向を示す。
【0019】
図1に示すように、車体10の側部には、フロントサイドドア開口部12が形成されている。このフロントサイドドア開口部12は、車体前側の縁部を構成するフロントピラー14と、車体上側の縁部を構成するルーフサイドレール(図示省略)と、車体後側の縁部を構成するセンターピラー16と、車体下側の縁部を構成するロッカ18とに囲まれており、ヒンジ20を介してフロントピラー14に支持されたフロントサイドドア22によって開閉される。
【0020】
また、図2に示すように、ロッカ18は、ロッカ18の外板を構成するロッカアウタパネル24と、ロッカアウタパネル24の車幅内側において車体前後方向に延在する閉じ断面構造のロッカリインホースメント26と、ロッカリインホースメント26の内部に配設されたバルクヘッド28とを備えている。
【0021】
ロッカアウタパネル24は、車体前後方向の断面が車幅内側に開口したハット形状となるパネルであり、車体上下方向両端部にフランジ部24Aが形成されている。また、ロッカアウタパネル24の車体上側の壁部24Bには車幅内側から外側へかけて高さが低くなる段差部24Cが形成されている。
【0022】
また、ロッカリインホースメント26は、共に車幅方向に開口したハット形状をしているロッカリインホースメントインナ30とロッカリインホースメントアウタ32とで構成されている。このロッカリインホースメント26は、ロッカリインホースメントインナ30の車体上下方向両端部に形成されたフランジ部30Aと、ロッカリインホースメントアウタ32の車体上下方向両端部に形成されたフランジ部32Aとが溶接されることで、閉じ断面を形成している。また、ロッカアウタパネル24のフランジ部24Aとフランジ部32Aとが溶接されており、ロッカアウタパネル24とロッカリインホースメントアウタ32とで閉じ断面が形成されている。
【0023】
また、ロッカリインホースメントアウタ32の車体上側の壁部32Bには、車幅内側から外側へかけて高さが低くなる段差部32Cが形成されている。この段差部32Cとロッカアウタパネル24に形成された段差部24Cとは、互いに当接し、また、共に鉛直となっている。
【0024】
また、図3に示すように、バルクヘッド28は、車体上下方向に垂直な断面が車幅外側に開口したハット形状となる補強部材であり、車体前後方向両端部に形成されたフランジ部28Aを、ロッカリインホースメントアウタ32の段差部32Cに、後述するキャッチ48と共に締結により固定され、車幅内側の壁部28Bを、ロッカリインホースメントインナ30の車幅内側の壁部30Bに当接させている。また、ロッカリインホースメントインナ30の車幅内側の壁部30Bには、車幅方向に延在するフロアクロスメンバ33の車幅方向端部が溶接等により結合されている。
【0025】
また、図2に示すように、フロントサイドドア22は、ドア外側面を構成するドアアウタパネル34と、ドアアウタパネル34の車幅内側に配設され車室側部を構成するドアインナパネル36とで構成されている。ドアアウタパネル34の外周縁部とドアインナパネル36の外周縁部とはヘミング結合部38により結合されている。
【0026】
また、ドアアウタパネル34は、ヘミング結合部38から車幅外側に緩やかに湾曲されている。一方、ドアインナパネル36は、ヘミング結合部38の近傍から車幅内側に膨出されており、ドアインナパネル36の下部には、ロッカアウタパネル24の車体上側の壁部24Bと車体上下方向に対向する壁部36Aが形成されている。
【0027】
また、図1に示すように、フロントサイドドア22の内部には、パイプ材であるインパクトビーム38がドア前後方向に沿って延設されている。インパクトビーム38のドア前側端部38Aには取付ブラケット40が溶接され、この取付ブラケット40が溶接等によりドアインナパネル36のドア前側端部に結合されている。一方、インパクトビーム38のドア後側端部38Bには取付ブラケット42が溶接され、この取付ブラケット42が溶接等によりドアインナパネル36のドア後側端部に結合されている。ここで、取付ブラケット40、42は、フロントシートに着座した乗員Pの腹部B付近より車体下側に配置されており、インパクトビーム38は、該乗員Pの腹部B付近より車体下側に配置されている。また、インパクトビーム38のドア前側端部38Aは、フロントピラー14と車幅方向に重なり、インパクトビーム38のドア後側端部38Bは、センターピラー16と車幅方向に重なっている。
【0028】
また、フロントサイドドア22の内部には、補強部材としてのループ状補強部材44が配設されている。このループ状補強部材44は、インパクトビーム38と同様のパイプ材で構成されており、軸方向一端側及び他端側をそれぞれ直線状の直線部44A、44Bとされ、直線部44Aと直線部44Bとの間を、ループ状に湾曲されたループ部44Cとされている。
【0029】
直線部44Aは、ドア後部においてドア上下方向に延在しており、直線部44Aの先端部(車体下側端部)44Fと、インパクトビーム38のドア後端側とが車幅方向に重なっている。図4に示すように、直線部44Aの先端部44Fには、絞られて車幅内側へ凹んだ凹部44Gが形成されており、この凹部44Gがインパクトビーム38の後端側に溶接により結合されている。
【0030】
また、図1に示すように、直線部44Bは、ドア前後方向中央部においてドア上下方向に延在しており、インパクトビーム38のドア前後方向中央部と交差(略直交)している。図2に示すように、直線部44Bのインパクトビーム38と交差する部分には、絞られて車幅内側へ凹んだ凹部44Dが形成されており、この凹部44Dがインパクトビーム38に溶接により結合されている。
【0031】
また、直線部44Bは、インパクトビーム38のドア下側まで延在しており、ドアインナパネル36のドア下側の壁部36Aに形成された開口部46に挿通され、先端部(車体下側端部)44Eを、ロッカアウタパネル24の段差部24Cと車幅方向に対向させている。
【0032】
ここで、図1に示すように、直線部44Aは、フロントシートに着座した乗員Pの腹部B付近の車体後側に配置され、直線部44Bは、該乗員Pの腹部B付近の車体前側に配置されており、ループ部44Cは、フロントシートの車体前後方向のスライド位置に関らず、一部(特に最もドア上側の部分)がフロントシートに着座した乗員Pの腹部B付近と車幅方向に見て重なるように配置されている。
【0033】
また、直線部44Bとループ部44Cとの境界部44Hは、フロントサイドドア22の下側部分における上下方向及び前後方向の中央部に配置されている。さらに、直線部44Aは、先端部44Fから基端部44Iにかけて、センターピラー16と車幅方向に重なっている。
【0034】
また、図1、図2に示すように、荷重伝達手段としてのキャッチ48が、ロッカアウタパネル24の段差部24Cに配設されている。図3、図5に示すように、キャッチ48は、車幅外側に開口した溝48Cが形成された嵌合部48Aと、嵌合部48Aの車体前後方向両側に形成され、ロッカアウタパネル24の段差部24C、ロッカリインホースメントアウタ32の段差部32C、及びバルクヘッド28のフランジ部28Aに締結により固定された一対のフランジ部48Bとで構成されている。このキャッチ48は、鉄やアルミ等の金属製、または、FRP(繊維強化プラスチック)やナイロン等の高強度のエンジニアリングプラスチック製とされている。
【0035】
ここで、図3に示すように、直線部44Bの先端部44Eは、嵌合部48Aに形成された溝48Cと僅かな隙間を空けて車幅方向に対向している。また、溝48Cの車体上下方向から見た形状が一様でC字状となっている。ここで、車両の側面衝突時の衝突荷重のような過大な荷重により直線部44Aの先端部44Eを溝48C内に押し込むと、先端部44Eが溝48Cに嵌合して先端部44Eの車幅外側への移動が制限されるように、直線部44Bの先端部44Eの直径や、溝48Cの形状及びサイズや、嵌合部48Aの剛性等が設定されている。
【0036】
次に、本実施形態による作用について説明する。
【0037】
車両の側面衝突時に車幅外側から内側への衝突荷重がフロントサイドドア22に入力されると、ドアアウタパネル34の水平断面での車幅内側への変形、ドアアウタパネル34のドア前後方向から見た断面(以下、垂直断面という)での車幅内側へのくの字状の変形が発生する。
【0038】
この際、加害車両のバンパとインパクトビーム38とが車幅方向に重なっている場合には、衝突荷重がインパクトビーム38に入力する。ここで、インパクトビーム38のドア前側端部38Aがフロントピラー14と車幅方向に重なり、インパクトビームのドア後側端部38Bがセンターピラー16と車幅方向に重なっている。
【0039】
このため、加害車両のバンパが、インパクトビーム38によって受け止められ、ドアアウタパネル34に入力した衝突荷重が、インパクトビーム38からフロントピラー14、及びセンターピラー16に伝達されて分散され、更に、インパクトビーム38からループ状補強部材44を介してロッカ18に伝達されて分散される。これによって、ドアアウタパネル34の水平断面での車幅内側への変形及びドアアウタパネル34の垂直断面での車幅内側へのくの字状の変形を抑制できる。
【0040】
一方、加害車両のバンパが、インパクトビーム38より車体上側に位置する場合には、衝突荷重が、インパクトビーム38からドア上方へ延びるループ状補強部材44に入力する。ここで、ループ状補強部材44は、車体10の乗員Pの腹部B付近の車体前側の1点及び後側の1点においてインパクトビーム38に強固に固定されている。このため、加害車両のバンパが、ループ状補強部材44に受け止められ、ループ状補強部材44に入力した衝突荷重が、直線部44A及び直線部44Bからインパクトビーム38を介してフロントピラー14及びセンターピラー16に伝達されて分散される。また、ドアアウタパネル10の下側部分の上下方向及び前後方向の中央部が、直線部44Bとループ部44Cとの境界部44Hに受け止められる。これによって、車両の側面衝突時のドアアウタパネル34の水平断面での車幅内側への変形及びドアアウタパネル34の垂直断面での車幅内側へのくの字状の変形を抑制できる。
【0041】
また、ループ状補強部材44のループ部44Cの一部が、乗員Pが着座したフロントシートのスライド位置に関わらず、乗員Pの腹部B付近と車幅方向に重なるように、ループ状補強部材44が設定されているので、乗員Pの腹部B付近の車幅側方における車室スペースの減少を抑制できる。
【0042】
また、ループ状補強部材44の直線部44Aが、センターピラー16と車幅方向に重なっていることによって、ループ状補強部材44のドア後側が車幅内側へ倒れ込むことが抑制され、ループ状補強部材44に入力された衝突荷重が、直線部44Aからセンターピラー16に伝達されて分散される。これによって、ドアアウタパネル34の水平断面での車幅内側への変形及びドアアウタパネル34の垂直断面での車幅内側へのくの字状の変形を効果的に抑制できる。
【0043】
また、図3に2点鎖線で示すように、車両の側面衝突時にループ状補強部材44に入力された衝突荷重によって、ループ状補強部材44が車幅方向に変位し、ループ状補強部材44の直線部44Bの先端部44Eが、キャッチ48の溝48Cに押し込まれると、先端部44Eが溝48Cに嵌合し(固定され)、先端部44Eの車幅外側への移動が制限される。このため、ループ状補強部材44の車両上側が車幅内側へ倒れこむように、ループ状補強部材44が回転することが抑制されるので、ループ状補強部材44のドア前側が車幅内側へ倒れ込むことが抑制され、ループ状補強部材44に入力された衝突荷重が、直線部44Bから、キャッチ48、及びロッカリインホースメント26に内設されたバルクヘッド28を介して、フロアクロスメンバ33、反衝突側のロッカ18等に伝達されて分散される。これによって、ドアアウタパネル34の水平断面での車幅内側への変形及びドアアウタパネル34の垂直断面での車幅内側へのくの字状の変形を効果的に抑制できる。また、ドアアウタパネル34の下端部がロッカ18から外れて車室内に入り込むことを抑制できる。
【0044】
以上、本実施形態によると、仮に車体10の車高が低く、加害車両がSUV車体のようにバンパ位置が高い車体であっても、ループ状補強部材44のインパクトビーム38からの高さを調整することによって、乗員Pの腹部B付近の側方における車室スペースの減少を抑制することが可能である。
【0045】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0046】
図6に示すように、車体100のフロントサイドドア22の内部には、補強部材としてのL字状補強部材50が配設されている。このL字状補強部材50は、インパクトビーム38と同様のパイプ材で構成されており、軸方向一端側及び他端側はそれぞれ直線状の直線部50A、50Bとされ、直線部50Aと直線部50Bとの間は、R状に湾曲された湾曲部50Cとされている。
【0047】
直線部50Bは、第1実施形態における直線部44Bと同様の構成となっている。また、直線部50Aは、直線部50Bに対して略直角に配設されており、直線部50Bのドア上側且つドア後側においてドア前後方向に延在している。また、直線部50Aのドア後側端部(先端部)50Dには取付ブラケット52が溶接されており、この取付ブラケット52が、溶接等によりドアインナパネル36のドア後側端部に結合されている。この取付ブラケット52は、センターピラー16と車幅方向に重なっており、直線部50Aの車体後側端部50Dは、センターピラー16と車幅方向に重なっている。
【0048】
ここで、直線部50A及びループ部50Cの少なくとも一部が、乗員Pが着座したフロントシートのスライド位置に関わらず、乗員Pの腹部B付近と車幅方向に重なり、また、直線部50Aと湾曲部50Cとの境界部50Fが、フロントサイドドア22の下側部分の上下方向及び前後方向の中央部に配置されるように、L字状補強部材50が設定されている。
【0049】
次に、本実施形態による作用について説明する。
【0050】
車両の側面衝突時、加害車両のバンパとインパクトビーム38とが車幅方向の重なっている場合には、第1実施形態と同様、加害車両のバンパが、インパクトビーム38によって受け止められ、ドアアウタパネル34に入力した衝突荷重が、インパクトビーム38からフロントピラー14及びセンターピラー16に伝達されて分散され、更に、インパクトビーム38からL字状補強部材50を介してロッカ18に伝達されて分散される。これによって、ドアアウタパネル34の水平断面での車幅内側への変形及びドアアウタパネル34の垂直断面での車幅内側へのくの字状の変形を抑制できる。
【0051】
一方、加害車両のバンパが、インパクトビーム38よりも車体上側に位置する場合には、衝突荷重がL字状補強部材50に入力する。ここで、L状補強部材50は、乗員Pの腹部B付近の車体前側の1点においてインパクトビーム38に強固に固定され、また、乗員Pの腹部B付近の車体後側の1点において、センターピラー16と車幅方向に重なった取付ブラケット52に強固に固定されている。このため、加害車両のバンパが、L字状補強部材50に受け止められ、ループ状補強部材50に入力した衝突荷重が、直線部50Bからインパクトビーム38を介してフロントピラー14及びセンターピラー16に伝達され、また、直線部50Aからセンターピラー16に直接伝達される。また、ドアアウタパネル34の下側部分の上下方向及び前後方向の中央部が、直線部50Aと湾曲部50Cとの境界部50Fに受け止められる。これによって、車両の側面衝突時に、ドアアウタパネル34の水平断面での車幅内側への変形及びドアアウタパネル34の垂直断面での車幅内側へのくの字状の変形を抑制できる。
【0052】
また、L状補強部材50の直線部50B及び湾曲部50Cの少なくとも一部が、乗員Pが着座したフロントシートのスライド位置に関わらず、乗員Pの腹部B付近と車幅方向に重なるように、L字状補強部材50が設定されているので、乗員Pの腹部B付近の車幅側方における車室スペースの減少を抑制できる。
【0053】
また、L字状補強部材50の直線部50Aが、センターピラー16と車幅方向に重なっていることによって、L字状補強部材50のドア後側が車幅内側へ倒れ込むことが抑制され、L字状補強部材50に入力された衝突荷重が、直線部50Aからセンターピラー16に伝達されて分散される。これによって、ドアアウタパネル34の水平断面での車幅内側への変形及びドアアウタパネル34の垂直断面での車幅内側へのくの字状の変形を効果的に抑制できる。
【0054】
また、車両の側面衝突時にL字状補強部材50に入力された衝突荷重によって、L字状補強部材50が車幅方向に変位し、L字状補強部材50の直線部50Bの先端部50Eが、キャッチ48の溝48Cに押し込まれると、先端部50Eが溝48Cに嵌合し、先端部50Eの車幅外側への移動が制限される。このため、L字状補強部材50の車両上側が車幅内側へ倒れこむように、L字状補強部材50が回転することが抑制されるので、L字状補強部材50のドア前側が車幅内側へ倒れ込むことが抑制され、L字状補強部材50に入力された衝突荷重が、直線部50Bから、キャッチ48、ロッカリインホースメント26に内設されたバルクヘッド28を介して、フロアクロスメンバ34、反衝突側のロッカ18等に伝達されて分散される。これによって、ドアアウタパネル34の水平断面での車幅内側への変形及びドアアウタパネル34の垂直断面での車幅内側へのくの字状の変形を効果的に抑制できる。また、ドアアウタパネル34の下端部がロッカ18から外れて車室内に入り込むことを抑制できる。
【0055】
以上、本実施形態によると、仮に車体100の車高が低く、加害車両がSUV車体のようにバンパ位置が高い車体であっても、L字状補強部材50のインパクトビーム38からの高さを調整することによって、乗員Pの腹部B付近の側方における車室スペースの減少を抑制することが可能である。
【0056】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、本実施形態では、本発明のドア構造をヒンジにより開閉可能とされたフロントサイドドアに適用したが、スライドドアやリアサイドドア等にも適用可能である。
【0057】
また、第1実施形態では、補強部材を途中でループ状に湾曲されたループ状補強部材44としたが、補強部材は、途中でループ状に湾曲されていることは必須ではなく、途中で屈曲されていても良いし、全体をループ状に湾曲されていても良い。また、直線部44A、44B、50Aは、鉛直であっても、鉛直方向に対して傾斜していても良い。また、本実施形態では、曲げられた棒材である補強部材を、パイプ材で構成されたループ状補強部材44、L字状補強部材50としたが、ハット状の断面を有する棒材で構成しても良い。さらに、本実施形態では、補強部材としてのループ状補強部材44、L字状補強部材50を、溶接によりインパクトビーム38や取付ブラケットに固定したが、強固に固定されていれば良く、固定方法としてボルトによる締結等を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明のドア構造の第1実施形態を示す概略側面図である。
【図2】図1の2−2断面図である。
【図3】図2の3−3断面図である。
【図4】図1の4−4側面図である。
【図5】キャッチを拡大して示す斜視図である。
【図6】本発明のドア構造の第2実施形態を示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0059】
10 車体
22 フロントサイドドア(ドア)
38 インパクトビーム
44 ループ状補強部材(補強部材)
44A 直線部(補強部材の一端側)
44B 直線部(補強部材の他端側)
48 キャッチ(荷重伝達手段)
50 L字状補強部材(補強部材)
50A 直線部(補強部材の一端側)
50B 直線部(補強部材の他端側)
100 車体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアにおいてドア前後方向に延びるインパクトビームと、
前記インパクトビームと交差し、ドア上下方向に延びる一端側と他端側との中間が曲げられて一端側と他端側とが前記インパクトビームのドア上側において連結された補強部材と、
を有することを特徴とするドア構造。
【請求項2】
前記補強部材の一端側よりドア前側の他端側は、前記インパクトビームのドア下側まで延びており、
前記補強部材に入力された荷重を前記補強部材の他端側から車体側に伝達する荷重伝達手段を、車体側に設けたことを特徴とする請求項1に記載のドア構造。
【請求項3】
前記補強部材の他端側よりドア後側の一端側を、車幅方向に見て車体側と重なるように配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のドア構造。
【請求項4】
車両のドアにおいてドア前後方向に延びるインパクトビームと、
前記インパクトビームと交差し、一端側が前記インパクトビームのドア上側において車体側と車幅方向に重なり、他端側が前記インパクトビームのドア下側において車体側と車幅方向に重なる補強部材と、
を有することを特徴とするドア構造。
【請求項5】
前記補強部材に入力された荷重を前記補強部材の他端側から車体側に伝達する荷重伝達手段を、車体側に設けたことを特徴とする請求項4に記載のドア構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−100572(P2008−100572A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283593(P2006−283593)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】