説明

ドア用錠前のエスカチオン

【課題】静電ノイズをエスカチオンに効率良く分散させる。
【解決手段】本発明に係るドア用錠前のエスカチオン20は、ドアの内壁面に固定される室内側装飾板本体21と、室内側装飾板本体21と室外側装飾板本体とをドアを挟んで連結するように室内側装飾板本体21の外側から挿入される一つの固定用ネジ16と、室内側装飾板本体21の内部に配置されて固定用ネジ16の締め付け荷重によって室内側装飾板本体21の撓みを抑制する補強ブロック部材39と、を備え、室内側装飾板本体21は、ドアの内壁面に接触する金属製の装飾ベース部材26と、装飾ベース部材26の表面を覆う樹脂製の装飾カバー部材27とで構成され、補強ブロック部材39には固定用ネジ16と装飾ベース部材26とに跨って接触する金属製のアース部材40が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア用錠前のエスカチオンに関し、例えば、ホテルの各客室用ドアにそれぞれ取り付けられたドア用錠前のエスカチオンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のホテルの各客室用ドアにあっては、シリンダーキー方式のドア用錠前では、客室番号を示すキーホルダーが大型化してしまう上、紛失やマスターキーの管理といった利便性の不具合から、磁気カードやICカードを利用したものが普及しつつある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図8及び図9は、このようなカード方式のドア用錠前の一例を示し、図8は廊下側(室外側)から見たドア要部の斜視図、図9は客室側(室内側)から見たドア要部の斜視図である。
【0004】
尚、当業者用語としての「エスカチオン」は、普通一般にドアに取り付けられた錠前の機構をカバーする装飾板としての意味合いを有する。
【0005】
図8において、客室と廊下との間を区画・連通するドア1の扉木口2には、フロント板3が固定されていると共に、このフロント板3の表面から常時は突出してドア開口縁部に設けられた係合穴(図示せず)と係合することによりドア閉成状態を維持するためのラッチボルト4と、フロント板3の表面から常時は埋没し且つ突出したときにドア開口縁部に設けられたロック穴(図示せず)と係合することによりドアロック状態を維持するための錠ボルトであるデッドボルト5と、が設けられている。
【0006】
また、ドア1の室外側には、カードキーとしての磁気カード6を挿入するカード挿入口7aを形成した室外側装飾板本体7と、この室外側装飾板本体7の上下開口端を閉成するキャップ8,9と、ドア1の開閉操作並びにラッチボルト4の出没操作を行うためのレバーハンドル10またはノブと、を備えている。
【0007】
図9において、ドア1の室内側には、室内側装飾板本体11と、この室内側装飾板本体11の上下開口端を閉成するキャップ12,13と、ドア1の開閉操作並びにラッチボルト4の出没操作を行うためのレバーハンドル14と、デッドボルト5によるドアロック・アンロックを操作するサムターン15と、を備えている。
【0008】
室内側装飾板本体11の内部には、図示を略するが、磁気カード6の読取装置、磁気カード6の読み取りに連動したデッドボルト5のドアロック・アンロックを実行するロック機構部、電源(バッテリ)、制御回路部等が設けられている。さらに、室内側装飾板本体11には、ドア1を貫通して室外側装飾板本体7の裏面側に設けられた雌ネジ部(図示せず)と螺合することでドア1を挟むように室内側装飾板本体11と室外側装飾板本体7とをドア1に固定するための固定用ネジ16が設けられている。
【0009】
また、室外側装飾板本体7と室内側装飾板本体11とは、一般的に、金属製の装飾ベース部材を樹脂製の装飾カバー部材で覆っているものが多い。これは、室外側装飾板本体7及び室内側装飾板本体11の軽量化に貢献すると共に、装飾カバー部材の色を変えることにより、ドア1の色やデザインに応じて見掛け上の色合い(例えば、金・銀・銅製)を容易に確保して意匠性を確保するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4111759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記した従来のドア用錠前のエスカチオンでは、固定用ネジ16の頭部と樹脂製の装飾カバーで覆われた室内側装飾板本体11の表面との間で導通が取れないため、この部分で発生した静電気が一要因となってエスカチオンの静電ノイズの値が規定値を満たすことができず、室内側装飾板本体11の内部の各種電気部品に悪影響を及ぼすおそれがあるといった問題が生じていた。
【0012】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、固定用ネジを利用してアース回路を形成することにより、静電ノイズをエスカチオンに効率良く分散することができるドア用錠前のエスカチオンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のドア用錠前のエスカチオンは、ドアの内壁面に固定される室内側装飾板本体と、前記ドアの外壁面に固定される室外側装飾板本体と、前記室内側装飾板本体と前記室外側装飾板本体とを前記ドアを挟んで連結するように前記室内側装飾板本体の外側から挿入される一つの固定用ネジと、前記室内側装飾板本体の内部に配置されて前記固定用ネジの締め付け荷重によって前記室内側装飾板本体の撓みを抑制する補強ブロック部材と、を備えたドア用錠前のエスカチオンにおいて、前記室内側装飾板本体は、前記ドアの内壁面に接触する金属製の装飾ベース部材と、該装飾ベース部材の表面を覆う非導電性の装飾カバー部材とで構成され、前記補強ブロック部材には前記固定用ネジと前記装飾ベース部材とに跨って接触する金属製のアース部材が設けられていることを特徴とする。
【0014】
そして、本発明のドア用錠前のエスカチオンの前記アース部材は、前記固定用ネジのネジ部と接触するように該固定用ネジが貫通する前記補強ブロック部材の貫通穴に配設される弾性接触舌片部と、該弾性接触舌片部と一体に形成されて前記装飾ベース部材の内面と接触する本体接触舌片部とを備えているのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のドア用錠前のエスカチオンによれば、固定用ネジを利用してアース回路を形成することにより、静電ノイズをエスカチオンに効率良く分散することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るドア用錠前のエスカチオンの正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るドア用錠前のエスカチオンの要部の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るドア用錠前のエスカチオンの背面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るドア用錠前のエスカチオンに適用される補強ブロック部材を示し、(A)は補強ブロック部材の拡大正面図、(B)はアース部材装着状態の補強ブロック部材の拡大正面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るドア用錠前のエスカチオンの要部の拡大縦断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るドア用錠前のエスカチオンの要部の拡大平断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るドア用錠前のエスカチオンに適用されるアース部材を示し、(A)は補強ブロック部材への装着状態を基準とするアース部材の正面図、(B)は補強ブロック部材への装着状態を基準とするアース部材の縦断面図、(C)は補強ブロック部材への装着状態を基準とするアース部材の平断面図である。
【図8】従来のドア用錠前のエスカチオンを示し、室外側エスカチオンを含むドア要部の斜視図である。
【図9】従来のドア用錠前のエスカチオンを示し、室内側エスカチオンを含むドア要部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の一実施形態に係るドア用錠前のエスカチオンについて、図面を参照して説明する。ここで、図1は本発明の一実施形態に係るドア用錠前のエスカチオンの正面図、図2は本発明の一実施形態に係るドア用錠前のエスカチオンの要部の断面図、図3は本発明の一実施形態に係るドア用錠前のエスカチオンの背面図、図4は本発明の一実施形態に係るドア用錠前のエスカチオンに適用される補強ブロック部材を示し、図4(A)は補強ブロック部材の拡大正面図、図4(B)はアース部材装着状態の補強ブロック部材の拡大正面図、図5は本発明の一実施形態に係るドア用錠前のエスカチオンの要部の拡大縦断面図、図6は本発明の一実施形態に係るドア用錠前のエスカチオンの要部の拡大平断面図、図7は本発明の一実施形態に係るドア用錠前のエスカチオンに適用されるアース部材を示し、図7(A)は補強ブロック部材への装着状態を基準とするアース部材の正面図、図7(B)は補強ブロック部材への装着状態を基準とするアース部材の縦断面図、図7(C)は補強ブロック部材への装着状態を基準とするアース部材の平断面図である。
【0018】
尚、以下に示す実施例は本発明のドア用錠前のエスカチオンにおける好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。また、本実施の形態においては、室内側に配置されたエスカチオンに特化して説明し、室外側のエスカチオン及びドアロック・アンロックの具体的な構成は公知の技術のものを適宜適用することができるものとする。
【0019】
図1及び図2に示すように、本実施の形態に係るエスカチオン20は、上下に開口端を有する室内側装飾板本体21と、室内側装飾板本体21の上下開口端をそれぞれ閉成するキャップ22,23と、ドア1の開閉操作並びにラッチボルト(図示せず)の出没操作を行うためのレバーハンドル24(回動軸部分のみ図示)と、デッドボルト(図示せず)によるドアロック・アンロックを室内側から操作するサムターン25とを備えている。また、室内側装飾板本体21の内部には、図示を略するが、カードキー(例えば、ICカードや磁気カード)の読取装置、カードキーの読み取りに連動したデッドボルトのドアロック・アンロックを実行するロック機構部、制御回路部等が設けられている。さらに、室内側装飾板本体21には、ドア1(図2にのみ図示)を貫通して室外側装飾板本体(図示せず)の裏面側に設けられた雌ネジ部(図示せず)と螺合することでドア1を挟むように室内側装飾板本体21と室外側装飾板本体とをドア1に固定するための固定用ネジ16が設けられている。
【0020】
室内側装飾板本体21は、ドア1とで閉断面を形成するように水平断面方向コ字形状とされた金属製の装飾ベース部材26と、装飾ベース部材26を覆う非導電性(例えば、樹脂製)の装飾カバー部材27とを備えており、装飾カバー部材27を樹脂等で形成することにより、室内側装飾板本体21の軽量化並びに意匠性(例えば、金・銀・銅製風)の向上を図っている。
【0021】
室内側装飾板本体21の上端開口を閉成するキャップ22には、装飾ベース部材26に形成された被係合部26aと係合するランス状の係合脚部28と、例えば、電源として4本の単三電池(図示せず)を収納するバッテリケース29が設けられている。
【0022】
バッテリケース29は、正面に開放する樹脂製のバッテリベース30と、バッテリベース30の正面開放端を閉成するカバー31と、4本の単三電池(図示せず)を電気的接続状態で支持する導電性金属プレートからなるホルダ32と、ホルダ32に一端が接続された配線コード33とを備えている。また、バッテリベース30の下端は固定用ボルト16に固定され、バッテリベース30の上端はキャップ22に形成された雌ネジ部22a(図3参照)に螺合するネジ34を介してキャップ22に固定される。さらに、カバー31の上端はタッピングネジ35を介してバッテリベース30に固定されている。また、カバー31の下端には、バッテリベース30の下端外壁面に形成されたガイド溝30aと係合する軸部31aが形成されており、カバー31は、この軸部31aによって、図2の実線(断面)に示す正面開放端閉成状態と、図2の鎖線で示す正面開放端開放状態(単三電池交換状態)とに回動可能となっている。
【0023】
一方、上述した配線コード33は、図3に示すように、捻り状態で室内側装飾板本体21の内部にまで配索され、その先端(他端)には、制御回路等に電源供給するためのコネクタ36が設けられている。
【0024】
なお、本実施の形態においては必ずしも設置しなくても構わないが、室内側装飾板本体21の下端開口を閉成するキャップ23には、例えば、背景技術で説明した既設のエスカチオンのように、電源として4本の単三電池(図示せず)を収納するバッテリホルダ38が設けられていてもよい。この場合、コネクタ36は既設のバッテリホルダ38のコネクタ(図示せず)とで接続端を交換することで電源供給を行うことができる。また、バッテリホルダ38は、例えば、結露が発生し易い時期にはバッテリケース29を用いて電源供給を行い、結露が発生し難い時期にはバッテリホルダ38を用いるといったように併用することも可能である。
【0025】
また、固定用ネジ16は、室内側装飾板本体21の内部に設けられた補強ブロック部材39を貫通している。この補強ブロック部材39は、固定用ネジ16の締め付け荷重に伴う室内側装飾板本体21の潰れ方向の変形を防止するものであり、図4(A)及び(B)に示すように、固定用ネジ16が貫通する貫通穴39aを形成したブロックベース部39bと、ブロックベース部39bの両端に位置する一対の弾性脚部39c,39cと、金属製のアース部材40を支持する支持部39dとを一体に備えている。
【0026】
弾性脚部39c,39cは、装飾ベース部材26の両側面の内壁に弾接することによって補強ブロック部材39の左右位置決めや回り止めを行うと共に、装飾ベース部材26の幅が異なる場合への部品共通化に貢献している。
【0027】
アース部材40は、図5乃至図7に示すように、固定用ネジ16のネジ部と接触するように補強ブロック部材39の貫通穴39aに位置する弾性接触舌片部40aと、弾性接触舌片部40aと一体に形成されて補強ブロック部材39の支持部39dに支持される正面視コ字形状の本体部40bと、本体部40bから切り起しによって形成されて支持部39dの縦壁間に噛み合うことでアース部材40の抜け止めを行う係止爪40cと、支持部39dの正面座部39eに位置して装飾ベース部材26の内面と接触する本体接触舌片部40dとが一体に形成されて構成されている。
【0028】
このように上記した構成を備えた本実施の形態に係るドア用錠前のエスカチオン20において、固定用ネジ16を室内側装飾板本体21の外側から挿入すると、そのネジ部が弾性接触舌片部40aに接触する。そして、この弾性接触舌片部40aには、金属製の装飾ベース部材26の内面と接触する本体接触舌片部40dが一体に形成されているため、固定用ネジ16に印加された静電気は固定用ネジ16からアース部材40を介して装飾ベース部材26に効率良く分散される。これにより、本実施の形態に係るエスカチオン20の静電ノイズの値は規定値を満たすことができ、静電ノイズが室内側装飾板本体11の内部の各種電気部品に悪影響を及ぼすのを確実に防止することができ、エスカチオン20の耐久性を高めることができる。
【符号の説明】
【0029】
1…ドア
16…固定用ネジ
20…エスカチオン
21…室内側装飾板本体
26…装飾ベース部材
27…装飾カバー部材
39…補強ブロック部材
39a…貫通穴
39b…ブロックベース部
39c…弾性脚部
39d…支持部
39e…正面座部
40…アース部材
40a…弾性接触舌片部
40b…本体部
40c…係止爪
40d…本体接触舌片部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアの内壁面に固定される室内側装飾板本体と、前記ドアの外壁面に固定される室外側装飾板本体と、前記室内側装飾板本体と前記室外側装飾板本体とを前記ドアを挟んで連結するように前記室内側装飾板本体の外側から挿入される固定用ネジと、前記室内側装飾板本体の内部に配置されて前記固定用ネジの締め付け荷重による前記室内側装飾板本体の撓みを抑制する補強ブロック部材と、を備えたドア用錠前のエスカチオンにおいて、
前記室内側装飾板本体は、前記ドアの内壁面に接触する金属製の装飾ベース部材と、該装飾ベース部材の表面を覆う非導電性の装飾カバー部材とで構成され、
前記補強ブロック部材には前記固定用ネジと前記装飾ベース部材とに跨って接触する金属製のアース部材が設けられ、
ていることを特徴とするドア用錠前のエスカチオン。
【請求項2】
前記アース部材は、前記固定用ネジのネジ部と接触するように該固定用ネジが貫通する前記補強ブロック部材の貫通穴に配設される弾性接触舌片部と、該弾性接触舌片部と一体に形成されて前記装飾ベース部材の内面と接触する本体接触舌片部とを備えている請求項1に記載のドア用錠前のエスカチオン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−185001(P2011−185001A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54155(P2010−54155)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)
【Fターム(参考)】